特許第6028686号(P6028686)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6028686内燃機関用点火コイルのイグナイタ接合構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028686
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】内燃機関用点火コイルのイグナイタ接合構造
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/12 20060101AFI20161107BHJP
   F02P 15/00 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   H01F38/12 L
   H01F38/12 F
   F02P15/00 303Z
   F02P15/00 303H
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-144902(P2013-144902)
(22)【出願日】2013年7月10日
(65)【公開番号】特開2015-18921(P2015-18921A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2015年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川井 一秀
【審査官】 久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−124057(JP,A)
【文献】 特開2008−59898(JP,A)
【文献】 特開2000−3821(JP,A)
【文献】 特開2003−332153(JP,A)
【文献】 特開平11−50938(JP,A)
【文献】 特開平11−221678(JP,A)
【文献】 特公昭49−36862(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/00−5/06、17/00−19/08
H01F 27/28−27/29、30/00−38/12
H01F 38/16、38/42、41/10
F02P 1/00−3/12、7/00−17/12
B23K 11/00−13/08
H01R 3/00−4/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関用点火コイル(6)において、スイッチング素子(211)を内包するイグナイタ(2)から引き出された複数のイグナイタ端子(3)と、複数の接続端子(5)とを、上記複数のイグナイタ端子(3)が並ぶ方向(A)に対する直交方向(B)において接合する構造において、
上記複数のイグナイタ端子(3)は、板形状の導体層(301)の両表面(34)にめっき層(302)が形成された板金(30)から切り抜かれ、該切り抜かれた部位に生ずる破断面(303)が、上記直交方向(B)に位置するよう向きを変えられて変形されており、
上記各イグナイタ端子(3)は、上記破断面(303)によって上記各接続端子(5)に接合されていることを特徴とする内燃機関用点火コイル(6)のイグナイタ接合構造(1)。
【請求項2】
上記各イグナイタ端子(3)は、上記板金(30)から切り抜かれた後に捻られており、上記破断面(303)によって形成された側面(33)が、上記直交方向(B)に位置して、上記各接続端子(5)と接合されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火コイル(6)のイグナイタ接合構造(1)。
【請求項3】
上記複数のイグナイタ端子(3)は、上記側面(33)同士の間の幅が、上記めっき層(302)を有する表面(34)同士の間の厚みよりも大きくなっており、かつ、上記複数のイグナイタ端子(3)の少なくともいずれかは、先端側部分(32)が上記厚みの方向に折り曲げられて、該先端側部分(32)同士の間の間隔(S2)が基端側部分(31)同士の間の間隔(S1)よりも広くなっていることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関用点火コイル(6)のイグナイタ接合構造(1)。
【請求項4】
上記複数のイグナイタ端子(3)は、上記板金(30)から切り抜かれた後に折り曲げられており、上記破断面(303)によって形成された先端面(35)が、上記直交方向(B)に位置して、上記各接続端子(5)と接合されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火コイル(6)のイグナイタ接合構造(1)。
