特許第6028695号(P6028695)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028695
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】全閉位置学習装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/00 20160101AFI20161107BHJP
   F02M 26/48 20160101ALI20161107BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20161107BHJP
   F16K 37/00 20060101ALI20161107BHJP
   F16K 31/53 20060101ALN20161107BHJP
   F16K 31/528 20060101ALN20161107BHJP
   F16K 31/524 20060101ALN20161107BHJP
【FI】
   F02M26/00
   F02M26/48
   F16K31/04 Z
   F16K37/00 M
   F16K37/00 D
   !F16K31/53
   !F16K31/528
   !F16K31/524 Z
【請求項の数】10
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-174320(P2013-174320)
(22)【出願日】2013年8月26日
(65)【公開番号】特開2015-42851(P2015-42851A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2015年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100080045
【弁理士】
【氏名又は名称】石黒 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100124752
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 真司
(72)【発明者】
【氏名】藤中 勇多
(72)【発明者】
【氏名】佐野 亮
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一司
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−516134(JP,A)
【文献】 特開平11−132110(JP,A)
【文献】 特開2011−220113(JP,A)
【文献】 特開2007−138893(JP,A)
【文献】 特開平7−310607(JP,A)
【文献】 特開2000−234565(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0043498(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/00
F02M 26/48
F16K 31/04
F16K 37/00
F16K 31/524
F16K 31/528
F16K 31/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼室に連通する流路(41〜44)を開閉する弁体(2)、およびこの弁体(2)を支持する弁軸(3)を有し、前記弁軸(3)の軸線方向に往復移動するバルブ(1)と、
電力の供給を受けて前記バルブ(1)を駆動するトルクを発生するモータ(M)、このモータ(M)のトルクを受けて回転するシャフト(25)、このシャフト(25)の回転運動を前記弁軸(3)の直線運動に変換する変換機構(6、26〜28)を有し、前記シャフト(25)および前記変換機構(6、26〜28)を介して、前記モータ(M)のトルクを前記バルブ(1)に伝えるアクチュエータ(4)と、
前記シャフト(25)または前記変換機構(6、26〜28)の回転角度に対応した信号を出力するセンサ(9)と、
前記シャフト(25)または前記変換機構(6、26〜28)の全閉角度における前記センサ(9)の出力信号と、前記バルブ(1)の全閉開度に相当する全閉位置とを対応させる、前記バルブ(1)の全閉位置学習を実施する学習制御手段(5)と
を備え、
前記学習制御手段(5)は、
(a)前記バルブ(1)が開き始めるトルク以下の第1トルク範囲内において、前記バルブ(1)が全閉開度の状態から前記バルブ(1)を開き側へ動作させる電力を複数の異なる値に設定し、
この設定した複数の異なる値の電力を前記モータ(M)へ印加する毎に、前記センサ(9)の出力信号を取得し、
この取得した複数の異なる値の出力信号を記録する第1記憶手段と、
(b)前記バルブ(1)が開き始めるトルク以上の第2トルク範囲内において、前記バルブ(1)が全閉開度の状態または任意の中間開度の状態から前記バルブ(1)を開き側へ動作させる電力を複数の異なる値に設定し、
この設定した複数の異なる値の電力を前記モータ(M)へ印加する毎に、前記センサ(9)の出力信号を取得し、
この取得した複数の異なる値の出力信号を記録する第2記憶手段と、
(c)前記第1記憶手段に記録された複数の異なる値の出力信号から、前記弁軸(3)の傾き動作中における、前記センサ(9)の出力信号に対するトルク特性に近似した第1近似式を求める第1近似式決定手段と、
(d)前記第2記憶手段に記録された複数の異なる値の出力信号から、前記バルブ(1)の開き動作中における、前記センサ(9)の出力信号に対するトルク特性に近似した第2近似式を求める第2近似式決定手段と、
(e)前記第1近似式決定手段で求めた前記第1近似式および前記第2近似式決定手段で求めた前記第2近似式から、前記バルブ(1)が開き始める時の全閉学習点を求める全閉位置決定手段と
を備えたことを特徴とする全閉位置学習装置。
【請求項2】
請求項1に記載の全閉位置学習装置において、
前記学習制御手段(5)は、前記バルブ(1)の全閉位置学習を実施する毎に、前記全閉位置決定手段で求めた前記全閉学習点を、前記バルブ(1)の全閉位置学習値として更新して記録する記憶部を有していることを特徴とする全閉位置学習装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の全閉位置学習装置において、
前記学習制御手段(5)は、前記第1近似式を求める直前または直後に、前記センサ(9)の周辺環境温度と相関のある第1物理量を取得し、この取得した前記第1物理量を記録する第1記憶部、および前記第2近似式を求める直後または直前に、前記センサ(9)の周辺環境温度と相関のある第2物理量を取得し、この取得した前記第2物理量を記録する第2記憶部を有し、
前記第1物理量を取得した時刻と前記第2物理量を取得した時刻との時間が所定の時間以内で、且つ前記第1物理量と前記第2物理量との差が所定の差以内であるときのみ、前記全閉学習点を求めることを特徴とする全閉位置学習装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載の全閉位置学習装置において、
前記変換機構は、前記シャフト(25)と一体回転可能に連結し、前記シャフト(25)の径方向外側に突出するレバー(26)、このレバー(26)に保持される偏芯ピン(27)、この偏芯ピン(27)の外周に回転自在に支持されたフォロア(28)、およびこのフォロア(28)を介して、前記偏芯ピン(27)から前記モータ(M)のトルクを受けて前記弁軸(3)の軸線方向に往復移動する共に、前記弁軸(3)と一体移動可能に連結したヨーク(6)を有し、
前記レバー(26)は、前記シャフト(25)の回転中心軸から偏芯した位置で前記偏芯ピン(27)を保持していることを特徴とする全閉位置学習装置。
【請求項5】
請求項4に記載の全閉位置学習装置において、
前記ヨーク(6)は、前記フォロアを挿入可能なヨーク溝(29)を有し、
前記フォロア(28)は、前記偏芯ピン(27)の外周に回転自在に支持されて、前記ヨーク溝(29)内に摺動可能に挿入されていることを特徴とする全閉位置学習装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の全閉位置学習装置において、
前記センサ(9)は、前記レバー(26)の回転角度に対応した信号を出力することを特徴とする全閉位置学習装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載の全閉位置学習装置において、
