(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028615
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】粒子状物質の測定装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/023 20060101AFI20161107BHJP
F01N 3/00 20060101ALI20161107BHJP
G01N 15/06 20060101ALI20161107BHJP
G01N 27/22 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
F01N3/023 K
F01N3/00 F
G01N15/06 D
G01N27/22 A
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-31169(P2013-31169)
(22)【出願日】2013年2月20日
(65)【公開番号】特開2014-159782(P2014-159782A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2016年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】野田 正文
(72)【発明者】
【氏名】阿曽 充宏
(72)【発明者】
【氏名】内山 正
【審査官】
大城 恵理
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−241643(JP,A)
【文献】
特開2012−241642(JP,A)
【文献】
特開2012−237228(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/066462(WO,A1)
【文献】
米国特許第5938802(US,A)
【文献】
特開2008−139294(JP,A)
【文献】
特開平6−81629(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102840011(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/023
F01N 3/00
G01N 15/06
G01N 27/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路内に設けられ、多孔質性の隔壁で区画された格子状の排気流路を形成する複数のセルの上流側と下流側とを交互に目封止されたフィルタと、
少なくとも一つのセルを中心セルとし、当該中心セルを挟んで対角上に配置される一対の第一対角セルに非目封止側からそれぞれ挿入される一対の第一電極と、
前記中心セルを挟んで対角上に配置され、且つ前記第一電極が挿入されない一対の第二対角セルに非目封止側からそれぞれ挿入される一対の第二電極と、
前記一対の第一電極を互いに接続する第一接続部材と、
前記一対の第二電極を互いに接続する第二接続部材と、
前記第一電極と前記第二電極との間の静電容量に基づいて、前記フィルタに捕集される粒子状物質の堆積量を算出する堆積量算出手段と、を備え、
前記中心セルの周囲に隔壁を介して隣接し、且つ前記第一対角セルと第二対角セルとで挟まれる四つのセルが測定用セルとされる
ことを特徴とする粒子状物質の測定装置。
【請求項2】
前記第一電極の前記第一対角セルからの突出量が前記第二電極の前記第二対角セルからの突出量よりも長く形成され、
前記第一接続部材に、前記第一電極の端部を挿通して当該端部が固定される第一固定孔が設けられ、
前記第二接続部材に、前記第二電極の端部を挿通して当該端部が固定される第二固定孔と、前記第一電極を非接触状態で挿通させる挿通孔とが設けられる請求項1に記載の粒子状物質の測定装置。
【請求項3】
前記測定用セル内の非目封止側に、当該測定用セルの流路径を絞るオリフィスを設けた請求項1又は2に記載の粒子状物質の測定装置。
【請求項4】
前記中心セル内に、当該セルの流路を塞ぐ閉塞部材を設けた請求項1から3の何れか一項に記載の粒子状物質の測定装置。
【請求項5】
前記閉塞部材は、前記中心セルの目封止側から非目封止側までを埋め込んで形成される請求項4に記載の粒子状物質の測定装置。
【請求項6】
前記閉塞部材は、セルの非目封止側を目封止して形成される請求項4に記載の粒子状物質の測定装置。
【請求項7】
前記第一対角セル又は前記第二対角セルの何れか一方の非目封止側の端部を第2の閉塞部材で閉塞した請求項4から6の何れか一項に記載の粒子状物質の測定装置。
【請求項8】
前記フィルタは、前記排気通路内に、前記中心セルの目封止側を上流側に向けて配置される請求項1から7の何れか一項に記載の粒子状物質の測定装置。
【請求項9】
