(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028488
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】分析用担体、その製造方法および使用方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/547 20060101AFI20161107BHJP
G01N 33/552 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
G01N33/547
G01N33/552
【請求項の数】22
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-207681(P2012-207681)
(22)【出願日】2012年9月21日
(65)【公開番号】特開2014-62798(P2014-62798A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】特許業務法人 クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松元 孝行
【審査官】
草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−093290(JP,A)
【文献】
特開2012−181181(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/113158(WO,A1)
【文献】
特開2012−178539(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/087909(WO,A1)
【文献】
特開2006−234472(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0045767(US,A1)
【文献】
特開2005−308485(JP,A)
【文献】
特開2009−069141(JP,A)
【文献】
特開2009−229351(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/061371(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理活性物質を捕捉する機能を有する分析用担体であって、
担体の表面に、重合体が固定化されており、
前記重合体は、側鎖に親水性基を有する第1繰り返しユニットと、
側鎖の末端に
前記生理活性物質を固定化するアミノ基と反応する官能基
としてエポキシ基を有する第2繰り返しユニットと
を有
し、
前記第1繰り返しユニットが下記の一般式[1]で表される重合性モノマーに由来し、
【化1】
( 式中R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は親水性基を示す。Xはアルキレン基または炭素数1〜10のアルキレングリコール残基を示し、pは1〜100の整数を示す。pが2以上100以下の整数である場合、繰り返されるXは、同一であっても、異なっていてもよい。また、Xがエチレングリコール残基の場合、これ自体が親水性を示すのでR2は任意の官能基を選択できる。)
前記第2繰り返しユニットが下記の一般式[2] で表される重合性モノマーに由来し、
【化2】
( 式中R3は水素原子またはメチル基を示し、Yは炭素数1〜10のアルキレングリコール残基またはアルキレン基を示す。Wはアミノ基と反応する官能基を示す。qは1〜100の整数を示す。qが2以上100以下の整数である場合、繰り返されるYは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。)
前記第1繰り返しユニットと前記第2繰り返しユニットとのモル比(第1繰り返しユニット/第2繰り返しユニット)が50/50〜5/95であることを特徴とする分析用担体。
【請求項2】
前記担体の表面に前記重合体の層が形成されており、
前記重合体が、前記担体の表面に導入された重合性官能基または連鎖移動基と、前記一般式[1]で表される重合性モノマーと前記一般式[2]で表される重合性モノマーとを含む重合性成分と、の重合体である、請求項1記載の分析用担体。
【請求項3】
前記親水性基が、ベタイン構造を有する官能基である請求項1または2に記載の分析用担体。
【請求項4】
前記ベタイン構造を有する官能基がホスホリルコリン基である請求の請求項3に記載の分析用担体。
【請求項5】
前記一般式[1]で表される重合性モノマーが、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを有する請求項1乃至4いずれか1項に記載の分析用担体。
【請求項6】
前記重合性官能基がメタクリル基、アクリル基、及びビニル基よりなる群から選ばれる1種以上である請求項2乃至5いずれか1項に記載の分析用担体。
【請求項7】
前記連鎖移動基がメルカプト基である請求項2乃至6いずれか1項に記載の分析用担体。
【請求項8】
前記担体が無機材料からなる請求項1乃至7いずれか1項に記載の分析用担体。
【請求項9】
前記無機材料が無機酸化物からなる請求項8に記載の分析用担体。
【請求項10】
前記無機酸化物が酸化ケイ素である請求の請求項9に記載の分析用担体。
【請求項11】
前記担体の形状が粒子、基板、繊維、フィルター、膜、シートである請求項1乃至10記載の分析用担体。
