特許第6028654号(P6028654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6028654充電端子付筺体及び該筺体を備える電子装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028654
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】充電端子付筺体及び該筺体を備える電子装置
(51)【国際特許分類】
   H04M 1/02 20060101AFI20161107BHJP
   H04M 1/18 20060101ALI20161107BHJP
   H05K 5/06 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   H04M1/02 C
   H04M1/18
   H05K5/06 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-67213(P2013-67213)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-192750(P2014-192750A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100119987
【弁理士】
【氏名又は名称】伊坪 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100081330
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 外治
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(72)【発明者】
【氏名】飯島 崇
【審査官】 白川 瑞樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−172789(JP,A)
【文献】 特開2011−248825(JP,A)
【文献】 特開2008−011213(JP,A)
【文献】 特開平08−180846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F1/00
1/16−1/18
H01M2/10
10/42−10/48
H01R13/40−13/533
H04M1/02−1/23
H05K5/00−5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電端子付筺体の外部に開口して並ぶ2つの外側開口部と、
前記外側開口部に対応する内部位置に設けられた内側開口部と、
前記外側開口部と前記内側開口部の各個の間を仕切るように前記筐体に埋め込まれた2枚の板金と、
前記板金の何れか一方の面の上に設けられると共に、前記板金が前記筐体の中に埋め込まれた時に、前記外側開口部と前記板金の間と、前記内側開口部と前記板金の間の何れか一方を止水する防水テープとを備えることを特徴とする充電端子付筺体。
【請求項2】
前記2枚の板金には、それぞれ2箇所の取付孔が設けられており、前記防水テープは前記板金の上にそれぞれ独立して貼付され、前記防水テープには前記板金を露出させる開口部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の充電端子付筺体。
【請求項3】
前記2枚の板金にはそれぞれ1箇所の取付孔が設けられており、
前記防水テープは前記2枚の板金が所定距離を隔てて並ぶように、前記2枚の板金に跨って貼付されており、
前記防水テープの前記2枚の板金に貼付された部分には前記板金を露出させる開口部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の充電端子付筺体。
【請求項4】
前記2枚の板金は矩形状であり、
前記防水テープは前記2枚の板金が所定距離を隔てて並ぶように、前記2枚の板金に跨って貼付され、且つその一部に前記板金から延伸された延伸部を備えて貼付されており、
前記防水テープの前記延伸部に、前記板金の取付孔が設けられていると共に、前記2枚の板金に貼付された部分に前記板金を露出させる開口部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の充電端子付筺体。
【請求項5】
充電池と、
前記充電池に充電を行う充電回路が搭載された回路基板と、
前記回路基板の上に実装され、前記充電回路に電源を供給するバネ接点と、
重ね合されると前記充電池と前記回路基板を水密に覆う第1と第2の筐体とを備え、
