特許第6028508号(P6028508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028508
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】ゴム補強用スチールコード
(51)【国際特許分類】
   D07B 1/06 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   D07B1/06 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-225373(P2012-225373)
(22)【出願日】2012年10月10日
(65)【公開番号】特開2014-77215(P2014-77215A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】末藤 亮太郎
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−314833(JP,A)
【文献】 特開平11−081169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D07B 1/00 − 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯ストランドの周囲に複数本の側ストランドを撚り合わせたマルチストランド構造であり、前記芯ストランドをN×(1+6)構造(ただし、N=2〜4)からなる複撚り構造とし、前記側ストランドが3層撚り(1+6+12)構造からなり、そのM本を前記芯ストランドの周囲に撚り合わせたM×(1+6+12)構造(ただし、M=5〜7)にすると共に、前記芯ストランドの直径D0と前記側ストランドの直径D1との比D0/D1を1.05〜1.35にしたゴム補強用スチールコードにおいて、
スチールコード径Dに対するスチールコードピッチPの比を示すコード撚り倍数P/Dを8.0〜9.0、かつ、スチールコードピッチPに対する側ストランドピッチP1の比P1/Pを0.5以上にしたことを特徴としたゴム補強用スチールコード。
【請求項2】
前記芯ストランド及び前記側ストランドを構成する素線が3種類の直径を有するスチールモノフィラメントからなる請求項1に記載のゴム補強用スチールコード。
【請求項3】
コンベヤベルトの心体層に使用される請求項1又は2に記載のゴム補強用スチールコード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム補強用スチールコードに関し、さらに詳しくは、ゴムの浸透性を向上させながら、耐疲労性を確保し、かつ、スチールコード強力を向上させることを可能にしたゴム補強用スチールコードに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ゴム製品を補強するスチールコードにはゴム中の水分による腐蝕を防止するような措置が施される。スチールコードを腐蝕から守るためにはスチール素線に亜鉛等のめっきを施すほか、コードの素線間にゴムが浸透し易くすることが行なわれ、コード構造に関する提案が多数なされている。
【0003】
例えば、芯ストランドの周囲に複数本の側ストランドを撚り合わせたマルチストランド構造にして、芯ストランドをN×(1+6)構造からなる複撚り構造とし、側ストランドを3層撚り(1+6+12)構造として、そのM本を芯ストランドの周囲に撚り合わせたM×(1+6+12)構造にしたスチールコードが提案されている(特許文献1参照)。ここで、Nは2〜4、Mは5〜7に設定され、芯ストランドの直径D0と側ストランドの直径D1との比D0/D1は1.05〜1.35に設定されている。
【0004】
この提案のスチールコードによれば、スチールコード内部に適度な空隙が形成されて、素線間にゴムが浸透し易くなるため、スチールコードに対するゴムの浸透を十分に確保することができる。それ故、スチールコードの耐腐食性を向上させることが可能になる。
【0005】
しかしながら、この構造のスチールコードでは、スチールコードを構成する素線の合計強力に対してスチールコード強力が小さくなり易い。即ち、撚り減り率が増大して、スチールコード強力を高くすることが困難になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−314833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ゴムの浸透性を向上させながら、耐疲労性を確保し、かつ、スチールコード強力を向上させることを可能にしたゴム補強用スチールコードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明のゴム補強用スチールコードは、芯ストランドの周囲に複数本の側ストランドを撚り合わせたマルチストランド構造であり、前記芯ストランドをN×(1+6)構造(ただし、N=2〜4)からなる複撚り構造とし、前記側ストランドが3層撚り(1+6+12)構造からなり、そのM本を前記芯ストランドの周囲に撚り合わせたM×(1+6+12)構造(ただし、M=5〜7)にすると共に、前記芯ストランドの直径D0と前記側ストランドの直径D1との比D0/D1を1.05〜1.35にしたゴム補強用スチールコードにおいて、スチールコード径Dに対するスチールコードピッチPの比を示すコード撚り倍数P/Dを8.0〜9.0、かつ、スチールコードピッチPに対する側ストランドピッチP1の比P1/Pを0.5以上にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、芯ストランドの周囲に複数本の側ストランドを撚り合わせたマルチストランド構造として、前記芯ストランドをN×(1+6)構造(ただし、N=2〜4)からなる複撚り構造とし、前記側ストランドが3層撚り(1+6+12)構造からなり、そのM本を前記芯ストランドの周囲に撚り合わせたM×(1+6+12)構造(ただし、M=5〜7)にすると共に、前記芯ストランドの直径D0と前記側ストランドの直径D1との比D0/D1を1.05〜1.35にすることで、スチールコード内部に適切な空隙が形成されてスチールコードに対してゴムを十分に浸透させることができる。
