(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸入室、吐出室、斜板室及びシリンダボアが形成されたハウジングと、該ハウジングに回転可能に支持された駆動軸と、該駆動軸の回転によって該斜板室内で回転可能な斜板と、該駆動軸と該斜板との間に設けられ、該駆動軸の回転軸心に直交する方向に対する該斜板の傾斜角度の変更を許容するリンク機構と、該シリンダボアに往復動可能に収納されたピストンと、該斜板の回転により、該傾斜角度に応じたストロークで該ピストンを該シリンダボア内で往復動させる変換機構と、該傾斜角度を変更可能なアクチュエータと、該アクチュエータを制御する制御機構とを備え、
前記アクチュエータは、前記駆動軸と一体回転可能に前記斜板室内に配置され、
該アクチュエータは、該駆動軸に固定される固定体と、前記斜板と連結され、前記回転軸心方向に移動して該固定体に対して移動可能な可動体と、該固定体と該可動体とにより区画され、内部の圧力によって該可動体を移動させる制御圧室とを有し、
前記固定体は、前記可動体の内部に配置されて前記斜板と前記可動体との間に位置し、
前記制御機構は、該可動体を移動可能に該制御圧室内の圧力を変更し、
前記斜板は、前記リンク機構と連結される支点と、前記可動体と連結される作用点とを有し、
前記支点と前記作用点とは前記駆動軸を挟んで位置していることを特徴とする容量可変型斜板式圧縮機。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に従来の容量可変型斜板式圧縮機(以下、圧縮機という。)が開示されている。これらの圧縮機では、ハウジングに吸入室、吐出室、斜板室及び複数のシリンダボアが形成されている。ハウジングには駆動軸が回転可能に支持されている。斜板室内には駆動軸の回転によって回転可能な斜板が設けられている。駆動軸と斜板との間には、斜板の傾斜角度の変更を許容するリンク機構が設けられている。ここで、傾斜角度とは、駆動軸の回転軸心に直交する方向に対する角度である。また、各シリンダボアにはピストンが往復動可能に収納され、圧縮室が形成されている。変換機構は、斜板の回転により、傾斜角度に応じたストロークで各ピストンをシリンダボア内で往復動させるようになっている。また、アクチュエータが傾斜角度を変更可能であり、制御機構がアクチュエータを制御するようになっている。
【0003】
特許文献1の圧縮機では、各シリンダボアは、ハウジングを構成するシリンダブロックに形成されており、斜板の前面側に設けられた一端側シリンダボアと、斜板の後面側に設けられた他端側シリンダボアとからなる。各ピストンは、一端側シリンダボアを往復動する一端側頭部と、この一端側頭部と一体をなし、他端側シリンダボアを往復動する他端側頭部とを有している。
【0004】
この圧縮機では、シリンブロックと共にハウジングを構成するリヤハウジングに圧力調整室が形成されている。また、シリンダブロックには、各シリンダボアの他に、圧力調整室と連通する制御圧室が形成されている。この制御圧室は、他端側シリンダボアと同側、すなわち、斜板の後面側に設けられている。そして、アクチュエータは駆動軸と一体回転不能に制御圧室内に配置されている。アクチュエータは、具体的には、駆動軸の後端部を覆う非回転可動体を有している。非回転可動体の内周面は、駆動軸の後端部を回転摺動可能に支持しているとともに、回転軸心方向に移動できるようになっている。また、非回転可動体の外周面は、制御圧室内を回転軸心方向に摺動する一方、回転軸心周りに摺動しないようになっている。制御圧室内には、非回転可動体を前方に向けて付勢する押圧ばねが設けられている。また、アクチュエータは、斜板と連結され、回転軸心方向に移動可能な可動体を有している。非回転可動体と可動体との間にはスラスト軸受が設けられている。圧力調整室と吐出室との間には、非回転可動体及び可動体をともに回転軸心方向に移動可能に制御圧室内の圧力を変更する圧力制御弁が設けられている。
【0005】
リンク機構は、可動体と、駆動軸に固定され、斜板の一面側に位置するラグアームとを有している。可動体には、回転軸心と直交する方向に延びつつ、外周側から回転軸心に近づく方向に延びる第1長孔が形成されている。また、ラグアームにも、回転軸心と直交する方向に延びつつ、外周側から回転軸心に近づく方向に延びる第2長孔が形成されている。斜板には、後面側に設けられ、他端側シリンダボア側に向かって延びる第1アームと、前面側に設けられ、一端側シリンダボア側に向かって延びる第2アームとからなる。第1長孔に挿通された第1ピンによって、斜板と可動体とが連結され、第1アームは可動体に対して第1ピン周りで揺動可能に支持される。第2長孔に挿通された第2ピンによって、斜板とラグアームとが連結され、第2アームはラグアームに対して第2ピン周りで揺動可能に支持される。これらの第1ピンと第2ピンとは平行に延びている。また、第1、2長孔に対してそれぞれが挿通されることにより、第1ピンと第2ピンとは、斜板室内において、駆動軸を挟んで互いに対向して配置されている。
【0006】
この圧縮機では、圧力調整弁を開制御して吐出室と圧力調整室とを連通させることにより、制御圧室内が斜板室よりも高圧となり、非回転可動体及び可動体が前進する。これにより、可動体が斜板の第1アームを第1ピン周りで揺動させつつ、斜板を押圧する。同時に、ラグアームが斜板の第2アームを第2ピン周りで揺動させる。つまり、可動体は、斜板と可動体との連結箇所である第1ピンの位置を作用点とし、斜板とラグアームとの連結箇所である第2ピンの位置を支点とすることで、斜板を揺動させる。こうして、この圧縮機では、斜板の傾斜角度が大きくなり、ピストンのストロークが大きくなり、圧縮機の1回転当たりの圧縮容量が大きくなる。
【0007】
他方、圧力調整弁を閉制御して吐出室と圧力調整室とを非連通とすれば、制御圧室内が斜板室と同程度に低圧となり、非回転可動体及び可動体が後退する。これにより、斜板の傾斜角度が大きくなる場合と反対に、非回転可動体及び可動体が後進する。これにより、可動体が斜板の第1アームを第1ピン周りで揺動させつつ、斜板を牽引する。同時に、ラグアームが斜板の第2アームを第2ピン周りで揺動させる。こうして、この圧縮機では、斜板の傾斜角度が減少し、ピストンのストロークが減少する。このため、圧縮機の1回転当たりの圧縮容量が小さくなる。
【0008】