【請求項5】
上記複数のイグナイタ端子(3)の少なくともいずれかは、上記板金(30)から切り抜かれた後に、先端側部分(32)が上記直交方向(B)に折り曲げられており、かつ、上記複数のイグナイタ端子(3)は、隣り合う該イグナイタ端子(3)同士が、上記直交方向(B)に互いに位置ずれして、上記各接続端子(5)と接合されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火コイル(6)のイグナイタ接合構造(1)。
【請求項6】
上記複数の接続端子(5)は、上記点火コイル(6)を外部と接続するためのコネクタ部(4)に設けられた複数のコネクタ端子(5)を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関用点火コイル(6)のイグナイタ接合構造(1)。
【請求項7】
上記複数の接続端子(5)は、上記点火コイル(6)における一次コイル(61)の端部における接続端子(611)と、二次コイル(62)の低圧側端部における接続端子との少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の内燃機関用点火コイル(6)のイグナイタ接合構造(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用点火コイルにおいてイグナイタの端子を接合する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関に用いられる点火コイルにおいては、イグナイタが用いられており、イグナイタには、一次コイルに通電する電流を遮断して、二次コイルに誘導起電力を発生させるためのスイッチング素子が内包されている。イグナイタにおいては、スイッチング素子等から複数のイグナイタ端子が引き出されており、複数のイグナイタ端子は、点火コイルを外部に接続するためのコネクタ部に設けられた複数のコネクタ端子と、抵抗溶接、はんだ付け等を行って接合されている。
例えば、特許文献1の点火コイルにおいては、コネクタ部にインサート成形された導体ピン(コネクタ端子)と、イグナイタから引き出された導体ピン(イグナイタ端子)とが、抵抗溶接、はんだ付け等を行って接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5012753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コネクタ端子及びイグナイタ端子は、導体層が銅材料等によって構成されている。そして、導体層の酸化防止を図るために、種々のめっき層が導体層の表面に形成されている。
これらの端子間の接合には、はんだ付けや抵抗溶接が用いられている。抵抗溶接は、はんだ付けよりも接合周囲への熱影響が少なく、小型化、生産性に優れることより、多用されるようになった。はんだ付けの場合には、端子の導体層を溶かすことなく接合ができるため、生産性が悪化することはなかった。一方、抵抗溶接の場合には、めっき層と導体層の融点の違いが、生産性に影響することが多くなった。
【0005】
例えば、端子の導体層が銅(融点:1084.5℃)からなり、めっき層が電気ニッケルめっき(融点:1450℃)からなる場合のように、導体層よりもめっき層の融点が高い場合には、安定した抵抗溶接が困難になる。そのため、コネクタ端子とイグナイタ端子とを抵抗溶接によって接合する場合には、素地としての導体層を露出させるために、接合部分のめっき層を除去しなければならず、めっき層を除去するための設備が必要になる。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、めっき層を除去する加工を省略して、イグナイタ端子とコネクタ端子とを安定して接合することができる内燃機関用点火コイルのイグナイタ接合構造を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、内燃機関用点火コイルにおいて、スイッチング素子を内包するイグナイタから引き出された複数のイグナイタ端子と、外部と接続するためのコネクタ部に設けられた複数のコネクタ端子とを、上記複数のイグナイタ端子が並ぶ方向に対する直交方向において接合する構造において、
上記複数のイグナイタ端子は、板形状の導体層の両表面にめっき層が形成された板金から切り抜かれ、該切り抜かれた部位に生ずる破断面が、上記直交方向に位置するよう向きを変えられて変形されており、
上記各イグナイタ端子は、上記破断面によって上記各コネクタ端子に接合されていることを特徴とする内燃機関用点火コイルのイグナイタ接合構造にある。
【発明の効果】
