特許第6028627号(P6028627)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028627
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】通信装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20161107BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   G06F3/041 522
   G06F3/044 Z
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-42614(P2013-42614)
(22)【出願日】2013年3月5日
(65)【公開番号】特開2014-170443(P2014-170443A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】特許業務法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】青山 健太郎
【審査官】 間野 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−178091(JP,A)
【文献】 特開2008−139961(JP,A)
【文献】 特開2010−271979(JP,A)
【文献】 特開2012−138026(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/135301(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041 − 3/047
G06F 3/033 − 3/039
G06F 3/048 − 3/0489
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量の変化を利用して、入力媒体の接触または接近を検出するタッチセンサと、
近接無線通信が可能な通信範囲内に存在する情報処理端末と近接無線通信を行う近接無線通信手段と、
を備えた通信装置であって、
前記タッチセンサによる前記入力媒体の接触または接近の検出に従って、当該通信装置の作動を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記近接無線通信手段と前記情報処理端末との距離が前記通信範囲内である場合に、前記タッチセンサによる入力媒体の検出感度を低下させる感度低下部と、
前記近接無線通信手段と前記情報処理端末との距離が前記通信範囲内である場合であっても、前記タッチセンサによる前記入力媒体の接触または接近の検出に基づく指示受け付け中には、前記感度低下部による前記タッチセンサの検出感度の低下を制限する感度低下制限部と
を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記感度低下部は、
静電容量の変化を検出可能な範囲を縮小することで、前記タッチセンサによる入力媒体の検出感度を低下させることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記タッチセンサは、
2つの電極間で発生する電界を利用して静電容量の変化を検出することで、入力媒体の接触または接近を検出し、
前記感度低下部は、
前記2つの電極間で発生する電界を弱くすることで、前記タッチセンサによる入力媒体の検出感度を低下させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記感度低下部は、
前記タッチセンサへの通電を遮断することで、前記タッチセンサによる入力媒体の検出感度を低下させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の通信装置。
【請求項5】
当該通信装置は、
画像を表示する表示手段を備え、
前記感度低下制限部は、
前記近接無線通信手段と前記情報処理端末との距離が前記通信範囲内である場合であっても、前記入力媒体の接触または接近を求める内容が前記表示手段に表示されている際には、前記感度低下部による前記タッチセンサの検出感度の低下を制限することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の通信装置。
【請求項6】
前記感度低下制限部は、
前記近接無線通信手段と前記情報処理端末との距離が前記通信範囲内である場合であっても、前記タッチセンサによる前記入力媒体の接触または接近を検出してから設定時間経過するまで、前記感度低下部による前記タッチセンサの検出感度の低下を制限することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の通信装置。
