(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
[A]重合体が、ラクトン構造を有する構造単位、環状カーボネート構造を有する構造単位及びスルトン構造を有する構造単位からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位(IV)をさらに含む請求項1に記載のフォトレジスト組成物。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<フォトレジスト組成物>
当該フォトレジスト組成物は、[A]重合体及び[B]酸発生剤を含有する。さらに、好適成分として[C]酸拡散制御剤を含有する。なお、本発明の効果を損なわない限り、さらにその他の任意成分を含有してもよい。以下、各成分について詳述する。
【0029】
<[A]重合体>
[A]重合体は、酸発生基を有する。ここで、酸発生基とは、パターン形成工程における露光により酸を発生する基をいう。[A]重合体自体が酸発生基を有することで、露光により発生する酸は重合体鎖中に均一に分布することができると共に、露光部から未露光部への酸の拡散が制御される。それにより、当該フォトレジスト組成物は、露光部において酸が均一かつ十分に作用することができるため、MEEF性能、DOF及びLWRに優れる。
【0030】
[A]重合体は、酸発生基を有する構造単位として、上記式(1)で表される構造単位(I)又は上記式(2)で表される構造単位(II)を含むことが好ましい。さらに構造単位(III)、構造単位(IV)を含むことが好ましく、本発明の効果を損なわない限り、構造単位(I)〜構造単位(IV)以外の他の構造単位を有していてもよい。以下、各構造単位を詳述する。
【0031】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、上記式(1)で表される。
【0032】
上記式(1)中、R
p1は、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基又は炭素数1〜3のアルキル基である。R
p2は、2価の有機基である。複数のRfは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜3のフッ素化アルキル基である。nは0〜6の整数である。M
+は、オニウムカチオンである。
【0033】
上記R
p1で表される炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。なかでも、メチル基が好ましい。R
p1としては、水素原子及びメチル基が好ましい。
【0034】
上記R
p2で表される2価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20の炭化水素基、−R
p21−R
p22−で表される基等が挙げられる。R
p21は、炭素数1〜20の炭化水素基であり、R
p22は、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NH−、−NHCO−、−CONH−、又は−NHCOO−である。
【0035】
上記R
p2で表される炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えば、
メチレン基、エタンジイル基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、デカンジイル基等の鎖状炭化水素基;
シクロペンタン、シクロヘキサン、ジシクロペンタン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、アダマンタン等の脂環構造から2個の水素原子を除いた脂環式基;
フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
但し、これらの炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は、フッ素原子等で置換されていてもよい。
これらのうち、鎖状炭化水素基及び脂環式基が好ましく、鎖状炭化水素基がより好ましい。なかでも、メチレン基、エタンジイル基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、及びペンタンジイル基がさらに好ましく、メチレン基及びエタンジイル基が特に好ましい。
【0036】
上記R
p21で表される炭素数1〜20の炭化水素基としては、上記R
p2で表される炭素数1〜20の炭化水素基として挙げた基と同様の基を挙げることができる。
【0037】
上記−R
p21−R
p22−で表される基としては、例えば、−CH
2−O−、−CH
2−CO−、−CH
2−COO−、−CH
2−OCO−、−CH
2−NH−、−CH
2−NHCO−、−CH
2−CONH−、−CH
2−NHCOO−、−CH
2−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−CO−、−CH
2−CH
2−COO−、−CH
2−CH
2−OCO−、−CH
2−CH
2−NH−、−CH
2−CH
2−NHCO−、−CH
2−CH
2−CONH−、−CH
2−CH
2−NHCOO−、−CH
2−CH
2−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−CH
2−COO−、−CH
2−CH
2−CH
2−OCO−、−CH
2−CH
2−CH
2−NH−、−CH
2−CH
2−CH
2−NHCO−、−CH
2−CH
2−CH
2−CONH−、−CH
2−CH
2−CH
2−NHCOO−、−CH
2−CH
2−CHF−NHCOO−、−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−CO−、−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−COO−、−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−OCO−、−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−NH−、−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−NHCO−、−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−CONH−、−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−NHCOO−、−CH
2−CH
2−CH
2−CHF−NHCOO−、−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−CONH−、−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−NHCOO−、−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−CHF−NHCOO−等が挙げられる。
【0038】
これらのうち、−CH
2−NHCOO−、−CH
2−CH
2−NHCOO−及び−CH
2−CH
2−CH
2−NHCOO−が好ましく、−CH
2−CH
2−NHCOO−がより好ましい。なお、上記−R
p21−R
p22−で表される基は、R
p21が、上記式(1)中のエステル基と結合していることが好ましい。
【0039】
上記Rfで表される炭素数1〜3のフッ素化アルキル基としては、例えば、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、1−フルオロエチル基、1,2−ジフルオロエチル基、1,1,2,2−テトラフルオロエチル基等が挙げられる。
上記Rfとしては、水素原子及びフッ素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0040】
上記nとしては、0〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1及び2がさらに好ましい。
【0041】
上記M
+で表されるオニウムカチオンとしては、例えば、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン等が挙げられ、上記式(3)で表されるスルホニウムカチオン及び下記式(7)で表されるヨードニウムカチオンからなる群より選択される少なくとも一種のオニウムカチオンが好ましい。
【0042】
上記式(3)中、R
p7〜R
p9は、それぞれ独立して、炭素数1〜30の炭化水素基である。但し、R
p7及びR
p8は、互いに結合して、それらが結合している硫黄原子と共に環状構造を形成していてもよい。上記炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
【0043】
上記式(3)中、R
p7〜R
p9で表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基等の1価の鎖状炭化水素基;
シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基等の1価の脂環式基;
上記脂環構造を一部に有する1価の炭化水素基;
フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基等の1価の芳香族炭化水素基;
芳香環を一部に有する1価の炭化水素基等が挙げられる。これらのうち、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基等の1価の芳香族炭化水素基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0044】
上記炭化水素基が有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン化炭化水素基、アルキル基、アルコキシル基、アミノ基、チオール基、有機スルホニル基(RSO
2−)等が挙げられる。上記Rは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基である。これらのうち、水酸基、アルキル基、アルコキシル基、及びシクロヘキシルスルホニル基が好ましく、シクロヘキシルスルホニル基がより好ましい。
【0045】