【0008】
上記内燃機関用点火コイルのイグナイタ接合構造においては、表裏両面にめっき層を有する板金からイグナイタ端子を打ち抜く際に形成される破断面を利用して、複数のイグナイタ端子と複数のコネクタ端子とを接合している。
板金から複数のイグナイタ端子を切り抜いたときには、各イグナイタ端子における破断面は、複数のイグナイタ端子が並ぶ方向に位置する側面に形成される。そして、この各イグナイタ端子を向きを変えるよう変形させて、その破断面を、各コネクタ端子との接合を行う方向である、複数のイグナイタ端子が並ぶ方向に対する直交方向に位置させる。こうして、各イグナイタ端子の側面における破断面と各コネクタ端子とを対向させることができる。そして、この対向部分に抵抗溶接等を行って、各イグナイタ端子と各コネクタ端子とを接合する。この接合を行う際には、破断面には導体層が露出していることより、めっき層を除去する加工を行う必要がない。
【0009】
それ故、上記内燃機関用点火コイルのイグナイタ接合構造によれば、めっき層を除去する加工を省略して、イグナイタ端子とコネクタ端子とを安定して接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1にかかる、イグナイタ接合構造を示す斜視図。
図2】実施例1にかかる、イグナイタ接合構造を有する点火コイルを示す断面図。
図3】実施例1にかかる、イグナイタ端子を形成するための板金を示す斜視図。
図4】実施例1にかかる、板金から打ち抜かれた複数のイグナイタ端子を示す斜視図。
図5】実施例1にかかる、90°捻られて成形された複数のイグナイタ端子を示す斜視図。
図6】実施例1にかかる、イグナイタ接合構造を示す断面図。
図7】実施例1にかかる、他のイグナイタ接合構造を示す斜視図。
図8】実施例2にかかる、イグナイタ接合構造を示す斜視図。
図9】実施例2にかかる、他のイグナイタ接合構造を示す斜視図。
図10】実施例2にかかる、他のイグナイタ接合構造を示す斜視図。
図11】従来例にかかる、イグナイタ接合構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述した内燃機関用点火コイルのイグナイタ接合構造における好ましい実施の形態につき説明する。
上記内燃機関用点火コイルのイグナイタ接合構造において、上記破断面は、切断、打抜等によって形成される面であり、せん断面又は切断面ということもできる。
また、上記各イグナイタ端子は、上記板金から切り抜かれた後に捻られており、上記破断面によって形成された側面が、上記直交方向に位置して、上記各コネクタ端子と接合されていてもよい。
この場合には、複数のイグナイタ端子の成形が容易であり、各イグナイタ端子の破断面が各コネクタ端子と対向する状態を容易に形成することができる。
【0012】
また、上記複数のイグナイタ端子は、上記側面同士の間の幅が、上記めっき層を有する表面同士の間の厚みよりも大きくなっており、かつ、上記複数のイグナイタ端子の少なくともいずれかは、先端側部分が上記厚みの方向に折り曲げられて、該先端側部分同士の間の間隔が基端側部分同士の間の間隔よりも広くなっていてもよい。
この場合には、各イグナイタ端子を厚みの方向に折り曲げることにより、この折り曲げに要する動力を低減することができる。また、各イグナイタ端子の先端側部分同士の間に形成する作業用スペースを大きくすることができる。
【実施例】
【0013】
以下に、内燃機関用点火コイル(以下、単に点火コイルという。)のイグナイタ接合構造にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
(実施例1)
本例のイグナイタ接合構造1は、図1図2に示すごとく、点火コイル6において、スイッチング素子211を内包するイグナイタ2から引き出された複数のイグナイタ端子3と、点火コイル1を外部と接続するためのコネクタ部4に設けられた複数のコネクタ端子5(接続端子5)とを、複数のイグナイタ端子3の並び方向Aに対する直交方向Bにおいて接合するものである。
複数のイグナイタ端子3は、図3図5に示すごとく、板形状の導体層301と導体層301の両表面34に設けられためっき層302とを有する板金30から切り抜かれ、この切り抜かれた部位に生ずる破断面303が、並び方向Aに位置する状態から、直交方向Bに位置するよう90°向きを変えられて変形されている。複数のイグナイタ端子3は、図1に示すごとく、破断面303を介して複数のコネクタ端子5に接合されている。図1においては、破断面303をハッチングによって示す。
【0014】
以下に、本例の点火コイル6のイグナイタ接合構造1につき、図1図6を参照して詳説する。
