特許第6028554号(P6028554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028554
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】焼結鉱の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/16 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   C22B1/16 N
   C22B1/16 K
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-270712(P2012-270712)
(22)【出願日】2012年12月11日
(65)【公開番号】特開2014-114494(P2014-114494A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 潤
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−143580(JP,A)
【文献】 特開2005−187839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00−61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロマイト、石灰石、鉄鉱石、粉コークス、硅石及び返鉱含む原料を用いる焼結鉱の製造方法であって、
ドロマイトを粒径1mm以下に粒度調整する工程と、
前記粒度調整されたドロマイトと石灰石の合計の質量に対して、ドロマイトの質量の比が、0.6以下になるように、前記原料のうちのドロマイトと石灰石を造粒する工程と、
前記造粒したドロマイトと石灰石の造粒物を鉄鉱石、粉コークス、硅石及び返鉱と混合し、造粒して配合原料を製造する工程と、
前記配合原料を焼成して焼結鉱を製造する工程を有することを特徴とする焼結鉱の製造方法。
【請求項2】
前記ドロマイトが、ドロマイト及び軽焼ドロマイトの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の焼結鉱の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結鉱の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大型製鉄所においては、焼結鉱は、高炉の酸化鉄原料の70%〜95%を占めている。そのため、焼結鉱の品質は、高炉操業に大きな影響を与える。
焼結鉱に含まれるSiOは、その含有量が多くなると高炉のスラグ量が増加し、還元剤比の増加をもたらし、ひいては、高炉の生産性を低下させる。したがって、焼結鉱に含まれるSiOは、ある程度少ないことが好ましい。
【0003】
高炉のスラグに含まれるMgOは、スラグの脱硫性を高め又スラグ流動性を良くすることより、ある程度、含有することが望まれる。したがって、焼結鉱に含まれるMgO成分もある程度、含有されることが好ましい。
【0004】
一方、焼結鉱に含まれるSiO及びMgOは、焼結鉱の品質に影響を与える。焼結鉱に含まれるSiOを減少させると、焼結鉱の強度及び熱間性状(RDI)は悪化する。その原因は、焼結鉱に含まれるSiOを減少させると焼結鉱に含まれるCaOも減少せざるを得ないからである。即ち、高炉のスラグは、その流動性確保のためスラグ塩基度(CaO/SiO)を1.20〜1.30に維持する必要がある。そこで、焼結鉱の塩基度(CaO/SiO)も、高炉での焼結鉱の使用割合にもよるが、1.5〜2.0程度に維持する必要がある。焼結鉱に含まれるSiOを減少させれば、焼結鉱に含まれるCaOも減少させざるを得ない。焼結鉱に含まれるSiO及びCaOが減少すると、焼結鉱の焼成時の融液が減少し、焼結鉱の強度及び熱間性状(RDI)が悪化することとなる。
【0005】
焼結鉱のSiOの減少に対して、焼結鉱のMgOを増加させる対応策が検討されてきた。CaOとMgOを含有するドロマイト(CaO・MgO系副原料)の使用である。ところが、ドロマイトは、焼結鉱の焼成過程で、酸化鉄(Fe)との同化性が悪いという問題ある。即ち、ドロマイトが未反応のまま焼結鉱中に残留し、焼結の強度及び歩留が低下するという問題がある。
