(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸着質を吸着すると共に、再生温度以上の熱を受けて再生される第1吸着器及び第2吸着器に対し、蒸発器から異なる圧力で前記吸着質の蒸気を供給して吸着させることで前記蒸発器で冷熱を生成し、
前記第2吸着器の吸着容量よりも大きな吸着容量の前記第1吸着器の吸着熱で前記第2吸着器を再生させる冷熱生成方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、効率的な冷熱生成が可能な吸着式ヒートポンプシステム及び冷熱生成方法を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、吸着質を吸着すると共に、再生温度以上の熱を受けて再生される第1吸着器と、
前記第1吸着器の吸着剤と異なる特性の吸着剤を備え、前記吸着質を吸着すると共に、再生温度以上の熱を受けて再生される第2吸着器と、
仕切部材により仕切られ運転中に圧力が異なる高圧室と低圧室とを備える蒸発器と、前記第1吸着器を前記低圧室と接続する第1配管と、前記第2吸着器を前記高圧室と接続する第2配管と、を備え、前記吸着質を蒸発させ、前記第1吸着器及び前記第2吸着器に対し異なる圧力で吸着質の蒸気を供給する蒸気供給部材と、を有し、
前記第2吸着器の吸着容量よりも前記第1吸着器の吸着容量が大きく、前記第1吸着器の吸着熱で前記第2吸着器を再生させる。
【0007】
この吸着式ヒートポンプシステムでは、蒸気供給部材が吸着質を蒸発させることで冷熱が生成される。この吸着質の蒸気は、第1吸着器及び第2吸着器が吸着する。第1吸着器は、第1吸着器の再生温度以上の熱を受けて再生される。第2吸着器は、第2吸着器の再生温度以上の熱を受けて再生される。第1吸着器及び第2吸着器は、再生されると、あらたに吸着質の蒸気を吸着できる。
【0008】
蒸気供給部材は、第1吸着器及び第2吸着器に対し、異なる圧力で吸着質の蒸気を供給する。したがって、第1吸着器及び
第2吸着器の少なくとも一方では、吸着時の圧力(相対圧)が高まり、吸着材により多くの吸着質を吸着できるので、効率的な冷熱生成が可能である。吸着と脱着との温度差の小さい
吸着剤を用いることで、吸着時および脱着時の顕熱によるロスを少なくすることも可能である。
【0009】
蒸気供給部材は、運転中に圧力が異なる高圧室と低圧室とを備える蒸発器と、第1吸着器を低圧室と接続する第1配管と、第2吸着器を高圧室と接続する第2配管と、を備える。
【0011】
したがって、蒸発器の運転中に、蒸発器に高圧室と低圧室とが構成される。そして、
低圧室の蒸気を、第1配管を通じて第1吸着器に供給でき、高圧室の蒸気を第2配管を通じて第2吸着器に供給できる。第2吸着器では、吸着時の圧力が高いので、吸着材に、より多くの吸着質を吸着できる。第1配管及び第2配管を備えた簡単な構造で、
第1吸着器を低圧室と、第2吸着器を高圧室と、それぞれ接続し、異なる圧力の蒸気を第1吸着器及び第2吸着器に供給できる。
【0012】
蒸発器は、仕切部材により、高圧室と低圧室とに仕切られる。
【0013】
したがって、蒸発器を仕切部材で仕切る簡単な構造で、蒸発器に、高圧室と低圧室とを構成できる。
【0014】
第1吸着器の吸着剤と第2吸着器の吸着剤とは異なる特性である。
【0015】
このように、第1吸着器と第2吸着器とで異なる特性の吸着剤を用いることで、異なる圧力で供給された蒸気を効率的に吸着できる。
【0016】
そして、第1吸着器の吸着熱で第2吸着器を再生させる。
【0017】
すなわち、第1吸着器の吸着熱を、第2吸着器の再生に用いるので、第1吸着器の吸着熱を有効に利用できる。
【0020】
第1吸着器の吸着容量は第2吸着器の吸着容量よりも大きい。
【0021】
このように、第1吸着器の熱容量が大きいと、低圧室から低圧の蒸気が第1吸着器に移動しても、第1吸着器による蒸気の吸着が容易であり、低圧の蒸気を用いて冷熱が生成できる。
【0022】
請求項2に記載の発明では、
請求項1に記載の発明において、前記第2吸着器が複数備えられ、前記蒸発器から供給された前記蒸気の吸着と、前記第1吸着器からの受熱による再生とを複数の前記第2吸着器で切り替える。
