(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028675
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】車体後部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20161107BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
B62D25/08 M
B62D25/20 K
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-103134(P2013-103134)
(22)【出願日】2013年5月15日
(65)【公開番号】特開2014-223828(P2014-223828A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2016年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 晋栄
(72)【発明者】
【氏名】大石 浩二
【審査官】
森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−184005(JP,A)
【文献】
特開2008−087650(JP,A)
【文献】
特開2009−067228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部のバックドア用開口部の下方の車室内面を構成するバックパネルを備える車体後部構造であって、
前記バックパネルは、前記バックドア用開口部の下端から下方に延びる縦壁部と、該縦壁部の上端から車両後方に延びる上面部とを有し、
前記縦壁部は、上方に向かうにしたがって前方に緩やかに傾斜する曲面状であり、
当該車体後部構造は、前記バックパネルの上面部に車両後方側から取り付けられて該バックパネルと閉断面を形成するテールエンドメンバを更に備えることを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
当該車体後部構造は、
前記バックパネルの上面部の側方に接合され前記バックドア用開口部の下部のコーナー部を構成する前後に重ねられたバックピラーインナパネルおよびリアランプハウスアウタパネルと、
前記バックパネルの車両前側の面に接合され車両前後方向に延びて車体後部の底面を構成するリアフロアパネルと、
前記バックパネルの車幅方向両端の下で前記リアフロアパネルの下面に接合され車両前後方向に延びるリアサイドメンバとを更に備え、
前記バックピラーインナパネルとリアランプハウスアウタパネルとは上下方向の溶接ラインで互いに接合されていて、
前記溶接ラインの下端は、前記リアサイドメンバの上方に位置していることを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記バックパネルのうち、前記バックピラーインナパネルと前記リアランプハウスアウタパネルとの溶接ラインの下端よりも車幅方向外側の領域には、車両後方に向かって突出する第1ビード形状が形成されていて、
車幅方向において、第1ビード形状の車幅方向内側の縦縁の位置と、前記リアサイドメンバの車幅方向内側の端部の位置とが一致または近接していることを特徴とする請求項2に記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記リアフロアパネルの後部には、車幅方向中央部が下方に窪んだハット形状が形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の車体後部構造。
【請求項5】
前記リアフロアパネルのハット形状は、車両中央部の底面部と、該底面部の側縁から上方に延びる傾斜部と、該傾斜部の上縁から車幅方向外側に延びるフランジ部とを含み、
当該車体後部構造は、前記リアフロアパネルの下面において前記底面部と前記傾斜部との境目に接合されてトーイングフックを支持するトーイングフックブラケットを更に備え、
前記バックパネルには、前記リアフロアパネルへ伸びる前記トーイングフックブラケットの接合箇所と車幅方向で重なる位置に、車両上下方向に延びる第2ビード形状が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の車体後部構造。
【請求項6】
第2ビード形状は、車両後方に向かって突出していることを特徴とする請求項5に記載の車体後部構造。
【請求項7】