【0006】
焼結生産率に応じて、ドロマイトの使用を使い分ける発明がある。即ち、(1)焼結生産率が高い場合には、SiO2・MgO系副原料を配合し、CaO・MgO系副原料を配合しない(2)焼結生産率が中程度の場合は、SiO2・MgO系副原料を配合し、かつ、CaO・MgO系副原料も配合する(3)焼結生産率が低い場合には、CaO・MgO系副原料を配合し、SiO2・MgO系副原料を配合しない発明の記載がある(特許文献1)。
【0007】
ドロマイトを配合した焼結原料を、攪拌羽根を内蔵した混合機(例えばアイリッヒミキサー)で混合した後、上記混合原料を全装入原料の少なくとも一部として焼結する。前記混合機で混合する焼結原料の30重量%以上を粒径0.5mm以下とすれば、効果を一層高めることができるとする発明がある(特許文献2)。
【0008】
粒径0.25mm〜1.0mmの範囲の粒子が30重量%を超えるドロマイトを焼結原料に配合し、混合した後、上記混合原料を全装入原料の少なくとも一部として焼結する。混合機は攪拌羽根を内蔵した混合機(例えばアイリッヒミキサー)とし、焼結原料の30重量%以上を粒径0.5mm以下とすれば、効果を一層高めることができるとする発明である(特許文献3)。
【0009】
SIO成分の減少により、焼結鉱の還元粉化性(RDI)は悪化するが、ドロマイト粒度の細粒化及び粉コークス量の増加により改善する発明の記載がある(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−69427号公報
【特許文献2】特開平08−283876号公報
【特許文献3】特開平09−143580号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】CAMP-ISIJ 11(2004)p.234.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載の発明によれば、焼結生産率が低い場合は、焼結焼成時の熱余裕があり、滓化性の悪いドロマイトを使用できるが、焼結生産率が高い場合には、ドロマイトを使用することができないという問題がある。そして、当該発明は、ドロマイトの滓化性の悪さを解決するものではない。
【0013】
特許文献2に記載の発明によれば、ドロマイトを配合した焼結原料を混合強化することによりドロマイトの分散性および反応性を改善して未反応のまま残留するドロマイトを低減し、焼結鉱の高温性状の改善と、歩留の向上を図っている。粗粒の鉄鉱石を含む焼結原料と混合する際に、過度に破砕することなく、しかもドロマイトの分散性および反応性を向上させる方法として、攪拌羽根を内蔵した混合機を用いる。しかし、ドロマイトを焼結原料と混合するには、大型の攪拌羽根を内蔵した混合機が必要であり、設備費が高価になるという問題がある。
【0014】
特許文献3に記載の発明は、特許文献2に記載の発明において、更に、ドロマイトの粒径を0.25mm〜1.0mmの範囲の粒子が30重量%を超えるものとするものであり、ドロマイトの上下限両方の粒度調整が必要となり、設備費が更に高価になるという問題がある。
【0015】
非特許文献1に記載の発明は、粉コークス量の増加による熱量増加の組み合わせが必要であるという問題がある。
【0016】
従来技術によれば、滓化性の悪いドロマイトの使用に対し、(1)焼結生産率が高い場合にはドロマイトを使用しない、(2)鉄鉱石を含む焼結原料全体に混合する際に、混合強化のために強力攪拌機を用いる、または、(3)ドロマイトの使用の際は、熱量増加のための粉コークス量を増加させる、等の発明の開示がある。しかし、焼結生産率が高い場合でもドロマイトを使用したい、高価な設備投資なしでドロマイトを使用したい、粉コークス量の増加なしでドロマイトを使用したいという要請があった。
本発明の目的は、ドロマイトをMgO源として使用する際に、ドロマイトを滓化し易くし、熱量を増加することなく焼結鉱の歩留及び強度の低下を防止しつつ、低SIO2焼結鉱の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、ドロマイトを粒径1mm以下に粉砕し、石灰石と事前混合することにより、ドロマイトの滓化し易くなることを見出した。
