(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028620
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】3レベルインバータのスナバ回路
(51)【国際特許分類】
H02M 7/483 20070101AFI20161107BHJP
H02M 1/00 20070101ALI20161107BHJP
H02M 1/34 20070101ALI20161107BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20161107BHJP
【FI】
H02M7/483
H02M1/00 F
H02M1/34
H02M7/48 M
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-32770(P2013-32770)
(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2014-165964(P2014-165964A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】大井 一伸
【審査官】
栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0307533(US,A1)
【文献】
特開2010−252548(JP,A)
【文献】
特開平07−337022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/483
H02M 1/00
H02M 1/34
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源中性点を有した直流電源回路の正極端と交流出力端の間に接続された正極側スイッチング素子と、
前記直流電源回路の負極端と前記交流出力端の間に接続された負極側スイッチング素子と、
前記電源中性点と前記交流出力端の間に直列接続され、互いに逆の耐圧方向に制御できる第1および第2の中性点スイッチング素子と、
前記正極側、負極側、中性点の各スイッチング素子に各々設けられたスナバ回路とを備え、
前記第1および第2の中性点スイッチング素子のうちいずれか一方に設けられたスナバ回路は、当該いずれか一方の中性点スイッチング素子の両端間に直列接続された第1のスナバダイオードおよびスナバコンデンサと、前記第1のスナバダイオードおよびスナバコンデンサの共通接続点に一端が接続された第1のスナバ抵抗と、前記第1のスナバ抵抗の他端と前記直流電源回路の正極端の間に並列接続された第2の抵抗および第2のダイオードとを備えていることを特徴とする3レベルインバータのスナバ回路。
【請求項2】
電源中性点を有した直流電源回路の正極端と交流出力端の間に接続された正極側スイッチング素子と、
前記直流電源回路の負極端と前記交流出力端の間に接続された負極側スイッチング素子と、
前記電源中性点と前記交流出力端の間に直列接続され、互いに逆の耐圧方向に制御できる第1および第2の中性点スイッチング素子と、
前記正極側、負極側、中性点の各スイッチング素子に各々設けられたスナバ回路とを備え、
前記第1および第2の中性点スイッチング素子のうちいずれか一方に設けられたスナバ回路は、当該いずれか一方の中性点スイッチング素子の両端間に直列接続された第1のスナバダイオードおよびスナバコンデンサと、前記第1のスナバダイオードおよびスナバコンデンサの共通接続点に一端が接続された第1のスナバ抵抗と、前記第1のスナバ抵抗の他端と前記直流電源回路の正極端の間に接続されたスイッチング手段とを備えていることを特徴とする3レベルインバータのスナバ回路。
【請求項3】
前記スイッチング手段は、双方向スイッチにより構成されていることを特徴とする請求項2に記載の3レベルインバータのスナバ回路。
【請求項4】
電源中性点を有した直流電源回路の正極端と交流出力端の間に接続された正極側スイッチング素子と、
前記直流電源回路の負極端と前記交流出力端の間に接続された負極側スイッチング素子と、
前記電源中性点と前記交流出力端の間に並列接続され、互いに逆の耐圧方向に制御できる第1および第2の中性点スイッチング素子と、
前記正極側、負極側、中性点の各スイッチング素子に各々設けられたスナバ回路とを備え、
前記第1の中性点スイッチング素子に設けられたスナバ回路は、第1の中性点スイッチング素子の両端間に直列接続された第1のスナバダイオードおよび第1のスナバコンデンサと、前記第1のスナバダイオードおよび第1のスナバコンデンサの共通接続点と前記直流電源回路の正極端の間に接続された第1のスナバ抵抗とを備え、
前記第2の中性点スイッチング素子に設けられたスナバ回路は、第2の中性点スイッチング素子の両端間に直列接続された第2のスナバダイオードおよび第2のスナバコンデンサと、前記第2のスナバダイオードおよび第2のスナバコンデンサの共通接続点と前記直流電源回路の負極端の間に接続された第2のスナバ抵抗とを備えていることを特徴とする3レベルインバータのスナバ回路。
【請求項5】
電源中性点を有した直流電源回路の正極端と交流出力端の間に接続された正極側スイッチング素子と、
前記直流電源回路の負極端と前記交流出力端の間に接続された負極側スイッチング素子と、
前記電源中性点と前記交流出力端の間に直列接続され、互いに逆の耐圧方向に制御できる第1および第2の中性点スイッチング素子と、
