特許第6028614号(P6028614)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028614
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】車両用シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/07 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   B60N2/07
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-30098(P2013-30098)
(22)【出願日】2013年2月19日
(65)【公開番号】特開2014-159196(P2014-159196A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2016年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】星原 直明
(72)【発明者】
【氏名】千葉 晃洋
【審査官】 永安 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−202113(JP,A)
【文献】 特開昭50−71022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向に並設された一対の第1縦壁部、前記両第1縦壁部の基端間を連結する第1連結壁部、及び前記両第1縦壁部の先端から互いの対向する幅方向内側に張り出して更に該第1縦壁部の基端側に折り返された一対のフランジを有し、車両フロア及びシートの一方に固定される第1レールと、
前記両フランジ間で幅方向に並設された一対の第2縦壁部、前記両第2縦壁部の基端間を連結する第2連結壁部、前記両第2縦壁部の先端から互いに離隔する幅方向外側に上下方向で前記第1連結壁部に近付きつつ張り出す一対の外延壁部、及び前記両外延壁部の先端から前記第1縦壁部及び前記フランジに包囲されるように上下方向に延びる一対の延出壁部を有し、前記車両フロア及び前記シートの他方に固定されて前記第1レールに対し相対移動可能に連結される第2レールと、
前記両外延壁部の幅方向内側部に形成された一対の第2ボールガイドと、前記両第2ボールガイドよりも幅方向内側で前記両第2縦壁部に近付く上下方向に前記第1連結壁部に突出形成された一対の第1ボールガイドとの間に転動可能に介設される一対のボールと、
前記両第1ボールガイドが非形成となる前記第1連結壁部の前記相対移動の方向における先端に配置され、前記第1レールを前記車両フロア又は前記シートに固定する締結部材の座面を形成する取付部とを備えた、車両用シートスライド装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートスライド装置において、
前記第1レールは、上下方向において前記両第2縦壁部に最も近付く前記両第1ボールガイドの最頂部間を幅方向に接続する平板壁部を備えた、車両用シートスライド装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用シートスライド装置において、
前記第1レールの前記両フランジの先端には、複数の係止爪が前記相対移動の方向に並設され、
前記第2レールには、前記両第2縦壁部を幅方向に連通し、且つ、前記両外延壁部を上下方向に連通する一対の透孔が形成され、
前記両第2縦壁部の幅方向内側で幅方向に延びる軸線周りに前記第2レールに回動自在に連結され、前記両第2縦壁部において前記両透孔内に進入可能に構成され、その幅方向両側縁部に前記係止爪の少なくとも一部を係止可能な係止部を有し、上下方向への回動に伴い前記係止部及び前記係止爪が嵌脱することで前記第1及び第2レールの相対移動を選択的に係止するロック部材と、
前記相対移動を係止する側に前記ロック部材を回動付勢する付勢部材とを備えた、車両用シートスライド装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用シートスライド装置において、
前記両外延壁部には、前記相対移動の方向における前記両透孔の形成範囲において、幅方向外側端及び前記透孔間を幅方向に水平にする一対の平坦部が形成された、車両用シートスライド装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用シートスライド装置において、
前記各外延壁部には、前記相対移動の方向における前記平坦部の少なくとも一側に、異なる断面形状を徐々に近付ける徐変部が形成された、車両用シートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートスライド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートスライド装置としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。図9に示すように、 各断面円弧状壁124は、その上下方向の中央部分が最も112に接近している。そして、断面円弧状壁124の下部は、底壁111及び縦壁112を接続するコーナ部との間に比較的大きい空間を形成しており、該空間に下側ボール131が転動自在に設けられている。同様に、断面円弧状壁124の上部は、上壁113及び縦壁112を接続するコーナ部との間に比較的大きい空間を形成しており、該空間に上側ボール132が転動自在に設けられている。アッパレール120は、ロアレール110との間でそれら下側ボール131及び上側ボール132を転動させる態様で、ロアレール110に対し長手方向に摺動自在に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−35777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、アッパレール120と締結ボルト102(頭部)との上下方向の隙間を確保するために、底壁111の幅方向中央部を一対の段差111aを介して相対的に低くする座出しを行っている。これは、断面円弧状壁124の下部と、底壁111及び縦壁112を接続するコーナ部との間に形成される空間に下側ボール131を配置することで自ずと傾斜壁123等が底壁111に近付くことになり、そのままではアッパレール120と締結ボルト102(頭部)との上下方向の隙間が確保できないことによる。このため、ロアレール110の断面形状が上下方向に大きくなっており、ひいては装置全体としての断面形状が上下方向に大きくなっている。