【請求項7】
当該通信装置は、
複数の前記タッチセンサを備え、
前記感度低下部は、
前記複数のタッチセンサのうちの、前記近接無線通信手段の近くに配設されている一部による入力媒体の検出感度を低下させることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の通信装置。
【請求項8】
当該通信装置は、
ボタン操作を受け付ける受付手段を備え、
前記制御装置は、
前記感度低下部によって前記タッチセンサの検出感度が低下させられている際に、前記受付手段がボタン操作を受け付けた場合に、前記タッチセンサによる前記入力媒体の接触または接近に従った前記通信装置の作動の制御と同様に、前記通信装置の作動を制御する別操作作動制御部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の通信装置。
【請求項9】
当該通信装置は、
画像を表示する表示手段を備え、
前記制御装置は、
前記感度低下部によって前記タッチセンサの検出感度が低下させられている際に、前記表示手段に前記タッチセンサの検出感度が低下している旨の画像を表示する画像表示部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1つに記載の通信装置。
【請求項10】
前記タッチセンサは、
トップカバーと、前記トップカバーを照らす照明手段とを有し、
前記制御装置は、
前記感度低下部によって前記タッチセンサの検出感度が低下させられている場合に、前記照明手段が消灯し、前記感度低下部によって前記タッチセンサの検出感度が低下させられていない場合に、前記照明手段が点灯するように、前記照明手段を制御する照明手段制御部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1つに記載の通信装置。
【請求項11】
当該通信装置は、
画像を表示する表示手段を備え、
前記タッチセンサは、
前記表示手段と前記近接無線通信手段との間に配設されることを特徴とする請求項1乃至請求項10に記載の通信装置。
【請求項12】
当該通信装置は、
画像を表示する表示手段を備え、
前記タッチセンサの有するトップカバーと、前記近接無線通信手段の有するトップカバーと、前記表示手段の有するトップカバーとが、面一に設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1つに記載の通信装置。
【請求項13】
前記タッチセンサの有するトップカバーと、前記近接無線通信手段の有するトップカバーと、前記表示手段の有するトップカバーとが、1枚の透明な板状部材によって構成されたことを特徴とする請求項12に記載の通信装置。
【請求項14】
静電容量の変化を利用して、入力媒体の接触または接近を検出するタッチセンサと、
近接無線通信が可能な通信範囲内に存在する情報処理端末と近接無線通信を行う近接無線通信手段と、
を備えた通信装置のコンピュータが読み取り可能なプログラムであって、
前記近接無線通信手段と前記情報処理端末との距離が前記通信範囲内である場合に、前記タッチセンサによる入力媒体の検出感度を低下させる感度低下手段と
前記近接無線通信手段と前記情報処理端末との距離が前記通信範囲内である場合であっても、前記タッチセンサによる前記入力媒体の接触または接近の検出に基づく指示受け付け中には、前記感度低下手段による前記タッチセンサの検出感度の低下を制限する感度低下制限手段と
して前記コンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理端末と近接無線通信を行う通信装置及び、通信装置の作動を制御するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、下記特許文献1に記載されているように、スマートフォン,タブレットPC等の情報処理端末と近接無線通信を行うことが可能な通信装置の開発が進められている。近接無線通信では、情報処理端末を通信装置に近づけるだけで、データの送受信を行うことが可能である。また、通信装置には、ユーザの指等の入力媒体の接近または接触を検出するタッチセンサ式の操作ボタンが設けられているものがある。タッチセンサ式の操作ボタンとしては、下記特許文献2に記載されているように、静電容量の変化を利用して、入力媒体の接近または接触を検出するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−160207号公報
