(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、スキャナ機能、ファクシミリ機能、複写機能、プリンタとしての機能、データ通信機能、およびサーバ機能等を備えた電子写真方式の画像形成装置が広く利用されている。
図13は画像形成装置500の概略構成の一例を示し、
図14は定着部400の概略構成の一例を示している。
図13に示すように、画像形成装置500は、搬送部300と、中間転写ベルト800を有する転写部340と、定着部400とを備えている。
【0003】
定着部400は、加熱ローラー460と、定着ローラー420,440と、定着ベルト480とを有している。定着ローラー420には、
図14に示すように、定着ローラー420を回転させるための定着駆動モータ422がギア等を含む伝達手段424を介して接続されている。定着ローラー420の内部には、定着ローラー420を所定温度に加熱するためのヒータ420aが設けられている。
【0004】
図15A〜
図15Eは、画像形成装置500による画像形成時の用紙Pの搬送状態の一例を示している。図示しない給紙部から転写部340に搬送された用紙Pの表面には、中間転写ベルト800に形成されたトナー画像が転写される(
図15A)。トナー画像が転写された用紙Pは、所定速度で回転している定着部400に突入する(
図15B)。定着部400では、定着ベルト480および定着ローラー420にニップされた状態で加熱、加圧処理されることによりトナー画像が用紙Pの表面に定着される(
図15C,
図15D)。定着処理が終了すると、用紙Pの後端が定着部400から抜け、その後図示しない排紙トレイ上に排出される(
図15E)。
【0005】
ここで、定着部400においては、定着ローラー420の径交差や、定着ローラー420の温度変化による定着ローラー径の膨張によって、定着ローラー420の平均速度が変化してしまう場合がある。
図16は、定着ローラー420を構成する芯金と定着ローラー表面部との温度および時間の関係の一例を示している。縦軸は温度であり、横軸は時間である。
図16に示すように、定着ローラー表面部と芯金とは所定の温度上昇率で温度変化しており、この温度変化が定着ローラー420の速度変化の原因の一つとなっている。
【0006】
また、対向する定着ローラー420,440のそれぞれの弾性率の相違によっても、定着ローラー420の速度変動を引き起こす場合がある。これらのように、定着ローラー420に速度変動が発生すると、定着ローラー420の速度変動が上流側の転写部340にも影響し、転写部340において用紙Pの位置ずれを発生させ、これに起因して画像転写ずれが発生し、画質の低下を招くという問題がある。
【0007】
このような問題を回避するために、例えば特許文献1には、定着ローラーの周速度を検知する周速度検知手段を設けたり、定着ローラーの周速度を検知する周速度検知手段を設けたりし、各手段の検知信号に基づいて定着ローラーの周速度が所定値となるように定着ローラーの回転を制御する定着装置が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、以下に示す図面の寸法比率は、説明の都合上拡張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0017】
[画像形成装置の構成例]
図1は、本発明に係る画像形成装置100の構成の一例を示している。本発明に係る画像形成装置100は、定着部40の駆動制御を行う場合に、通紙する用紙Pのサイズ、坪量、剛度の少なくとも1以上の条件に応じてPID演算制御の演算式のパラメーターを変更することで、定着ローラー42等の回転角速度を一定に保つことを可能としている。
【0018】
図1に示すように、画像形成装置100は、タンデム型の画像形成装置と称されるものであり、自動原稿搬送部80と装置本体部102とを備えている。自動原稿搬送部80は、装置本体部102の上部に取り付けられ、搬送台上にセットされた用紙を搬送ローラー等により装置本体部102の画像読取部90に送り出す。
【0019】
装置本体部102は、操作表示部70と、画像読取部90と、画像形成部10と、中間転写ベルト8と、定着部40と、自動用紙反転搬送ユニット60(Auto Duolex Unit:以下ADUという)とを有している。
【0020】
操作表示部70は、液晶パネル等からなる表示部と抵抗膜圧式や静電容量式からなる位置検出部とが組み合わされたタッチパネルと、タッチパネルの周辺部に設けられたテンキーやスタートキー等のキーボタンとを有している。操作表示部70は、操作画面を表示したり、操作画面において入力された用紙サイズや坪量、剛度等の画像形成条件の設定を受け付けたりする。
【0021】
画像読取部90は、原稿台上に載置された原稿を走査露装置の光学系により走査露光した後、CCD(Charge Coupled Devices)イメージセンサにより走査した原稿の画像を光電変換して画像情報信号を生成し、この画像情報信号に所定の処理を行った後に画像形成部10に出力する。
【0022】
画像形成部10は、電子写真方式により画像を形成するものであり、イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成ユニット10Yと、マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成ユニット10Mと、シアン(C)色の画像を形成する画像形成ユニット10Cと、黒(K)色の画像を形成する画像形成ユニット10Kとを有している。この例では、それぞれ共通する機能名称、例えば、符号10の後ろに形成する色を示すY,M,C,Kを付して表記する。
