(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
先端部に下方外側に向けて円周配置された複数のノズル孔を有し、吹錬時に前記先端部から転炉内に挿入され前記ノズル孔から酸素ガスを溶銑に向けて噴射する上吹きランスに取り付けられ、
前記転炉の炉口に付着した地金を除去するために用いられる治具であって、
該治具は、前記複数のノズル孔にそれぞれ挿入される筒状部と、該筒状部の一端に各筒状部に対して傾斜して設けられるフランジ部とからなる、複数の取付け部材を有し、
前記フランジ部は、前記筒状部の一端と直接接続する上板と、該上板と所定の間隔をあけて対向する底板と、前記上板と前記底板との間の外周同士を接続する側部とからなり、
前記フランジ部がそれぞれ対応する前記筒状部と連通する中空部は、前記上板、前記底板および前記側部により区画され、該中空部と連通し、取付け状態で前記上吹きランスの外周側に位置する開口部では、前記上板と前記底板とが前記側部により接続されておらず、
前記複数のフランジ部は、上面視でリング状に配置され、
前記治具は、取付け状態で隣り合う前記フランジ部同士を拘束し、前記筒状部の抜け落ちを防止する拘束具をさらに有し、
該拘束具は、前記フランジ部の側部のうち、隣り合う前記フランジ部と対向する部分に各々設けられた小孔に挿入され、隣り合う前記フランジ部同士を直接的に拘束する複数のU字ボルトであることを特徴とする転炉炉口地金除去用治具。
【背景技術】
【0002】
図7に示すように、転炉70での吹錬は、上吹きランス80を炉口74から炉内に挿入し、この上吹きランス80から高純度の酸素ガスを転炉内の溶銑72に向けて音速以上のスピードで吹きつけ、これにより、溶銑中の不純物を取り除くとともに、溶銑の炭素を酸化反応により除去する工程である。吹錬では、高速の酸素ガスの吹きつけにより溶銑の一部は上方に吹き飛ばされ、炉口74近傍において急冷されて凝固し、炉口74に付着する。
【0003】
このように炉口74に付着した地金76(以下、本明細書において「炉口地金」という。)は、炉口を狭くして、スクラップや溶銑の挿入、さらには上吹きランスの挿入をも困難にする。よって、十数チャージに1回程度の頻度で炉口地金76を除去する必要がある。
【0004】
炉口地金除去専用のランスを用いて炉口地金を除去する方法がある。このランスは、酸素ガスを下方に噴射する上吹きランスとは異なり、ランス下部の外周面にノズル孔を配置するなどして、ランスに対して略垂直の方向に酸素を噴射するものである。転炉は通常、メインの上吹きランスと予備ランスの2本のランスを有するが、この予備ランスとして炉口地金除去専用ランスを設置する。
【0005】
しかしこの方法では、吹錬中にメインの上吹きランスが使用不能となった場合、予備ランスが吹錬に使えないため、突発でメインの上吹きランスを交換する作業が必要となる。この作業は最大で1時間程度かかり、その間操業が停止となるため、減産につながってしまう。
【0006】
そこで、予備ランスにも通常の上吹きランスを設置するとともに、この予備ランスの先端部に所定の治具を取り付けることによって、酸素ガスの向きを変更し炉口地金の除去を可能とする技術がある。この技術によれば、メインの上吹きランスが使用不能となった場合でも、治具を取り外すのみで予備ランスを吹錬に用いることができ、操業停止の必要がない。
【0007】
このような炉口地金除去用の治具(炉口地金除去用ノズル)が特許文献1に記載されている。この炉口地金除去用ノズルは、酸素ランス10の先端部外面に密接する円環状の金属板であるリング25と、これに並行で円形の金属板である底板21と、両者の間にあるスペーサ26とを含む。スロート14内を下方に通る酸素ガスは、底板21に衝突して略水平方向に向きを変え、スペーサ26の間を通って外部に噴射される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の治具は、メインの上吹きランスが使用不能となった場合でも操業停止が不要である点で優れたものである。しかしながら、本発明者は以下の点において改良の余地があるとの認識に至った。すなわち、この治具では、フックボルトをスロート14内に引っ掛けることにより、リング25、スペーサ26および底板21を支持しているのみである。このため、炉口地金除去作業中に、治具が継続的に受ける酸素ガスの圧力により、治具がずれてしまったり、ある頻度で外れて炉内に落下してしまったりしていた。治具がずれると、酸素ガスの噴出方向が変わり、意図せず転炉の耐火物を損傷するおそれもある。また、治具の脱落頻度が高いと、その分生産効率が下がる。
