特許第6028638号(P6028638)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028638
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】観測システム、観測装置および観測方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/18 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   G01F23/18
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-55101(P2013-55101)
(22)【出願日】2013年3月18日
(65)【公開番号】特開2014-181941(P2014-181941A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】田中 恭平
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第2885063(JP,B2)
【文献】 実開昭62−199638(JP,U)
【文献】 特開平9−166471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液位が変化する液体中の予め決められた基準位置に設置され、前記基準位置における前記液体の圧力および温度を測定する第1センサと、
前記基準位置から予め決められた高さを参照液位として、前記液位と前記参照液位との一致を検知する第2センサと、
前記第1センサから得られる前記液体の圧力および温度と前記液体中に含まれる溶質の濃度とから前記液位を算出し、算出した前記液位を観測結果として出力する第1算出部と、前記第2センサにより前記液位と前記参照液位との一致が検知された場合に、前記第1センサによる測定で得られた前記液体の圧力および温度と前記参照液位とから、前記溶質の濃度を求める第2算出部とを有する観測装置とを備え、
前記第1算出部は、前記第2算出部により得られた前記溶質の濃度を用いて前記液位を算出する
ことを特徴とする観測システム。
【請求項2】
請求項1に記載の観測システムにおいて、
前記第2センサは、前記液位が変動する範囲内に設けられた複数の参照液位と、前記液位との一致を検知する
ことを特徴とする観測システム。
【請求項3】
請求項2に記載の観測システムにおいて、
前記参照液位の一つは、前記液位が変動する範囲の中点に設けられる
ことを特徴とする観測システム。
【請求項4】
液位が変化する液体中の予め決められた基準位置に設置された第1センサから、前記基準位置における前記液体の圧力および温度を示す測定結果を受け、前記測定結果と前記液体に含まれる溶質の濃度とから前記液位を算出する第1算出部と、
前記基準位置から予め決められた高さを参照液位として、前記液位と前記参照液位との一致が検知された場合に、前記第1センサによる測定で得られた前記液体の圧力および温度を示す測定結果と前記参照液位とから、前記溶質の濃度を求める第2算出部とを備え、
前記第1算出部は、前記第2算出部により得られた前記溶質の濃度を用いて、前記液位を算出する
ことを特徴とする観測装置。
【請求項5】
液位が変化する液体中の予め決められた基準位置に設置された第1センサにより、前記基準位置における前記液体の圧力および温度を測定し、
別の第2センサにより、前記第1センサの設置位置を基準とする前記液位と基準位置から予め決められた高さを参照液位として、前記液位と前記参照液位との一致が検知された場合に、
前記参照液位と前記第1センサによる測定で得られた前記液体の圧力および温度とから、前記液体に含まれる溶質の濃度を求め、
前記第2センサにより、前記一致が検知されていない場合に、
前記一致の検知に応じて求められた溶質の濃度と前記第1センサによる測定で得られた前記圧力および温度とから、前記液位を示す観測結果を取得する
ことを特徴とする観測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観測システム、観測装置および観測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
河川などの水位を観測する場合に、川底などに設置した圧力センサで得られる水圧と観測箇所における水の密度と圧力センサの位置を基準とする水位との間に式(1)に示す関係があることを利用して、水位を求める観測システムがある(例えば、特許文献1参照)。ここで、式(1)において、符号pは、圧力センサで得られた水圧を示し、符号ρは、水の密度を示し、符号gは、重力加速度を示し、符号hは、圧力センサが設置された位置を基準とする水位を示す。
p=ρ×g×h ・・・(1)
ところで、上述の圧力センサを用いた観測システムにより、汽水域における水位を観測する際には、汽水に含まれる塩分濃度により、汽水の密度が淡水の密度とは異なっていることを考慮することが望ましい。
【0003】
例えば、圧力センサを用いて液位を検知する際に、液体を加熱した際の温度変化量に基づいて液体の濃度を識別し、識別した液体の濃度から求めた液体の密度により、水位の検知結果を補正する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、汽水や海などの塩水の密度は、式(2)に示すように、塩分濃度と水温との関数として求められることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。なお、式(2)は、国連教育科学文化機関(UNESCO: United Nations Educational, Scientific and cultural Organization)によって1983年に定義された海水の密度を示す状態方程式であり、塩水の密度と塩分濃度と水温との関係を示す式の一例である。また、式(2)において、符号ρは汽水の密度を示し、符号Sは塩分濃度を示し、符号Tは水温を示す。
【0005】
【数1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−313079号公報
【特許文献2】特開2007−240537号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「第1章支配方程式」気象庁気象研究所 [online],[平成25年2月14日検索]、インターネット<URL:http://www.mri-jma.go.jp/Publish/Technical/DATA/VOL_47/47_005.pdf >
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
汽水域に設置した圧力センサを用いて水位を観測する場合に、設置時などに測定した塩分濃度と水温の測定結果と上述した式(2)とから、観測箇所における汽水の密度を推定し、推定した汽水の密度を水位の観測に用いる場合もある。
【0009】
しかしながら、汽水域における塩分濃度は、潮の干満とともに変動するため、塩分濃度が設置時から変化すれば、上述した式(2)に基づいて推定した汽水の密度に誤差が生じてしまう。