また、特許文献2の圧縮機では、アクチュエータは駆動軸と一体回転可能に斜板室内に配置されている。アクチュエータは、具体的には、駆動軸に固定される固定体を有している。固定体内には、回転軸心方向に移動して固定体に対して移動可能な可動体が収納されている。固定体と可動体との間は内部の圧力によって可動体を移動させる制御圧室に区画されている。また、駆動軸には、制御圧室と連通する連絡路が貫設されている。連絡路と吐出室との間には、可動体を固定体に対して回転軸心方向に移動可能に制御圧室内の圧力を変更する圧力制御弁が設けられている。可動体の後端はヒンジ球と当接している。ヒンジ球は斜板の中心部に設けられており、駆動軸に対して斜板を揺動可能に連結している。ヒンジ球の後端には、斜板の傾斜角度を大きくする方向に付勢する押圧ばねが設けられている。
【0009】
リンク機構は、ヒンジ球と、固定体と斜板との間に設けられたアームとを有している。ヒンジ球は、後方に設けられた押圧ばねにより付勢されており、固定体と当接した状態を維持している。
【0010】
一方、アームの前端には、回転軸心と直交する方向に延びる第1ピンが挿通されている。この第1ピンによって、アームと固定体とが連結されており、アームの前端は、固定体に対して第1ピン周りで揺動可能となっている。また、アームの後端にも回転軸心と直交する方向に延びる第2ピンが挿通されている。この第2ピンによって、アームと斜板とが連結されており、アームの後端は、斜板に対して第2ピン周りで揺動可能となっている。つまり、アーム及び第1、2ピンによって、斜板と固定体とが連結されている。
【0011】
この圧縮機では、圧力調整弁を開制御して吐出室と圧力調整室とを連通させることにより、制御圧室内が斜板室よりも高圧となる。これにより、可動体が後退し、押圧ばねの付勢力に抗してヒンジ球を後方側へ押圧する。この際、アームが第1、2ピン周りで揺動する。つまり、この圧縮機では、可動体がヒンジ球を押圧する箇所を作用点とし、斜板と固定体と連結箇所、すなわち、第1、2ピンが挿通されているアームの両端を支点として斜板が揺動する。これにより、斜板の傾斜角度が減少することで、ピストンのストロークが減少する。このため、圧縮機の1回転当たりの圧縮容量が小さくなる。
【0012】
他方、圧力調整弁を閉制御して吐出室と圧力調整室とを非連通とすれば、制御圧室内が斜板室と同程度に低圧となる。これにより、可動体が前進するとともに、押圧ばねの付勢力よりヒンジ球も可動体に追従する。このため、斜板の傾斜角度が減少する場合と反対方向で斜板が揺動し、その傾斜角度が大きくなることで、ピストンのストロークが大きくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、上記のようなアクチュエータを用いた容量可変型斜板式圧縮機においては、容量制御に対してより高い制御性が要求され得る。
【0015】
この点、上記特許文献1記載の圧縮機では、固定体がスラスト軸受を介して可動体を駆動軸の軸心方向に前進させる際、スラスト軸受が変形することで、力を効率良く伝達できなかったり、速やかに伝達できなかったりする恐れがある。このため、この圧縮機では、斜板の傾斜角度を好適に変更させ難く、ピストンのストロークの増減による容量制御が好適に行われないおそれがある。
【0016】
一方、特許文献2記載の圧縮機では、ヒンジ球が斜板の中心部に設けられているため、斜板の傾斜角度を変位させる際の作用点が斜板の中心部近辺に位置する。これにより、この圧縮機では、作用点と支点とが近接して配置されることとなる。このため、この圧縮機では、可動体がヒンジ球を押圧するに当たって、大きな押圧力が必要となる。このため、この圧縮機でも、斜板の傾斜角度を好適に変更させ難く、容量制御を好適に行い難い。
【0017】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、容量制御に対する制御性に優れた圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の容量可変型斜板式圧縮機は、吸入室、吐出室、斜板室及びシリンダボアが形成されたハウジングと、該ハウジングに回転可能に支持された駆動軸と、該駆動軸の回転によって該斜板室内で回転可能な斜板と、該駆動軸と該斜板との間に設けられ、該駆動軸の回転軸心に直交する方向に対する該斜板の傾斜角度の変更を許容するリンク機構と、該シリンダボアに往復動可能に収納されたピストンと、該斜板の回転により、該傾斜角度に応じたストロークで該ピストンを該シリンダボア内で往復動させる変換機構と、該傾斜角度を変更可能なアクチュエータと、該アクチュエータを制御する制御機構とを備え、
前記アクチュエータは、前記駆動軸と一体回転可能に前記斜板室内に配置され、
該アクチュエータは、該駆動軸に固定される固定体と、前記斜板と連結され、前記回転軸心方向に移動して該固定体に対して移動可能な可動体と、該固定体と該可動体とにより区画され、内部の圧力によって該可動体を移動させる制御圧室とを有し、
前記固定体は、前記可動体の内部に配置されて前記斜板と前記可動体との間に位置し、
前記制御機構は、該可動体を移動可能に該制御圧室内の圧力を変更し、
前記斜板は、前記リンク機構と連結される支点と、前記可動体と連結される作用点とを有し、
前記支点と前記作用点とは前記駆動軸を挟んで位置していることを特徴とする
。
【0019】
本発明の圧縮機では、アクチュエータ全体が駆動軸と一体化しつつ斜板室内に配置される。このため、この圧縮機では、内部にスラスト軸受を設ける必要がない。これにより、この圧縮機では、制御圧室内の圧力変化を効率良く、かつ速やかに作用点に伝達することができ、アクチュエータが高い制御性を発揮することができる。
【0020】
また、この圧縮機では、支点と作用点とが駆動軸を挟んで位置することから、支点と作用点との距離を十分に確保することが可能となっている。このため、この圧縮機では、アクチュエータが斜板の傾斜角度を変更させるに当たり、可動体を通じて作用点に付与する力を小さくすることが可能となる。ここで、この圧縮機では、斜板と可動体との連結箇所を作用点とすることで、可動体が作用点に付与した力を斜板に直接伝達させることが可能となる。これらのため、この圧縮機では、アクチュエータが斜板の傾斜角度を好適に変更させ易く、ピストンのストロークの増減による容量制御を好適に行い易い。
【0021】
したがって、本発明の圧縮機は、容量制御に対する制御性に優れている。
【0022】