前記第1と第2の筐体の何れか一方は請求項1から4の何れか1項に記載の充電端子付筐体であり、前記第1と第2の筐体が重ね合された状態で、筺体に埋め込まれた板金の内側が前記バネ接点に接続し、外側が外部に露出することを特徴とする充電端子付筐体を備える電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、卓上ホルダに装着して充電を行う充電端子付筺体及び該筺体を備える電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外で使用することができる携帯型の電子装置は一般に充電池を内蔵しており、この充電池への充電は、屋内において電源用のコネクタを筺体に接続して行うか、或いは充電用の卓上ホルダに装着して行う。図1(a)は充電用の卓上ホルダ1に装着して充電を行う携帯型の電子装置10の一例を示すものである。電子装置10は、例えば携帯電話機10であり、以後、電子装置にも携帯電話機にも同じ符号10を付して説明する。
【0003】
卓上ホルダ1には、携帯電話機10の下端部10Lを受け入れる凹部2があり、凹部2の中には凹部2に挿入された携帯電話機10の下端部10Lを係止するための、押え突起3と充電ピン4が突出している。押え突起3と充電ピン4は図示しないバネによって付勢されて凹部2内に突出している。このため、凹部2の中に携帯電話機10の下端部10Lが挿入されると、押え突起3と充電ピン4は下端部10Lに押されて凹部2から卓上ホルダ1の内部に引っ込むようになっている。また、卓上ホルダ1の後ろ側には、図示しないACアダプタから卓上ホルダ1の充電ピン4に電源を供給するためのコネクタ8が接続されている。
【0004】
一方、卓上ホルダ1にその下端部10Lを挿入して充電を行う携帯電話機10は防水仕様であり、携帯電話機10の下側筺体11と上側筺体12に挟まれた部分で、水分や塵埃を遮断する部分には、防水用の弾性部材が取り付けられている。防水用の弾性部材については後述する。また、携帯電話機10の下側筺体11には、カメラ5や指紋センサ6が設けられていると共に、その下端部10Lには充電端子21が露出している。カメラ5や指紋センサ6は、それぞれ独立に防水処理されている。
【0005】
なお、携帯型の電子装置において、充電端子が電子装置の下端部に露出している場合には、特許文献1に示されるように、断面視コ字状の金属板材が使用される。断面視コ字状の金属板材には、下端部に露出する露出部と、露出部に直交する第1延出部、及び第1延出部に隣接して露出部に平行な第2延出部とがあり、第2延出部が電子装置の充電回路に接続している。
【0006】
図1(a)に示した例における充電端子21は、図1(b)、(c)に示すような、下側筺体11とは別部材で作られた充電端子ホルダ20に設けられており、充電端子21が下側筐体に設けられた窓10Wを通じて見えている。充電端子ホルダ20は、長円柱状の本体22を備えており、その側面には防水用のOリング23が周回して取り付けられている。また、頂面には2つの充電端子21が露出しており、底面には携帯電話機に内蔵される回路基板に接続するための2つの接続端子25と2つの取付穴26が設けられている。2つの充電端子21と2つの接続端子25とは、本体22の内部でそれぞれ接続されている。更に、充電端子ホルダ20の底面側の側面には長手方向に爪27が突設されているが、これは充電端子ホルダ20の位置決め用であり、特に設ける必要はない。
【0007】
図2(a)は携帯電話機10に内蔵された回路基板14の下端部10Lの構造の一例を示すものであり、回路基板の14の下端部側には、図1(c)に示した接続端子25に対応する位置に2つのバネ接点15が実装されている。図2(b)は回路基板14に実装されたバネ接点15の構造を示す側面図である。
【0008】
また、図2(c)は、図1(a)示した携帯電話機10の下側部分の断面を拡大して示すものである。充電端子ホルダ20は、その底面に設けられた取付穴26に、回路基板14の下端部側に実装された取付台16に突設された取付ピン17が差し込まれて回路基板14の上に取り付けられる。この状態では、充電端子ホルダ20の側面に取り付けられた防水用のOリング23が上側筺体12の内部にあるフレーム部材13に密着しており、水分や塵芥がフレーム部材13の内部に侵入しないようになっている。そして、充電端子ホルダ20の頂面にある充電端子21は、本体22の内部で連絡部28によって充電端子ホルダ20の底面にある接続端子25に接続されており、接続端子25はバネ接点15により回路基板14の上の回路に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−248825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、比較技術における充電端子を備えた電子装置では、充電端子が筐体とは別に必要であり、部品点数が増えると共に、充電端子と装置内部の回路基板とを接続する組立工数が増えるのでコストがかかるという課題がある。また、筐体外部に露出する充電端子と装置内部にある回路基板とを接続するための部材を取り付ける空間が筐体内部に必要であり、電子装置の薄型化が困難であるという課題もあった。