【請求項12】
前記重合性官能基または前記連鎖移動基が、重合性官能基または連鎖移動基を有するシランカップリング剤と核となる担体表面の官能基との間で形成された共有結合によって、前記担体の表面へ導入されている請求項2乃至11いずれか1項に記載の分析用担体。
【請求項13】
前記重合性官能基または連鎖移動基を有するシランカップリング剤が重合性官能基または連鎖移動基を有するアルコキシシランである請求項12に記載の分析用担体。
【請求項14】
請求項1乃至13いずれか1項に記載の分析担体であって、前記重合体の前記アミノ基と反応する官能基を介して生理活性物質が固定化されていることを特徴とする分析用担体。
【請求項15】
前記生理活性物質が酵素、抗体、レクチン、レセプター、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、糖タンパク質等のタンパク質、ペプチド、アミノ酸、ホルモン、核酸、糖、オリゴ糖、多糖、シアル酸誘導体、シアル化糖鎖等の糖鎖、脂質、低分子化合物、上述以外の高分子有機物質、無機物質、若しくはこれらの融合体、または、ウイルス、若しくは細胞を構成する分子などから選ばれる少なくとも一つである請求項14に記載の分析用担体。
【請求項16】
前記第1繰り返しユニットと前記第2繰り返しユニットとのモル比(第1繰り返しユニット/第2繰り返しユニット)が20/80〜10/90である、請求項1乃至15いずれか1項に記載の分析用担体。
【請求項17】
請求項1乃至
16いずれか1項に記載の分析用担体の製造方法であって、重合性官能基、または連鎖移動基を導入した担体と重合性モノマーを溶媒中で混合することにより重合反応を進行させる工程、及び乾燥する工程を含み、
前記重合性モノマーが、
下記の一般式[1]で表される第1繰り返しユニット用重合性モノマーと、
【化1】
( 式中R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は親水性基を示す。Xはアルキレン基または炭素数1〜10のアルキレングリコール残基を示し、pは1〜100の整数を示す。pが2以上100以下の整数である場合、繰り返されるXは、同一であっても、異なっていてもよい。また、Xがエチレングリコール残基の場合、これ自体が親水性を示すのでR2は任意の官能基を選択できる。)
下記の一般式[2] で表される第2繰り返しユニット重合性モノマーと、
【化2】
( 式中R3は水素原子またはメチル基を示し、Yは炭素数1〜10のアルキレングリコール残基またはアルキレン基を示す。Wはエポキシ基を示す。qは1〜100の整数を示す。qが2以上100以下の整数である場合、繰り返されるYは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。)
を含み、
前記重合反応によって得られる重合体において、前記第1繰り返しユニットと前記第2繰り返しユニットとのモル比(第1繰り返しユニット/第2繰り返しユニット)が50/50〜5/95である、分析
用担体の製造方法。
【請求項18】
前記重合反応がラジカル重合反応であることを特徴とする請求項17に記載の分析用担体の製造方法。
【請求項19】
前記重合体を含む層を形成した担体に生理活性物質をリン酸塩緩衝液に溶解した溶液を接触させる工程を含む、請求項17または18に記載の分析用担体の製造方法。
【請求項20】
前記リン酸塩緩衝液のリン酸塩濃度が0.1M以上5M以下である請求項19に記載の分析用担体の製造方法。
【請求項21】
前記リン酸塩がリン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、又はリン酸水素二ナトリウムのいずれかを含む請求項20に記載の分析用担体の製造方法。
【請求項22】
請求項14に記載の分析用担体を、標的生体分子の溶解液、血液、血漿、血清、細胞破砕液、細胞培養液、及び組織破砕液から選ばれる少なくとも一つの溶液に接触させることにより標的生体物質を回収することを特徴とする分析用担体の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理活性物質を固定するための担体、該担体の製造方法、及び該担体上に生理活性物質を固定した分析用担体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に生理活性物質固定化のための分析用担体は、粒子、基板、繊維、フィルター、膜、シートの形状で提供される場合が多い。
担体が粒子の場合は、カラムや容器に充填して、生理活性物質の反応、分離、精製等にしばしば用いられる。あるいは診断薬としても用いられる。また、担体が基板の場合は、前記同様に診断ツールに用いるなどして使用される。さらに繊維、フィルター、膜、シートの場合は大量の分離、精製ツール等に用いることができる。
【0003】
このような目的の場合、担体表面に確実に生理活性物質を固定化することが必須であり、そのため、以前は樹脂に対する物理化学吸着による生理活性物質の固定が主流であったが、現在では、担体表面に官能基を導入し、生理活性物質を化学結合により固定化する方法がよく採用されている。
【0004】
これにより、生理活性物質の剥離を防ぐとともに、分子量や構造によらず確実に生理活性物質を固定化することが可能となった。
【0005】