【0010】
一方、水圧および水温を測定するセンサの他に、例えば、特許文献1で提案された技術などによって塩分濃度を測定するセンサを新たに設けると、観測システムのコストを上昇させてしまう。
【0011】
また、塩分濃度を測定するセンサによって得られる測定結果は、あくまでも当該センサが設置された深さにおける塩分濃度である。このため、測定された塩分濃度から求めた汽水の密度は、圧力センサで得られた水圧と上述した式(1)の関係とを用いて水位を観測する際に用いる汽水の密度としては望ましくない場合がある。なぜなら、汽水域における塩分濃度は深さ方向で異なっている場合があるにもかかわらず、測定された塩分濃度には、深さ方向での不均一性が反映されないためである。
【0012】
一つの側面では、本発明は、溶質の濃度が変動する液体の液位の測定精度の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一つの観点によれば、観測システムは、液位が変化する液体中の予め決められた基準位置に設置され、基準位置における液体の圧力および温度を測定する第1センサと、基準位置から予め決められた高さを参照液位として、液位と参照液位との一致を検知する第2センサと、第1センサから得られる液体の圧力および温度と液体中に含まれる溶質の濃度とから液位を算出し、算出した液位を観測結果として出力する第1算出部と、第2センサにより液位と参照液位との一致が検知された場合に、第1センサによる測定で得られた液体の圧力および温度と参照液位とから、溶質の濃度を求める第2算出部とを有する観測装置とを備え、第1算出部は、第2算出部により得られた溶質の濃度を用いて液位を算出する。
【0014】
また、別の観点によれば、観測装置は、液位が変化する液体中の予め決められた基準位置に設置された第1センサから、基準位置における液体の圧力および温度を示す測定結果を受け、測定結果と液体に含まれる溶質の濃度とから液位を算出する第1算出部と、基準位置から予め決められた高さを参照液位として、液位と参照液位との一致が検知された場合に、第1センサによる測定で得られた液体の圧力および温度を示す測定結果と参照液位とから、溶質の濃度を求める第2算出部とを備え、第1算出部は、第2算出部により得られた溶質の濃度を用いて、液位を算出する。
【0015】
更に別の観点によれば、観測方法は、液位が変化する液体中の予め決められた基準位置に設置された第1センサにより、基準位置における液体の圧力および温度を測定し、別の第2センサにより、第1センサの設置位置を基準とする液位と基準位置から予め決められた高さを参照液位として、液位と参照液位との一致が検知された場合に、参照液位と第1センサによる測定で得られた液体の圧力および温度とから、液体に含まれる溶質の濃度を求め、第2センサにより、一致が検知されていない場合に、一致の検知に応じて求められた溶質の濃度と第1センサによる測定で得られた圧力および温度とから、液位を示す観測結果を取得する。
【発明の効果】
【0016】
濃度が変動する液体の液位の測定精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】観測システム、観測装置および観測方法の一実施形態を示す図である。
図2図1に示した観測システムの動作を示す図である。
図3】観測システム、観測装置および観測方法の別実施形態を示す図である。
図4】観測システム、観測装置および観測方法の別実施形態を示す図である。
図5図4に示した濃度テーブルの例を示す図である。
図6図4に示した密度テーブルの例を示す図である。
図7図1図3および図4に示した観測システムおよび観測装置のハードウェア構成例を示す図である。
図8図7に示した観測システムおよび観測装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、実施形態を説明する。
【0019】
図1は、観測システム、観測装置および観測方法の一実施形態を示す。
【0020】
図1に示した観測システム10は、測定センサ11と、検知センサ12と、観測装置13とを含んでおり、また、観測装置13は、第1算出部131と、第2算出部132とを含んでいる。また、観測装置13は、例えば、通信回線などを介して、上位の装置である監視センタ1に接続されており、監視センタ1に観測結果を送出するとともに、監視センタ1から観測の開始あるいは終了などの指示を受けることができる。
【0021】
測定センサ11は、河川の汽水域などに設けられた所定の観測箇所に設置され、観測箇所に存在する汽水Lqについて水圧および水温を測定する。測定センサ11は、例えば、圧力センサと温度センサとを1つのパッケージにまとめることで実現してもよい。
【0022】
ここで、汽水Lqは、観測箇所に存在する液体の一例であり、汽水Lqについて測定される水圧および水温は、液体について測定される圧力および温度の一例である。即ち、図1に示した測定センサ11は、観測箇所に存在する液体について圧力および温度を測定する第1センサの一例である。なお、測定センサ11を設置する観測箇所は、川底あるいは海底に接触する位置であってもよいし、川底あるいは海底から所定の高さの位置であってもよい。
【0023】
検知センサ12は、測定センサ11の近傍に固定されており、測定センサ11の位置を基準として所定の高さHrで示される位置に、汽水Lqの水面を検知する検知部Detを有している。例えば、検知センサ12は、測定センサ11を川底に固定するための固定治具に、検知部Detを取り付けることで実現してもよい。
【0024】
図1に示した検知センサ12によれば、測定センサ11の位置を基準とした汽水Lqの水面の高さ、即ち、汽水Lqの水位hと所定の高さHrで示される液位との一致を検知することができる。即ち、図1に示した検知センサ12は、液位と所定の参照液位との一致を検知する第2センサの一例である。以下の説明では、測定センサ11の位置を基準として高さHrで示される液位を、参照液位Hrと称する。
【0025】
なお、検知センサ12に含まれる検知部Detが固定される位置、即ち、参照液位Hrは、例えば、観測箇所における潮の干満などによって汽水Lqの水位hが変動する範囲dLに含まれる位置に設定することが望ましい。
【0026】
図1に示した観測装置13の第1算出部131は、測定センサ11で得られる汽水Lqの水圧および水温を示す測定結果を受ける。また、第2算出部132は、検知センサ12により、汽水Lqの水位hと上述の参照液位Hrとの一致が検知された場合に、測定センサ111で得られた測定結果を受ける。
【0027】
第1算出部131は、測定センサ11から得られる水圧および水温と所与の溶質の濃度、即ち、所与の塩分濃度とから汽水Lqの水位hを算出し、算出した汽水Lqの水位hを観測装置13による観測結果として出力する。
【0028】
第1算出部131は、汽水Lqの水位hを算出する際に、式(1)で示した汽水Lqの水位hと水圧と密度とについての関係と、上述した式(2)で示した汽水Lqの密度と塩分濃度と水温とについての関係とを用いてもよい。
【0029】