上記式(3)で表されるスルホニウムカチオンのうち、上記式(4)で表されるスルホニウムカチオンがより好ましい。
【0046】
式(4)中、R
p10〜R
p12は、それぞれ独立してヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、−S−R
x基又は複数のヘテロ原子を有する基である。R
xは、アルキル基又はアリール基である。但し、上記アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基及びアリール基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。aは、1〜5の整数である。b及びcは、それぞれ独立して、0〜5の整数である。
【0047】
上記R
p10〜R
p12としては、少なくともひとつが上記式(4−1)及び上記式(4−2)で表される基が好ましい。
【0048】
上記式(3)で表されるスルホニウムカチオンとしては、例えば、下記式(i−1)〜(i−23)で表されるカチオン等が挙げられる。
【0051】
これらのうち、(i−1)及び(i−23)で表されるスルホニウムカチオンが好ましい。
【0053】
上記式(7)中、R
p14は、それぞれ独立して、炭素数1〜30の炭化水素基又は核原子数4〜30のヘテロ環状有機基である。但し、2つのR
p14が互いに結合して、ヨウ素原子と共に環状構造を形成していてもよい。また、上記炭化水素基及びヘテロ環状有機基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
【0054】
上記式(7)中、R
p14で表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、上記式(3)中のR
p7〜R
p9で表される炭素数1〜30の炭化水素基として挙げた基と同様の基を挙げることができる。
【0055】
上記R
p14としては、これらのうち、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基等の1価の芳香族炭化水素基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0056】
上記炭化水素基及びヘテロ環状有機基が有してもよい置換基としては、上記式(3)中のR
p7〜R
p9で表される炭化水素基が有してもよい置換基として挙げた基と同様の基を挙げることができる。なかでも、ハロゲン原子、ニトロ基、ハロゲン化炭化水素基、アルキル基、及びアルコキシル基が好ましい。
【0057】
M
+で表される1価のオニウムカチオンとしては、上記式(3)で表されるスルホニウムカチオンが好ましく、上記式(4)で表されるスルホニウムカチオンがより好ましく、これらのうち上記式(i−1)及び(i−23)で表されるスルホニウムカチオンがさらに好ましい。
【0058】
なお、上記式(1)中のM
+で表される1価のオニウムカチオンは、例えば、Advances in Polymer Science,Vol.62,p.1−48(1984)に記載されている一般的な方法に準じて製造することができる。
【0059】
上記式(1)で表される構造単位(I)としては、例えば、下記式(1−1)〜(1−8)で表される構造単位等が挙げられる。
【0061】
上記式中、R
p1は、上記式(1)と同義である。
【0062】
これらのうち、上記式(1−1)〜(1−4)で表される構造単位が好ましい。
【0063】
上記式(1)で表される構造単位を与える単量体化合物としては、例えば、下記式(1’)で表される化合物が挙げられる。
【0065】
上記式(1’)中、R
p2、Rf、n、及びM
+は上記式(1)と同義である。
【0066】
上記式(1’)で表される化合物は、公知の方法で合成することができる。
【0067】
上記式(1’)で表される化合物としては、例えば、下記式(1’−1)〜(1’−8)で表される化合物等が挙げられる。
【0069】
[A]重合体において、構造単位(I)の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、1モル%以上50モル%以下が好ましく、1モル%以上30モル%以下がより好ましく、1モル%以上10モル%以下がさらに好ましい。構造単位(I)の含有割合が50モル%を超えると、パターン形成性が低下するおそれがある。また1モル%未満となると、露光部の現像液不溶性が不十分となり、良好なパターンが得られないおそれがある。なお、[A]重合体は構造単位(I)を1種、又は2種以上有してもよい。
【0070】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、上記式(2)で表される。
【0071】
上記式(2)中、R
p3は、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基又は炭素数1〜3のアルキル基である。R
p4、R
p5及びR
p6は、それぞれ独立して炭素数1〜10の有機基である。mは、0〜3の整数である。mが2又は3の場合、複数のR
p4は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Aは、単結合、炭素数1〜10のアルカンジイル基、炭素数2〜10のアルキレンオキシ基又は炭素数6〜10のアリーレン基である。
X
−は、スルホネートアニオン、カルボキシレートアニオン又はアミドアニオンである。
【0072】
上記式(2)中、R
p3で表される炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。なかでも、メチル基が好ましい。R
p3としては、水素原子及びメチル基が好ましい。
【0073】
上記Aで表される炭素数1〜10のアルカンジイル基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,2−プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基等が挙げられる。
【0074】
上記Aで表される炭素数2〜10のアルキレンオキシ基としては、例えば、エチレンオキシ基、1,3−プロピレンオキシ基、1,2−プロピレンオキシ基、テトラメチレンオキシ基、ペンタメチレンオキシ基、ヘキサメチレンオキシ基、ヘプタメチレンオキシ基、オクタメチレンオキシ基、ノナメチレンオキシ基、デカメチレンオキシ基、1−メチル−1,3−プロピレンオキシ基、2−メチル−1,3−プロピレンオキシ基、2−メチル−1,2−プロピレンオキシ基、1−メチル−1,4−ブチレンオキシ基、2−メチル−1,4−ブチレンオキシ基等が挙げられる。
【0075】
上記Aで表される炭素数6〜10のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基等が挙げられる。
【0076】
これらのうち、化合物としての安定性に優れるという観点から、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基等のアルキレンオキシ基が好ましい。
【0077】
上記R
p4、R
p5及びR
p6表される炭素数1〜10の1価の有機基としては、例えば、炭素数1〜10のアルキル基、アルコキシ基、アリール基等が挙げられる。
【0078】
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、トリフルオロメチル基が挙げられる。
【0079】
上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基等が挙げられる。
【0080】
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0081】
上記1価の有機基の中で、R
p4としては、アルコキシ基が好ましく、なかでもメトキシ基がより好ましい。R
p5及びR
p6としては、アリール基が好ましく、フェニル基及びナフチル基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
【0082】
mとしては、0及び1が好ましく、0がより好ましい。
【0083】
上記X
−としては、スルホネートアニオン及びカルボキシレートアニオンが好ましく、スルホネートアニオンがより好ましい。なかでも、上記式(5)で表されるスルホネートアニオンがさらに好ましい。
【0084】
上記式(5)中、R
p13は、フッ素原子を有する1価の有機基である。
【0085】
上記R
p13で表されるフッ素原子を有する1価の有機基における1価の有機基としては、例えば、炭素数1〜10の鎖状アルキル基、炭素数6〜20の脂環式骨格を有する炭化水素基等が挙げられる。また、上記鎖状アルキル基及び脂環式骨格を有する炭化水素基の炭素−炭素結合間に−O−、−S−、−C(O)O−、又は−C(O)N−を有していてもよい。上記フッ素原子を有する1価の有機基が有する水素原子の一部又は全部は、アルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基、酸化シクロアルキル基、ハロゲン化シクロアルキル基等で置換されていてもよい。
【0086】
上記R
p13で表されるフッ素原子を有する炭素数1〜10の鎖状アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、ヘプタフルオロブチル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロヘキシル基、ノナフルオロブチル基、パーフルオロイソペンチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロ(トリメチル)ヘキシル基等が挙げられる。これらのうち、ノナフルオロブチル基が好ましい。
【0087】
上記R
p13で表されるフッ素原子を有する炭素数6〜20の脂環式骨格を有する炭化水素基としては、例えば、下記式で表される基が挙げられる。
【0089】
上記R
p13で表されるフッ素原子を有する上記鎖状アルキル基及び脂環式骨格を有する炭化水素基の炭素−炭素結合間に−O−、−S−、−C(O)O−、又は−C(O)N−を有する基としては、例えば、下記式で表される基が挙げられる。
【0091】
上記式(5)で表されるスルホネートアニオンとしては、下記式(5−1)〜(5−17)で表されるスルホネートアニオン等が挙げられる。
【0094】
これらのうち、上記式(5−1)で表されるスルホネートアニオンが好ましい。