【特許文献2】特開2012−95180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、近接無線通信および、静電容量の変化を利用したタッチセンサ式の操作ボタン(以下、静電容量方式のタッチセンサと略して記載する場合もある)は、非常に有益な技術であり、通信装置に用いることで、通信装置の実用性が向上する。しかしながら、近接無線通信に用いられる電波と、静電容量方式のタッチセンサに用いられる電界とが、相互干渉する虞がある。特に、ユーザの操作性を考慮して、近接無線通信のアンテナ部と静電容量方式のタッチセンサとが隣接して配設された場合には、電波と電界との相互干渉が発生する確率は非常に高くなる。電波と電界との間で相互干渉が発生すると、近接無線通信が確立し難くなったり、静電容量方式のタッチセンサが誤作動を起こす虞があるため、電波と電界との相互干渉は望ましくない。
【0005】
本発明は、そのような事情に鑑みてなされたものであり、静電容量方式のタッチセンサを有するとともに、情報処理端末との間で近接無線通信を行うことが可能な通信装置において、近接無線通信に用いられる電波と、静電容量方式のタッチセンサに用いられる電界との相互干渉を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に記載の通信装置は、静電容量の変化を利用して、入力媒体の接触または接近を検出するタッチセンサと、近接無線通信が可能な通信範囲内に存在する情報処理端末と近接無線通信を行う近接無線通信手段と、を備えた通信装置であって、前記タッチセンサによる前記入力媒体の接触または接近の検出に従って、当該通信装置の作動を制御する制御装置を備え、前記制御装置は、前記近接無線通信手段と前記情報処理端末との距離が前記通信範囲内である場合に、前記タッチセンサによる入力媒体の検出感度を低下させる感度低下部を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に記載のプログラムは、静電容量の変化を利用して、入力媒体の接触または接近を検出するタッチセンサと、近接無線通信が可能な通信範囲内に存在する情報処理端末と近接無線通信を行う近接無線通信手段と、を備えた通信装置のコンピュータが読み取り可能なプログラムであって、前記近接無線通信手段と前記情報処理端末との距離が前記通信範囲内である場合に、前記タッチセンサによる入力媒体の検出感度を低下させる感度低下手段として前記コンピュータを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に記載の通信装置及びプログラムでは、通信装置の近接無線通信手段と情報処理端末との距離が近接無線通信の範囲内である場合に、静電容量方式のタッチセンサによる入力媒体の検出感度を低下させている。なお、本発明での「検出感度を低下させる」という概念には、入力媒体の接近等を静電容量の変化によって検出可能な範囲を縮小するという概念だけでなく、入力媒体の接近等を検出できなくなるという概念も含まれる。つまり、検出感度を低下させるという概念には、検出感度を0まで低下させるという概念も含まれる。このように、静電容量方式のタッチセンサの検出感度を低下させることで、静電容量方式のタッチセンサの電界を弱くする、若しくは、電界自体を発生させなくすることが可能となり、近接無線通信の電波とタッチセンサの電界との相互干渉を抑制することが可能となる。
【0009】
また、タッチセンサへの通電を遮断することで、タッチセンサの検出感度を低下させることが可能である。これにより、確実に、近接無線通信の電波とタッチセンサの電界との相互干渉を抑制することが可能となる。
【0010】
また、通信装置の近接無線通信手段と情報処理端末との距離が近接無線通信の範囲内であっても、タッチセンサの操作中には、タッチセンサの検出感度の低下を制限することが可能である。これにより、タッチセンサを用いた入力操作の中断を回避することが可能となる。
【0011】
また、通信装置の近接無線通信手段と情報処理端末との距離が近接無線通信の範囲内であっても、表示手段に表示された指示等に従って、タッチセンサが操作されている際には、タッチセンサの検出感度の低下を制限することが可能である。これにより、表示手段に表示された指示等に従って、入力操作を優先して実行することが可能となる。
【0012】
また、通信装置の近接無線通信手段と情報処理端末との距離が近接無線通信の範囲内であっても、タッチセンサが操作された後に設定時間が経過するまでは、タッチセンサの検出感度の低下を制限することが可能である。これにより、タッチセンサを用いた入力操作の中断を、確実に回避することが可能となる。
【0013】
