【実施例】
【0016】
[実施例1の構成]
図1ないし
図3は、本発明を適用した電磁タンク密閉弁を備えた蒸発燃料処理装置(実施例1)を示したものである。
【0017】
本実施例の蒸発燃料処理装置は、燃料タンクFTとキャニスタCCとの間に設置された電磁タンク密閉弁SVを閉弁することで燃料タンクFTを密閉可能な燃料タンク密閉システムを備えている。この燃料タンク密閉システムは、内燃機関(エンジン)と電動機(モータ)とを動力源として走行するハイブリッド自動車等の車両に搭載されている。
燃料タンク密閉システムは、燃料タンクFT、電磁タンク密閉弁SV、キャニスタCC、パージ制御弁PVおよびキャニスタ制御弁CVを備え、エンジンの各気筒毎の燃焼室に連通する吸気管IDに接続されている。
【0018】
ここで、電磁タンク密閉弁SVは、ソレノイド駆動式の開閉弁(以下電磁タンク封鎖弁)に圧力作動式の流量調整弁(以下圧力応動弁)を組み込んで構成される電磁弁である。この電磁タンク密閉弁SVは、電磁タンク封鎖弁の弁体であるカップバルブ1、圧力応動弁の弁体であるカップバルブ2、カップバルブ1を閉弁方向に付勢する第1スプリング3、およびカップバルブ2を開弁方向に付勢する第2スプリング4等を備えている。
【0019】
電磁タンク封鎖弁は、上述したカップバルブ1と第1スプリング3の他に、非磁性体製のスリーブ(パイプ)シャフト(ジョイント:以下シャフト)5等を介して、カップバルブ1を開弁方向に駆動する電磁アクチュエータ(以下ソレノイド)6、このソレノイド6を内蔵する合成樹脂製のソレノイドケース7、カップバルブ1を往復移動可能に収容(内蔵)する第1、第2ハウジング8、9、およびカップバルブ1の前後圧力差をキャンセルする圧力キャンセル機構を備えている。
【0020】
圧力応動弁は、上述したカップバルブ2と第2スプリング4の他に、カップバルブ2を往復移動可能に収容(内蔵)する第1、第2ハウジング8、9を備えている。これらの第1、第2ハウジング8、9は、電磁タンク封鎖弁と圧力応動弁とで共通使用される。
圧力応動弁は、背圧室(後述する)内に導入され、受圧壁(後述する)に対して閉弁方向に作用する蒸発燃料の圧力が所定値以上に大きい時にストローク量が小さくなり、あるいは全閉(ゼロストローク)して、燃料タンクFTからキャニスタCCへ向かう蒸発燃料の流量を少なくする。また、圧力応動弁は、背圧室内に導入され、受圧壁に対して閉弁方向に作用する蒸発燃料の圧力が所定値よりも小さい時にストローク量が大きくなり、あるいは全開(フルストローク)して、燃料タンクFTからキャニスタCCへ向かう蒸発燃料の流量を多くする。
【0021】
電磁タンク密閉弁SVは、後述する第1、第2流路間に挿入配置され、且つ第1ハウジング8の第1周壁11の内周側に第2ハウジング9の第2周壁12を圧入ではなく隙間嵌めにより緩やかに嵌挿されて組み込まれている。そして、第2ハウジング9は、カップバルブ1と円筒カラー13との間に保持されるダイヤフラム14の肉厚部(後述する)を介して、ソレノイドケース7の第1環状段差15と第1ハウジング8の第2環状段差16との間に挟み込まれて保持されている。
また、電磁タンク密閉弁SVは、ソレノイドケース7の結合フランジ17の結合端面と第1ハウジング8の結合フランジ18の結合端面とを張り合わせた後、結合フランジ17、18をかしめ固定するための金属プレート19を用いて結合することで、ソレノイド6とバルブユニットとが結合一体化されている。
【0022】
エンジンは、例えばハイブリッド自動車等の車両に搭載された車両走行用エンジンであって、複数の気筒(シリンダ)を有している。このエンジンは、エアクリーナで濾過された清浄な吸気とインジェクタより噴射された燃料との混合気を各気筒の燃焼室内において燃焼するガソリンエンジンが採用されている。これにより、エンジンの燃料としてガソリンが使用される。
【0023】
エンジンの各気筒の吸気ポートには、エアクリーナを通過した吸入空気(以下吸気)が流れる吸気通路21を形成する吸気ダクト(吸気管)IDが接続され、また、エンジンの各気筒の排気ポートには、各気筒の燃焼室から排出された排出ガス(以下排気)が流れる排気通路を形成する排気ダクト(排気管:図示せず)が接続されている。
なお、吸気管ID内には、エンジンの各気筒毎の燃焼室内に連通する吸気通路21内を流れる吸気の流量を調整する吸気絞り弁(スロットル弁)22が設けられている。
【0024】
また、燃料タンク密閉システムは、液体燃料(内燃機関の燃料)を貯留する燃料タンクFTへの給油作業が行われる際に電磁タンク密閉弁SVのカップバルブ1を開弁(開放)し、燃料タンクFTの燃料貯留室23内で発生した蒸発燃料をキャニスタCCの吸着室24内に回収するようにした給油専用キャニスタシステムである。
この給油専用キャニスタシステムは、例えばハイブリッド自動車等の車両の走行や給油作業が行われていない車両停車等の非給油時では、燃料タンクFTの燃料貯留室23内の圧力が所定値以上に上昇しない限り、電磁タンク密閉弁SVのカップバルブ1の閉鎖状態を維持することが可能となる。