前記正極側スイッチング素子および負極側スイッチング素子に各々設けられた第1および第2のスナバ回路と、
前記第1および第2の中性点スイッチング素子の直列体の両端間に第1のスナバダイオードおよび第1のスナバコンデンサを直列接続し、該第1のスナバダイオードおよび第1のスナバコンデンサの共通接続点と前記直流電源回路の正極端の間に第1のスナバ抵抗を接続して構成された第3のスナバ回路と、
前記第1および第2の中性点スイッチング素子の直列体の両端間に第2のスナバダイオードおよび第2のスナバコンデンサを直列接続し、該第2のスナバダイオードおよび第2のスナバコンデンサの共通接続点と前記直流電源回路の負極端の間に第2のスナバ抵抗を接続して構成された第4のスナバ回路と、を備えたことを特徴とする3レベルインバータのスナバ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3レベルインバータのスナバ回路に関し、例えばA−NPC(Advanced−Neutral Point Clamped)型3レベルインバータにおける中アームのスイッチングサージ吸収用スナバ回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、3レベルインバータのスナバ回路としては、例えば特許文献1〜5に記載のものが提案されていた。
【0003】
特許文献1〜3では、1つのスナバで複数の素子のサージ電圧を吸収できるスナバ回路を提案している。複数のスイッチング素子をモジュール化したものは素子間の配線が短いため、上記特許文献1〜3のスナバ回路を適用できる。しかしモジュール品は電流容量が限られ、大電流を扱えるモジュール品はまだ存在しない。代わりに個別の素子を組み合わせて回路を構成すると、各素子間の配線が長くなり寄生リアクタンス成分が増え、サージ電圧が増加してしまう。
【0004】
図8は、A−NPC型3レベルインバータの複数のスイッチング素子にまとめてスナバ回路を適用した際に、問題となる寄生リアクタンス成分の配置をリアクタンス記号で示している。
図8において、直列接続された2つの直流コンデンサ10P,10Nは、図示省略の直流電源から各々+Eの電圧が印加され、直流電源回路を構成している。
【0005】
この直流電源回路の正極端Pと負極端Nの間には、上アーム側のスイッチング素子T1および下アーム側のスイッチング素子T4が直列に接続されている。前記直流コンデンサ10P,10Nの共通接続点(直流電源回路の中性点M)と前記スイッチング素子T1,T4の共通接続点(交流出力端AC)の間には、中アーム側のスイッチング素子T2,T3が直列に接続されている。
【0006】
前記正極端Pと中性点Mの間にはスナバ回路用のコンデンサC11およびダイオードD11が直列に接続され、前記負極端Nと中性点Mの間にはスナバ回路用のコンデンサC12およびダイオードD12が直列に接続されている。
【0007】
図8に示すように、各スイッチング素子T1〜T4間に寄生リアクタンス成分がある場合では、特許文献1〜3に記載のスナバ回路を適用してもサージ電圧を抑制する効果は得られない。そこで、各スイッチング素子個別に取り付けることができ、寄生リアクタンス成分が大きくてもサージを抑制できるスナバ回路が必要となる。
【0008】
特許文献4には、コンデンサを個別配置にすることでサージ電圧を抑えたスナバ回路方式が開示されているが、一部のスイッチング素子に発生するサージ電圧の吸収効果がないという問題点がある。
図9にサージ電圧抑制効果が得られない例を示す。
【0009】
図9において、
図8と同一部分は同一符号をもって示している。直流電源回路の正極端Pと負極端Nの間にはスイッチング素子G1〜G4が直列に接続され、スイッチング素子G2,G3の共通接続点を交流出力端ACとしている。また、前記正極端Pと負極端Nの間にはアームコンデンサC1,C2が直列に接続されている。
【0010】
前記スイッチング素子G1,G2の共通接続点にはダイオードD11のカソードが接続され、スイッチング素子G3,G4の共通接続点にはダイオードD12のアノードが接続され、前記中性点MとダイオードD11のアノードとダイオードD12のカソードは、アームコンデンサC1,C2の共通接続点に各々接続されている。L1,L2は寄生リアクタンス成分を示している。
【0011】
図9の構成において、スイッチング素子G2,G3がON状態にあり、そこからスイッチング素子G2のみをOFFすることを考える。この時、寄生リアクタンス成分L1を流れる電流はアームコンデンサC2,スイッチング素子G4,G3を迂回すればよい。しかし、寄生リアクタンス成分L2を流れる電流の迂回路がなく、寄生リアクタンス成分L2の磁気エネルギーがダイオードD11を介してスイッチング素子G2のサージ電圧として現われてしまう(図示実線の矢印)。
【0012】
図10は、ANPC型3レベルインバータにおいて、各スイッチング素子に従来からあるCRDスナバ回路を取り付けた構成を示している。
図10において
図8と同一部分は同一符号をもって示している。D1〜D4は各スイッチング素子T1〜T4の寄生逆並列ダイオードを示している。
【0013】
上アームのスイッチング素子T1の両端間にはスナバコンデンサC1およびスナバダイオードD1aが直列に接続され、それらの共通接続点と前記負極端Nの間にはスナバ抵抗R1が接続されている。
【0014】