第1算出部131は、まず、式(2)で示される関係に基づいて、測定センサ11から得られる汽水Lqの水温と所与の塩分濃度とから汽水Lqの密度を求めてもよい。例えば、第1算出部131は、測定センサ11から得られる汽水Lqの水温と所与の塩分濃度とを、上述の式(2)に代入することにより、汽水Lqの密度を求めてもよい。
【0030】
次いで、第1算出部131は、求めた汽水Lqの密度と測定センサ11から得られる汽水Lqの水圧とから、上述の式(1)で示される関係に基づいて、汽水Lqの水位hを求めてもよい。例えば、第1算出部131は、上述の式(2)から求めた汽水Lqの密度と測定センサ11から得られる汽水Lqの水圧とを代入した式(1)を、汽水Lqの水位hについて解くことで、汽水Lqの水位hを求めてもよい。
【0031】
第2算出部132は、検知センサ12により、汽水Lqの水位hと参照液位Hrとの一致が検知された際に測定センサ11で得られた水圧および水温と参照液位Hrとから、汽水Lqの塩分濃度を求める。ここで、第2算出部132は、汽水Lqの塩分濃度を求める際に、参照液位Hrとして予め設定された値を用いてもよい。
【0032】
第2算出部132は、汽水Lqの塩分濃度を求める際に、式(1)で示した汽水Lqの水位hと水圧と密度とについての関係と、上述した式(2)で示した汽水Lqの密度と塩分濃度と水温とについての関係とを用いてもよい。
【0033】
第2算出部132は、まず、参照液位Hrと測定センサ11から得られる汽水Lqの水圧とから、上述の式(1)で示される関係に基づいて、汽水Lqの密度を求めてもよい。例えば、第2算出部132は、参照液位Hrを示す値と測定センサ11から得られる汽水Lqの水圧を示す値とを代入した式(1)を、式(1)において符号ρで示した汽水Lqの密度について解くことで、汽水Lqの密度を求めてもよい。
【0034】
次いで、第2算出部132は、求めた汽水Lqの密度と測定センサ11から得られる水温とから、上述の式(2)で示される関係に基づいて、汽水Lqの水位hが参照液位Hrに一致した時点における汽水Lqの塩分濃度を求めてもよい。例えば、第2算出部132は、上述の式(1)から求めた汽水Lqの密度と測定センサ11から得られる水温とを代入した式(2)を、式(2)において符号Sで示した汽水Lqの塩分濃度について解くことにより、汽水Lqの塩分濃度を求めてもよい。
【0035】
ここで、汽水Lqの水位hが図1に示した参照液位Hrに一致した際に得られた水圧は、測定センサ11の設置位置と水面との間に存在する汽水Lqの重さを反映している。したがって、第2算出部132が、参照液位Hrと測定センサ11から得られる汽水Lqの水圧とから求めた密度の値は、測定センサ11の設置位置と水面との間に存在する汽水Lqにおける深さ方向に不均一な塩分濃度を平均化した塩分濃度を反映している。故に、第2算出部132によって得られる塩分濃度の値は、測定センサ11の設置位置と水面との間に存在する汽水Lqにおける深さ方向に不均一な塩分濃度を平均化した値を示す。
【0036】
したがって、図1に示した第2算出部132によれば、深さ方向に不均一な塩分濃度を持つ汽水Lqについて、例えば、汽水Lqの水面が図1に示した参照液位Hrに一致するごとに、深さ方向の不均一性を平均化した値を持つ塩分濃度を求めることができる。
【0037】
また、第2算出部132は、汽水Lqの塩分濃度を求めるごとに、得られた汽水Lqの塩分濃度で、第1算出部131で用いる塩分濃度を更新することで、汽水Lqの水位hの算出に用いる塩分濃度を較正する。
【0038】
つまり、図1に示した第2算出部132によれば、汽水Lqの水面が図1に示した参照液位Hrに一致するごとに、第1算出部131で汽水Lqの水位hの算出に用いる塩分濃度を較正することができる。
【0039】
このような較正を行うことにより、観測箇所の汽水Lqの塩分濃度が、潮の干満などによって時間的に変動した場合にも、第1算出部131は、最近に較正された塩分濃度を用いて水位hの算出を行うことができる。また、第1算出部131は、較正された塩分濃度を用いて汽水Lqの水位hを求めることで、例えば、ある深さにおいて測定された塩分濃度を用いて汽水Lqの水位hを求めた場合に比べて、誤差の少ない観測結果を取得することができる。
【0040】
すなわち、本件開示の観測システム10によれば、河川の汽水域での汽水Lqのように、深さ方向に溶質の濃度が不均一であって、更に、溶質の濃度が時間的に変動する液体についても、測定された圧力に基づいて、従来に比べて誤差の少ない液位を取得できる。
【0041】
ここで、例えば、範囲dLの中点に相当する参照液位Hrを設定するように検知センサ12の検知部Detを配置すれば、汽水Lqの水面は、潮汐による差の大きさにかかわらず、潮の満ち引きの過程においてそれぞれ参照液位Hrを通過する。したがって、範囲dLの中点などに参照液位Hrを設定した検知センサ12を用いれば、汽水Lqの水面が参照液位Hrを通過する頻度を高めることができるので、第2算出部132によって塩分濃度を算出する機会も増大する。即ち、第2算出部132で算出された塩分濃度により、第1算出部131で水位hの算出に用いる塩分濃度を較正する機会も増大させることができる。
【0042】
なお、検知部Detの位置は、図1に示した範囲dLの中点に相当する位置に限られず、液位が変動する過程で、他の液位よりも通過する頻度の高い液位に相当する位置であればよい。また、参照液位Hrの別の設定例については、図3を用いて後述する。
【0043】
また、図1に示した第1算出部131は、例えば、所定の時間ごとに、測定センサ11から水圧および水温を取得し、第2算出部132によって較正された塩分濃度と取得した水圧および水温とに基づいて、汽水Lqの水位hを算出してもよい。また、第1算出部131は、汽水Lqの水位hを算出するごとに、得られた汽水Lqの水位hを示す情報を観測結果として監視センタ1に送出してもよいし、所定の期間にわたって観測結果を蓄積し、蓄積した観測結果をまとめて監視センタ1に送出してもよい。
【0044】
図2は、図1に示した観測システム10の動作を示す。即ち、図2は、溶質の濃度を較正しつつ、較正した溶質の濃度を用いて液位を観測する観測方法を示す。
【0045】
ステップS301において、測定センサ11は、設置された位置における水圧と水温とを測定する。
【0046】
ステップS302において、検知センサ12は、図1に示した汽水Lqの水位hが、参照液位Hrに一致したか否かを判定する。
【0047】
検知センサ12により、汽水Lqの水位hと参照液位Hrとの一致が検知された場合に(ステップS302の肯定判定(YES))、図1に示した第2算出部132は、ステップS303の処理を実行する。
【0048】
ステップS303において、第2算出部132は、測定センサ11で得られた水圧および水温と、参照液位Hrとして予め設定された値と、上述した式(1)および式(2)とを用いて、図1に示した汽水Lqの塩分濃度を求める。第2算出部132は、図1を用いて説明したように、まず、測定された水温と参照液位Hrと式(2)とを用いて汽水Lqの密度を求め、得られた密度および測定された水圧と式(1)とを用いて、汽水Lqの塩分濃度を求めてもよい。なお、第2算出部132により、塩分濃度を求める手法の別例については、図4および図5を用いて後述する。