また、複数のタッチセンサが設けられている通信装置では、通信装置の近接無線通信手段と情報処理端末との距離が近接無線通信の範囲内である場合に、それら複数のタッチセンサのうちの近接無線通信手段の近くに配設されている一部のタッチセンサの検出感度を低下させることが可能である。これにより、検出感度を低下させるタッチセンサ以外のタッチセンサの操作を、通常通りに行うことが可能となる。
【0014】
また、ボタン操作を受け付ける受付手段が設けられた通信装置では、検出感度が低下しているタッチセンサの代わりに、受付手段に対してボタン操作を実行することで、タッチセンサへの操作に従った通信装置の作動と同様に、通信装置を作動させることが可能である。これにより、タッチセンサの検出感度の低下により生じる操作性の低下を防止することが可能となる。
【0015】
また、タッチセンサの検出感度が低下させられている際に、タッチセンサの検出感度が低下している旨の画像を表示手段に表示することが可能である。これにより、ユーザは、タッチセンサの低下を認知することが可能となり、便利である。
【0016】
また、タッチセンサが、トップカバーを照らす照明手段を有している場合には、タッチセンサの検出感度が低下させられている際に、照明手段を消灯し、タッチセンサの検出感度が低下させられていない際に、照明手段を点灯することが可能である。これにより、検出感度が低下しているタッチセンサへのユーザ操作を抑制することが可能となる。
【0017】
また、タッチセンサを、表示手段と近接無線通信手段との間に配設することが可能である。これにより、タッチセンサと表示手段と近接無線通信手段とを近接して配設することが可能となり、近接無線通信時において、表示画像等の指示に従ったタッチセンサの操作性が向上する。
【0018】
また、タッチセンサのトップカバーと表示手段のトップカバーと近接無線通信手段のトップカバーとを、面一にすることが可能である。これにより、タッチセンサと表示手段と近接無線通信手段との表面に段差が無くなり、操作性が向上する。
【0019】
また、タッチセンサのトップカバーと表示手段のトップカバーと近接無線通信手段のトップカバーとを、1枚の透明な板状部材によって構成することが可能である。これにより、通信装置の部品点数を少なくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】MFP10のブロック図である。
図2】MFP10のパネル16とボタン入力部18とNFCI/F28のアンテナ部80とを示す平面図である。
図3】MFP10のパネル16とボタン入力部18とNFCI/F28のアンテナ部80とを示す断面図である。
図4】アンテナ部80に携帯電話70が近づけられた状態のパネル16とボタン入力部18とNFCI/F28のアンテナ部80とを示す断面図である。
図5】アンテナ部80に携帯電話70が近づけられた状態のパネル16とボタン入力部18とNFCI/F28のアンテナ部80とを示す平面図である。
図6】アンテナ部80に携帯電話70が近づけられた状態のパネル16とボタン入力部18とNFCI/F28のアンテナ部80とを示す平面図である。
図7】MFP10の動作フローチャートを示す図である。
図8】MFP10の動作フローチャートを示す図である。
図9】変形例のMFP10でアンテナ部80に携帯電話70が近づけられた状態のパネル16とボタン入力部18とNFCI/F28のアンテナ部80とを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<MFPの構成>
図1に、本願に係る実施形態として例示されるMFP(Multifunction Peripheralの略)(本発明の通信装置の一例)10のブロック図を示す。MFP10は、CPU(Central Processing Unitの略)(本発明の制御装置およびコンピュータの一例)12、記憶部14、パネル(本発明の表示手段の一例)16、ボタン入力部18、プリンタ20、スキャナ22、モデム24、電話回線接続部26、NFC(Near Field Communicationの略)I/F(本発明の近接無線通信手段の一例)28を主に備えている。これらの構成要素は、入出力ポート30を介して互いに通信可能とされている。
【0022】
パネル16は、MFP10の各種機能を表示する表示面を備える。ボタン入力部18は、タッチセンサを有しており、入力媒体のボタン入力部18への接近または接触を検出し、ユーザによるボタン操作を受け付ける。
【0023】
プリンタ20は、印刷を実行する部位である。スキャナ22は、原稿をスキャンして、スキャンデータを作成する部位である。モデム24は、ファクシミリ機能によって送信する原稿データを、電話回線網32に伝送可能な信号に変調して電話回線接続部26を介して送信したり、電話回線網32から電話回線接続部26を介して入力された信号を受信し、原稿データを復調するものである。
【0024】