【0023】
したがって、複数の第2吸着器の一部で蒸気の吸着を行いながら、他の第2吸着器を再生させ、これを適宜切り替えることで、複数の第2吸着器の全体では、連続した蒸気吸着が可能である。
【0024】
請求項3に記載の発明では、
請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記第1吸着器から前記第2吸着器への熱伝達及び前記第2吸着器の冷却の媒体が水蒸気である。
【0025】
水蒸気は液体の水と比較して顕熱が小さいので、第1吸着器から第2吸着器への熱伝達や、第2吸着器の冷却を効率的に行うことができる。
【0026】
請求項4に記載の発明では、吸着質を吸着すると共に、再生温度以上の熱を受けて再生される第1吸着器及び第2吸着器に対し、蒸発器から異なる圧力で前記吸着質の蒸気を供給して吸着させることで前記蒸発器で冷熱を生成し、
前記第2吸着器の吸着容量よりも大きな吸着容量の前記第1吸着器の吸着熱で前記第2吸着器を再生させる。
【0027】
この冷熱生成方法では、蒸発器が吸着質を蒸発させることで冷熱を生成する。吸着質の蒸気は第1吸着器及び第2吸着器に吸着させる。第1吸着器は、第1吸着器の再生温度以上の熱を受けて再生される。第2吸着器は、第2吸着器の再生温度以上の熱を受けて再生される。第1吸着器及び第2吸着器が再生されると、あらたに吸着質の蒸気を吸着できる。
【0028】
蒸発器は、第1吸着器及び第2吸着器に対し、異なる圧力で吸着質の蒸気を供給して吸着させる。第1吸着器及び
第2吸着器の少なくとも一方では、吸着時の圧力(相対圧)が高まり、吸着材により多くの吸着質を吸着できるので、効率的な冷熱生成が可能である。吸着と脱着との温度差の小さい吸着材を用いることで、吸着時および脱着時の顕熱によるロスを少なくすることも可能となる。
【0029】
そして、第2吸着器の吸着容量よりも大きな吸着容量の第1吸着器の吸着熱で第2吸着器を再生させる。
【0030】
すなわち、第1吸着器の吸着熱を、第2吸着器の再生に用いるので、第1吸着器の吸着熱を有効に利用できる。
【0031】
請求項5に記載の発明では、
請求項4に記載の発明において、前記第2吸着器が複数備えられ、前記蒸発器から供給された前記蒸気の吸着と、前記第1吸着器からの受熱による再生とを複数の第2吸着器で切り替える。
【0032】
したがって、複数の第2吸着器の一部で蒸気の吸着を行いながら、他の第2吸着器を再生させ、これを適宜切り替えることで、複数の第2吸着器の全体では、連続した蒸気吸着が可能である。
【発明の効果】
【0033】
本発明は上記構成としたので、効率的な冷熱生成が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1には、本発明の第1実施形態の吸着式ヒートポンプシステム(以下では「ヒートポンプ」と略記する)12が示されている。
【0036】
ヒートポンプ12は、蒸発器14、第1吸着器20、第2吸着器22、凝縮器24及びタンク26を備えている。特に第1実施形態では、第1吸着器20は1台であるが、第2吸着器22は2台備えている。以下において、2台の第2吸着器22を区別する場合は、第2吸着器22A及び第2吸着器22Bとする。なお、第2吸着器22は複数台あればよく、3台以上であってもよい。
【0037】
蒸発器14は、第1蒸発器16と第2蒸発器18とを有している。第1蒸発器16及び第2蒸発器18は、熱交換流体が流れる流体管28に沿って配置されており、熱交換流体が矢印F1方向に流れる。すなわち、第1蒸発器16と第2蒸発器18とは、熱交換流体の流れ方向で直列接続されている。そして、第1蒸発器16及び第2蒸発器18は、内部で吸着質が蒸発する際の気化熱により、熱交換流体からエネルギー(熱量)を吸収する動作(冷熱生成)を行うことが可能である。ヒートポンプ12の運転中は、熱交換流体の液温は、第1蒸発器16を通過することでT5(たとえば30℃)からT6(たとえば22℃)に低下し、第2蒸発器18を通過することでT6からT7(たとえば15℃)に低下する。そして、第1蒸発器16の内部のほうが第2蒸発器18の内部よりも高圧である。すなわち、第1実施形態では、蒸発器14において、第1蒸発器16が高圧室、第2蒸発器18が低圧室として機能している。