これにより、キャニスタCCの吸着室24内に収容保持された吸着体25に吸着保持されていた蒸発燃料を非給油時に効果的に吸気管IDの吸気通路21内に向かってパージすることが可能となる。
【0025】
燃料タンクFTは、所定の内容積を有する燃料タンク本体(以下タンクケース)、およびこのタンクケースの燃料貯留室23内に液体燃料を供給するフィラーパイプを備えている。タンクケースの内部には、エンジンの各気筒に個別に対応して搭載されるインジェクタへ供給するための液体燃料を貯留する燃料貯留室23が形成されている。
また、燃料タンクFTの車両搭載状態においてタンクケースの所定の部位(上方側の部位)には、フィラーパイプが接続されている。このフィラーパイプの内部には、車両の燃料給油口から燃料貯留室23へ液体燃料を供給する燃料給油流路が形成されている。また、フィラーパイプの燃料給油口には、その燃料給油口を閉塞するフューエルキャプ(図示せず)が装着されている。
【0026】
また、タンクケースの燃料貯留室23には、インジェクタへ液体燃料を圧送供給するフューエルポンプ(図示せず)が配設されている。また、タンクケースには、燃料貯留室23内の液体燃料の液面上の空間部分の圧力(蒸発燃料の圧力:タンク内圧)を検出する圧力センサ(図示せず)が設置されている。
この圧力センサは、タンクケースの内面に組み付けられており、タンクケースの燃料貯留室23における液面上の空間部分の圧力(タンク内圧)に対応した圧力信号をエンジン制御ユニット(電子制御装置:以下ECU)に対して出力する。
【0027】
キャニスタCCは、所定の内容積を有するキャニスタケースを備えている。このキャニスタケースの吸着室24内には、蒸発燃料を吸着する吸着体(例えば活性炭)25が収納されている。
キャニスタケースには、タンク(入口)ポート、パージ(出口)ポートおよび大気ポート(大気開放孔)がそれぞれ形成されている。
タンクポートには、内部に第1燃料蒸気(ベーパ)流路26が形成されたベーパ配管(第1流体流路管)が接続されている。また、パージポートには、内部に第2燃料蒸気(パージ)流路27が形成されたパージ配管(第2流体流路管)が接続されている。
【0028】
キャニスタCCは、パージ配管の第2燃料蒸気流路27を介して、吸気管IDのパージガス導入ポートと連通している。パージ配管は、スロットル弁22よりも吸入空気流方向の下流側(エンジンの吸気ポート側)に接続されている。なお、パージ配管の途中には、蒸発燃料(エバポガス、パージガス)のパージ量を調整するためのパージ制御弁PVが設けられている。
ベーパ配管は、燃料タンクFTのタンクケースの上部側に接続されている。なお、ベーパ配管の途中には、ベーパ配管内に形成される第1燃料蒸気流路26を閉鎖、開放する電磁タンク密閉弁SVが設けられている。
【0029】
パージ配管は、スロットル弁22よりも吸気の流れ方向の下流側(エンジンの吸気ポート側)に接続されている。なお、パージ配管の途中には、蒸発燃料(エバポガス)を含むパージガスのパージ量を調整するためのパージ制御弁PVが設けられている。
また、キャニスタケースの大気ポートには、内部に大気導入流路28が形成された大気導入配管が接続されている。この大気導入配管の大気導入ポートには、キャニスタCCの吸着室24内に流入する空気を濾過するエアフィルタAFが設けられている。なお、大気導入配管の途中には、必要に応じてキャニスタCCの大気開放孔を閉塞するキャニスタ制御弁CVが設けられている。
【0030】
本実施例では、燃料タンク密閉システムを搭載したハイブリッド自動車がモータで走行中は、吸気管IDの吸気通路21内に負圧が発生しないので、キャニスタCCの吸着室24内の吸着体25が吸着した蒸発燃料を吸気管IDの吸気通路21内に送り込むことができない。したがって、吸着室24内の吸着体25が蒸発燃料を吸着し過ぎてオーバーフローするのを防止するために、燃料タンクFTの燃料貯留室23とキャニスタCCの吸着室24との間の第1燃料蒸気流路26の途中に設置した電磁タンク密閉弁SVのカップバルブ1を閉弁(全閉)して燃料タンクFTとキャニスタCCとの連通状態を封鎖(密閉)する。
【0031】
また、燃料タンク密閉システムでは、燃料タンクFTへの燃料給油時、給油操作、つまり開口スイッチ(図示せず)等が設けられた給油口開口レバー(図示せず)を運転者(ドライバー)が操作することで、燃料タンク密閉システムを制御するECUに開口信号が入力され、開口信号を入力したECUは、電磁タンク密閉弁SVのカップバルブ1を開弁(全開)するので、燃料タンクFTの圧力を大気圧まで低下でき、フューエルキャップを開口しても、燃料タンクFTから燃料給油口を通して蒸発燃料が外気(大気)に放出するのを防止できる。
【0032】
次に、本実施例の電磁タンク密閉弁SVの詳細を
図1ないし
図3に基づいて説明する。 電磁タンク密閉弁SVは、燃料タンク密閉システムに組み込まれている。この電磁タンク密閉弁SVは、例えばハイブリッド自動車等の車両の走行や給油作業が行われていない車両停車等の非給油時に燃料タンクFTを密閉可能なソレノイド駆動式の電磁タンク封鎖弁、およびこの電磁タンク封鎖弁の開弁時に、燃料タンクFTの燃料貯留室23で発生した圧力流体である蒸発燃料の圧力(タンク内圧)に応じて動作する圧力応動弁(圧力作動式の流量調整弁)を備えている。