【0011】
1つの側面では、本出願は、部品点数の削減を図ることができ、組立工数も削減することができる充電端子付筺体を提供することを目的とする。他の側面では、このような充電端子付筺体を備える電子装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態の一観点によれば、充電端子付筺体の外部に開口して並ぶ2つの外側開口部と、外側開口部に対応する内部位置に設けられた内側開口部と、外側開口部と内側開口部の各個の間を仕切るように筐体に埋め込まれた2枚の板金と、板金の何れか一方の面の上に設けられると共に、板金が筐体の中に埋め込まれた時に、外側開口部と板金の間と、内側開口部と板金の間の何れか一方を止水する防水テープとを備えることを特徴とする充電端子付筺体が提供される。
【0013】
実施形態の他の観点によれば、充電池と、充電池に充電を行う充電回路が搭載された回路基板と、回路基板の上に実装され、充電回路に電源を供給するバネ接点と、重ね合されると充電池と回路基板を水密に覆う第1と第2の筐体とを備え、第1と第2の筐体の何れか一方は付記1から7の何れかに記載の充電端子付筐体であり、第1と第2の筐体が重ね合された状態で、筺体に埋め込まれた板金の内側がバネ接点に接続し、外側が外部に露出することを特徴とする充電端子付筐体を備える電子装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は本出願が対象とする電子装置の一例の携帯電話機と、携帯電話機を充電する卓上ホルダを示す斜視図、(b)は(a)に示した携帯電話機の下端部に内蔵される充電端子ホルダの一例を頂面がわから見た斜視図、(c)は(b)に示した充電端子ホルダを底面側から見た斜視図である。
図2】(a)は図1(a)に示される携帯電話機に内蔵される回路基板の下部側の構造を示す部分斜視図、(b)は(a)に示した回路基板のバネ接点近傍の部分拡大断面図、(c)は図1(a)に示した携帯電話機の下端部側の部分拡大断面図である。
図3】(a)は本出願が対象とする電子装置の一実施例の携帯電話機の下側筐体を内部側から見た斜視図、(b)は(a)に示した下側筐体の下端部側を裏面側から見た部分斜視図である。
図4】(a)は図3(a)に示した携帯電話機の下側筐体の下端部側に埋め込まれる板金の第1の実施例の平面図、(b)は(a)に示される板金が埋め込まれた一実施例の下側筐体を備えた電子装置が卓上ホルダに装着された時の、充電ピンから回路基板までの接続を示す部分拡大断面図、(c)は(a)に示される板金が上下逆に埋め込まれた実施例の下側筺体を備えた電子装置が卓上ホルダに装着された時の、充電ピンから回路基板までの接続を示す部分拡大断面図である。
図5】(a)は図3(a)に示した携帯電話機の下側筐体の下端部側に埋め込まれる板金の第2の実施例の平面図、(b)は(a)に示される板金が埋め込まれた一実施例の下側筐体を備えた電子装置が卓上ホルダに装着された時の、充電ピンから回路基板までの接続を示す部分拡大断面図である。
図6】(a)は図5(a)に示した第2の実施例の板金をインサート雄金型に取り付ける状態を説明する断面図、(b)は図5(a)に示した第2の実施例の板金がインサート金型に装着された状態を示す断面図である。
図7】(a)は図3(a)に示した携帯電話機の下側筐体の下端部側に埋め込まれる板金の第3の実施例の平面図、(b)は(a)に示した第3の実施例の板金をインサート金型の取付ピンに取り付ける状態を説明する組立斜視図、(c)は(b)に示した第3の実施例の板金がインサート金型の取付ピンに取り付けられた後に剥離紙を除去する様子を説明する斜視図である。
図8】(a)は本出願が対象とする電子装置の別の実施例の下側筐体を外部側から見た部分拡大斜視図、(b)は(a)に示した下側筺体の下端部側の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を用いて本出願の実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施例においても、本出願が対象とする電子装置10は携帯電話機10として説明する。また、図1(a)、(b)及び図2(a)〜(c)で説明した携帯電話機10と同じ部材には同じ符号を付して説明する。更に、板金には代表符号30を付し、各実施例の板金には個別に符号を付して説明する。
