【文献】
高岡辰輔,安達文幸,周波数選択性フェージング環境下でのOFDM受信における適応予測繰り返しチャネル推定,電子情報通信学会技術研究報告,2002年 8月23日,vol.102,no.282,pp.65-70,RCS2002-157
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、少なくとも前記中央タップの両側に隣接する2個のタップのフィルタ係数を用いて前記第1の係数及び前記第2の係数を演算する演算部を有することを特徴とする請求項1記載の受信装置。
前記演算部は、マルチパスのパス遅延量、マルチパスのパス数、又は信号対干渉ノイズ電力比に応じて、前記第1の係数及び前記第2の係数を演算することを特徴とする請求項2記載の受信装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態による受信装置の構成例を示す図である。受信装置は、例えば直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency-Division Multiplexing)方式受信装置である。RF(高周波数:Radio Frequency)帯処理部102は、アンテナ101を介して無線OFDM受信信号を受信し、RF帯にて、ダウンコンバート処理、信号増幅又はフィルタ処理などを行う。アナログデジタル変換器103は、RF帯処理部102の出力信号をアナログからデジタルに変換する。直交復調部104は、デジタルの受信信号を、相互に直交するI信号及びQ信号に変換する。高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)部105は、直交復調部104の出力信号を時間領域から周波数領域に変換する。シンボルバッファ106は、高速フーリエ変換部105の出力信号をバッファリングし、信号Z(s,t)を出力する。ここで、sは周波数方向のサブキャリア番号を示し、tは時間方向のOFDMシンボル番号を示す。OFDM信号は、周波数方向に複数のサブキャリアを多重化させた信号であり、周波数領域信号Z(s,t)の各サブキャリアには独立した送信データが格納される。
【0013】
図2は、OFDMのキャリア配置の例として、地上デジタル放送ISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting- Terrestrial)のOFDMフレームを示す図である。データキャリアDaは、白丸で表され、送信装置が受信装置に送信したいデータが格納される。パイロットキャリアDsは、黒丸で表され、通信規格によって決められた既知信号が格納される。OFDM受信装置では、その既知信号のパイロットキャリアDsと受信信号Z(s,t)の位相/振幅の変化量を求めることで、パイロットキャリアDsの伝搬路推定値を求めることができる。なお、ISDB−TのOFDMフレームでは、パイロットキャリアDsは周波数方向に12キャリア間隔であり、1シンボルに付き3キャリア分シフトさせて配置されたスキャッタードパイロットシンボルと呼ばれる配置が採用されている。
【0014】
無線において基地局(送信装置)から送信された周波数多重信号であるOFDM信号を受信する場合、基地局から送信されたOFDM信号は、建物や地形などの障害によって反射・回折する。受信装置は、反射・回折した複数の経路からOFDM信号を受信する。反射・回折により発生する複数の経路をマルチパスという。マルチパスにおけるそれぞれのOFDM信号の伝搬距離は異なる。伝搬距離の違いにより、受信装置は振幅及び位相の異なる複数のOFDM信号を受信する。OFDM信号がマルチパスの影響を受けると、OFDM信号の各サブキャリアの振幅及び位相が変化する。各サブキャリアにおけるマルチパスの影響を解消するため、伝搬路推定部108は、受信信号の伝搬路特性を推定する伝搬路推定処理を行う。
【0015】
OFDM信号を受信する受信装置は、伝搬路推定処理においてOFDM信号に分散して挿入されたパイロットキャリアDsを用いる。パイロットキャリアDsは、通信仕様に既定された振幅値及び位相を有する。受信装置は、受信したパイロットキャリアDsと既定のパイロットキャリアDsとを比較することにより、パイロットキャリアDsの位置の伝搬路推定値を推定する。受信装置は、パイロットキャリアDsの位置の伝搬路推定値を用いて補間することにより、データキャリアDaの位置の伝搬路推定値を推定する。
【0016】