【0033】
電磁タンク密閉弁SVは、
図1および
図2に示したように、燃料タンクFTの燃料貯留室23とキャニスタCCの吸着室24とを接続するベーパ配管内に形成される第1燃料蒸気流路26の途中に、内部に中空部が形成されたハウジングを備えている。
電磁タンク密閉弁SVのハウジングは、合成樹脂製のソレノイドケース7と、内部を蒸発燃料が通り抜ける蒸発燃料流路を形成する合成樹脂製の第1、第2ハウジング(バルブケース)8、9とからなる3つの分割ケースによって構成されている。
【0034】
第1ハウジング8は、2つのカップバルブ1、2の移動方向と同一の軸線方向へ向かって真っ直ぐに延びる第1周壁11、この第1周壁11の下流側に設けられる第2環状段差16、第1周壁11の上流側外周に設けられる環状の結合フランジ18、第1周壁11の外側面から第1周壁11の軸線方向に対して直交する半径方向外側へ向かって真っ直ぐに延びるインレット(入口)パイプP1、および第1周壁11の下流端から第1周壁11の軸線方向外側へ向かって真っ直ぐに延びるアウトレット(出口)パイプP2等を備えている。
【0035】
また、第1、第2ハウジング8、9には、カップバルブ1をその軸線方向に往復移動可能に収納する第1弁室31、この第1弁室31に臨み、且つ蒸発燃料が通過可能な第1弁孔32、およびこの第1弁孔32を周囲を取り囲む環状の第1弁座(バルブシート)33が設けられている。
また、第1、第2ハウジング8、9には、カップバルブ2をその軸線方向に往復移動可能に収納する第2弁室34、この第2弁室34に臨み、且つ蒸発燃料が通過可能な第2弁孔35、およびこの第2弁孔35を周囲を取り囲む環状の第2弁座(バルブシート)36が設けられている。
【0036】
インレットパイプP1は、第1ハウジング8のケース本体である第1周壁11から外部(燃料タンク側)へ向けて突出する筒状または管状の第1流路管(入口パイプ)である。このインレットパイプP1は、第1周壁11の側面から半径方向外側へ突出するように第1周壁11に一体的に形成されている。また、インレットパイプP1の内部には、第1弁室31よりもガス流方向の上流側に位置する第1流路37が形成されている。
【0037】
アウトレットパイプP2は、第1ハウジング8のケース本体である第1周壁11から外部(キャニスタ側)へ向けて突出する筒状または管状の第2流路管(出口パイプ)である。このアウトレットパイプP2は、第1周壁11の端面から軸線方向外側へ突出するように第1周壁11に一体的に形成されている。また、アウトレットパイプP2の内部には、第2弁室34よりもガス流方向の下流側に位置する第2流路38が形成されている。
ここで、第1弁座33は、第2ハウジング9の第1隔壁41の第1弁室側面に設けられている。また、第2弁座36は、第1、第2ハウジング8、9の第2隔壁42の第2弁室側面に設けられている。
【0038】
また、ソレノイド6の構成部品(機能部品)であるプランジャストッパ(以下ストッパ:後述する)の環状段差には、第1スプリング3の端末を保持または係止する環状の第1スプリング座39が設けられている。
また、第2ハウジング9の第2周壁12の第1弁室側内周には、カップバルブ1を第1弁室31の軸線方向に往復移動可能に支持(案内)する複数の突条ガイド(図示せず)が設けられている。
【0039】
また、第1ハウジング8の第1周壁11の下流端には、カップバルブ2を第2弁室34の軸線方向に往復移動可能に支持(案内)する複数の突条ガイド(後述する)が設けられている。また、第1ハウジング8のアウトレットパイプP2と第1周壁11との間の環状段差には、第2スプリング4の端末を保持または係止する環状の第2スプリング座43が設けられている。
なお、本実施例の第1、第2ハウジング8、9の詳細は、後述する。
【0040】
次に、本実施例の電磁タンク封鎖弁を
図1および
図2に基づいて簡単に説明する。
電磁タンク封鎖弁は、燃料タンクFTから蒸発燃料が導入される第1弁室31に臨む第1弁座33に接離して第1弁室31に連通する第1弁孔32を閉鎖、開放するカップバルブ1と、カップバルブ1を第1弁室31の軸線方向の閉じ側(閉弁方向)に付勢する弾性力(スプリング力)を発生する第1スプリング3と、カップバルブ1を第1弁室31の軸線方向の開き側(開弁方向)に駆動するソレノイド6と、このソレノイド6を収容保持するソレノイドケース7とを備えている。
【0041】
第1スプリング3は、ソレノイド6の磁気吸引力に応じて動作するプランジャ44と、このプランジャ44の最大ストロークを規制するストッパ45との間に伸縮自在に収容されている。この第1スプリング3は、プランジャ44に対して、カップバルブ1を第1弁座33側へ押し当てる方向に付勢する付勢力(スプリング力)を発生する圧縮コイルスプリングである。