【0018】
本発明は、この知見に基づいて上記の課題を解決するためになされたものであり、その要旨とするところは、以下のとおりである。
【0019】
(1) ロマイト、石灰石、鉄鉱石、粉コークス、硅石及び返鉱含む原料を用いる焼結鉱の製造方法であって、
ドロマイトを粒径1mm以下に粒度調整する工程と、
前記粒度調整されたドロマイトと石灰石の合計の質量に対して、ドロマイトの質量の比が、0.6以下になるように、前記原料のうちのドロマイトと石灰石を造粒する工程と、
前記造粒したドロマイトと石灰石の造粒物を鉄鉱石、粉コークス、硅石及び返鉱と混合し、造粒して配合原料を製造する工程と、
前記配合原料を焼成して焼結鉱を製造する工程を有することを特徴とする焼結鉱の製造方法。
(2) 前記ドロマイトが、ドロマイト及び軽焼ドロマイトの少なくともいずれかであることを特徴とする(1)に記載の焼結鉱の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
ドロマイトをMgO源として使用する際に、熱量を増加することなくドロマイトを滓化し易くし、焼結鉱の成品歩留、生産率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来法によるドロマイトの使用方法を示す図。
図2】本発明に係るドロマイトの使用方法を示す図。
図3】従来法による焼結鉱のマクロ組織を示す図。
図4】本発明による焼結鉱のマクロ組織を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に従来法によるドロマイトの使用方法を示す。鉄鉱石槽1、コークス槽2、返鉱槽3、石灰石槽4及びドロマイト槽5から切り出された原料は、ベルトコンベアー13により、ドラムミキサー6に供給され、混合、造粒後、サージホッパー7に貯留される。サージホッパー7から切り出された原料は、ドラムフィーダー8により焼結機12に装入され、コークスに点火することにより、原料を焼成し、焼結鉱が製造される。従来法においては、ドロマイトは、他の原料と一緒にドラムミキサー6により混合、造粒される。ここで、ドロマイトは、焼結鉱の焼成過程で、石灰石(CaCO)と比較して、鉄鉱石(酸化鉄)との滓化性が悪いため、ドロマイトが未反応のまま焼結鉱中に残留し、焼結の強度及び歩留まりが低下するという問題がある。
【0023】
図2に本発明に係るドロマイトの使用方法を示す。ドロマイト槽5から切り出されたドロマイトは、まず、破砕機9により粒径1mm以下に粉砕する。粉砕後のドロマイトは、篩10により篩分けし、粒径1mm以上は、リサイクルして、再度、破砕機9により粉砕する。粒径1mm以下のドロマイトは、石灰石槽4から切り出された石灰石の一部と一緒に造粒機11に装入し、造粒される。すなわち、鉄鉱石、粉コークス及び返鉱とドラムミキサー6により混合、造粒する前に粉砕ドロマイトと石灰石を事前造粒する。このように、粉砕ドロマイトと石灰石を事前造粒するのは、滓化性の悪いドロマイトの比表面積を大きくし、石灰石と隣接させることにより、滓化し難いドロマイトを滓化し易くさせるためである。
【0024】
この場合、本発明の効果を十分に得るために、使用するドロマイトの粒径は1mm以下とする。これは、造粒および滓化を容易にするためである。粒度調整の方法は特に定めないが、上記のように、粉砕機と分級機を組み合わせた循環系とするのが好ましい。
また、粒径1mm以下のドロマイトと石灰石の合計の質量に対して、ドロマイトの質量の比が、0.6以下に混合する。当該比が0.6を超えると、ドロマイトの質量に対し、石灰石の質量が不足し、滓化が不十分なドロマイトが発生するからである。
また、事前造粒に際する適正な水分値は5質量%程度となるが、造粒物の生成状況に合せて適宜調整する。この時、生石灰等のバインダーの使用は必須ではないが、バインダーは石灰石とドロマイトの隣接効果を高める点で、その使用は好ましい。
【0025】
事前造粒したドロマイトと石灰石は、鉄鉱石、コークス、返し鉱及び残りの石灰石と伴にドラムミキサー6に供給される。その後の、混合、造粒、焼結機への装入と焼結鉱の焼成は、従来の工程と同様である。
【0026】
前記ドロマイトの一部が、軽焼ドロマイトであってもよい。軽焼ドロマイトは、ドロマイトを加熱して脱炭酸化させたものであり、ドロマイトと同様に本発明によって、焼結時の滓化性を改善できる。