【0023】
画像形成ユニット10Yは、感光体ドラム1Yと、その周囲に配置される帯電部2Y、書込部(露光部)3Y、現像部4Yおよびクリーニング部6Yを有している。画像形成ユニット10Mは、感光体ドラム1Mと、その周囲に配置される帯電部2M、書込部3M、現像部4Mおよびクリーニング部6Mを有している。画像形成ユニット10Cは、感光体ドラム1Cと、その周囲に配置される帯電部2C、書込部3C、現像部4Cおよびクリーニング部6Cを有している。画像形成ユニット10Kは、感光体ドラム1Kと、その周囲に配置される帯電部2K、書込部3K、現像部4Kおよびクリーニング部6Kを有している。
【0024】
各色の画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kは、同じ構成要素を備えているので、以下では画像形成ユニット10Y以外の色についての構成の説明は省略する。帯電部2Yは、感光体ドラム1Yの表面をほぼ一様に帯電する。書込部3Yは、例えばLEDアレイと結像レンズとを有するLPH(LED Print Head)や、ポリゴンミラー方式のレーザ露光走査装置により構成され、モータ制御により副走査方向に回転する感光体ドラム1Y上を画像情報信号に基づいてレーザ光により走査して静電潜像を形成する。現像部4Yは、感光体ドラム1Y上に形成された静電潜像をイエローのトナーにより現像する。これにより、感光体ドラム1Y上には可視画像であるトナー像が形成される。
【0025】
中間転写ベルト8は、無端状のベルトであって、複数のローラーにより張架されると共に走行可能に支持されている。中間転写ベルト8がモータ制御により走行すると、中間転写ベルト8の転写位置に各感光体ドラム1Yに形成されたイエローのトナー像が転写される(一次転写)。イエローのトナー像が転写されると、中間転写ベルト8は下流(下方)側に配置された次の感光体ドラム1Mに移動する。
【0026】
イエローの場合と同様に、感光体ドラム1M上にはマゼンダのトナー像が形成される。感光体ドラム1M上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト8上の転写位置に重ね合わされて転写される。このようにして、中間転写ベルト8が感光体ドラム1C,1Yにも移動していき、中間転写ベルト8上の転写位置にはシアンのトナー像、ブラックのトナー像が順に重ね合わせて転写されることで、カラー画像が形成される。
【0027】
給紙部20は、A3やA4等の各用紙サイズが収容された複数の給紙トレイ20A,20Bを有している。各給紙トレイ20A,20Bから一枚ずつ取り出された用紙Pは、搬送ローラー22,24,26,28およびループ作成ローラー30を経由してレジストローラー32に搬送される。なお、給紙トレイの数は2つに限定されるものではない。また、必要に応じて大容量の用紙Pを収容することが可能な大容量給紙装置を単数または複数連結させても良い。
【0028】
レジストローラー32は、駆動ローラーおよび従動ローラーを有し、ループ作成ローラー30によって用紙Pの先端が突き当てられることでループを形成して用紙Pの斜行を補正する。用紙Pは所定のタイミングで転写ローラーと従動ローラーとで構成される2次転写部34に搬送される。
【0029】
2次転写部34では、中間転写ベルト8の転写位置に各色のトナー像が重ね合わされることによって形成されたカラー画像が、給紙部20から搬送されてくる用紙Pの表面に一括転写される(2次転写)。カラー画像が形成された用紙Pは定着部40に搬送される。定着部40は、2次転写部34でトナー像が転写された用紙Pに加圧、加熱処理を行うことにより用紙Pの表面側のトナー像を用紙Pに定着させる。
【0030】
定着部40の用紙搬送方向の下流側には、用紙Pの搬送経路を排紙経路側またはADU60側に切り替えるための搬送路切替部50が設けられている。搬送路切替部50は、例えばソレノイドやモータ等から構成され、選択されている印刷モード(片面印刷モード、両面印刷モード)に基づいて搬送経路の切り替え制御を行う。
【0031】
片面印刷モードで片面の印刷が終了した用紙P、または、両面印刷モードで両面の印刷が終了した用紙Pは、定着部40で定着処理が施された後、定着部40よりも用紙搬送方向の下流側に設けられた排紙ローラー52により図示しない排紙トレイ上に排出される。
【0032】
また、両面印刷モードで用紙Pを2次転写部34に再給紙する場合、表面側に画像が形成された用紙Pは、搬送路切替部50を経由してADU60に搬送される。ADU60に搬送された用紙Pは、搬送ローラー62等を介してスイッチバック経路に搬送される。スイッチバック経路では、ADUローラー64の逆回転制御により用紙Pの後端を先頭にしてUターン経路部に搬送され、Uターン経路部等に設けられた搬送ローラー66,68等により2次転写部34に用紙Pの表裏反転された状態で再給紙される。2次転写部34に再給紙された用紙Pは、用紙Pの表面側の場合と同様の画像形成処理が行われる。
【0033】
[定着部の構成例]
図2および
図3は、定着部40およびその周辺部の構成の一例を示している。