【0010】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、上吹きランスに安定して取り付けられ、炉口地金除去作業中に酸素ガスの圧力で上吹きランスから脱落しにくい転炉炉口地金除去用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成すべく本発明者が鋭意検討したところ、上吹きランスの先端部に傾斜して位置する複数のノズル孔のそれぞれに、筒状部と該筒状部の一端のフランジ部とからなる取付け部材を取り付け、その状態で、隣り合うフランジ部同士を拘束具により拘束することにより、安定した取付けが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明は、このような知見に基づきなされたものであり、その要旨構成は以下のとおりである。
(1)先端部に下方外側に向けて円周配置された複数のノズル孔を有し、吹錬時に前記先端部から転炉内に挿入され前記ノズル孔から酸素ガスを溶銑に向けて噴射する上吹きランスに取り付けられ、
前記転炉の炉口に付着した地金を除去するために用いられる治具であって、
該治具は、前記複数のノズル孔にそれぞれ挿入される筒状部と、該筒状部の一端に各筒状部に対して傾斜して設けられるフランジ部とからなる、複数の取付け部材を有し、
前記フランジ部は、前記筒状部の一端と直接接続する上板と、該上板と所定の間隔をあけて対向する底板と、前記上板と前記底板との間の外周同士を接続する側部とからなり、
前記フランジ部
がそれぞれ対応する前記筒状部と連通する中空部
は、前記上板、前記底板および前記側部により区画され、該中空部と連通し、取付け状態で前記上吹きランスの外周側に位置する開口部
では、前記上板と前記底板とが前記側部により接続されておらず、
前記複数のフランジ部は、上面視でリング状に配置され、
前記治具は、取付け状態で隣り合う前記フランジ部同士を拘束し、前記筒状部の抜け落ちを防止する拘束具をさらに有
し、
該拘束具は、前記フランジ部の側部のうち、隣り合う前記フランジ部と対向する部分に各々設けられた小孔に挿入され、隣り合う前記フランジ部同士を直接的に拘束する複数のU字ボルトであることを特徴とする転炉炉口地金除去用治具。
【0013】
(2)前記フランジ部は、取付け状態で水平方向に延在する上記(1)に記載の転炉炉口地金除去用治具。
【0014】
(3)前記筒状部の外周面にリング状弾性材を有する上記(1)または(2)に記載の転炉炉口地金除去用治具。
【発明の効果】
【0016】
本発明の転炉炉口地金除去用治具は、上吹きランスに安定して取り付けられるため、炉口地金除去作業中に酸素ガスの圧力で上吹きランスから脱落しにくい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の転炉炉口地金除去用治具の実施形態を説明する。
図1〜
図6を参照して、本実施形態の転炉炉口地金除去用治具100(以下、単に治具100という。)を説明する。
【0019】
まず、治具100を取り付ける上吹きランス80について、
図4(A),(B)を参照して説明する。上吹きランス80は、吹錬時に先端部82から転炉70(
図7)内に挿入される。上吹きランスの先端部82は、下方外側に向けて円周配置された5つのノズル孔84A,84B,84C,84D,84Eを有する。
【0020】
「下方外側に向けて円周配置された」の意味を詳説する。まず、