また、CPU12は、記憶部14内の制御プログラム(本発明のプログラムの一例)50に従って処理を実行する。制御プログラム50は、ボタン入力部18のタッチセンサの感度を変更するためのプログラムである。なお、記憶部14は、RAM(Random Access Memoryの略)、ROM(Read Only Memoryの略)、フラッシュメモリー、HDD(ハードディスクの略)、CPU12が備えるバッファなどが組み合わされて構成されている。
【0025】
また、記憶部14は、データ記憶領域52を備える。データ記憶領域52は、パネル16に表示するための画像の画像データ、制御プログラム50の実行に必要なデータなどを記憶する領域である。
【0026】
NFCI/F28は、ISO/IEC21481またはISO/IEC18092の国際標準規格に基づいて、携帯電話70(本発明の情報処理端末の一例)との間で、NFC方式の無線通信60を行うことが可能とされている。すなわち、MFP10は、NFC方式の無線通信60を行える状態になれば、携帯電話70と直接、データ通信することが可能になる。
【0027】
<MFPの動作>
MFP10は、上述したように、NFCI/F28を介して、NFC方式の無線通信60を行うことが可能とされており、携帯電話70と直接、データ通信することが可能とされている。詳しくは、NFCI/F28は、携帯電話70との無線通信60に用いられる電波の送受信を行うアンテナ部80を有している。アンテナ部80は、図2に示すように、MFP10の躯体82の上面に配設されている。ちなみに、アンテナ部80の隣には、ボタン入力部18が配設されており、そのボタン入力部18の隣には、パネル16が配設されている。
【0028】
アンテナ部80は、図3に示すように、トップカバー(本発明のトップカバーおよび板状部材の一例)86によって覆われている。そのトップカバー86は、ボタン入力部18のタッチセンサ88(本発明のタッチセンサの一例)および、パネル16の表示部90も覆っている。つまり、1枚のトップカバー86が、アンテナ部80とボタン入力部18とパネル16とのトップカバーを兼用している。
【0029】
そして、MFP10と携帯電話70との間でNFC方式の無線通信60を確立させる際に、ユーザは、携帯電話70をアンテナ部80に接近させる。携帯電話70のアンテナ部80への接近により、携帯電話70とアンテナ部80との距離が、携帯電話70の無線通信の通信範囲内となると、携帯電話70とアンテナ部80、つまり、MFP10との間で、NFC方式の無線通信60が確立する。これにより、MFP10は、NFC方式の無線通信60を利用して、電話番号,画像等のデータの送受信等を携帯電話70と行うことが可能となる。
【0030】
ただし、MFP10では、NFCI/F28のアンテナ部80が、ボタン入力部18のタッチセンサ88に近接して設けられているため、NFC方式の無線通信60に用いられる電波と、ボタン入力部18のタッチセンサに用いられる電界とが、相互干渉し、NFC方式の無線通信60が確立し難くなったり、ボタン入力部18のタッチセンサ88が誤作動を起こす虞がある。なお、アンテナ部80とタッチセンサ88との距離は、電波及び電界が通常時の強さである場合に、携帯電話70とアンテナ部80との間で通信可能な距離になった場合に、無線通信60の電波が、タッチセンサ88の電界100と干渉を生じ得るときの距離であり、装置設計によって適宜設定されるものである。
【0031】
具体的には、まず、タッチセンサ88の構造について説明する。タッチセンサ88は、図3に示すように、送信電極96と受信電極98とを有している。送信電極96に電流が供給されると、送信電極96と受信電極98との間に電界100が発生する。そして、その電界100内に、ユーザの指等の入力媒体が進入することで、電界100が変化し、その変化により、入力媒体の接近または接触が検出される。このような構造のタッチセンサ88は、静電容量方式のタッチセンサのうちの相互容量検出方式のタッチセンサと呼ばれている。なお、タッチセンサ88は、LED(本発明の照明手段の一例)102も有しており、LED102の点灯により、ボタン入力部18の各ボタンが、図2に示すように、トップカバー86に表示される。
【0032】
このように、相互容量検出方式のタッチセンサ88では、タッチセンサ88周辺に電界100が形成されている。一方、NFC方式の無線通信60を確立させる際には、上述したように、タッチセンサ88の隣に配設されているアンテナ部80に、携帯電話70が近づけられる。すると、図4に示すように、携帯電話70から発せられる無線通信60のための電波110が、電界100に接近し、携帯電話70の電波110とタッチセンサ88の電界100とが相互干渉する。
【0033】