図2に示すように、定着部40は、定着ローラー42,44と、加熱ローラー46と、定着ベルト48とを備えている。定着ローラー44は、芯金と芯金の外周を被覆するシリコーンゴム等からなる弾性層とから構成されている。
【0034】
加熱ローラー46は、定着ローラー44の上方側に所定の間隔を隔てて設けられている。加熱ローラー46の内部には、定着ベルト48を加熱するためのヒータ46aが設けられている。定着ベルト48は、無端状のベルトであって、定着ローラー44と加熱ローラー46とによって張架されている。定着ベルト48は、加熱ローラー46のヒータ46aによって加熱されると共に、定着ローラー44の回転に伴って回転する。
【0035】
定着ローラー42は、芯金と芯金の外周を被覆するシリコーンゴム等からなる弾性層とから構成され、定着ローラー44に対向して配置されている。定着ローラー42には、
図3に示すように、ギア等の伝達手段124を介して駆動部の一例である定着駆動モータ122が接続されている。定着ローラー42は、定着駆動モータ122の駆動により回転する。定着ローラー42の内部には、定着ローラー42を加熱するためのヒータ42aが設けられている。定着動作時には、定着ローラー42が定着ローラー44に圧接されることで定着ローラー42と定着ベルト48と間にニップ部が形成される。2次転写部34から搬送されてくる用紙Pは、ニップ部を通過することにより加熱、加圧処理され、トナー画像が用紙Pに定着される。
【0036】
用紙検出センサ132は、例えば透過型センサまたは反射型センサ(光センサ)から構成され、定着部40よりも用紙搬送方向の上流側に設けられている。用紙検出センサ132は、定着部40に搬送されてくる用紙Pを検出する。用紙検出センサ132による用紙Pの検出結果は、定着部40に突入する用紙Pの突入タイミングや定着部40を抜ける用紙Pの抜けタイミング等を予測する際に用いられる。
【0037】
定着ローラー角速度検出部162は、例えば定着ローラー42に取り付けられ、回転している定着ローラー42の回転角速度に基づく検出信号を検出する。定着ローラー角速度検出部162には、例えばエンコーダ等が用いられる。これにより、用紙Pが定着部40に突入する際等の突発的な衝撃による定着ローラー42の角速度変動を検出できる。なお、定着ローラー角速度検出部162は、第1の角速度検出部の一例を構成している。
【0038】
定着モータ角速度検出部164は、定着駆動モータ122に取り付けられ、回転駆動している定着駆動モータ122の回転角速度に基づく検出信号を検出する。定着モータ角速度検出部164には、例えばエンコーダ等が用いられる。これにより、用紙Pが定着部40に突入する際等の突発的な衝撃による定着駆動モータ122の角速度変動を検出できる。なお、定着モータ角速度検出部164は、第2の角速度検出部の一例を構成している。
【0039】
測距センサ172は、定着ローラー42の周面部と所定の間隔を隔てて設けられ、定着ローラー42の周面部と測距センサ172との間の距離を測定する。この距離は、定着ローラー42の温度変化によって変化するローラー径を算出する際に用いられる。
【0040】
[画像形成装置のブロック構成例]
図4は、画像形成装置100のブロック構成の一例を示している。
図4に示すように、画像形成装置100は、装置全体の動作を制御する制御部としてのCPU(Central Processing Unit)150を備えている。CPU150は、演算部の一例であり、例えば図示しないROM(Read Only Memory)等に記憶されているプログラムを実行することにより定着駆動制御を含む画像形成処理を行う。CPU150には、記憶部110と、パルス発生器120と、I/O130と、タイムカウンタ166と、A/D変換器170とがそれぞれ接続されている。
【0041】
記憶部110は、例えば不揮発性の半導体メモリやHDD(Hard Disk Drive)等から構成されている。記憶部110には、PID演算式の各パラメーターが格納される第1の定常制御テーブルTB1、第2の定常制御テーブルTB2、および衝撃タイミング制御テーブルTB3が記憶されている。また記憶部110には、PID演算制御時に用いられる定着ローラー42の回転角速度の目標値や、定着駆動モータ122の回転角速度の目標値等が記憶されている。なお、制御テーブルについては後述する。
【0042】
パルス発生器120は、CPU150から供給される駆動指令値に基づいてパルス信号(例えばPWM信号)を生成し、生成したパルス信号を定着駆動モータ122に供給する。駆動指令値は、後述するように、PID演算制御により定着駆動モータ122が一定値(目標値)で回転する値に設定されている。定着駆動モータ122は、例えばブラシレスモータやステッピングモータ等から構成され、パルス発生器120から供給されるパルス信号に基づいて回転駆動する。
【0043】
用紙検出センサ160は、通過する用紙Pを検出し、この検出に基づく検出信号をI/O130に出力する。定着ローラー角速度検出部162は、定着ローラー42の回転角速度を検出し、検出に基づく検出信号をタイムカウンタ166を介してI/O130に出力する。定着モータ角速度検出部164は、定着駆動モータ122の回転角速度を検出し、検出により得られた検出信号をタイムカウンタ166を介してI/O130に出力する。
【0044】
測距センサ172は、自身と定着ローラー42の周面部との間の距離を測定し、測定により得られた距離情報をA/D変換器170に供給する。A/D変換器170は、測距センサ172により測定された距離情報をA/D変換し、A/D変換により得られた距離データをCPU150に供給する。