【0010】
加えて、スチールコード径Dに対するスチールコードピッチPの比を示すコード撚り倍数P/Dを8.0〜9.0、かつ、スチールコードピッチPに対する側ストランドピッチP1の比P1/Pを0.5以上にすることで、十分な耐疲労性を確保でき、また、撚り減り率が小さくなってスチールコード強力の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のゴム補強用スチールコードを例示する横断面図である。
図2図1のスチールコードの構造を例示する斜視説明図である。
図3】コード(ストランド)のピッチの説明図である。
図4】本発明のスチールコードを埋設したコンベヤベルトの横断面図である。
図5】従来のゴム補強用スチールコードを例示する横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のゴム補強用スチールコードを図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1図2に例示するように、本発明のゴム補強用スチールコード1(以下、スチールコード1という)は、中央部に位置する芯ストランド2とその外周に撚り合わされたM本(図では6本)の側ストランド3とからなり、スチールコード1として、所謂マルチストランド構造になっている。図2では、一部の素線のみを記載している。
【0014】
中央部の芯ストランド2はN本(図では3本)の中央ストランド2a(1+6構造)を撚り合わせた複撚り構造である。即ち、中央ストランド2aは、中央の1本の素線の外周側に6本の素線が配置されて構成されている。
【0015】
芯ストランド2の外周側に配置された側ストランド3は、複数本の素線が層状に撚り合わされた3層撚り構造(1+6+12構造)になっている。即ち、側ストランド3には、中央の1本の素線の外周側に6本の素線が配置された層があり、この層の外周側に12本の素線が配置された層がある。そして、側ストランド3のM本(図では6本)が芯ストランド2の周囲に撚り合わされている。中央部の芯ストランド2の直径D0と外周側の側ストランド3の直径D1との比D0/D1は1.05〜1.35に設定されている。
【0016】
また、スチールコード径Dに対するスチールコードピッチPの比を示すコード撚り倍数P/Dは、8.0〜9.0に設定されている。加えて、スチールコードピッチPに対する側ストランドピッチP1の比P1/Pが0.5以上に設定されている。P1/Pの上限は例えば0.9である。
【0017】
スチールコードピッチPや側ストランドピッチP1とは、図3に示すように、そのコード(ストランド)において、最外周の線材が一撚りする際に要する長手方向長さpである。したがって、スチールコードピッチPは、芯ストランド2を中心にして、側ストランド3が一撚りする際に要するスチールコード1の長手方向長さである。また、側ストランドピッチP1は、側ストランド3を構成する最外周の素線が、中央の素線を中心にして一撚りする際に要する側ストランド3の長手方向長さである。
【0018】
上記のように芯ストランド2を複撚り構造にすると共に、芯ストランド2の直径D0と外周側の側ストランド3の直径D1との比D0/D1を1.05〜1.35とすることにより、スチールコード1の内部に適度な空隙が形成される。そのため、スチールコード1に対するゴムの浸透を良好にできる。上記するD0/D1が1.05未満ではコード内部へのゴムの浸透が不十分になり、1.35超では十分なスチールコード強力が得られなくなる。
【0019】
また、本発明ではコード撚り倍数P/Dを8.0〜9.0に設定することにより、スチールコード1の耐疲労性(耐屈曲性)を損なうことなく、十分なスチールコード強力を確保している。コード撚り倍数P/Dが8.0未満であると十分なスチールコード強力を得ることができない。一方、コード撚り倍数P/Dが9.0超では、十分な耐疲労性を確保することができない。一般的なスチールコードの場合には、コード撚り倍数は7程度であるが、本発明は特殊なコード構造なので、一般的なコード撚り倍数よりも高めにすることにより、十分なスチールコード強力と耐疲労性を得ることが可能になっている。
【0020】
さらに、素線どうしが点接触のように局部的な接触にならないように、スチールコードピッチPに対する側ストランドピッチP1の比P1/Pを0.5以上に設定し、素線どうしの接触面積を極力大きくして、素線に過大なせん断力が生じ難くしている。特に、スチールコード1が屈曲する場合、コード内で最大の曲げ応力が生じる側ストランド3については、無駄な負担をかけない(無駄な応力を生じさせない)ことが望ましい。そこで、上記のとおり、本発明では比P1/Pを0.5以上にしているので、側ストランド3については、従来の一般的なスチールコードに比して、素線どうしが接触している1つの接触部に注目すると、接触面積が大きくなっていて、素線のせん断切れが生じ難くなっている。即ち、素線の破壊モードがせん断切れから延性切れになり、スチールコード強力を向上させ易くなっている。ただし、比P1/Pが過大になると側ストランド3の耐疲労性に悪影響が生じるので、比P1/Pを0.5〜0.9の範囲にすることが好ましい。