【0005】
本発明の目的は、装置全体としての断面形状を上下方向により縮小することができる車両用シートスライド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両用シートスライド装置は、幅方向に並設された一対の第1縦壁部、前記両第1縦壁部の基端間を連結する第1連結壁部、及び前記両第1縦壁部の先端から互いの対向する幅方向内側に張り出して更に該第1縦壁部の基端側に折り返された一対のフランジを有し、車両フロア及びシートの一方に固定される第1レールと、前記両フランジ間で幅方向に並設された一対の第2縦壁部、前記両第2縦壁部の基端間を連結する第2連結壁部、前記両第2縦壁部の先端から互いに離隔する幅方向外側に上下方向で前記第1連結壁部に近付きつつ張り出す一対の外延壁部、及び前記両外延壁部の先端から前記第1縦壁部及び前記フランジに包囲されるように上下方向に延びる一対の延出壁部を有し、前記車両フロア及び前記シートの他方に固定されて前記第1レールに対し相対移動可能に連結される第2レールと、前記両外延壁部の幅方向内側部に形成された一対の第2ボールガイドと、前記両第2ボールガイドよりも幅方向内側で前記両第2縦壁部に近付く上下方向に前記第1連結壁部に突出形成された一対の第1ボールガイドとの間に転動可能に介設される一対のボールと、前記両第1ボールガイドが非形成となる前記第1連結壁部の前記相対移動の方向における先端に配置され、前記第1レールを前記車両フロア又は前記シートに固定する締結部材の座面を形成する取付部とを備える。
【0007】
この構成によれば、前記第1レールは、前記第1連結壁部の前記取付部において、前記締結部材により前記車両フロア又は前記シートに固定される。一方、前記第2レールは、前記両第1ボールガイド及び前記両第2ボールガイドの間で前記両ボールを転動させる態様で、前記第1レールに対し相対移動可能に連結される。前記第2レールの前記両第2ボールガイドは、前記両外延壁部の幅方向内側部に形成されていることで、特に前記両第1ボールガイドが非形成となる前記取付部の位置では、前記第1連結壁部との間の上下方向の隙間が幅方向中心側に向かうに従い増加する。従って、これら増加する上下方向の隙間を利用することで、前記第1連結壁部に座出し等をすることなく前記取付部に前記締結部材(例えば頭部)を配置することができる。これにより、前記第1レールの断面形状、ひいては装置全体としての断面形状を上下方向により縮小することができる。
【0008】
上記車両用シートスライド装置について、前記第1レールは、上下方向において前記両第2縦壁部に最も近付く前記両第1ボールガイドの最頂部間を幅方向に接続する平板壁部を備えることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、前記平板壁部により、前記両第1ボールガイド間の幅方向の距離を最大限に利用した平面形状を確保することができる。これにより、前記第1レール(第1連結壁部)に適宜の機能部品又はその取付部材を設置するための設置位置を好適に確保することができる。
【0010】
上記車両用シートスライド装置について、前記第1レールの前記両フランジの先端には、複数の係止爪が前記相対移動の方向に並設され、前記第2レールには、前記両第2縦壁部を幅方向に連通し、且つ、前記両外延壁部を上下方向に連通する一対の透孔が形成され、前記両第2縦壁部の幅方向内側で幅方向に延びる軸線周りに前記第2レールに回動自在に連結され、前記両第2縦壁部において前記両透孔内に進入可能に構成され、その幅方向両側縁部に前記係止爪の少なくとも一部を係止可能な係止部を有し、上下方向への回動に伴い前記係止部及び前記係止爪が嵌脱することで前記第1及び第2レールの相対移動を選択的に係止するロック部材と、前記相対移動を係止する側に前記ロック部材を回動付勢する付勢部材とを備えることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、前記第1及び第2レールの相対移動は、前記ロック部材の上下方向への回動に伴い前記係止部及び前記係止爪が嵌脱することで選択的に係止される。そして、前記相対移動の係止を解除する側への前記ロック部材の回動は、該ロック部材が前記両外延壁部における前記透孔の幅方向外側端に当接するまでの範囲に制限される。この場合、前記各外延壁部は、上下方向で前記第1連結壁部に近付きつつ幅方向外側に張り出していることで、例えば前記両透孔を前記ロック部材が上下方向に貫通可能でなくても、前記両透孔の幅方向外側端を幅方向外側にずらすことでこれに応じて前記ロック部材の回動範囲を漸増することができる。これにより、前記ロック部材の回動範囲を好適に確保しながらも、前記両透孔による前記第2レールの強度低下を抑制することができる。
【0012】
上記車両用シートスライド装置について、前記両外延壁部には、前記相対移動の方向における前記両透孔の形成範囲において、幅方向外側端及び前記透孔間を幅方向に水平にする一対の平坦部が形成されることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、前記相対移動の方向における前記両透孔の形成範囲においては、前記両平坦部により、前記両透孔の幅方向外側端が上下方向で前記第1連結壁部に最も近付く前記両外延壁部の幅方向外側端と同等の上下方向の位置となる。従って、前記両透孔の幅方向外側端を幅方向外側に徒にずらすことなく前記ロック部材の回動範囲を増加することができる。これにより、前記ロック部材の回動範囲を好適に確保しながらも、前記両透孔による第2レールの強度低下をいっそう抑制することができる。