特許文献1には、磁性体を内包する樹脂製マイクロビーズを乳化重合により作製し、ビーズ表面の官能基にエチレングリコールジグリシジルエーテルを反応させ、モノクローナル抗体を結合させる方法が記載されている。しかしながら、この方法では、マイクロビーズを重合により作製する工程が必要で、それは煩雑であるとともに、必要な粒径、粒度分布を制御することが困難である。
【0006】
一方、特許文献2には、入手容易な汎用樹脂製マイクロビーズを基材として、その表面を加水分解し、表面に精製したカルボン酸に親水性のスペーサー分子を結合させ、さらにスペーサー分子の官能基に生理活性物質を結合し、親水性により非特異吸着を抑制する方法が述べられている。
【0007】
この方法により得られるマイクロビーズは、加水分解によりカルボン酸を生じる樹脂を基材として用いる必要がある。また、当該マイクロビーズを、そのスペーサー分子に固定した生理活性物質に親和性の高い物質を捕捉するために使用する場面において、生体由来の夾雑物を多く含む検体を接触させると非特異吸着を抑制しきれない可能性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−241547号公報
【特許文献2】特開2009−031130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記実情に鑑み成し遂げられたものであり、生理活性物質を固定化することができる担体、特に好ましくは、生理活性物質を固定化することができ且つ非特異吸着が抑制された担体を簡便に作製し、提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明の他の目的は、上記した生理活性物質固定化用粒子の上に生理活性物質を固定した担体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下の通りである。
(1)生理活性物質を捕捉する機能を有する分析用担体であって、担体の表面に、重合体が固定化されており、前記重合体は、側鎖に親水性基を有する第1繰り返しユニットと、側鎖の末端にアミノ基と反応する官能基を有する第2繰り返しユニットと、を有することを特徴とする分析用担体。
(2)担体の表面に重合性官能基、または連鎖移動基を導入し、該担体と側鎖に親水性基を有する重合性モノマーと、生理活性物質を固定化するアミノ基と反応する官能基を有する重合性モノマーとを含む重合性成分を混合し、次いで重合反応を進行させることにより、
該担体表面に高分子化合物を含む層を形成した(1)記載の分析用担体。
(3)前記アミノ基と反応する官能基がエポキシ基である(1)または(2)に記載の分析用担体。
(4)前記側鎖に親水性基を有する重合性モノマーが下記の一般式[1]で表されるモノマーを含む請求の(2)乃至(3)いずれか1項に記載の分析用担体。
【化1】
( 式中R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は親水性基を示す。Xはアルキレン
基または炭素数1〜10のアルキレングリコール残基を示し、pは1〜100の整数を示す。pが2以上100以下の整数である場合、繰り返されるXは、同一であっても、異なっていてもよい。また、Xがエチレングリコール残基の場合、これ自体が親水性を示すのでR2は任意の官能基を選択できる。)
(5)前記親水性基が、ベタイン構造を有する官能基である(1)乃至(4)いずれか1項に記載の分析用担体。
(6)前記ベタイン構造を有する官能基がホスホリルコリン基である請求の(5)に記載の分析用担体。
(7)前記側鎖に親水性基を有する重合性モノマーが、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを有する(4)乃至(6)いずれか1項に記載の分析用担体。
(8)生理活性物質を固定化するアミノ基と反応する官能基を有する重合性モノマーが下記の一般式[2] で表される物質である(2)乃至(7)いずれか1項に記載の分析用
担体。
【化2】
( 式中R3は水素原子またはメチル基を示し、Yは炭素数1〜10のアルキレングリコ
ール残基またはアルキレン基を示す。Wはアミノ基と反応する官能基を示す。qは1〜100の整数を示す。qが2以上100以下の整数である場合、繰り返されるYは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。)
(9)前記担体の表面に導入する重合性官能基がメタクリル基、アクリル基、及びビニル基よりなる群から選ばれる1種以上である(2)乃至(8)いずれか1項に記載の分析用担体。
(10)前記担体の表面に導入する連鎖移動基がメルカプト基である(2)乃至(8)いずれか1項に記載の分析用担体。
(11)前記担体が無機材料からなる(1)乃至(10)いずれか1項に記載の分析用担体。
(12)前記無機材料が無機酸化物からなる(11)に記載の分析用担体。
(13)前記無機酸化物が酸化ケイ素である請求の(12)に記載の分析用担体。
(14)前記担体の形状が粒子、基板、繊維、フィルター、膜、シートである(1)乃至(13)記載の分析用担体。
(15)前記担体の表面への重合性官能基、または連鎖移動基の導入が、重合性官能基、または連鎖移動基を有するシランカップリング剤と核となる担体表面の官能基との共有結合の形成によってなされる(2)乃至(14)いずれか1項に記載の分析用担体。
(16)前記重合性官能基、または連鎖移動基を有するシランカップリング剤が重合性官能基、または連鎖移動基を有するアルコキシシランである(15)に記載の分析用担体。(17)(1)乃至(16)いずれか1項に記載の分析担体であって、高分子化合物を含む層の前記アミノ基と反応する官能基を介して生理活性物質を固定化したことを特徴とする分析用担体。