また、第1スプリング3は、螺旋状に巻装されるコイル46の内周側に磁路を形成する筒状のステータコア47、48の内側に形成されるプランジャ収容室49内において、プランジャ44の環状段差(プランジャ環状端面、スプリング座)とストッパ45の環状段差(ストッパ環状端面、スプリング座)との間で軸線方向に圧縮された状態で配置されている。
【0042】
ソレノイド6は、ソレノイドケース7に内蔵されて、非磁性体製のシャフト5を介して、カップバルブ1を第1弁室31の軸線(往復移動)方向の一方側(開弁方向)へ駆動するソレノイドアクチュエータである。
具体的には、ソレノイド6は、第1スプリング3、プランジャ44、ストッパ45、コイル46、ステータコア47、48、ヨーク51およびリングコア52等を備え、コイル46を通電することで可動子(プランジャ44)および固定子(ステータコア47、48、ヨーク51、リングコア52)を含む磁気回路を形成し、プランジャ44をステータコア47側に磁気吸引して、カップバルブ1をシャフト5の軸線方向に開閉駆動するソレノイドアクチュエータである。
【0043】
プランジャ44は、ステータコア48の内周側でソレノイド軸方向へ往復摺動自在に嵌合配置されている。このプランジャ44は、コイル46の磁力によりソレノイド軸方向の一方側へ向かって磁気吸引される可動コア(ムービングコア)である。
また、プランジャ44は、円筒カラー13の端面と当接する当接面、およびこの当接面で開口し、この開口側から奥側まで軸線方向に真っ直ぐに延びるプランジャ呼吸孔53を有している。
【0044】
プランジャ呼吸孔53は、ステータコア48のガイド孔54内でのプランジャ44の変位に伴うプランジャ後空間(プランジャ収容室49の容積変化部)の蒸発燃料等のガス流動を確保するために設けられている。プランジャ収容室49の容積変化部は、シャフト5の内部(軸方向空間であるシャフト呼吸孔55)を介して、プランジャ収容室49とカップバルブ1の内部(軸方向空間である中空部56)とを連通している。
なお、プランジャ呼吸孔53の第1弁室側には、シャフト5の軸線方向の基端部を圧入嵌合する圧入孔が設けられている。
【0045】
また、プランジャ44は、第1スプリング3のスプリング力によってカップバルブ1およびシャフト5と共に、第1弁座33側へ付勢される。また、プランジャ44の環状段差には、第1スプリング3の端末を保持または係止するスプリング座が設けられている。
ストッパ45は、カップバルブ1、シャフト5およびプランジャ44の軸線方向の移動距離(フルストローク量)を規制する規制部(クッションゴム)を保持している。このストッパ45は、ステータコア47の中心孔内に嵌め込まれている。また、ストッパ45の環状段差には、第1スプリング3の端末を保持または係止する第1スプリング座39が設けられている。
【0046】
コイル46は、電力の供給を受けると(電流印加または通電されると)、プランジャ44をステータコア47の磁気吸引部に引き寄せる磁力を発生する磁束発生手段(磁力発生手段)である。このコイル46は、絶縁性を有する合成樹脂(1次成形樹脂部、モールド樹脂部)製のコイルボビン(以下ボビン)57の円筒部の外周に、絶縁被膜を施した導線を複数回巻装したソレノイドコイルである。
また、コイル46は、発生磁力によってカップバルブ1、シャフト5およびプランジャ44をソレノイド軸方向の一方側(閉弁方向)へ駆動するものである。
【0047】
本実施例のソレノイド6においては、コイル46が通電されると、プランジャ44、ステータコア47、48、ヨーク51およびリングコア52等を磁束が集中して通る磁気回路が形成される。
ここで、本実施例のソレノイド6では、コイル46が通電(ON)されると、カップバルブ1、シャフト5、円筒カラー13、ダイヤフラム14およびプランジャ44が、第1スプリング3のスプリング力に抗して初期位置(デフォルト位置)からソレノイド軸方向の一方側へ(例えば全開位置に到達するまで)ストロークする。
また、コイル46への通電が停止(OFF)されると、第1スプリング3のスプリング力によってカップバルブ1、シャフト5、円筒カラー13、ダイヤフラム14およびプランジャ44がデフォルト位置に戻される。
【0048】
本実施例の固定子は、コイル46の内周側に磁路を形成する内周側固定コア(ステータコア47、48)と、コイル46の外周側に磁路を形成する外周側固定コア(ヨーク51の円筒部:図示せず)と、コイル46の軸線方向の一端側(先端側)を覆う先端側固定コア(ヨーク51の円環先端ヨーク)と、コイル46の軸線方向の他端側(基端側)を覆う基端側固定コア(リングコア52)とによって構成されている。
ステータコア47、48は、コイル46が通電されると励磁(磁化)される磁性金属(例えば鉄等の強磁性材料)よりなる。これらのステータコア47、48の内周側には、プランジャ44を往復摺動可能に支持する断面円形状のガイド孔54が形成されている。ステータコア48の内周面には、プランジャ44の外周面が直接摺動する摺動面が形成されている。
【0049】