前記バックパネルには、車幅方向中央部に車両後方に向かって突出する第3ビード形状が形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車体後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部のバックドア用開口部の下方の車室内面を構成するバックパネルを備える車体後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体後部では、剛性の確保や車室内音の低減等に対して様々な構造の工夫が必要となる。その1つとして、バックドア近傍の剛性の向上のため、車体後部では、複数のパネルによって閉断面を形成している。例えば特許文献1では、車体後部において、リヤエンドアッパパネルとロックレインフォースによって閉断面を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭61−40591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、ロックレインフォースが屈曲していると、車体にそれをねじる方向の力(以下、ねじり荷重と称する)がかかった際、屈曲部にねじり荷重が集中し、そこを基点とした変形が生じるおそれがある。このため、特許文献1の構成では依然として改良の余地があり、よりねじり剛性や振動性能が高い車体構造の開発が求められていた。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、高いねじり剛性や振動性能を得ることが可能な車体後部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車体後部構造の代表的な構成は、車両後部のバックドア用開口部の下方の車室内面を構成するバックパネルを備える車体後部構造であって、バックパネルは、バックドア用開口部の下端から下方に延びる縦壁部と、縦壁部の上端から車両後方に延びる上面部とを有し、縦壁部は、上方に向かうにしたがって前方に緩やかに傾斜する曲面状であり、当該車体後部構造は、バックパネルの上面部に車両後方側から取り付けられてバックパネルと閉断面を形成するテールエンドメンバを更に備えることを特徴とする。
【0007】
上記構成のように、バックパネルが、側面視において、上方に向かうにしたがって前方に緩やかに傾斜する曲面状である、すなわちバックパネルの下部は曲率が小さい曲面または平面であり、上方に向かうにしたがって曲率が大きい曲面になることにより、ねじり荷重の集中が生じる箇所がない。したがって、ねじり荷重がかかっても変形が生じることがなく、車体後部において高いねじり剛性を得ることが可能となる。またバックパネルが緩やかに傾斜する曲面状であることにより、バックパネルにかかった振動や荷重を滑らかに伝達することができる。したがって、それらがバックパネル全体に伝達しやすくなるため、振動への高い耐性すなわち高い振動性能、および高い耐荷重性能が得られる。
【0008】
更に、バックパネルの上部において、上面部にとりつけられたテールエンドメンバによって閉断面が形成されることにより、従来閉断面によって得られていた剛性を好適に確保することできる。また、バックパネルの下部がほぼ平面状であることにより、バックパネルの下端は、その下方に配置される部材、例えばリアフロアパネル等とほぼ垂直に接合されることとなるため、接合時の安定性、および作業効率を高めることが可能となる。
【0009】
当該車体後部構造は、バックパネルの上面部の側方に接合されバックドア用開口部の下部のコーナー部を構成する前後に重ねられたバックピラーインナパネルおよびリアランプハウスアウタパネルと、バックパネルの車両前側の面に接合され車両前後方向に延びて車体後部の底面を構成するリアフロアパネルと、バックパネルの車幅方向両端の下でリアフロアパネルの下面に接合され車両前後方向に延びるリアサイドメンバとを更に備え、バックピラーインナパネルとリアランプハウスアウタパネルとは上下方向の溶接ラインで互いに接合されていて、溶接ラインの下端は、リアサイドメンバの上方に位置しているとよい。
【0010】
かかる構成によれば、バックピラーインナパネルおよびリアランプハウスアウタパネルの接合ラインにかかった荷重が、バックパネルを通じてリアフロアパネル、ひいては車体後部の骨格を担う構造部材であるリアサイドメンバに伝達される。これにより、コーナー部にかかった荷重を車体後部全体で受け止めることができるため、耐荷重性能をより高めることが可能となる。
【0011】