図1において、パイロットキャリア抽出部107は、受信信号Z(s,t)からパイロットキャリアDsを抽出し、パイロットキャリアDsの受信信号Y(s,t)を出力する。伝搬路推定部108は、パイロットキャリアDsの受信信号Y(s,t)及びパイロットキャリアDsの既知信号X(s,t)を基に、伝搬路推定値H(s,t)=Y(s,t)/X(s,t)を演算し、伝搬路推定値H(s,t)を基に、ノイズの低減した伝搬路推定値Hopt(s,t)を演算する。伝搬路補償部109は、受信信号X(s,t)=Z(s,t)/Hopt(s,t)を演算し、受信信号Z(s,t)に対して伝搬路歪みを補償し、受信信号X(s,t)を出力する。復調処理部110は、受信信号X(s,t)に対して、誤り訂正処理などの復調処理を行い、送信データの判定を行い、判定値X1(s,t)を出力する。なお、逆変調処理部111については、後述の第3の実施形態で説明する。
【0017】
図3は
図1の伝搬路推定部108の構成例を示す図であり、
図4(A)〜(D)は伝搬路推定部108の処理例を示す図である。伝搬路推定部108は、PRBS(擬似ランダムバイナリシーケンス:Pseudorandom Binary Sequence)処理部301、時間方向補間部302、周波数方向補間部303、周波数方向の適応予測フィルタ304及び時間方向の適応予測フィルタ305を有する。
【0018】
PRBS処理部301は、パイロットキャリアDsの受信信号Y(s,t)及びパイロットキャリアDsの既知信号X(s,t)を基に、Y(s,t)/X(s,t)を演算し、
図4(A)に示すように、パイロットキャリアDsの位置の伝搬路推定値を出力する。
【0019】
次に、時間方向補間部302は、パイロットキャリアDsの伝搬路推定値に対して時間方向に補間し、
図4(B)に示すように、時間方向補間キャリアDbの位置の伝搬路推定値を演算する。
【0020】
次に、周波数方向補間部303は、
図4(B)の伝搬路推定値に対して周波数方向に補間し、
図4(C)に示すように、周波数方向補間キャリアDcの位置の伝搬路推定値を演算し、伝搬路推定値H(s,t){0<s<N}を出力する。ここで、NはOFDMのキャリア数である。
【0021】
次に、周波数方向の適応予測フィルタ304は、
図4(C)の伝搬路推定値H(s,t)に対して周波数方向にフィルタリングし、伝搬路推定値を出力する。
【0022】
次に、時間方向の適応予測フィルタ305は、周波数方向の適応予測フィルタ304により出力される伝搬路推定値H(s,t)に対して時間方向にフィルタリングし、
図4(D)に示すように、適応予測されたキャリアDdの伝搬路推定値Hopt(s,t)を出力する。
【0023】
図5(A)及び(B)は、周波数方向の適応予測フィルタ506の構成例を示す図である。周波数方向の適応予測フィルタ506は、
図3の周波数方向の適応予測フィルタ304に対応する。
図5(B)の適応予測フィルタ506は、
図5(A)に示すように、第1の乗算器501a〜501d、第1の加算器502、第1の減算器503、フィルタ係数生成部504及びフリップフロップ505を有する。適応予測フィルタ506は、2K+1個の伝搬路推定値H(s+k,t){−K<k<K}を入力し、フィルタ処理により、ノイズ除去された伝搬路推定値H2(s,t)を出力する。
図5(A)では、Kが2である場合の例を示すが、Kは2に限定されない。
【0024】
第1の乗算器501aは、伝搬路推定値H(s−2,t)に対してフィルタ係数W(−2)を乗算する。第1の乗算器501bは、伝搬路推定値H(s−1,t)に対してフィルタ係数W(−1)を乗算する。第1の乗算器501cは、伝搬路推定値H(s+1,t)に対してフィルタ係数W(1)を乗算する。第1の乗算器501dは、伝搬路推定値H(s+2,t)に対してフィルタ係数W(2)を乗算する。すなわち、第1の乗算器501a〜501dは、複数タップのうちの中央タップ以外のタップの伝搬路推定値H(s+k,t){−K<k<K,k≠0}に対してフィルタ係数W(k)をそれぞれ乗算する。第1の加算器502は、第1の乗算器501a〜501dの出力値を加算し、伝搬路推定値H2(s,t)を出力する。
【0025】
図5(B)に示すように、適応予測フィルタ506は、伝搬路推定値H(s+k,t){−K<k<K,k≠0}を入力し、フィルタ係数W(k)を用いて、次式(1)のフィルタリングにより、伝搬路推定値H2(s,t)を出力する。
【0027】