【0049】
ステップS304において、第2算出部132は、ステップS303の処理で得られた塩分濃度の値を用いて、図1に示した第1算出部131が汽水Lqの水位hを算出する際に用いる塩分濃度の値を較正する。第2算出部132は、例えば、第1算出部131の内部に保持された塩分濃度の値を、ステップS303の処理で求めた値を用いて更新することにより、汽水Lqの水位hの算出に用いる塩分濃度を較正してもよい。
【0050】
つまり、ステップS302の肯定判定ルートにおいて、第2算出部132が、ステップS303およびステップS304の処理を実行することにより、液体における溶質の濃度の一例である汽水Lqの塩分濃度を較正する処理を実現することができる。
【0051】
一方、検知センサ12により、汽水Lqの水位hと参照液位Hrとの一致が検知されていない場合に(ステップS302の否定判定(NO))、図1に示した第1算出部131は、ステップS305およびステップS306の処理を実行する。
【0052】
ステップS305において、第1算出部131は、測定センサ11で得られた水圧および水温と上述したステップS304の処理で更新された塩分濃度と、上述した式(1)および式(2)とを用いて、観測箇所における汽水Lqの水位hを求める。第1算出部131は、図1を用いて説明したように、まず、較正された塩分濃度と測定された水温と式(2)とを用いて汽水Lqの密度を求め、得られた密度と測定された水圧と式(1)とを用いて、汽水Lqの水位hを求めてもよい。なお、第1算出部131により、汽水Lqの水位hを求める過程で、汽水Lqの密度を求める手法の別例については、図4および図6を用いて後述する。
【0053】
ステップS306において、第1算出部131は、ステップS305の処理で得られた汽水Lqの水位hを、観測箇所における観測結果として、図1に示した監視センタ1に送出する。
【0054】
ステップS302の否定判定ルートにおいて、第1算出部131が、ステップS305およびステップS306の処理を実行することにより、観測対象の液体の液位、即ち、汽水Lqの水位hを示す観測結果を取得する処理を実現することができる。
【0055】
ステップS302の肯定判定ルートの処理あるいはステップS302の否定判定ルートの処理が終了した後に、観測装置13は、ステップS307の処理に進む。
【0056】
ステップS307において、観測装置13は、例えば、監視センタ1から観測を終了する旨の指示を受け取ったか否かなどに基づいて、観測を終了するか否かを判定する。
【0057】
観測を終了する旨の指示を受け取っていない場合に(ステップS307の否定判定(NO))、観測装置13は、ステップS301の処理に戻り、ステップS301〜ステップS307の処理を繰り返す。
【0058】
つまり、観測装置13は、観測を終了する旨の指示を受け取るまで、観測箇所における汽水Lqの水位hが参照液位Hrに一致するごとに塩分濃度を自律的に較正しつつ、水位hを観測する処理を繰り返す。
【0059】
一方、観測を終了する旨の指示を受け取った場合に(ステップS307の肯定判定(YES))、観測装置13は、観測箇所における汽水Lqの水位hを観測する処理を終了する。
【0060】
図2に示したステップS301〜ステップS307の処理を実行する観測システム10によれば、観測箇所における汽水Lqの水位hが参照液位Hrに一致するごとに、水位hを観測するために用いる塩分濃度を自律的に較正することができる。これにより、観測箇所における潮の干満などによる汽水Lqの塩分濃度の変動に伴って汽水Lqの密度が変動した場合にも、本件開示の観測システム10は、直近に較正された塩分濃度から求めた正しい密度を用いて、水位hを高い精度で観測することができる。
【0061】
ここで、例えば、汽水Lqの塩分濃度を3パーセントとして水位hを観測した場合と塩分濃度を0パーセントとして水位hを観測した場合とを比べると、水位hが10メートルである場合に、約20センチメートルの誤差を生じる。
【0062】
本件開示の観測システム10は、検知センサ12による検知結果に応じて、観測装置13に設けた第2算出部132が自律的に塩分濃度を較正することで、上述したような誤差を低減することができる。したがって、本件開示の観測システム10は、塩分濃度として固定された値を用いる場合に比べて、汽水Lqの水位hを高精度で観測できる。すなわち、本件開示の観測システム10は、例えば、図1に示した監視センタ1において、河川の流域における水位を集約して監視する分野などにおいて有用である。
【0063】
なお、本件開示の観測システム10に含まれる観測装置13は、検知センサ12による検知結果に応じて求めた塩分濃度を示す情報を、第1算出部131で得られる水位hについての観測結果とともに監視センタ1に送出してもよい。また、観測装置13は、塩分濃度を示す情報を所定の期間にわたって蓄積し、蓄積した情報を監視センタ1にまとめて送出してもよい。
【0064】
つまり、本件開示の観測システム10によれば、潮の干満などに伴って変動する塩分濃度についての観測結果を、水位hの観測結果とともに取得することができる。
【0065】
また、本件開示の観測システム10の適用分野は、汽水域における水位観測に限られない。例えば、溶質の濃度と密度および水温との間に既知の相関関係がある液体について、液位を観測する用途であれば、例えば、タンクなどの施設内に溜まった溶液の液位を観測する用途などにも、本件開示の観測システム10を適用可能である。
【0066】
図3は、図1に示した観測システム、観測装置および観測方法の別実施形態を示す。なお、図3に示した構成要素のうち、図1に示した構成要素と同等のものについては、同一の符号を付して示し、その説明は省略する。
【0067】
図3に示した検知センサ12は、k(kは所定の正の整数)個の検知部Det1,Det2,…,Detkと、信号生成部121とを含んでいる。なお、図3に示した符号CBは、測定センサ11を観測箇所に固定するための固定治具を示し、また、符号CLは、固定治具CBに測定センサ11を固定するための固定部材を示している。
【0068】
k個の検知部Det1,Det2,…,Detkは、例えば、固定治具CBに所定の間隔で固定されている。検知部Det1,Det2,…,Detkを固定する位置は、図1に示した観測箇所における水位hの変動範囲dLに含まれることが望ましい。
【0069】
なお、図3に示した符号Hr1は、測定センサ11の位置を基準とした場合の検知部Det1が固定された位置の高さを示し、符号Hr2は、同じく検知部Det2が固定された位置の高さを示す。同様に、図3に示した符号Hrkは、測定センサ11の位置を基準とした場合の検知部Detkが固定された位置の高さを示す。
【0070】
以下の説明では、検知部Det1,Det2,…,Detkが固定された位置の高さHr1,Hr2,…,Hrkで示される参照液位を、それぞれ参照液位Hr1,Hr2,…,Hrkと称する。また、検知部Det1,Det2,…,Detkを総称する際は、検知部Detと称し、参照液位Hr1,Hr2,…,Hrkを総称する際は、参照液位Hrと称する。
【0071】