このようなことに鑑みて、MFP10では、携帯電話70がアンテナ部80に近づけられ、アンテナ部80と携帯電話70との距離が無線通信60の範囲内となった場合、つまり、アンテナ部80と携帯電話70との距離が無線通信60で用いられる電波のおよぶ範囲内となった場合に、タッチセンサ88への通電を遮断している。具体的には、携帯電話70から発せられる電波110をアンテナ部80が受信した場合に、送信電極96への電力供給を停止している。これにより、タッチセンサ88に電界100が発生しなくなり、携帯電話70の電波110とタッチセンサ88の電界100との相互干渉を抑制することが可能となる。
【0034】
ただし、タッチセンサ88への通電の遮断により、タッチセンサ88は、操作ボタンとしての機能を発揮することができなくなる。つまり、ボタン入力部18によるMFP10の操作等ができなくなる。このため、MFP10では、ボタン入力部18の一部のボタンのタッチセンサ88への通電が遮断される。詳しくは、ボタン入力部18は、図2に示すように、9個の数字キー120と3個の個別キー122によって構成されており、数字キー120がアンテナ部80の隣に配設されており、個別キー122はパネル16の隣に配設されている。つまり、数字キー120は、アンテナ部80の近くに配設され、個別キー122は、アンテナ部80から離れて配設されており、数字キー120は、アンテナ部80に近づけられる携帯電話70の電波110の影響を受けやすいが、個別キー122は、電波110の影響を受け難い。このため、携帯電話70がアンテナ部80に近づけられた場合において、数字キー120のタッチセンサ88への通電が遮断され、個別キー122のタッチセンサ88への通電は維持される。これにより、携帯電話70がアンテナ部80に近づけられた場合であっても、電波110の影響を受け難い個別キー122の操作を行うことが可能となる。なお、アンテナ部80の近くに配設される数字キー120のタッチセンサ88は、アンテナ部80に近づけられる携帯電話70の電波110の範囲内に配設されるタッチセンサと言い換えることが可能であり、アンテナ部80から離れて配設される個別キー122のタッチセンサ88は、アンテナ部80に近づけられる携帯電話70の電波110の範囲外に配設されるタッチセンサと言い換えることが可能である。
【0035】
また、携帯電話70がアンテナ部80に近づけられ、数字キー120のタッチセンサ88への通電が遮断された際には、数字キー120のタッチセンサ88の有するLED102が消灯される。これにより、数字キー120は、図5に示すように、トップカバー86に表示されなくなる。さらに、数字キー120のタッチセンサ88への通電が遮断された際には、数字キー120への入力ができない旨の画像が、パネル16に表示される。これにより、携帯電話70のアンテナ部80への接近により、数字キー120への操作ができないことをユーザに告知することが可能となる。
【0036】
また、携帯電話70のアンテナ部80への接近により、MFP10と携帯電話70との間で無線通信60が確立した場合に、MFP10と携帯電話70との間で、各種データの送受信が行われる。この際に、各種データの選択等を行うために、数字キー120の操作が必要な場合がある。しかしながら、上述したように、携帯電話70がアンテナ部80に近づけられた際には、数字キー120への入力ができず、操作性が低下する虞がある。
【0037】
このため、MFP10では、図6に示すように、パネル16に、9個の仮数字キー(本発明の受付手段の一例)128を表示させている。パネル16は、タッチパネルとしての機能を有しており、仮数字キー128への操作を受け付けることが可能である。仮数字キー128への操作が受け付けられると、MFP10では、数字キー120が操作されたときと同じ処理が実行される。これにより、数字キー120の操作による処理と同様の処理を行うことが可能となり、操作性の低下を回避することが可能となる。
【0038】
なお、上述した数字キー120のタッチセンサ88への通電遮断は、数字キー120が操作されている場合には、行われない。具体的には、例えば、ユーザが数字キー120を用いて、電話番号等を入力している際には、電話番号の入力作業を優先して行うことが好ましい。このため、数字キー120が操作され、その操作に基づく入力や選択の指示を受け付けている場合には、携帯電話70がアンテナ部80に近づけられても、数字キー120のタッチセンサ88への通電遮断は行われない。
【0039】