第1の減算器503は、第1の加算器502の出力値H2(s,t)から中央タップの伝搬路推定値H(s,t)を減算し、第1の加算器502の出力値H2(s,t)と中央タップの伝搬路推定値H(s,t)との誤差e(t)を演算する。すなわち、中央タップの伝搬路推定値H(s,t)は、参照信号として用いられる。フィルタ係数生成部504は、伝搬路推定値H(s+k,t){−K<k<K,k≠0}を入力し、誤差e(t)を基に次式(2)の最小2乗法アルゴリズムを用いて、次回のフィルタ係数Wn(k)を生成する。フリップフロップ505は、フィルタ係数Wn(k)を保持し、第1の乗算器501a〜501dにフィルタ係数W(k)を出力する。
【0029】
ここで、上式のμはステップ応答であり、1よりも小さい値である。誤差e
*(t)は、誤差e(t)の複素共役である。誤差e(t)が最小になるように、フィルタ係数W(k)を更新することにより、伝搬路推定値H2(s,t)の精度を向上させることができる。
【0030】
図6(A)は、入力の伝搬路推定値H(s,t)のパスプロファイルを示し、パス601及びノイズ602を有する。
図6(B)は、フィルタ係数W(k)を示し、その横軸はタップ番号kを示す。フィルタ係数W(k)は、中央タップを除くタップのフィルタ係数W(k)を有する。
図6(C)は、出力の伝搬路推定値H2(s,t)のパスプロファイルを示し、ノイズ602が低減されたフィルタ特性603が得られる。
【0031】
図6(D)〜(F)は、長遅延で多波のマルチパス環境で使用されるフィルタの例を示す図である。マルチパスでは、送信装置から送信された電波(無線信号)が建物や地形などによって反射・回折し、受信装置が複数の経路(伝搬路)から同じ電波を受信するため、同じ電波に対して複数のパス601が生じてしまう。
図6(D)は、入力の伝搬路推定値H(s,t)のパスプロファイルを示し、多波のパス601及びノイズ602を有する。
図6(E)は、フィルタ係数W(k)を示し、フィルタ係数W(k)は、中央タップを除くタップのフィルタ係数W(k)を有する。
図6(F)は、出力の伝搬路推定値H2(s,t)のパスプロファイルを示し、ノイズ602の低減が不十分なフィルタ特性604が得られる。この場合、
図6(E)のフィルタ係数W(k)は、中央タップのフィルタ係数が除かれているため、
図6(F)に示すように、十分なノイズ602の除去が行われない。そこで、十分なノイズ除去を行うことができる適応予測フィルタの構成例を、
図7(A)及び(B)を参照しながら説明する。
【0032】
図7(A)及び(B)は、本実施形態による周波数方向の適応予測フィルタ304(
図3)の構成例を示す図である。適応予測フィルタ304は、適応予測フィルタ506及び中央タップ生成部701を有し、伝搬路推定値H(s+k,t){−K<k<K}を入力し、ノイズを低減した伝搬路推定値H3(s,t)を出力する。
図7(A)及び(B)の適応予測フィルタ304は、
図5(A)及び(B)の適応予測フィルタ506に対して、中央タップ生成部701を追加したものである。中央タップ生成部701は、第2の乗算器702、第3の乗算器703、第2の加算器704及び演算部705を有する。第2の乗算器702は、中央タップの伝搬路推定値H(s,t)に第1の係数βを乗算する。第3の乗算器703は、第1の加算器502の出力値H2(s,t)に第2の係数1−βを乗算する。演算部705は、フィルタ係数Wn(k)を基に、第1の係数β及び第2の係数1−βを生成する。第3の加算器704は、第2の乗算器702の出力値と第3の乗算器703の出力値とを加算し、ノイズが低減された伝搬路推定値H3(s,t)を出力する。
【0033】
図7(B)に示すように、中央タップ生成部701は、適応予測フィルタ506の出力値H2(s,t)及び中央タップの伝搬路推定値H(s,t)を入力し、第1の係数β及び第2の係数1−βを用いて、次式(3)により、伝搬路推定値H3(s,t)を出力する。
【0035】
次に、演算部705が第1の係数β及び第2の係数1−βを生成する方法を説明する。第1の係数βは、中央タップのフィルタ係数W(0)に比例する値である。演算部705は、β=W(0)/{1−W(0)}により、第1の係数β及び第2の係数1−βを生成する。中央タップのフィルタ係数W(0)を最適化することにより、ノイズを低減することができる。
【0036】
次に、中央タップのフィルタ係数W(0)の生成方法を説明する。演算部705は、フィルタ係数生成部504により生成された中央タップ以外のフィルタ係数Wn(k){−K<k<K,k≠0}を用いて、中央タップのフィルタ係数W(0)を生成する。具体的には、演算部705は、中央タップに隣接する数タップのフィルタ係数{…,Wn(−2),Wn(−1),Wn(1),Wn(2),…}の絶対値を求め、その絶対値に対し補間処理を行うことにより、中央タップのフィルタ係数W(0)を生成する。
【0037】