本発明の圧縮機において、支点は、回転軸心と直交し、リンク機構を揺動可能に支持する第1揺動軸心であり得る。そして、作用点は、第1揺動軸心と平行であり、可動体を摺動可能に支持する作用軸心であることが好ましい
。
【0023】
この場合、支点となる第1揺動軸心と、作用点となる作用軸心とが平行となることで、斜板の傾斜角度を変更する際に、可動体を通じて作用点に付与された力によって、リンク機構が揺動し易くなる。このため、この圧縮機では、アクチュエータによる斜板の傾斜角度の変更をより好適に行い易くなり、容量制御に対する制御性をより向上させることが可能となる。
【0024】
リンク機構はラグアームを有し得る。このラグアームは、一端が回転軸心と直交する第1揺動軸心周りで斜板に揺動可能に支持され、他端が第1揺動軸心と平行な第2揺動軸心周りで駆動軸に揺動可能に支持され得る。そして、斜板は、第1揺動軸心及び第2揺動軸心と平行な作用軸心周りで可動体に揺動可能に支持されていることが好ましい
。
【0025】
この場合、リンク機構を簡素化することで、リンク機構の小型化、ひいては圧縮機の小型化を実現することができる。また、ラグアームの一端が第1揺動軸心周りで斜板に揺動可能に支持され、他端が第1揺動軸心と平行な第2揺動軸心周りで駆動軸に揺動可能に支持されることで、ラグアームが揺動し易くなる。また、第1揺動軸心に加えて第2揺動軸心も作用軸心と平行となることで、可動体を通じて作用点に付与された力によって、ラグアームがより揺動し易くなる。さらに、斜板が作用軸心周りで可動体に揺動可能に支持されていることから、この圧縮機では、可動体から作用点に付与された力によって、斜板は、作用軸心周りで回転しつつ、傾斜角度を変更する。このため、この圧縮機では、作用点に付与する力を小さくしつつ、斜板の傾斜角度の変化量を大きくすることが可能となり、容量制御を好適に行うことができる。
【0026】
ラグアームは、第1揺動軸心を基準として第2揺動軸心とは反対側に延在するウェイト部を有し得る。そして、ウェイト部は、回転軸心周りで回転することにより、斜板に傾斜角度を減少させる方向の力を付与することが好ましい
。
【0027】
圧縮機では、回転する斜板及び可動体を含む回転体に対し、その傾斜角度を減少させる方向に遠心力が作用する。ここで、ウェイト部に作用する遠心力よっても斜板に傾斜角度を減少させる方向の力が付与されることで、斜板は、傾斜角度を減少させる方向へより揺動し易くなる。このため、この圧縮機では、斜板の傾斜角度を減少させるに当たって、可動体から作用点へ付与する力をより小さくすることが可能となる。これにより、この圧縮機では、容量制御に対する制御性を高くできる。
【0028】
斜板は、ラグアームの一端を第1揺動軸心周りで揺動可能に支持するとともに、作用軸心周りで揺動可能な第1部材を有し得る。そして、第1部材は駆動軸を挿通する挿通孔を有する環状をなしていることが好ましい
。
【0029】
この場合、第1部材によって、斜板とラグアームとの組み付けを容易に行うことが可能となる。また、この第1部材の挿通孔に駆動軸を挿通させることで、駆動軸に対して斜板を回転可能に組み付けることも容易となる。
【0030】
また、駆動軸には、ラグアームの他端を第2揺動軸心周りで揺動可能に支持する第2部材が固定されていることが好ましい
。この場合には、第2部材によって、駆動軸とラグアームとの組み付けを容易に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の圧縮機は、容量制御に対する制御性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を具体化した実施例1〜4を図面を参照しつつ説明する。実施例1〜4の圧縮機は、いずれも車両用空調装置の冷凍回路を構成し、車両に搭載されている。
【0034】
(実施例1)
図1及び
図3に示すように、実施例1の圧縮機は、ハウジング1と、駆動軸3と、斜板5と、リンク機構7と、複数のピストン9と、前後で対をなすシュー11a、11bと、アクチュエータ13と、
図2に示す制御機構15とを備えている。
【0035】
図1に示すように、ハウジング1は、圧縮機の前方に位置するフロントハウジング17と、圧縮機の後方に位置するリヤハウジング19と、フロントハウジング17とリヤハウジング19との間に位置する第1シリンダブロック21と第2シリンダブロック23とを有している。
【0036】
フロントハウジング17には、前方に向かってボス17aが形成されている。このボス17a内には、駆動軸3との間に軸封装置25が設けられている。また、フロントハウジング17内には、第1吸入室27a及び第1吐出室29aが形成されている。第1吸入室27aはフロントハウジング17の内周側に位置し、第1吐出室29aはフロントハウジング17の外周側で位置している。
【0037】
リヤハウジング19には、制御機構15が設けられている。また、リヤハウジング19には、第2吸入室27b、第2吐出室29b及び圧力調整室31が形成されている。第2吸入室27bはリヤハウジング19の内周側に位置し、第2吐出室29bはリヤハウジング19の外周側に位置している。圧力調整室31はリヤハウジング19の中心部分に位置している。第1吐出室29aと第2吐出室29bとは、図示しない吐出通路によって接続され、吐出通路には圧縮機の外部に連通する吐出口が形成されている。
【0038】
第1シリンダブロック21と第2シリンダブロック23とにより、斜板室33が形成されている。この斜板室33はハウジング1の略中央に位置している。
【0039】
第1シリンダブロック21には、複数個の第1シリンダボア21aが同心円状に等角度間隔でそれぞれ平行に形成されている。また、第1シリンダブロック21には、駆動軸3を挿通させる第1軸孔21bが形成されている。また、第1シリンダブロック21には、第1軸孔21bより後方に第1軸孔21bと連通して第1軸孔21bと同軸をなす第1凹部21cとが形成されている。第1凹部21c内は斜板室33と連通している。また、第1凹部21cは段状に形成されている。第1凹部21cの前端には、第1スラスト軸受35aが設けられている。さらに、第1シリンダブロック21には、斜板室33と第1吸入室27aとを連通する第1吸入通路37aが形成されている。
【0040】