図2に示すごとく、点火コイル6は、樹脂製のケース60内に、一次電圧を印加する一次コイル61と、誘導起電力を発生させる二次コイル62とを配置して構成されている。一次コイル61及び二次コイル62に対する内周側には、磁性体からなる中心コア63が配置されており、一次コイル61及び二次コイル62に対する外周側には、磁性体からなる外周コア64が配置されている。
一次コイル61は、イグナイタ2のスイッチング素子211によって一次電圧を印加するコイルであり、中心コア63の外周に巻回されている。二次コイル62は、一次コイル61への一次電圧の印加を遮断したときに誘導起電力を発生させるコイルであり、樹脂製の2次ボビン621に巻回されている。一次コイル61と二次コイル62とは、同軸状に内外周に重ねて配置されている。また、ケース60内の隙間は、絶縁性を有する熱硬化性樹脂65によって埋められている。
【0015】
コネクタ部4は、樹脂製のコネクタケース41内に、導電性を有するコネクタ端子5を配置して形成されている。コネクタケース41は、外周コア64、又は中心コア63を保持するホルダ631に対して設けられている。一次コイル61、二次コイル62、中心コア63及び外周コア64は、ケース60における奥側に配置されており、コネクタ部4及びイグナイタ2は、ケース60における開口側に配置されている。
イグナイタ端子3及びコネクタ端子5には、一次コイル61への通電が行われる端子、電源と接続される端子、グラウンドと接続される端子、信号線が接続される端子等がある。図1図3に示すごとく、複数のイグナイタ端子3は、イグナイタ2における並び方向A(一方向)に整列して配置されている。複数のイグナイタ端子3は、1枚の板金30からプレス加工によって打ち抜かれて形成されている。なお、複数のイグナイタ端子3は、種々の刃物によって1枚の板金30から切断されて形成されていてもよい。
また、イグナイタ端子3の導体層301は、銅材料からなり、めっき層302は、電気Niめっき材料からなる。
【0016】
図2に示すごとく、イグナイタ2は、スイッチング素子211をモールド樹脂内に内包する板形状のイグナイタ本体部21を有しており、各イグナイタ端子3は、イグナイタ本体部21から引き出されている。
図1図3に示すごとく、複数のイグナイタ端子3を形成する1枚の板金30の厚み方向Tは、イグナイタ2の板厚方向tと一致している。コネクタ部4における複数のコネクタ端子5は、イグナイタ2の板厚方向tから複数のイグナイタ端子3に対向して配置される。
【0017】
各イグナイタ端子3は、1枚の板金30から打ち抜かれるときに、長方形の断面を有する棒形状に形成される。このとき、打抜き加工を行う打抜刃が通過する位置に破断面303が形成される。各イグナイタ端子3における破断面303は、複数のイグナイタ端子3の並び方向Aに位置する一対の側面33と、イグナイタ本体部21から最も離れた先端面35とに形成される。なお、先端面35は、打抜刃等によって形成された破断面303ではなく、めっき層302が予め設けられていない端面、あるいはめっき層302が形成されたままの端面とすることもできる。
【0018】
図1に示すごとく、複数のイグナイタ端子3は、板金30から打ち抜かれた後に、90°捻られて破断面303によって形成された側面33が、並び方向Aに対する直交方向Bに位置している。各イグナイタ端子3は、イグナイタ本体部21の外部において、各イグナイタ端子3が延びる方向の途中の位置において90°捻られている。複数のイグナイタ端子3は、イグナイタ本体部21にできるだけ近い位置において90°捻られている。そして、各イグナイタ端子3において捻られていない部分である基端側部分31の一対の側面33は、並び方向Aに位置しており、各イグナイタ端子3において捻られた部分である先端側部分32の一対の側面33は、並び方向Aに対する直交方向Bに位置している。
【0019】
各コネクタ端子5は、各イグナイタ端子3と対向する部分に、抵抗溶接を行う際の電気抵抗の集中箇所となるプロジェクション形状(凸形状)51を有している。各コネクタ端子5は、コネクタ部4の内部において、コネクタ部4の挿入方向に平行に形成されており、コネクタ部4の外部において、90°折り曲げられて形成されている。プロジェクション形状51は、各コネクタ端子5の一部を変形させて形成されている。また、各コネクタ端子5のプロジェクション形状51は、各イグナイタ端子3における先端側部分32の側面33を形成する破断面303に対面される。
【0020】
図11には、従来のイグナイタ接合構造9を断面によって示す。同図に示すごとく、従来のイグナイタ接合構造9においては、各イグナイタ端子93が捻られておらず、各コネクタ端子95の幅方向W’と各イグナイタ端子93の幅方向Wとが一致している。この場合には、各コネクタ端子95と各イグナイタ端子93との間に、幅方向W’における中心位置のずれが生じると、コネクタ端子95に対して、このコネクタ端子95と対向するイグナイタ端子93に隣接するイグナイタ端子93が接近することになる。同図において、コネクタ端子95と隣接するイグナイタ端子93との絶縁距離を符号X’によって示す。