例えば、演算部705は、次式(4)のように、中央タップの両側に隣接する2個のタップのフィルタ係数Wn(1)及びWn(−1)の絶対値の平均値W_amp(±1)を基に、中央タップのフィルタ係数W(0)を生成する。ここで、R1は、補間係数である。
W_amp(±1)={|Wn(1)|+|Wn(−1)|}/2
W(0) =W_amp(±1)×R1 ・・・(4)
【0038】
また、演算部705は、次式(5)のように、中央タップの両側に隣接する4個のタップのフィルタ係数Wn(−2)、Wn(−1)、Wn(1)及びWn(2)を基に、フィルタ係数Wn(2)及びWn(−2)の絶対値の平均値W_amp(±2)を演算し、中央タップのフィルタ係数W(0)を生成してもよい。ここで、R2は、補間係数である。
W_amp(±2)={|Wn(2)|+|Wn(−2)|}/2
W(0)=W_amp(±1)×R1+W_amp(±2)×R2 ・・・(5)
【0039】
補間係数R1及びR2は、伝搬路のマルチパスやフェージングなどの状況に応じて、設定する。例えば、演算部705は、マルチパスのパス遅延量、マルチパスのパス数、又は信号対干渉ノイズ電力比(SINR:Signal-to-Interference and Noise power Ratio)に応じて、補間係数R1及びR2を演算する。具体的には、演算部705は、マルチパスのパス遅延量が大きい場合には、補間係数R1を大きくし、補間係数R2を小さくする。また、演算部705は、マルチパスのパス数が多い場合には、補間係数R1を大きくし、補間係数R2を小さくする。また、演算部705は、SINRが大きい場合(ノイズが小さい場合)には、補間係数R1を大きくし、補間係数R2を小さくする。
【0040】
図8(A)は、
図6(A)に対応し、入力の伝搬路推定値H(s,t)のパスプロファイルを示し、パス601及びノイズ602を有する。
図8(B)は、フィルタ係数W(k)を示す。フィルタ係数W(k)は、中央タップのフィルタ係数W(0)を含むタップのフィルタ係数W(k)を有する。
図8(C)は、出力の伝搬路推定値H3(s,t)のパスプロファイルを示し、ノイズ602が低減されたフィルタ特性803が得られる。
【0041】
図8(D)〜(F)は、
図6(D)〜(F)に対応し、長遅延で多波のマルチパス環境で使用されるフィルタの例を示す図である。
図8(D)は、入力の伝搬路推定値H(s,t)のパスプロファイルを示し、多波のパス601及びノイズ602を有する。
図8(E)は、フィルタ係数W(k)を示し、フィルタ係数W(k)は、中央タップのフィルタ係数W(0)を含むタップのフィルタ係数W(k)を有する。
図8(F)は、出力の伝搬路推定値H3(s,t)のパスプロファイルを示す。中央タップのフィルタ係数W(0)を用いてフィルタリングを行うことにより、多波のマルチパス環境でも、ノイズ602が低減されたフィルタ特性804が得られる。これにより、伝搬路推定部108は、高精度の伝搬路推定値Hopo(s,t)を生成することができ、伝搬路補償部109は、受信信号Z(s,t)に対して伝搬路歪みの補償の精度を向上させることができる。復調処理部110は、データの判定エラーを低減することができる。
【0042】
以上、
図3の周波数方向の適応予測フィルタ304の構成例を説明した。なお、周波数方向の両端の伝搬路推定値に関しては、Hopt(s,t)=H(s,t)として、入力信号H(s,t)をそのまま出力信号Hopt(s,t)として使用するか、タップ数が少ない適応予測フィルタを用いればよい。
【0043】
図3の時間方向の適応予測フィルタ305は、上記の周波数方向の適応予測フィルタ304と同様の構成を有し、その入力信号は、周波数方向の伝搬路推定値H(s+k,t){−K<k<K,k≠0}の代わりに、時間方向の伝搬路推定値H(s,t+j){−J<j<J}が入力される。なお、周波数方向の適応予測フィルタ304及び時間方向の適応予測フィルタ305は、両方設ける場合に限定されず、いずれか一方のみを設けてもよい。
【0044】
(第2の実施形態)
図9は本発明の第2の実施形態による伝搬路推定部108(
図1)の構成例を示す図であり、
図10(A)〜(D)は伝搬路推定部108の処理例を示す図である。
図9の伝搬路推定部108は、
図3の伝搬路推定部108に対して、周波数方向補間部303の位置を変えたものである。周波数方向補間部303は、時間方向の適応予測フィルタ305の後段に設けられる。以下、本実施形態が第1の実施形態と異なる点を説明する。
【0045】