【0038】
タンク26と第1蒸発器16、第2蒸発器18及び第1吸着器20とは、供給配管30で接続されており、タンク26内の熱伝達媒体が、第1蒸発器16、第2蒸発器18及び第1吸着器20に送られる。熱伝達媒体としては水が用いられており、液体の水が、タンク26から、第1蒸発器16、第2蒸発器18及び第1吸着器20に送られる。第1吸着器20内では、吸着剤が吸着質を吸着する際の反応熱で、熱伝達媒体が気化される。
【0039】
2台の第2吸着器22のそれぞれは、熱伝達媒体の流路で考えると、第1吸着器20に対しては直列になる(2台の第2吸着器22相互では並列になる)ように、蒸気配管32により第1吸着器20と接続されている。蒸気配管32は蒸気バルブ34により開閉され、開状態では、第1吸着器20から第2吸着器22に気体状の熱伝達媒体が流れる。特に、第1実施形態では、2台の第2吸着器22のいずれか一方に選択的に、第1吸着器20から熱伝達媒体を送ることが可能である。
【0040】
2台の第2吸着器22のそれぞれからは、還流配管36が延出されている。第2吸着器22側のそれぞれの還流配管36は途中の合流部38で合流している。合流部38で一本化された還流配管36は凝縮器24に接続されている。第2吸着器22のそれぞれと合流部38との間には還流バルブ40が設けられており、開状態では、第2吸着器22から凝縮器24に気体状の熱伝達媒体が流れる。特に、第1実施形態では、2台の第2吸着器22のいずれか一方から選択的に、凝縮器24へ熱伝達媒体を送ることが可能である。
【0041】
凝縮器24とタンク26とは、戻し配管42で接続されており、凝縮器24で凝縮(液化)された熱伝達媒体をタンク26に戻すことができる。
【0042】
第2蒸発器18と第1吸着器20とは、第1配管44で接続されている。第1配管44は、第1バルブ46により開閉され、開状態では、第2蒸発器18から第1吸着器20に、吸着質(第1実施形態では蒸気)が流れる。第1吸着器20内の吸着剤で、吸着質の蒸気が吸着されるが、第1吸着器20は、再生温度以上の熱を受けると、吸着剤から吸着質が蒸発し、再生される。
【0043】
第1蒸発器16と第2吸着器22のそれぞれとは、第2配管48で接続されている。第2配管48は、第2バルブ50により開閉され、開状態では、第1蒸発器16から第2吸着器22に吸着質(第1実施形態では蒸気)が流れる。特に第1実施形態では、2台の第2吸着器22のいずれか一方へ選択的に、第1蒸発器16から吸着質を送ることが可能である。第2吸着器22内の吸着剤で、吸着質の蒸気が吸着されるが、第2吸着器22は、再生温度以上の熱を受けると、吸着剤から吸着質が蒸発し、再生される。
【0044】
第1吸着器20及び第2吸着器22のそれぞれと凝縮器24とは蒸気配管52、54で接続されている。蒸気配管52、54のそれぞれは蒸気バルブ56、58で開閉されるようになっており、開状態では、第1吸着器20及び第2吸着器22の再生時に生じた気体状の吸着質(具体的には蒸気)を凝縮器24に戻すことができる。
【0045】
第1実施形態では、第1吸着器20の吸着容量は、第2吸着器22の吸着容量よりも大きく(たとえば2倍以上、好ましくは10倍以上に)設定されている。
【0046】
上記したそれぞれのバルブの開閉は、図示しない制御装置で制御される。
【0047】
第1実施形態では、第1吸着器20と第2吸着器22とは、異なる吸着剤が収容されている。一例として、第1吸着器20の吸着剤はCaO、第2吸着器22の吸着剤はRDシリカゲル(又は後述するALPO5)を挙げることができる。
【0048】
次に、第1実施形態の作用及び冷熱生成方法を、
図3に示す第1比較例の作用及び
冷熱生成方法と比較して説明する。第1比較例のヒートポンプ112において、第1実施形態のヒートポンプ12と同一の部材については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0049】