ちなみに、数字キー120が操作中であるか否か、すなわち、数字キー120の操作に基づく入力や選択の指示を受け付けているか否かの判断は、以下の手法によって行われる。まず、第1の判断手法では、数字キー120が操作されてから所定の設定時間経過するまでは、数字キー120の操作中であると判断される。また、MFP10で印刷,スキャン等が行われる際には、ユーザが行うべき作業内容がパネル16に表示される場合がある。このため、数字キー120を用いて所定の数字等を入力する旨の作業内容がパネル16に表示され、ユーザが、パネル16の表示内容に従って、数字キー120を用いた入力作業を行う場合がある。このため、第2の判断手法では、数字キー120を用いた所定の入力を求める旨が、パネル16に表示されている場合には、数字キー120の操作中であると判断される。これにより、所定の作業において、数字キー120の操作が予定されている場合も、数字キー120の操作中と判断することが可能となり、数字キー120の操作を確実に行うことが可能となる。
【0040】
<制御プログラム>
上述した携帯電話70の電波110とタッチセンサ88の電界100との相互干渉の抑制は、CPU12において制御プログラム50が実行されることによって行われる。具体的に、図7及び図8を用いて、携帯電話70の電波110とタッチセンサ88の電界100との相互干渉を抑制するためのフローを説明する。なお、本プログラムは、MFP10の電源がオンされた場合に実行される。
【0041】
制御プログラム50では、まず、数字キー120及び個別キー122のタッチセンサ88に電流が供給される(ステップ(以下、「S」と略す)100)。これにより、数字キー120及び個別キー122のタッチセンサ88周辺に電界100が形成され、数字キー120及び個別キー122によって、入力媒体の接近または接触を検出することが可能となる。
【0042】
次に、携帯電話70によって発せられた電波110をアンテナ部80が受信したか否かが、CPU12によって判断される(S102)。アンテナ部80が電波110を受信していない場合には(S102のNO)、S102の処理が繰り返される。一方、アンテナ部80が電波110を受信した場合には(S102のYES)、数字キー120が操作中であるか否かが、CPU12によって判断される(S104)。なお、数字キー120が操作中であるか否かの判断は、上述した手法に従って実行される。
【0043】
数字キー120が操作中でない場合には(S104のNO)、数字キー120のタッチセンサ88への通電が遮断される(S106)。つまり、数字キー120のタッチセンサ88への電流供給が止められる。次に、図5に示すように、数字キー120への操作ができない旨の画像がパネル16に表示される(S108)。さらに、数字キー120のタッチセンサ88のLED102が消灯される(S109)。
【0044】
続いて、MFP10と携帯電話70との間で無線通信60が確立している際に、数字キー120への操作が必要であるか否かが、CPU12によって判断される(S110)。無線通信時に数字キー120への操作が必要である場合には(S110のYES)、仮数字キー128がパネル16に表示される(S112)。一方、無線通信時に数字キー120への操作が必要でない場合には(S110のNO)、S112の処理がスキップされる。
【0045】
次に、無線通信60が終了したか否かが、CPU12によって判断される(S114)。つまり、携帯電話70がMFP10から離され、アンテナ部80が携帯電話70の電波110を受信しなくなったか否かが、CPU12によって判断される。無線通信60が終了していない場合には(S114のNO)、S114の処理が繰り返される。
【0046】
一方、無線通信60が終了した場合には(S114のYES)、数字キー120のタッチセンサ88に電流が供給される(S116)。続いて、数字キー120のタッチセンサ88のLED102が点灯される(S117)。以上の処理により、制御プログラム50が終了する。
【0047】
また、S104で数字キー120が操作中である場合には(S104のYES)、無線通信60が終了したか否かが、CPU12によって判断される(S118)。無線通信60が終了していない場合には(S118のNO)、S118の処理が繰り返される。一方、無線通信60が終了した場合には(S118のYES)、制御プログラム50が終了する。なお、制御プログラム50が終了した場合には、S102以降の処理が行われる。
【0048】
<CPUの機能構成>
上記制御プログラム50を実行するCPU12は、それの実行処理に鑑みれば、図1に示すような機能構成を有するものと考えることができる。図から解るように、CPU12は、感度低下部130(本発明の感度低下部及び感度低下手段の一例)と、感度低下制限部132(本発明の感度低下制限部の一例)と、別操作作動制御部134(本発明の別操作作動制御部の一例)と、照明手段制御部136(本発明の照明手段制御部の一例)と、画像表示部138(本発明の画像表示部の一例)とを有している。
【0049】
