(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028691
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】塊状物排出装置
(51)【国際特許分類】
B65G 65/40 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
B65G65/40 Z
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-163714(P2013-163714)
(22)【出願日】2013年8月7日
(65)【公開番号】特開2015-30619(P2015-30619A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2015年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126701
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】萩原 一真
(72)【発明者】
【氏名】紫垣 伸行
(72)【発明者】
【氏名】萩尾 勇樹
【審査官】
八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−052097(JP,A)
【文献】
実開昭56−024695(JP,U)
【文献】
特開2008−254894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 65/30−65/48
B65D 88/00−90/66
G01G 13/00−13/34
B65G 11/00;11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塊状物処理装置から塊状物を排出するために用いられる塊状物排出装置であって、塊状物を一時的に収納する一時収納室と、前進してその先端部が前記一時収納室の側壁に密着することで前記一時収納室内を上部一時収納室と下部一時収納室に2分割するスライドゲートと、前記下部一時収納室内の塊状物を外部に排出するための排出扉とを備えているとともに、前記スライドゲートの先端部が前記一時収納室の側壁に密着する位置の上方に、前記スライドゲートの先端部を覆う傘部材が設置されていて、前記傘部材は前記側壁から斜め下方に直線的に延びる傾斜面を有し、前記傘部材の傾斜面の水平方向の長さLは塊状物の平均等価粒径Dに対して(1)式の範囲であり、前記傘部材の傾斜面の水平方向に対する傾斜角θは(2)式の範囲であり、前記スライドゲートの先端が側壁に接触する位置と前記傘部材の下端との距離Sは塊状物の平均等価粒径Dに対して(3)式の範囲であることを特徴とする塊状物排出装置。
3D≦L≦5D ・・・(1)
30°≦θ≦45° ・・・(2)
D≦S≦2D ・・・(3)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉性が要求される塊状物処理装置(例えば、高熱の塊状物から熱回収を行う塊状物熱回収装置や乾留炉)に取り付けられて、塊状物処理装置から塊状物を排出するために用いられる塊状物排出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、高熱の塊状物から熱回収を行う塊状物熱回収装置や乾留炉では、作動気体(熱回収用気体媒体)や発生ガスの漏洩あるいは外気の侵入を防止するために、密閉性が要求される。
【0003】
従来、このような密閉性が要求される塊状物処理装置に取り付けられて、塊状物処理装置から塊状物を排出するために用いられる塊状物排出装置としては、以下のようなものが知られている。
【0004】
例えば、2段になった開閉扉や弁等を交互に開閉することやこれらの開閉扉・弁等の間に窒素等のシールガスを流すことで、シール性(密閉性)を保持しながら、塊状物を排出する機構が知られている(例えば、特許文献1)。
【0005】
その一例として、
図4〜
図6に、1段目の開閉扉がスライドゲートで、2段目の開閉扉が回転扉になった塊状物排出装置を示す。
図4は縦断面図、
図5は
図4のA−A矢視図である。また、
図6は動作手順を示している。
【0006】
図4、
図5に示すように、この塊状物排出装置9は、密閉性が要求される塊状物処理装置(例えば、高熱の塊状物から熱回収を行う塊状物熱回収)30の下部に取り付けられており、側壁12、13、14、15と傾斜した底板16とで形成されて、塊状物を一時的に収納する一時収納室11と、斜め上方向に前進してその先端部が側壁12に密着することで一時収納室11内を上部一時収納室11aと下部一時収納室11bに2分割するスライドゲート17と、下部一時収納室11b内の塊状物を外部に排出するための排出扉(回転扉)18を備えている。
【0007】
なお、底板16の傾斜角αは40°以上、スライドゲート17の傾斜角βは45°程度である。
【0008】
そして、この塊状物排出装置9は
図6(a)〜(d)に示すように動作する。
【0009】
(P1)
図6(a)に示すように、スライドゲート17を斜め上方向に前進させて(スライドゲート17を閉止して)、スライドゲート17の先端部を側壁12に密着させることによって、一時収納室11を上部一時収納室11aと下部一時収納室11bに2分割するとともに、排出扉18を閉止する。そして、この状態で、塊状物処理装置30から処理後の塊状物1を上部一時収納室11aに受け入れて収納する。
【0010】
(P2)次に、