前記変換機構は、前記シャフト(25)と一体回転可能なカム(7)を有し、
前記カム(7)は、前記バルブ(1)の動作パターンに対応した形状のスロット(69)を有していることを特徴とする全閉位置学習装置。
【請求項8】
請求項7に記載の全閉位置学習装置において、
前記変換機構は、前記スロット(69)内に移動可能に挿入されるフォロア(71)、およびこのフォロア(71)を介して、前記カム(7)から前記モータ(M)のトルクを受けて前記弁軸(3)をその軸線方向に往復駆動する支軸(72)を有していることを特徴とする全閉位置学習装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の全閉位置学習装置において、
前記センサ(9)は、前記カム(7)の回転角度に対応した信号を出力することを特徴とする全閉位置学習装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のうちのいずれか1つに記載の全閉位置学習装置において、
前記バルブ(1)を閉弁方向に付勢する付勢力を発生するスプリング(16)を備えたことを特徴とする全閉位置学習装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の気筒に連通する流路を開閉するバルブの全閉位置学習装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来より、例えば自動車等の車両走行用の内燃機関(エンジン)においては、エンジンから排出される排出ガス(排気)中に含まれる窒素酸化物(NOx)を低減する排気ガス循環装置(EGRシステム)が搭載されている。
このEGRシステムは、エンジンから排出される排出ガスの一部をEGRガスとして吸気通路へ再循環(還流)させ、新気に混入させて燃焼温度を下げることによってNOxの発生を抑制している。
【0003】
ところで、EGRガスを吸気通路へ還流させると、燃焼室内での混合気の着火性が低下して、エンジン出力の低下を招くので、EGRガスの流量をエンジンの運転状況に応じて調整する必要がある。
そこで、EGRシステムにおいては、排気通路の分岐部と吸気通路の合流部とを接続するEGRガス流路の途中にEGRガス流量制御弁(以下EGR制御弁)を設置し、EGR制御弁の開度を調整してEGRガスの流量を制御している。
【0004】
ここで、エンジンの運転領域が所定の運転領域(例えばエンジン負荷が低負荷で、且つエンジン回転速度が低速回転の領域)の時、エンジンの燃焼状態を安定させるために、新気に対するEGRガスの導入を止めるようにしている(EGRカット)。
また、ドライバーがアクセルペダルを踏み込んで、エンジンの出力を最大限に引き出したい時に、EGRガスが燃焼室内に導入されることを要因とするエンジンの出力低下を回避するために、新気に対するEGRガスの導入を止めるようにしている(EGRカット)。
このEGRカット時には、EGR制御弁の弁体であるEGRバルブが全閉開度の状態となり、EGRシステムが作動しない状態となる。
【0005】
一方、EGRシステムに使用されるEGR制御弁として、電動アクチュエータの出力軸である出力シャフトの回転運動を、バルブシャフトの直線運動に変換してEGRバルブを駆動するように構成されたEGR制御弁(従来例1)が公知である(例えば、特許文献1参照)。
この従来例1のEGR制御弁は、回転運動を直線運動に変換する変換機構として、カム機構を用いるものであり、出力シャフトと一体回転可能なプレートカムにカム溝を設け、プレートカムの回転に伴うカム溝の回転によりカム溝に嵌まるフォロアを駆動してバルブシャフトをその軸線方向へ往復駆動するものである。
【0006】
また、従来例1のEGR制御弁は、コンプレッションスプリングによる付勢力によって出力シャフトが閉弁方向へ戻されるようになっている。
このため、例えばモータの故障時やモータへの通電カット時には、コンプレッションスプリングの付勢力によってEGRバルブがバルブシートに押し付けられるため、EGRバルブが閉じられる。
ところが、このEGR制御弁においては、EGRバルブの開弁時に、カム溝とフォロアとの間の軸方向のクリアランスにより、フォロアとバルブシャフトとが車両振動等によりガタ付く不具合がある。
【0007】
そこで、コンプレッションスプリングによってバルブシャフトを閉弁方向へ付勢し、開弁状態であっても、コンプレッションスプリングの付勢力により、フォロアとバルブシャフトとのガタ付きを防ぐことが考えられる(周知技術ではない)。
しかし、コンプレッションスプリングによってバルブシャフトを閉弁方向へ付勢する技術では、以下の問題点が生じる。
コンプレッションスプリングによってバルブシャフトを閉弁方向へ付勢する場合、EGRバルブがバルブシートに着座した全閉状態では、コンプレッションスプリングの付勢力をバルブシートが受ける。このため、全閉状態では、コンプレッションスプリングの付勢力が電動アクチュエータの出力シャフトまで伝わらない。
【0008】
ここで、図14および図15は、本発明者等らが試作したEGR制御弁(比較例1及び2)の動作を説明した図である(周知技術ではない)。
比較例1のEGR制御弁は、図14に示したように、モータMおよび減速機構を有する電動アクチュエータと、減速機構の出力軸である出力シャフト101と一体回転可能に連結した平板状のプレートカム102と、このプレートカム102のカム溝103に嵌め込まれるフォロア104と、このフォロア104を回転自在に支持する支軸(以下ピン)105と、このピン105と一体移動可能に連結するポペットバルブと、このポペットバルブのバルブヘッド(弁体)111およびバルブシャフト(弁軸)112を閉弁方向に付勢するコンプレッションスプリング(以下リターンスプリング)113と、ポペットバルブのバルブヘッド111が着座可能な環状のバルブシート114とを備えている。
なお、リターンスプリング113の一端側は、バルブシャフト112に一体的に設けられたスプリング座部115に係止されている。また、リターンスプリング113の他端側は、ポペットバルブを収容するバルブボディのスプリング座部116に係止されている。
【0009】
比較例2のEGR制御弁は、図15に示したように、モータMおよび減速機構を有する電動アクチュエータと、減速機構の出力軸である出力シャフト101と一体回転可能に連結した出力レバー106と、この出力レバー106の先端(出力シャフト101の回転中心から偏芯した位置)に取り付けられるフォロア107と、このフォロア107が係合するヨーク溝117を有するスコッチヨーク108と、このスコッチヨーク108に連結するポペットバルブであるポペットバルブと、このポペットバルブのバルブヘッド(弁体)111およびバルブシャフト(弁軸)112を閉弁方向に付勢するリターンスプリング113と、ポペットバルブのバルブヘッド111が着座可能な環状のバルブシート114とを備えている。
なお、いずれの比較例1、2のEGR制御弁も、出力シャフト101の回転角度に対応したセンサ出力値(センサ電圧)を電子制御装置(ECU)に対して出力する回転角度センサSを備えている。
【0010】
上記の問題を比較例1及び2のEGR制御弁を用いて具体的に説明する。
出力シャフト101の回転範囲は、ポペットバルブの閉弁方向への回転が全閉ストッパ等により機械的に停止する「出力シャフト101の回転停止角度(カム全閉角度、スコッチヨーク全閉角度)」から、バルブヘッド111が開き始める直前の全閉位置における「出力シャフト101の全閉角度(カム上側接触角度、ヨーク下側接触角度)」までの間(区間)にバックラッシュ範囲を備える。なお、上記のバックラッシュ範囲では、リターンスプリング113の付勢力を、ポペットバルブを介してバルブシート114が受けているため、出力シャフト101が受けない。
また、出力シャフト101の回転範囲は、「出力シャフト101の全閉角度」から、「バルブヘッド111の全閉位置(全閉開度の状態)」までの間(区間)にバルブシャフト112が傾くバルブシャフト(弁軸)傾き範囲を備える。なお、「バルブヘッド111の全閉位置」では、バルブシャフト112の傾きは、最大値となる。
【0011】
ここで、「バルブ全閉位置」と「回転角度センサのセンサ出力値(センサ電圧)」とを対応させる全閉位置学習を実施する場合、
(1)先ず、ポペットバルブのバルブヘッド111およびバルブシャフト112を全閉側へ作動させるモータ駆動電流をモータMへ印加して、出力シャフト101を回転が機械的に停止するカム全閉位置またはスコッチヨーク全閉位置まで回転させる「第1作動」を実施する。