【0016】
図3(a)は本出願の一実施例の携帯電話機10の下側筐体11を内側から見たものであり、図3(b)は図3(a)に示した下側筐体11の下端部11Lの部分だけを外側から見たものである。下側筐体11にはカメラ用の孔5A、指紋センサ用の孔6A等の孔が設けられていると共に、内側の中央部には内部の部品を水分や塵芥から遮断する弾性部材7が環状に取り付けられている。弾性部材7は連続体であり、一般にゴム類で作られる。弾性部材7は下側筐体11が図示を省略した上側筐体と合された時に、図示を省略したフレーム部材と密着して、フレーム部材側への水や塵埃の侵入を防止する。
【0017】
下側筐体11の下端部11Lの中央部には、後述する2枚の板金30が埋め込まれており、下端部11Lに埋め込まれた板金30に重なる外側の面には充電端子用の穴11HFが設けられており、内側の面には接続端子用の穴11HBが設けられている。そして、充電端子用の穴11HFからは板金30の表側の面30Aが露出しており、接続端子用の穴11HBからは板金30の裏側の面30Bが露出している。
【0018】
図4(a)は、図3(a)に示した携帯電話機10の下側筐体11の下端部11Lの中央部に埋め込まれる板金30の、第1の実施例の板金31を示している。第1の実施例の板金31は矩形状であり、両端部の一部が延伸されて形成された延伸部31Eに取付孔35が設けられている。そして、板金31の一方の面31Aの上には、熱を加えると活性化して止水部材となる熱活性テープ36が貼付されており、中央部に板金31を露出させるための開口部36Aがある。他方の面31Bには何も貼付されていない。第1の実施例の板金31は、インサート成形により下側筺体11の成形時に下側筺体11の肉厚部に埋め込まれる。インサート成形により下側筺体11を成形する工程については後述する。
【0019】
図4(b)は、図4(a)に示した第1の実施例の板金31が2枚、下側筐体11に埋め込まれた状態を示すものである。更に、図4(b)では第1の実施例の板金31が埋め込まれた下側筐体11を備えた携帯電話機10が、図1(a)に示した卓上ホルダ1に装着された時の、充電ピン4から回路基板14までの接続を示している。下側筐体11の板金31が埋め込まれた部分の、外側の面には充電端子用の穴11HFが設けられており、内側の面には接続端子用の穴11FBが設けられている。そして、充電端子用の穴11FFの周囲の下側筺体11には熱活性テープ36が位置しており、充電端子用の穴11FFに侵入した水や塵埃が内部に入らないように遮断している。また、充電端子用の穴11FFを通じて板金31の表側の面31Aが外部に露出し、接続端子用の穴11FBを通じて板金31の裏側の面31Bが内部に露出している。
【0020】
更に、第1の実施例の板金31が埋め込まれた下側筐体11を備えた携帯電話機10では、内蔵の回路基板14に実装されたバネ接点15が、接続端子用の穴11FBを通じて板金31の裏側の面31Bに接触している。また、第1の実施例の板金31が埋め込まれた下側筐体11を備えた携帯電話機10が卓上ホルダ1に装着された場合には、充電端子用の穴11FFを通じて卓上ホルダ1にある充電ピン4が板金31の表側の面31Aに接触している。
【0021】
図4(c)は、図4(a)に示した第1の実施例の板金31が2枚、図4(b)に示した状態とは上下が逆の状態で下側筐体11に埋め込まれた状態を示すものである。従って、図4(c)に示す状態は、板金31に対する熱活性テープ36が位置が接続端子用の穴11FBの周囲である点を除いて図4(b)に示した状態と同じである。従って、同じ構成部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0022】
図5(a)は、図3(a)に示した携帯電話機10の下側筐体11の下端部11Lの中央部に埋め込まれる板金30の、第2の実施例の板金32を示している。第2の実施例の板金32も矩形状であり、隣接する辺から最も遠い端部の一部が延伸されて形成された延伸部32Eに取付孔35が設けられている。そして、板金32の一方の面32Aの上には、熱を加えると活性化して止水部材となる熱活性テープ36が、2枚の板金32に跨って貼付されているが、他方の面32Bには何も貼付されていない。熱活性テープ36の2枚の板金32の上に位置する部分には、板金32を露出させるための開口部36Aがそれぞれ設けられている。第2の実施例の板金32もインサート成形により下側筺体11の成形時に下側筺体11の肉厚部に埋め込まれる。インサート成形により下側筺体11を成形する工程については後述する。