【0045】
CPU150は、定着ローラー角速度検出部162からI/O130を介して入力される検出信号を定着ローラー42の回転角速度に変換し、定着モータ角速度検出部164からI/O130を介して入力される検出信号を定着駆動モータ122の回転角速度に変換する。また、CPU150は、測距センサ172からI/O130を介して入力される距離情報から定着ローラー42のローラー径を算出する。
【0046】
CPU150は、得られた定着ローラー42の回転角速度、定着ローラー42の周面との間の距離(定着ローラー42の径)および定着駆動モータ122の回転角速度を用いて、定着駆動モータ122の駆動速度を一定値に保つためのPID(Proportional Integral Derivative)演算制御を実行する。PID演算制御は、比例制御、積分制御および微分制御を組み合わせた制御である。
【0047】
PID演算制御は、衝撃タイミング制御と定常制御との二つの定着駆動制御モードを有している。衝撃タイミング制御は、用紙Pのサイズ、坪量、剛度に応じて、用紙Pが定着部40に突入する際や、用紙Pが定着部40から抜ける際等の突発的な衝撃により発生する定着ローラー42の速度変動を抑制するための制御である。衝撃タイミング制御を実行する場合、演算式のパラメーターとして衝撃タイミング制御テーブルTB3の各パラメーターが用いられる(
図5,
図8参照)。
【0048】
定常制御は、用紙Pが定着ローラー42および定着ベルト48によって完全にニップして搬送されている状態であって、定着ローラー42の速度変動が小さい場合に実行される制御である。この定常制御は、用紙Pのサイズ、坪量、剛度に応じて、さらに第1の定常制御と第2の定常制御との二つのモードから構成されている。
【0049】
第1の定常制御は、坪量や剛度が大きい例えば厚紙を用いる場合であって、用紙Pが定着部40を通過する際における定着ローラー42の温度変化が大きくなる場合に適用される。第1の定常制御を実行する場合、演算式のパラメーターとして第1の定常制御テーブルTB1の各パラメーターが用いられる(
図5,
図6参照)。第2の定常制御は、坪量や剛度が小さい例えば薄紙を用いる場合であって、用紙Pが定着部40を通過する際における定着ローラー42の温度変化が緩やかな場合に適用される。第2の定常制御を実行する場合には、演算式のパラメーターとして第2の定常制御テーブルTB2の各パラメーターが用いられる(
図5,
図7参照)。
【0050】
[CPUのPID演算制御例]
図5は、CPU150におけるPID演算制御の一例を示している。
図5に示すように、減算器151には、定着ローラー角速度検出部162により検出された定着ローラー42の回転角速度と、予め設定された定着ローラー42の回転角速度の目標値とがそれぞれ入力される。減算器151は、定着ローラー42の実際の回転角速度から定着ローラー42の回転角速度の目標値を減算して偏差e
1を算出し、この偏差e
1をPID制御部152に出力する。
【0051】
PID制御部152は、減算器151から出力された偏差e
1を下記演算式(1)に入力することでPID演算を行い、この演算により得られた制御値(操作量)S1を加算器155に出力する。なお、演算式(1)の各パラメーターの比例項Kp1,積分項Ki1,微分項Kd1は、用紙Pの搬送位置や用紙Pの紙種等に応じて、第1の定常制御テーブルTB1、第2の定常制御テーブルTB2または衝撃タイミング制御テーブルTB3の中から適宜選択される。
【0053】
減算器153には、測距センサ172により検出された定着ローラー42の周面部との間の距離と、予め設定された測距センサ172と定着ローラー42の周面部との間の距離の目標値とがそれぞれ入力される。減算器153は、測距センサ172による実際の距離から目標値を減算して偏差e
2を算出し、この偏差e
2をPID制御部154に出力する。
【0054】
PID制御部154は、減算器153から出力された偏差e
2を下記演算式(2)に入力することでPID演算を行い、この演算により得られた制御値S2を加算器155に出力する。なお、演算式(2)の各パラメーターの比例項Kp2,積分項Ki2,微分項Kd2は、用紙Pの搬送位置や用紙Pの紙種等に応じて、第1の定常制御テーブルTB1、第2の定常制御テーブルTB2、衝撃タイミング制御テーブルTB3の中から適宜選択される。
【0056】
加算器155は、PID制御部152から出力された制御値S1とPID制御部154から出力された制御値S2とを加算して制御値S3を算出し、この制御値S3を加算器157に出力する。
【0057】
減算器156には、定着モータ角速度検出部164により検出された定着駆動モータ122の回転角速度と、予め設定された定着駆動モータ122の回転角速度の目標値とがそれぞれ入力される。減算器156は、定着駆動モータ122の実際の回転角速度から定着駆動モータ122の回転角速度の目標値を減算して偏差e
3を算出し、この偏差e
3を加算器157に出力する。
【0058】
加算器157は、加算器155から出力された制御値S3と減算器156から出力された偏差e
3とを加算して偏差(制御値)e
4を算出し、この制御値e
4をPID制御部158に出力する。
【0059】
PID制御部158は、加算器157から出力された制御値e