このとき、比較例1のEGR制御弁の場合、図14のIに示したように、リターンスプリング113の影響が、無くなるため、プレートカム102のカム溝103の下側に接触する(トルク≒0)。また、比較例2のEGR制御弁の場合、図15のIに示したように、リターンスプリング113の影響が、無くなるため、スコッチヨーク108のヨーク溝117の上側に接触する(トルク≒0)。
【0012】
あるいは、
(2)モータMへの通電を停止(カット)して、リターンスプリング113の付勢力のみで、バルブヘッド111を全閉位置へ戻す「第2作動」を実施する。
さらに、
(3)バルブヘッド111が開き始めるトルク以下となる所定の開き側モータ駆動電流を印加する方法「第3作動」を実施することが考えられる。
このとき、比較例1のEGR制御弁の場合、図14のII〜IVに示したように、リターンスプリング113の付勢力で、ボールベアリングよりなるフォロア104をプレートカム102のカム溝103の上側に接触させる。また、比較例2のEGR制御弁の場合、図15のII〜IVに示したように、モータMに開く側へ作動するDUTY値を印加した場合、バックラッシュが詰まり、スコッチヨーク108のヨーク溝117の下側に接触する。
【0013】
ところが、比較例1及び2のEGR制御弁においては、上記(1)による「第1作動」を実施した場合は、バルブ全閉位置を通り過ぎて、「カム全閉位置またはスコッチヨーク全閉位置」まで作動する。
上記(2)による「第2作動」を実施した場合は、「バルブ全閉位置」と「カム全閉位置またはスコッチヨーク全閉角度」との間の隙間(バックラッシュ範囲)の任意の位置で止まる。
上記(3)による「第3作動」を実施した場合は、バルブヘッド111が閉じたままで、且つバルブシャフト112が任意の角度で傾いた状態で止まる。
以上のように、比較例1及び2のEGR制御弁においては、第1〜第3作動のうちのいずれの場合も、「バルブ全閉位置」を正確に学習することが不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特表2009−516134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、「バルブ全閉位置」を精度良く推測することのできる全閉位置学習装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載の発明(全閉位置学習装置)によれば、第1近似式決定手段で求めた第1近似式および第2近似式決定手段で求めた第2近似式から、バルブが開き始める時の全閉学習点を求めることにより、2つの第1、第2近似式(近似曲線2式)からバルブ全閉位置を精度良く推測することが可能となる。
これによって、「回転角度センサの出力信号(例えばセンサ出力値、センサ出力電圧)」と「バルブ全閉位置」とを対応させることができる。
【0017】
請求項2〜4に記載の発明によれば、第1物理量を取得した時刻と第2物理量を取得した時刻との時間が所定の時間以内で、且つ第1物理量と第2物理量との差が所定の差以内であるときのみ、バルブが開き始める時の全閉学習点を求めることにより、構成部品、特にセンサの温度特性によるセンサ出力信号のバラツキを減少させることが可能となる。
これによって、「バルブ全閉位置」の学習精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】EGR制御弁を示した断面図である(実施例1)。
図2図1のII−II断面図である(実施例1)。
図3】電動アクチュエータおよびポペットバルブを示した斜視図である(実施例1)。
図4】電動アクチュエータおよびポペットバルブを示した斜視図である(実施例1)。
図5】回転角度センサ、ECUおよびモータを示したブロック図である(実施例1)。
図6】ポペットバルブのリフト量、レバー角度、回転角度センサのセンサ出力値(センサ電圧)とバルブシャフトに付与される駆動トルク(モータトルク)、駆動DUTY値(Duty)との関係を示した説明図である(実施例1)。
図7】全閉位置学習方法を示したフローチャートである(実施例1)。
図8】全閉位置学習方法を示したフローチャートである(実施例1)。
図9】全閉位置学習方法を示したフローチャートである(実施例2)。
図10】全閉位置学習方法を示したフローチャートである(実施例2)。
図11】EGR制御弁を示した断面図である(実施例3)。
図12】センサカバーを外してアクチュエータ内部を示した平面図である(実施例3)。
図13】ポペットバルブのリフト量、プレートカム角度、回転角度センサのセンサ出力値(センサ電圧)とバルブシャフトに付与される駆動トルク(モータトルク)、駆動DUTY値(Duty)との関係を示した説明図である(実施例3)。
図14】ポペットバルブのリフト量、プレートカム角度、回転角度センサのセンサ出力値(センサ電圧)とバルブシャフトに付与される駆動トルク(モータトルク)との関係を示した説明図である(比較例1)。
図15】ポペットバルブのリフト量、レバー角度、回転角度センサのセンサ出力値(センサ電圧)とバルブシャフトに付与される駆動トルク(モータトルク)との関係を示した説明図である(比較例2)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0020】
[実施例1の構成]
図1ないし図8は、本発明の全閉位置学習装置を適用したEGRバルブ制御装置(実施例1)を示したものである。
【0021】
本実施例の内燃機関の排気装置(排気システム)は、例えば自動車等の車両走行用の内燃機関(ディーゼルエンジン:以下エンジン)の排気管から吸気管へ排出ガス(排気)の一部であるEGRガスを再循環(還流)させる排気循環装置(EGRシステム)を備えている。
EGRシステムは、エキゾーストマニホールドまたは排気管内の排気通路からインテークマニホールドまたは吸気管内の吸気通路へEGRガスを還流させるEGRガスパイプを備えている。このEGRガスパイプ内には、排気通路から吸気通路へEGRガスを流入させるEGRガス流路が形成されている。
EGRガスパイプには、EGRガス流路を流れるEGRガスの流量を可変制御するEGR制御弁が設置されている。
【0022】
ここで、EGRシステムは、エンジンの運転状況に基づいてEGR制御弁のポペットバルブ1を開閉制御するEGRバルブ制御装置(内燃機関のEGR制御装置)として使用される。このEGRバルブ制御装置は、ポペットバルブ1の弁体(バルブヘッド)であるEGRバルブ2およびポペットバルブ1の弁軸であるバルブシャフト3を、そのバルブシャフト3の軸線方向(軸方向)に往復駆動する電動アクチュエータ4に組み込まれる電動モータ(直流モータ:以下モータ)Mを他のシステム(例えば吸気システム、過給圧制御システム等)と連動して制御するエンジン制御ユニット(電子制御装置:以下ECU)5を備えている。
【0023】
EGR制御弁は、EGRガス流路を流れるEGRガスの流量を調量するポペットバルブ1と、このポペットバルブ1のバルブシャフト3をその往復方向に駆動する電動アクチュエータ4と、ポペットバルブ1、電動アクチュエータ4および断面コの字状(または断面矩形状)のスコッチヨーク6を収容(内蔵)するハウジング8とを備えている。
ポペットバルブ1は、EGRガスが流れるEGRガス流路を開閉するEGRバルブ2、およびこのEGRバルブ2を支持固定するバルブシャフト3を備えている。このバルブシャフト3の軸線方向の基端部には、スコッチヨーク6を介して、電動アクチュエータ4からモータMの回転動力が伝達される入力部が設けられている。
【0024】
スコッチヨーク6は、バルブシャフト3の入力部の外周(図示上端外周)に圧入または溶接等の手段を用いて固定されている。
ハウジング8は、EGR開度センサである回転角度センサ9を搭載するセンサカバー10との間に、電動アクチュエータ4を収容する凹部を備えている。このハウジング8には、ポペットバルブ1を収容するバルブボディ11、モータMを収容するモータケース12、および減速機構を収容するギアケース13等が一体的に設けられている。
これらのうちバルブボディ11には、EGRバルブ2が着座可能な円環状のバルブシート14が圧入固定されている。
【0025】
電動アクチュエータ4は、回転軸(モータ軸:以下モータシャフト)15を有するモータMと、このモータMのモータシャフト15の回転を2段減速する減速機構と、この減速機構とスコッチヨーク6とを駆動連結する変換機構(リンク機構)と、減速機構および変換機構の一部を含んで構成されて、モータMの回転動力をヨーク側に出力する出力部材と、この出力部材の回転角度を検出する回転角度検出装置と、バルブシャフト3に対して、ポペットバルブ1を閉じる側(バルブ全閉側)に付勢するコンプレッションスプリング(以下リターンスプリング)16とを備えている。
【0026】