【0023】
図5(b)は、図5(a)に示した第2の実施例の板金32が2枚、下側筐体11に埋め込まれた状態を示すものである。更に、図5(b)では第2の実施例の板金32が埋め込まれた下側筐体11を備えた携帯電話機10が、図1(a)に示した卓上ホルダ1に装着された時の、充電ピン4から回路基板14までの接続を示している。下側筐体11の板金32が埋め込まれた部分の、外側の面には充電端子用の穴11FFが設けられており、内側の面には接続端子用の穴11FBが設けられている。そして、充電端子用の穴11FFの周囲の下側筺体11には熱活性テープ36が位置しており、充電端子用の穴11FFに侵入した水や塵埃が内部に入らないように遮断している。また、充電端子用の穴11FFを通じて板金32の表側の面32Aが外部に露出し、接続端子用の穴11FBを通じて板金32の裏側の面32Bが内部に露出している。
【0024】
更に、第2の実施例の板金32が埋め込まれた下側筐体11を備えた携帯電話機10では、内蔵の回路基板14に実装されたバネ接点15が、接続端子用の穴11FBを通じて板金32の裏側の面32Bに接触している。また、第2の実施例の板金32が埋め込まれた下側筐体11を備えた携帯電話機10が卓上ホルダ1に装着された場合には、充電端子用の穴11FFを通じて卓上ホルダ1にある充電ピン4が板金32の表側の面32Aに接触している。
【0025】
ここで、図6(a)、(b)により、第2の実施例の板金32をインサート金型40を用いたインサート成形によって、下側筺体11を製造する時に内部に埋め込む工程について説明する。図6(a)は、図5(a)に示した第2の実施例の板金32を、雄金型41に取り付ける状態を説明するものである。雄金型41には、板金32の取付孔35に挿通される位置決め突起43が、板金32に設けられた取付孔35の数に応じて設けられている。また、雄金型41には、射出された樹脂を下側筺体11の形状にするためのコア44と、位置決め突起43に板金32が取り付けられた時に、板金32の裏側の面32Bに密着して接続端子用の穴11FBを形成する接続端子形成突部45がある。
【0026】
図6(b)は、図6(a)に示した雄金型41に第2の実施例の板金32が取り付けられた状態で、雄金型41の上に雌金型42が組み付けられてインサート金型40となった状態を示すものである。なお、図6(b)には雄金型41と雌金型42の位置合わせを行うガイドピンの図示は省略してある。雌金型42には、雄金型41との対向面に、射出された樹脂を下側筺体11の形状にするためのキャビティ47がある。また、雄金型41の位置決め突起43に板金32が取り付けられた状態で、雄金型41に雌金型42が組み付けられた時に、板金32の表側の面32Aに密着して充電端子用の穴11FFを形成する充電端子形成突部46が雌金型42に設けられている。
【0027】
更に、雌金型42にはキャビティ47に溶融した樹脂を送り込むための通路であるスプルー48が設けられている。このスプルー48に溶融した樹脂を射出する射出機のノズルが接続され、スプルー48を通った樹脂がキャビティ47に射出され、板金32を包み込むように樹脂がインサート金型40内を流れる。そして、樹脂が固まったところで、雄金型41から雌金型42を外すと、図5(b)に示すような下側筺体11が出来上がる。
【0028】
図7(a)は、図3(a)に示した携帯電話機10の下側筐体11の下端部11Lの中央部に埋め込まれる板金30の、第3の実施例の板金33を示している。第3の実施例の板金33は矩形状であり、第1と第2の実施例の板金31,32に設けられていた延伸部は形成されていない。その代わりに、板金33の一方の面33Aの上に貼付される熱活性テープ36が、2枚の板金33に跨って形成されると共に、長手方向の両端部が延伸されて延伸部36Eが設けられ、延伸部36Eに取付孔36Hが設けられている。板金33の
他方の面32Bには何も貼付されていないのは前述の実施例と同様である。また、熱活性テープ36の2枚の板金32の上に位置する部分に、板金32を露出させるための開口部36Aがそれぞれ設けられている点も同じである。第3の実施例の板金33もインサート成形により下側筺体11の成形時に下側筺体11の肉厚部に埋め込まれる。
【0029】
ところが、板金33の一方の面33Aの上に貼付される熱活性テープ36の長手方向の両端部に延伸部36Eを設けただけでは、延伸部36Eが柔軟であるために、2枚の板金33を雄金型の位置決め突起43に正しく取り付けることができない。そこで、第3の実施例では、図7(b)に示すように、雄金型に取り付ける前の熱活性テープ36の上に、所定の硬さを備えた剥離紙37を重ね合わせている。剥離紙37の外形は熱活性テープ36の外形と同じであり、延伸部37Eが長手方向の両端部に設けられており、この延伸部37Eに取付孔37Hを設けておく。取付孔37Hと熱活性テープ36の延伸部36Eにある取付孔36Hとは重なっている。