第2シリンダブロック23にも、第1シリンダブロック21と同様、複数個の第2シリンダボア23aが形成されている。また、第2シリンダブロック23には、駆動軸3を挿通させる第2軸孔23bが形成されている。第2軸孔23bは圧力調整室31と連通している。また、第2シリンダブロック23には、第2軸孔23bより前方に第2軸孔23bと連通して第2軸孔23bと同軸をなす第2凹部23cとが形成されている。第2凹部23cも斜板室33と連通している。第2凹部23cも段状に形成されている。第2凹部23cの後端には、第2スラスト軸受35bが設けられている。さらに、第2シリンダブロック23には、斜板室33と第2吸入室27bとを連通する第2吸入通路37bが形成されている。
【0041】
また、斜板室33は、第2シリンダブロック23に形成された吸入口330を介して、図示しない蒸発器と接続されている。
【0042】
フロントハウジング17と第1シリンダブロック21との間には、第1バルブプレート39が設けられている。第1バルブプレート39には、第1シリンダボア21aと同数の吸入ポート39b及び吐出ポート39aが形成されている。各吸入ポート39bには、それぞれ図示しない吸入弁機構が設けられている。各吸入ポート39bにより、各第1シリンダボア21aは第1吸入室27aと連通している。各吐出ポート39aには、それぞれ図示しない吐出弁機構が設けられている。各吐出ポート39aにより、各第1シリンダボア21aは第1吐出室29aと連通している。また、第1バルブプレート39には、連通孔39cが形成されている。第1吸入室27aは、連通孔39cにより、第1吸入通路37aを通じて斜板室33と連通している。
【0043】
リヤハウジング19と第2シリンダブロック23との間には、第2バルブプレート41が設けられている。第1バルブプレート39と同様、第2バルブプレート41にも、第2シリンダボア23aと同数の吸入ポート41b及び吐出ポート41aが形成されている。各吸入ポート41bには、それぞれ図示しない吸入弁機構が設けられている。各吸入ポート41bにより、各第2シリンダボア23aは第2吸入室27bと連通している。各吐出ポート41aには、それぞれ図示しない吐出弁機構が設けられている。各吐出ポート41aにより、各第2シリンダボア23aは第2吐出室29bと連通している。また、第2バルブプレート41には、連通孔41cが形成されている。第2吸入室27bは、連通孔41cにより、第2吸入通路37bを通じて斜板室33と連通している。
【0044】
第1、2吸入通路37a、37bにより、第1、2吸入室27a、27bと斜板室33とが互いに連通している。このため、第1、2吸入室27a、27b内と斜板室33内とは、圧力がほぼ等しくなっている(より厳密には、ブローバイガスの影響により、斜板室33内は、第1、2吸入室27a、27b内よりも僅かに高圧となる。)。そして、斜板室33には、吸入口330を通じて蒸発器を経た冷媒ガスが流入することから、斜板室33内及び第1、2吸入室27a、27b内の各圧力は、第1、2吐出室29a、29b内よりも低圧であり、低圧室とされている。
【0045】
駆動軸3には、斜板5とアクチュエータ13とフランジ3aとがそれぞれ取り付けられている。駆動軸3は、ボス17aから後方に向かって挿通されており、第1、2シリンダブロック21、23内において、第1、2軸孔21b、23bに挿通されている。これにより、駆動軸3の前端はボス17a内に位置しており、後端は圧力調整室31内に位置している。また、駆動軸3は、第1、2軸孔21b、23bにより、ハウジング1内において、回転軸心O周りで回転可能に軸支されている。そして、斜板5とアクチュエータ13とフランジ3aとがそれぞれ斜板室33内に配置されている。フランジ3aは第1スラスト軸受35aとアクチュエータ13との間、より詳細には、第1スラスト軸受35aと、後述する可動体13bとの間に配置されている。このフランジ3aにより、第1スラスト軸受35aと可動体13bとの接触が防止されている。なお、第1、2軸孔21b、23bと駆動軸3との間にラジアル軸受を配置しても良い。
【0046】
また、駆動軸3の後方側には、支持部材43が圧入されている。支持部材43が第2部材である。この支持部材43には、第2スラスト軸受35bと当接するフランジ43aが形成されているとともに、後述する第2ピン47bが挿通される取付部43bが形成されている。さらに、駆動軸3内には、後端から前方に向かって回転軸心O方向に延びる軸路3bと、軸路3bの前端から径方向に延びて駆動軸3の外周面に開く径路3cとが形成されている。軸路3b及び径路3cが連絡路である。軸路3bの後端は圧力調整室31、すなわち低圧室に開いている。一方、径路3cは、後述する制御圧室13cに開いている。
【0047】
斜板5は環状の平板形状をなしており、前面5aと後面5bとを有している。斜板5の前面5aは、斜板室33内において圧縮機の前方に面している。また、斜板5の後面5bは、斜板室33内において圧縮機の後方に面している。この斜板5はリングプレート45に固定されている。リングプレート45が第1部材である。このリングプレート45は環状の平板形状に形成されており、中心部に挿通孔45aが形成されている。この挿通孔45aに駆動軸3が挿通されることにより、斜板5は駆動軸3に取り付けられ、斜板室33内において第2シリンダボア23a側の位置、つまり、斜板室33における後方寄りの位置に配置されている。
【0048】
リンク機構7はラグアーム49を有している。ラグアーム49は、斜板室33内において、斜板5よりも後方に配置されており、斜板5と支持部材43との間に位置している。ラグアーム49は、一端側から他端側に向かって略L字形状となるように形成されている。ラグアーム49は、
図3に示すように、回転軸心Oに対する斜板5の傾斜角度が最小になった時に支持部材43のフランジ43aと当接するようになっている。このため、この圧縮機では、ラグアーム49によって、斜板5の傾斜角度を最小値に維持することが可能となっている。また、ラグアーム49の一端側には、ウェイト部49aが形成されている。ウェイト部49は、アクチュエータ13の周方向におよそ半周にわたって延びている。なお、ウェイト部49aの形状は適宜設計することが可能である。
【0049】
ラグアーム49の一端側は、第1ピン47aによってリングプレート45の上端側と接続されている。これにより、ラグアーム49の一端側は、第1ピン47aの軸心を第1揺動軸心M1として、リングプレート45の一端側、すなわち斜板5に対して、第1揺動軸心M1周りで揺動可能に支持されている。この第1揺動軸心M1は、駆動軸3の回転軸心Oと直交する方向に延びている。