モータMは、そのモータシャフト15がその回転軸方向に延びるインナロータ(電機子)と、この電機子の周囲を円周方向に取り囲む筒状のステータと、このステータに対して固定されたブラシホルダに収容保持された一対の給電ブラシ(以下第1、第2ブラシ)とを備えている。
モータMのステータは、電機子のモータシャフト15を回転可能に収容するモータケース(モータヨーク等)、およびモータヨークの内周面において円周方向に等間隔で接着剤等により固着された複数の界磁マグネット等を有している。
モータMの電機子は、モータシャフト15と一体回転可能に連結した電機子鉄心(電機子コア)、この電機子コアに巻装される電機子巻線(電機子コア)、および一対の第1、第2ブラシに押圧接触される整流子(コンミテータ)を有している。
【0027】
減速機構は、モータMのモータシャフト15の先端外周に固定されたピニオンギア(入力ギア、モータギア)21、このピニオンギア21と噛み合って回転する中間ギア22、およびこの中間ギア22と噛み合って回転する出力ギア(バルブギア)23、モータシャフト15と並列配置された中間シャフト24、モータシャフト15と中間シャフト24に並列配置された出力シャフト25等によって構成されている。
出力部材は、モータMの回転動力をバルブシャフト3を介してポペットバルブ1に伝えるものである。この出力部材は、モータMの回転動力を受けて回転する出力ギア23と、この出力ギア23の回転中心軸上に設置されて、出力ギア23と一体回転可能に連結した出力シャフト25とを備えている。
これらの出力ギア23および出力シャフト25は、減速機構の一部を構成し、また、出力シャフト25は、減速機構の出力軸を構成している。
【0028】
出力部材は、出力シャフト25と一体回転可能に連結した出力レバー26と、この出力レバー26の突出端部に保持される偏芯ピン(以下ピボットピン)27と、このピボットピン27の外周に回転自在に支持されるボールベアリング(以下フォロア)28とを備えている。これらの出力レバー26、ピボットピン27およびフォロア28は、変換機構の一部を構成している。
また、出力部材は、出力シャフト25をその回転方向に摺動可能に支持する2連ボールベアリング31、32と、これらの2連ボールベアリング31、32の外周に圧入固定される円筒カラー33とを備えている。
【0029】
出力部材を構成する出力ギア23、出力シャフト25、出力レバー26、ピボットピン27、フォロア28、2連ボールベアリング31、32および円筒カラー33は、予め組み立てられて出力ギアサブアッセンブリの状態で、ハウジング8に組み付けられる。このとき、ピボットピン27およびフォロア28は、スコッチヨーク6のヨーク溝29内に組み込まれる。
ここで、変換機構は、スコッチヨーク6、出力レバー26、ピボットピン27およびフォロア28等により構成されている。
【0030】
ポペットバルブ1は、ハウジング8のバルブシート14に接離してEGRガス流路(流路孔41〜44)を閉鎖、開放する円環状のEGRバルブ2、および出力部材の回転変位に連動してポペットバルブ1の中心軸線方向に往復移動するバルブシャフト3を備えている。なお、ポペットバルブ1とバルブシャフト3とを一体部品で構成したポペットバルブを使用しても良い。
バルブシャフト3の先端外周には、溶接等の接合手段を用いて環状のEGRバルブ2が固定されている。このバルブシャフト3の軸線方向の中間部分は、メタルベアリング(軸受)45を介して、ハウジング8のベアリングホルダ46に摺動自在に支持されている。 ここで、ポペットバルブ1、バルブシャフト3、スコッチヨーク6およびリターンスプリング16は、予め組み立てられてバルブサブアッセンブリの状態で、ハウジング8に組み付けられる。
【0031】
ハウジング8には、ポペットバルブ(ポペットバルブ1、バルブシャフト3)、スコッチヨーク6およびリターンスプリング16等を移動可能に収容するバルブボディ11が一体的に形成されている。
バルブボディ11の内部には、EGRガス流路の一部を構成する流路孔41〜44が形成されている。このバルブボディ11は、流路孔41と流路孔43とを区画する円筒状の隔壁(仕切り部)にバルブシート14を備えている。
バルブシート14の開口周縁には、ポペットバルブ1が着座可能な円錐台形状(テーパ状)の弁座が形成されている。このバルブシート14の内部には、流路孔41と流路孔43とを連通し、且つEGRガスが通り抜ける流路孔(EGR制御弁の弁孔)42が形成されている。
【0032】
バルブボディ11には、メタルベアリング45の外周を保持する円筒状のベアリングホルダ46が一体的に形成されている。このベアリングホルダ46は、メタルベアリング45の周囲を円周方向に取り囲むように配置されている。
ハウジング8には、モータMを収容保持する有底円筒状のモータケース12が一体的に形成されている。このモータケース12は、モータMのモータヨークの周囲を円周方向に取り囲む円筒状の側壁部、およびこの側壁部の一端側で開口し、組み付け時にモータMをモータ収容室内に挿入するための開口部(モータ挿入口)を有している。このモータ挿入口は、モータMのフロントブラケット47により塞がれている。
フロントブラケット47は、モータケース12のモータ挿入口の開口周縁にボルト等を用いて締結固定されている。これにより、モータMがモータ収容室内に収容保持される。
【0033】
ハウジング8には、減速機構を収容するギアケース13が形成されている。このギアケース13には、組み付け時に電動アクチュエータ4をギア収容室内に挿入するための開口部を有している。この開口部は、合成樹脂製のセンサカバー10により塞がれている。
センサカバー10は、電気絶縁性を有する合成樹脂によって一体成形されている。
センサカバー10には、モータMのフロントブラケット47より突出する一対の第1、第2ブラシターミナルと一対の第1、第2モータターミナル(図示せず)との電気接続を行う内部接続用コネクタと、一対の第1、第2モータターミナルおよび回転角度センサ9の複数のセンサターミナルと外部回路(ECU5やバッテリ)との電気接続を行う外部接続用コネクタが設けられている。
【0034】
電動アクチュエータ4は、ポペットバルブ1を閉弁(全閉)方向に付勢するリターンスプリング16と、電力の供給を受けるとポペットバルブ1を往復駆動する回転動力(トルク)を発生するモータMと、このモータMのモータシャフト15の回転を2段減速して出力シャフト25に伝達する減速機構と、この減速機構の出力ギア23の回転往復(回動)運動をポペットバルブ1の直線往復運動(ポペットバルブ1の軸線方向の往復運動)に変換する動力変換機構(変換機構)と、出力シャフト25の回転角度を検出する回転角度検出装置とを備えている。
【0035】
リターンスプリング16は、バルブシャフト3の図示上端側の周囲、およびベアリングホルダ46の周囲を渦巻き状(螺旋状)に取り囲むように設置されている。このリターンスプリング16は、バルブシャフト3の上端側の段差(円環状の段差)に係止される円環状のスプリングシート48のスプリング座部51とハウジング8の底部(ベアリングホルダ46の外周側の円筒凹溝の底部)のスプリング座部52との間に渦巻き状に巻装されたコイル部を有している。
リターンスプリング16は、バルブシャフト3に対して、ポペットバルブ1を閉弁方向に付勢する弾性力を発生するコイル状のコンプレッションスプリングである。
【0036】
減速機構は、上述したように、ピニオンギア21、中間ギア22、出力ギア23、中間シャフト24および出力シャフト25を備えている。
ピニオンギア21は、モータシャフト15の先端外周に圧入嵌合により固定される円筒部を有している。この円筒部の外周には、中間ギア22と噛み合うピニオンギア歯53が形成されている。
中間ギア22は、中間シャフト24の外周に相対回転可能に嵌め合わされている。この中間ギア22は、中間シャフト24の外周に回転自在に嵌め合わされて、中間シャフト24の中心軸線周りに回転する円筒部を有している。この円筒部の軸線方向の一端部には、ピニオンギア歯53と噛み合う大径ギア(中間ギア歯)54が形成されている。また、円筒部の軸線方向の他端部には、出力ギア23と噛み合う小径ギア(中間ギア歯)55が形成されている。
【0037】
出力ギア23の内周部には、円筒状の円筒ボス56が一体的に形成されている。また、出力ギア23は、円筒ボス56よりも半径方向の外側に部分円筒状(扇状)の歯形成部を有している。この歯形成部の外周には、小径ギア55と噛み合う出力ギア歯57が形成されている。