【0095】
上記式(2)で表される構造単位(II)としては、下記式(2−1)〜(2−18)で表される構造単位等が挙げられる。
【0098】
上記式中、R
p3は、上記式(2)と同義である。
【0099】
これらのうち、上記式(2−3)、(2−10)、(2−11)及び(2−12)で表される構造単位が好ましい。
【0100】
上記式(2)で表される構造単位を与える単量体化合物としては、下記式(2’)で表される化合物等が挙げられる。
【0102】
上記式(2’)中、A、R
p4、R
p5、R
p6、m及びX
−は上記式(2)と同義である。
【0103】
上記式(2’)で表される化合物としては、例えば、下記式(2’−1)〜(2’−18)であらわされる化合物等が挙げられる。
【0106】
[A]重合体において、構造単位(II)の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、1モル%以上50モル%以下が好ましく、1モル%以上30モル%以下がより好ましく、1モル%以上10モル%以下がさらに好ましい。構造単位(II)の含有割合が50モル%を超えると、パターン形成性が低下するおそれがある。また1モル%未満となると、露光部の現像液不溶性が不十分となり、良好なパターンが得られないおそれがある。なお、[A]重合体は構造単位(II)を1種、又は2種以上有してもよい。
【0107】
[構造単位(III)]
[A]重合体は、上記式(6)で表される構造単位(III)をさらに含むことが好ましい。上記式(6)で表される構造単位(III)は、エステル基に結合する炭素原子が3級炭素であり酸の作用により解離し易い酸解離性基を有する構造単位である。
【0108】
式(6)中、R
1は、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基又は炭素数1〜3のアルキル基である。R
2〜R
4は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式基である。但し、R
3及びR
4は、互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の脂環式基を形成してもよい。
【0109】
上記R
2〜R
4で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0110】
上記R
2〜R
4で表される炭素数4〜20の脂環式基、又はR
3とR
4とが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に形成してもよい炭素数4〜20の脂環式基としては、アダマンタン骨格、ノルボルナン骨格等の有橋式骨格を有する多環の脂環式基;シクロペンタン、シクロヘキサン等のシクロアルカン骨格を有する単環の脂環式基が挙げられる。これらのうち、環を構成する炭素数が10以下の脂環式基が好ましい。また、これらの基は、例えば炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の1種以上で置換されていてもよい。
【0111】
構造単位(III)としては、下記式で示される構造単位等を挙げることができる。
【0113】
上記式中、R
1は、上記式(6)と同義である。R
2は炭素数1〜4のアルキル基である。mは1〜6の整数である。
【0114】
これらのうち、下記式(6−1)〜(6−18)で表される構造単位が好ましく、(6−3)がより好ましい。
【0116】
上記式中、R
1は上記式(6)と同義である。
【0117】
[A]重合体において、構造単位(III)の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%以上80モル%以下が好ましく、20モル%以上60モル%以下がより好ましい。構造単位(III)の含有割合が80モル%を超えると、MEEF性能、DOF及びLWRが不十分となるおそれがある。また10モル%未満となると、良好なパターンが得られないおそれがある。なお、[A]重合体は構造単位(III)を1種、又は2種以上有してもよい。
【0118】
構造単位(III)を与える単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.2]オクタ−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカ−7−イルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[3.3.1.1
3,7]デカ−1−イルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[3.3.1.1
3,7]デカ−2−イルエステル等が挙げられる。
【0119】
[構造単位(IV)]
[A]重合体は、上記以外の他の構造単位として、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を有する構造単位(IV)を有することが好ましい。[A]重合体が、構造単位(IV)を有することで、当該フォトレジスト組成物の基板等に対する密着性が向上する。
【0120】
構造単位(IV)としては、例えば、下記式で示される構造単位等が挙げられる。
【0122】
上記式中、R
5は水素原子又はメチル基である。R
6は水素原子又はメチル基である。R
7及びR
8は、それぞれ独立して水素原子又はメトキシ基である。Z
1は単結合、メチレン基、エステル基又はこれらを組み合わせてなる基である。Z
2はメチレン基又は酸素原子である。b、d及びeは0又は1である。
【0123】
構造単位(IV)としては、具体的には、下記式で表される構造単位が好ましい。
【0125】
上記式中、R
5は水素原子又はメチル基である。
【0126】
[A]重合体において、構造単位(IV)の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%以上70モル%以下が好ましく、10モル%以上60モル%以下がより好ましい。構造単位(IV)の含有割合をこのような含有率とすることによって、当該フォトレジスト組成物の基板等への密着性を向上させることができる。一方、構造単位(IV)の含有割合が70モル%を超えると、MEEF性能、DOF及びLWRが不十分となるおそれがある。
【0127】
構造単位(IV)を与える好ましい単量体としては、例えば国際公開2007/116664号パンフレットに記載の単量体が挙げられる。
【0128】
[構造単位(V)]
[A]重合体は、下記式で示される極性基を含む構造単位(V)をさらに有することができる。ここでいう「極性基」としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、ケト基、スルホンアミド基、アミノ基、アミド基、シアノ基等が挙げられる。
【0129】
構造単位(V)としては、例えば、下記式で表される構造単位が挙げられる。
【0131】
上記式中、R
9は、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基である。
【0132】
[A]重合体において、構造単位(V)の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%以上80モル以下が好ましく、5モル%以上40モル%以下がより好ましい。なお、[A]重合体は構造単位(V)を1種又は2種以上有してもよい。
【0133】
[構造単位(VI)]
[A]重合体は、他の構造単位として、芳香族化合物に由来する他の構造単位(VI)を含んでいてもよい。構造単位(VI)としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0135】
上記式中、R
10aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
上記式(p−1)及び上記式(p−2)中、R
p1は、1価の酸解離性基であり、R
p2は、置換されてもよい1価の炭化水素基である。kaは1〜3の整数であり、kbは0〜4の整数であり、ka+kb≦5である。但し、kaが2〜3の場合、R
p1は相互に独立して上記定義を満たし、kbが2〜4の場合、R
p2は相互に独立して上記定義を満たす。R
10bは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基である。
【0136】
上記式(p−1)及び上記式(p−2)中において、R
p1の1価の酸解離性基としては、例えば、1−分岐アルキル基、トリオルガノシリル基、トリオルガノゲルミル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、1価の複素環基、アルコキシアルキル基、置換されてもよいベンジル基等を挙げることができる。R
p1としては、これらの中でも、tert−ブチル基、ベンジル基、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−フェノキシエチル基、1−アダマンタンオキシメチル基、トリメチルシリル基、tert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、テトラヒドロチオピラニル基等が好ましい。
【0137】
上記式(p−1)及び上記式(p−2)中のベンゼン環において、R
p1の結合位置は特に限定しないが、4−位であるのが好ましい。また、ベンゼン環がR
p1を複数有する場合、それらR
p1の結合位置の組合せは任意である。R
p2における1価の炭化水素基としては、例えば、1価の脂肪族炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基、1価の芳香族炭化水素基が挙げられる。1価の脂肪族炭化水素基としては、例えば炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基が挙げられる。1価の脂環式炭化水素としては、例えば炭素数3〜20のシクロアルキル基が挙げられる。1価の芳香族炭化水素基としては、例えば炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。R
p2における1価の炭化水素基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン化炭化水素基、アルキル基、アルコキシル基、アミノ基、チオール基、有機スルホニル基(RSO