ここで、図3に示した検知部Det1と検知部Detkとの距離は、図1に示した水位hの変動範囲dLと概ね一致していてもよい。また、各検知部Detは、隣り合う2つの検知部Detが同時に汽水Lqの水面を検知しない程度の間隔を空けて固定治具CBに固定することが望ましい。例えば、10センチメートル程度の距離を空けて各検知部Detを固定治具CBに固定することで、同時に二つ以上の検知部Detが水面を検知することを防ぐことができる。なお、各検知部Det間の距離は、等間隔でもよいし、一部の検知部Det間の距離を他の検知部Det間の距離よりも大きく取るように設置してもよい。
【0072】
信号生成部121は、検知部Det1,Det2,…,Detkのいずれかから水面を検知した旨の検知信号を受け取った場合に、検知信号の送信元の検知部Detに対応する参照液位Hrを示す信号を生成し、生成した信号を観測装置13に送出する。例えば、信号生成部121は、検知信号の送信元の検知部Detに対応する識別番号を示す信号を生成し、生成した信号を送出することで、水面との一致が検知された参照液位Hrを観測装置13に含まれる第2算出部132に通知してもよい。
【0073】
複数の検知部Detを含む検知センサ12によれば、汽水Lqの水位の変動に応じて、汽水Lqの水面との一致を検知した検知部Detが変わるごとに、対応する参照液位Hrを第2算出部132に通知することができる。
【0074】
また、第2算出部132は、検知センサ12から汽水Lqの水面と一致する参照液位Hrを示す情報を受けるごとに、受けた情報で示される参照液位Hrと測定センサ11で得た水圧および水温と式(1)および式(2)とを用いて、汽水Lqの塩分濃度を算出する。また、第2算出部132は、塩分濃度を算出するごとに、算出した塩分濃度を用いて、第1算出部131で汽水Lqの水位hを算出する際に用いる塩分濃度を較正する。
【0075】
つまり、図3に示した検知センサ12を含む観測システム10によれば、図1に示した観測システム10に比べて、汽水Lqの水位の変動に応じて、第1算出部131で用いる塩分濃度を較正する機会を増やすことができる。
【0076】
また、第2算出部132が塩分濃度を頻繁に較正することで、第1算出部131は、汽水Lqの水位hを算出する過程で、観測箇所における汽水Lqの最新の状態を反映した塩分濃度から、汽水Lqの密度として誤差の少ない値を求められる。したがって、図3に示した検知センサ12を含む観測システム10は、塩分濃度を較正する機会が少ない場合に比べて、誤差の少ない密度を用いて水位hの観測結果を取得することができるので、高い精度で水位hを観測することが可能である。
【0077】
図4は、観測システム、観測装置および観測方法の別実施形態を示す。なお、図4に示した構成要素のうち、図1または図3に示した構成要素と同等のものについては、同一の符号を付して示し、その説明は省略する。
【0078】
図4に示した観測装置13は、図1に示した第1算出部131および第2算出部132に加えて、濃度テーブル134と、濃度保持部135と、密度テーブル136と、蓄積部137と、通信処理部138とを含んでいる。
【0079】
図4に示した第2算出部132は、図3に示した複数の検知部Detを有する検知センサ12から、水面との一致が検知された参照液位Hrを示す情報を受けるごとに、測定センサ11で得られた水圧および水温を示す測定結果を受ける。
【0080】
また、第2算出部132は、検知センサ12から受けた情報で示される参照液位Hrと測定センサ11で得られた水圧および水温とに基づいて、図1に示した汽水Lqにおける塩分濃度を求める際に、図5に示す濃度テーブル134に含まれる情報を用いる。
【0081】
図5は、図4に示した濃度テーブル134の例を示す。なお、図5に示した濃度テーブル134において、水温の単位は摂氏(℃)であり、密度の単位は、キログラム/立方メートル(kg/m)であり、また、塩分濃度の単位は、パーミル(‰)である。
【0082】
濃度テーブル134は、各列で示される密度を持つ汽水Lqが各行で示される水温である場合について推定される汽水Lqの塩分濃度を示す情報であり、汽水Lqの密度と水温と塩分濃度との間で成り立つ相関関係を示す情報の一例である。濃度テーブル134は、行で示される水温と列で示される密度との組に対応付けられる塩分濃度の値として、例えば、上述の式(2)を塩分濃度について解くことで得られる値を保持してもよい。
【0083】
例えば、図5に示した濃度テーブル134は、水温が摂氏15度である場合に、汽水Lqの密度が1000キログラム/立方メートルとなる塩分濃度は、1.17パーミルであることを示している。また、図5に示した濃度テーブル134は、水温が摂氏20度である場合に、汽水Lqの密度が999キログラム/立方メートルとなる塩分濃度は、1.05パーミルであることを示している。同様に、図5に示した濃度テーブル134は、水温が摂氏20度である場合に、汽水Lqの密度が1000キログラム/立方メートルとなる塩分濃度は、2.36パーミルであることを示している。
【0084】
なお、図5に示した濃度テーブル134において、符号「−」は、当該行に対応する水温において、当該列に対応する密度を持つような塩分濃度を持つ汽水Lqは存在しないことを示している。例えば、摂氏20度に対応する行のうち、密度が998キログラム/立方メートルの列に対応する欄に示した符号「−」は、水温が摂氏20度である場合に、密度が998キログラム/立方メートルとなる塩分濃度を持つ汽水Lqが存在しないことを示している。
【0085】
また、図5に示した濃度テーブル134においては、摂氏15度未満および摂氏25度を超える水温において各列に対応する密度を持つ塩分濃度の図示を省略している。また、図5に示した濃度テーブル134においては、1000キログラム/立方メートルを超える密度を持つ汽水Lqについての塩分濃度の図示は省略している。
【0086】
また、濃度テーブル134は、水温および密度について、更に細かい刻みで設けた階級ごとに、塩分濃度との対応関係を示してもよい。例えば、濃度テーブル134は、水温について1度刻みで設けた階級ごとに、0.1キログラム/立方メートル刻みで異なる密度を持つ汽水Lqの塩分濃度を示してもよい。
【0087】
図4に示した第2算出部132は、例えば、検知部12から受けた情報で示される参照液位Hrと測定センサ11で得られた水圧および水温と、図5に示した濃度テーブル134とを用いて、次のようにして塩分濃度を求める。
【0088】
まず、第2算出部132は、図1を用いて説明したようにして、検知部12から受けた情報で示される参照液位Hrと測定センサ11で得られた水圧と上述した式(1)とを用いて、図1に示した汽水Lqの密度を求める。例えば、第1算出部132は、測定センサ11で得られた水圧を示す測定結果を、参照液位Hrを示す値と重力加速度を示す値との積で除算することで、汽水Lqの密度を算出してもよい。
【0089】
なお、第1算出部132は、例えば、図3に示した検知センサ12から通知された検知部Detを示す識別番号に基づいて、対応する参照液位Hrを取得するために、識別番号と参照液位Hrとの対応関係を示す情報を内部に保持していてもよい。また、第1算出部132は、検知センサ12から通知された識別番号に対応して保持された参照液位Hrを用いて、汽水Lqの密度を算出してもよい。