出力ギア23には、円筒ボス56の一端側(バルブ側)の開口部を塞ぐように結合部58が一体的に設けられている。この結合部58の中央部には、2面幅(出力シャフト25の空回りを防ぐ構造、回り止め構造)を有する嵌合孔59が貫通形成されている。この嵌合孔59には、出力シャフト25の入力部(出力シャフト25の第1突出軸部)が回り止めされた状態で嵌合固定されている。
【0038】
出力シャフト25は、円筒カラー33および2連ボールベアリング31、32を介して、ハウジング8の軸方向壁の内部に回転自在または摺動自在に収容されている。
出力シャフト25は、その回転軸方向の両側に第1、第2突出軸部(径小軸部)をそれぞれ備えている。また、第1、第2突出軸部間には、ハウジング8の軸方向壁の軸受収容孔内に配置される軸方向部(中間軸部、第1、第2突出軸部よりも外径が大きい径大軸部)が設けられている。
出力シャフト25の中間軸部の外周には、2連ボールベアリング31、32の各内輪が圧入嵌合によって嵌合保持されている。
【0039】
変換機構は、上述したように、スコッチヨーク6、出力レバー26、ピボットピン27およびフォロア28等を有している。
スコッチヨーク6は、フォロア28を介してピボットピン27からモータMの回転動力を受けてバルブシャフト3の軸線方向に往復移動する。また、スコッチヨーク6は、バルブシャフト3と一体移動可能に連結している。このスコッチヨーク6は、フォロア28を介して出力部材の動力を受ける断面コの字状の入力部、およびバルブシャフト3へ出力部材の動力を伝える出力部を有している。
スコッチヨーク6の入力部は、組み付け時にピボットピン27およびフォロア28が挿入される挿入方向に対向する2面の他に、少なくとも4面の第1〜第4側面を有する多面体形状(断面コの字状または断面角環状)を呈している。
なお、スコッチヨーク6の入力部をフォロア28の周囲を円周方向に取り囲むように断面円環状に形成しても良い。
【0040】
ヨーク溝29は、スコッチヨーク6に対する出力部材、特にフォロア28の組み付け時に、出力部材を直線移動させながらヨーク溝29内にフォロア28を挿入するための開口部61を有している。この開口部61は、バルブシャフト3の軸線方向に対して直交する垂直方向、特に組み付け時にピボットピン27およびフォロア28が挿入される挿入方向に対して反対方向に向かって開放されている。
スコッチヨーク6の出力部には、有底円(または角)筒状の嵌合部62が一体的に設けられている。この嵌合部62の内部には、バルブシャフト3の軸線方向の基端部(入力部)が圧入嵌合される圧入溝63が形成されている。
【0041】
出力レバー26は、金属によって一体的に形成されている。この出力レバー26は、出力シャフト25の半径方向外側に突出するように設けられている。また、出力レバー26は、出力シャフト25とピボットピン27およびフォロア28とを駆動連結して、モータMの回転動力をピボットピン27とフォロア28に伝達するリンクレバーである。
また、出力レバー26の基端部には、出力シャフト25の第2突出軸部がその軸線方向に貫通するように圧入嵌合する第1嵌合孔がそれぞれ設けられている。これにより、出力レバー26が出力シャフト25と一体回転可能に連結される。
また、出力レバー26の先端部には、ピボットピン27がその軸線方向に貫通するように圧入嵌合する第2嵌合孔がそれぞれ設けられている。これにより、ピボットピン27が出力レバー26と一体回転可能に連結される。第2嵌合孔は、出力シャフト25の第2突出軸部の回転中心軸から所定の距離だけ偏芯した位置に設けられている。
【0042】
ピボットピン27は、金属によって形成されており、出力レバー26の第2嵌合孔に打ち込まれて出力レバー26の出力部に圧入固定されている。このピボットピン27は、フォロア28を回転自在に支持している。また、ピボットピン27は、フォロア28と共に、スコッチヨーク6のヨーク溝29内に挿入される。
フォロア28は、ピボットピン27の外周に圧入固定される内輪、スコッチヨーク6のヨーク溝29の溝側面に摺動接触する外輪、および内輪と外輪との2つの軌道輪の間に滑動自在に収容される複数の鋼球を備えたボールベアリングである。
フォロア28は、ピボットピン27の外周に回転自在に支持されて、スコッチヨーク6のヨーク溝29内に摺動(転動)可能に挿入されている。このフォロア28は、出力シャフト25の第2突出軸部の回転中心軸から所定の距離だけ偏芯した位置に設けられている。また、フォロア28は、出力レバー26およびピボットピン27を介して、出力レバー26と一体回転可能に連結されている。
【0043】
ここで、電動アクチュエータ4の動力源であるモータMは、ECU5によって電子制御されるモータ駆動回路を介して、自動車等の車両に搭載された外部電源(バッテリ)に電気的に接続されている。
ECU5には、CPU、メモリ(ROM、RAMおよびEEPROM)、入力回路(入力部)、出力回路(出力部)、電源回路、タイマー回路等の機能を含んで構成される周知の構造のマイクロコンピュータが設けられている。
なお、ECU5は、特許請求の範囲における「学習制御手段」、「第1、第2記憶手段」、「第1、第2近似式決定手段」、「全閉位置決定手段」に相当する。
【0044】
モータ駆動回路は、ECU5のマイクロコンピュータから与えられる制御信号(例えばPWM信号のデューティ比)に対してモータMへの供給電力(モータ駆動電流またはモータ印加電圧)を可変制御する。
ここで、モータ駆動回路に与えるPWM信号のデューティ比(駆動デューティ値:以下Duty(%))とは、実バルブリフト量(実開度または実EGR率)が目標バルブリフト量(目標開度または目標EGR率)となるように、PWM信号(パルス幅変調信号)の発生周期(PWM周期)における、モータMの内部導体(例えば電機子コイル)を通電するON期間とモータMの内部導体への通電を停止するOFF期間との比率(ON/OFF比)のことである。
【0045】
CPUは、プログラムによって様々な数値演算処理、情報処理および制御等を行う。
ROMは、CPUの様々な数値演算処理、情報処理および制御等に必要なプログラムが予め記憶されている。
RAMには、CPUの演算処理による中間情報が一時的に記録され、イグニッションスイッチ(エンジンスイッチ)がOFFとなると記憶された情報は消える。
【0046】
EEPROMには、CPUによる様々な数値演算処理、情報処理および制御等に必要な情報が記憶されている。具体的には、バルブリフト量、レバー角度(回転角度センサ9から出力されるセンサ出力信号:センサ電圧)とポペットバルブ1のバルブシャフト3に付与される駆動トルク(モータトルク)との対応関係を所定の形式で表したデータテーブル(図6参照)等の初期データがEEPROMに予め記憶されている。
なお、EEPROMは、特許請求の範囲における「第1、第2記憶手段」、「記憶部」、「第1、第2記憶部」に相当する。また、データテーブルに格納されるデータは、書き換え(更新)が可能なものである。
【0047】
そして、センサカバー10のセンサ搭載部に設置された回転角度センサ9からのセンサ出力信号(アナログ電圧)や、各種センサからのセンサ出力信号(電気信号)は、A/D変換回路によってA/D変換された後に、マイクロコンピュータの入力部に入力されるように構成されている。
ここで、マイクロコンピュータの入力部には、回転角度センサ9だけでなく、エアフロメータ91、クランク角度センサ92、アクセル開度センサ93、スロットル開度センサ94、吸気温センサ95、水温センサ96および排気ガスセンサ(空燃比センサ、酸素濃度センサ:図示せず)等が接続されている。
【0048】
回転角度検出装置は、出力ギア23の円筒ボス56に一体回転可能に設けられた円筒状の磁気回路部と、この磁気回路部の回転角度を測定してEGR制御弁のバルブ開度を検出する回転角度センサ9とを備え、磁気回路部と回転角度センサ9との相対回転角度の変化を回転角度センサ9に磁気回路部から与えられる磁気変化によって検出する。
回転角度センサ9は、半導体ホール素子の感磁面を鎖交する磁束密度に対応したセンサ出力信号(アナログ電圧信号:以下センサ電圧)をECU5へ向けて出力するホールICを主体として構成されている。
【0049】
ホールICは、ホール素子および集積回路が1つのICチップ(半導体チップ)として集積回路化された磁気センサである。なお、ホールICの代わりに、ホール素子単体、磁気抵抗素子等の非接触式の磁気検出素子を使用しても良い。
磁気回路部は、円筒ボス56の内周に接着剤等により固定されている。なお、円筒ボス56が合成樹脂の場合には、磁気回路部が円筒ボス56にインサート成形されていても構わない。
この磁気回路部は、円筒ボス56の直径方向に2分割された一対の部分円筒状ヨーク64と、このヨーク64の分割部(対向部)に同一方向に磁極が向いて配置された一対のマグネット(永久磁石)65とを備えている。
【0050】