上記バックパネルのうち、バックピラーインナパネルとリアランプハウスアウタパネルとの溶接ラインの下端よりも車幅方向外側の領域には、車両後方に向かって突出する第1ビード形状が形成されていて、車幅方向において、第1ビード形状の車幅方向内側の縦縁の位置と、リアサイドメンバの車幅方向内側の端部の位置とが一致または近接しているとよい。
【0012】
上記のように第1ビード形状を設けることにより、バックパネルにおいてコーナー部近傍の剛性を高めることが可能となる。また第1ビード形状の車幅方向内側の縦縁の位置と、リアサイドメンバの車幅方向内側の端部の位置とが一致または近接していることにより、バックパネルにかかった荷重を第1ビード形状の内側からリアサイドメンバに伝達することができる。
【0013】
上記リアフロアパネルの後部には、車幅方向中央部が下方に窪んだハット形状が形成されているとよい。これにより、リアフロアパネルにおいてバックパネルの近傍の領域の剛性を高めることができる。したがって、リアフロアパネルが、バックパネルを通じて伝達される荷重をより好適に受け止めることができ、ねじり剛性の更なる向上が図られる。またリアフロアパネルをハット形状とすることで、そのハット形状の内部にスペアタイヤを収納することも可能となる。
【0014】
上記リアフロアパネルのハット形状は、車両中央部の底面部と、底面部の側縁から上方に延びる傾斜部と、傾斜部の上縁から車幅方向外側に延びるフランジ部とを含み、当該車体後部構造は、リアフロアパネルの下面において底面部と傾斜部との境目に接合されてトーイングフックを支持するトーイングフックブラケットを更に備え、バックパネルには、リアフロアパネルへ伸びるトーイングフックブラケットの接合箇所と車幅方向で重なる位置に、車両上下方向に延びる第2ビード形状が形成されているとよい。
【0015】
底面部と傾斜部の境目すなわち屈曲している領域は、リアフロアパネルにおいて強度が高い。この強度が高い領域に、車体の牽引に用いられるトーイングフックを支持するトーイングフックブラケットを設けることで、牽引時の荷重に対する強度を高めることが可能となる。またバックパネルにおいて、トーイングフックブラケットの接合箇所と車幅方向で重なる位置に第2ビード形状が形成されていることで、トーイングフックブラケットの接合箇所近傍のバックパネルの剛性の向上を図ることができる。
【0016】
上記第2ビード形状は、車両後方に向かって突出しているとよい。これにより、上述した第2ビード形状による効果を得ながらも、車室空間の体積を広げることが可能となる。
【0017】
上記バックパネルには、車幅方向中央部に車両後方に向かって突出する第3ビード形状が形成されているとよい。これにより、バックパネルの車幅方向中央部の領域の剛性を高めることができ、振動性能の更なる向上を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高いねじり剛性や振動性能を得ることが可能な車体後部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態にかかる車体後部構造の斜視図である。
【
図3】
図1の車体後部構造からバックピラーインナパネルを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図4】
図3の車体後部構造のバックパネルを透過させた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0021】
図1は、本実施形態にかかる車体後部構造100の斜視図であり、車体後部構造100を車室側から観察した状態を図示している。
図2は、
図1の断面図であり、
図2(a)は
図1のA−A断面図であり、
図2(b)は
図1のB−B断面図である。
図1に示すように、本実施形態にかかる車体後部構造100には、バックドア(不図示)を取り付けるためのバックドア用開口部(以下、開口部100aと称する)が設けられている。なお、本実施形態の車体後部構造100は左右対称な構造であるため、以下の説明では車両右側を例示して説明する。
【0022】
開口部100aの下方の車室内面はバックパネル110によって構成される。
図2(a)に示すように、バックパネル110は、開口部100aの下端から下方に延びる縦壁部112と、縦壁部112の上端から車両後方に延びる上面部114とを有する。本実施形態の特徴として、バックパネル110の縦壁部112は、下部は曲率が小さい曲面または平面であり、上方に向かうにしたがって曲率が大きくなることにより、上方に向かうにしたがって前方に緩やかに傾斜する曲面状となっている。
【0023】