事前造粒処理の対象とするドロマイトは、配合されるそれの全量が好ましい。本発明の効果を十分に享受でき、また設備構成も簡素なものとなる。
【実施例】
【0027】
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明は、これに限られるものではない。
本願発明に係る焼結鉱の製造方法を焼結実験で確認した。
【0028】
(実験に用いた原料)
実験に用いた原料配合(質量%)を表1に示す。鉄鉱石は日本で使用される代表的な銘柄を使用した。副原料の配合量は、成品焼結鉱のSiO2含有量が4.5質量%、MgO含有量が1.5質量%となるように決めた。
【表1】
【0029】
(粉砕ドロマイトと石灰石の造粒物の準備)
実験に用いたドロマイト、石灰石の粒度を表2に示す。ドロマイトの粉砕前の粒度(mm)を表2の1に示す。それを、ロッドミルにて粉砕し、1mm以下の粒度にした。ドロマイトの粉砕後の粒度(mm)を表2の2に示す。一方、実験に用いた石灰石の粒度(mm)を表2の3に示す。これは、現在焼結用として商業使用されている代表的な石灰石の粒度分布である。
【表2】
【0030】
後述する表3に示す実施例1〜3及び比較例1〜3においては、焼成に先立ち、前記粉砕ドロマイト全量と石灰石の一部(実施例1は全量)を表3に示す比率で混合・造粒した。それには、直径400mm、長さ300mmのドラムミキサーを用い、混合時間を1分間、混合後の造粒時間を4分間とした。造粒開始と同時に試料に散水し、造粒物の最終的な水分値を5質量%となるように調整した。
【0031】
(焼結実験)
焼結試験には、まず、前記粉砕ドロマイトと石灰石との造粒物、及び表1に示した残部原料(ベース条件および実施例1では鉄鉱石、返鉱およびコークス、その他ではさらに石灰石の残量を含む)を直径1,000mm、長さ500mmのドラムミキサーを用いて造粒水分7%〜8%とし、回転数を30rpmで1分間混合したのち4分間造粒して配合原料を作成した。作成した配合原料を焼結鍋試験装置(直径:300mm、層高:600mm)に充填し、点火90秒、吸引負圧15kPa一定の条件で焼成して、歩留と生産率を測定した。
粉砕したドロマイトと事前に混合する石灰石の適正な比率を決定するために、粉砕したドロマイトの質量(D)と石灰石の質量(L)の合計の質量(D+L)に対して、粉砕したドロマイトの質量の比(D/(D+L))を0.42から0.9に変更して、焼成実験を行った。
【0032】
焼成実験の結果を表3に示す。
【表3】
【0033】
ベース条件は、ドロマイトを粉砕しない従来法、すなわち、粉砕ドロマイトと石灰石を事前混合しない場合である。
実施例1は、ドロマイトの全量を粉砕し、全量の石灰石と事前混合した場合である(D/(D+L)=6.6/(6.6+9))。
実施例2〜比較例3は、ドロマイトの全量を粉砕し、粉砕したドロマイトの全量に対し、事前混合する石灰石の量を減少させ、D/(D+L)を増加させた。その結果、D/(D+L)が0.7以上の比較例1,2,3では、成品歩留が低下した。
以上の実験結果より、D/(D+L)が0.6以下で、成品歩留が向上することが確認できた。
【0034】
図3に従来法であるベース条件における焼結鉱マクロ組織を示す。気孔が多く、未滓化ドロマイト及び残留鉱石が多い。図4に本発明に係る実施例1における焼結鉱マクロ組織を示す。気孔が少なく、未滓化ドロマイト及び残留鉱石が少ない組織であった。
図3のベース条件及び図4の実施例1の操業成績を表4に示す。
本発明の実施例1は、歩留、生産率は良好で、焼結鉱品質も良好であった。
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0035】
ドロマイトをMgO源として使用する際に、ドロマイトを滓化し易くし、熱量を増加することなく焼結鉱の歩留及び強度の低下を防止しつつ、低SIO2焼結鉱の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0036】
1…鉄鉱石槽、2…コークス槽、3…返鉱槽、4…石灰石槽、5…ドロマイト槽、6…ドラムミキサー、7…サージホッパー、8…ドラムフィーダー、9…破砕機、10…篩、11…造粒機、12…焼結機、13…ベルトコンベアー。
図1
図2
図3
図4