【0014】
上記車両用シートスライド装置について、前記各外延壁部には、前記相対移動の方向における前記平坦部の少なくとも一側に、異なる断面形状を徐々に近付ける徐変部が形成されることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、前記相対移動の方向における前記平坦部の該当する側で、前記徐変部により異なる断面形状が徐々に近付けられる。これにより、前記平坦部の形成に伴って前記外延壁部(第2レール)に過大な応力が生じることを抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、装置全体としての断面形状を上下方向により縮小できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明が適用される車両用シートを示す側面図。
図2】本発明の一実施形態を示す正面図。
図3】(a)は、同実施形態を示す平面図であり、(b)は、(a)の3B−3B線に沿った断面図。
図4】同実施形態を示す斜視図。
図5】同実施形態及びその動作を示す縦断面図。
図6】(a)、(b)は、図5の6A−6A線及び6B−6B線に沿った断面図。
図7】本発明の変形形態を示す横断面図。
図8】本発明の変形形態を示す平面図。
図9】従来形態を示す横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、車両用シートスライド装置の一実施形態について説明する。なお、以下では、車両前後方向を「前後方向」という。
図1に示すように、車両フロア2には、第1レールとしてのロアレール3が前後方向に延在する態様で固定されるとともに、該ロアレール3には、第2レールとしてのアッパレール4がロアレール3に対し前後方向に相対移動可能に装着されている。つまり、本実施形態では、ロアレール3及びアッパレール4の長手方向(相対移動方向)は前後方向に一致している。
【0019】
なお、ロアレール3及びアッパレール4は、幅方向(図1において紙面に直交する方向)でそれぞれ対をなして配設されており、ここでは前方に向かって左側に配置されたものを示している。そして、両アッパレール4には、乗員の着座部を形成するシート5が固定・支持されている。ロアレール3及びアッパレール4の相対移動は基本的に係止状態にあって、該係止状態を解除するための解除ハンドル6が設けられている。
【0020】
図2に示すように、ロアレール3は、板材からなり、幅方向両側で上下方向に延びる一対の第1縦壁部11及びこれら第1縦壁部11の基端(下端)間を連結する第1連結壁部としての底壁部12を有する。そして、両第1縦壁部11の先端(上端)には、互いの対向する幅方向内側に張り出して更に第1縦壁部11の基端側に折り返された一対のフランジ13が連続形成されている。
【0021】
各フランジ13の第1縦壁部11との連結部位は、外向き斜め上方に凸となる断面略円弧形状の第1上側ボールガイド13cを形成する。一方、底壁部12には、幅方向に並設された一対の突条18が前後方向に一体的に延設されている。両突条18は、底壁部12の前端及び後端を除くその前後方向中間部の全体に延在している。そして、各突条18の最頂部よりも幅方向外側の部位は、内向き斜め下方に凸となる断面略円弧形状の第1ボールガイドとしての第1下側ボールガイド18aを形成する。
【0022】
また、突条18(第1下側ボールガイド18a)が非形成となる底壁部12の前端は、上下方向の位置が幅方向で一定になるように平面状に広がって取付部12aを形成する。この取付部12aは、ロアレール3を車両フロア2に固定する締結部材としての締結ボルト21の座面を形成するものでその中央部には、上下方向に連通する略円形のボルト挿通孔12bが形成されている。
【0023】
ボルト挿通孔12bには、上下方向に軸線の延びる締結ボルト21のボルト部21aが挿通される。この締結ボルト21は、ボルト部21aの上端から上向きに突出するフランジ付きの頭部21bを一体的に有する。ロアレール3は、ボルト挿通孔12bにボルト部21aの挿通される締結ボルト21の頭部21bがボルト挿通孔12bの周縁部に当接するまで車両フロア2側のナット孔(図示略)に締め付けられることで車両フロア2に固定される。
【0024】
突条18(第1下側ボールガイド18a)が非形成となる底壁部12の後端についても同様である(図示略)。
なお、図3(a)に示すように、各第1縦壁部11には、その前端部及び後端部に一対の第1ストッパ41が配設されている(図3(a)においては後側の第1ストッパ41のみ図示)。両第1縦壁部11の第1ストッパ41は、幅方向において対称配置されており、互いの対向する幅方向内側に突出形成されている。
【0025】
また、図3(b)に示すように、ロアレール3の各フランジ13の長手方向中間部には、当該方向に所定の間隔をもってその先端(下端)から上向きに複数の切り欠き13aが形成されるとともに、各隣り合う切り欠き13a間に四角歯状の係止爪13bが形成されている。従って、複数の係止爪13bは、前記所定の間隔をもってロアレール3の長手方向に並設されている。
【0026】
図2に示すように、アッパレール4は、板材からなり、ロアレール3の両フランジ13間で上下方向に延びる一対の第2縦壁部14及びこれら第2縦壁部14のロアレール3から離隔する基端(上端)間を連結する第2連結壁部としての蓋壁部15を有する。そして、両第2縦壁部14の底壁部12に近付く先端(下端)には、互いに離隔する幅方向外側に上下方向で底壁部12に近付きつつ張り出す一対の外延壁部16が連続形成されるとともに、両外延壁部16の先端(幅方向における外側端16b)には、第1縦壁部11及びフランジ13に包囲されるように上下方向に延びる一対の延出壁部17が連続形成されている。