2−)等が挙げられる。
【0138】
kaは1〜3の整数であり、好ましくは1又は2の整数である。kbは0〜4の整数であり、好ましくは0〜3の整数であり、より好ましくは0又は1である。
【0139】
上記構造単位(VI)として特に好ましい具体的としては、4−ヒドロキシスチレン、4−tert−ブトキシスチレン、4−(2−エチル−2−プロポキシ)スチレン、4−(1−エトキシ)スチレン、tert−ブトキシカルボニルスチレン、tert−ブトキシカルボニルメチレンスチレン等におけるエチレン性不飽和結合が開裂してなる構造単位を挙げることができる。
【0140】
上記芳香族化合物に由来する構造単位(VI)を生じさせる好ましい単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メトキシスチレン、3−メトキシスチレン、4−メトキシスチレン、4−(2−t−ブトキシカルボニルエチルオキシ)スチレン2−ヒドロキシスチレン、3−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシスチレン、2−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、3−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、4−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、2−メチル−3−ヒドロキシスチレン、4−メチル−3−ヒドロキシスチレン、5−メチル−3−ヒドロキシスチレン、2−メチル−4−ヒドロキシスチレン、3−メチル−4−ヒドロキシスチレン、3,4−ジヒドロキシスチレン、2,4,6−トリヒドロキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン、4−t−ブトキシ−α−メチルスチレン、4−(2−エチル−2−プロポキシ)スチレン、4−(2−エチル−2−プロポキシ)−α−メチルスチレン、4−(1−エトキシエトキシ)スチレン、4−(1−エトキシエトキシ)−α−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、アセナフチレン、5−ヒドロキシアセナフチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、2−ヒドロキシ−6−ビニルナフタレン、1−ナフチル(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、1−ナフチルメチル(メタ)アクリレート、1−アントリル(メタ)アクリレート、2−アントリル(メタ)アクリレート、9−アントリル(メタ)アクリレート、9−アントリルメチル(メタ)アクリレート、1−ビニルピレン等が挙げられる。
【0141】
[A]重合体において、構造単位(VI)の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%以上50モル%以下が好ましく、10モル%以上30モル%以下がより好ましい。なお、[A]重合体は構造単位(VI)を1種又は2種以上有してもよい。
【0142】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、ラジカル重合等の常法に従って合成できる。例えば、
単量体及びラジカル開始剤を含有する溶液を、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;
単量体を含有する溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法;
各々の単量体を含有する複数種の溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法等の方法で合成することができる。
【0143】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、1,000以上500,000以下が好ましく、2,000以上400,000以下がより好ましく、3,000以上300,000以下が特に好ましい。なお、[A]重合体のMwが1,000未満であると、レジストとしたときの耐熱性が低下する傾向がある。一方、[A]重合体のMwが500,000を超えると、レジストとしたときの現像性が低下する傾向がある。
【0144】
また、[A]重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常、1以上5以下であり、1以上3以下が好ましく、1以上2以下がより好ましい。Mw/Mnをこのような範囲とすることで、フォトレジスト膜が解像性能に優れたものとなる。
【0145】
本明細書のMw及びMnは、GPCカラム(東ソー社、G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0mL/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするGPCにより測定した値をいう。
【0146】
<[B]酸発生剤>
[B]酸発生剤は、ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造及び脂環構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を有する。当該フォトレジスト組成物は、このような嵩高い構造を有する[B]酸発生剤を含有することで、酸の拡散長をより短くすることができるため、感度、解像性といった基本特性だけではなく、MEEF性能、DOF及びLWRをも十分に満足する。
【0147】
[B]酸発生剤は、下記式(8)で表される構造であることが好ましい。
【化26】
【0148】
上記式(8)中、R
11は、ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造又は脂環構造を含む1価の有機基である。R
12は、フッ素化メチレン基又は炭素数2〜10のフッ素化アルキレン基である。但し、SO
3−に直接結合する上記フッ素化アルキレン基の炭素原子はフッ素原子を少なくとも1つ有する。X
+は、オニウムカチオンである。
【0149】
上記R
11で表されるラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造又は脂環構造を含む1価の有機基における脂環構造としては、例えば、
シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロデセン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、シクロデカジエン等の単環の脂環式基;
ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン、トリシクロ[3.3.1.1
3,7]デカン、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカン、ノルボルナン、アダマンタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプテン、ビシクロ[2.2.2]オクテン、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デセン、トリシクロ[3.3.1.1
3,7]デセン、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデセン等の多環の脂環式基等が挙げられる。
【0150】
上記R
11が有するラクトン構造、スルトン構造又は脂環構造としては、例えば、下記式で表す構造等が挙げられる。
【0152】
これらのうち、ノルボルナン、アダマンタン、ノルボルナンラクトン環、ノルボルナンスルトン環が好ましい。[B]酸発生剤のアニオン部分が、嵩高いこれらの基を有することで、酸の拡散をさらに抑制することができる。その結果、当該フォトレジスト組成物は、MEEF、DOF及びLWRにより優れるレジストパターンの形成が可能となる。
【0153】
上記R
11が表すラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造又は脂環構造を含む1価の有機基は、上記ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造又は脂環構造を1種又は2種以上含むことができる。また、上記R
11が表すラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造又は脂環構造を含む1価の有機基としては、上記ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造又は脂環構造のみからなる基、上記ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造又は脂環構造と、炭素数1〜10の鎖状炭化水素基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、イミノ基及びアミド基からなる群より選択される1種以上の基とを組み合わせてなる基等が挙げられる。
【0154】
上記R
12が表すフッ素化メチレン基及び炭素数2〜10のフッ素化アルキレン基としては、下記式(9)で表される基が好ましい。
【0156】
上記式(9)中、kは1〜10の整数である。R
f1及びR
f2はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のフッ素化アルキル基である。但し、kが2以上の場合、複数のR
f1及びR
f2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、SO
3−に直接結合する炭素原子が有するR
f1又はR
f2はフッ素原子である。*はSO
3−と結合する部位である。
【0157】
上記R
f1及びR
f2で表される炭素数1〜4のフッ素化アルキル基としては、例えばフッ素化メチル基、フッ素化エチル基、フッ素化n−プロピル基、フッ素化i−プロピル基、フッ素化n−ブチル基、フッ素化t−ブチル基等が挙げられる。
【0158】
上記kは、2〜6の整数であることが好ましい。
【0159】
上記R
f1及びR
f2としては、水素原子及びフッ素原子が好ましい。
【0160】
上記式(8)におけるR
11−R
12−SO