中アームのスイッチング素子T2の両端間にはスナバコンデンサC2およびスナバダイオードD2aが直列に接続され、それらの共通接続点と前記負極端Nの間にはスナバ抵抗R2が接続されている。
【0015】
中アームのスイッチング素子T3の両端間にはスナバコンデンサC3およびスナバダイオードD3aが直列に接続され、それらの共通接続点と前記正極端Pの間にはスナバ抵抗R3が接続されている。
【0016】
下アームのスイッチング素子T4の両端間にはスナバコンデンサC4およびスナバダイオードD4aが直列に接続され、それらの共通接続点と前記正極端Pの間にはスナバ抵抗R4が接続されている。
【0017】
前記各スイッチング素子T1〜T4を選択的にオン、オフ制御することにより、交流出力端ACに3レベルの電圧が導出される。
【0018】
すなわち、
T1,T2がON:電圧+Eを出力
T2,T3がON:零電圧を出力
T3,T4がON:電圧−Eを出力
となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2010−252548号公報
【特許文献2】特開2003−052178号公報
【特許文献3】特開平11−136954号公報
【特許文献4】特開平11−341822号公報
【特許文献5】特開平07−312872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
3レベルインバータの各スイッチング素子に個別にCRDスナバ回路を設けた
図10の回路では、以下に述べる2点の問題点がある。尚、2つの問題点を説明するために、
図10の回路に流れる電流の経路を
図11、
図12に示す。
【0021】
<問題点1>
スイッチング素子T4がONすると
図11(a)の矢印のように電流が流れてスナバコンデンサC3は直流コンデンサ10P,10Nによって+2Eに充電される。その後、スイッチング素子T4がOFF,スイッチング素子T2がONすると、
図11(b)の矢印のように電流が流れてスナバコンデンサC3は+Eに放電される。そのときに移動したエネルギーはスナバ抵抗R3で消費されるので、損失が増加してしまう。また、スナバ抵抗R3として損失による発熱に耐えられるような抵抗を選定する必要があり、大型化やコスト増加の問題がある。
【0022】
<問題点2>
スイッチング素子T1をOFFし、スイッチング素子T3をONにして
図12の破線で示すように中アームのスイッチング素子T2,T3に電流を流すことを考える。しかし中アームに寄生リアクタンス成分(図示寄生L)があると、中アーム通過電流が増加するまでに時間がかかってしまう。その間、スナバコンデンサC3が+Eに充電されているため、電流は
図12の実線で示すスナバコンデンサC3、スナバ抵抗R3を通過し、スナバコンデンサC3が放電されてしまう。スナバコンデンサC3には、直流コンデンサ10P,10Nから電荷が再充電されるが、この再充電が間に合わないと、スイッチング素子T1をONした際に大電流が流れ、素子が破壊されてしまう。
【0023】
上記の問題点1を解決するには、スナバ抵抗R3として値の大きなものを選定すればよい。しかし、問題点2の解決には逆に値の小さなスナバ抵抗R3を必要とするので、従来のCRDスナバ回路では2つの問題点を同時に解決できない。また、吸収したサージエネルギーを放電する必要があるため、スナバ抵抗の値を大きくすることはできない。
【0024】
本発明は上記課題を解決するものであり、その目的は、各素子間の配線に寄生リアクタンス成分がある場合でも電圧サージを抑制すること、またスナバコンデンサC3の充電電圧が+Eを超えることが抑制されてサージ電圧を抑制することができ、スナバコンデンサC3の充電電圧が+Eを超えることを抑制し、素子T3の+Eを上回るサージ電圧を確実に抑制することができる3レベルインバータのスナバ回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するための請求項1に記載の3レベルインバータのスナバ回路は、電源中性点を有した直流電源回路の正極端と交流出力端の間に接続された正極側スイッチング素子と、前記直流電源回路の負極端と前記交流出力端の間に接続された負極側スイッチング素子と、前記電源中性点と前記交流出力端の間に直列接続され、互いに逆の耐圧方向に制御できる第1および第2の中性点スイッチング素子と、前記正極側、負極側、中性点の各スイッチング素子に各々設けられたスナバ回路とを備え、前記第1および第2の中性点スイッチング素子のうちいずれか一方に設けられたスナバ回路は、当該いずれか一方の中性点スイッチング素子の両端間に直列接続された第1のスナバダイオードおよびスナバコンデンサと、前記第1のスナバダイオードおよびスナバコンデンサの共通接続点に一端が接続された第1のスナバ抵抗と、前記第1のスナバ抵抗の他端と前記直流電源回路の正極端の間に並列接続された第2の抵抗および第2のダイオードとを備えていることを特徴としている。
【0026】
上記構成によれば、不要なエネルギーの移動を抑制してエネルギー損失増加を抑えることができ、またスイッチングによるサージ電圧を抑制することができる。このため、中性点スイッチング素子間の配線が長い場合でも、効果的に電圧サージを抑制するスナバ回路を実現できる。また、すべて受動素子によってスナバ回路を構成できるため、追加のゲート回路や制御回路が不要である。
【0027】