【0021】
このように、N×(1+6)+M×(1+6+12)という特殊なコード構造(ただし、N=2〜4、M=5〜7)を採用した本発明のスチールコード1では、コード撚り倍数P/Dを8.0〜9.0、かつ、比P1/Pを0.5以上にすることで、スチールコード1の十分な耐疲労性を確保しつつ、撚り減り率を低減させてスチールコード強力を向上させることが可能になる。撚り減り率とは、スチールコード1を構成する素線の合計強力A、スチールコード強力Bとした場合に、(A−B)/Aを百分率で示した値である。
【0022】
また、芯ストランド2を複撚り構造にすることにより、スチールコード1を構成するスチールモノフィラメントの種類を少なくすることができる。即ち、コード内部に空隙を形成するには、中央部の素線よりも外周側の素線の径を小さくした仕様にする必要がある。図1のスチールコード1では、素線の種類は最大でA〜Eの5種類となるが、中央ストランド2aの素線A、Bをそれぞれ、側ストランド3の素線D、Eとしても使用することにより、素線の種類を3種類にできる。
【0023】
図1のスチールコード1と略同等の強力を有する従来のスチールコード9は、図5にその断面を示すように、芯ストランド10と側ストランド11とが、それぞれ(1+6+12)からなる3層撚り構造となっている。そのため、素線の種類は最大でP〜Uの6種類となる。そして、側ストランド11の素線T、Uとしてそれぞれ、芯ストランド10の素線Q、Rを使用することしかできない。したがって、スチールコード9の素線の種類としては最少でも5種類が必要になる。
【0024】
上記のとおり本発明では、スチールコード1を構成する際に、素線の種類を少なくできるので、スチールコード1の生産性を向上させるには有利である。
【0025】
この発明のスチールコード1は、高張力下で使用されるゴム製品の補強用として使用され、これを適用する製品は特に限定されないが、図4に例示されるようなコンベヤベルト4に好ましく適用される。コンベヤベルト4は、テンションを負担する心体層7が、上カバーゴム5および下カバーゴム6の間に埋設されて構成され、適宜補強層8が埋設される。コンベヤベルト4を張設した際には、心体層7には大きな張力が作用し、ベルト表面に搬送物が投入されると、さらに張力が作用する。そのため、本発明のスチールコード1を多数本ベルト幅方向に並べるとともに、これらスチールコード1をベルト長手方向に延設して心体層7を構成するとよい。
【0026】
これにより心体層7に対するゴムの浸透を良好にすることができる。また、心体層7の耐疲労性を確保しつつ、撚り減り率を低減させて、高いスチールコード強力を確保できるので、同じスチールコード強力を得るには、従来に比してスチールコード径を小さくすることができる。それ故、心体層7を軽量化して、コンベヤベルト4を稼働する際の消費エネルギーを低減させることが可能になる。
【実施例】
【0027】
スチールコードの基本構造を図1に示したように、3×(1+6)+6×(1+6+12)にしたことを共通条件として、表1に示すようにコード仕様を異ならせて、6種類(実施例1〜2、比較例1〜4)の試験サンプルを作製した。試験サンプルはそれぞれのコード仕様のスチールコードをゴムに埋設し、同一の条件により金型内で加硫してスチールコードの上下左右を2mm厚さのゴムで被覆して、断面が正方形で長さ460mmに形成したものである。
【0028】
これら試験サンプルについて、以下のゴム浸透性、耐疲労性を測定し、その結果を表1に示すとおりである。また、各試験サンプルに使用したスチールコードの強力B、スチールコードを構成する素線の合計強力Aおよび撚り減り率(=(A−B)×100%/A)を表1に示す。
【0029】
[ゴム浸透性]
各試験サンプルをオーストラリア規格(AS−1333)による「空気透過性試験方法」に準拠して、試験サンプルの長手方向の一端部から100kPaの空気圧を圧入し、他端部側に透過した空気圧が5kPaになるまでの時間(秒)を測定した。この時間が長いほど耐空気透過性に優れ、スチールコードに対するゴム浸透性が優れていることを示す。表1中の∞は、実質的に空気が試験サンプルの他端部に透過しなかったことを示している。
【0030】
[耐疲労性]
JIS G3535による「耐久試験」に準拠して行ない、試験サンプルが破断するまでの回数を計測した。尚、表1の100万回は、100万回でも破断しなかったことを示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1より、実施例1および2は、比較例1〜3に比して撚り減り率が低減していることが分かる。比較例4は撚り減り率が低いが耐疲労性が不十分である。一方、実施例1および2は、十分なゴム浸透性および耐疲労性が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0033】
1 スチールコード
2 芯ストランド
2a 中央ストランド
3 側ストランド
4 コンベヤベルト
5 上カバーゴム
6 下カバーゴム
7 心体層
8 補強層
9 従来のスチールコード
10 芯ストランド
11 側ストランド
図1
図2
図3
図4
図5