3−で表されるアニオンとしては、例えば下記式(8−1)〜(8−24)で表されるアニオン等が挙げられる。
【0162】
これらのうち、(8−5)、(8−6)及び(8−16)が好ましい。
【0163】
上記式(8)中、X
+で表されるオニウムカチオンとしては、例えばスルホニウムカチオン、チオフェニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、ピリジニウムカチオン等が挙げられる。これらのうち、スルホニウムカチオン及びチオフェニウムカチオンが好ましく、下記式(10)で表されるカチオンがより好ましい。[B]酸発生体のオニウムカチオンを下記式(10)で表される特定構造とすることで、発生する酸の拡散をより抑制することができる。その結果、当該フォトレジスト組成物は、MEEF、DOF及びLWRにより優れるレジストパターンの形成が可能となる。
【0165】
上記式(10)中、R
13〜R
15は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、−S−R
16基又はヘテロ原子を2つ以上有する基である。R
16は、アルキル基又はアリール基である。但し、上記アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基及びアリール基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
【0166】
上記R
13〜R
15で表される炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基等が挙げられる。
【0167】
上記R
13〜R
15で表される炭素数3〜12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0168】
上記R
13〜R
15で表される炭素数1〜10のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基等が挙げられる。
【0169】
上記R
16基で表されるアルキル基としては、例えば、上記R
13〜R
15で表される炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基として例示した基と同様の基、上記R
13〜R
15で表される炭素数3〜12のシクロアルキル基として例示した基と同様の基等が挙げられる。
【0170】
上記R
16基で表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0171】
上記へテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0172】
これらの[B]酸発生剤は、2種以上を併用してもよい。[B]酸発生剤の使用量としては、当該フォトレジスト組成物により形成されるレジスト塗膜の感度及び現像性を確保する観点から、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部以上25質量部以下が好ましく、1質量部以上20質量部以下がより好ましい。
【0173】
<[C]酸拡散制御剤>
当該フォトレジスト組成物は、さらに[C]酸拡散制御剤を含有することが好ましい。[C]酸拡散制御剤は、露光により[A]重合体及び[B]酸発生剤から生じる酸のレジスト塗膜中における拡散現象を制御し、未露光部における好ましくない化学反応を抑制する作用を有するものである。従って、当該フォトレジスト組成物は[A]重合体及び[B]酸発生剤に加えて、[C]酸拡散制御剤を含有することで、より酸の拡散長を短くでき酸の拡散をさらに抑制できる。結果として当該フォトレジスト組成物はMEEF、DOF及びLWRに優れるレジストパターンの形成が可能となる。なお、酸拡散制御剤の当該組成物における含有形態としては、遊離の化合物の形態でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0174】
[C]酸拡散制御剤としては、例えば、アミン化合物、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物、光崩壊性塩基等が挙げられる。
【0175】
アミン化合物としては、例えば、モノ(シクロ)アルキルアミン類;ジ(シクロ)アルキルアミン類;トリ(シクロ)アルキルアミン類;置換アルキルアニリン又はその誘導体;エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリジノン、2−キノキサリノール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’’N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン等が挙げられる。
【0176】
アミド基含有化合物としては、例えば、N−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−アセチル−1−アダマンチルアミン、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)等が挙げられる。
【0177】
ウレア化合物としては、例えば、尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリ−n−ブチルチオウレア等が挙げられる。これらのうち、N−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物が好ましい。
【0178】
含窒素複素環化合物としては、例えば、イミダゾール類;ピリジン類;ピペラジン類;ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペリジンエタノール、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、モルホリン、4−メチルモルホリン、1−(4−モルホリニル)エタノール、4−アセチルモルホリン、3−(N−モルホリノ)−1,2−プロパンジオール、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0179】
光崩壊性塩基としては、例えば、下記式(11)で表される化合物等が挙げられる。
【0181】
上記式(11)中、R
17〜R
19は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はヒドロキシル基である。Y
−は、OH
−、R
20COO
−又はR
20−SO
3−である。R
20は、アルキル基、アリール基又はアラルキル基である。但し、上記アルキル基、アリール基及びアラルキル基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。また、Y
−がR
20−SO
3−の場合、SO
3−がフッ素原子を有する炭素原子と直接結合する場合はない。
【0182】
上記R
17〜R
19が表すハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0183】
上記R
17〜R
19が表すアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロプル基、n−ブチル基、i−ブチル基等の鎖状のアルキル基;
シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。
【0184】
上記R
17〜R
19が表すアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0185】
上記R
20が表すアルキル基としては、例えば、上記R
17〜R
19が表すアルキル基として例示した基と同様の基が挙げられる。
【0186】
これらのうち、[C]酸拡散制御剤としては、光崩壊性塩基が好ましく、なかでも下記式(C−1)〜(C−5)で表される化合物がより好ましい。
【0188】
これらのうち、上記式(C−1)及び(C−2)で表される化合物がさらに好ましい。[C]酸拡散制御剤として上記好ましい化合物を用いることで、より高度に機能し、酸の拡散をさらに抑制できる。結果として、当該フォトレジスト組成物は、MEEF、DOF及びLWRにより優れる。
【0189】
これらの[C]酸拡散制御剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。当該フォトレジスト組成物における[C]酸拡散制御剤の使用量としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部以上25質量部以下が好ましく、1質量部以上20質量部以下がさらに好ましい。[C]酸拡散制御剤の使用量が0.1質量部未満では、MEEFの低減が達成されない不都合がある等、本願発明の効果がいかんなく発揮されない場合がある。一方、15質量部を超えると、当該フォトレジスト組成物の感度低下、レジスト透過率低下による形状悪化が観測される場合がある。
【0190】
<溶媒>
当該フォトレジスト組成物は通常、溶媒を含有する。溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、2種以上を併用してもよい。
【0191】
アルコール系溶媒としては、例えば、
メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0192】
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン等のケトン系溶媒が挙げられる。
【0193】
アミド系溶媒としては、例えば、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0194】
エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、メトキシベンゼン等が挙げられる。
【0195】
エステル系溶媒としては、例えば、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0196】
その他の溶媒としては、例えば、