また請求項2に記載の3レベルインバータのスナバ回路は、電源中性点を有した直流電源回路の正極端と交流出力端の間に接続された正極側スイッチング素子と、前記直流電源回路の負極端と前記交流出力端の間に接続された負極側スイッチング素子と、前記電源中性点と前記交流出力端の間に直列接続され、互いに逆の耐圧方向に制御できる第1および第2の中性点スイッチング素子と、前記正極側、負極側、中性点の各スイッチング素子に各々設けられたスナバ回路とを備え、前記第1および第2の中性点スイッチング素子のうちいずれか一方に設けられたスナバ回路は、当該いずれか一方の中性点スイッチング素子の両端間に直列接続された第1のスナバダイオードおよびスナバコンデンサと、前記第1のスナバダイオードおよびスナバコンデンサの共通接続点に一端が接続された第1のスナバ抵抗と、前記第1のスナバ抵抗の他端と前記直流電源回路の正極端の間に接続されたスイッチング手段とを備えていることを特徴としている。
【0028】
上記構成によれば、第1および第2の中性点スイッチング素子のうちいずれか一方に設けられたスナバ回路のスナバコンデンサが過充電される経路を無効にすることができる回路設計となっているため、スナバ抵抗の抵抗値を小さく選定することができる。このため、スナバコンデンサの放電が発生しても素早く再充電が可能となるため、効果的に電圧サージを抑制することができ、またエネルギー損失を小さくすることができる。
【0029】
また請求項3に記載の3レベルインバータのスナバ回路は、請求項2において、前記スイッチング手段は、双方向スイッチにより構成されていることを特徴としている。
【0030】
上記構成によれば、第1および第2の中性点スイッチング素子のうちいずれか一方に設けられたスナバ回路のスナバコンデンサの、過充電される経路と過放電される経路とを無効にすることができるので、スナバコンデンサの不要な充放電を抑制してエネルギー損失を小さくすることができる。
【0031】
また請求項4に記載の3レベルインバータのスナバ回路は、電源中性点を有した直流電源回路の正極端と交流出力端の間に接続された正極側スイッチング素子と、前記直流電源回路の負極端と前記交流出力端の間に接続された負極側スイッチング素子と、前記電源中性点と前記交流出力端の間に並列接続され、互いに逆の耐圧方向に制御できる第1および第2の中性点スイッチング素子と、前記正極側、負極側、中性点の各スイッチング素子に各々設けられたスナバ回路とを備え、前記第1の中性点スイッチング素子に設けられたスナバ回路は、第1の中性点スイッチング素子の両端間に直列接続された第1のスナバダイオードおよび第1のスナバコンデンサと、前記第1のスナバダイオードおよび第1のスナバコンデンサの共通接続点と前記直流電源回路の正極端の間に接続された第1のスナバ抵抗とを備え、前記第2の中性点スイッチング素子に設けられたスナバ回路は、第2の中性点スイッチング素子の両端間に直列接続された第2のスナバダイオードおよび第2のスナバコンデンサと、前記第2のスナバダイオードおよび第2のスナバコンデンサの共通接続点と前記直流電源回路の負極端の間に接続された第2のスナバ抵抗とを備えていることを特徴としている。
【0032】
上記構成によれば、スナバコンデンサの過充電を防止することができる回路設計となっているため、スナバ抵抗の抵抗値を小さく選定することが可能となる。このため、大電流を扱うインバータで複数のスイッチング素子がモジュール化された部品を使わずに構成した場合、各素子間の配線の寄生リアクタンス成分が増加し、それによるスナバコンデンサの放電が発生してもすぐに再充電が可能となるため、効果的に電圧サージを抑制することができる。
【0033】
また請求項5に記載の3レベルインバータのスナバ回路は、電源中性点を有した直流電源回路の正極端と交流出力端の間に接続された正極側スイッチング素子と、前記直流電源回路の負極端と前記交流出力端の間に接続された負極側スイッチング素子と、前記電源中性点と前記交流出力端の間に直列接続され、互いに逆の耐圧方向に制御できる第1および第2の中性点スイッチング素子と、前記正極側スイッチング素子および負極側スイッチング素子に各々設けられた第1および第2のスナバ回路と、前記第1および第2の中性点スイッチング素子の直列体の両端間に第1のスナバダイオードおよび第1のスナバコンデンサを直列接続し、該第1のスナバダイオードおよび第1のスナバコンデンサの共通接続点と前記直流電源回路の正極端の間に第1のスナバ抵抗を接続して構成された第3のスナバ回路と、前記第1および第2の中性点スイッチング素子の直列体の両端間に第2のスナバダイオードおよび第2のスナバコンデンサを直列接続し、該第2のスナバダイオードおよび第2のスナバコンデンサの共通接続点と前記直流電源回路の負極端の間に第2のスナバ抵抗を接続して構成された第4のスナバ回路と、を備えたことを特徴としている。
【0034】
上記構成によれば、スナバコンデンサの過充電を防止することができる回路設計となっているため、スナバ抵抗の抵抗値を小さく選定することが可能となる。したがって、スナバコンデンサの放電が発生してもすぐに再充電が可能であり、効果的に電圧サージを抑制することができる。
【0035】
さらに、第1および第2の中性点スイッチング素子間の配線をできるだけ短くすることで2素子まとめてスナバ回路を適用することができるので、逆阻止用のダイオードを削減することができ、また特殊なスイッチング素子を使用せずに構成することができる。
【発明の効果】
【0036】