図4(A)に示すように、5つのノズル孔84A〜84Eは、先端部82を下方から見た場合に円周上に(本実施形態では等間隔に)配置されている。
図4(B)に示すように、ノズル孔84Aは、下方(すなわち上吹きランスの先端)に向かうほど、上吹きランスの中心軸から離れるように外側に向かって延在しており、ノズル孔84Aの中心軸は、上吹きランス80の中心軸に対して角度θだけ傾斜している。その他のノズル孔84B〜84Eも同様に、下方に向かうほど、上吹きランスの中心軸から離れるように外側に向かって延在しており、それぞれの中心軸は上吹きランス80の中心軸に対して角度θだけ傾斜している。つまり、5つのノズル孔84A〜84Eは、下方に向かうほど互いに離れるとともに、上吹きランス80の中心軸に直行する断面を先端部82のどの位置でとっても、
図4(A)と同様に等間隔に位置している。上吹きランス80の内部から供給される酸素ガスは、これらノズル孔84A〜84Eから下方の溶銑に向けて噴射される。
【0021】
ノズル孔の傾斜角θは特に限定されないが、12〜18度の範囲で適宜設定することができる。また、ノズル孔の形状はラバール形状でもストレート形状でもよい。ノズル孔の直径は45〜74mm程度、長さは200〜400mm程度とすることができる。なお、ノズル孔は2つ以上あれば個数は特に限定されないが、通常は4〜8個とする。なお、ノズル孔が2つの場合でも、各ノズルが既述のように延在していれば、先端部に「下方外側に向けて円周配置されている」とみなすことができる。
【0022】
次に、このような上吹きランス80に取り付けられる治具100を、
図1、
図2、
図3(A)および
図3(B)を参照して説明する。治具100は、
図1および
図2に示すように、5つの取付け部材10,20,30,40,50と、拘束具としてのU字ボルト60A,60B,60C,60D,60Eとを含む。本実施形態において、5つの取付け部材10〜50は同形であるため、代表して取付け部材10について説明する。
【0023】
図3(A)および
図3(B)に示すように、取付け部材10は、筒状部11とフランジ部12とからなる。筒状部11は、上吹きランスのノズル孔84Aに挿入されるものである。フランジ部12は、筒状部の一端11Aに、筒状部11に対して傾斜して設けられる。フランジ部12は、筒状部の一端11Aと直接接続する上板12Aと、この上板12Aと所定の間隔(10〜20mm程度)をあけて対向する底板12Bと、上板12Aおよび底板12B間の外周同士を接続する側部12Cとからなる。
図2に示すように、フランジ部12は、上面視で台形の下底を弧にした形状をしており、当該弧の部分では上板12Aと底板12Bとは接続されておらず、
図3(B)に示すように中空部13と連通した開口部14となっている。
図3(B)および後述する
図5(B)に示すように、上板12A、底板12Bおよび側部12Cにより区画される中空部13は、筒状部11の内部(中空)11Cと連通している。側部12Cのうち、フランジ部の上面視で台形の脚の位置となる部分には、小孔15が設けられている。小孔15は後述するU字ボルトを挿入するためのものである。筒状部の他端11Bの形状は特に限定されない。
【0024】
取付け部材10の材質は、SS,SUSなどとすることができる。
【0025】
筒状部11は、位置に関わらず一定の内径および外径を有するストレート形状であることが好ましい。筒状部11の外径は、該筒状部11が挿入されるノズル孔の内径(ラバール形状の場合は、最小の内径)よりも2〜4mm小さくすることが好ましい。このクリアランスが2mm未満の場合、ランス孔への挿入が困難となり、4mm超えの場合、リング状弾性材62(後述)によるシール性が悪化するためである。
【0026】
本実施形態において、
図1、
図2および