【0090】
次いで、第2算出部132は、得られた汽水Lqの密度と、測定センサ11から受けた水温とに対応して濃度テーブル134に保持された情報に基づいて、汽水Lqの塩分濃度を求める。
【0091】
第2算出部132は、図5に示した濃度テーブル134で示される水温と密度と塩分濃度との間の相関関係を示す情報について線形補間を行うことで、測定センサ11から得た水温および算出した密度に対応する塩分濃度を求めてもよい。
【0092】
図5に示した濃度テーブル134を用いて塩分濃度を求める処理は、上述の式(2)を塩分濃度について解く場合に比べて、少ない計算量で塩分濃度を求めることができる。したがって、濃度テーブル134を用いて塩分濃度を求める第2算出部132は、上述の式(2)を用いた計算により塩分濃度を求める場合よりも、処理能力の少ないプロセッサなどによって実現することが可能である。
【0093】
また、第2算出部132は、算出した塩分濃度を示す値を用いて、濃度保持部135に保持された塩分濃度の値を更新することで、第1算出部131が水位hの算出に用いる塩分濃度を較正する。
【0094】
また、図4に示した第1算出部131は、例えば、所定の時間間隔で、測定センサ11によって得られる汽水Lqの水圧および水温を示す測定結果を取得する。また、第1算出部131は、取得した汽水Lqの水圧および水温と濃度保持部135に保持された汽水Lqの塩分濃度とに基づいて水位hを求める過程で、図6に示す密度テーブル136に保持された情報を用いる。
【0095】
図6は、図4に示した密度テーブル136の例を示す。なお、図6に示した密度テーブル134において、水温の単位は摂氏(℃)であり、塩分濃度の単位は、パーミル(‰)であり、密度の単位は、キログラム/立方メートル(kg/m)である。
【0096】
密度テーブル136は、各列で示される塩分濃度を持つ汽水Lqが、各行で示される水温である場合における汽水Lqの密度を示す情報であり、汽水Lqの密度と水温と塩分濃度との相関関係を示す情報の一例である。密度テーブル136は、行で示される水温と列で示される塩分濃度との組に対応付けられる密度の値として、上述した式(2)に、上述の水温および塩分濃度を代入して得られる値を保持してもよい。
【0097】
例えば、図6に示した密度テーブル136は、塩分濃度が10パーミルである汽水Lqの密度は、水温が摂氏15度である場合に、1006.784キログラム/立方メートルとなることを示している。また、図6に示した密度テーブル136は、塩分濃度が0パーミルである汽水Lq、即ち、真水の密度は、水温が摂氏15度である場合に、999.102キログラム/立方メートルとなることを示している。同様に、図6に示した密度テーブル136は、塩分濃度が10パーミルである汽水Lqの密度は、水温が摂氏20度である場合に、1005.793キログラム/立方メートルとなることを示している。また、図6に示した密度テーブル136は、塩分濃度が0パーミルである汽水Lq、即ち、真水の密度は、水温が摂氏20度である場合に、998.206キログラム/立方メートルとなることを示している。
【0098】
なお、図6に示した密度テーブル136においては、摂氏15度未満および摂氏25度を超える水温において各列に対応する塩分濃度を持つ汽水Lqの密度を示す値の図示を省略している。また、図6に示した密度テーブル136においては、10パーミルを超える塩分濃度を持つ汽水Lqについての密度を示す値の図示は省略している。
【0099】
また、密度テーブル136は、水温および塩分濃度について、更に細かい刻みで設けた階級ごとに、密度との対応関係を示してもよい。例えば、密度テーブル136は、水温について1度刻みで設けた階級ごとに、1パーミル刻みで異なる塩分濃度を持つ汽水Lqについて密度を示す値を示してもよい。
【0100】
図4に示した第1算出部131は、水位hを求める過程で、測定センサ11から受けた水温と濃度保持部135に保持された塩分濃度と、密度テーブル136とを用いて、汽水Lqの密度を求める。第1算出部131は、汽水Lqの密度を求める際に、図6に示した密度テーブル136の各行で示される水温および各列で示される塩分濃度について線形補間を行うことで、測定で得た水温と濃度保持部135に保持された塩分濃度に対応する値を求めてもよい。
【0101】
ここで、濃度保持部135に保持された塩分濃度は、汽水Lqの水位hが、図3に示した参照液位Hr1〜Hrkのいずれかに一致するごとに、上述の第2算出部132により、汽水Lqの密度と水温と塩分濃度との相関関係を示す情報に基づいて更新されている。
【0102】
したがって、第1算出部131は、最近に汽水Lqの水位hが図3に示した参照液位Hr1〜Hrkのいずれかに一致した際に、上述した第2算出部132で得られた塩分濃度を、水位hを算出する過程で汽水Lqの密度を求める際に利用することができる。
【0103】
図3を用いて説明したように、塩分濃度を頻繁に較正することにより、第1算出部131は、図1に示した場合に比べて、観測箇所における汽水Lqの最新の状態を反映した塩分濃度に基づいて、汽水Lqの密度として誤差の少ない値を得ることができる。そして、誤差の少ない密度の値を用いることで、第1算出部131は、汽水Lqの水位を高い精度で算出し、算出した水位hを示す情報を、観測箇所における水位hの観測結果として蓄積部137に蓄積することができる。
【0104】
蓄積部137は、例えば、第1算出部131が測定センサ11から測定結果を取得した時刻に対応して、第1算出部131で算出された水位hを示す情報を蓄積してもよい。
【0105】
また、図4に示した通信処理部138は、例えば、蓄積部137に所定量の観測結果が蓄積されるごとに、蓄積部137に蓄積された観測箇所における水位hの観測結果を監視センタ1に送出する処理を行う。また、通信処理部138は、監視船差1からの問い合わせを受けた場合に、問い合わせに対する応答として、蓄積部137に蓄積された観測結果を監視センタ1に送出してもよい。
【0106】
なお、図4に示した蓄積部137は、水位hの観測結果とともに、第2算出部132により、濃度保持部135に保持された塩分濃度が更新されるごとに、更新後の塩分濃度を示す情報を、更新された時刻に対応して蓄積してもよい。また、通信処理部138は、蓄積部137に蓄積された塩分濃度を示す情報を、観測箇所における汽水Lqについての観測結果の一部として、監視センタ1に送出してもよい。
【0107】
以上に説明した本件開示の観測システム10に含まれる観測装置13は、例えば、図7に示すプロセッサにより、図2に示したフローチャートに含まれる処理を実行することで実現することができる。また、プロセッサが、図2に示したフローチャートに含まれる処理を実行することは、本件開示の観測方法を用いた観測を実施することができる。即ち、図2に示したフローチャートは、本件開示の観測方法の一実施形態である。
【0108】
図7は、図1図3または図4に示した観測システムおよび観測装置のハードウェア構成の一例を示している。なお、図7に示した構成要素のうち、図1図3または図4に示した構成要素と同等のものについては、同一の符号を付して示し、その説明は省略する。