本実施形態のように、バックパネル110が、上方に向かうにしたがって前方に緩やかに傾斜する曲面状である、換言すれば、バックパネル110において屈曲部が存在しないことにより、ねじり荷重の集中を防ぐことができる。したがって、ねじり荷重の集中に起因するバックパネル110の変形を抑制し、高いねじり剛性を得ることが可能となる。またバックパネル110が曲面状であることにより、バックパネル110にかかる振動や荷重を滑らかに伝達可能となるため、高い振動性能および耐荷重性能が得られる。
【0024】
図3は、
図1の車体後部構造100からバックピラーインナパネル120を取り外した状態を示す斜視図であり、
図4は、
図3の車体後部構造100のバックパネル110を透過させた状態を示す斜視図である。なお、
図3および
図4では、ともにリアフロアパネル140を透過させた状態を図示している。
図3および
図4に示すように、バックパネル110の車両後方側には、開口部100a(
図1参照)の下縁およびコーナー部の外側の面を構成するテールエンドメンバ130が配置されている。
【0025】
図2(a)に示すように、テールエンドメンバ130は、バックパネル110の上部において上面部114および縦壁部112に車両後方側から取り付けられ、バックパネル110と閉断面を形成する。これにより、開口部100aの下縁の剛性を高めることが可能となる。特に本実施形態では、バックパネル110が上方に向かうにしたがって前方に傾斜しているため、バックパネル110の上部に設けられた閉断面は、バックパネル110の下端よりも前方に位置することとなる。
【0026】
ここで、仮にバックパネル110が前方に傾斜していない、すなわちほぼ垂直に延びる形状であると、その上部に設けた閉断面は、バックパネル110の下端よりも後方に位置することとなり、閉断面に荷重がかかった際にそれが後方に向かって変形してしまうおそれがある。これに対し、本実施形態のようにバックパネル110の上部に設けられた閉断面がバックパネル110の下端よりも前方に位置することにより、バックパネル110の上部に荷重がかかった際の閉断面の後方への変形を抑制し、その荷重をバックパネル110の下方に好適に伝達し、ひいては荷重を分散することが可能となる。
【0027】
上述したように、開口部100aの下部のコーナー部の外側の面はテールエンドメンバ130によって構成される。一方、
図1に示すように、開口部100aの下部のコーナー部の内側の面は、バックパネル110の上面部の側方に接合されるバックピラーインナパネル120およびリアランプハウスアウタパネル150によって構成される。またバックパネル110の車両前側の面には、車両前後方向に延びて車体後部の底面を構成するリアフロアパネル140が接合されている。リアフロアパネル140の下面には、バックパネル110の車幅方向両端の下で車両前後方向に延びる構造部材であるリアサイドメンバ160が接合されている。
【0028】
図1および
図3からわかるように、バックピラーインナパネル120とリアランプハウスアウタパネル150は前後に配置され、上下方向に延びる溶接ライン170において互いに接合される。本実施形態では、この溶接ライン170の下端がリアサイドメンバ160の上方に位置するように設定している。これにより、開口部100aの下部のコーナー部を構成するバックピラーインナパネル120およびリアランプハウスアウタパネル150の溶接ライン170(接合部)にかかった荷重は、バックパネル110、リアフロアパネル140に順に伝達され、車体後部の骨格を担うリアサイドメンバ160によって受け止められる。したがって、開口部100aのコーナー部にかかった荷重を車体後部全体で受け止めることができ、高い耐荷重性能を得ることが可能となる。
【0029】
本実施形態では、バックパネル110において、上記の溶接ライン170の下端よりも車幅方向外側の領域に、車両後方に向かって突出する第1ビード形状116aを設けている。これにより、溶接ライン170の下端よりも車幅方向外側の面、すなわちコーナー部近傍のバックパネル110の剛性を高めることが可能となる。
【0030】
また本実施形態においては、第1ビード形状116aの車幅方向内側の縦縁の位置と、リアサイドメンバ160の車幅方向内側の端部の位置とを車幅方向で近接させている。これにより、バックパネル110にかかった荷重を第1ビード形状116aの内側からリアサイドメンバ160に好適に伝達することが可能となる。なお、本実施形態では、第1ビード形状116aの車幅方向内側の縦縁の位置と、リアサイドメンバ160の車幅方向内側の端部の位置とを車幅方向で近接させる構成を例示したが、これに限定するものではなく、それらの位置は一致していてもよい。
【0031】