(18)前記生理活性物質が酵素、抗体、レクチン、レセプター、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、糖タンパク質等のタンパク質、ペプチド、アミノ酸、ホルモン、核酸、糖、オリゴ糖、多糖、シアル酸誘導体、シアル化糖鎖等の糖鎖、脂質、低分子化合物、上述以外の高分子有機物質、無機物質、若しくはこれらの融合体、または、ウイルス、若しくは細胞を構成する分子などから選ばれる少なくとも一つである(17)に記載の分析用担体。
(19)(1)乃至(18)いずれか1項に記載の分析用担体の製造方法であって、重合性官能基、または連鎖移動基を有するアルコキシシランを酸性水溶液中で加水分解する工程、次いで前記重合性官能基、または連鎖移動基を有するアルコキシシランの酸性水溶液中で担体を撹拌下、加熱する工程、及び乾燥後、更に加熱する工程、を含む分析担体の製造方法。
(20)(1)乃至(18)いずれか1項に記載の分析用担体の製造方法であって、重合性官能基、または連鎖移動基を導入した担体と重合性モノマーを溶媒中で混合することにより重合反応を進行させる工程、及び乾燥する工程を含む分析担体の製造方法。
(21)前記重合反応がラジカル重合反応であることを特徴とする(19)に記載の分析用担体の製造方法。
(22)(1)乃至(18)いずれか1項に記載の分析用担体の製造方法であって、高分子化合物を含む層を形成した担体に生理活性物質をリン酸塩緩衝液に溶解した溶液を接触させる工程を含む生分析用担体の製造方法。
(23)前記リン酸塩緩衝液のリン酸塩濃度が0.1M以上5M以下である(22)に記載の分析用担体の製造方法。
(24)前記リン酸塩がリン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、又はリン酸水素二ナトリウムのいずれかを含む(22)または(23)に記載の分析用担体の製造方法。
(25)(22)乃至(24)のいずれか1項に記載の生理活性物質固定化分析用担体を、標的生体分子の溶解液、血液、血漿、血清、細胞破砕液、細胞培養液、及び組織破砕液から選ばれる少なくとも一つの溶液に接触させることにより標的生体物質を回収することを特徴とする分析用担体の使用方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により生理活性物質を固定化することができる担体、特に反応触媒を必要とせず生理活性物質を固定化することができ、且つ非特異吸着を抑制した担体を簡便に作製し、提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の分析用担体、その製造方法および使用方法について説明する。
【0014】
本発明の分析用担体は、生理活性物質を固定化する機能を有する担体であって、担体表面に、重合体が固定化されており、前記重合体は、側鎖に親水性基を有する第1繰り返しユニットと、側鎖の末端にアミノ基と反応する官能基を有する第2繰り返しユニットと、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の分析用担体は、生理活性物質を捕捉する機能を有するものである。具体的には、アミノ基と反応する官能基を有する分析用担体に関するものであり、該官能基を用いて生理活性物質のアミノ基との結合反応を利用するものである。
【0016】
ここで、生理活性物質とは、例えば酵素、抗体、レクチン、レセプター、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、糖タンパク質等のタンパク質、ペプチド、アミノ酸、ホルモン、核酸、糖、オリゴ糖、多糖、シアル酸誘導体、シアル化糖鎖等の糖鎖、脂質、低分子化合物、上述以外の高分子有機物質、無機物質、若しくはこれらの融合体、または、ウイルス、若しくは細胞を構成する分子等を挙げることができる。
【0017】
前記担体の基材の表面には、重合体が固定されている。この重合体は、アミノ基と反応する官能基を持ち生理活性物質を効率良く、かつ簡易に担体に結合することを可能とするものである。さらに、この生理活性物質以外の物質(検出対象以外のタンパク質等)の非特異吸着を効果的に抑制するものである。
【0018】
前記重合体は、側鎖に親水性基を有する第1繰り返しユニットと、側鎖の末端にアミノ基と反応する官能基を有する第2繰り返しユニットと、を有する。すなわち、側鎖に親水性基を有する第1繰り返しユニットが、検出対象以外のタンパク質等の非特異吸着を抑制し、側鎖の末端にアミノ基と反応する官能基を有する第2繰り返しユニットが生理活性物質を捕捉することができるものである。
【0019】
前記側鎖に親水性基を有する第1繰り返しユニットは、例えばアルキレングリコール残基を有するエチレン系不飽和重合性モノマー、ベタイン構造を有する官能基、とりわけホスホリルコリン基を有するエチレン系不飽和重合性モノマー等に由来するものである。これにより、血清や細胞ライセート等に含まれるタンパク質の非特異吸着を大きく抑制することができる。
【0020】
具体的にアルキレングリコール残基を有するエチレン系不飽和重合性モノマーは、下記式(1)で示されるように、(メタ)アクリル基と炭素数1〜10のアルキレングリコール残基Xの連鎖からなる化合物であることが好ましい。
【0021】
【化1】
( 式中R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は親水性基を示す。Xはアルキレン