【0050】
ラグアーム49の他端側は、第2ピン47bによって支持部材43と接続されている。これにより、ラグアーム49の他端側は、第2ピン47bの軸心を第2揺動軸心M2として、支持部材43、すなわち駆動軸3に対して、第2揺動軸心M2周りで揺動可能に支持されている。この第2揺動軸心M2は第1揺動軸心M1と平行に延びている。これらのラグアーム49、第1、2ピン47a、47bが本発明におけるリンク機構7に相当している。
【0051】
この圧縮機では、斜板5と駆動軸3とがリンク機構7によって接続されることにより、斜板5は駆動軸3と共に回転することが可能となっている。また、ラグアーム49の両端は、それぞれ第1揺動軸心M1及び第2揺動軸心M2周りで揺動可能となっている。これにより、斜板5は、駆動軸3の回転軸心Oに対する自身の傾斜角度を変更するに当たって、リングプレート45の一端側との接続箇所である第1ピン47a、すなわち、第1揺動軸心M1を揺動の支点M1とすることが可能となっている(以下、説明を容易にするため、第1揺動軸心と支点とについて、共に符号M1を付す。)。
【0052】
ここで、ウェイト部49aは、ラグアーム49の一端側、つまり、第1揺動軸心M1を基準として第2揺動軸心M2とは反対側に延在して設けられている。このため、ラグアーム49が第1ピン47aによってリングプレート45に支持されることで、ウェイト部49aはリングプレート45の溝部45bを通って、リングプレート45の前面、つまり、斜板5の前面5a側に位置する。そして、回転軸心O周りに回転することにより発生する遠心力が斜板5の前面5a側でウェイト部49aにも作用することとなる。
【0053】
各ピストン9は、それぞれ前端側に第1ピストンヘッド9aを有し、後端側に第2ピストンヘッド9bを有している。第1ピストンヘッド9aは第1シリンダボア21a内を往復動可能に収納され、第1圧縮室21dを形成している。第2ピストンヘッド9bは第2シリンダボア23a内を往復動可能に収納され、第2圧縮室23dを形成している。また、各ピストン9には凹部9cが形成されている。各凹部9c内には、半球状のシュー11a、11bがそれぞれ設けられている。これらのシュー11a、11bによって斜板5の回転がピストン9の往復動に変換されるようになっている。シュー11a、11bが本発明における変換機構に相当している。こうして、斜板5の傾斜角度に応じたストロークで、第1、2ピストンヘッド9a、9bがそれぞれ第1、2シリンダボア21a、23a内を往復動することが可能となっている。
【0054】
アクチュエータ13は、斜板室33内に配置されており、斜板5よりも前方側に位置し、第1凹部21c内に進入することが可能となっている。アクチュエータ13は、固定体13aと、可動体13bとを有している。固定体13aは、円盤状に形成されており、駆動軸3に固定されることで、駆動軸3と共に回転することのみが可能となっている。
固定体13aの外周には、Oリングが取り付けられている。
【0055】
可動体13bは有底の円筒状に形成されており、駆動軸3が挿通される挿通孔130aと、可動体13bの前方から後方に向かって延びる本体部130bと、本体部130bの後端に形成された取付部130cとを有している。また、可動体13bは、固定体13aと比較して肉薄に形成されている。さらに、可動体13b外径は、第1凹部21cの壁面と接触しないように形成されているものの、ほぼ第1凹部21cと同程度の大きさとなっている。この可動体13bは、第1スラスト軸受35aと斜板5との間に位置している。
【0056】
また、可動体13bは、挿通孔130aを通じて本体部130b内に駆動軸3が挿通されている。さらに、本体部130b内には、固定体13aが摺動可能に配置される。これにより、可動体13bは、駆動軸3と共に回転可能であるとともに、斜板室33内において、駆動軸3の回転軸心O方向に移動することが可能となっている。また、駆動軸3が挿通されることにより、この可動体13bは、斜板5を挟んでリンク機構7と対向している。挿通孔130a内にも、Oリングが取り付けられている。こうして、アクチュエータ13には駆動軸3が挿通されており、回転軸心O周りで駆動軸3と一体で回転することが可能となっている。
【0057】
可動体13bの取付部130cには、リングプレート45の下端側が第3ピン47cによって接続されている。これにより、リングプレート45の下端側、すなわち、斜板5は、第3ピン47cの軸心を作用軸心M3として、作用動軸心M3周りで可動体13bに揺動可能に支持されている。この作用軸心M3は、第1、2揺動軸心M1、M2と平行に延びている。また、第1揺動軸心M1と作用軸心M3とは、挿通孔45a、つまり、駆動軸3を挟んで、リングプレート45の上端と下端とにそれぞれ位置している。こうして、可動体13bは斜板5と連結された状態となっている。可動体13bは、斜板5の傾斜角度が最大になった時にフランジ3aと当接するようになっている。このため、この圧縮機では、可動体13bによって、斜板5の傾斜角度を最大値に維持することが可能となっている。そして、斜板5は、取付部130cとの接続箇所である第3ピン47c、すなわち、作用軸心M3を作用点M3とし、上記の第1揺動軸心M1を支点M1として、駆動軸3の回転軸心Oに対する自身の傾斜角度を変更することが可能となっている(以下、説明を容易にするため、作用軸心と作用点M3とについて、共に符号M3を付す。)。
【0058】
固定体13aと可動体13bとの間に制御圧室13cが区画されている。制御圧室13c内には径路3cが開いており、径路3c及び軸路3bを通じて、制御圧室13cは圧力調整室31と連通している。
【0059】
図2に示すように、制御機構15は、制御通路としての抽気通路15a及び給気通路15bと、制御弁15cと、オリフィス15dとを有している。
【0060】
抽気通路15aは、圧力調整室31と第2吸入室27bとに接続されている。圧力調整室31は、軸路3b及び径路3cを通じて制御圧室13cと連通していることから、この抽気通路15aによって、制御圧室13cと第2吸入室27bとは、互いに連通した状態となっている。また、抽気通路15aには、オリフィス15dが設けられており、抽気通路15a内を流通する冷媒ガスの流量が絞られている。
【0061】