PRBS処理部301は、パイロットキャリアDsの受信信号Y(s,t)及びパイロットキャリアDsの既知信号X(s,t)を基に、Y(s,t)/X(s,t)を演算し、
図10(A)に示すように、パイロットキャリアDsの位置の伝搬路推定値を出力する。
【0046】
次に、時間方向補間部302は、パイロットキャリアDsの伝搬路推定値に対して時間方向に補間し、
図10(B)に示すように、時間方向補間キャリアDbの位置の伝搬路推定値H(s,t)を演算する。
【0047】
次に、周波数方向の適応予測フィルタ304は、
図10(B)の伝搬路推定値H(s,tに対して周波数方向にフィルタリングし、伝搬路推定値を出力する。例えば、
図10(B)の例でいえば、周波数方向に対し3キャリア間隔で補間されたキャリアDbが配置されているので、適応予測フィルタ304への入力は、伝搬路推定値H(s,t){s=3n}と3倍数間隔で入力される。
【0048】
次に、時間方向の適応予測フィルタ305は、周波数方向の適応予測フィルタ304により出力される伝搬路推定値に対して時間方向にフィルタリングし、
図10(C)に示すように、適応予測されたキャリアDdの伝搬路推定値を出力する。
【0049】
次に、周波数方向補間部303は、
図10(C)の伝搬路推定値に対して周波数方向に補間し、
図10(D)に示すように、周波数方向補間キャリアDcの位置の伝搬路推定値を演算し、伝搬路推定値Hopt(s,t)を出力する。
【0050】
本実施形態も、第1の実施形態と同様に、中央タップのフィルタ係数W(0)を用いてフィルタリングを行うことにより、多波のマルチパス環境でも、高精度の伝搬路推定値Hopo(s,t)を生成し、受信信号Z(s,t)に対して伝搬路歪みの補償の精度を向上させることができる。
【0051】
(第3の実施形態)
図1を参照しながら、本発明の第3の実施形態による受信装置の構成例を説明する。以下、本実施形態が第1及び第2の実施形態と異なる点を説明する。逆変調処理部111は、次式(6)のように、シンボルバッファ106から出力される受信信号Z(s,t)を、復調処理部110により判定された判定値X1(s,t)で除算することにより、伝搬路推定値H1(s,t)を生成する。
H1(s,t)=Z(s,t)/X1(s,t) ・・・(6)
【0052】
伝搬路推定部108は、伝搬路推定値H1(s,t)を基に、ノイズを低減した伝搬路推定値Hopt(s,t)を伝搬路補償部109に出力する。
【0053】
図11は、本実施形態による伝搬路推定部108(
図1)の構成例を示す図である。
図11の伝搬路推定部108は、
図3の伝搬路推定部108に対して、スイッチ1101を追加したものである。スイッチ1101は、周波数方向補間部303が出力する伝搬路推定値H(s,t)又は伝搬路推定値H1(s,t)を選択的に適応予測フィルタ304及び305に出力する。伝搬路推定値H1(s,t)は、
図1の逆変調処理部111により生成される。
【0054】
最初の1回目の処理では、スイッチ1101は、周波数方向補間部303の出力端子に接続され、第1の実施形態と同様に、適応予測フィルタ304及び305は、周波数方向補間部303により出力される伝搬路推定値H(s,t)を入力し、伝搬路推定値Hopt(s,t)を出力する。
図1において、伝搬路補償部109は、受信信号Z(s,t)を伝搬路推定値Hopt(s,t)で除算することにより、伝搬路歪みが補償された受信信号X(s,t)を生成する。復調処理部110は、受信信号X(s,t)を判定し、判定値X1(s,t)を出力する。逆変調処理部111は、受信信号Z(s,t)を判定値X1(s,t)で除算することにより、伝搬路推定値H1(s,t)を生成する。
【0055】
2回目以降の処理では、スイッチ1101は、逆変調処理部111(
図1)の出力端子に接続され、適応予測フィルタ304及び305は、逆変調処理部111により出力される伝搬路推定値H1(s,t)を入力し、伝搬路推定値Hopt(s,t)を出力する。
図1において、伝搬路補償部109は、受信信号Z(s,t)を伝搬路推定値Hopt(s,t)で除算することにより、伝搬路歪みが補償された受信信号X(s,t)を生成する。復調処理部110は、受信信号X(s,t)を判定し、判定値X1(s,t)を出力する。
【0056】
以上のように、2回目以降の処理では、逆変調処理部111により生成された伝搬路推定値H1(s,t)を伝搬路推定部108にフィードバックし、再度、適応予測フィルタ304及び305に通すことにより、伝搬路推定値の推定精度を向上させることができる。
【0057】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。