基または炭素数1〜10のアルキレングリコール残基を示し、pは1〜100の整数を示す。pが2以上100以下の整数である場合、繰り返されるXは、同一であっても、異なっていてもよい。また、Xがエチレングリコール残基の場合、これ自体が親水性を示すのでR2は任意の官能基を選択できる。)
【0022】
前記式(1)中のアルキレングリコール残基Xの炭素数は1〜10であり、好ましくは1〜6であり、より好ましくは2〜4であり、更に好ましくは2〜3であり、最も好ましくは2である。炭素数が前記範囲内であると、特に非特異吸着の抑制に優れる。
【0023】
また、アルキレングリコール残基Yの繰り返し数pは、特に限定されるものではないが、好ましくは1〜100の整数であり、より好ましくは2〜100の整数であり、更に好ましくは2〜95の整数であり、最も好ましくは4〜90の整数である。前記繰り返し数qが前記範囲内であると、特に非特異吸着の抑制に優れる。
なお、繰り返し数qが、2以上100以下の場合は、繰り返されるアルキレングリコール残基Yの炭素数は同一であっても、異なっていてもよい。
【0024】
前記アルキレングリコール残基を有するエチレン系不飽和重合性モノマーとしては、具体的にはメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールを側鎖とする(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられるが、目的とする生理活性物質以外の成分の非特異的吸着が少ないこと及び入手性からメトキシポリエチレングリコールメタクリレートまたはエトキシポリエチレングリコールメタクリレートが好ましい。
【0025】
ベタイン構造を有する官能基を有するエチレン系不飽和重合性モノマーとしては、下記式(1)で示されるように、(メタ)アクリル基とベタイン構造を有する官能基を有する官能基が、アルキレン基または炭素数1〜10のアルキレングリコール残基Xの連鎖を介して結合した化合物であることが好ましい。
【0026】
【化1】
(式中R1は水素原子またはメチル基を示し、R2はベタイン構造を有する官能基を示す。Xはアルキレン基または炭素数1〜10のアルキレングリコール残基を示し、pは1〜100の整数を示す。pが2以上100以下の整数である場合、繰り返されるXは、同一
であっても、異なっていてもよい。)
【0027】
ベタイン構造を有するエチレン系不飽和重合性モノマーには、カルボキシベタイン系モノマー、スルホベタイン系モノマー、ホスホベタイン系モノマーなどがある。また、ホスホリルコリン構造を有するモノマーもベタイン構造を有するモノマーの一種である。これらのなかでは、ホスホリルコリン構造を有するモノマーが非特異吸着の抑制効果が高く、好ましい。
【0028】
カルボキシベタイン系モノマーの具体例としては、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(2−カルボキシラトエチル)アミニウム、ジメチル(2−アクリロイルオキシエチル)(2−カルボキシラトエチル)アミニウム、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(3−カルボキシラトプロピル)アミニウム、ジメチル(2−アクリロイルオキシエチル)(3−カルボキシラトプロピル)アミニウム、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(4−カルボキシラトブチル)アミニウム、ジメチル(2−アクリロイルオキシエチル)(4−カルボキシラトブチル)アミニウム、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(カルボキシラトメチル)アミニウム、ジメチル(2−アクリロイルオキシエチル)(カルボキシラトメチル)アミニウム等が挙げられる。
【0029】
スルホベタイン系モノマーの具体例としては、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(2−スルホナトエチル)アミニウム、ジメチル(2−アクリロイルオキシエチル)(2−スルホナトエチル)アミニウム、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(3−スルホナトプロピル)アミニウム、ジメチル(2−アクリロイルオキシエチル)(3−スルホナトプロピル)アミニウム、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(4−スルホナトブチル)アミニウム、ジメチル(2−アクリロイルオキシエチル)(4−スルホナトブチル)アミニウム、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(スルホナトメチル)アミニウム、ジメチル(2−アクリロイルオキシエチル)(スルホナトメチル)アミニウム等が挙げられる。
【0030】