(1)請求項1〜5に記載の発明によれば、各素子間の配線に寄生リアクタンス成分がある場合でも電圧サージを抑制すること、またスナバコンデンサ(C3)の充電電圧が+Eを超えることが抑制されてサージ電圧を抑制することができ、スナバコンデンサ(C3)の充電電圧が+Eを超えることを抑制し、素子(T3)の+Eを上回るサージ電圧を確実に抑制することができ、また不要なエネルギー損失を小さくすることができる。
(2)請求項1〜3に記載の発明によれば、中性点に直列接続された2つのスイッチング素子を備えた回路構成において、回路中の寄生リアクタンス成分が大きくなっても、スイッチングによるサージ電圧を効果的に抑制することができ、また不要なエネルギー損失を小さくすることができる。さらに、前記スイッチング素子の破壊を防止することができる。
(3)請求項1に記載の発明によれば、スナバ回路を受動素子のみで構成することができ、追加のゲート回路や制御回路が不要であり構成が簡単化される。
(4)請求項2に記載の発明によれば、スナバ抵抗の値の選定が簡単であり、またスナバコンデンサの過充電が完全に抑制されるためエネルギー損失を小さくすることができる。
(5)請求項3に記載の発明によれば、スナバコンデンサの不要な充放電を抑制することができエネルギー損失をさらに小さくすることができる。
(6)請求項4に記載の発明によれば、中性点に並列接続された2つのスイッチング素子を備えた回路構成において、回路中の寄生リアクタンス成分が大きくなっても、スイッチングによるサージ電圧を効果的に抑制することができ、また不要なエネルギー損失を小さくすることができる。さらに、前記スイッチング素子の破壊を防止することができる。
(7)請求項5に記載の発明によれば、直列接続される第1および第2の中性点スイッチング素子間の配線をできる限り短くすることで2つの素子をまとめてスナバ回路を適用することができ、逆阻止用のダイオードが不要となり、またリバースブロッキングIGBTなどの特殊なスイッチング素子を用いることなく構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図4】本発明の実施例3におけるスナバ回路の動作を説明する回路図。
【
図5】本発明の実施例3におけるスナバ回路の動作を説明する回路図。
【
図8】複数のスイッチング素子にまとめてスナバ回路を適用した場合に問題となる寄生リアクタンス成分の配置を示す回路図。
【
図9】特許文献4のスナバ回路の問題点を説明する回路図。
【
図10】従来のA−NPC型3レベルインバータの各スイッチング素子にCRDスナバを設けた回路図。
【
図13】本発明の実施例3のスナバ回路と特許文献5のスナバ回路における、各放電経路を説明する簡略化した回路図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。以下の実施形態において、3レベルインバータを構成する各スイッチング素子はIGBTであるとして説明するが、サイリスタやGTO、FETなどでもよく、半導体スイッチの種類は限定されない。
【実施例1】
【0039】
図1は本発明の実施例1の回路図であり、
図10と同一部分は同一符号をもって示している。
図1において、直流コンデンサ10P,10Nを直列接続して成る直流電源回路の正極端Pと負極端Nの間には、上アームのスイッチング素子T1および下アームのスイッチング素子T4が直列に接続され、スイッチング素子T1,T4の共通接続点を交流出力端ACとしている。
【0040】
前記直流電源回路の中性点M(直流コンデンサ10P,10Nの共通接続点)と交流出力端ACとの間に接続される中アームのスイッチング素子T2,T3には、該スイッチング素子T2,T3がONで導通する方向が順方向となるようにダイオードD2b,D3bが各々直列に接続されている。
【0041】
そしてスイッチング素子T2およびダイオードD2bの直列回路とスイッチング素子T3およびダイオードD3bの直列回路は、互いに逆の耐圧方向となるように並列に接続されている。D1〜D4は各スイッチング素子T1〜T4の寄生逆並列ダイオードを示している。
【0042】
前記各スイッチング素子T1〜T4には従来のCRDスナバ回路(
図10)が適用されている。
【0043】
すなわち、スイッチング素子T1の両端間には図示極性のスナバダイオードD1aおよびスナバコンデンサC1が直列に接続され、それらの共通接続点と負極端Nの間にはスナバ抵抗R1が接続されている。
【0044】
また、スイッチング素子T2の両端間には図示極性のスナバダイオードD2aおよびスナバコンデンサC2が直列に接続され、それらの共通接続点と負極端Nの間にはスナバ抵抗R2が接続されている。
【0045】
また、スイッチング素子T3の両端間には図示極性のスナバダイオードD3aおよびスナバコンデンサC3が直列に接続され、それらの共通接続点と正極端Pの間にはスナバ抵抗R3が接続されている。
【0046】
また、スイッチング素子T4の両端間には図示極性のスナバダイオードD4aおよびスナバコンデンサC4が直列に接続され、それらの共通接続点と正極端Pの間にはスナバ抵抗R4が接続されている。
【0047】
但し、本実施例1におけるスイッチング素子T1〜T4の各スナバ回路は、上記のCRDスナバ回路に限らず他のスナバ回路であってもよい。
【0048】
尚、前記スイッチング素子T2,T3は、ダイオードD2b,D3bを各々直列接続する代わりに、逆阻止機能を有したスイッチング素子、例えばリバースブロッキングIGBTを使用してもよい。
【0049】