前記排気通路の所定位置から分岐するバイパス通路と、
前記バイパス通路の分岐位置よりも下流側の排気通路内に設けられ、当該下流側の排気通路内を流れる排気中の粒子状物質を捕集する第2のフィルタと、をさらに備え、
前記フィルタは、前記バイパス通路内に配置される請求項1から8の何れか一項に記載の粒子状物質の測定装置。
【請求項10】
前記フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼除去する強制再生を実行する際は、前記第一電極及び前記第二電極をヒータとして機能させる
請求項9に記載の粒子状物質の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物質の測定装置に関し、特に、内燃機関から排出される排気ガス中の粒子状物質の測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出される排気ガス中の粒子状物質(Particulate Matter、以下、PM)を捕集するフィルタとして、例えば、ディーゼル・パティキュレイト・フィルタ(Diesel Particulate Filter、以下、DPF)が知られている。一般的に、DPFは、多孔質セラミックスの隔壁で区画された格子状の排気流路を形成する多数のセルを備え、これらセルの上流側と下流側とを交互に目封止して形成される。
【0003】
DPFのPM捕集量には限度があるため、PM堆積量が所定量に達すると、これら堆積したPMを燃焼除去するいわゆる強制再生が必要になる。そのため、強制再生の制御には、PM堆積量を精度良く測定することが望まれる。
【0004】
例えば、特許文献1には、排気下流側が目封止された測定用セルを挟んで対向する一対のセルに一対の電極をそれぞれ挿入し、これら電極間で形成されるコンデンサの静電容量に基づいてPM堆積量を検出するPMセンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−241643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来技術のPMセンサでは、一つのセルを挟んで配置される一対の電極に対して1つのコンデンサのみが形成される。そのため、静電容量をより多くのセルで測定するためには、電極の本数を増加させる必要があり、製造コストの上昇を招く他、電極用セルの増加によりDPFのPM捕集能力が低下する可能性もある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、その目的は、電極配置の最適化を図ることで、電極間に形成されるコンデンサ数を効果的に増加させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明の粒子状物質の測定装置は、内燃機関の排気通路内に設けられ、多孔質性の隔壁で区画された格子状の排気流路を形成する複数のセルの上流側と下流側とを交互に目封止されたフィルタと、少なくとも一つのセルを中心セルとし、当該中心セルを挟んで対角上に配置される一対の第一対角セルに非目封止側からそれぞれ挿入される一対の第一電極と、前記中心セルを挟んで対角上に配置され、且つ前記第一電極が挿入されない一対の第二対角セルに非目封止側からそれぞれ挿入される一対の第二電極と、前記一対の第一電極を互いに接続する第一接続部材と、前記一対の第二電極を互いに接続する第二接続部材と、前記第一電極と前記第二電極との間の静電容量に基づいて、前記フィルタに捕集される粒子状物質の堆積量を算出する堆積量算出手段と、を備え、前記中心セルの周囲に隔壁を介して隣接し、且つ前記第一対角セルと第二対角セルとで挟まれる四つのセルが測定用セルとされることを特徴とする。
【0009】
また、前記第一電極の前記第一対角セルからの突出量が前記第二電極の前記第二対角セルからの突出量よりも長く形成され、前記第一接続部材に、前記第一電極の端部を挿通して当該端部が固定される第一固定孔が設けられ、前記第二接続部材に、前記第二電極の端部を挿通して当該端部が固定される第二固定孔と、前記第一電極を非接触状態で挿通させる挿通孔とが設けられるものであってもよい。
【0010】
また、前記測定用セル内の非目封止側に、当該測定用セルの流路径を絞るオリフィスを設けてもよい。
【0011】
また、前記中心セル内に、当該セルの流路を塞ぐ閉塞部材を設けてもよい。
【0012】
また、前記閉塞部材は、前記中心セルの目封止側から非目封止側までを埋め込んで形成されてもよい。
【0013】
また、前記閉塞部材は、セルの非目封止側を目封止して形成されてもよい。
【0014】
また、前記第一対角セル又は前記第二対角セルの何れか一方の非目封止側の端部を第2の閉塞部材で閉塞してもよい。
【0015】
また、前記フィルタは、前記排気通路内に、前記中心セルの目封止側を上流側に向けて配置されてもよい。
【0016】