ホスホベタイン系モノマーの具体例としては、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(2−ホスホナトエチル)アミニウム、ジメチル(2−アクリロイルオキシエチル)(2−ホスホナトエチル)アミニウム、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(3−ホスホナトプロピル)アミニウム、ジメチル(2−アクリロイルオキシエチル)(3−ホスホナトプロピル)アミニウム、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(4−ホスホナトブチル)アミニウム、ジメチル(2−アクリロイルオキシエチル)(4−ホスホナトブチル)アミニウム、ジメチル(2−メタクリロイルオキシエチル)(ホスホナトメチル)アミニウム、ジメチル(2−アクリロイルオキシエチル)(ホスホナトメチル)アミニウム等が挙げられる。
【0031】
ホスホリルコリン構造を有する重合性不飽和モノマーの具体例としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチルホスホリルコリン、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルホスホリルコリン、10−(メタ)アクリロイルオキシエトキシノニルホスホリルコリン、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスホリルコリン、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルホスホリルコリン等が挙げられる。これらの中では、入手性から2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンが最も好ましい。
【0032】
前記側鎖に親水性基を有する第1繰り返しユニットは、先に挙げたアルキレングリコール残基を有するエチレン系不飽和重合性モノマーに由来するもの、ベタイン構造を有するエチレン系不飽和重合性モノマー等に由来するもの以外でもよく、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びその水酸基の一置換エステル、2−ヒドロキシプロピル
(メタ)アクリレート及びその水酸基の一置換エステル、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及びその水酸基の一置換エステル、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネートおよびその塩、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸およびその塩等、各親水性基を側鎖に有するモノマーに由来するものでもよい。
【0033】
前記側鎖の末端にアミノ基と反応する官能基を有する第2繰り返しユニットは、例えば
末端にアミノ基と反応する官能基を有するエチレン系不飽和重合性モノマーに由来するものが好ましい。
【0034】
また、第2繰り返しユニットのアミノ基と反応する官能基は、生理活性物質中に存在するアミノ基と反応する官能基が好ましい。特に低分子物質との結合反応を起こさせるためには、触媒等を必要としない自己反応型の官能基であることが好ましい。
【0035】
末端にアミノ基と反応する官能基を有するエチレン系不飽和重合性モノマーは、下記式(2)で示されるように、(メタ)アクリル基とアミノ基と反応する官能基が、アルキレン基または炭素数1〜10のアルキレングリコール残基Yの連鎖を介して結合した化合物であることが好ましい。
【0036】
【化2】
( 式中R3は水素原子またはメチル基を示し、Yはアルキレン基または炭素数1〜10
のアルキレングリコール残基を示す。Wはアミノ基と反応する官能基を示す。qは1〜100の整数を示す。qが2以上100以下の整数である場合、繰り返されるYは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。)
【0037】
前記式(2)中のYがアルキレン基である場合、qは1〜100の整数であり、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜10であり、最も好ましくは1〜6である。qの値が大きくなりすぎると、タンパク質の非特異吸着が大きくなる。
【0038】
前記式(2)中のYがアルキレングリコール残基である場合、アルキレングリコール残基Yの炭素数は1〜10であり、好ましくは1〜6であり、より好ましくは2〜4であり、更に好ましくは2〜3であり、最も好ましくは2である。炭素数が前記範囲内であると、特に非特異吸着の抑制に優れる。
また、アルキレングリコール残基Yの繰り返し数qは、特に限定されるものではないが、好ましくは1〜100の整数であり、より好ましくは2〜100の整数であり、更に好ましくは2〜95の整数であり、最も好ましくは4〜90の整数である。前記繰り返し数qが前記範囲内であると、特に非特異吸着の抑制に優れる。
【0039】
式(2)中のWは、アミノ基と反応する官能基であれば特に限定するものではないが、好ましくは触媒を必要としない、エポキシ基や、活性エステル基であることが好ましい。具体的には例えば、エポキシ基や、p−ニトロフェニル活性エステル基、N−ヒドロキシスクシンイミド活性エステル基、フタル酸イミド活性エステル基、5−ノルボルネン−2、3−ジカルボキシイミド活性エステル基等が挙げられるが、嵩が小さく官能基密度を高
くできる点でエポキシ基が最も好ましい。具体的なモノマーの例としては(メタ)アクリル酸グリシジルが挙げられる。
【0040】
前記重合体の前述した第1繰り返しユニットと、第2繰り返しユニットとの共重合比(第1繰り返しユニット/第2繰り返しユニット)は、特に限定されないが、97/3〜5/95であることが好ましく、特に90/10〜10/90であることが好ましい。共重合比が前記範囲内であると、特に非特異吸着を効果的に抑制するとともに、生理活性物質を固定化する効果、ひいては該生理活性物質と特異的に結合する生体物質の捕捉効果に優れる。