4を下記演算式(3)に入力することでPID演算を行い、この演算により得られた制御値S4を変換部159に出力する。演算式(3)の各パラメーターの比例項Kp3,積分項Ki3,微分項Kd3は、用紙Pの搬送位置や用紙Pの紙種等に応じて、第1の定常制御テーブルTB1、第2の定常制御テーブルTB2、衝撃タイミング制御テーブルTB3の中から適宜選択される。
【0061】
変換部159は、PID制御部158により得られた制御値S4を、例えば係数K(ゲイン)を用いて定着駆動モータ122の駆動に対応した駆動指令値に変換する。変換部159は、変換により得られた駆動指令値を定着駆動モータ122に出力する。定着駆動モータ122は、変換部159から出力された駆動指令値に基づいて回転駆動する。これにより、突発的な衝撃や温度変化等により定着ローラー42等の速度変動が発生した場合でも、定着ローラー42の周速度を一定の目標値に保つことができるようになる。
【0062】
[制御テーブルの構成例]
図6は、第1の定常制御テーブルTB1の構成の一例を示している。第1の定常制御テーブルTB1は、用紙Pの坪量や剛度が大きい場合に実行される第1の定常制御で用いられるテーブルである。第1の定常制御テーブルTB1には、
図5で示した演算式(1)の比例項Kp1、積分項Ki1および微分項Kd1の各パラメーターが記憶され、演算式(2)の比例項Kp2、積分項Ki2および微分項Kd2の各パラメーターが記憶され、演算式(3)の比例項Kp3、積分項Ki3および微分項Kd3の各パラメーターが記憶されている。
【0063】
図7は、第2の定常制御テーブルTB2の構成の一例を示している。第2の定常制御テーブルTB2は、用紙Pの坪量や剛度が小さい場合に実行される第2の定常制御で用いられるテーブルである。第2の定常制御テーブルTB2には、
図5で示した演算式(1)の比例項Kp1、積分項Ki1および微分項Kd1の各パラメーターが記憶され、演算式(2)の比例項Kp2、積分項Ki2および微分項Kd2の各パラメーターが記憶され、演算式(3)の比例項Kp3、積分項Ki3および微分項Kd3の各パラメーターが記憶されている。
【0064】
図8は、衝撃タイミング制御テーブルTB3の構成の一例を示している。衝撃タイミング制御テーブルTB3は、突発的な衝撃が発生する場合に実行される衝撃タイミング制御で用いられるテーブルである。衝撃タイミング制御テーブルTB3には、
図5で示した演算式(1)の比例項Kp1、積分項Ki1および微分項Kd1の各パラメーターが記憶され、演算式(2)の比例項Kp2、積分項Ki2および微分項Kd2の各パラメーターが記憶され、演算式(3)の比例項Kp3、積分項Ki3および微分項Kd3の各パラメーターが記憶されている。
【0065】
ここで、第1の定常制御テーブルTB1のパラメーターと、第2の定常制御テーブルTB2のパラメーターとを比較する。例えば、坪量や剛度が小さい薄紙を用いた場合には、用紙Pの定着部40の通過により定着ローラー42の温度が緩やかに変化し、この温度変化に基づく定着ローラー42の速度変動は厚紙を用いた場合よりも緩やかとなる。そのため、第2の定常制御テーブルTB2の積分項Ki1,Ki2,Ki3は、第1の定常制御テーブルTB1の積分項Ki1,Ki2,Ki3よりも大きい値に設定されている。これにより、薄紙を用いる場合には、第2の定常制御テーブルTB2を用いることで積分要素を重視したPID演算制御を行うことができるようになる。
【0066】
一方、坪量や剛度が大きい厚紙を用いた場合には、用紙Pの定着部40の通過により、定着ローラー42の表面の温度変化が大きくなり、定着ローラー42の速度変動は薄紙を用いた場合よりも大きくなる。そのため、第1の定常制御テーブルTB1の比例項Kp1,Kp3は、第2の定常制御テーブルTB2の比例項Kp1,Kp3よりも大きな値に設定されている。これにより、例えば厚紙を用いる場合には、第1の定常制御テーブルTB1を用いることで比例要素を重視したPID演算制御を行うことができるようになる。
【0067】
次に、第1および第2の定常制御テーブルTB1,TB2のパラメーターと、衝撃タイミング制御テーブルTB3のパラメーターとを比較する。例えば、坪量や剛度が大きい用紙(厚紙)を用いた場合には、用紙Pが定着部40に突入するタイミングや、用紙Pが定着部40から抜けるタイミングで突発的な衝撃が発生し、この衝撃により定着ローラー42が速度変動する。この用紙Pの突入や抜け時の速度変動は、用紙Pが定着ローラー42に完全にニップ状態で搬送される場合よりも大きくなる。そのため、衝撃タイミング制御テーブルTB3の比例項Kp1,Kp3は、第1および第2の定常制御テーブルTB1,TB2の比例項Kp1,Kp3よりも大きな値に設定されている。これにより、用紙Pのサイズ、坪量、剛度が大きい、例えば厚紙を用いる場合には、衝撃タイミング制御テーブルTB3を用いることで比例要素を重視した制御量の多いPID演算制御を行うことができるようになる。
【0068】
[PID演算制御の変更タイミング例]
図9は、用紙Pの搬送タイミング(搬送位置)に応じたPID演算制御の変更タイミングの一例を示している。詳しくは、
図9Aは用紙検出センサ160による用紙Pの検出結果を示し、
図9BはPID演算制御の変更タイミングを示している。
図9では、用紙Pの坪量や剛度が大きい厚紙を用いる場合について説明する。
【0069】