第1比較例のヒートポンプ112では、蒸発器114の内部に高圧室と低圧室とが設けられておらず、単一の圧力室を有している。流体管28を通る熱交換流体の液温は、蒸発器114を通過することで、T5(たとえば30℃)からT7(たとえば15℃)に低下する。
【0050】
また、第1比較例の吸着式ヒートポンプ112では、1台の第2吸着器116を有している。そして、第1吸着器20からの蒸気が、蒸気配管32を通じて第2吸着器116に流れる。
【0051】
第1比較例のヒートポンプ112において、第1吸着器20の吸着剤が再生されている状態から冷熱を生成するには、まず、
図4Aに矢印F2で示すように、第1吸着器20の吸着剤に蒸発器114から蒸気を吸着させ、蒸発器114で冷熱を生成する。蒸発器114を通過する熱交換流体の温度は、T5(たとえば30℃)からT7(たとえば15℃)に低下する。
【0052】
第1吸着器20の吸着剤で蒸気を吸着する際に生じた反応熱により、第1吸着器20では、
熱伝達媒体としての水(タンク26から送られた水)が気化する。そして、この蒸気が、矢印F3で示すように、第2吸着器116に送られる。第2吸着器116は、この蒸気の熱(たとえば80℃程度)を受けることにより再生される。
【0053】
そして、
図4Bに矢印F4で示すように、再生された第2吸着器116の吸着剤に蒸発器114から蒸気を吸着させ、蒸発器114で冷熱を生成する。ただし、この場合、蒸発器114はすでに15℃に低下しているので、第2吸着器116には、蒸発器114を15℃以下の温度に対応する圧力まで減圧させる能力が求められる。
【0054】
なお、第1比較例において、第1吸着器20の再生は、たとえば第1吸着器20の外部から作用する廃熱等を利用して行う。
【0055】
これに対し、第1実施形態のヒートポンプ12を用い、第1吸着器20の吸着剤が再生されている状態から冷熱を生成するには、以下の工程を行う。
【0056】
まず、
図2Aに矢印F5
で示すように、第2吸着器22のいずれか一方(ここでは、第2吸着器22A)の吸着剤に、第1蒸発器16から蒸気を吸着させ、第1蒸発器16で冷熱を生成する。第1蒸発器16を通過する熱交換流体の温度は、たとえば、T5(たとえば30℃)からT6(たとえば22℃)に低下する。
【0057】
第1蒸発器16での冷熱生成と並行して、あるいは冷熱生成後に、矢印F6で示すように、第1吸着器20の吸着剤に、第2蒸発器18から蒸気を吸着させ、第2蒸発器18で冷熱を生成する。第2蒸発器18を通過する熱交換流体の温度は、T6(たとえば22℃)からT7(たとえば15℃)に低下する。
【0058】
このとき、第1吸着器20では、吸着質を吸着することで吸着熱が生じる。この吸着熱により、
熱伝達媒体である水(タンク26から送られた水)を蒸発させ、蒸気を矢印F7で示すように、第2吸着器22Bに送り、第2吸着器22Bの吸着剤を再生する。すなわち、第1吸着器20による蒸気の吸着と、第2吸着器22Bの再生とが並行して行われる。
【0059】
第2吸着器22Bの吸着剤の再生を行いつつ、あるいは再生後に、
図2Bに矢印F8で示すように、第2吸着器22Bの吸着剤に、第1蒸発器16から蒸気を吸着させ、第1蒸発器16で冷熱を生成する。第1蒸発器16での冷熱生成と並行して、あるいは冷熱生成後に、矢印F9で示すように、第1吸着器20の吸着剤に、第2蒸発器18から蒸気を吸着させ、第2蒸発器18で冷熱を生成する。また、矢印F10で示すように、第1吸着器20の吸着熱(蒸気)を第2吸着器22Aに送ることにより、第2吸着器22Aの吸着剤を再生する。すなわち、第1吸着器20による蒸気の吸着と、第2吸着器22Aの吸着剤の再生とが並行して行われる。
【0060】
特に、第1実施形態では、第1吸着器20の吸着容量は、第2吸着器22の吸着容量よりも大きい(たとえば2倍以上、好ましくは10倍以上)。したがって、以上のように、第1吸着器20は連続的にあるいは断続的に吸着質を吸着させながら、2つの第2吸着器22において吸着質の吸着と再生とを行うことが可能である。
【0061】
なお、第1実施形態において、第1吸着器20の再生は、たとえばヒートポンプ12の停止時に第1吸着器20の外部から作用する廃熱等を利用して行う。
【0062】
図5には、第1実施形態及び第1比較例における、相対圧と吸着量の関係が示されている。