上記のように構成された回路において、スイッチング素子T2,T3のスナバコンデンサC2,C3は、スナバ抵抗R2,R3を各々介して直流コンデンサ10P,10Nから常に+Eに充電されている。この状態でスイッチング素子T4をONしても、直流バスの短絡を防止するためスイッチング素子T2が必ずOFFになるように制御を行う。このため、スナバコンデンサC3を+2Eに充電する経路は構成されず、スナバコンデンサC3の+Eを越える過充電を防ぐことができる。これにより、スナバ抵抗R2,R3は値の小さなものを選定できるため、スナバコンデンサC2,C3は寄生リアクタンス成分による放電が発生しても、すぐに再充電を行うことができる。
【0050】
これによって、大電流を扱うインバータで複数のスイッチング素子がモジュール化された部品を使わずに構成した場合、各素子間の配線の寄生リアクタンス成分が増加しても効果的に電圧サージを抑制することができる。
【実施例2】
【0051】
図2は本発明の実施例2の回路図であり、
図1と同一部分は同一符号をもって示している。
図2において
図1と異なる点は、前記中性点Mと交流出力端AC間に、中アームのスイッチング素子T2,T3を互いに逆の耐圧方向となるように直列に接続し、該スイッチング素子T2,T3の直列体の両端間に、スナバコンデンサC2および図示極性のスナバダイオードD2aの直列回路と、スナバコンデンサC3および前記スナバダイオードD2aとは逆極性のスナバダイオードD3aの直列回路とを並列に接続し、前記スナバコンデンサC2およびスナバダイオードD2aの共通接続点と前記負極端Nの間にスナバ抵抗R2を接続し、前記スナバコンデンサC3およびスナバダイオードD3aの共通接続点と前記正極端Pの間にスナバ抵抗R3を接続した点にあり、その他の部分は
図1と同一に接続されている。したがってスイッチング素子T1,T4のスナバ回路は従来のCRDスナバ回路(
図10)を適用している。
【0052】
上記のように本実施例2は、スイッチング素子T2とT3をあわせて1つのスイッチング素子とみなし、両方の電流の向きに対応できるよう2個のCRDスナバ回路を接続した構成となっている。
図2の回路において、スイッチング素子T2,T3のスナバコンデンサC2,C3は、スナバ抵抗R2,R3を各々介して直流コンデンサ10P,10Nから常に+Eに充電されている。この状態でスイッチング素子T4をONしても、直流バスの短絡を防止するためスイッチング素子T2が必ずOFFになるように制御を行う。このため、スナバコンデンサC2,C3を+2Eに充電する経路は構成されず、スナバコンデンサC2,C3の+Eを越える過充電を防ぐことができる。これにより、スナバ抵抗R2,R3は値の小さなものを選定できるため、スナバコンデンサC2,C3は寄生リアクタンス成分による放電が発生しても、すぐに再充電を行うことができる。
【0053】
実施例1とは異なる点として、スイッチング素子T2とT3の間の寄生リアクタンス成分を無視できる程度に小さく設計することによりこの回路構成を実現し、
図1のダイオードD2b,D3bに相当するダイオードが不要であること、また、リバースブロッキングIGBTといった特殊な素子が不要であることが挙げられる。
【実施例3】
【0054】
図3は本発明の実施例3の回路図であり、
図2と同一部分は同一符号をもって示している。
図3において
図2と異なる点は、中アームのスイッチング素子T2側のスナバコンデンサC2およびスナバダイオードD2aの直列体は該素子T2に並列に接続し、中アームのスイッチング素子T3の両端間に、スナバコンデンサC3および図示極性のスナバダイオードD3aを直列接続し、それらの共通接続点と正極端Pの間にスナバ抵抗R3aおよびダイオードD3cのアノード、カソードを直列接続し、スナバ抵抗R3aおよびダイオードD3cの共通接続点と正極端Pの間に抵抗R3bを接続した点にあり、その他の部分は
図2と同一に構成されている。したがってスイッチング素子T1,T2,T4のスナバ回路は従来のCRDスナバ回路(
図10)を適用している。
【0055】
前記スナバ抵抗R3aは抵抗値の小さなものを、抵抗R3bは抵抗値の大きなものを選定する。
【0056】
上記構成によれば、前記
図10で述べた、各スイッチング素子個別にCRDスナバ回路を接続した際の問題点1、問題点2を次のように解決することができる。
【0057】
すなわち、
<問題点1に対して>
スイッチング素子T4がONするとスイッチング素子T3のスナバコンデンサC3は抵抗R3bおよびスナバ抵抗R3aを通して充電される。ここで、抵抗R3bは値の大きな抵抗を選定しているため、スイッチング周期での充電は微小である。そのため、不要なエネルギーの移動を抑制し、損失増加を抑えることができ、スナバ抵抗R3aの発熱を抑制することができる。
【0058】
<問題点2に対して>
図4は実施例3におけるスナバコンデンサの放電が起こるスイッチングパターンの1つを表し、スイッチング素子T1とT3が交互にスイッチングを行い電流を入力している場合である。
【0059】
図4(a)は、スイッチング素子T1,T2がON、T3,T4がOFFしている状態からスイッチング素子T1がターンOFFしたときの電流の流れを示している。
【0060】
次に、スイッチング素子T3がONすると電流は
図4(b)の破線の矢印のように中アームを流れるが、寄生リアクタンス成分Lp,Lmがあるため電流経路が完全に切り替わるまで時間がかかる。その間、電流はスナバコンデンサC3を放電する経路(
図4(b)の実線で示す矢印)を流れる。