クランク角度センサ92は、エンジンのクランクシャフトの回転角度を電気信号に変換するピックアップコイルよりなり、例えば15°または30°CA(クランク角度)毎にセンサ出力信号(以下NEパルス信号)がECU5に対して出力される。
ECU5は、クランク角度センサ92から出力されたNEパルス信号の間隔時間を計測することによってエンジン回転速度(エンジン回転数:NE)を検出するための回転速度検出手段である。
【0051】
ECU5は、回転角度センサ9から出力されるセンサ出力信号(センサ電圧)に基づいて、ポペットバルブ1のストローク量(バルブリフトまたは流量)を検出するストローク量(または流量)検出手段を構成している。
また、ECU5は、回転角度センサ9から出力されるセンサ出力信号(センサ電圧)に基づいて、出力レバー26の回転角度(レバー回転角度)を検出するレバー角度検出手段を構成している。
【0052】
アクセル開度センサ93は、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度:ACCP)に対応した電気信号(センサ出力信号)をECU5に対して出力するエンジン負荷検出手段である。なお、スロットル開度センサ94を搭載している場合は、スロットル開度センサ94をエンジン負荷検出手段として使用しても良い。
【0053】
吸気温センサ95は、エンジンの各気筒に吸い込まれる吸入空気(吸気)の温度(以下吸気温:THA)に対応した電気信号(センサ出力信号)をECU5に対して出力するエンジン負荷検出手段である。
水温センサ96は、エンジン冷却水温(以下水温:THW)に対応した電気信号(センサ出力信号)をECU5に対して出力する水温検出手段である。
【0054】
ここで、ECU5は、イグニッションスイッチがオン(IG・ON)されると、先ず、エンジンの運転状況(エンジン情報)または運転条件(状態)を計算(算出)するのに必要な各種センサ出力信号を取得(入力)し、エンジンの運転状況または運転条件およびROMに格納されたプログラムに基づいて、電動アクチュエータ4のモータMを電子制御するように構成されている。
【0055】
ECU5は、エンジンの運転状況(例えばエアフロメータ91から出力されるセンサ出力信号(吸気流量信号)から測定された新気量、クランク角度センサ92のNE信号から測定されたエンジン回転数(NE)に対応して制御目標値(目標EGR率)を算出(決定)し、回転角度センサ9のセンサ出力電圧から測定された実EGR率と目標EGR率との偏差がなくなるように、モータ駆動回路に与える駆動DUTY値(デューティ比:Duty(%))を可変制御するように構成されている。
【0056】
そして、ECU5からモータ駆動回路に駆動DUTY値が与えられると、モータMの内部導体にDuty(%)に対応したモータ印加電圧が印加され、モータMの内部導体に開弁方向(ポペットバルブ1の開き側)または閉弁方向(ポペットバルブ1の閉じ側)のモータ駆動電流が流れる。これにより、図6に示したように、ポペットバルブ1が開き側または閉じ側へ駆動される。
【0057】
[実施例1の特徴]
ところで、本実施例のEGRバルブ制御装置は、バルブ全閉位置とスコッチヨーク全閉位置のセンサ出力電圧とが一致しないため、エンジンを始動する毎に、バルブ全閉位置を回転角度センサ9から出力されるセンサ出力電圧で学習する全閉位置学習装置を備えている。
なお、本実施例では、EGR制御弁のポペットバルブ1の全閉位置学習装置の機能がECU5に含まれている。
【0058】
また、全閉位置学習装置(学習制御手段)は、ポペットバルブ1のEGRバルブ2が開き始める駆動トルク以下の第1トルク範囲内において、ポペットバルブ1が全閉開度の状態からEGRバルブ2を開き側へ動作させるDUTY(モータ駆動電流またはモータ印加電圧)を複数の異なる値に設定し、この設定した複数の異なる値の駆動DUTY値(Duty(%))を電動アクチュエータ4のモータMへ印加する毎に、回転角度センサ9のセンサ出力電圧を取得し、この取得した複数の異なる値のセンサ出力電圧を第1記憶部であるEEPROMに記録(記憶)する第1記憶手段を備えている。
【0059】
また、全閉位置学習装置(学習制御手段)は、ポペットバルブ1のEGRバルブ2が開き始める駆動トルク以上の第2トルク範囲内において、EGRバルブ2が全閉開度の状態または任意の中間開度の状態からEGRバルブ2を開き側へ動作させるDuty(%)を複数の異なる値に設定し、この設定した複数の異なる値のDuty(%)をモータMへ印加する毎に、回転角度センサ9のセンサ出力電圧を取得し、この取得した複数の異なる値のセンサ出力電圧を第2記憶部であるEEPROMに記録(記憶)する第2記憶手段を備えている。
【0060】
また、全閉位置学習装置(学習制御手段)は、上記の第1記憶手段に記録された複数の異なる値のセンサ出力電圧から、ポペットバルブ1のバルブシャフト3の傾き動作中における、回転角度センサ9のセンサ出力電圧に対するトルク特性に近似した第1近似式を求める第1近似式決定手段を備えている。
また、全閉位置学習装置(学習制御手段)は、上記の第1近似式を求める直前または直後に、回転角度センサ9の周辺環境温度と相関のある第1物理量(例えば吸気温または水温)を取得し、この取得した第1物理量を第1記憶部であるEEPROMに記録(記憶)するように構成されている。
【0061】
また、全閉位置学習装置(学習制御手段)は、上記の第2記憶手段に記録された複数の異なる値のセンサ出力電圧から、ポペットバルブ1のEGRバルブ2の開き動作中における、回転角度センサ9のセンサ出力電圧に対するトルク特性に近似した第2近似式を求める第2近似式決定手段を備えている。
また、全閉位置学習装置(学習制御手段)は、上記の第2近似式を求める直後または直前に、回転角度センサ9の周辺環境温度と相関のある第2物理量(例えば吸気温または水温)を取得し、この取得した第2物理量を第2記録部であるEEPROMに記録(記憶)するように構成されている。
【0062】
また、全閉位置学習装置(学習制御手段)は、上記の第1近似式決定手段で求めた第1近似式および第2近似式決定手段で求めた第2近似式から、ポペットバルブ1のEGRバルブ2が開き始める時の全閉学習点(2つの第1、第2近似式の交点)を求める全閉位置決定手段を備えている。
この全閉位置決定手段は、第1物理量を取得した時刻と第2物理量を取得した時刻との時間が所定の時間以内で、且つ第1物理量と第2物理量との差が所定の差以内であるときのみ、ポペットバルブ1が開き始める時の全閉学習点を求めるように構成されている。
また、全閉位置学習装置(学習制御手段)は、ポペットバルブ1の全閉位置学習を実施する毎に、ポペットバルブ1が開き始める時の全閉学習点を、ポペットバルブ1の全閉位置学習値(バルブ全閉位置)として更新して記録する記憶部であるEEPROMを有している。
【0063】
[実施例1の制御方法]
次に、本実施例の全閉位置学習装置の制御方法を図1ないし図8に基づいて簡単に説明する。
ここで、図7および図8は、ECU5による全閉位置学習方法を示したフローチャートである。この図7および図8の制御ルーチンは、イグニッションスイッチがオン(IG・ON)された後に、所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
【0064】
ところで、スコッチヨーク6によって、電動アクチュエータ4の出力シャフト25の回転運動を、ポペットバルブ1のバルブシャフト3の直線往復運動に変換する変換機構を備えたEGR制御弁において、EGRガスの流量をエンジンの運転状況に対応して正確に制御するためには、ポペットバルブ1、特にEGRバルブ2の全閉位置を正確に回転角度センサ9で検出することが重要である。
そこで、全閉位置学習装置の機能を含んで構成されるECU5は、ポペットバルブ1の全閉位置を学習する全閉位置学習を実施する。
【0065】
先ず、ECU5は、イグニッションスイッチがオン(IG・ON)された後に、EGR制御弁のポペットバルブ1の動作状態(またはエンジンの運転状況)を判定するのに必要な各種センサ出力信号やモータ駆動回路に与えられる駆動DUTY値(Duty(%))を取得する(センサ信号取得手段)。
なお、Duty(%)の代わりに、モータMの内部導体(電機子コイル)に印加されるモータ印加電圧や、モータMの内部導体(電機子コイル)を流れるモータ駆動電流を計測しても良い。
【0066】
ここで、ECU5は、ドライバーがアクセルペダルを踏み込んで、エンジンが所定の運転領域(例えば低負荷〜中負荷で、且つ低速回転〜中速回転の領域)に入ると、この運転領域(エンジン負荷およびエンジン回転数)に対応して設定される制御目標値(目標開度、目標EGR率)を計算する。