感度低下部130は、上記制御プログラム50のS106の処理を実行する機能部、つまり、数字キー120のタッチセンサ88への通電を遮断する機能部である。感度低下制限部132は、上記制御プログラム50のS104の処理を実行する機能部、つまり、携帯電話70がMFP10に近づけられても、数字キー120が操作中である場合には、数字キー120のタッチセンサ88への通電遮断を制限する機能部である。別操作作動制御部134は、上記制御プログラム50のS112の処理を実行する機能部、つまり、仮数字キー128をパネル16に表示する機能部である。照明手段制御部136は、上記制御プログラム50のS109,S117の処理を実行する機能部、つまり、LED102の点灯または消灯を制御する機能部である。画像表示部138は、上記制御プログラム50のS108の処理を実行する機能部、つまり、数字キー120への操作が不能である旨の画像をパネル16に表示する機能部である。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。具体的には、例えば、上記実施形態では、携帯電話70がMFP10に近づけられた場合に、タッチセンサ88への通電が遮断されることで、携帯電話70の電波110とタッチセンサ88の電界100との相互干渉が抑制されているが、タッチセンサ88の電界100を弱くすることで、電波110と電界100との相互干渉を抑制してもよい。
【0051】
詳しくは、図9に示すように、タッチセンサ88の送信電極96への供給電流量を少なくすることで、送信電極96と受信電極98との間で発生する電界100を弱くしてもよい。これにより、携帯電話70がMFP10に近づけられた場合であっても、携帯電話70の電波110とタッチセンサ88の電界100との相互干渉を抑制することが可能となる。また、タッチセンサ88による操作は可能であることから、操作性の低下を抑制することが可能となる。
【0052】
また、例えば、上記実施例では、携帯電話70が電波110を発し、携帯電話70とアンテナ部80との距離が携帯電話70の無線通信範囲内となった場合に、タッチセンサ88の検出感度が低下されているが、アンテナ部80が電波を発し、携帯電話70とアンテナ部80との距離がアンテナ部80の無線通信範囲内となった場合に、タッチセンサ88の検出感度を低下させてもよい。
【0053】
また、例えば、上記実施形態では、携帯電話70と無線通信60を行う通信装置として、MFP10が採用されているが、印刷機、PC(Personal computerの略)等の各種装置が採用されてもよい。
【0054】
また、MFP10と無線通信60を行う情報処理端末として、携帯電話70が採用されているが、タブレット機器、スマートフォン等が採用されてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、数字キー120の代わりのボタンとして、パネル16に表示された仮数字キー128が採用されているが、個別キー122等の他のボタンが採用されてもよい。また、数字キー120の代わりのボタンとして、タッチセンサ式のボタンに限られず、機械式のボタン等が採用されてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、タッチセンサ88として、相互容量検出方式のタッチセンサが採用されているが、自己容量検出方式のタッチセンサが採用されてもよい。自己容量検出方式のタッチセンサとは、電極に発生している寄生容量を検出し、入力媒体の接近により変化する寄生容量に基づいて、入力媒体の接近または接触を検出するものである。
【0057】
また、上記実施形態では、近接無線通信として、NFC方式の無線通信が採用されているが、Transfer Jet方式等の無線通信を採用することも可能である。
【0058】
また、上記実施例では、CPU12によって図7及び図8に示す処理が実行される例を説明したが、これら処理は、CPU12に限らず、ASICや他の論理集積回路により実行されてもよいし、これら処理が、CPU12やASIC、他の論理集積回路が協働することにより実行されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10:MFP(通信装置)
12:CPU(制御装置)(コンピュータ)
16:パネル(表示手段)
28:NFCI/F(近接無線通信手段)
50:制御プログラム(プログラム)
70:携帯電話(情報処理端末)
86:トップカバー(板状部材)
88:タッチセンサ
102:LED(照明手段)
128:仮数字キー(受付手段)
130:感度低下部
132:感度低下制限部
134:別操作作動制御部
136:照明手段制御部
138:画像表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9