【0030】
このように、熱活性テープ36の上に、所定の硬さを備えた剥離紙37を重ね合わせておけば、剥離紙37の硬さにより熱活性テープ36が変形せず、図7(b)に示すように、剥離紙37の取付孔37Hを用いて板金33を位置決め突起43に取り付け可能である。そして、剥離紙37の取付孔37Hを用いて板金33を位置決め突起43に取り付けた後に、図7(c)に示すように、剥離紙37を熱活性テープ36から剥がせば良い。ここでは、第3の実施例の板金33が2枚、下側筐体11に埋め込まれた状態を示す図面は省略する。
【0031】
以上説明した実施例では、板金30は全て下側筺体11の平坦面に埋め込まれていたが、板金30の取付場所は平坦面に限定されるものではない。図8(a)は、本出願が対象とする電子装置10の別の実施例の下側筺体11を外部側から見たものである。この実施例では下側筺体11の湾曲した面に板金の表側の面30Aが露出している。また、図8(b)は図8(a)に示した下側筺体11の、板金内蔵部の断面を示すものである。このように、板金30を用いた充電端子は、下側筺体11の湾曲面にも設置することが可能である。また、板金30を内蔵させる筺体は、下側筺体11に限定されるものではなく、上側筺体12であっても良い。
【0032】
以上、本出願を特にその好ましい実施の形態を参照して詳細に説明した。本出願の容易な理解のために、本出願の具体的な形態を以下に付記する。
【0033】
(付記1) 充電端子付筺体の外部に開口して並ぶ2つの外側開口部と、
前記外側開口部に対応する内部位置に設けられた内側開口部と、
前記外側開口部と前記内側開口部の各個の間を仕切るように前記筐体に埋め込まれた2枚の板金と、
前記板金の何れか一方の面の上に設けられると共に、前記板金が前記筐体の中に埋め込まれた時に、前記外側開口部と前記板金の間と、前記内側開口部と前記板金の間の何れか一方を止水する防水テープとを備えることを特徴とする充電端子付筺体。
(付記2) 前記2枚の板金には、それぞれ2箇所の取付孔が設けられており、前記防水テープは前記板金の上にそれぞれ独立して貼付され、前記防水テープには前記板金を露出させる開口部が設けられていることを特徴とする付記1に記載の充電端子付筺体。
(付記3) 前記2枚の板金にはそれぞれ1箇所の取付孔が設けられており、
前記防水テープは前記2枚の板金が所定距離を隔てて並ぶように、前記2枚の板金に跨って貼付されており、
前記防水テープの前記2枚の板金に貼付された部分には前記板金を露出させる開口部が設けられていることを特徴とする付記1に記載の充電端子付筺体。
(付記4) 前記2枚の板金は矩形状であり、
前記防水テープは前記2枚の板金が所定距離を隔てて並ぶように、前記2枚の板金に跨って貼付され、且つその一部に前記板金から延伸された延伸部を備えて貼付されており、
前記防水テープの前記延伸部に、前記板金の取付孔が設けられていると共に、前記2枚の板金に貼付された部分に前記板金を露出させる開口部が設けられていることを特徴とする付記1に記載の充電端子付筺体。
(付記5) 前記防水テープは熱活性テープであることを特徴とする付記1から4の何れかに記載の充電端子付筺体。
【0034】
(付記6) 前記板金はインサート成型によって前記筐体に埋め込まれていることを特徴とする付記1から5の何れかに記載の充電端子付筺体。
(付記7) 前記筐体の前記板金の埋め込み部分が所定の方向にだけ湾曲していることを特徴とする付記1から6に記載の充電端子付筐体。
(付記8) 充電池と、
前記充電池に充電を行う充電回路が搭載された回路基板と、
前記回路基板の上に実装され、前記充電回路に電源を供給するバネ接点と、
重ね合されると前記充電池と前記回路基板を水密に覆う第1と第2の筐体とを備え、
前記第1と第2の筐体の何れか一方は付記1から7の何れかに記載の充電端子付筐体であり、前記第1と第2の筐体が重ね合された状態で、筺体に埋め込まれた板金の内側が前記バネ接点に接続し、外側が外部に露出することを特徴とする充電端子付筐体を備える電子装置。
【符号の説明】
【0035】
1 卓上ホルダ
4 充電ピン
10 電子装置(携帯電話機)
11 下側筺体
11HB 接続端子用の穴
11HF 充電端子用の穴
14 回路基板
30,31,32,33 板金
35 取付孔
36 熱活性テープ
37 剥離紙
40 インサート金型
41 雄金型
42 雌金型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8