図5におけるグラフの曲線は、所定温度(この例では25℃)におけるRDシリカゲル(第2吸着器22の吸着剤の例)の吸着等温線L1である。
図5における相対圧Φ1、Φ2を以下の式で定義するにあたり、以下の温度T1、T2、T3、T4を導入する。
【0063】
T1=第2吸着器22の再生温度、
T2=凝縮器24の温度、
T3=第2吸着器22の冷却温度、
T4=蒸発器14における冷却後の温度。
【0064】
具体的な例を示すと、T1=80℃、T2=35℃、T3=35
℃、T4=22℃(第1実施形態)、15℃(第1比較例)である。
【0065】
そして、各温度における飽和蒸気圧をPで示す。このとき、
Φ1=P(T2)/P(T1)、
Φ2=P(T4)/P(T3)である。
具体的には、
Φ1=P(35℃)/P(80℃)、
Φ2(第1比較例)=P(15℃)/P(35℃)、
Φ2(第1実施形態)=P(22℃)/P(35℃)
である。そして、相対圧がΦ2の状態とΦ1の状態との吸着量の差が、実質的に吸着剤で吸着できる吸着量である。
【0066】
図5から分かるように、第1比較例の場合のΦ2は0.3であるのに対し、第1実施形態の場合のΦ2は0.5と高くなっている。吸着等温線L1は単調増加しているので、第1比較例の吸着量Δqよりも、第1実施形態の吸着量Δqのほうが多い。すなわち、第1実施形態では、第1比較例よりも多くの吸着質を吸着でき、吸着剤の利用率が向上している。換言すれば、
図5のグラフにおいて、第1実施形態のΦ2の位置が、第1比較例のΦ2の位置よりも右側にある。
【0067】
そこで、第2吸着器22の吸着剤として、上記したRDシリカゲルに代えて、
図6に示す吸着等温線L2にしたがう吸着剤を使用する場合を考える。なお、
図6に示す吸着等温特性を示す吸着剤としては、ALPO5を挙げることができる。また、この場合における第1吸着器20の吸着剤としては、たとえば、ゼオライトを挙げることができる。
【0068】
図6の吸着等温特性を示す吸着剤では、相対圧が0.2に達するまでは吸着量の増加が緩やかであるが、相対圧が0.2から0.35の間では吸着量が大きく増えている。そして、相対圧が0.35を超えると、再び吸着量の増加は緩やかになる。したがって、
図6に示す吸着等温特性の吸着剤では、Φ1=0.2、Φ2=0.35に設定しても、十分に大きな吸着量Δqが得られる。そして、Φ1=0.2とした場合、たとえば、T1=75℃、T2=40℃、T3=40℃、T4=22℃に設定できる。
【0069】
ここで、第2吸着器22における温度差ΔT=T1−T3を考えると、この温度差ΔTは、第2吸着器22の駆動時の温度差(温度スイング)である。ΔTの値が小さいほど、第2吸着器22において、吸着質を吸着及び脱着するときに顕熱として失われる(利用できない)熱量が少なくなる。すなわち、
図6に示す吸着等温特性の吸着剤を用いると、T1とT3の差を、
図5に示す吸着等温特性の吸着剤よりも小さくできるため、吸着質を吸着及び脱着するときに顕熱として失われる熱量が少なくなり、冷熱生成の効率が高くなる。
【0070】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0071】
図7には、第2実施形態のヒートポンプ72が示されている。第2実施形態において、第1実施形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0072】
第2実施形態では、第1蒸発器16と第2蒸発器18における熱交換流体の流れ方向が矢印F11方向、すなわち、第1実施形態とは逆である。したがって、熱交換流体の液温は、第2蒸発器18を通過することでT5(たとえば30℃)からT6(たとえば22℃)に低下し、第1蒸発器16を通過することでT6からT7(たとえば15℃)に低下する。
【0073】
第2実施形態では、第1実施形態よりも、第1吸着器20と第2蒸発器18の間の圧力が高い。すなわち、第2実施形態では、蒸発器14において、第2蒸発器18が高圧室、第1蒸発器16が低圧室として機能している。第1配管44は、第1蒸発器16と第2吸着器22とを接続し、第2配管48は、第2蒸発器18と第1吸着器20とを接続している。