【0027】
つまり、ロアレール3及びアッパレール4は、開口側が互いに突き合わされたU字状のレール断面をそれぞれ有しており、主としてフランジ13及び延出壁部17の係合によって上下方向に抜け止めされている。これらロアレール3及びアッパレール4により形成されるレール断面は、矩形状をなすいわゆる箱形である。ロアレール3は、アッパレール4と協働して空間Sを形成する。
【0028】
なお、各外延壁部16の幅方向内側部は、外向き斜め上方に凸となる断面略円弧形状の第2ボールガイドとしての第2下側ボールガイド16aを形成する。両第2下側ボールガイド16aは、前記両第1下側ボールガイド18aよりも幅方向外側に配置されている。すなわち、両第1下側ボールガイド18aは、両第2縦壁部14の略直下で該第2縦壁部14に近付く上下方向に底壁部12に突出形成されている。一方、各延出壁部17の上端部位(先端部位)は、内向き斜め下方に凸となる断面略円弧形状の第2上側ボールガイド17aを形成する。
【0029】
図3(a)、(b)及び図4に示すように、アッパレール4には、前後方向において両第2ストッパ42間に挟まれる長手方向中央部に、各第2縦壁部14を幅方向に連通し、且つ、各外延壁部16を上下方向に連通する透孔25が形成されている。つまり、第2下側ボールガイド16aの一部(幅方向内側部)は、透孔25により切り欠かれている。図5に拡大して示すように、各透孔25は、その前後方向中間部に中間開口26を形成するとともに、該中間開口26の後端下部及び前端下部にそれぞれ連通する後側開口27及び前側開口28を形成する。これら中間開口26、後側開口27及び前側開口28の上端26a,27a,28aは、略水平に前後方向に延びており、上下方向において、後側開口27及び前側開口28の上端27a,28aは、互いに同等であって中間開口26の上端26aよりも下方に位置している。つまり、後側開口27及び前側開口28の上下方向の開口幅は、中間開口26の上下方向の開口幅に対して下方に向かって縮小されている。
【0030】
また、図6(a)に示すように、後側開口27の後端は、外延壁部16等の断面形状にならっており、従って、幅方向における外延壁部16の外側端16b及び後側開口27の外側端27b間は、上下方向で蓋壁部15に近付きつつ内側に張り出している。つまり、後側開口27の後端においては、後側開口27の外側端27bは、外延壁部16の外側端16bよりも上昇している。前側開口28の前端についても同様である(図示略)。
【0031】
一方、図6(b)に示すように、幅方向における外延壁部16の外側端16b及び中間開口26の外側端26b間は、水平に延びて平坦部29を形成する。つまり、平坦部29により、中間開口26の前後方向の略全長に亘って、中間開口26の外側端26bが上下方向で底壁部12に最も近付く(蓋壁部15から最も離れる)外延壁部16の外側端16bと同等の上下方向の位置となる。
【0032】
そして、図5に示すように、概ね後側開口27の前後方向の範囲において、幅方向における外延壁部16の外側端16b及び後側開口27の外側端27b間は、後側開口27の後端における断面形状を平坦部29における断面形状へと徐々に近付けていくための徐変部16cを形成する。同様に、概ね前側開口28の前後方向の範囲において、幅方向における外延壁部16の外側端16b及び前側開口28の外側端28b間は、前側開口28の前端における断面形状を平坦部29における断面形状へと徐々に近付けていくための徐変部16dを形成する。これら徐変部16c,16dは、後側開口27の後端又は前側開口28の前端における外延壁部16(アッパレール4)の断面形状を、過大な応力を生じることなく平坦部29を有する外延壁部16の断面形状へと変化させるためのものである。
【0033】
つまり、透孔25における外延壁部16の前後方向の範囲は、平坦部29が配置される変断面区間と、両徐変部16c,16dが配置される一対の徐変区間とに区画されている。変断面区間の前後方向の範囲は、全体として中間開口26の前後方向の範囲よりも若干後方寄りに設定されている。
【0034】
図6(b)に示すように、アッパレール4の各延出壁部17の上端部位(第2上側ボールガイド17a)には、その長手方向における透孔25の位置に合わせて略四角形の切り欠き17bが形成されている。各切り欠き17bは、上方に開いて幅方向に連通している。
【0035】
また、図3(a)に示すように、各延出壁部17には、透孔25を挟んでその前方及び後方に一対の第2ストッパ42が配設されている。両延出壁部17の第2ストッパ42は、幅方向において対称配置されており、互いに離隔する幅方向外側に突出形成されている。なお、各延出壁部17に形成される両第2ストッパ42は、前後方向に離隔配置された前記一対の第1ストッパ41間に挟まれている。
【0036】
各第2ストッパ42は、第1ストッパ41の前後方向の移動軌跡を遮るように配置されている。従って、ロアレール3に対するアッパレール4の前方への移動は、ロアレール3の前側部の両第1ストッパ41及びアッパレール4の中央部前側寄りの両第2ストッパ42が当接することで係止される。あるいは、ロアレール3に対するアッパレール4の後方への移動は、ロアレール3の後側部の両第1ストッパ41及びアッパレール4の中央部後側寄りの両第2ストッパ42が当接することで係止される。これにより、ロアレール3及びアッパレール4の相対移動可能範囲(スライドストローク)が規制される。
【0037】
図2に示すように、各第2下側ボールガイド16a及びこれに対向する第1下側ボールガイド18a間には、球体状のボールとしての下側ボール20aが介設されている。同様に、各第2上側ボールガイド17a及びこれに対向する第1上側ボールガイド13c間には、上側ボール20bが介設されている。図3(a)に示すように、下側ボール20aは、各透孔25を挟んでその前方及び後方にそれぞれ2個ずつ、左右を合わせて合計8個配設されている。同様に、上側ボール20bは、各透孔25を挟んでその前方及び後方にそれぞれ2個ずつ、左右を合わせて合計8個配設されている。アッパレール4は、ロアレール3との間で各ボール20a,20bを転動させる態様で、ロアレール3に対し長手方向(前後方向)に摺動自在に支持されている。