図5(A)に示すように、5つの取付け部材10〜50の各フランジ部12,22,32,42,52は、弧の部分(開口部)が外側を向くように互いに隣り合って配置される。フランジ部の形状は、本実施形態のものに限定されるものではない。しかし、本実施形態のように、酸素ガスを治具100の側方の全方位に噴射できるように、フランジ部の開口部の形状を設計することが好ましい。本実施形態では、開口部14は、72度の方向に酸素ガスを噴射可能に延在する。中空部13および開口部14の高さ、すなわち上板12Aと底板12Bとの距離は、10〜20mmとすることが好ましい。
【0027】
筒状部11の外周面には、例えば輪ゴムなどのリング状弾性材62を配置することが好ましい。リング状弾性材62の作用効果については後述する。
【0028】
次に、
図2、
図4、
図5および
図6を参照して、治具100を上吹きランス80に取り付ける方法を説明する。まず、5つの取付け部材10〜50の各筒状部11,21,31,41,51を、上吹きランスの先端部82の5つのノズル孔84A,84B,84C,84D,84Eにそれぞれ挿入する。このとき
図5(A)に示すように、各フランジ部の開口部が互いに外側を向き、上吹きランス80の外周側に位置するようにする。各筒状部の外周面にはリング状弾性部材62があるため、筒状部がノズル孔から抜け落ちることなく保持される。
【0029】
次に、
図5(A)に示すように、隣り合うフランジ部同士を5つのU字ボルト60A〜60Eにより拘束する。その後、各筒状部11,21,31,41,51をノズル孔84A〜84Eに沿って下方にスライドさせる。このとき、ノズル孔84A〜84Eが既述のように傾斜していることから、各フランジ部12,22,32,42,52は、互いに離れる方向に移動し、その一方でU字ボルト60A〜60Eにより拘束されている。その結果、各フランジ部がU字ボルトにより強固に締め付けられる。U字ボルトによる固定の後は、筒状部11,21,31,41,51がノズル孔から抜け落ちることはない。
図6は、治具100を上吹きランス80に取り付けた状態を示している。
【0030】
炉口地金の除去時には、
図8に示すように、通常操業で使用していた上吹きランスに替えて、治具100を取り付けた上吹きランス80を炉口74から炉内に挿入し、炉口地金76の高さに治具100が位置するように上吹きランス高さを調整する。
図5を参照して、上吹きランス80の内部から供給される酸素ガスは、筒状部11を通過し、底板12Bに衝突して向きを変え、開口部14から噴射する。他の取付け部材20〜50についても、酸素ガスの経路は同様である。このように酸素ガスの圧力も、各フランジ部がU字ボルトによってさらに締め付けられる方向に作用する。そのため、本実施形態の治具100は、炉口地金除去作業中に酸素ガスの圧力で上吹きランスから脱落するようなことはない。
【0031】
ここで、炉口地金除去時の条件について説明する。送酸量は、10000〜18000Nm
3/hrとすることが好ましい。10000Nm
3/hr未満の場合、炉口地金の除去効果を十分に得ることができず、18000Nm
3/hr超えの場合、酸素ガスにより炉口から剥がれた地金が大量に治具100にまで到達し、治具100の溶損のおそれがあるからである。
【0032】
酸素ガスの二次圧は、3〜7kgf/cm
2の範囲とすることが好ましい。3kgf/cm
2より低いと治具からの酸素が主集塵に吸われ炉口地金の除去効果を十分に得ることができず、7kgf/cm
2より高いと酸素ガスにより炉口から剥がれた地金が大量に治具100にまで到達し、治具100の溶損のおそれがあるからである。
【0033】
ここで、リング状弾性材62は、ノズル孔の内壁と筒状部の外周との間をシールする作用も有する。つまり、リング状弾性材62により酸素ガスを効率的に開口部14から噴射させることができる。
【0034】
図3(B)を参照して、筒状部11に対するフランジ部12の傾斜角は特に限定されない。しかし、本実施形態のように、治具100を上吹きランス80に取り付けた状態で、フランジ部12が水平方向に延在するように設定することが好ましい。これにより、
図8に示すように、酸素ガスを上吹きランス80の中心軸に略垂直な方向に噴射することができ、効率的に炉口地金の除去をすることができる。
【0035】