上述したように、バックパネル110の車両前側の面には、車両前後方向に延びて車体後部の底面を構成するリアフロアパネル140が接合されている。本実施形態ではバックパネル110の下部がほぼ平面状であることにより、バックパネル110は、リアフロアパネル140に対してほぼ垂直に接合される。これにより、接合作業を容易に行うことができ、接合時の安定性を高めることが可能となる。
【0032】
また本実施形態では、リアフロアパネル140の車幅方向中央部の後部を下方に窪ませ、ハット形状としている(リアフロアパネル140の前部は不図示)。リアフロアパネル140のハット形状は、車両中央部の底面部142、底面部142の側縁から上方に延びる傾斜部144、および傾斜部144の上縁から車幅方向外側に延びるフランジ部146を含んで構成される。このようにリアフロアパネル140の後部をハット形状とすることで、ハット形状の内部にスペアタイヤ(不図示)を収納することができる。
【0033】
またリアフロアパネル140の後部をハット形状とすることにより、バックパネル110近傍におけるリアフロアパネル140の剛性の向上を図ることができる。したがって、バックパネル110を通じて伝達される荷重をリアフロアパネル140においてより好適に受け止めることができるため、ねじり剛性の更なる向上が図られる。
【0034】
更に本実施形態では、
図3に示すように、リアフロアパネル140の下面において、底面部142と傾斜部144との境目に、車体の牽引に用いられるトーイングフック192(
図4参照)を支持するトーイングフックブラケット190を接合している。リアフロアパネル140において、底面部142と傾斜部144の境目のように屈曲している領域は強度が高い。したがって、この強度が高い領域にトーイングフックブラケット190を設けることで、牽引時の荷重に対する強度を高めることができる。
【0035】
またバックパネル110において、リアフロアパネル140へ伸びるトーイングフックブラケット190の接合箇所と車幅方向で重なる位置には、車両上下方向に延びる第2ビード形状116bが形成される。この第2ビード形状116bにより、バックパネル110において、トーイングフックブラケット190の接合箇所と車幅方向で重なる位置近傍の剛性を高めることが可能となる。
【0036】
特に本実施形態では、第2ビード形状116bを、車両後方に向かって突出する形状としている。これにより、第2ビード形状116bによる剛性向上効果を得つつ、車室空間の体積を広げることが可能となる。なお、本実施形態では、第2ビード形状116bを車両後方に向かって突出させる構成としたが、これに限定するものではなく、車室空間の体積に余裕がある場合は、車両前方に向かって突出させる構成とすることも可能である。
【0037】
本実施形態では更に、バックパネル110の車幅方向中央部に、車両後方に向かって突出する第3ビード形状116cを形成している。これにより、バックパネル110において車幅方向中央部の領域の剛性が高まるため、振動性能の更なる向上を図ることが可能となる。また上述したように第1ビード形状116a、第2ビード形状116bおよび第3ビード形状116cによってバックパネル110の剛性を高められることで、バックパネル110の板厚を低減することができる。したがって、コストの削減および車体の軽量化に寄与することが可能となる。
【0038】
上記説明したように、本実施形態にかかる車体後部構造100によれば、側面視において、バックパネル110が、上方に向かうにしたがって前方に緩やかに傾斜する曲面状であることにより、ねじり荷重の集中による変形を防ぎ、高いねじり剛性を得ることができる。またバックパネル110にかかった振動や荷重が滑らかに伝達されるため、高い振動性能および耐荷重性能が得られる。更に、バックパネル110の上部においてテールエンドメンバ130との閉断面が形成されることにより、開口部100aの下縁の剛性を好適に確保することが可能となる。
【0039】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、車両後部のバックドア用開口部の車室内面を構成するバックパネルを備える車体後部構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
100…車体後部構造、100a…開口部、110…バックパネル、112…縦壁部、114…上面部、116a…第1ビード形状、116b…第2ビード形状、116c…第3ビード形状、120…バックピラーインナパネル、130…テールエンドメンバ、140…リアフロアパネル、142…底面部、144…傾斜部、146…フランジ部、150…リアランプハウスアウタパネル、160…リアサイドメンバ、170…溶接ライン、190…トーイングフックブラケット、192…トーイングフック