このとき、ECU5は、EGR制御弁のポペットバルブ1が所定のバルブ開度(バルブリフト)以上に開弁するようにモータ駆動回路にDuty(%)を与えて、ポペットバルブ1を開弁作動させる。
【0067】
そして、図7の制御ルーチンが起動するタイミングになると、先ず、モータ駆動回路に与えられるDuty(%)を検知して、上記のようなバルブオープン状態(開弁状態)、つまりポペットバルブ1が開き始める駆動トルク以上のDUTY値であるか否かを判定する(開弁状態判定手段:ステップS1)。このステップS1の判定結果がNOの場合には、ステップS1の判定処理を繰り返す。
また、ステップS1の判定結果がYESの場合には、ポペットバルブ1が開き始める駆動トルク以上の第2トルク範囲内において、ポペットバルブ1が全閉開度の状態または任意の中間開度の状態からポペットバルブ1を開弁方向(開き側)へ動作させるDUTY値(Duty(%))を2種類設定する。
【0068】
すなわち、ポペットバルブ1が全閉開度の状態からポペットバルブ1を開弁方向(開き側)へ動作させるDUTY値(b1)と、この中間開度の状態からポペットバルブ1を開弁方向(開き側)へ動作させるDUTY値(b2)とを設定する。
この設定した2種類のDUTY値(b1、b2)をモータ駆動回路に与えて、各DUTY値(b1、b2)に対応したモータ印加電圧やモータ駆動電流をモータMの内部導体へ印加する毎に、回転角度センサ9のセンサ出力電圧を取得する(第2センサ出力取得手段)。
そして、この取得した2つの異なるセンサ出力電圧(センサ出力値:図6のβ1、β2)をEEPROMに記録(記憶)する(第2記憶手段)。
【0069】
そして、図6の制御Aを実施する。すなわち、EEPROMに記録された2つの異なるセンサ出力電圧(図6のβ1、β2)から、ポペットバルブ1の開き動作中における、回転角度センサ9のセンサ出力電圧に対するトルク特性に近似した、下記の第2近似式を求める(第2近似式決定手段:ステップS2)。
[数1]
Y=F2(x)
なお、第2近似式が1次式の場合には、2つの異なるセンサ出力値から第2近似式を求め、また、第2近似式が2次式の場合には、3つの異なるセンサ出力値から第2近似(曲線)式を求める。また、第2近似式が3次式の場合には、複数(4つ以上)の異なるセンサ出力値から第2近似(曲線)式を求める。
【0070】
そして、図6の制御Bを実施する。すなわち、上記の第2近似式を求めた時に、回転角度センサ9の周辺環境温度と相関のある第2物理量を測定するのに必要な各種センサ出力信号やタイマー回路のカウント値を取得する(センサ信号取得手段)。
具体的には、水温センサ96および吸気温センサ95から出力されたセンサ出力信号(第2物理量、検出値)が取得され、この取得したセンサ出力信号(第2物理量)をEEPROMに記録(記憶)する。
【0071】
ここで、エンジン負荷が低負荷で、且つエンジン回転数が低速回転の領域、つまりアイドル運転時には、エンジンの燃焼を安定させるために、エンジンの各気筒の燃焼室へのEGRガスの導入を止める(EGRカット)。また、ドライバーがアクセルペダルを踏み込んで、エンジンの出力を最大限に引き出したい時や加速走行時には、EGRガスがエンジンの各気筒の燃焼室に導入されることを要因とする、エンジンの出力低下を回避するために、エンジンの各気筒の燃焼室へのEGRガスの導入を止める(EGRカット)。
この場合、モータMの動力を利用してポペットバルブ1を閉弁方向(閉じ側)へ動作(全閉作動)させる。あるいはモータMへの通電をカットして、リターンスプリング16の付勢力(スプリング力)によってポペットバルブ1のEGRバルブ2をバルブシート14に押し付けてバルブ全閉位置に戻す。
【0072】
次に、モータ駆動回路に与えられるDuty(%)を検知して、上記のようなバルブ全閉状態であるか否かを判定する。つまりポペットバルブ1が開き始める駆動トルク以下のDUTY値であるか否かを判定する(ステップS3)。このステップS3の判定結果がNOの場合には、ステップS3の判定処理を繰り返す。
また、ステップS3の判定結果がYESの場合には、図6の制御Dを実施する。すなわち、回転角度センサ9の周辺環境温度と相関のある第1物理量を測定するのに必要な各種センサ出力信号やタイマー回路のカウント値を取得する(センサ信号取得手段)。
具体的には、水温センサ96および吸気温センサ95から出力されたセンサ出力信号(第1物理量、検出値)が取得され、この取得したセンサ出力信号(第1物理量)をEEPROMに記録(記憶)する。
【0073】
次に、水温センサ96からの第1物理量(水温)と第2物理量(水温)との偏差が、X(例えば5deg)以内であるか否かを判定する(ステップS4)。このステップS4の判定結果がNOの場合には、バルブ全閉位置の学習を中断または中止して、ステップS1の判定処理を実施する。
また、ステップS4の判定結果がYESの場合には、吸気温センサ95からの第1物理量(吸気温)と第2物理量(吸気温)との偏差が、Y(例えば5deg)以内であるか否かを判定する(ステップS5)。このステップS5の判定結果がNOの場合には、バルブ全閉位置の学習を中断または中止して、ステップS1の判定処理を実施する。
【0074】
また、ステップS5の判定結果がYESの場合には、図8の制御ルーチンでカウントされるカウント値が、Z(例えば5分間)以内であるか否かを判定する(ステップS6)。このステップS6の判定結果がNOの場合には、バルブ全閉位置の学習を中断または中止して、ステップS1の判定処理を実施する。
また、ステップS6の判定結果がYESの場合には、図6の制御Cを実施する。すなわち、ポペットバルブ1が開き始める駆動トルク以下の第1トルク範囲内において、ポペットバルブ1が全閉開度の状態からEGRバルブ2を開き側へ動作させるDuty(%)を2種類設定し、この設定した2種類のDuty(%)をモータMへ印加する毎に、回転角度センサ9のセンサ出力電圧を取得する(第1センサ出力取得手段)。
そして、この取得した2つの異なるセンサ出力電圧(図6のα1、α2)をEEPROMに記録(記憶)する(第1記憶手段)。
【0075】
そして、EEPROMに記録された2つの異なるセンサ出力電圧(図6のα1、α2)から、ポペットバルブ1のバルブシャフト3の傾き動作中における、回転角度センサ9のセンサ出力電圧に対するトルク特性に近似した、下記の第1近似式を求める(第1近似式決定手段:ステップS7)。
[数2]
Y=F1(x)
なお、第1近似式が1次式の場合には、2つの異なるセンサ出力値から第1近似式を求め、また、第1近似式が2次式の場合には、3つの異なるセンサ出力値から第1近似(曲線)式を求める。また、第1近似式が3次式の場合には、複数(4つ以上)の異なるセンサ出力値から第1近似(曲線)式を求める。
【0076】
次に、上記の第1近似式決定手段で求めた第1近似式(Y=F1(x))および上記の第2近似式決定手段で求めた第2近似式(Y=F2(x))から、ポペットバルブ1のEGRバルブ2が開き始める時の全閉学習点、つまり第1近似式(Y=F1(x))と第2近似式(Y=F2(x))との交点を求める。
そして、図6の制御Eを実施する。すなわち、ポペットバルブ1の全閉位置学習を実施する毎に、ポペットバルブ1が開き始める時の全閉学習点を、ポペットバルブ1の全閉位置学習値としてEEPROMに更新して記録する(ステップS8)。
その後に、ポペットバルブ1の全閉位置学習制御を終了し、図7の制御ルーチンを抜ける。
【0077】
一方、図8の制御ルーチンが起動するタイミングになると、先ず、図7のステップS2が実施されたか否かを判定する(ステップS11)。このステップS11の判定結果がNOの場合には、ステップS11の判定処理を繰り返す。
また、ステップS11の判定結果がYESの場合には、タイマー回路におけるカウント値のカウントを開始する(ステップS12)。
次に、カウント値が、A(例えば5〜10分間)以上であるか否かを判定する。あるいは図7のステップS7またはステップS8が実施されたか否かを判定する(ステップS13)。このステップS13の判定結果がNOの場合には、ステップS12のカウント処理を繰り返す。
また、ステップS13の判定結果がYESの場合には、タイマー回路におけるカウント値のカウントを終了する(ステップS14)。
その後に、図8の制御ルーチンを抜ける。
【0078】
[実施例1の効果]
以上のように、本実施例の全閉位置学習装置の機能を含むECU5においては、図6図8に示したように、制御A及びBを実施した後に、タイマー回路のカウントを開始し、所定の時間以内で、且つ水温及び吸気温が所定の温度差以内であれば、制御C及びDを実施し、最後に制御Eを行う。