図6(b)に示すように、スライドゲート17を斜め下方向に後退させて(スライドゲート17を開放して)、上部一時収納室11aの塊状物1の一部を下部一時収納室11bに流入させて(切り出して)、下部一時収納室11bに収納する。
【0011】
(P3)次に、
図6(c)に示すように、スライドゲート17を斜め上方向に前進させて(スライドゲート17を閉止して)、スライドゲート17の先端部を側壁12に密着させることによって、上部一時収納室11aから下部一時収納室11bへの塊状物1の流入を遮断する。
【0012】
(P4)次に、
図6(d)に示すように、排出扉18を開放して、下部一時収納室11b内の塊状物1を外部に排出する。そして、下部一時収納室11bからの塊状物1の排出が終了したら、排出扉18を閉止して、
図6(a)の状態に戻り、
図6(a)〜(d)を繰り返す。
【0013】
このようにして、この塊状物排出装置9は、密閉性が要求される塊状物処理装置30から処理後の塊状物1をシール性(密閉性)を保持しながら排出することができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2011−052097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記の
図4〜
図6に示した塊状物排出装置9は、以下のような問題ある。すなわち、上記(P3)において、スライドゲート17を斜め上方向に前進させて、スライドゲート17を閉止しようとした際に、
図7(a)に示すように、スライドゲート17の先端部と側壁12との間に塊状物1aが噛み込み、スライドゲート17が側壁12に密着せずに、完全には閉止されない状態となることがある。そのような状態になると、上記(P4)において、排出扉18を開放した際に、
図7(b)に示すように、塊状物1aの噛み込みによって生じた隙間19によってシール性(密閉性)が低下し、その隙間19から塊状物処理装置30の作動気体や発生ガスが外部に流れ出したり、逆に、外気が流れ込んだりして、塊状物排出装置としての役割を充分に果たせなくなる。
【0016】
この問題は、特に、塊状物1が球体ではなく多面体である場合などのように、塊状物1の流動性が低く、集積した塊状物1の中をスライドゲート17を前進させた際に、スライドゲート17の先端部から塊状物1が適切に移動・排除され難い場合に生じやすい。
【0017】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、密閉性が要求される塊状物処理装置に取り付けられて、塊状物処理装置から塊状物を排出するために用いられる塊状物排出装置として、塊状物の流動性が低い場合であっても、シール性(密閉性)を保持しながら塊状物を適切に排出することができる塊状物排出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0019】
[1]塊状物処理装置から塊状物を排出するために用いられる塊状物排出装置であって、塊状物を一時的に収納する一時収納室と、前進してその先端部が前記一時収納室の側壁に密着することで前記一時収納室内を上部一時収納室と下部一時収納室に2分割するスライドゲートと、前記下部一時収納室内の塊状物を外部に排出するための排出扉とを備えているとともに、前記スライドゲートの先端部が前記一時収納室の側壁に密着する位置の上方に、前記スライドゲートの先端部を覆う傘部材が設置されていることを特徴とする塊状物排出装置。
【0020】
[2]前記一時収納室の側壁に接触した際の前記スライドゲートの先端と、前記傘部材の下端との距離は、前記塊状物の平均等価粒径以上であることを特徴とする前記[1]に記載の塊状物排出装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明においては、密閉性が要求される塊状物処理装置に取り付けられて、塊状物処理装置から塊状物を排出するために用いられる塊状物排出装置として、塊状物の流動性が低い場合であっても、シール性(密閉性)を保持しながら塊状物を適切に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図3】本発明の一実施形態における動作手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態における塊状物排出装置10の縦断面図、
図2は
図1のA−A矢視図である。また、
図3はこの塊状物排出装置10の動作手順を示している。
【0025】
図1、
図2に示すように、この実施形態における塊状物排出装置10において、基本的な構成は、前述の従来の塊状物排出装置9と同様であり、1段目の開閉扉がスライドゲートで、2段目の開閉扉が回転扉になった塊状物排出装置である。
【0026】
すなわち、この塊状物排出装置10は、密閉性が要求される塊状物処理装置(例えば、高熱の塊状物から熱回収を行う塊状物熱回収)30の下部に取り付けられており、側壁12、13、14、15と傾斜した底板16とで形成されて塊状物1を一時的に収納する一時収納室11と、斜め上方向に前進してその先端部が側壁12に密着することで一時収納室11内を上部一時収納室11aと下部一時収納室11bに2分割するスライドゲート17と、下部一時収納室11b内の塊状物1を外部に排出するための排出扉(回転扉)18を備えている。
【0027】
なお、底板16の傾斜角αは塊状物1の排出を良好とするため40°以上である。また、スライドゲート17の厚みtは20mm程度で、スライドゲート17の傾斜角βは45°程度である。スライドゲート17は、塊状物1の充填層内を突き進むので、強度的にこの程度の厚みが必要であり、そのため先端を尖っている形状とし、また線接触ではなく先端部としての面による密着でシール性を確保するほうが好ましいからである。すなわち、限定される訳ではないが、スライドゲート17は、縦断面で見ると、先端部を形成する1つの辺(線)が側壁12に平行であり、その線の上端が先端ということになる。