【0038】
なお、これら下側ボール20a及び上側ボール20bは、ロアレール3及びアッパレール4の前後方向の移動に伴って当該方向に移動する。一方、第1下側ボールガイド18a(突条18)は、ロアレール3の前端及び後端では非形成である。また、第2下側ボールガイド16aは、透孔25の前後方向の範囲では非存在であり、第2上側ボールガイド17aは、切り欠き17bの前後方向の範囲では非存在である。第1及び第2ストッパ41,42の係合によるロアレール3及びアッパレール4の相対移動可能範囲では、下側ボール20a及び上側ボール20bがそれらの範囲内に移動しないように設定されている。
【0039】
図3(b)に示すように、各第2縦壁部14には、透孔25の前方で幅方向に中心線が延びる円柱状の支持軸22の端部が固着・支持されている。そして、アッパレール4内には、両第2縦壁部14の幅方向内側で、支持軸22によりロックレバー30が回動自在に連結されている。すなわち、ロックレバー30は、前後方向に延在する板材からなる柄部31を備える。柄部31は、その長手方向に延在する一対の縦壁部32が幅方向に並設される態様で立設されている。これら両縦壁部32間の幅方向の距離は、アッパレール4の両第2縦壁部14間の幅方向の距離よりも小さく設定されている。そして、両縦壁部32は、各々の前端部において接続壁33により上端縁間が幅方向に接続されるとともに、各々の後端部において天板部34により上端縁間が幅方向に接続されている。
【0040】
両縦壁部32には、支持軸22と同等の高さ位置で前後方向に延在する長孔35がそれぞれ形成されている。この長孔35の短手方向(上下方向)の開口幅は、支持軸22の直径と同等に設定されている。両長孔35には、柄部31の両縦壁部32がアッパレール4の両第2縦壁部14に幅方向に挟まれた状態で、支持軸22が挿通される。これにより、柄部31は、長孔35の範囲で前後方向の移動が許容された状態でアッパレール4に対して上下方向に回動自在に連結されている。
【0041】
なお、柄部31は、両縦壁部32の前端から前方にそれぞれ延出する一対の差し込み形状部36,37を有する。これら差し込み形状部36,37は、縦壁部32前端よりも下方に縮小されるとともに、2枚重ねになるように互いの対向する幅方向に近付いて、ハンドル差し込み部38を形成する。
【0042】
また、ロックレバー30は、柄部31の後端部下部に固着された板材からなる平板部としてのロックプレート39を備える。このロックプレート39は、透孔25(中間開口26)及び切り欠き17bを幅方向に貫通する態様で前後方向及び幅方向に広がっている。そして、図6(b)に示すように、ロックプレート39には、各フランジ13に対向して上下方向に開口する係止部としての係止孔39bが形成されている。係止孔39bは、前後方向に複数(3個)が前記所定の間隔をもって並設されており、ロアレール3の長手方向で隣り合う複数(3個)の係止爪13bと合致可能な位置に配置されている。
【0043】
そして、図6(b)に実線で示すように、ロックプレート39が上昇するようにロックレバー30が支持軸22周りに回動するとき、各係止孔39bに対応する係止爪13bを嵌入可能となっている。各係止孔39bに対応する係止爪13bを嵌入するとき、ロアレール3及びアッパレール4の相対移動が係止される。一方、図6(b)に2点鎖線で示すように、ロックプレート39が下降するようにロックレバー30が支持軸22周りに回動するとき、各係止孔39bが対応する係止爪13bから外れるように設定されている。このとき、ロアレール3及びアッパレール4の相対移動の係止が解除される。
【0044】
なお、ロックプレート39の幅方向の寸法は、アッパレール4の両第2上側ボールガイド17a間の幅方向の距離よりも大きく、且つ、第2上側ボールガイド17aよりも下方の両延出壁部17間の幅方向の距離よりも小さく設定されている。従って、ロックプレート39は、ロアレール3及びアッパレール4の相対移動の係止状態で透孔25等を幅方向に貫通するものの、前記相対移動係止の解除状態で延出壁部17と干渉することはない。
【0045】
また、ロックプレート39の幅方向の寸法は、両中間開口26(透孔25)の外側端26b間の幅方向の距離よりも大きく設定されている。従って、前記相対移動の係止を解除する側へのロックレバー30の回動は、ロックプレート39の後端が両中間開口26の外側端26bに当接するまでの範囲に制限される。しかしながら、基本的に両中間開口26(透孔25)の形成範囲においては、平坦部29により、両中間開口26の外側端26bが上下方向で底壁部12に最も近付く両外延壁部16の外側端16bと同等の上下方向の位置となる。従って、両中間開口26の外側端26bが、例えば後側開口27の外側端27b後端よりも下降する分、ロックレバー30の回動範囲(ストローク)が増加される。
【0046】
特に、ロックプレート39の幅方向両縁部は、幅方向外側に向かうに従い上方に向かう傾斜部39cを形成する。各中間開口26の外側端26bは、該当の傾斜部39cに上下方向で対向している。従って、ロックプレート39(両傾斜部39c)後端の両外側端26bとの当接位置よりも幅方向内側が両傾斜部39cに沿って下降する分、ロックレバー30の回動範囲がいっそう増加される。図6(b)では、ロックプレート39(両傾斜部39c)後端が両外側端26bに当接する状態にあるときに、両外側端26b間に挟まれる幅方向中央部がそれら外側端26bよりも下方に位置していることを明らかにしている。
【0047】