図9Aに示すように、時刻m1において最初の用紙Pの後端部が用紙検出センサ160を通過すると、用紙検出センサ160がオンとなり、このオン状態を示すオン信号がCPU150に出力される。CPU150は、用紙検出センサ160からオン信号が出力されると、このオン信号をトリガとして予測制御を行う。予測制御とは、オン信号と用紙Pの搬送速度とに基づいて用紙Pが定着ローラー42に突入する直前および突入した直後のタイミング(搬送位置)を予測し、予測した直前と直後の間の時間において制御状態を変化させる制御である。
【0070】
CPU150は、
図9Bに示すように、オン信号から一定時間T1が経過したら、次の用紙Pが定着ローラー42に突入する直前の位置まで到達し、用紙Pの定着部40への衝突による突発的な衝撃が発生すると判断する。CPU150は、判断結果に基づいて定着駆動制御を衝撃タイミング制御に変更し、衝撃タイミング制御テーブルTB3の各パラメーターを用いてPID演算制御を実行する。
【0071】
CPU150は、衝撃タイミング制御に変更した後、さらに時間(間隔)T2をカウントし、用紙Pが定着ローラー42に突入する直前から定着ローラー42に突入した直後の時間を予測する。微小時間T2が経過すると、用紙Pが定着ローラー42によって完全にニップされて安定搬送されることで突発的な衝撃が収まったと判断し、定着駆動制御を衝撃タイミング制御から定常制御(第1の定常制御)に変更する。本例では、定常制御が時間T3の間実行される。用紙Pが搬送されていくと、時刻m2において用紙Pの後端部が用紙検出センサ160を通過する。用紙P2の後端部が用紙検出センサ160を通過すると、用紙検出センサ160がオンとなり、このオン状態を示すオン信号がCPU150に出力される。
【0072】
CPU150は、用紙検出センサ160からオン信号が出力されると、このオン信号をトリガとして予測制御を行う。CPU150は、オン信号から一定時間T4をカウントし、時間T4が経過したら用紙Pが定着ローラー42から抜ける直前の位置まで接近したと予測し、この予測結果に基づいて用紙Pの定着部40への衝突による突発的な衝撃が発生すると判断する。CPU150は、定着制御条件を定常制御から衝撃タイミング制御に変更し、衝撃タイミング制御テーブルTB3の各パラメーターを用いてPID演算制御を実行する。
【0073】
CPU150は、衝撃タイミング制御に変更した後、さらに時間T5をカウントし、用紙Pが定着ローラー42から抜ける直前から定着ローラー42から抜ける直後の時間を予測する。時間T5が経過すると、用紙Pが定着部40を通過したと判断して衝撃タイミング制御を終了する。
【0074】
続けて、定着駆動制御の他のタイミング制御例について説明する。
図9Cは、
図9Bとは異なる他のPID演算制御の変更タイミングの一例を示している。定着駆動制御として衝撃タイミング制御が選択される場合、PID演算式の各パラメーターは定常制御のPID演算式の各パラメーターに比べて大きな値に設定されている。そのため、衝撃タイミング制御の実行時間(長さ)によっては制御量(操作量)が大きくなり制御が不安定になる場合も考えられる。
【0075】
そこで、
図9Bに示した衝撃タイミング制御を実行する時間T2,T5を短く設定することもできる。例えば、
図9Cに示すように、時間T2のうち、最初の時間T2aで衝撃タイミング制御を行い、次の時間T2bで定常制御を行い、次の時間T2cで衝撃タイミング制御を行っても良い。時間T2における定着制御の切り替えパターンは、
図9Cに限定されるものではなく、種々のパターンを選択することができる。このように、制御値の大きい衝撃タイミング制御を瞬間的に行うことで、より安定した定着駆動制御を行うことができる。
【0076】
また、通紙する用紙Pの剛度、坪量が設定した基準値付近である場合には、制御の抑制力が働く
図9Cの変更タイミングを採用するようにしても良い。一方、用紙Pの剛度、坪量が基準値を大きく超える場合には、制御量の大きい
図9Bの変更タイミングを採用するようにしても良い。
【0077】
[画像形成装置の動作例]
図10は、本発明に係る画像形成装置100の定着駆動制御の動作の一例を示すフローチャートである。
図10に示すように、ステップS100では、操作表示部70等の入力部で画像形成処理の開始の指示(ジョブ情報)が受け付けられると、CPU150は定着部40等の各構成部に対して起動開始の指示を供給する。
【0078】
ステップS110でCPU150は、定着駆動モータ122を駆動させることで定着ローラー42等を回転制御すると共に、ヒータH1等を作動させて定着ローラー42等を所定温度に加熱させる。
【0079】
ステップS120でCPU150は、定着部40の定着ローラー42の回転速度や温度等が目標値となるように定着駆動制御を実行する。また、CPU150は、用紙Pの搬送タイミングや用紙Pの紙種に応じて定着駆動制御を切り替える定着駆動制御モードをオンする。CPU150には、各検出部により検出された定着ローラー42や定着駆動モータ122の回転角速度、定着ローラー42との間の距離情報が逐次供給される。なお、定着駆動制御モードを行うか否かは、例えば操作表示部70で選択できるようにしても良い。
【0080】