【0109】
図7において、符号10_1,・・・,10_nは、n箇所の観測箇所に設置された本件開示の監視システムを示している。ここで、符号nは、任意の正の整数を示す。図7に示したn個の観測システム10_1,・・・,10_nのそれぞれは、ネットワークNWを介して監視センタ1に接続されている。また、n個の観測システム10_1,・・・,10_nのそれぞれは、いずれも、例えば図3に示した観測システム10と同様に、測定センサ11と検知センサ12と観測装置13とを含んでいる。
【0110】
なお、図7においては、n個の観測システム10_1,・・・,10_nのうち、観測システム10_1,10_n以外の観測システムの図示は省略している。また、以下の説明において、n個の観測システム10_1,・・・,10_nを総称する際には、単に、観測システム10と称する。
【0111】
図7に示した検知センサ12は、図3に示したように、測定センサ11とともに観測箇所に固定されており、複数の参照液位Hr1,…,Hrkに対応する検知部Det1,…,Detnを含んでいる。
【0112】
また、図7に示した観測装置13は、プロセッサ21と、メモリ22と、センサインタフェース23と、通信インタフェース24とを含んでいる。また、観測装置13は、更に、メモリカード25を含んでいてもよく、例えば、メモリカード25の記憶領域の一部を図4に示した蓄積部137として利用してもよい。また、図7に示したプロセッサ21と、メモリ22と、センサインタフェース23と、通信インタフェース24と、メモリカード25とは、バスを介して互いに接続されている。
【0113】
図7に示したプロセッサ21は、センサインタフェース23を介して測定センサ11および検知センサ12に接続されており、また、通信インタフェース24を介してネットワークNWおよび監視センタ1に接続されている。
【0114】
図7に示したメモリ22は、観測装置13のオペレーティングシステムとともに、プロセッサ21が本件開示の観測方法に従って観測処理を実行するためのアプリケーションプログラムを格納している。なお、上述した観測処理を実行するためのアプリケーションプログラムは、例えば、メモリ22あるいはメモリカード25に予め格納させておいてもよい。また、監視センタ1などから、通信インタフェース24を介して観測処理を実行するためのアプリケーションプログラムをダウンロードし、メモリ22あるいはメモリカード25に格納させてもよい。
【0115】
また、プロセッサ21は、メモリ22またはメモリカード25に格納されたアプリケーションプログラムを実行することにより、図3に示した観測装置13に含まれる第1算出部131、第2算出部132の機能を果たしてもよい。また、メモリ22の記憶領域の一部を割り当てることにより、図4に示した濃度保持部135を実現してもよい。更に、メモリ22またはメモリカード25は、観測処理を実行するためのアプリケーションプログラムとともに、図4に示した濃度テーブル134および密度テーブル136に含まれる情報を格納していてもよい。
【0116】
つまり、本件開示の観測システム10は、例えば、上述した観測装置13に含まれるプロセッサ21と、メモリ22と、センサインタフェース23などのハードウェアと、メモリ22に格納されたアプリケーションプログラムとの協働によって実現することができる。
【0117】
図8は、図7に示した観測装置13の動作を示す。図8に示したステップS311〜ステップS320の各処理は、上述した観測処理のためのアプリケーションプログラムに含まれる処理の一例である。また、これらのステップS311〜ステップS320の各処理は、図7に示したプロセッサ21によって実行される。
【0118】
ステップS311において、プロセッサ21は、図7に示したセンサインタフェース23を介して測定センサ11から水温および水圧を示す測定結果を取得する。
【0119】
ステップS312において、プロセッサ21は、センサインタフェース23を介して、検知センサ12から水位hに一致する参照液位を示す情報を受信したか否かを判定する。プロセッサ21は、センサインタフェース23を介して、図3に示した検知センサ12の検知部Detのいずれかを示す識別番号を受信した場合に、水位hに一致する参照液位を示す情報を受信したと判断する。
【0120】
プロセッサ21は、ステップS312の処理の過程で、次のようにして、水位hとの一致が検知された参照液位Hrを示す情報を取得してもよい。例えば、プロセッサ21は、検知部Det1,…,Detnと図3に示した参照液位Hr1,…,Hrkとの対応関係を示す情報に基づいて、検知センサ12から渡された識別番号に対応する参照液位を特定する。また、プロセッサ21は、特定した参照水位を、水位hとの一致が検知された参照液位Hrを示す情報として取得する。なお、検知部Det1,…,Detnと参照液位Hr1,…,Hrkとの対応関係を示す情報は、予め、メモリ22あるいはメモリカード25に格納させておいてもよい。
【0121】
また、プロセッサ21は、センサインタフェース23を介して検知部Detのいずれかを示す識別番号を受信した場合に(ステップS312の肯定判定(YES))、識別番号に基づいて特定した参照液位Hrを用いて、ステップS313の処理を実行する。
【0122】
ステップS313において、プロセッサ21は、ステップS312の処理の過程で得られた参照液位Hrを示す値と、ステップS311の処理で取得した水圧および水温を示す測定結果に基づいて、汽水Lqの塩分濃度を算出する。プロセッサ21は、まず、参照液位Hrと測定センサ11で得られた水圧と上述の式(1)とから、汽水Lqの密度を求め、求めた密度に基づいて、図4および図5を用いて説明したようにして汽水Lqの塩分濃度を求めてもよい。プロセッサ21は、求めた密度と測定センサ11で得られた水温とに基づいて、塩分濃度を求める際に、図7に示したメモリ22またはメモリカード25に格納された濃度テーブル134を参照し、得られた情報について線形補間処理を行ってもよい。
【0123】
ステップS314において、プロセッサ21は、ステップS313の処理で得られた塩分濃度を示す情報を用いて、メモリ22に設けられた濃度保持部135に保持された塩分濃度を示す情報を更新することで、塩分濃度の較正を行う。
【0124】
一方、センサインタフェース23から検知部Detの識別番号を受信していない場合に(ステップS312の否定判定(NO))、プロセッサ21は、汽水Lqの水位hは参照水位Hr1,…,Hrkのいずれにも一致していないと判断する。プロセッサ21は、ステップS312の否定判定の場合に、ステップS315およびステップS316の処理を実行する。
【0125】
ステップS315において、プロセッサ21は、ステップS314の処理で較正された塩分濃度と、ステップS311の処理で取得した水温および水圧とを用いて、汽水Lqの水位hを算出する。プロセッサ21は、まず、図4および図6を用いて説明したようにして、塩分濃度と水温とから汽水Lqの密度を求め、求めた密度と水圧と上述の式(1)とから水位hを算出する。プロセッサ21は、較正された塩分濃度と測定センサ11で得られた水温とに基づいて、汽水Lqの密度を求める際に、図7に示したメモリ22またはメモリカード25に格納された密度テーブル136を参照し、得られた情報について線形補間処理を行ってもよい。