図3に示すように、アッパレール4内には、1本の線材からなるロックスプリング50が配置される。このロックスプリング50は、平面視において前側に開口する略コ字状に成形されている。そして、ロックスプリング50は、その長手方向中間部を上方に湾出してなる楔部53を有するとともに、後端部を上方に屈曲してなるレバー側係止端部54を有する。ロックスプリング50は、支持軸22の上方から該支持軸22を楔部53に挟入し、ロックプレート39の下方から該ロックプレート39にレバー側係止端部54を挿通・固定することで、アッパレール4等に支持されている。
【0048】
このとき、ロックスプリング50は、レバー側係止端部54においてロックプレート39が上昇する側、即ち各係止孔39bに対応する係止爪13bが嵌入する側にロックレバー30を回動付勢する。また、ロックスプリング50は、その反力で楔部53において支持軸22を下方に、即ち長孔35の長手方向に交差する方向に付勢することで長孔35内での支持軸22の前後方向の移動を係止する。つまり、長孔35内での支持軸22の前後方向の位置は、ロックスプリング50の楔部53によって付勢・保持されている。
【0049】
前記解除ハンドル6は、筒材を曲げ成形してなり、アッパレール4の前側開口端から該アッパレール4内に挿入され、ハンドル差し込み部38が挿入されることでロックレバー30に連結される。従って、解除ハンドル6は、基本的に支持軸22周りにロックレバー30と一体回転する。なお、ハンドル差し込み部38が挿入される解除ハンドル6の下部には、幅方向に延在するスリット状の支持溝62が形成されている。
【0050】
アッパレール4内には、1本の線材からなるハンドルスプリング65が配置される。このハンドルスプリング65は、平面視において後側に開口する略コ字状に成形されている。ハンドルスプリング65は、ハンドル差し込み部38の挿入された解除ハンドル6の支持溝62にその前端部が嵌入され、支持軸22よりも車両後方でロックレバー30(柄部31)の天板部34下面に後端部が当接されている。そして、解除ハンドル6は、支持溝62においてハンドルスプリング65により上昇するように付勢される。
【0051】
解除ハンドル6は、これに挿入されたハンドル差し込み部38の前端部が支持溝62(即ちハンドルスプリング65による解除ハンドル6の付勢位置)の前方で上下方向に揺動自在に支持され、支持溝62においてハンドルスプリング65により上方に付勢されることで、その姿勢が制御されている。
【0052】
そして、解除ハンドル6の前端が持ち上がると、該解除ハンドル6と共にロックレバー30がロックスプリング50の付勢力に抗して支持軸22周りにロックプレート39が下降する側、即ち各係止孔39bが対応する係止爪13bから外れる側に回動する。
【0053】
ここで、解除ハンドル6の操作力が解放されているものとする。このとき、ロックスプリング50の付勢力により、解除ハンドル6と共にロックレバー30が支持軸22周りにロックプレート39が上昇する側、即ち各係止孔39bが対応する係止爪13bに嵌入する側に回動されることで、前述の態様でロアレール3及びアッパレール4の相対移動が係止される。そして、アッパレール4に支持されるシート5の前後方向の位置が保持される。
【0054】
その後、解除ハンドル6がその前端を持ち上げるように操作されたとする。このとき、ロックスプリング50の付勢力に抗して、解除ハンドル6と共にロックレバー30が支持軸22周りにロックプレート39が下降する側、即ち各係止孔39bが対応する係止爪13bから外れる側に回動されることで、前述の態様でロアレール3及びアッパレール4の相対移動の係止が解除される。そして、アッパレール4に支持されるシート5の前後方向の位置調整が可能になる。
【0055】
次に、本実施形態の作用について説明する。
ロアレール3は、底壁部12の取付部12aにおいて、締結ボルト21により車両フロア2に固定される。一方、アッパレール4は、両第1下側ボールガイド18a及び第2下側ボールガイド16aの間で両下側ボール20aを転動させる態様で、ロアレール3に対し相対移動可能に連結される。アッパレール4の両第2下側ボールガイド16aは、両外延壁部16の幅方向内側部に形成されていることで、特に第1下側ボールガイド18a(突条18)が非形成となる取付部12aの位置では、底壁部12との間の上下方向の隙間が幅方向中心側に向かうに従い増加する。従って、これら増加する上下方向の隙間を利用することで、底壁部12に座出し等をすることなく取付部12aに締結ボルト21(頭部21b)を配置することができる。
【0056】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、底壁部12に座出し等をすることなく取付部12aに締結ボルト21(頭部21b)を配置することができる。これにより、ロアレール3の断面形状、ひいては装置全体としての断面形状を上下方向により縮小することができる。
【0057】
(2)ロアレール3及びアッパレール4の相対移動は、ロックレバー30の上下方向への回動に伴い係止孔39b及び係止爪13bが嵌脱することで選択的に係止される。そして、前記相対移動の係止を解除する側へのロックレバー30の回動は、ロックプレート39が両外延壁部16における中間開口26(透孔25)の外側端26bに当接するまでの範囲に制限される。
【0058】
前記相対移動の方向における透孔25の形成範囲外では、各外延壁部16は、上下方向で底壁部12に近付きつつ幅方向外側に張り出していることで、透孔25の前記形成範囲に平坦部29を形成しなくても、中間開口26の幅方向外側端(26b)を幅方向外側にずらしていけばこれに応じてロックレバー30の回動範囲(ストローク)が増加する。
【0059】
本実施形態では、前記相対移動の方向における両中間開口26(透孔25)の形成範囲においては、平坦部29により、両中間開口26の外側端26bが上下方向で底壁部12に最も近付く両外延壁部16の外側端16bと同等の上下方向の位置となる。従って、両中間開口26(透孔25)の外側端26bを幅方向外側に徒にずらすことなくロックレバー30の回動範囲を増加することができる。これにより、ロックレバー30の回動範囲を好適に確保しながらも、両透孔25によるアッパレール4の強度低下をいっそう抑制することができる。