また、前記排気通路の所定位置から分岐するバイパス通路と、前記バイパス通路の分岐位置よりも下流側の排気通路内に設けられ、当該下流側の排気通路内を流れる排気中の粒子状物質を捕集する第2のフィルタと、をさらに備え、前記フィルタは、前記バイパス通路内に配置されてもよい。
【0017】
また、前記フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼除去する強制再生を実行する際は、前記第一電極及び前記第二電極をヒータとして機能させてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の粒子状物質の測定装置によれば、電極配置の最適化を図ることで、電極間に形成されるコンデンサ数を効果的に増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る粒子状物質の測定装置を示す模式的な全体構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る粒子状物質の測定装置において、(a)はDPFを排気下流側から視た模式的な斜視図、(b)はDPFの一部を排気下流側から視た模式的な平面図である。
【
図3】(a)〜(e)は、
図2(a)のA1〜A5線縦断面図である。
【
図4】(a)〜(e)は、
図2(a)のB1〜B5線横断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る粒子状物質の測定装置において、接続部材の変形例を示す模式的な斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る粒子状物質の測定装置において、閉塞部材の変形例を示す模式的な断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る粒子状物質の測定装置において、電極用セルの変形例を示す模式的な断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る粒子状物質の測定装置において、測定用セルの隔壁表面に堆積するPMを従来技術と比較した図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る粒子状物質の測定装置において、静電容量の変化がサチュレートする時期を従来技術と比較した図である。
【
図10】本発明の他の実施形態に係る粒子状物質の測定装置を示す模式的な全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1〜4に基づいて、本発明の一実施形態に係る粒子状物質の測定装置を説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0021】
図1に示すように、ディーゼルエンジン(以下、単にエンジン)10には、吸気マニホールド10aと排気マニホールド10bとが設けられている。吸気マニホールド10aには新気を導入する吸気通路11が接続され、排気マニホールド10bには排気ガスを大気に放出する排気通路12が接続されている。
【0022】
さらに、排気通路12には、排気上流側から順に、排気管内噴射装置13、排気後処理装置14、DPF入口温度センサ31、DPF出口温度センサ32が設けられている。
【0023】
排気管内噴射装置13は、電子制御ユニット(以下、ECU)20から出力される指示信号に応じて、排気通路12内に未燃燃料(HC)を噴射する。なお、エンジン10の多段噴射によるポスト噴射を用いる場合は、この排気管内噴射装置13を省略してもよい。
【0024】
DPF入口温度センサ31は、DPF16に流入する排気ガスの温度(以下、入口温度T
IN)を検出する。DPF出口温度センサ32は、DPF16から流出する排気ガスの温度(以下、出口温度T
OUT)を検出する。これら入口温度T
IN及び出口温度T
OUTは、電気的に接続されたECU20に出力される。
【0025】
排気後処理装置14は、ケース14a内に排気上流側から順に酸化触媒15、DPF16を配置して構成されている。
【0026】
酸化触媒15は、例えば、コーディエライトハニカム構造体等のセラミックス製担体表面に触媒成分を担持して形成されている。酸化触媒15は、DPF16の強制再生時に、排気管内噴射装置13又はポスト噴射によって未燃燃料(HC)が供給されると、これを酸化して排気ガスの温度を上昇させる。これにより、DPF16はPM燃焼温度(例えば、約600℃)まで昇温されて、堆積したPMが燃焼除去される。
【0027】
DPF16は、例えば、多孔質セラミックスの隔壁で区画された格子状の排気流路を形成する多数のセルを排気ガスの流れ方向に沿って配置し、これらセルの上流側と下流側とを交互に目封止して構成されている。以下、
図2〜4に基づいて、本実施形態のDPF16の詳細構造を説明する。