また、ステータコア47の円環状の基端側端面には、プランジャ44をソレノイド軸方向の先端側に磁気吸引するための環状の磁気吸引部(円錐台形状の円錐面)が設けられている。この磁気吸引部は、コイル46への通電が停止(OFF)している時、プランジャ44の端面との間に所定の軸方向距離を隔てて対向配置された対向部である。
また、ステータコア47の磁気吸引部とステータコア48との間には、これらの間の磁束の流れを低減する環状の磁気抵抗部(肉薄部)が設けられている。
ヨーク51およびリングコア52は、コイル46が通電されると励磁(磁化)される磁性金属(例えば鉄等の強磁性材料)よりなる。ヨーク51の円環先端ヨークは、コイル46の軸線方向の先端側を円環状に塞ぐように覆っている。また、リングコア52は、コイル46の軸線方向の基端側を円環状に塞ぐように覆っている。
【0050】
ソレノイドケース7は、ソレノイド6の各構成部品を内蔵している。このソレノイドケース7は、コイル46より引き出された一対のコイル端末リードと外部回路(外部電源や外部制御回路:ECU)との接続を行うための外部接続用コネクタ58を備えている。このソレノイドケース7には、コイル46の外周部、およびコイル46の各コイル端末リードと各ターミナル59との導通接合部(接続部)を被覆して保護している。
ソレノイドケース7には、コイル46の軸線方向の両側および半径方向外側を被覆し、且つコイル46およびボビン57の周囲を円周方向に取り囲む円筒部、および一対のターミナル59の先端側(外部接続端子)を露出して収容するコネクタケースが設けられている。
【0051】
次に、本実施例の電磁タンク封鎖弁の圧力キャンセル機構を
図2に基づいて簡単に説明する。
円筒カラー13は、ダイヤフラム14を介して、カップバルブ1の端面に当接し、且つプランジャ44の端面に当接した状態で、シャフト5によってカップバルブ1およびプランジャ44と一体移動可能に連結されている。
円筒カラー13は、プランジャ44の端面との間に、カップバルブ1の中空部56とプランジャ44の外周側の空間(圧力キャンセル室61)とを連通する圧力キャンセル通路62を有している。
【0052】
圧力キャンセル通路62は、カップバルブ1の内周側とシャフト5の外周側との間に形成される連通路63を介して、カップバルブ1の中空部56と連通している。この圧力キャンセル通路62は、円筒カラー13の軸線方向に延びる軸方向孔、およびこの軸方向孔から半径方向外側(放射方向)に延びる複数の径方向孔により構成される。なお、軸方向孔の中心部は、シャフト5の軸線方向の両側が円筒カラー13の両端面から突出した状態で、円筒カラー13をその軸線方向に貫通する挿通孔としての機能を有している。
【0053】
シャフト5は、カップバルブ1、プランジャ44および円筒カラー13を一体移動可能に連結する非磁性体製で、且つ中空状の連結部材である。このシャフト5は、プランジャ44による軸線方向の一方側への駆動力をカップバルブ1に伝えると共に、プランジャ44に与えられる第1スプリング3の付勢力をカップバルブ1に伝えるものである。
また、シャフト5の軸線方向部の基端側には、プランジャ44のプランジャ呼吸孔53の大径孔である圧入孔に圧入される嵌合軸部が設けられている。
また、シャフト5の軸線方向の先端側は、カップバルブ1の中空部56内に突出する突出軸部が設けられている。この突出軸部の先端外周には、カップバルブ1の内周突出部との間に、中空部56を形成する環状の鍔部が設けられている。
【0054】
ダイヤフラム14は、その中央部を軸線方向(膜厚方向)に貫通する貫通孔を有する弾性変形部を有し、ゴム状弾性体(合成ゴム)によって薄膜円環状に形成されている。このダイヤフラム14は、ハウジングの中空部内に弾性変形自在に収容されている。
ダイヤフラム14は、第1ハウジング8とソレノイドケース7との間に形成される中空部を、カップバルブ1の中空部56の外側に形成される第1弁室31と、第1ハウジング8およびソレノイドケース7の外部に対して遮断された圧力キャンセル室61とに区画形成している。
【0055】
圧力キャンセル室61は、圧力キャンセル通路62、連通路63および中空部56を介して、第1弁室31と連通している。
ダイヤフラム14の弾性変形部の外周側には、弾性変形部よりも厚肉の外周端縁が設けられている。このダイヤフラム14の外周端縁は、ソレノイドケース7の第1環状段差15と第2ハウジング9の環状端面64との間の隙間を気密シールする環状の外周シール部65である。
ダイヤフラム14の弾性変形部の内周側には、弾性変形部よりも厚肉の内周端縁が設けられている。このダイヤフラム14の内周端縁は、カップバルブ1の環状端面と円筒カラー13の環状端面との間の隙間を気密シールする内周シール部66である。
【0056】
次に、本実施例の電磁タンク封鎖弁のカップバルブ1の詳細を
図2に基づいて説明する。
カップバルブ1は、合成樹脂によって所定のカップ形状に形成されており、ソレノイド6により駆動されるソレノイド駆動式の第1弁体である。このカップバルブ1は、第2ハウジング9の第1弁室31内において、第1弁室31の軸線方向に往復移動可能に収納されている。