すなわち、図7の制御ルーチンのステップS7で求めた第1近似式および図7の制御ルーチンのステップS2で求めた第2近似式から、ポペットバルブ1のEGRバルブ2が開き始める時の全閉学習点を求めることにより、2つの第1、第2近似式からバルブ全閉位置を精度良く推測することが可能となる。
これによって、「回転角度センサ9のセンサ出力信号(センサ電圧)」と「ポペットバルブ1のバルブ全閉位置」とを対応させることができるので、EGRシステムに使用されるEGR制御弁の「バルブ全閉位置」を正確に学習することができる。
【0079】
また、第1近似式を求める直前に第1物理量(水温THW1、吸気温THA1)を取得した時刻と、第2近似式を求める直後に第2物理量(水温THW1、吸気温THA1)を取得した時刻との時間が所定の時間(例えば5分間)以内で、且つ第1物理量と第2物理量との差(Δ水温:ΔTHW、Δ吸気温:ΔTHA)が所定の温度差(例えば5deg)以内であるときのみ、ポペットバルブ1のEGRバルブ2が開き始める時の全閉学習点を求める。つまり全閉位置学習を実施することにより、構成部品、特に回転角度センサ9の温度特性によるセンサ出力値のバラツキを減少させることが可能となる。
これによって、「ポペットバルブ1のバルブ全閉位置」の学習精度を向上することができる。
【0080】
[実施例2の構成]
図9および図10は、本発明を適用した全閉位置学習装置(実施例2)を示したものである。
ここで、実施例1と同じ符号は、同一の構成または機能を示すものであって、説明を省略する。
【0081】
本実施例(図9)の制御ルーチンのステップS1及びS2は、図7の制御ルーチンのステップS3及びS7と同じ処理を実施するように構成されている。また、図9の制御ルーチンのステップS3及びS7は、図7の制御ルーチンのステップS1及びS2と同じ処理を実施するように構成されている。
また、図10の制御ルーチンのステップS11及びS13は、図8の制御ルーチンのステップS11及びS13と同じ処理を実施するように構成されている。
すなわち、図6図9および図10に示したように、制御C及びDを実施した後に、タイマー回路のカウントを開始し、所定の時間以内で、且つ水温及び吸気温が所定の温度差以内であれば、制御A及びBを実施し、最後に制御Eを行う。
以上のように、本実施例の全閉位置学習装置においては、実施例1と同様な効果を奏する。
【0082】
[実施例3の構成]
図11ないし図13は、本発明を適用した全閉位置学習装置(実施例3)を示したものである。
ここで、実施例1及び2と同じ符号は、同一の構成または機能を示すものであって、説明を省略する。
【0083】
本実施例のEGR制御弁は、電動アクチュエータ4の出力軸である出力シャフト25と、ポペットバルブ1の弁軸であるバルブシャフト3との間に、出力シャフト25の回転運動をバルブシャフト3の直線往復運動に変換する変換機構を備えている。
変換機構は、出力シャフト25と一体回転可能な平板状のプレートカム7と、このプレートカム7のカムスロット(カム溝)69内に移動可能に挿入されるフォロア71と、このフォロア71を介して、プレートカム7からモータMの動力を受けてバルブシャフト3をその軸線方向に往復駆動するピボットピン(支軸)72とを備えている。
【0084】
プレートカム7は、ポペットバルブ1が全閉位置の時に、プレートカム7の回転位置(カム角度)が全閉状態(カム全閉位置)となる。また、プレートカム7は、ポペットバルブ1が全開位置の時に、プレートカム7の回転位置(カム角度)が全開状態(カム全開位置)となる。
プレートカム7は、出力シャフト25の中径部の外周を円周方向に取り囲む円環状の入力部を有している。この入力部には、四角孔形状の嵌合孔が貫通形成されている。これにより、プレートカム7は、出力シャフト25の中径部に回り止めされた状態で固定されている。また、プレートカム7の入力部は、出力シャフト25の段差(環状段差面)と金属カラー73の環状端面との間に挟み込まれた状態で、出力ギア23に対して所定の軸方向距離分だけ分離して出力シャフト25の中径部の外周に固定されている。
【0085】
プレートカム7は、入力部の周囲を部分的に取り囲むように扇状の出力部が設けられている。この出力部には、ポペットバルブ1の動作パターン(プレートカム7の回転角度(カム角度)に対するポペットバルブ1のリフト量)に対応した湾曲形状のカムスロット69が、プレートカム7の板厚方向に貫通形成されている。
そして、プレートカム7またはこのプレートカム7と一体回転可能に連結した連動部材(出力ギア23、出力シャフト25、出力ギアレバー74等)には、全開ストッパ75に係止される全開ストッパ部76が一体的に設けられている。
【0086】
出力ギアレバー74は、合成樹脂製の出力ギア23の内部にインサート成形されている。この出力ギアレバー74には、内部に2面幅(出力シャフト25の空回りを防ぐ構造、回り止め構造)を有する嵌合孔が形成されている。これにより、出力ギア23は、出力ギアレバー74を介して、出力シャフト25の小径部に回り止めされた状態で固定されている。
全開ストッパ75は、ハウジング8のギアケース13の外壁部(電動アクチュエータ4を収容する凹部の周囲を周方向に取り囲む筒状の周壁部)の端面より凹部内に突出するように、全開ストッパ75の軸部が捩じ込まれて固定されている。また、全開ストッパ75は、プレートカム7の全開位置ストッパとしての機能だけでなく、ポペットバルブ1の全開位置(フルリフト量)を規定するバルブ全開位置ストッパとしての機能も有している。
【0087】
本実施例の全閉位置学習装置の機能を含むECU5は、図13に示したように、制御A及びBを実施した後に、タイマー回路のカウントを開始し、所定の時間以内で、且つ水温及び吸気温が所定の温度差以内であれば、制御C及びDを実施し、最後に制御Eを行うように構成されている。
また、ECU5は、図13に示したように、制御C及びDを実施した後に、タイマー回路のカウントを開始し、所定の時間以内で、且つ水温及び吸気温が所定の温度差以内であれば、制御A及びBを実施し、最後に制御Eを行うように構成されている。
以上のように、本実施例の全閉位置学習装置においては、実施例1及び2と同様な効果を奏する。
【0088】
[変形例]
本実施例では、本発明の全閉位置学習装置を、EGRシステムのEGR制御弁に組み込まれるポペットバルブ1の全閉位置学習装置に適用した例を示したが、本発明の全閉位置学習装置を、排気システムの排気絞り弁または吸気システムの吸気絞り弁に組み込まれるバルブの全閉位置学習装置に適用しても良い。
【0089】
また、バルブの全閉位置学習は、エンジンを始動する毎に実施しても良いし、エンジンの運転時、つまりEGRカット時とEGRガス導入時に実施しても良いし、また、定期的(1日の初回運転時のみ、1年に1回、定期点検時、車検時)に実施しても良い。
また、自動車等の車両の走行距離が所定の走行距離に達する毎(例えば10〜5000km毎)に実施しても良いし、また、ドライバー等の操作者の任意の設定時(例えば専用のスイッチの投入時、または既存のスイッチの長押し時、または複数のスイッチの同時押し時)に実施しても良い。
【0090】
また、吸気絞り弁または吸気制御弁としては、スロットル弁、タンブル制御弁、スワール制御弁等が考えられる。
また、排気絞り弁または排気制御弁としては、ウェイストゲート弁、スクロール切替弁、排気流量制御弁、排気圧力制御弁、排気切替弁等が考えられる。
また、EGR制御弁や排気制御弁の弁体として、ポペットバルブを採用しているが、バルブとシャフトとの間に変換機構を介することにより、バタフライバルブ、フラップバルブ、プレートバルブ、ロータリバルブ等の回転型バルブを採用しても良い。また、ダブルポペットバルブを採用しても良い。
【0091】
また、EGR制御弁の弁体を構成するバルブとして、ポペットバルブ1を採用しているが、ダブルポペットバルブを採用しても良い。また、バルブの弁軸としてバルブシャフト3の代わりに、軸線方向に延びる作動ロッドを用いても良い。
また、内燃機関(エンジン)として、多気筒ディーゼルエンジンの代わりに、多気筒ガソリンエンジンを用いても良い。また、単気筒エンジンに適用しても良い。
【符号の説明】
【0092】
M モータ(電動アクチュエータの動力源)
1 ポペットバルブ
2 EGRバルブ(弁体)
3 バルブシャフト(弁軸)
4 電動アクチュエータ
5 ECU(学習制御手段、第1、第2近似式決定手段、第1、第2記憶手段、全閉位置決定手段)
6 スコッチヨーク(変換機構)
7 プレートカム(変換機構)
9 回転角度センサ
25 出力シャフト
図1
図2
図3
図4
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