【0028】
図2〜4に示すように、DPF16には、排気上流側を目封止されて、閉塞部材6が埋設された複数のセル1が、中心セルとして選定されている。また、中心セル1を挟んで対角上に配置される一対のセル2には、第一電極Aがそれぞれ挿入されている(以下、セル2を第一電極用セルという)。さらに、中心セル1を挟んで対角上に配置される他の一対のセル3には、第二電極Bがそれぞれ挿入されている(以下、セル3を第二電極用セルという)。
【0029】
第一電極A及び第二電極Bは、例えば導電性の金属線であって、第一電極用セル2及び第二電極用セル3に非目封止側(排気下流側)からそれぞれ挿入されている。すなわち、中心セル1の対角上に四本の電極が配置されて、これら第一電極A及び第二電極Bの間に四つのコンデンサが形成されている。以下、中心セル1の周囲に隔壁を介して隣接し、且つ第一電極用セル2と第二電極用セル3とで挟まれた四つのセル4を測定用セルという。
【0030】
第一電極用セル2に挿入された第一電極Aは、排気下流側の基端部を外方に突出させると共に、その基端部を導電性の金属線で形成された第一接続部材A1(
図2参照)によって互いに接続されている。同様に、第二電極用セル3に挿入された第二電極Bは、排気下流側の基端部を外方に突出させると共に、その基端部を導電性の金属線で形成された第二接続部材B1(
図2参照)によって互いに接続されている。
【0031】
本実施形態において、第一電極Aの突出量は、第一接続部材A1と第二接続部材B1との接触を回避するために、第二電極Bの突出量よりも長く設定されている。なお、これら突出量は、必ずしも第一電極Aを長くする必要はなく、第二電極Bを長く設定することもできる。
【0032】
また、
図5に示すように、第一接続部材A1及び第二接続部材B1を平板状に形成することもできる。この場合、第一接続部材A1には、第一電極Aの端部を挿通させて溶接固定する固定孔a1を形成すると共に、第二接続部材B1には、第二電極Bの端部を挿通させて溶接固定する固定孔b1を形成すればよい。さらに、第二接続部材B1には、第一電極Aよりも大径に形成されて、第一電極Aを非接触状態で挿通させる挿通孔b2を設ければよい。
【0033】
測定用セル4の排気上流側端には、測定用セル4内に流れ込む排気ガスを絞るオリフィス8が設けられている(
図3,4参照)。このオリフィス8により測定用セル4内への排気ガス流量が低減されることで、測定用セル4を区画する隔壁へのPM堆積を遅らせることができる。すなわち、オリフィス8の開口径を適宜最適な値に設定すれば、第一電極Aと第二電極Bとの間の静電容量変化がサチュレートする時期を所望の時期に調整できるように構成されている。
【0034】
中心セル1内には、排気流路を閉塞する閉塞部材6が設けられている。この閉塞部材6は、例えばDPF16と同一材料のセラミックスで形成されている。本実施形態において、閉塞部材6は、中心セル1の目封止側から非目封止側に至る排気流路を全て塞ぐように、中心セル1内の全領域に埋設されている(
図3,4参照)。
【0035】
すなわち、測定用セル4に流入した排気ガスは、中心セル1に流れ込むことなく、第一電極用セル2及び第二電極用セル3へと流れ込むように構成されている。これにより、測定用セル4に流入した排気ガス中のPMは、電極用セル2,3側の隔壁表面に捕集され、中心セル1側の隔壁への堆積が効果的に抑制される。特に、オリフィス8との相乗効果により、測定用セル4の中心セル1側の隔壁のみならず、測定用セル4内の目封止背面及び隔壁表面へのコ字状(U字状)の堆積も効果的に抑制することができる。
【0036】
なお、閉塞部材6は必ずしも、中心セル1内の全領域に埋設される必要はなく、
図6に示すように、中心セル1内の流路の一部を閉塞(図示例では、非目封止側を目封止)するように設けてもよい。
【0037】
また、
図7に示すように、追加の閉塞部材7(第二の閉塞部材)を第一電極A又は第二電極Bの何れか一方(図示例では第一電極A)の挿入側端部に設けてもよい。この場合、PMの中心セル1側の隔壁表面への堆積のみならず、第一電極用セル2側の隔壁表面への堆積も効果的に抑制することができる。
【0038】
次に、
図1に戻って、本実施形態のECU20を説明する。ECU20は、エンジン10や排気管内噴射装置13の燃料噴射等の各種制御を行うもので、公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備え構成されている。また、ECU20は、静電容量演算部21と、PM堆積量推定部22とを一部の機能要素として有する。これら各機能要素は、一体のハードウェアであるECU20に含まれるものとして説明するが、これらのいずれか一部を別体のハードウェアに設けることもできる。
【0039】
静電容量演算部21は、第一電極A及び第二電極Bから入力される信号に基づいて、これら第一電極Aと第二電極Bとの間の静電容量Cを演算する。静電容量Cは、電極A,B間の媒体の誘電率ε、電極A,Bの面積S、電極A,B間の距離dとする以下の数式1で演算される。