【0041】
前記共重合比は、例えばX線光電子分光分析(XPS)で元素組成を評価することで算出できる。
【0042】
前記重合体は、第1繰り返しユニットと第2繰り返しユニットを含むランダム共重合体であることが好ましい。これにより、第2繰り返しユニットの側鎖の末端に存在するアミノ基と反応する官能基が分散するために、有効に作用することができる。
前記重合体の重量平均分子量は、特に限定されないが、5000〜1000000であることが好ましく、特に10000〜100000であることが好ましい。重量平均分子量が前記範囲内であると、合成時のハンドリングがよく、また、非特異吸着を効果的に抑制することができる。
【0043】
本発明の分析用担体では、前記第1繰り返しユニット、前記第2繰り返しユニット、および側鎖にシランカップリング剤を有するユニットからなる重合体が、前記基材にシランカップリング剤を介して結合されていても良い。これにより、ポリマーが担体から脱離するのを防ぐことができる。
【0044】
前記側鎖にシランカップリング剤を有するユニットとしては、メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルエトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシランに由来するものが挙げられる。
【0045】
シランカップリング剤により、担体に結合した重合体を形成する具体的な方法としては、無機酸化物の場合は、表面に存在する水酸基との間のカップリング反応で容易に結合させることができる。
【0046】
前記シランカップリング剤を用いることで、ポリマーが担体表面から脱離することを防ぐことができることから、分析用担体しての使用において、繰り返される加熱処理や、洗浄工程において、ポリマーの溶解を防ぐことが可能であり、さらに、ポリマーの脱離に伴い発生する、非特異吸着抑制成分およびアミノ基と反応する官能基の低減が抑制され、化学的、物理的安定した分析用担体を提供することが可能となる。
【0047】
また、アミノ基と反応する官能基の低減を防ぐことで、生理活性物質の固定化量を高く維持できることから、該生理活性物質が特異的に捕捉する物質(検出対象)の捕捉量が大きくなり、かつ、非特異吸着抑制成分の低減が抑制されていることから検出対象以外のタンパク質等に対する非特異吸着が少なくなり、S/N比の高い分析用担体を提供することが
できる。
【0048】
前記担体の基材は、特に限定されるものではなく、有機材料、無機材料を問わず用いることができる。有機材料としては、例えばアフィニティクロマトグラフィーの担体として用いられる多孔性のアガロース粒子(商品名:Sepharose)、デキストラン粒子(商品名:Sephadex)の他に、ポリアクリルアミドゲル(商品名:Bio−Gel P、バイオラッド社)、ポリスチレン、エチレン−無水マレイン酸共重合物、ポリメタクリル酸メチル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、アクリル系樹脂等の各種樹脂材料等が挙げられる。
【0049】
また、無機材料としては、金、銀、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、鉄、銅、コバルト、アルミニウムおよびこれらの合金や無機酸化物等が挙げられる。これらの中でも無機酸化物が粒子自体の強度が高い点で好ましい。中でも、酸化ケイ素が取り扱いやすく最も好ましい。
【0050】
担体の形状は粒子、基板、繊維、フィルター、膜、シートなど任意である。中でも粒子が表面に重合体が固定化しやすいため、好ましい。基板状の担体としてはは、例えばスライドガラス形状の平板状の基板や、マルチウェルプレート等を挙げることができる。
【0051】
粒子状の担体の場合、平均粒径は、目的および用途に応じて適宜選択される。特に、無機物の場合、粒径の制御が困難な乳化重合や懸濁重合で有機物の粒子を製造する方法に比較して、粒径の制御が容易である。
【0052】
具体的に、本発明の分析用担体に用いる粒子の粒径としては、用途によっても異なるが、平均粒径が数nm〜100μm程度のものが好ましい。特には、100nm〜50μmが好ましく、最も1μm〜40μmが好ましい。前記基材の平均粒径が前記範囲内であると、特に生理活性物質の捕捉量とハンドリングの良さとのバランスに優れる。このような平均粒径は、例えば粒度分布計で測定することができる。
【0053】
(重合体固定担体の作製)
前記重合体固定担体の作製について述べる。本発明の担体の合成方法は、特に限定されるものではないが、合成の容易さから、担体表面に、重合性官能基または連鎖移動基を有するシランカップリング剤を固定化し、前記側鎖に親水性基を有する重合性モノマーと、アミノ基と反応する官能基を有する重合性モノマーおよび該担体を含む混合物を、重合開始剤存在下、溶媒中でラジカル重合することが好ましい。
【0054】
溶媒としてはそれぞれのエチレン系不飽和重合性モノマーが溶解するものであればよく、例えば、2−ブタノン、メタノール、エタノール、t−ブチルアルコール、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルムなどを挙げることができる。これらの溶媒は、単独または2種以上の組み合わせで用いられる。