給気通路15bは、圧力調整室31と第2吐出室29bとに接続されている。これにより、上記の抽気通路15aと同様、給気通路15b、軸路3b及び径路3cを通じて、制御圧室13cと第2吐出室29bとは、互いに連通した状態となっている。つまり、軸路3b及び径路3は、制御通路としての抽気通路15a及び給気通路15bの一部を構成している。
【0062】
制御弁15cは給気通路15bに設けられている。この制御弁15cは、第2吸入室27b内の圧力に基づき給気通路15bの開度を調整することが可能となっており、給気通路15bを流通する冷媒ガスの流量を調整することが可能となっている。制御弁15cには公用品を採用することができる。
【0063】
駆動軸3の先端にはねじ部3dが形成されている。駆動軸3は、ねじ部3dを介して図示しないプーリ又は電磁クラッチと接続されている。これらのプーリ又は電磁クラッチのプーリには車両のエンジンによって駆動される図示しないベルトが巻き掛けられている。
【0064】
吸入口330には蒸発器に繋がる配管が接続され、吐出口には図示しない凝縮器に繋がる配管が接続される。圧縮機、蒸発器、膨張弁、凝縮器等によって車両用空調装置の冷凍回路が構成されている。
【0065】
以上のように構成された圧縮機では、駆動軸3が回転することにより、斜板5が回転し、各ピストン9が第1、2シリンダボア21a、23a内を往復動する。このため、第1、2圧縮室21d、23dがピストンストロークに応じて容積変化を生じる。このため、蒸発器から吸入口330によって斜板室33に吸入された冷媒ガスは、第1、2吸入室27a、27bを経て各第1、2圧縮室21d、23d内で圧縮され、第1、2吐出室29a、29bに吐出される。第1、2吐出室29a、29b内の冷媒ガスは吐出口から凝縮器に吐出される。
【0066】
この間、斜板5、リングプレート45、ラグアーム49及び第1ピン47aからなる回転体には斜板5の傾斜角度を小さくする遠心力が作用する。そして、斜板5の傾斜角度が変更されれば、ピストン9のストロークの増減による容量制御を行うことが可能である。
【0067】
具体的には、制御機構15において、
図2に示す制御弁15cが給気通路15bを流通する冷媒ガスの流量を減少させれば、圧力調整室31内の冷媒ガスが抽気通路15aを経て第2吸入室27bに多く流出する。このため、制御圧室13cの圧力が第2吸入室27bとほぼ等しくなる。このため、回転体に作用する遠心力によって可動体13bが後方に移動することで、制御圧室13cが縮小され、斜板5の傾斜角度が小さくなる。
【0068】
つまり、
図3に示すように、制御圧室13c内の圧力が低下し、制御圧室13c内の圧力と斜板室33内の圧力との差圧が小さくなることで、回転体に作用する遠心力によって、斜板室33内において可動体13bが駆動軸3の軸方向に沿って後方に向かって移動する。これにより、可動体13bは、作用点M3である作用軸心M3において、取付部130cを通じてリングプレート45の下端側、すなわち、斜板5の下端側を斜板室33の後方側に押圧する状態となる。これにより、斜板5の下端側が作用軸心M3周りで反時計回り方向に揺動する。また、ラグアーム49の一端が第1揺動軸心M1周りで時計回り方向に揺動するとともに、ラグアーム49の他端が第2揺動軸心M2周りで時計回り方向に揺動する。このため、ラグアーム49が支持部材43のフランジ43aに接近する。これらにより、斜板5は、下端側に位置する作用軸心M3を作用点M3とし、上端側に位置する第1揺動軸心M1を支点M1として揺動する。このため、駆動軸3の回転軸心Oに対する斜板5の傾斜角度が減少し、ピストン9のストロークが減少することで、圧縮機の1回転当たりの吸入及び吐出容量が小さくなる。なお、
図3に示す斜板5の傾斜角度がこの圧縮機における最小傾斜角度である。
【0069】
ここで、この圧縮機では、ウェイト部49aに作用した遠心力も斜板5に付与される。このため、この圧縮機では、斜板5が傾斜角度を減少させる方向に変位し易くなっている。また、可動体13bは、駆動軸3の軸方向に沿って後方に移動することで、その後端がウェイト部49aの内側に位置する。これにより、この圧縮機では、斜板5の傾斜角度が減少した際、可動体13bの後端のおよそ半分がウェイト部49aによって覆われた状態となる。
【0070】
一方、
図2に示す制御弁15cが給気通路15bを流通する冷媒ガスの流量を増大させれば、圧縮容量を小さくする場合とは反対に、第2吐出室29b内の冷媒ガスが給気通路15bを経て圧力調整室31内に多く流入する。このため、制御圧室13cの圧力が第2吐出室29bとほぼ等しくなる。このため、回転体に作用する遠心力に抗してアクチュエータ13の可動体13bが前方に移動することで、制御圧室13cが拡大され、斜板5の傾斜角度が大きくなる。
【0071】
つまり、
図1に示すように、制御圧室13c内の圧力が斜板室33内の圧力よりも高くなることで、斜板室33内において可動体13bが駆動軸3の軸方向に沿って前方に向かって移動する。これにより、可動体13bは、作用軸心M3において、取付部130cを通じて斜板5の下端側を斜板室33の前方側へ牽引する。これにより、斜板5の下端側が作用軸心M3周りで時計回り方向に揺動する。また、ラグアーム49の一端が第1揺動軸心M1周りで反時計回り方向に揺動するとともに、ラグアーム49の他端が第2揺動軸心M2周りで反時計回り方向に揺動する。このため、ラグアーム49が支持部材43のフランジ43aから離間する。これらにより、斜板5は、作用軸心M3及び第1揺動軸心M1をそれぞれ作用点M3及び支点M1とし、上述の傾斜角度が小さくなる場合と反対方向に揺動する。このため、駆動軸3の回転軸心Oに対する斜板5の傾斜角度が増大し、ピストン9のストロークが増大することで、圧縮機の1回転当たりの吸入及び吐出容量が大きくなる。なお、
図1に示す斜板5の傾斜角度がこの圧縮機における最大傾斜角度である。
【0072】
この圧縮機では、第1揺動軸心M1となる第1ピン47aと、作用軸心M3となる第3ピン47cとがリングプレート45の上端と下端とにそれぞれ位置していることにより、斜板5は、作用軸心M3及び第1揺動軸心M1が設けられた位置で、自身の傾斜角度を変更させる際の支点M1と作用点M3とをそれぞれ有している。そして、これらの作用軸心M3と第1揺動軸心M1とは、斜板5において、駆動軸3を挟んで位置している。このため、この圧縮機では、作用軸心M3と第1揺動軸心M1との距離を十分に確保することが可能となっている。このため、この圧縮機では、アクチュエータ13が斜板5の傾斜角度を変更させるに当たり、可動体13bを通じて作用軸心M3に付与する牽引力や押圧力を小さくすることが可能となっている。ここで、この圧縮機では、斜板5と可動体13bの取付部130cとの連結箇所を作用点M3とすることで、可動体13bが作用軸心M3に付与した牽引力や押圧力を斜板5に直接伝達させることが可能となっている。