ステップS130でCPU150は、定着部40の定着ローラー42等の回転速度(用紙Pの搬送速度)が目標速度まで到達したか否かを判断する。例えば、CPU150は、定着ローラー42の周辺部に設けられた速度センサの検出結果に基づいて定着ローラー42等が目標速度等に到達したか否かを判断する。CPU150は、定着部40の回転速度等が目標速度まで到達したと判断した場合にはステップS140に進み、ステップS140では定着部40の速度が安定したことが報告される。一方、CPU150は、定着部40の回転速度等が目標速度まで到達していないと判断した場合には目標速度に到達するまで定着駆動制御を実行する。
【0081】
ステップS150でCPU150は、定着部40が目標速度等に到達したら、通紙する用紙Pの紙種を判断する。CPU150は、例えばジョブ情報に含まれる用紙Pのサイズ、坪量、剛度、給紙トレイ等の情報に基づいて用紙Pが厚紙であるかまたは薄紙であるかを判断する。CPU150は、用紙Pが厚紙であると判断した場合にはステップS160に進み、用紙Pが薄紙であると判断した場合にはステップS240に進む。
【0082】
ここで、用紙サイズについては、例えば封筒やハガキが選択された場合、サイズが小さい場合でも剛度や坪量が大きくなるので、用紙Pが厚紙であると判断することができる。また、坪量や剛度については、予め設定された基準値を超える場合に、用紙Pが厚紙であると判断することができる。また、用紙サイズ、坪量、剛度のうち複数の条件を考慮して、通紙する用紙Pが厚紙であるか否かを判断することもできる。さらに、搬送経路上に用紙の厚みや坪量等を検出するセンサを設け、このセンサの検出結果に基づいて通紙する用紙Pが厚紙であるかまたは薄紙であるかを判断しても良い。
【0083】
通紙する用紙Pが厚紙である場合には、定着駆動制御として衝撃タイミング制御および第1の定常制御が実行される。具体的には、ステップS160でCPU150は、用紙検出センサ160がオンしたか否かを判断する。CPU150は、用紙検出センサ160がオンしたと判断した場合にはステップS170に進み、用紙検出センサ160がオンしていないと判断した場合には用紙検出センサ160の検出結果を継続して監視する。
【0084】
ステップS170でCPU150は、用紙検出センサ160がオンすると、用紙検出センサ160の検出信号をトリガとして第1のタイマーをオンし、予め設定された一定時間T1をカウントする(
図9参照)。
【0085】
ステップS180でCPU150は、第1のタイマーがタイムアウトしたか否かを判断する。CPU150は、第1のタイマーがタイムアウトしたと判断した場合にはステップS190に進み、第1のタイマーがタイムアウトしていないと判断した場合には第1のタイマーがタイムアウトするまでカウントを継続して行う。
【0086】
ステップS190でCPU150は、第1のタイマーがタイムアウトすると、用紙Pが定着ローラー42の直前の位置に到達したと判断して定着駆動制御を衝撃タイミング制御に変更する。CPU150は、衝撃タイミング制御において、衝撃タイミング制御テーブルTB3を用いてPID演算制御を実行する。これにより、用紙Pが定着ローラー42に突入する際の突発的な衝撃による搬送速度の変動を抑制することができ、定着駆動モータ122の回転角速度、定着ローラー42の周速度を一定に保つことができるようになる。
【0087】
ステップS200でCPU150は、例えば第1のタイマーがタイムアウトした時点をトリガとして第2のタイマーをオンし、予め設定された一定時間T2をカウントする(
図9参照)。
【0088】
ステップS210でCPU150は、第2のタイマーがタイムアウトしたか否かを判断する。CPU150は、第2のタイマーがタイムアウトしたと判断した場合にはステップS220に進む。一方、CPU150は、第2のタイマーがタイムアウトしていないと判断した場合には、第2のタイマーがタイムアウトするまでカウントを継続する。
【0089】
ステップS220でCPU150は、第2のタイマーがタイムアウトすると、定着駆動制御を衝撃タイミング制御から第1の定常制御に変更する。これは、用紙Pの定着ローラー42への突入後は、用紙Pが定着ローラー42にニップされて搬送されることで突入時よりも定着ローラー42の速度変動が小さくなり安定した状態となるからである。一方、厚紙を用いているので、PID制御における制御量が若干大きい第1の定常制御を選択する。CPU150は、第1の定常制御において第1の定常制御テーブルTB1を用いて厚紙に対応したPID演算制御を実行する。
【0090】
第1の定常制御が終了すると、ステップS230でCPU150は、印刷ジョブが終了したか否かを判断する。CPU150は、印刷ジョブが終了したと判断した場合には、一連の画像形成動作を終了する。一方、CPU150は、印刷ジョブが終了していないと判断した場合にはステップS160に戻る。CPU150は、用紙Pが定着部40から抜けるタイミングにおいても突発的に発生する衝撃による定着ローラー42の速度変動を抑制するために、上述したステップS160〜S220の定着駆動制御を実行する(
図9参照)。また、以降に搬送される次の用紙Pに対しても同様の定着駆動制御を実行する。
【0091】
なお、印刷ジョブにおいて次の用紙Pのサイズ、坪量、剛度が変更される場合にはステップS150に戻り、再度紙種を判断して定着駆動制御を実行するようにしても良い。
【0092】
これに対し、通紙する用紙Pが薄紙である場合には、定着駆動制御として第2の定常制御が実行される。薄紙の場合、定着ローラー42への突入時や抜け時において厚紙よりも突発的な衝撃が発生し難い(小さい)ので、厚紙を用いた場合のように衝突タイミング制御を実行せずに定常制御のみが実行される。また、定常制御としては、第1の定常制御よりも制御値が小さい第2の定常制御が選択される。