そのため、幅方向W’における中心位置のずれが生じたときには、絶縁距離X’が小さくなるため、イグナイタとコネクタ部との組付精度を厳しくする必要がある。
【0021】
図6には、本例のイグナイタ接合構造1を断面によって示す。同図に示すごとく、各イグナイタ端子3は、破断面303によって形成される一対の側面33同士の間の幅が、めっき層302を有する一対の表面34同士の間の厚みよりも大きくなっている。各イグナイタ端子3においては、破断面303によって形成される一対の側面33間の方向を幅方向Wといい、めっき層302を有する一対の表面34間の方向を厚み方向Tという。
また、各コネクタ端子5は、長方形の断面を有する棒形状に形成されている。各コネクタ端子5については、各コネクタ端子5同士が並ぶ方向を幅方向W’といい、この幅方向W’に直交する方向を厚み方向T’という。各コネクタ端子5は、長方形の長辺部によって幅方向W’が形成され、長方形の短辺部によって厚み方向T’が形成される。
【0022】
同図に示すごとく、本例のイグナイタ接合構造1においては、各コネクタ端子5と各イグナイタ端子3とが対向する位置の断面においては、各イグナイタ端子3が90°捻られていることにより、各コネクタ端子5の幅方向W’と各イグナイタ端子3の幅方向Wとが90°異なった状態になっている。そして、各イグナイタ端子3は、各コネクタ端子5に対して直角になる状態で接触している。
本例においては、各イグナイタ端子3の並び方向Aにおいて、各コネクタ端子5と各イグナイタ端子3との間に、幅方向W’における中心位置のずれが生じたときでも、各コネクタ端子5に対して各イグナイタ端子3を安定して対向させることができる。そして、コネクタ端子5に対して、このコネクタ端子5と対向するイグナイタ端子3に隣接するイグナイタ端子3が接近しにくくすることができる。同図において、コネクタ端子5と隣接するイグナイタ端子3との絶縁距離を符号Xによって示す。
そのため、中心位置のずれが生じたときでも、絶縁距離Xを適切に確保することができ、イグナイタ2とコネクタ部4との組付精度を緩和することができる。
【0023】
本例のイグナイタ接合構造1においては、表裏両面にめっき層302を有する板金30からイグナイタ端子3を打ち抜く際に形成される破断面303を利用して、複数のイグナイタ端子3と複数のコネクタ端子5とを接合している。
図3図4に示すごとく、両表面34にめっき層302を有する板金30から複数のイグナイタ端子3を打ち抜いたときには、各イグナイタ端子3における破断面303は、複数のイグナイタ端子3が並ぶ方向(並び方向A)に位置する一対の側面33に形成される。そして、図5に示すごとく、この各イグナイタ端子3の先端側部分32を90°捻るように成形して、一対の側面33における破断面303を、各コネクタ端子5との接合を行う方向である、並び方向Aに対する直交方向Bに位置させる。こうして、図1に示すごとく、各イグナイタ端子3の側面33における破断面303と各コネクタ端子5とを対向させる。そして、この対向部分に抵抗溶接等を行って、各イグナイタ端子3と各コネクタ端子5とを接合することができる。これにより、この接合を行う際には、破断面303には導体層301が露出していることより、めっき層302を除去する加工を行う必要がない。
【0024】
また、イグナイタ端子3の先端側部分32が90°捻られていることにより、この先端側部分32同士の間隔を広くすることができる。これにより、ケース60内に熱硬化性樹脂65を充填する際に、この充填率を高めることができる。そのため、熱硬化性樹脂65中におけるボイドの発生を防止し、イグナイタ端子3間の絶縁耐力の低下を防止することができる。
【0025】
それ故、本例の内燃機関用点火コイル6のイグナイタ接合構造1によれば、めっき層302を除去する加工を省略して、イグナイタ端子3とコネクタ端子5とを安定して接合することができる。
【0026】
また、接続端子は、コネクタ端子5とする以外にも、点火コイル6における一次コイル61の端部における接続端子、二次コイル62の低圧側端部における接続端子、あるいはイグナイタに内蔵された図示しない信号制御回路の接続端子の少なくともいずれかとすることができる。例えば、図7に示すごとく、いずれかのイグナイタ端子3の、直交方向Bの一方側に位置する側面33Aを形成する破断面303を、コネクタ端子5と抵抗溶接等によって接合し、他のいずれかのイグナイタ端子3の、直交方向Bの他方側に位置する側面33Bを形成する破断面303を、一次コイル61の端部における接続端子611と抵抗溶接等によって接合することができる。