【0061】
すなわち、交流出力端AC→スイッチング素子T3→スナバコンデンサC3→スナバ抵抗R3a→ダイオードD3c→正極端Pの経路で流れる。
【0062】
次にスイッチング素子T3がOFFするのはスイッチング周期後しかないため、抵抗R3bおよびスナバ抵抗R3aを通してスナバコンデンサC3への再充電はほとんど行われない。
【0063】
しかし
図4(c)のように、スイッチング素子T3がOFFされると、寄生リアクタンス成分Lmによる磁気エネルギーが、図示矢印のようにスナバダイオードD3a、スイッチング素子T2を介してスナバコンデンサC3に充電され、スイッチングによるサージ電圧が抑制される。
【0064】
そして
図4(d)のように、スイッチング素子T1をONする時にはスナバコンデンサC3は再充電されているため、大電流は流れない。スナバコンデンサC3の充電が不十分であった場合、スイッチング素子T1をONするときに図示破線の矢印のように、正極端P→スイッチング素子T1→スナバダイオードD3a→スナバコンデンサC3→スイッチング素子T2→中性点Mの経路で流れる電流は、寄生リアクタンス成分Lp,Lmによって制限されるため、スイッチング素子T3の破壊を防ぐことができる。
【0065】
図5はスナバコンデンサC3の放電が起こるもう1つのスイッチングパターンであり、スイッチング素子T2とT4が交互にスイッチングを行い電流を入力している場合である。
図5(a)はスイッチング素子T1,T2がOFF、スイッチング素子T3,T4がONしている状態を表し、破線の矢印に示すように、抵抗R3b、スナバ抵抗R3a、スナバコンデンサC3、スイッチング素子T3およびスイッチング素子T4を介して、スナバコンデンサC3の充電電流が流れる。
【0066】
次に
図5(b)のようにスイッチング素子T2がONすると、図示破線の矢印のように、電流は中アームのスイッチング素子T3,T2を流れるが、寄生リアクタンス成分Lmによって、図示実線の矢印のように、スイッチング素子T3、スナバ抵抗R3aおよびダイオードD3cを介してスナバコンデンサC3が放電される。
【0067】
図5のパターンでは、スイッチング素子T3がONを維持するため、スイッチングサージによるC3の再充電はできない。そのため、抵抗R3bおよびスナバ抵抗R3aを通して再充電を行う。抵抗R3bは値の大きな抵抗であるため再充電に時間がかかるが、スイッチング素子T1がONするまでに基本波半周期の時間がある。また、スイッチング素子T4がOFFの間は+Eの電圧での充電だが、スイッチング素子T4がONしている期間もあり、その間は直流コンデンサ10P,10Nによる+2Eの電圧で充電が行われる。さらにスナバコンデンサC3の放電が進むほど充電時に前記抵抗に印加される電圧も大きくなるので、スイッチング素子T1がONするまでにある程度の充電を行うことができる。スナバコンデンサC3の充電が完全でなくても、スイッチング素子T1をONするときに破線の矢印の経路で流れる電流は寄生リアクタンス成分Lp,Lmによって制限されるため、スイッチング素子T3の破壊を防ぐことができる。
【0068】
以上の動作により、実施例3ではスイッチング素子個別のスナバ回路を実現しながら、
図10〜
図12で述べた2つの問題点を解決することができる。
【0069】
実施例2とは異なる点として、スイッチング素子T2とT3の間の寄生リアクタンス成分が大きくなってもサージ電圧を効果的に抑制できる。また、後述の実施例4や実施例5と異なる点として、スナバ回路が受動素子のみであるため、追加のゲート回路や制御回路が不要であり、構成が簡単であることが挙げられる。
【0070】
尚、本実施例3において、スイッチング素子T2とT3のスナバ回路を入れ替えて構成してもよい。すなわち、スイッチング素子T2側のスナバ抵抗R2に代えてスナバ抵抗R3a、ダイオードD3cおよび抵抗R3bを接続し、スイッチング素子T3側のスナバ抵抗R3a、ダイオードD3cおよび抵抗R3bに代えてスナバ抵抗R2を接続してもよい。このように構成した場合も前記同様の作用、効果が得られる。
【実施例4】
【0071】
図6は本発明の実施例4の回路図であり、
図3と同一部分同一符号をもって示している。
図6において
図3と異なる点は、前記スナバ抵抗R3aと正極端Pの間に、前記ダイオードD3cおよび抵抗R3bの代わりに、スイッチング素子T3aを接続した点にあり、その他の部分は
図3と同一に構成されている。
【0072】
上記構成において、スイッチング素子T4がONしている間はスイッチング素子T3aをOFF、スイッチング素子T4がOFFの期間スイッチング素子T3aをONする(スイッチング素子T2と同じ論理で駆動する)ことにより、前記実施例3と同様に、スナバコンデンサC3が過充電される経路を無効にして
図11で述べた問題点1を解決する。
【0073】
スナバ抵抗R3aは値の小さなものを選定できるため、スナバコンデンサC3の放電が発生した場合も素早く再充電を行うことができる。実施例3とは異なる点として、スナバ抵抗R3aの値の選定が簡単であること、スナバコンデンサC3の過充電が完全に抑制されるため、損失を小さくできることが挙げられる。
【0074】
また実施例4ではスイッチング素子T3aの動作として、出力電圧が正でスイッチング素子T1とT3をスイッチングさせている時にON、スイッチング素子T2とT4をスイッチングさせ出力電圧が負の時にOFFとしてもよい。
【0075】