炉口地金の除去後は、治具100を取り付けた上吹きランス80を転炉から出して、通常操業用の上吹きランスを再度炉内に挿入する。その後、治具100の点検を行う。具体的には、U字ボルト60A〜60Eが変形していないか、取付け部材10〜50の溶損がないか、地金の付着がないかをチェックし、問題がなければ次回の炉口地金除去時に用いることができる。ただし、使用後には毎回、治具を軽く叩くことにより、治具100に付着した地金を除去することが好ましい。特に、酸素ガスと接触する箇所に地金があると、地金が酸素ガスにより高温化して、取付け部材やU字ボルトの溶損の原因となるからである。
【0036】
治具100を上吹きランス80から取り外す方法を説明する。まず、取付け部材10〜50をノズル孔84A〜84Eに沿って上方に押し上げる。このとき、フランジ部12を下方からハンマーで軽く叩いてもよい。このとき、各フランジ部12,22,32,42,52は、互いに近づく方向に移動するため、U字ボルト60A〜60Eが緩む。そこで、U字ボルト60A〜60Eを外し、最後に取付け部材10〜50の筒状部をノズル孔84A〜84Eから引き抜く。このように、治具100は特殊な工具を用いることなく容易に上吹きランス80から取り外すことができる。
【実施例】
【0037】
(本発明例)
図1〜
図6で説明した上吹きランスおよび転炉炉口地金除去用治具を用意した。この上吹きランスに治具を取り付けて、予備用ランスとした。7トン/chの転炉の炉口に付着した地金を、10チャージに1回の頻度で上記予備用ランスを用いて除去した。上吹きランスおよび治具の緒元は、以下のとおりとした。
【0038】
<上吹きランス>
上吹きランスの外径:312mm
ノズル孔の形状:ラバール形状
ノズル孔の内径:上端47mm、最小47mm、下端52mm
ノズル孔の傾斜角θ:16度
ノズル孔の長さ:180mm
【0039】
<治具>
筒状部の長さ:200mm
筒状部の外径:45mm
筒状部の内径:40mm
フランジ部上面視寸法:上底85mm、弧の長さ190mm、両脚:80mm
フランジ部の中空部および開口部の高さ:13mm
筒状部に対するフランジ部の傾斜角:72度
輪ゴム:太さ1mm、筒状部の中間位置に配置
【0040】
炉口地金除去時の条件は以下のとおりとした。
送酸量:16000Nm
3/hr
酸素ガス二次圧:5kgf/cm
2
【0041】
(比較例)
本発明例の治具に替えて、特許文献1に記載の治具を取り付けた以外は、本発明例と同様の方法で、炉口地金の除去を行った。治具の緒元は、以下のとおりとした。
【0042】
上吹きランスの先端に密着させる金属板リング:内径303mm、外径315mm
底板:外径315mm、円周上に5箇所穴を形成
スペーサ:高さ25mm
フックボルト:5本を底板の穴から通し、上吹きランスに治具を固定
【0043】
炉口地金除去時の条件は、本発明例のものから以下のように変更した。これは、治具の形状に適した条件として設定したものである。すなわち、比較例においては、本発明例と同等の酸素ガス二次圧を得るために、本発明例よりも送酸量を多くする必要があった。
送酸量:25000Nm
3/hr
酸素ガス二次圧:5kgf/cm
2
【0044】
<評価1:治具の使用寿命>
本発明例では、治具を100回使った後でも、治具が上吹きランスからずれたり脱落したりすることはなく、毎回正常な炉口地金除去ができた。しかし、比較例では、15回目の炉口地金除去時に治具が上吹きランスから脱落してしまい、治具の交換を余儀なくされた。
【0045】
<評価2:必要酸素量>
1回の炉口地金除去に要した時間は、本発明例において13分、比較例において11分であった。その結果、1回の炉口地金除去に必要であった酸素量は、比較例では4400Nm
3/回であったのに対し、本発明例では、3500Nm
3/回であり、酸素の使用効率が20%程度向上した。つまり、本発明例では、比較例よりも少ない酸素量で同等の除去効果を得ることができた。これは、治具の形状が変化したことにより、炉口への酸素到達効率が上がったためと考えられる。