【0028】
そして、ここでは、塊状物が多面体(例えば、50mm×50mm×10mmの6面体、または/および、その程度の大きさの7〜10面体)のように、流動性の低い形状である場合を想定している。
【0029】
その上で、この実施形態における塊状物排出装置10では、スライドゲート17の先端が側壁12に接触する位置P点の上方に、スライドゲート17の先端部を覆う傘部材21が設置されている。
【0030】
これによって、傘部材21の下方、すなわち、スライドゲート17の先端が側壁12に接触する位置Pの周辺に、塊状物の存在が希薄な空間が確保されるため、スライドゲート17の先端部と側壁12との間に塊状物が噛み込むことが防止される。
【0031】
なお、傘部材21の長さLは、塊状物の平均等価粒径Dに対して、以下の範囲であることが好ましい。
【0033】
これは、傘部材21の長さLが短過ぎると、塊状物の存在が希薄な空間を確保する効果が小さくなるからであり、傘部材21の長さLが長過ぎると、塊状物の流動を妨げるからである。
【0034】
また、傘部材21の傾斜角θは、以下の範囲であることが好ましい。
【0036】
これは、傘部材21の傾斜角θが小さ過ぎると、傘部材21の上に塊状物が堆積しやすくなるからであり、逆に、傘部材21の傾斜角θが大き過ぎると、塊状物の存在が希薄な空間を確保する効果が小さくなるからである。
【0037】
そして、スライドゲート17の先端が側壁12に接触する位置P点と、傘部材21の下端Q点との距離Sは、塊状物の平均等価粒径Dに対して、以下の範囲であることが好ましい。
【0039】
これは、距離Sを塊状物1の平均等価粒径D以上とすることによって、スライドゲート17が前進する際に、スライドゲート17の先端部で押された塊状物1が逃げやすくなり、塊状物がP点近傍に取り残されることを防げるからである。ただし、距離Sが大き過ぎると、傘部材21の影響範囲からP点近傍が外れる可能性がでてくるので、距離Sは2D以下とするのが好ましい。
【0040】
なお、上記の平均等価粒径Dは、塊状物を同じ体積の球体とした時の球体の直径を等価粒径とし、その等価粒径の平均値を平均等価粒径Dとしたものである。
【0041】
そして、この塊状物排出装置10の動作手順を
図3(a)〜(d)に示す。
【0042】
(S1)
図3(a)に示すように、スライドゲート17を斜め上方向に前進させて(スライドゲート17を閉止して)、スライドゲート17の先端部を側壁12に密着させることによって、一時収納室11を上部一時収納室11aと下部一時収納室11bに2分割するとともに、排出扉18を閉止する。そして、この状態で、塊状物処理装置30から処理後の塊状物1を上部一時収納室11aに受け入れて収納する。その際に、傘部材21の下方に塊状物1の存在が希薄な空間22が形成される。
【0043】
(S2)次に、
図3(b)に示すように、スライドゲート17を斜め下方向に後退させて(スライドゲート17を開放して)、上部一時収納室11aの塊状物1の一部を下部一時収納室11bに流入させて(切り出して)、下部一時収納室11bに収納する。なお、傘部材21の下方に形成された空間22は保持される。
【0044】
(S3)次に、
図3(c)に示すように、スライドゲート17を斜め上方向に前進させて(スライドゲート17を閉止して)、スライドゲート17の先端部を側壁12に密着させることによって、上部一時収納室11aから下部一時収納室11bへの塊状物1の流入を遮断する。その際に、傘部材21の下方に塊状物1の存在が希薄な空間22が形成されていることによって、スライドゲート17の先端と側壁12との間に塊状物1が噛み込むことが防止される。
【0045】
(S4)次に、
図3(d)に示すように、排出扉18を開放して、下部一時収納室11b内の塊状物1を外部に排出する。そして、下部一時収納室11bからの塊状物1の排出が終了したら、排出扉18を閉止して、
図3(a)の状態に戻り、
図3(a)〜(d)を繰り返す。
【0046】
このようにして、この塊状物排出装置10は、塊状物処理装置30での処理後の塊状物1が多面体等の流動性が低い場合であっても、シール性(密閉性)を保持しながら塊状物1を適切に排出することができる。
【0047】
なお、この実施形態では、排出扉18として回転扉を用いているが、排出扉18としてスライドゲートを用いてもよい。
【0048】
また、ここでは、塊状物処理装置として、高熱の塊状物から熱回収を行う塊状物熱回収装置を例にして説明したが、本発明の塊状物排出装置は、乾留炉や廃棄物の焼却設備等から塊状物を排出するための塊状物排出装置としても用いることができる。
【0049】
すなわち、本発明にいう塊状物処理装置は、処理前に当該処理装置内に塊状物が存在しているか否かにかかわらず、処理後に当該処理装置内に塊状物が存在する処理装置を意味している。
【0050】
また、本発明は、対象とする塊状物の流動性が低く、スライドゲートの先端部と側壁との間に塊状物が噛み込みやすい場合に、大きな効果を発揮するものであり、例えば、塊状物の形状が多面体のように角部を有している場合や、塊状物の平均等価粒径Dが10mm以上の場合である。
【符号の説明】
【0051】
1 塊状物
1a 噛み込んだ塊状物
9 塊状物排出装置(従来技術)
10 塊状物排出装置(本発明技術)
11 一時収納室
11a 上部一時収納室
11b 下部一時収納室
12 側壁
13 側壁
14 側壁
15 側壁
16 底板
17 スライドゲート
18 排出扉
19 隙間
21 傘部材
22 塊状物の存在が希薄な空間
30 塊状物処理装置