また、カップバルブ1は、第1弁座33に着座可能な環状のバルブシール面を有している。このバルブシール面には、ゴム状弾性体製のシールゴム67が固定されている。
【0057】
カップバルブ1の内部には、中空部56が形成されている。また、カップバルブ1は、中空部56の周囲を円周方向に取り囲むスリーブを備えている。
スリーブは、中空部56と第1弁室31とに隔離(区画形成)している。中空部56の両端は、開放されている。
中空部56は、カップバルブ1のスリーブの一端側に形成された貫通孔、圧力キャンセル通路62を介して、圧力キャンセル室61と連通している。また、中空部56は、カップバルブ1のスリーブの他端側に形成されたカップ開口を介して、第1弁室31および第1弁孔32に連通している。
【0058】
次に、本実施例の圧力応動弁の詳細を
図2に基づいて説明する。
圧力応動弁は、電磁タンク封鎖弁のカップバルブ2の開弁時に、第1弁室31から第1弁孔32を経て蒸発燃料が導入される第2弁室34に臨む第2弁座36に対するストローク量に応じて第2弁室34を通り抜ける通過流量を調整するカップバルブ2と、カップバルブ2を第2弁室34の軸線方向の開き側(開弁方向)に付勢する弾性力(スプリング力)を発生する第2スプリング4とを備えている。
【0059】
カップバルブ2は、合成樹脂製によって所定のカップ形状に形成されている。このカップバルブ2は、電磁タンク封鎖弁の開弁時に、第1弁室31から第1弁孔32を経て第2弁室34内に導入される蒸発燃料の圧力と、第2スプリング4のスプリング力とのバランスによってカップバルブ2のストローク量(位置)が変化し、カップバルブ2のストローク量の変化に応じて第2弁室34および第2弁孔35を通り抜ける蒸発燃料の通過流量を調整する圧力作動式の第2弁体である。
【0060】
カップバルブ2は、内部に第1弁室31から第1弁孔32を経て蒸発燃料の圧力が導入される背圧室(圧力室)71、第2弁室側が開口し、内部に背圧室71が形成される筒壁72、およびこの筒壁72の第2弁室側に対して反対側を閉鎖し、且つ第2弁室34、特に背圧室71内に導入される蒸発燃料の圧力を受ける受圧壁(閉鎖壁)73を有している。
背圧室71は、第1弁孔32側の開口部から奥側の受圧壁73まで延びる軸方向孔である。この背圧室71内には、カップバルブ2の受圧壁73に対して、カップバルブ2の閉弁方向(カップバルブ2を第2弁座36に押し当てる側:閉じ側)に作用する蒸発燃料の圧力(カップバルブ2の背圧)が導入される。背圧室71は、筒壁72の一端側に形成されたカップ開口を介して、第1弁孔32および第2弁室34と連通している。
【0061】
筒壁72には、背圧室71の軸線方向に対して直交する方向に開口した複数の横穴74が形成されている。これらの横穴74は、筒壁72の内部と外部とを連通する内外連通孔である。複数の横穴74は、筒壁72の周方向に所定の間隔(例えば等間隔)で設けられている。また、背圧室71は、筒壁72に形成された複数の横穴74を介して、第2弁室34の上流側部(受圧壁73よりも上流側の第2弁室34)と連通している。
受圧壁73は、第2弁室34から第2流路38へ向かう蒸発燃料の通過流量を制限する絞り孔75を有している。この絞り孔75は、受圧壁73を貫通して背圧室71と第2弁室34の下流側部(受圧壁73よりも下流側の第2弁室34)および第2流路38とを連通している。また、絞り孔75は、第2弁孔35よりも小さい流路断面積を有している。また、背圧室71は、受圧壁73に形成された絞り孔75を介して、第2弁室34の下流側部および第2流路38と連通している。
【0062】
第2スプリング4は、カップバルブ2と第1ハウジング8との間に伸縮自在に収容されている。この第2スプリング4は、カップバルブ2に対して、カップバルブ2を第2弁座36から引き離す側(開弁方向)へ向かって付勢する付勢力(スプリング力)を発生する圧縮コイルスプリングである。
また、第2スプリング4は、第2弁室34内において、カップバルブ2のスプリング座と第1ハウジング8の第2スプリング座43との間で軸線方向に圧縮された状態で配置されている。
【0063】
次に、本実施例の第1、第2ハウジング8、9の詳細を
図2および
図3に基づいて説明する。
ここで、ソレノイドケース7および第1ハウジング8は、互いに所定の軸方向距離を隔てて対向する2つの第1、第2環状段差15、16を有している。そして、第2ハウジング9は、ダイヤフラム14の外周シール部65を介して、2つの第1、第2環状段差15、16間に挟み込まれて保持されている。
第1ハウジング8には、第1、第2ハウジング8、9内に形成される第2中空部(弁室、流路)を、第2弁室34と第2流路38とに区画する環状の第2隔壁42が設けられている。なお、第2隔壁42の内部には、第2弁室34と第2流路38を連通する第2連通孔である第2弁孔35が貫通形成されている。
【0064】
第2ハウジング9には、第1弁室31、第1弁孔32、第1弁座33、第2弁室34、第2弁孔35、および第2弁座36が設けられている。