尚、本実施例4において、スイッチング素子T2とT3のスナバ回路を入れ替えて構成してもよい。すなわち、スイッチング素子T2側のスナバ抵抗R2に代えてスナバ抵抗R3aおよびスイッチング素子T3aを接続し、スイッチング素子T3側のスナバ抵抗R3aおよびスイッチング素子T3aに代えてスナバ抵抗R2を接続してもよい。このように構成した場合も前記同様の作用、効果が得られる。
【実施例5】
【0076】
図7は本発明の実施例5の回路図であり、
図3、
図6と同一部分同一符号をもって示している。
図7において
図6と異なる点は、前記スイッチング素子T3aの代わりに双方向スイッチT3bを接続した点にあり、その他の部分
図6と同一に構成されている。
【0077】
双方向スイッチT3bは、出力電圧が正でスイッチング素子T1とT3をスイッチングさせている時にON、スイッチング素子T2とT4をスイッチングさせ出力電圧が負の時にOFFとする。これにより、実施例4と同様にスナバコンデンサC3が過充電される経路と、
図5(b)に示すスナバコンデンサC3の放電経路を無効にすることで、不要なスナバコンデンサC3の充放電を抑制し、損失を実施例4に比べてさらに小さくすることができる。
【0078】
尚、本実施例5において、スイッチング素子T2とT3のスナバ回路を入れ替えて構成してもよい。すなわち、スイッチング素子T2側のスナバ抵抗R2に代えてスナバ抵抗R3aおよび双方向スイッチT3bを接続し、スイッチング素子T3側のスナバ抵抗R3aおよび双方向スイッチT3bに代えてスナバ抵抗R2を接続してもよい。このように構成した場合も前記同様の作用、効果が得られる。
【0079】
ここで、特許文献5に記載のスナバ回路と本発明の各実施例との相違点を述べる。ここでは、スナバコンデンサの放電を考える。本発明の実施例3の回路における放電経路を
図13(a)に示し、特許文献5の第7実施例の回路における放電経路を
図13(b)に示す。
【0080】
図13(a),(b)では、それぞれの回路に対応するスイッチング素子に同じ番号を付し(すなわち、上、下アーム側スイッチング素子をT1、T4とし、中性点アーム側スイッチング素子をT2、T3とし、正極端P、負極端N、中性点M、交流出力端ACを各々共通に表記した)、検討するスイッチング素子T3のスナバ回路を
図3と同一で表記し、スイッチング素子T3以外のスナバ回路は図示省略している。
【0081】
図13の(a)と(b)の両方の図で駆動するスイッチング素子と出力される電圧は共通であり、
T1,T2がON:電圧+Eを出力
T2,T3がON:零電圧を出力
T3,T4がON:電圧−Eを出力
となる。
【0082】
本発明の実施例3では、
図13(a)に示すようにスイッチング素子T2がONになっていれば、図示矢印のようにスナバコンデンサC3を電圧+Eに放電する経路が形成される。
【0083】
一方、
図13(b)に示す特許文献5の第7実施例の回路では、スイッチング素子T2とT3両方がONしている場合に限り、図示矢印のように電圧+Eへの放電経路が形成される。
【0084】
ここで、スイッチング素子T2を常時ON、スイッチング素子T1とT3を交互にONしてプラスEと零電圧を出力し、さらに電流は交流側から直流側に流れる場合を考える。この時、スイッチング素子T3をOFFするときにサージが発生し、スイッチング素子T3のスナバコンデンサC3に吸収される。そしてスイッチング素子T3がOFFする度にスナバコンデンサC3の電圧が上昇していくことになる。
【0085】
これに対して
図13(a)の本発明の実施例3では、スイッチング素子T2が常時ONしているため、スイッチング素子T3のスナバコンデンサC3を常に放電することができる。
【0086】
一方、特許文献5の第7実施例(
図13(b))では、スイッチング素子T1,T2がONしている場合はスナバコンデンサC3を放電することができない。特に、出力電圧指令値が増加しスイッチング素子T1のON期間が長く、スイッチング素子T3がONしている期間が短くなると、スナバコンデンサC3の放電時間が短くなり、スナバコンデンサC3の放電が不十分となってしまう。その結果サージ吸収効果が低下し、最悪の場合スイッチング素子が破壊されてしまう。
【0087】
この対策として、スナバ抵抗R3aの値を小さくすればよいが、スナバコンデンサC3を放電する時の電流が増加するため、スナバ抵抗R3aやダイオードD3cの容量を増やす必要があり、部品大型化やコスト増加の問題が生じる。
【0088】
特に、インバータが有効電力を入力する動作において、力率が1に近い場合、出力電圧指令値がピークのところでスイッチング素子T3がONの期間が最小になり、かつ遮断電流もピークになるのでこの問題が顕著になる。
【0089】
また、本発明の実施例4と比較して、特許文献5の第9実施例でも同様の問題が発生する。さらに特許文献5の第9実施例は本発明の実施例4とは異なり、インバータの立ち上げ時のみスイッチをONにして、通常運転時はスイッチを常時OFFとしている。そのため、寄生リアクタンス成分によるスナバコンデンサ異常放電が発生した時の再充電を行うことができず、本発明の
図12で述べた問題点2を解決することができない。
【符号の説明】
【0090】
10P、10N…直流コンデンサ
T1〜T4、T3a…スイッチング素子
T3b…双方向スイッチ
C1〜C4…スナバコンデンサ
D1a〜D4a…スナバダイオード
D3c…ダイオード
R1〜R4,R3a…スナバ抵抗
R3b…抵抗
P…正極端
N…負極端
M…中性点
AC…交流出力端