【0060】
(3)本実施形態では、各外延壁部16には、平坦部29の後側及び前側に徐変部16c,16dが形成されている。そして、平坦部29の後側及び前側で、徐変部16c,16dにより異なる断面形状が徐々に近付けられる。これにより、平坦部29の形成に伴って外延壁部16(アッパレール4)に過大な応力が生じることを抑制できる。
【0061】
(4)本実施形態では、アッパレール4の第2縦壁部14の略直下に配置された第1下側ボールガイド18aと、該第1下側ボールガイド18aよりも幅方向外側(外延壁部16の幅方向内側部)に配置された第2下側ボールガイド16aとの間に下側ボール20aが介設される。このため、例えば衝撃等でロアレール3及びアッパレール4が上下方向に圧縮された場合には、該アッパレール4は、両下側ボール20aに案内されつつ両第2縦壁部14等の下側部が幅方向に開くように変形しようとする。しかしながら、アッパレール4のこのような変形は、アッパレール4を幅方向に挟むロアレール3の両第1縦壁部11によって規制される。これにより、ロアレール3及びアッパレール4が上下方向に圧縮された場合のアッパレール4の変形を抑えることができる。また、このときのアッパレール4の変形方向は、ロアレール3から外れる方向ではないことから、ロアレール3からの外れを抑制することができる。
【0062】
(5)本実施形態では、ロアレール3の底壁部12及び第1縦壁部11の連結部位と、アッパレール4の外延壁部16及び延出壁部17の連結部位との間に間隙が設定されて、従来例のようにボールが介設されることがない。このため、例えばロアレール3又はアッパレール4の断面形状を変更して前記間隙を調整することで、ロアレール3又はアッパレール4の変形を簡易に制御することができる。
【0063】
(6)本実施形態では、アッパレール4の両第2縦壁部14の略直下に配置された両下側ボール20aにおいて上下方向の荷重を受ける構成であることで、当該方向の剛性を向上させることができる。
【0064】
(7)本実施形態では、前記相対移動の係止を解除する側へのロックレバー30の回動を、ロックプレート39の後端が両中間開口26の外側端26bに当接するまでの範囲に制限することができる。このため、例えば解除ハンドル6又は周辺部品に、ロックレバー30の前記回動を制限するためのストッパ等を別設する必要がなく、部品点数を削減することができる。
【0065】
(8)本実施形態では、底壁部12に座出し等をすることなく取付部12aに締結ボルト21(頭部21b)を配置したことで、ロアレール3及びアッパレール4の上下方向の隙を縮小することができ、衝撃等でロックプレート39が下降する側、即ち各係止孔39bが対応する係止爪13bから外れる側に回動することを抑制できる。
【0066】
(9)通常、左右一対のアッパレール4の片側には、シートベルトの端末となるベルトアンカーが取り付けられる。従って、例えば車両衝突に伴いベルトアンカーに前後方向の大荷重が入力されると、例えば車両フロア2等の車両ボデーに左右非対称の変形等が生じ、左右のアッパレール4等が相対的に捩れることがある。このとき、左右のロックレバー30が解除ハンドル6の剛性によって姿勢を保持し、ロックレバー30(ロックプレート39)が相対的に係止爪13bとの係合を解除する方向に回動してしまう可能性がある。しかしながら、本実施形態では、底壁部12に座出し等をすることなく取付部12aに締結ボルト21(頭部21b)を配置したことで、ロアレール3の底壁部12及びアッパレール4の両第2縦壁部14等の間の隙間を上下方向により縮小することができ、その分、ロックレバー30(ロックプレート39)の前記した解除する方向への回動を抑えることができる。
【0067】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
図7に示すように、ロアレール3は、前記両第1下側ボールガイド18aと同等の一対の第1下側ボールガイド71の、上下方向において両第2縦壁部14に最も近付く最頂部71a間を幅方向に接続する平板壁部72を備えていてもよい。この場合、底壁部12における略水平な平面形状は、両第1下側ボールガイド71の内側端(最頂部71a)間の幅方向の距離L1を有する。一方、前記両突条18により両第1下側ボールガイド18aを形成した場合、底壁部12における略水平な平面形状は、距離L1よりも小さい両突条18の内側端間の幅方向の距離L2を有する。つまり、平板壁部72により、両第1下側ボールガイド71間の幅方向の距離(L1)を最大限に利用した略水平な平面形状を確保することができる。これにより、ロアレール3(底壁部12)に適宜の機能部品又はその取付部材を設置するための設置位置を好適に確保することができる。
【0068】
具体的には、いわゆるウォークイン機構を備える構成において、該ウォークイン機構の作動前のシート位置を記憶するためのメモリ部品等の設置位置を好適に確保することができる。
【0069】
あるいは、ロアレール3及びアッパレール4をそれらの相対移動を電動で行う、いわゆるパワーシートに適用する場合、ロアレール3及びアッパレール4の一方に設置されたナットと、他方に設置されたスクリューとを螺合させてそれらの動力伝達を行う。従って、このような場合には、ナット又はスクリュー等の設置位置(ブラケット締結座面等)を好適に確保することができる。また、これらナット及びスクリューの螺合部(スクリュー中心)の上下方向の位置を、平板壁部72の嵩上げ分だけロアレール3又はアッパレール4に近付けることができ、強度を増加することができる。
【0070】
なお、左右一対のアッパレール4に配設されたナット又はスクリューを連動させるためのトルクロッドは、各ロアレール3のフランジ13及び各アッパレール4の蓋壁部15間の上下方向の段差部を利用して第2縦壁部14に貫通される。本実施形態では、ロックレバー30の回動範囲の確保にあたって、延出壁部17や第1縦壁部11を上下方向に大きくしていないことから、前記段差部の上下方向の距離が好適に確保されることになる。このため、例えばアッパレール4の断面形状を上下方向に大きくすることなく、トルクロッドを配置することができる。