【0027】
(実施例2)
本例は、複数のイグナイタ端子3の形状が上記実施例1とは異なる例を示す。
図8に示すごとく、上記実施例1に示した各イグナイタ端子3の少なくともいずれかは、先端側部分32を厚み方向(めっき層302を有する一対の表面34間の方向)に折り曲げて、先端側部分32同士の間の間隔S2を基端側部分31同士の間の間隔S1よりも広くすることができる。本例においては、並び方向Aの中央側に位置するイグナイタ端子3Aの先端側部分32は折り曲げず、並び方向Aの外側に位置するイグナイタ端子3Bの先端側部分32を外側に折り曲げている。また、並び方向Aの外側に位置するイグナイタ端子3Bの先端側部分32は、外側に折り曲げられた部分から、さらに内側に折り曲げられて、中央側に位置するイグナイタ端子3Aの先端側部分32と平行になっている。なお、以下の図8図10においては、破断面303をハッチングによって示す。
【0028】
この場合、各イグナイタ端子3が基端側部分31において90°捻られていることにより、先端側部分32は、厚み方向に折り曲げることにより、容易に並び方向Aに折り曲げることができる。そのため、先端側部分32の折り曲げ成形が容易である。また、互いに隣接するイグナイタ端子3同士の間隔、及び互いに隣接するコネクタ端子5同士の間隔を大きくすることができる。これにより、各イグナイタ端子3と各コネクタ端子5との間に抵抗溶接を行う際に、抵抗溶接を行う電極の配置スペースを広くすることができ、抵抗溶接の作業性を向上させることができる。
【0029】
また、図9に示すごとく、複数のイグナイタ端子3は、板金30から打ち抜かれた後に、各先端側部分32が90°折り曲げられており、破断面303によって形成された先端面35が、直交方向Bに位置して、各コネクタ端子5と接合されていてもよい。
各イグナイタ端子3は、イグナイタ本体部21から引き出された後、厚み方向(めっき層302を有する一対の表面34間の方向)に対して折り曲げられている。各イグナイタ端子3の先端側部分32は、厚み方向の一方側に90°折り曲げられた後、厚み方向の他方側に180°折り返して形成されている。そして、各イグナイタ端子3は、基端側部分31に対して先端側部分32が90°折れ曲がっており、先端側部分32の先端面35が各コネクタ端子5と対向している。
この場合、各イグナイタ端子3を容易に変形させることができ、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0030】
また、図10に示すごとく、複数のイグナイタ端子3は、板金30から打ち抜かれた後に、各先端側部分32が直交方向Bに折り曲げられており、隣り合うイグナイタ端子3同士が、直交方向Bに互いに位置ずれして、各コネクタ端子5と接合されていてもよい。この場合、各イグナイタ端子3の先端側部分32を、隣接する各先端側部分32の直交方向Bにおける位置が互いに異なるとともに、各先端側部分32が互いに平行になるように折り曲げる。そして、各イグナイタ端子3の先端側部分32の直交方向Bにおける位置が異なっていることにより、各イグナイタ端子3の先端側部分32における一対の側面33に、各コネクタ端子5を接合するためのスペースを形成することができる。このスペースは、各イグナイタ端子3の先端側部分32における一対の側面33の両側に、抵抗溶接を行うための電極を配置できるように形成する。なお、複数のイグナイタ端子3のうちのいずれかの先端側部分32は、折り曲げないこともできる。
この場合にも、各イグナイタ端子3を容易に変形させることができ、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
なお、本例において、特に明示のない構成及び図中の符号については、上記実施例1と同様である。
【0031】
また、実施例1,2においては、イグナイタ端子3の捻り角度又は折り曲げ角度は90°として説明した。このイグナイタ端子3の捻り角度又は折り曲げ角度は、これ以外にも、イグナイタ端子3の破断面303とコネクタ端子5の溶接面とが平行となる状態が形成されれば、種々の角度とすることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 イグナイタ接合構造
2 イグナイタ
3 イグナイタ端子
30 板金
301 導体層
302 めっき層
303 破断面
34 表面
5 接続端子(コネクタ端子)
6 点火コイル
A 並び方向
B 直交方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11