【0074】
そして、第1吸着器20での吸着時の反応温度が、第1実施形態よりも高い。このように、第1吸着器20の反応温度が高くなると、第1吸着器20から第2吸着器22に送られる蒸気の温度も高くなり、第2吸着器22における再生温度が高くなる。
【0075】
図9には、第2実施形態において適用可能な第1吸着器20の吸着剤(具体的にはゼオライト 13X)の吸着等温線が示されている。また、
図10には、第2実施形態において適用可能な第2吸着器22の吸着剤(具体的には、FAM Z01(三菱樹脂株式会社の商品名)及びシリカゲル)
の吸着等温線が示されている。
【0076】
図10から分かるように、第2実施形態において、第2吸着器22の吸着剤であるFAM Z01及びシリカゲルは、温度上昇に伴い、吸着等温線がグラフ上で右側にシフトする吸着剤である。すなわち、このような吸着剤では、再生温度が高くなると、より再生が容易になる。第2実施形態では、第1実施形態と比較して、第1吸着器20の反応温度
が高いので、第2吸着器22の再生温度も高くなり、再生が容易である。
【0077】
特に、FAM Z01は、温度上昇に伴い、吸着等温線が
図10の右側に大きくシフトするので、第2実施形態における第2吸着器22の吸着剤として好ましい材料である。
【0078】
図8には、第2比較例のヒートポンプ122が示されている。第2比較例のヒートポンプ122は、第1比較例のヒートポンプ72と略同一構成であるが、第2実施形態と同様に、第1蒸発器16と第2蒸発器18における熱交換流体の流れ方向が矢印F11方向、すなわち、第1比較例と逆である。第2比較例における第1吸着器20の吸着剤及び第2吸着器116の吸着剤は、第2実施形態と同一である。
【0079】
第2比較例において、一例として、第1吸着器20の吸着反応において相対圧0.05の吸着量まで吸着させると仮定すると、第1吸着器20及び第2吸着器
116をいずれも15℃における飽和蒸気圧で駆動される。そして、第1吸着器20が所定の温度T8(たとえば72℃)まで上昇すると、第2吸着器
116もこの温度T8で再生される。
【0080】
これに対し、第2実施形態で、第2比較例と同様に、第1吸着器20の吸着反応において相対圧0.05の吸着量まで吸着させると仮定する。この場合、第1吸着器20の温度を、第2比較例の温度T8よりも高い温度T9(たとえば83℃)まで上昇させることができ、第2吸着器22の再生が容易である。また、第2実施形態において、第2吸着器22の再生温度がT9よりも低くても十分である場合、たとえば、温度T8で第2吸着器22を再生する場合は、第1吸着器20の吸着反応において相対圧0.08程度まで吸着させることができ、吸着量が多くなる。
【0081】
上記では、蒸発器14が、第1蒸発器16と第2蒸発器18とに分離された構造を挙げているが、要するに、蒸発器14の内部が、仕切壁等の仕切部材で仕切られて、高圧室と低圧室とが構成されていればよい。
図1に示す例では、第1蒸発器16と第2蒸発器18のそれぞれの対向面が仕切部材として作用している。仕切部材を設ける簡単な構造で、蒸発器14内に、高圧室と低圧室とを構成できる。
【0082】
また、第1蒸発器16と第2吸着器22とを第2配管48で接続する簡単な構造で、第1蒸発器16の蒸気を第2吸着器22に送ることが可能である。同様に、第2蒸発器18と第1吸着器20とを第1配管44で接続する簡単な構造で、第2蒸発器18の蒸気を第1吸着器20に送ることが可能である。
【0083】
本発明の蒸気供給部材としては、上記した蒸発器14に限定されず、要するに、第1吸着器20と第2吸着器22とに異なる蒸気圧で蒸気を供給できればよい。上記実施形態のように蒸発器14を蒸気供給部材として用いることで、蒸発器14での吸着質の蒸発による冷熱生成と蒸気の供給とを効率的に行うことが可能である。
【0084】
本発明において、上記説明から分かるように、第1吸着器20の再生には、たとえば外部から作用する廃熱を用いる。このため、ヒートポンプとしては、第1吸着器20の再生のための熱源は不要である。もちろん、本発明のヒートポンプが、このような熱源を備えていてもよい。