n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、iso−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、iso−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、iso−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−iso−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒;
ジクロロメタン、クロロホルム、フロン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の含ハロゲン溶媒等が挙げられる。
【0197】
これらの溶媒のうち、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、シクロヘキサノンが好ましい。
【0198】
<その他の任意成分>
当該フォトレジスト組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、フッ素原子含有重合体、[B]酸発生剤以外の酸発生剤、脂環式骨格化合物、界面活性剤、増感剤等のその他の任意成分を含有できる。以下、これらの任意成分について詳述する。これらのその他の任意成分は、それぞれを単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、その他の任意成分の配合量は、その目的に応じて適宜決定することができる。
【0199】
[フッ素原子含有重合体]
当該フォトレジスト組成物は、[A]重合体よりもフッ素原子含有率が高い重合体を含有していてもよい。当該フォトレジスト組成物が、フッ素原子含有重合体を含有することで、レジスト膜を形成した際に、膜中のフッ素原子含有重合体の撥油性的特徴により、その分布がレジスト膜表面近傍で偏在化する傾向があるので、液浸露光時における酸発生剤や酸拡散制御剤等が液浸媒体に溶出することを抑制することができる。また、フッ素原子含有重合体の撥水性的特徴により、レジスト膜と液浸媒体との前進接触角が所望の範囲に制御でき、バブル欠陥の発生を抑制できる。さらに、レジスト膜と液浸媒体との後退接触角が高くなり、水滴が残らずに高速でのスキャン露光が可能となる。このようにフォトレジスト組成物がフッ素原子含有重合体を含有することにより、液浸露光法に好適なレジスト塗膜を形成することができる。
【0200】
上記フッ素含有重合体としては、フッ素原子を有している限り、特に限定されないが、[A]重合体よりフッ素原子含有率(質量%)が高いことを必須とする。[A]重合体よりフッ素原子含有率が高いことで、上述の偏在化の度合いがより高くなり、得られるレジスト塗膜の撥水性及び溶出抑制性等の特性が向上する。
【0201】
本発明におけるフッ素原子含有重合体は、フッ素原子を構造中に含む単量体を1種類以上重合することにより形成される。
【0202】
フッ素原子を構造中に含む重合体を与える単量体としては、主鎖にフッ素原子を含む単量体、側鎖にフッ素原子を含む単量体、主鎖と側鎖とにフッ素原子を含む単量体が挙げられる。
【0203】
主鎖にフッ素原子を含む重合体を与える単量体としては、例えばα−フルオロアクリレート化合物、α−トリフルオロメチルアクリレート化合物、β−フルオロアクリレート化合物、β−トリフルオロメチルアクリレート化合物、α,β−フルオロアクリレート化合物、α,β−トリフルオロメチルアクリレート化合物、1種類以上のビニル部位の水素がフッ素又はトリフルオロメチル基等で置換された化合物等が挙げられる。
【0204】
側鎖にフッ素原子を含む重合体を与える単量体としては、例えばノルボルネンのような脂環式オレフィン化合物の側鎖がフッ素又はフルオロアルキル基やその誘導体、アクリル酸又はメタクリル酸のフルオロアルキル基やその誘導体のエステル化合物、1種類以上のオレフィンの側鎖(二重結合を含まない部位)がフッ素原子又はフルオロアルキル基やその誘導体等が挙げられる。
【0205】
主鎖と側鎖とにフッ素原子を含む重合体を与える単量体としては、例えばα−フルオロアクリル酸、β−フルオロアクリル酸、α,β−フルオロアクリル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸、β−トリフルオロメチルアクリル酸、α,β−トリフルオロメチルアクリル酸等のフルオロアルキル基やその誘導体のエステル化合物、1種類以上のビニル部位の水素がフッ素原子又はトリフルオロメチル基等で置換された化合物の側鎖をフッ素原子又はフルオロアルキル基やその誘導体で置換したもの、1種類以上の脂環式オレフィン化合物の二重結合に結合している水素をフッ素原子又はトリフルオロメチル基等で置換し、かつ側鎖がフルオロアルキル基やその誘導体等が挙げられる。なお、この脂環式オレフィン化合物とは、環の一部が二重結合である化合物を示す。
【0206】
フッ素原子含有重合体が有する構造単位としては、下記式で表される構造単位(以下、「構造単位(VII)」ともいう)が挙げられる。
【0208】
上記式中、R
21は水素、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Zは連結基である。R
22は少なくとも一つ以上のフッ素原子を含有する炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4〜20の1価の脂環式基若しくはその誘導体である。
【0209】
Zが示す連結基としては、例えば単結合、酸素原子、硫黄原子、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、アミド基、スルホニルアミド基、ウレタン基等が挙げられる。
【0210】
構造単位(VII)を与える単量体としては、例えば2−[1−(エトキシカルボニル)−1,1−ジフルオロブチル](メタ)アクリル酸エステル、トリフルオロメチル(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロt−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(5−トリフルオロメチル−3,3,4,4,5,6,6,6−オクタフルオロヘキシル)(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0211】
フッ素原子含有重合体は、構造単位(VII)を2種以上含有していてもよい。構造単位(VII)の含有割合は、フッ素原子含有重合体における全構造単位を100モル%とした場合に、通常5モル%以上、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上である。この構造単位(VII)の含有率が5モル%未満であると、70度以上の後退接触角を達成できない場合や、レジスト塗膜からの酸発生剤等の溶出を抑制できないおそれがある。
【0212】
フッ素原子含有重合体は、構造単位(VII)以外にも、例えば現像液に対する溶解速度を制御するために酸解離性基を有する構造単位や、ラクトン骨格、水酸基、カルボキシル等、又は基板からの反射による光の散乱を抑えるために芳香族化合物に由来する構造単位等の「他の構造単位」を1種類以上含有することができる。
【0213】
上記酸解離性基を有する他の構造単位としては、[A]重合体における上記構造単位(II)で例示した構造単位と同様の構造単位が適用できる。上記ラクトン骨格を含有する他の構造単位としては、[A]重合体における上記構造単位(IV)で例示した構造単位と同様の構造単位が適用できる。上記水酸基を含有する他の構造単位としては、[A]重合体における上記構造単位(V)で例示した構造単位と同様の構造単位が適用できる。上記芳香族化合物に由来する構造単位としては、[A]重合体における上記構造単位(VI)で例示した構造単位と同様の構造単位が適用できる。
【0214】
他の構造単位の含有割合としては、フッ素原子含有重合体における全構造単位を100モル%とした場合に、通常80モル%以下、好ましくは75モル%以下、より好ましくは70モル%以下である。
【0215】
フッ素原子含有重合体のMwとしては、1,000以上50,000以下が好ましく、1,000以上30,000以下がより好ましく、1,000以上10,000以下が特に好ましい。フッ素原子含有重合体のMwが1,000未満の場合、十分な前進接触角を得ることができない。一方、Mwが50,000を超えると、レジストとした際の現像性が低下する傾向にある。フッ素原子含有重合体のMwとMnとの比(Mw/Mn)としては、通常1以上3以下であり、好ましくは1以上2以下である。
【0216】
上記フォトレジスト組成物におけるフッ素原子含有重合体の含有割合としては、[A]重合体100質量部に対して、0質量部以上50質量部以下が好ましく、0質量部以上20質量部以下がより好ましく、0.5質量部以上10質量部以下が特に好ましく、1質量部以上8質量部以下が最も好ましい。上記フォトレジスト組成物における上記フッ素原子含有重合体の含有率を上記範囲とすることで、得られるレジスト塗膜表面の撥水性及び溶出抑制性をより高めることができる。
【0217】
[フッ素原子含有重合体の合成方法]
上記フッ素原子含有重合体は、例えば所定の各構造単位に対応する単量体を、ラジカル重合開始剤を使用し、適当な溶媒中で重合することにより合成できる。
【0218】
上記重合に使用される溶媒としては、例えば[A]重合体の合成方法で挙げたものと同様の溶媒が挙げられる。
【0219】
上記重合における反応温度としては、通常40℃以上150℃以下程度であり、50℃以上120℃以下が好ましい。反応時間としては、通常1時間以上48時間以下程度であり、1時間以上24時間以下が好ましい。
【0220】
[[B]酸発生剤以外の酸発生剤]
当該フォトレジスト組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で[B]酸発生剤以外の酸発生剤を含有してもよい。このような酸発生剤としては、例えば[B]酸発生剤以外のオニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。
【0221】
オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩(テトラヒドロチオフェニウム塩を含む)、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
【0222】
スルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート等が挙げられる。これらのうち、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0223】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート等が挙げられる。これらのテトラヒドロチオフェニウム塩のうち、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート及び1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0224】
ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート等が挙げられる。これらのヨードニウム塩のうち、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0225】
スルホンイミド化合物としては、例えばN−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等が挙げられる。これらのスルホンイミド化合物のうち、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドが好ましい。
【0226】
これらの[B]酸発生剤以外の酸発生剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0227】
[脂環式骨格化合物]
脂環式骨格化合物は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等をさらに改善する作用を示す成分である。脂環式骨格化合物としては、例えば1−アダマンタンカルボン酸、2−アダマンタノン、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル等のアダマンタン誘導体類;デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル等のデオキシコール酸エステル類;リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル等のリトコール酸エステル類;3−[2−ヒドロキシ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)エチル]テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカン、2−ヒドロキシ−9−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン等が挙げられる。
【0228】
[界面活性剤]
界面活性剤は塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する作用を示す成分である。
界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤の他、以下商品名として、KP341(信越化学工業製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社化学製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、同F173(以上、大日本インキ化学工業製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(以上、旭硝子製)等が挙げられる。
【0229】
[増感剤]
増感剤は、放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを[B]酸発生剤に伝達しそれにより酸の生成量を増加する作用を示すものであり、当該フォトレジスト組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を有する。増感剤としては、例えばカルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等が挙げられる。
【0230】
<フォトレジスト組成物の調製方法>
当該フォトレジスト組成物は、例えば上記溶媒中で[A]重合体、[B]酸発生剤、[C]酸拡散制御剤及びその他の任意成分を所定の割合で混合することにより調製できる。
溶媒としては、[A]重合体、[B]酸発生剤、[C]酸拡散制御剤及びその他の任意成分を溶解又は分散可能であれば特に限定されない。当該フォトレジスト組成物は通常、その使用に際して、全固形分濃度が1質量%以上30質量%以下、好ましくは1.5質量%以上25質量%以下となるように溶媒に溶解した後、例えば孔径0.2μm程度のフィルターでろ過することによって、調製される。
【0231】
<レジストパターンの形成方法>
本発明のフォトレジスト組成物を用いて、例えば下記工程によりレジストパターンを形成することができる。
(1)当該フォトレジスト組成物の塗膜を基板上に形成する工程(以下、「工程(1)」ともいう)、
(2)上記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程(以下、「工程(2)」ともいう)、及び
(3)上記放射線が照射された塗膜を現像する工程(以下、「工程(3)」ともいう)を有する。以下、各工程を詳述する。
【0232】
当該フォトレジスト組成物を用いることで、MEEF、DOF及びLWRに優れるレジストパターンを形成できる。従って、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV等の放射線であっても、当該フォトレジスト組成物から微細パターンを高精度にかつ安定して形成することができ、今後更に微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造用に好適に用いることができる。
【0233】
[工程(1)]
本工程では、フォトレジスト組成物又はこれを溶媒に溶解させて得られた当該フォトレジスト組成物の溶液を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布手段によって、シリコンウエハー、二酸化シリコン、反射防止膜で被覆されたウエハー等の基板上に所定の膜厚となるように塗布し、場合によっては70℃以上160℃以下程度の温度でプレベーク(PB)することにより塗膜中の溶媒を揮発させレジスト膜を形成する。
【0234】
[工程(2)]
本工程では、工程(1)で形成されたレジスト膜に(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)、放射線を照射し露光させる。なお、この際所定のパターンを有するマスクを通して放射線を照射する。放射線としては、目的とするパターンの線幅に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線、EUV等から適宜選択して照射する。これらのうち、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、KrFエキシマレーザー(波長248nm)に代表される遠紫外線が好ましく、EUV(極紫外線、波長13.5nm)等のより微細なパターンを形成可能な光源であっても好適に使用できる。次いで、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行うことが好ましい。このPEBにより、[A]重合体の酸解離性基の脱離を円滑に進行させることが可能となる。PEBの加熱条件は、フォトレジスト組成物の配合組成によって適宜選定することができるが、通常50℃以上180℃以下程度である。
【0235】
[工程(3)]
本工程は、露光されたレジスト膜を、現像液で現像することによりレジストパターンを形成する。現像後は、水で洗浄し、乾燥することが一般的である。現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液が好ましい。
【0236】
なお、液浸露光を行う場合は、工程(2)の前に、液浸液とレジスト膜との直接の接触を保護するために、液浸液不溶性の液浸用保護膜をレジスト膜上に設けてもよい。液浸用保護膜としては、工程(3)の前に溶媒により剥離する溶媒剥離型保護膜(例えば、特開2006−227632号公報等参照)、工程(3)の現像と同時に剥離する現像液剥離型保護膜(例えば、国際公開2005−069076号、国際公開2006−035790号等参照)のいずれを用いてもよい。
【実施例】
【0237】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0238】
重合体のMw及びMnは、GPCカラム(東ソー社、G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、以下の条件により測定した。
カラム温度:40℃
溶出溶媒:ジメチルホルムアミド
(LiBr 0.3%(質量換算)、H
3PO
4 0.1%(質量換算) 混合溶液)
流速:1.0mL/分
試料濃度:0.2質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0239】
13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(日本電子社、JNM−EX270)を使用し測定した。
【0240】
単量体由来の低分子量成分の残存量は、ジーエルサイエンス製Intersil ODS−25μmカラム(4.6mmφ×250mm)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒アクリロニトリル/0.1%リン酸水溶液の分析条件で、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。
【0241】
<[A]重合体の合成>
[A]重合体及び後述する[D]フッ素原子含有重合体の合成に用いた単量体を下記に示す。
【0242】
【化34】
【0243】
[合成例1]