【0073】
また、この圧縮機では、第1揺動軸心M1と、作用軸心M3とが平行であるだけでなく、作用軸心M3及び第1揺動軸心M1は、第2揺動軸心M2と平行である。これらのため、この圧縮機では、斜板5の傾斜角度を変更する際に、可動体13bを通じて作用軸心M3に付与された牽引力や押圧力によって、リンク機構7が揺動し易くなっている。
【0074】
さらに、この圧縮機では、ラグアーム49、第1、2ピン47a、47bによってリンク機構7が構成されている。そして、ラグアーム49の一端が第1ピン47aによって第1揺動軸心M1周りで斜板5の上端側に揺動可能に支持されており、ラグアーム49の他端が第2ピン47bによって第2揺動軸心M2周りで駆動軸3に揺動可能に支持されている。
【0075】
これにより、この圧縮機では、リンク機構7を簡素化することで、リンク機構7の小型化、ひいては圧縮機の小型化を実現している。また、斜板5が作用軸心M3周りで可動体13bの取付部130cに摺動可能に支持されていることから、この圧縮機では、可動体13bから作用軸心M3に付与された牽引力や押圧力によって、斜板5は、作用軸心M3周りで回転しつつ、その傾斜角度を変更することとなる。このため、この圧縮機では、作用軸心M3に付与する牽引力や押圧力を小さくしつつ、斜板5の傾斜角度の変化量を大きくすることが可能となっている。
【0076】
また、ラグアーム49は、第1揺動軸心M1を基準として第2揺動軸心M2とは反対側に延在するウェイト部49aを有している。そして、このウェイト部49aは、回転軸心O周りで回転することにより、斜板5に傾斜角度を減少させる方向の力を付与している。
【0077】
このため、この圧縮機では、上記の回転体に作用する遠心力の他に、ウェイト部49aに作用する遠心力によっても斜板5に傾斜角度を減少させる方向の力が付与される。これにより、斜板5は傾斜角度を減少させる方向へ揺動し易くなり、この圧縮機では、斜板5の傾斜角度を減少させるに当たって、可動体13bから作用軸心M3へ付与する押圧力を小さくすることが可能となっている。また、ウェイト部49aは、アクチュエータ13の周方向におよそ半周にわたって延びることで、可動体13bが駆動軸3の軸方向で後方に移動した際に、その後端のおよそ半分を覆うように形成されている。これにより、この圧縮機では、ウェイト部49aの存在により、可動体13bの移動範囲が制限されることがない。
【0078】
これらにより、この圧縮機では、アクチュエータ13が斜板5の傾斜角度を好適に変更させ易く、ピストン9のストロークの増減による容量制御を好適に行い易くなっている。
【0079】
また、この圧縮機では、アクチュエータ13
の全体が駆動軸3と一体化しつつ斜板室33内に配置されている。このため、この圧縮機では、内部にスラスト軸受を設ける必要がない。これにより、この圧縮機では、
制御圧室13c内の圧力変化を効率良く、かつ速やかに作用点M3に伝達することができ、アクチュエータ13が高い制御性を発揮する。
【0080】
したがって、実施例1の圧縮機は、容量制御に対する制御性に優れている。
【0081】
また、斜板5にはリングプレート45が取り付けられており、駆動軸3には支持部材43が取り付けられている。これらにより、この圧縮機では、斜板5とラグアーム49との組み付けと、駆動軸3とラグアーム49との組み付けとをそれぞれ容易に行うことが可能となっている。さらに、この圧縮機では、リングプレート45の挿通孔45aに駆動軸3を挿通させることで、駆動軸3に対して斜板5を回転可能に組み付けることも容易となっている。
【0082】
また、この圧縮機では、制御機構15において、抽気通路15aにより制御圧室13cと第2吸入室27bとが連通されており、制御圧室13cと第2吐出室29bとは給気通路15bによって連通されている。そして、制御弁15cにより、給気通路15bの開度を調整することが可能となっている。これらのため、この圧縮機では、第2吐出室29b内の高圧によって制御圧室13c内を迅速に高圧な状態とし、迅速に圧縮容量を増大させることが可能となっている。
【0083】
さらに、この圧縮機では、斜板室33を第1、2吸入室27a、27bまでの冷媒ガスの経路として利用することで、マフラ効果を期待できることから、冷媒ガスの吸入脈動を低減することで、圧縮機の騒音低下を図ることができる。
【0084】
(実施例2)
実施例2の圧縮機は、実施例1の圧縮機における制御機構15に換えて、
図4に示す制御機構16を備えている。この制御機構16は、制御通路としての抽気通路16a及び給気通路16bと、制御弁16cと、オリフィス16dとを有している。
【0085】
抽気通路16aは、圧力調整室31と第2吸入室27bとに接続されている。これにより、この抽気通路16aによって、制御圧室13cと第2吸入室27bとは、互いに連通した状態となっている。給気通路16bは、圧力調整室31と第2吐出室29bとに接続されており、制御圧室13c及び圧力調整室31と、第2吐出室29bとを連通させている。この給気通路16bには、オリフィス16dが設けられており、給気通路16b内を流通する冷媒ガスの流量が絞られている。
【0086】
制御弁16cは抽気通路16aに設けられている。この制御弁16cは、第2吸入室27b内の圧力に基づき抽気通路16aの開度を調整することが可能となっており、抽気通路16aを流通する冷媒ガスの流量を調整することが可能となっている。上記の制御弁15c同様、制御弁
16cについても公用品を採用することができる。また、軸路3b及び径路3は、抽気通路16a及び給気通路16bの一部を構成している。この圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0087】
この圧縮機では、制御機構16において、制御弁16cが抽気通路16aを流通する冷媒ガスの流量を減少させれば、第2吐出室29b内の冷媒ガスが給気通路16b及びオリフィス16dを経て圧力調整室31内に貯留され易くなる。このため、制御圧室13cの圧力が第2吐出室29bとほぼ等しくなる。このため、回転体に作用する遠心力に抗してアクチュエータ13の可動体13bが前方に移動することで、制御圧室13cが拡大され、斜板5の傾斜角度が大きくなる。