【0126】
ステップS316において、プロセッサ21は、ステップS315の処理で得られた水位hを、例えば、ステップS311の処理で測定センサ11から測定結果を取得した時刻に対応する観測結果として、メモリ22などに設けた蓄積部137に蓄積する。
【0127】
上述したステップS312の肯定判定ルートに含まれるステップS314の処理が終了した後あるいはステップS312の否定判定ルートに含まれるステップS316の処理が終了した後に、プロセッサ21は、ステップS317の処理を実行する。
【0128】
ステップS317において、プロセッサ21は、図7に示した通信インタフェース24を介して、蓄積した観測結果を含む報告の送出を指示する報告要求を監視センタ1から受信したか否かを判定する。
【0129】
報告要求を受信した場合に(ステップS317の肯定判定(YES))、プロセッサ21は、ステップS318の処理を実行する。
【0130】
ステップS318において、プロセッサ21は、メモリ22などに設けた蓄積部137に蓄積された観測結果を読み出し、読み出した観測結果を通信インタフェース24に渡すことにより、ネットワークNWを介して監視センタ1に観測結果を送出する。
【0131】
報告要求を受信しなかった場合と(ステップS317の否定判定(NO))、ステップS318の処理を実行した後に、プロセッサ21は、ステップS319の処理を実行する。
【0132】
ステップS319において、プロセッサ21は、最後にステップS311の処理で測定センサ11から測定結果を取得してから測定間隔に対応する所定の時間が経過したかを判定する。
【0133】
測定間隔に対応する所定の時間が既に経過している場合に(ステップS319の肯定判定(YES))、プロセッサ21は、ステップS320の処理に進む。一方、まだ、所定の時間が経過していない場合に(ステップS319の否定判定(NO))、プロセッサ21は、所定の時間が経過するまでステップS319の処理を繰り返す。
【0134】
ステップS320において、プロセッサ21は、通信インタフェース24を介して、観測を終了する旨の指示を監視センタ1から受信したか否かを判定する。
【0135】
観測を終了する旨の指示を受信していない場合に(ステップS320の否定判定(NO))、プロセッサ21は、ステップS311の処理に戻って、観測箇所における汽水Lqの水位hを観測する処理を続行する。
【0136】
一方、観測を終了する旨の指示を受信した場合に(ステップS320の肯定判定(YES))、プロセッサ21は、図8に示した観測処理を終了する。
【0137】
以上に説明したように、図7に示したプロセッサ21により、図8に示したステップS311〜ステップS320の処理を実行することにより、本件開示の観測装置13を実現することができる。また、図7に示したプロセッサ21を含む観測装置13と、図3に示した測定センサ11および検知センサ12とを組み合わせることで、本件開示の観測システム10を実現することができる。更に、図7に示したように、ネットワークNWを介して複数の観測システム10を監視センタ1に接続することにより、監視センタ1は、複数の観測システム10で得られた観測結果を容易に集約することができる。
【0138】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点及び利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲が、その精神および権利範囲を逸脱しない範囲で、前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更を容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
【0139】
以上の説明に関して、更に、以下の各項を開示する。
(付記1)
液位が変化する液体中に設置され、前記液体の圧力および温度を測定する第1センサと、
前記第1センサの設置位置を基準とする前記液位と所定の参照液位との一致を検知する第2センサと、
前記第1センサから得られる前記液体の圧力および温度と前記液体中に含まれる溶質の濃度とから前記液位を算出し、算出した前記液位を観測結果として出力する第1算出部と、前記第2センサにより前記液位と前記参照液位との一致が検知された場合に、前記第1センサによる測定で得られた前記液体の圧力および温度と前記参照液位とから、前記溶質の濃度を求める第2算出部とを有する観測装置とを備え、
前記第1算出部は、
前記第2算出部により得られた前記溶質の濃度を用いて前記液位を算出する
ことを特徴とする観測システム。
(付記2)
付記1に記載の観測システムにおいて、
前記第2センサは、前記液位が変動する範囲内に設けられた複数の参照液位と、前記液位との一致を検知する
ことを特徴とする観測システム。
(付記3)
請求項1に記載の観測システムにおいて、
前記参照液位は、前記液位が変動する範囲の中点に設けられる
ことを特徴とする観測システム。
(付記4)
請求項2に記載の観測システムにおいて、
前記参照液位の一つは、前記液位が変動する範囲の中点に設けられる
ことを特徴とする観測システム。
(付記5)
液位が変化する液体中に設置された第1センサから、前記液体の圧力および温度を示す測定結果を受け、前記測定結果と前記液体に含まれる溶質の濃度とから前記液位を算出する第1算出部と、
前記第1センサとは別の第2センサにより、前記第1センサの設置位置を基準とする前記液位と所定の参照液位との一致が検知された場合に、前記第1センサによる測定で得られた前記液体の圧力及び温度を示す測定結果と前記参照液位とから、前記溶質の濃度を求める第2算出部とを備え、
前記第1算出部は、前記第2算出部により得られた前記溶質の濃度を用いて、前記液位を算出する
ことを特徴とする観測装置。
(付記6)
液位が変化する液体中に設置された第1センサにより、前記液体の圧力および温度を測定し、
別の第2センサにより、前記第1センサの設置位置を基準とする前記液位と所定の参照液位との一致が検知された場合に、
前記参照液位と前記第1センサによる測定で得られた前記液体の圧力および温度とから、前記液体に含まれる溶質の濃度を求め、
前記第2センサにより、前記一致が検知されていない場合に、
前記一致の検知に応じて求められた溶質の濃度と前記第1センサによる測定で得られた前記圧力および温度とから、前記液位を示す観測結果を取得する
ことを特徴とする観測方法。
【符号の説明】
【0140】
1…監視センタ;10,10_1,…,10_n…観測システム;11…測定センサ;12…検知センサ;13…観測装置;131…第1算出部;132…第2算出部;134…濃度テーブル;135…濃度保持部;136…密度テーブル;137…蓄積部;21…プロセッサ;22…メモリ;23…センサインタフェース;24…通信インタフェース;25…メモリカード
図1
図2
図3
図4
図5
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図8