第2ハウジング9には、この第2ハウジング9内に形成される第1中空部(弁室)を2つの第1、第2弁室31、34に区画する環状の第1隔壁41が設けられている。
なお、第1隔壁41の内部には、2つの第1、第2弁室31、34を連通する第1連通孔である第1弁孔32が貫通形成されている。また、第1隔壁41は、第1ハウジング8の第2スプリング座43との間に第2弁室34を形成すると共に、カップバルブ2の最大ストローク量を規制する環状の規制壁として機能を有している。
【0065】
第1ハウジング8は、第2ハウジング9の周囲を周方向に取り囲む筒状の第1周壁11、およびソレノイドケース7との結合部を有している。
ソレノイドケース7と第1ハウジング8との結合部は、互いに対向配置される結合フランジ17、18の結合端面を張り合わせて、金属プレート19によりかしめ結合されている。
なお、第1ハウジング8の結合フランジ18には、ソレノイドケース7の結合フランジ17の外周に嵌合する環状部が設けられている。
【0066】
第1ハウジング8には、第2スプリング4の端末を保持または係止する環状の第2スプリング座43が設けられている。この第1ハウジング8の第1周壁11には、第1弁室31の軸線方向に対して直交する半径方向に開口し、第1周壁11の内部(第1弁室31)と外部(第1流路37)とを連通する複数の横穴(内外連通孔)77が設けられている。 また、第1ハウジング8には、カップバルブ1を第1弁室31の軸線方向に往復移動可能に支持(案内)する複数の突条ガイド(図示せず)、およびカップバルブ2を第2弁室34の軸線方向に往復移動可能に支持(案内)する複数の突条ガイド79が設けられている。
【0067】
第2ハウジング9は、第1周壁11内に嵌挿されて、第1弁室31の周囲を周方向に取り囲む筒状の第2周壁12を有している。この第2周壁12の軸線方向の一端側(ソレノイド側)の外周には、環状の第1リング溝81が全周に設けられている。また、第2周壁12の軸線方向の他端側(第2流路側)の外周には、環状の第2リング溝82が全周に設けられている。
第1ハウジング8の第1周壁11の内周面と第1リング溝81の溝底面との間には、環状のOリング91が装着されている。このOリング91は、第1弁室31から結合部に形成される隙間を通り抜けて外部へ漏出する蒸発燃料の通過を阻止する第1シール材である。
第1ハウジング8の第1周壁11の内周面と第2リング溝82の溝底面との間には、環状のOリング92が装着されている。このOリング92は、第1弁室31から第2弁室34または第2流路38へ漏出する蒸発燃料の通過を阻止する第2シール材である。
【0068】
[実施例1の組付方法]
本実施例のソレノイド6およびソレノイドケース7に対する電磁タンク封鎖弁のバルブアッシー、圧力応動弁のバルブアッシーおよび第1、第2ハウジング8、9の組付方法を
図2および
図3に基づいて簡単に説明する。
【0069】
先ず、ソレノイドケース7にコイル46、ステータコア47、48、ヨーク51およびリングコア52等をインサート成形し、更に、プランジャ収容室49内にストッパ45、第1スプリング3およびプランジャ44を挿入しておく。
ここで、プランジャ44をソレノイドケース7内に組み込む前に、予め電磁タンク封鎖弁のバルブアッシーとプランジャ44とを組み付けておくことが望ましい。
【0070】
すなわち、先ずカップバルブ1のバルブシールにシールゴム67を取り付ける。その後に、シャフト5の外周に円筒カラー13、ダイヤフラム14の内周シール部66、カップバルブ1の連結部を嵌め合わせた状態で、プランジャ44のプランジャ呼吸孔53の圧入孔内にシャフト5の基端部(嵌合軸部)を圧入することで、プランジャ44の端面とシャフト5の鍔部との間に円筒カラー13、ダイヤフラム14の内周シール部66、カップバルブ1の連結部を挟み込んで保持する。
これにより、電磁タンク封鎖弁のバルブアッシーとプランジャ44とを組み付けた後に、これらをストッパ45および第1スプリング3と一緒にソレノイドケース7内に組み込むことにより、ソレノイドケース7に対するソレノイド6の機能部品および電磁タンク封鎖弁のバルブアッシーの組み付けが終了する(第1組付工程)。
【0071】
次に、第1ハウジング8の第2弁室34内に第2スプリング4を挿入する。
次に、第2ハウジング9の第1、第2リング溝81、82にOリング91、92を嵌め込む。このとき、Oリング91、92の一部は、第2ハウジング9の第2周壁12の外周面よりも半径方向外側に突出する。
次に、第2ハウジング9の第2弁室34内にカップバルブ2を挿入する。
【0072】
次に、カップバルブ2が組み込まれた第2ハウジング9をカップバルブ2の受圧壁73を先頭にして、第1ハウジング8の第1周壁11の開口側から第1ハウジング8の収容室内に嵌め込む。このとき、第2ハウジング9の第2周壁12の開口側の外周凸部93が第1ハウジング8の第1周壁11の開口端の環状端面に当接するまで第1ハウジング8の第1周壁11の内周側に第2ハウジング9の第2周壁12が隙間嵌めにより組み込まれる。 このとき、第1ハウジング8の第1周壁11の内周と第2ハウジング9の第2周壁12との間の隙間は、Oリング91、92によってシールされる。