化合物(M−1)10.46g(40モル%)、化合物(M−2)3.5g(10モル%)、化合物(M−3)1.83g(2モル%)及び化合物(M−4)14.22g(48モル%)を60gのメチルエチルケトンに溶解し、AIBN 2.2gを添加して単量体溶液を調製した。30gのメチルエチルケトンを入れた500mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、撹拌しながら80℃に加熱し、調製した単量体溶液を滴下漏斗にて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。600gのイソプロパノール/ヘキサン混合液(50質量%:50質量%)中に冷却した重合溶液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を120gのイソプロパノールにてスラリー状で2回洗浄した後、ろ別し、50℃で17時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A−1)を得た(18.6g、収率62.0%)。得られた重合体(A−1)のMwは4,374であり、Mw/Mnは1.56であった。低分子量成分の残存量は、1.0%であった。また、
13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)由来の構造単位:化合物(M−2)由来の構造単位:化合物(M−3)由来の構造単位:化合物(M−4)由来の構造単位の含有比率は、42.1:8.2:2.2:47.5(モル%)であった。
【0244】
[合成例2〜11]
表1に記載の単量体を所定量配合した以外は、合成例1と同様に操作して重合体(A−2)〜(A−10)及び(a−1)を得た。また、得られた各重合体のMw、Mw/Mn、収率(%)、低分子量成分の残存量(%)及び各重合体における各単量体に由来する構造単位の含有率を合わせて表1に示す。
【0245】
【表1】
【0246】
<[D]フッ素原子含有重合体の合成>
[合成例12]
単量体(M−11)35.83g(70モル%)、単量体(M−12)14.17g(30モル%)を2−ブタノン50gに溶解し、更に開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)5.17g(8モル%)を投入、溶解した単量体溶液を準備した。次に、温度計および滴下漏斗を備えた500mlの三つ口フラスコに50gの2−ブタノンを投入し、30分窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら80℃になるように加熱した。滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始時を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷により30℃以下に冷却した。冷却後、分液漏斗へ反応溶液、150gのヘキサン、600gのメタノール、30gの水を注ぎ激しく攪拌した後、静置した。混合溶液は2層に分離し、3時間静置した後に下層(樹脂溶液)を分取した。エバポレーターを用いて分取した樹脂溶液をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液へと溶剤置換した。共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液159.2gを得た。ホットプレートを用いて固形分濃度を求めた結果、共重合体濃度は20.1%、収率は64%であった。この共重合体を樹脂(A−3)とした。この共重合体は、Mwが6,900であり、Mw/Mnが1.34であった。
13C−NMR分析の結果、化合物(M−5)由来の繰り返し単位:化合物(M−7)由来の繰り返し単位の含有比率が70.5:29.5(モル%)の共重合体(D−1)を得た。
【0247】
<フォトレジスト組成物の調製>
フォトレジスト組成物の調製に用いた[B]酸発生剤、[C]酸拡散制御剤及び溶媒について以下に示す。
【0248】
<[B]酸発生剤>
B−1〜B−5:下記式で表される化合物
B−6:トリフェニルスルホニウムノナフレート
【0249】
【化35】
【0250】
<[C]酸拡散制御剤>
C−1〜C−3:下記式で表される化合物
【0251】
【化36】
【0252】
<溶媒>
E−1:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
E−2:シクロヘキサノン
E−3:γ−ブチロラクトン
【0253】
[実施例1]
重合体(A−1)100質量部、酸発生剤(B−1)11質量部、酸拡散制御剤(C−1)5.5質量部、重合体(D−1)3質量部、溶媒(E−1)2,220質量部、(E−2)950質量部及び(E−3)30質量部を混合し、得られた混合溶液を孔径0.2μmのフィルターでろ過して、フォトレジスト組成物を調製した。
【0254】
[実施例2〜15及び比較例1〜3]
表2に示す種類、量の各成分を使用した以外は実施例1と同様に操作して、フォトレジスト組成物を調製した。
【0255】
【表2】
【0256】
<ArFエキシマレーザーによる評価>
下記評価結果は表2に併せて示す。
【0257】
[感度の評価]
下層反射防止膜(ARC66、日産化学社製)を形成した12インチシリコンウェハ上にフォトレジスト組成物によって、膜厚75nmの被膜を形成し、120℃で60秒間ソフトベーク(SB)を行った。次に、この被膜を、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(「NSR S610C」、NIKON社製)を用い、NA=1.3、ratio=0.800、Annularの条件により、46nmライン92nmピッチのパターン形成用のマスクパターンを介して露光した。露光後、各フォトレジスト組成物について100℃で60秒間ポストベーク(PEB)を行った。その後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。このとき、46nmライン92nmピッチのパターン形成用のマスクパターンを介して露光した部分が線幅46nmラインを形成する露光量を最適露光量(Eop)とした。この最適露光量を感度(mJ/cm
2)とした。なお、測長には走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社、CG4000)を用いた。感度が50(mJ/cm
2)以下である場合、良好であると評価した。
【0258】
[MEEF]
上記Eopにて92nmピッチにおけるライン幅のターゲットサイズを、43nmライン、44nmライン、45nmライン、46nmライン、47nmライン、48nmライン、49nmラインとするパターンをそれぞれ用い、ピッチ92nmのLSパターンを形成し、レジスト膜に形成されたライン幅を測長SEM(日立社、CG4000)にて測定した。このとき、ターゲットサイズ(nm)を横軸に、各マスクパターンを用いてレジスト膜に形成されたライン幅(nm)を縦軸にプロットしたときの直線の傾きをMEEFとして算出した。その値が1に近いほどマスク再現性が良好であり、更にMEEFの値が低い程、マスク作成コストを低減できる。結果を表2に合わせて示す。
【0259】
[Line Width Roughness(LWR)]
上記Eopにて形成された線幅46nmのラインを、日立社の測長SEM「CG4000」を用い、パターン上部から観察し、任意の10点において線幅を測定した。線幅の測定値の3シグマ値(ばらつき)をLWR(nm)とした。このLWRの値が6.2nm以下であれば、形成されたパターン形状が良好であると評価した。
【0260】
[Depth Of Focus(DOF)]
上記感度の評価における最適露光量(Eop)にて、45nmのライン・150nmピッチで解像されるパターン寸法が、マスクの設計寸法の±10%以内となる場合のフォーカスの振れ幅をDOF(nm)とした。
【0261】
表2に示す通り、本発明のフォトレジスト組成物は、感度、MEEF、DOF及びLWRのリソグラフィー性能全てにおいて優れていることがわかった。
【0262】
<電子線による評価>
[実施例18、19及び比較例4]
実施例1〜2及び比較例1で用いた各フォトレジスト組成物を用いて表2に示す条件で下記の各評価をおこなった。
【0263】
[フォトレジスト組成物の評価]
東京エレクトロン社製の「クリーントラックACT−8」内で、シリコンウエハー上に各組成物溶液をスピンコートした後、表3に示す条件でPB(加熱処理)を行い、膜厚60nmのレジスト被膜を形成した。その後、簡易型の電子線描画装置(日立製作所社製、型式「HL800D」、出力;50KeV、電流密度;5.0アンペア/cm
2)を用いてレジスト被膜に電子線を照射した。電子線の照射後、表3に示す条件でPEBを行った。その後、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、23℃で1分間、パドル法により現像した後、純水で水洗し、乾燥して、レジストパターンを形成した。このようにして形成したレジストについて下記項目の評価を行った。評価結果を表3に併記する。
【0264】
(1)感度(L/S)
線幅150nmのライン部と、隣り合うライン部によって形成される間隔が150nmのスペース部(即ち、溝)と、からなるパターン〔いわゆる、ライン・アンド・スペースパターン(1L1S)〕を1対1の線幅に形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量により感度を評価した。なお、
図1は、ライン・アンド・スペースパターンの形状を模式的に示す平面図である。また、
図2は、ライン・アンド・スペースパターンの形状を模式的に示す断面図である。但し、
図1及び
図2で示す凹凸は、実際より誇張している。
【0265】
(2)ナノエッジラフネス
設計線幅150nmのライン・アンド・スペースパターン(1L1S)のラインパターンを、半導体用走査電子顕微鏡(高分解能FEB測長装置、商品名「S−9220」、日立製作所社製)にて観察した。観察された形状について、
図1及び
図2に示すように、シリコンウエハー1上に形成したレジスト膜のライン部2の横側面2aに沿って生じた凹凸の最も著しい箇所における線幅と、設計線幅150nmとの差「ΔCD」を、CD−SEM(日立ハイテクノロジーズ社製、「S−9220」)にて測定することにより、ナノエッジラフネスを評価した。
【0266】
(3)解像度(L/S)
ライン・アンド・スペースパターン(1L1S)について、最適露光量により解像されるラインパターンの最小線幅(nm)を解像度とした。
【0267】
【表3】
【0268】
表2、表3によれば、本願発明の実施例18〜19のフォトレジスト組成物は、比較例4のフォトレジスト組成物に比べて、電子線又は極紫外線に有効に感応し、低ラフネスであると共に解像度にも優れており、微細パターンを高精度に且つ安定して形成することが可能な化学増幅型ポジ型レジスト膜を成膜できることが確認できた。