【0071】
図8に示すように、ロック部材及び付勢部材の機能を兼ね備えた1本の線材からなるロックレバー90であってもよい。すなわち、このロックレバー90は、平面視において後側に開口する略コ字状に成形されている。そして、ロックレバー90は、その長手方向中央部を幅方向両外側に略矩形状に突出してなる係止部91を有する。幅方向各側に配置される係止部91は、前記所定の間隔をもって前後方向に一対で並設されている。
【0072】
また、ロックレバー90は、後側に延びる両端末が幅方向両外側に屈曲されて左右一対のヒンジピン92を形成する。ロックレバー90は、両第2縦壁部14間に配置されてそれらに両ヒンジピン92が回動可能に挿通されることでアッパレール4に対し上下方向に回動可能に連結される。
【0073】
一方、ロックレバー90は、係止部91から前側に延びる閉じた部位でハンドル差し込み部93を形成する。ロックレバー90は、ハンドル差し込み部93が解除ハンドル(6)に挿入されることで、基本的に解除ハンドルと一体回転する。
【0074】
このような構成にあって、操作力の解放された解除ハンドルが所定姿勢を保持するとき、ロックレバー90は、自身の付勢力で各係止部91に対応する係止爪13bが嵌入する側に回動付勢されている。このとき、ロアレール3及びアッパレール4の相対移動が係止される。
【0075】
一方、解除ハンドルが操作されると、ロックレバー90は、弾性変形しつつ各係止部91から対応する係止爪13bが外れる側に回動される。このとき、ロアレール3及びアッパレール4の相対移動の係止が解除される。
【0076】
このように変更することで、特に部品点数を削減することができる。
・前記実施形態において、透孔25(中間開口26)の形成範囲における両平坦部29を割愛してもよい。この場合であっても、各外延壁部16は、上下方向で底壁部12に近付きつつ幅方向外側に張り出していることで、例えば両透孔25をロックプレート39全体が上下方向に貫通可能でなくても、両透孔25(中間開口26)の外側端26bを幅方向外側にずらすことでこれに応じてロックレバー30の回動範囲(ストローク)を漸増することができる。これにより、ロックレバー30の回動範囲を好適に確保しながらも、両透孔25によるアッパレール4の強度低下を抑制することができる。
【0077】
・前記実施形態において、透孔25で両平坦部29が非形成の通常の外延壁部16から平坦部29を一気に成形できるのであれば、両徐変部16c,16dの少なくとも一方を割愛してもよい。
【0078】
・前記実施形態において、車両フロア2に対するロアレール3の締結は、例えば締結部材としてのかしめピンで行ってもよい。また、車両フロア2に対するロアレール3の締結は、適宜のブラケットを介して行ってもよい。
【0079】
・前記実施形態において、突条18(第1下側ボールガイド18a)は、下側ボール20aの移動範囲を含んでいれば、底壁部12の長手方向に間隔をあけて複数配設されていてもよい。
【0080】
・前記実施形態において、ロックプレート39の両傾斜部39cを割愛した平らなロックプレートであってもよい。
・前記実施形態において、1枚の板材にて柄部及びロックプレートの一体形成されたロックレバーであってもよい。
【0081】
・前記実施形態において、アッパレール4及びロックレバー30と、支持軸22及び長孔35との配置関係は逆であってもよい。
・前記実施形態において、ロックレバー30(柄部31)に、長孔35に代えて丸孔を形成し、該丸孔に支持軸22を嵌挿してアッパレール4にロックレバー30を回動自在に連結してもよい。なお、アッパレール4及びロックレバー30と、支持軸22及び丸孔との配置関係は逆であってもよい。
【0082】
・前記実施形態において、ロアレール3は、複数枚の板材を溶接などで結合した構造であってもよい。
・前記実施形態において、アッパレール4は、複数枚の板材を溶接などで結合した構造であってもよい。
【0083】
・前記実施形態において、上側ボール20bに代えて、適宜の摺動部材やローラを採用してもよい。また、上側ボール20b及びその支持構造を割愛してもよい。
・前記各実施形態において、ロアレール3及びアッパレール4と、車両フロア2及びシート5の固定関係(即ち上下の配置関係)は逆であってもよい。この場合、車両フロア2側に設置されるロックレバー30の解除操作は、例えばケーブルなどを通じて適宜の操作部材から行ってもよい。
【0084】
・前記各実施形態において、ロアレール3及びアッパレール4(車両用シートスライド装置)は、シート5に対し各1本ずつ配設される構成であってもよいし、各3本以上ずつ配設される構成であってもよい。
【0085】
・前記各実施形態において、ロアレール及びアッパレールの相対移動方向は、例えば車両幅方向であってもよい。
【符号の説明】
【0086】
2…車両フロア、3…ロアレール(第1レール)、4…アッパレール(第2レール)、5…シート、11…第1縦壁部、12…底壁部(第1連結壁部)、12a…取付部、13…フランジ、13b…係止爪、14…第2縦壁部、15…蓋壁部(第2連結壁部)、16…外延壁部、16a…第2下側ボールガイド(第2ボールガイド)、16c,16d…徐変部、17…延出壁部、18…突条、18a,71…第1下側ボールガイド(第1ボールガイド)、20a…下側ボール(ボール)、21…締結ボルト(締結部材)、21b…頭部、25…透孔、29…平坦部、30…ロックレバー(ロック部材)、31…柄部、39…ロックプレート(平板部)、39b…係止孔(係止部)、50…ロックスプリング(付勢部材)、71a…最頂部、72…平板壁部、90…ロックレバー(ロック部材、付勢部材)、91…係止部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9