【0073】
これにより、ソレノイド6およびソレノイドケース7と第1ハウジング8との間の空間内に電磁タンク封鎖弁のバルブアッシーと圧力応動弁のバルブアッシーと第2ハウジング9とが組み込まれることにより、ソレノイド6およびソレノイドケース7に対する電磁タンク封鎖弁のバルブアッシー(カップバルブ1および圧力キャンセル機構等)、圧力応動弁のバルブアッシー(カップバルブ2、第2スプリング4)および第1、第2ハウジング8、9の組み付けが終了する(第2組付工程)。
【0074】
[実施例1の効果]
以上のように、本実施例の燃料タンク密閉システムに使用される電磁タンク密閉弁においては、第1ハウジング8の第1周壁11の内周側に第2ハウジング9の第2周壁12を隙間嵌めにより組み込むことで、第1ハウジング8に設けられる2つの第1、第2流路37、38間に、電磁タンク封鎖弁のバルブアッシー(カップバルブ1および圧力キャンセル機構等)を収納する第1弁室31と、圧力応動弁のバルブアッシー(カップバルブ2、第2スプリング4)を収納する第2弁室34とを形成することができる。
【0075】
これによって、2つの第1、第2ハウジング8、9の結合端面を溶着する必要がないため、第1ハウジング8と第2ハウジング9との接合部同士を溶着する時に発生する熱によって、電磁タンク封鎖弁のカップバルブ1が着座する第1弁座33のバルブシート面に歪みが発生するのを防止することができる。また、第1ハウジング8の第1周壁11の内周側に第2ハウジング9の第2周壁12を圧入嵌合していないので、同様に、第1弁座33のバルブシート面に歪みが発生するのを防止することができる。したがって、電磁タンク封鎖弁の閉弁時、つまり燃料タンクFTの密閉時における、第1弁座33に対するカップバルブ1のガスシール性の低下を防止することができる。
【0076】
また、2つの第1、第2ハウジング8、9を溶着する必要がないため、第1ハウジング8と第2ハウジング9との接合部同士を溶着する時に発生する熱によって、圧力応動弁の第2スプリング4が係止または保持される第2スプリング座43の座面に歪みが発生するのを防止することにより、第2スプリング4のスプリング力が予め決められている設定値から変化することはない。これにより、蒸発燃料の圧力変化に対する圧力応動弁のカップバルブ2のストローク変化特性、およびカップバルブ2のストローク変化に対する蒸発燃料の流量特性を安定させることができる。
【0077】
また、第1ハウジング8の第1周壁11と第2ハウジング9の第2周壁12との間にOリング91を介装しているので、第1弁室31からソレノイドケース7と第1ハウジング8との結合部に形成される隙間を通り抜けてソレノイドケース7および第1ハウジング8の外部へ漏出する蒸発燃料の通過を阻止することができる。つまり電磁タンク密閉弁の外部へ蒸発燃料が漏れるのを防止することができる。
また、第1ハウジング8の第1周壁11と第2ハウジング9の第2周壁12との間にOリング92を介装しているので、第1弁室31から第2弁室34または第2弁室34よりも下流側の第2流路38へ漏出する蒸発燃料の通過を阻止することができる。つまりカップバルブ2が第2弁座36に着座している時(圧力応動弁の全閉時)に、第1弁室31から第2弁室34への蒸発燃料の漏れを防止することができる。
【0078】
[変形例]
本実施例では、本発明の電磁弁を、例えば燃料タンク密閉システムに組み込まれた電磁タンク密閉弁SVに適用しているが、これに限定する必要はなく、蒸発燃料処理装置に組み込まれるパージ制御弁PVやキャニスタ制御弁CV等の他の電磁弁(電磁制御弁)に適用しても良い。なお、流体としては、エア(空気)や蒸発燃料等の気体だけでなく、気相冷媒等の気体、水、燃料、オイルや液相冷媒等の液体、あるいは気液二相状態の流体を使用することができる。また、ソレノイドのコイルへの電圧値または電流値を増加する程、第1弁体のストローク量が大きく、または小さくなるようにしても良い。
【0079】
本実施例では、本発明の電磁弁に組み込まれる電磁制御弁を、ソレノイド6のコイル46の磁力によってプランジャ44がコア側に引き寄せられた際に、プランジャ44の動作に連動するカップバルブ1が開弁するノーマリクローズタイプ(常閉型)の電磁タンク封鎖弁に適用したが、本発明の電磁弁を、ソレノイドのコイルの磁力によってプランジャがコア側に引き寄せられた際に、プランジャの動作に連動する第1弁体が閉弁するノーマリオープンタイプ(常開型)の電磁制御弁に適用しても良い。
【0080】
本実施例では、第1ハウジング8に第2スプリング座43および突条ガイド79を設けているが、第2ハウジング9に第2スプリング座43または突条ガイド79を設けても良い。
本実施例では、2つの第1、第2ハウジング8、9に渡ってカップバルブ(第2弁体)2および第2スプリング4を移動可能に収納する第2弁室34を設けているが、第2ハウジング9のみに少なくともカップバルブ(第2弁体)2を移動可能に収納する第2弁室34を設けても良い。