【0055】
重合開始剤としては通常のラジカル開始剤ならいずれでもよく、例えば、2,2’−アゾビスイソブチルニトリル(以下「AIBN」という)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1 −カルボニトリル)などのアゾ化合物、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル
などの有機過酸化物などを挙げることができる。
【0056】
本発明の高分子化合物の化学構造は、その結合方式がランダム、ブロック、グラフトなどいずれの形態をなしていてもかまわない。
【0057】
(生理活性物質の固定化)
本発明において生理活性物質を担体上に固定化する際には、生理活性物質を溶解又は分散させた液体を付着する方法が好ましい。生理活性物質を溶解又は分散した液体のpHは5.0〜11.0であることが好ましく、pH6.0〜10がより好ましい。この範囲外だと、生理活性物質が変性・分解する恐れがある。
【0058】
生理活性物質付着後は、アミノエタノール等のアミノ基を有する低分子物質で担体を処理し未反応のアミノ基と反応する官能基を失活させてしまうことが好ましい。
固相表面の親水基の特性により、界面活性剤を含む水や緩衝液で洗浄することで、目的物以外の別の物質の固相表面への非特異吸着を抑制することが可能となる。
【0059】
前記生理活性物質は、酵素、抗体、レクチン、レセプター、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、糖タンパク質等のタンパク質、ペプチド、アミノ酸、ホルモン、核酸、糖、オリゴ糖、多糖、シアル酸誘導体、シアル化糖鎖等の糖鎖、脂質、低分子化合物、上述以外の高分子有機物質、無機物質、若しくはこれらの融合体、または、ウイルス、若しくは細胞を構成する分子から選ばれる少なくとも一つである。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0061】
<実施例>
メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン(Gelest社製SIM6486.5)13gをpH3.0の酢酸水溶液50mLとエタノール50mLとの混合液に添加し、シランカップリング剤を加水分解した後に、シリカビーズ(平均粒径5μm、細孔径70Å、富士シリシア化学株式会社製SMB70−5)10gを投入し70℃で2時間攪拌した後、吸引ろ過により反応溶液からシリカビーズを回収し、100℃で1時間加熱した。その後、エタノールで分散させてよく振盪した後、遠心分離により上澄みを除去し乾燥させた。
【0062】
2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下MPCモノマーと記載、日本油脂株式会社製)、メタクリル酸グリシジル(以下GMAと記載、和光純薬工業製)を、エタノールとメチルエチルケトンの混合溶媒に溶解させ、モノマー混合溶液を作製した。総モノマー濃度は0.6mol/L、それぞれのモル比はMPCモノマー、GMAの順に80:20、50:50、20:80である。そこにAIBNを0.02mol/Lになるように添加し、均一になるまで撹拌した。その後、上記のメタクリロキシプロピルジメチルメトキシシランで処理したシリカビーズ10gを投入し、アルゴンガス雰囲気下、70℃で22時間反応させた。次いで、遠心分離により反応溶液からシリカビーズを回収し、ジメチルスルホキシドに分散させ、よく振盪した後、吸引ろ過によりビーズを回収し、乾燥させた。
【0063】
(1次抗体固定化)
得られた粒子20mgに対し、50μg/mLに調製したCRP抗体(Abnova製)のりん酸水素二カリウム溶液1mLを加え、室温にて1晩転倒混和した。0.05%Tween20含有PBSで3回洗浄した。さらに0.1mol/Lの2−アミノエタノール(溶媒:pH9.5、0.05mol/LのTris−HCl緩衝液)で室温下、1時間処理し、グリシジル基の不活性化を行った。
【0064】
(CRPとの反応)
CRP抗体を固定化した粒子5mgに3μg/mLに調製したCRPのPBS溶液1mLを加え、室温にて1時間転倒混和した。遠心分離で粒子を回収後0.05%Tween20含有PBSで3回洗浄した。
【0065】
(2次抗体との反応)
CRPを反応させた粒子に、1μg/mLに調製したHRP標識化CRP抗体(Abnova製)溶液を1mL加え、室温にて1時間転倒混和した。遠心分離で粒子を回収後0.05%Tween20含有PBSで3回洗浄した。
【0066】
(CRP捕捉量の定量)
HRP標識化CRP抗体を反応させた粒子を、住友ベークライト株式会社製ペルオキシダーゼ発色キットを用いて発色させ、450nmの吸光度を測定することによりCRPの捕捉量を見積もった。
【0067】
<比較例>
CRP抗体を固定化せずに、2−アミノエタノールで不活性化のみを行った粒子に対し、実施例と同様のCRP捕捉量測定を行った。
【0068】
【表1】
【0069】
いずれの実施例においても、比較例よりも吸光度が大きく上昇しており、CRP抗体を固定化したビーズがCRPを捕捉できていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明により生理活性物質を固定化することができる担体、特に反応触媒を必要とせず生理活性物質を固定化することができ、且つ非特異吸着を抑制した担体を簡便に作製し、提供することが可能となった。