【0088】
このため、実施例1の圧縮機と同様、この圧縮機においても、斜板5の傾斜角度が大きくなり、ピストン9のストロークが増大することで、圧縮機の1回転当たりの吸入及び吐出容量が大きくなる(
図1参照)。
【0089】
一方、
図4に示す制御弁16cが抽気通路16aを流通する冷媒ガスの流量を増大させれば、第2吐出室29b内の冷媒ガスが給気通路16b及びオリフィス16dを経て圧力調整室31内に貯留され難くなる。このため、制御圧室13cの圧力が第2吸入室27bとほぼ等しくなる。このため、回転体に作用する遠心力によって可動体13bが後方に移動することで、制御圧室13cが縮小されるため、斜板5の傾斜角度が小さくなる。
【0090】
このため、この圧縮機では、斜板5の傾斜角度が小さくなり、ピストン9のストロークが減少することで、圧縮機の1回転当たりの吸入及び吐出容量が小さくなる(
図3参照)。
【0091】
これらのように、この圧縮機では、制御機構16において、制御弁16cにより、抽気通路16aの開度を調整することが可能となっている。このため、この圧縮機では、第2吸入室27b内の低圧によって制御圧室13cを緩やかに低圧にし、車両の運転フィーリングを好適に保つことが可能となっている。この圧縮機における他の作用は、実施例1の圧縮機と同様である。
【0092】
(実施例3)
図5及び
図6に示すように、実施例3の圧縮機は、実施例1の圧縮機におけるハウジング1及びピストン9に換えて、ハウジング10及びピストン90を備えている。
【0093】
ハウジング10は、フロントハウジング18と、実施例1と同様のリヤハウジング19と、実施例1と同様の第2シリンダブロック23とを有している。フロントハウジング18には、前方に向かってボス18aが形成されている他、凹部18bが形成されている。ボス18a内には、軸封装置25が設けられている。フロントハウジング18には、実施例1のフロントハウジング17と異なり、第1吸入室27a及び第1吐出室29aが形成されていない。
【0094】
また、この圧縮機では、フロントハウジング18と第2シリンダブロック23とにより、斜板室33が形成されている。この斜板室33はハウジング10の略中央に位置しており、第2吸入通路37bによって第2吸入室27bと連通している。また、第1スラスト軸受35aは、フロントハウジング18の凹部18b内に配置されている。
【0095】
ピストン90は、実施例1のピストン9と異なり、後端側にピストンヘッド9bのみを有している。ピストン90における他の構成及びこの圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様である。なお、実施例3では、説明を容易にするため、実施例1における第2シリンダボア23a、第2圧縮室23d、第2吸入室27b及び第2吐出室29bについて、それぞれ、シリンダボア23a、圧縮室23d、吸入室27b及び吐出室29bと読み替えて説明する。
【0096】
この圧縮機では、駆動軸3が回転することにより、斜板5が回転し、各ピストン90がシリンダボア23a内を往復動する。このため、圧縮室23dがピストンストロークに応じて容積変化を生じる。このため、蒸発器から吸入口330によって斜板室33に吸入された冷媒ガスは、吸入室27bを経て各圧縮室23d内で圧縮され、吐出室29bに吐出される。吐出室29b内の冷媒ガスは図示しない吐出口から凝縮器に吐出される。
【0097】
また、この圧縮機においても、実施例1の圧縮機と同様、斜板5の傾斜角度を変更して、ピストン90のストロークの増減による容量制御を行うことが可能である。
【0098】
図6に示すように、制御圧室13c内の圧力と斜板室33内の圧力との差圧が小さくなることで、回転体としての斜板5、リングプレート45、ラグアーム49及び第1ピン47aに作用する遠心力により、斜板室33内において可動体13bが駆動軸3の軸方向に沿って後方に移動する。このため、可動体13bは斜板5の下端側を斜板室33の後方へ押圧する状態となる。このため、実施例1と同様、斜板5は作用軸心M3を作用点M3とし、第1揺動軸心M1を支点M1として揺動する。これにより、斜板5の傾斜角度が減少し、ピストン90のストロークが減少すれば、圧縮機の1回転当たりの吸入及び吐出容量が小さくなる。なお、
図6に示す斜板5の傾斜角度がこの圧縮機における最小傾斜角度である。
【0099】
図5に示すように、制御圧室13c内の圧力が斜板室33の圧力よりも高くなることで、回転体に作用する遠心力に抗して、斜板室33内において可動体13bが駆動軸3の軸方向に沿って前方に移動する。このため、可動体13bは斜板5の下端側を斜板室33の前方へ牽引する。このため、作用軸心M3及び第1揺動軸心M1をそれぞれ作用点M3及び支点M1として、斜板5は上述の傾斜角度が小さくなる場合と反対方向で揺動する。これにより、斜板5の傾斜角度が増大し、ピストン90のストロークが増大すれば、圧縮機の1回転当たりの吸入及び吐出容量が大きくなる。なお、
図5に示す斜板5の傾斜角度がこの圧縮機における最大傾斜角度である。
【0100】
この圧縮機は、第1シリンダブロック21等を有していないことから、実施例1の圧縮機と比較して構成がより簡素化されている。このため、この圧縮機は、より一層の小型化を実現している。この圧縮機における他の作用は、実施例1の圧縮機と同様である。
【0101】
(実施例4)
実施例4の圧縮機は、実施例3の圧縮機に対して、
図4に示す制御機構16を採用している。この圧縮機における作用は、実施例2、3の圧縮機と同様である。
【0102】
以上において、本発明を実施例1〜4に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜4に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0103】
例えば、実施例1〜4の圧縮機では、斜板室33を介して第1、2吸入室27a、27bに冷媒ガスを吸入するように構成しているが、これに換えて、吸入口を介して配管から第1、2吸入室27a、27bに直接冷媒ガスを吸入するように構成しても良い。この場合、圧縮機では、第1、2吸入室27a、27bと斜板室33とを連通させて、斜板室33が低圧室となるように構成される。
【0104】
また、実施例1〜4の圧縮機において、圧力調整室31を設けずに構成しても良い。