【0093】
具体的には、ステップS240でCPU150は、用紙検出センサ160がオンしたか否かを判断する。CPU150は、用紙検出センサ160がオンしたと判断した場合にはステップS250に進み、用紙検出センサ160がオンしていないと判断した場合には用紙検出センサ160の検出結果を継続して監視する。
【0094】
ステップS250でCPU150は、定着駆動制御を第2の定常制御に変更する。CPU150は、第2の定常制御において第2の定常制御テーブルTB2を用いて薄紙に応じたPID演算制御を実行する。なお、ステップS170〜S210で説明したように、タイマーを用いて用紙Pが定着ローラー42に突入する直前のタイミングで第2の定着制御に変更しても良い。
【0095】
ステップS210でCPU150は、印刷ジョブが終了したか否かを判断し、印刷ジョブが終了したと判断した場合には第2定常制御を含む画像形成処理の一連の動作を終了する。一方、印刷ジョブが終了していないと判断した場合にはステップS160に戻り、上述した定着駆動制御を実行する。
【0096】
以上説明したように、本実施の形態では、用紙Pの定着部40への突入時や用紙Pの定着部40からの抜け時に、定着駆動モータ122の回転速度を決める演算式のパラメーターを衝撃タイミング制御テーブルTB3に変更して定着駆動制御を実行する。これにより、突入時等の突発的な衝撃による定着駆動モータ122の速度変動を抑制することができ、定着駆動モータ122の回転角速度を一定に保つことができる。その結果、2次転写部34および定着部40間で生じる転写ずれを防止することができ、画質の高画質化を図ることができる。
【0097】
また、本実施の形態では、通紙する用紙Pのサイズ、坪量、剛度に応じて、定着駆動モータ122の回転速度を決定する演算式のパラメーターを第1の定常制御テーブルTB1または第1の定常制御テーブルTB2に変更して定着駆動制御を実行している。これにより、定着ローラー42の周速度を一定に保つことができ、2次転写部34および定着部40間で生じる転写ずれを防止して画質の高画質化を図ることができる。また、多くの紙種に対して高画質を確保することができる。
【0098】
さらに、本実施の形態によれば、定着駆動モータ122の回転角速度と、伝達手段124を介して接続される定着ローラー42の回転角速度とを用いているので、用紙Pの定着ローラー42への突入時等の突発的な衝撃をより高精度に検出することができる。これにより、2次転写部34および定着部40間で生じる転写ずれも高精度で防止することができる。
【0099】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。上述した
図5では、PID演算制御において、例えば定着ローラー角速度検出部162により検出された定着ローラー42の回転角速度と目標値との差を演算して偏差e1を得ていたが、これに限定されることはない。例えば、定着ローラー42の回転周期のN周分における平均速度を算出し、この定着ローラー42の平均速度を目標値に代えて用いることもできる。
【0100】
図11は、定着駆動制御時の他のPID演算制御の一例を示している。
図11に示すように、定着ローラー42の回転角速度とN周前の平均速度との偏差e
1を算出し、この偏差e
1をPID制御部152の入力値として用いる。同様に、定着駆動モータ122の回転角速度とN周前の平均速度との偏差e
3を算出し、この偏差e
3をPID制御部158の入力値として用いる。このような構成によっても、上記実施の形態と同様に、定着駆動モータ122の回転角速度を一定とするような駆動指令値を算出することができる。なお、N周分の速度情報は、記憶部110に記憶させることができる。
【0101】
また、上述した実施の形態では、定着駆動制御としてPID演算制御を行ったが、PI駆動制御を行うこともできる。
図12は、定着駆動制御時におけるPI演算制御の一例を示している。なお、
図5のPID演算制御とは演算式のパラメーターとして微分項がないだけで、その他の演算は共通しているため、説明は省略する。このように、PI演算制御によっても、突入時等の突発的な衝撃による定着駆動モータ122の速度変動を抑制することができ、定着ローラー42の周速度を一定に保つことができる。その結果、2次転写部34および定着部40間で生じる転写ずれを防止することができ、画質の高画質化を図ることができる。
【0102】
また、用紙Pの姿勢を検出する姿勢検出部を定着部40の用紙搬送方向の上流側に設け、この姿勢検出部の用紙Pの検出結果に基づいてPID演算制御の各パラメーターを変更するようにしても良い。例えば、用紙Pの一端が湾曲していたり、用紙Pが傾いていたりする場合には、定着部40での突入による衝撃が大きくなると予測し、通紙する用紙Pが薄紙であっても衝撃タイミング制御に変更して定着駆動制御を行うことができる。具体的には、衝撃タイミング制御テーブルTB3のパラメーターに変更してPID演算制御を行う。
【0103】
さらに、上述した実施の形態では、定着ローラー42の回転角速度と、定着駆動モータ122の回転角速度とに基づいて、突発的な衝撃による速度変動を検出していたが、これに限定されることなく、定着ローラー42の回転角速度および定着駆動モータ122の回転角速度の何れか一方の回転角速度を用いて突発的な衝撃による速度変動を検出するようにしても良い。