【0041】
PM堆積量推定部22は、DPF入口温度センサ31で検出される入口温度T
IN及びDPF出口温度センサ32で検出される出口温度T
OUTの平均値(以下、DPF平均温度T
AVE)と、静電容量演算部21で演算される静電容量Cとに基づいて、DPF16に捕集されたPM堆積量PM
DEPを推定する。PM堆積量PM
DEPの推定には、予め実験により求めた近似式やマップ等を用いることができる。
【0042】
次に、本実施形態に係る粒子状物質の測定装置による作用効果を説明する。
【0043】
従来のPMセンサでは、一つのセルを挟んで配置される一対の電極に対して一つのコンデンサのみが形成される(例えば、二本の電極A、二本の電極Bに対しては二つのコンデンサのみが形成される)。そのため、測定用セルを増やすためには、電極の本数を増加させる必要があり、製造コストの増加を招く他、電極用セルの増加によりDPFのPM捕集能力が低下するといった課題がある。
【0044】
これに対し、本実施形態の粒子状物質の測定装置では、二本の第一電極A及び、二本の第二電極Bがそれぞれ中心セル1を挟んで対角上にある一対のセル2,3に挿入され、これら二本の第一電極Aと二本の第二電極Bとの間に四つのコンデンサが形成される。すなわち、中心セル1の対角上にある四つのセルが静電容量の測定用セルとなるように構成されている。
【0045】
したがって、本実施形態の粒子状物質の測定装置によれば、電極A,Bの本数を増やすことなく、コンデンサを効果的に多く形成することが可能となり、製造コストの増加やDPFのPM捕集能力低下を効果的に抑制することができる。
【0046】
また、従来のPMセンサでは、測定用セルを挟んで対向する四つのセルは、排気上流側のみが目封止され、排気下流側は非目封止とされている。そのため、測定用セルに流入した排気ガス中のPMは、測定用セルを区画する四つの隔壁表面に略矩形状に堆積する。このように、測定用セルの隔壁表面にPMが略矩形状に堆積すると、コンデンサを形成する電極間の静電容量変化は早期にサチュレートして、感度の低下を招くといった課題がある。
【0047】
これに対し、本実施形態の粒子状物質の測定装置では、測定用セル4の排気上流側端に、排気ガス流量を絞るオリフィス8が設けられている。また、中心セル1内には、中心セル1の排気流路を閉塞する閉塞部材6が設けられている。
【0048】
すなわち、オリフィス8によって測定用セル4内への排気ガス流量が低減されるため、測定用セル4を区画する隔壁へのPM堆積は抑制される。また、閉塞部材6によって中心セル1への排気ガス流入が阻止されるため、中心セル1側の隔壁への堆積も抑制される(
図8参照)。さらに、オリフィス8と閉塞部材6との相乗効果により、測定用セル4の中心セル1側の隔壁のみならず、測定用セル4内の目封止背面及び隔壁表面へのコ字状(U字状)のPM堆積も効果的に抑制される。その結果、
図9に示すように、静電容量の変化がサチュレートする時期を、従来技術のPMセンサに比べて大幅に遅れさせることが可能になる。
【0049】
したがって、本実施形態の粒子状物質の測定装置によれば、静電容量変化の早期サチュレートが効果的に抑制されて、感度の低下を確実に抑止することができる。
【0050】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0051】
例えば、DPF16は、排気通路12内に中心セル1の目封止側を排気上流側に向けて配置されるものとして説明したが、中心セル1の非目封止側を排気上流側に向けて配置してもよい。また、オリフィス8のみで静電容量変化のサチュレート時期を所望の時期に調整できる場合は、中心セル1の閉塞部材6を省略して構成してもよい。
【0052】
また、
図10に示すように、酸化触媒15よりも下流側の排気通路12から分岐するバイパス通路18を設け、このバイパス通路18内に容量を小さくした計測用のDPF16を配置して構成してもよい。この場合、分岐部よりも下流側の排気通路12には容量の大きいDPF17(第2のフィルタ)を設け、バイパス通路18には排気ガスの流量を調整するオリフィス18aを設けることが好ましい。また、計測用のDPF16の強制再生を実行する場合は、電極A,Bに電圧を印加してヒータとして機能させてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 中心セル
2 第一電極用セル(第一対角セル)
3 第二電極用セル(第二対角セル)
4 測定用セル
6 閉塞部材
8 オリフィス
10 エンジン
12 排気通路
14 排気後処理装置
16 DPF(フィルタ)
20 ECU
21 静電容量演算部(堆積量算出手段)
22 PM堆積量推定部(堆積量算出手段)
A 第一電極
B 第二電極
A1 第一接続部材
B1 第二接続部材