(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自車両(1)において検知手段(40)により周辺領域(2)を検知した結果に基づき、当該自車両の運転を表示により支援する運転支援表示装置(10,2010,3010)であって、
前記自車両の前記周辺領域に存在する周辺対象物(3,3a)に関して、対象物情報(It,Ivv,Irv)を前記自車両の外部から受信する受信手段(30)と、
前記受信手段の受信した前記対象物情報により特定される前記周辺対象物が前記検知手段により検知されたか否かを、判定する判定手段(53,2053)と、
前記判定手段により否定判定がなされた場合に、当該否定判定がなされた前記周辺対象物の存在を強調表示する表示手段(60,3060)と、
前記周辺領域のうち前記周辺対象物が存在すると推定される部分領域(2a)を、前記受信手段の受信した前記対象物情報に基づき限定する限定手段(52,2052)とを、備え、
前記判定手段は、前記部分領域において前記周辺対象物が検知されたか否かを、判定することを特徴とする運転支援表示装置。
前記表示手段による強調表示の対象として前記自車両との衝突が予測される衝突対象物(3a)を、前記受信手段の受信した前記対象物情報により特定される前記周辺対象物の中から選定する選定手段(51)を、備えることを特徴とする請求項1に記載の運転支援表示装置。
前記対象物情報は、車車間通信及び路車間通信のそれぞれにより前記自車両の外部から前記受信手段の受信した情報(Ivv,Irv)を、含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の運転支援表示装置。
前記表示手段は、前記判定手段により肯定判定がなされた場合に、当該肯定判定がなされた前記周辺対象物の存在を前記強調表示とは異なる態様の注意表示を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の運転支援表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0015】
(第一実施形態)
図1に示すように、本発明の第一実施形態による運転支援表示装置10は、自動車である自車両1に搭載されている。運転支援表示装置10は、自車両1の乗員による運転を表示により支援する。具体的に運転支援表示装置10は、
図2,3に示すように、自車両1の周辺領域2に存在する周辺対象物3への注意喚起を、自車両1内の乗員に対して表示により実現する。ここで周辺領域2とは、本実施形態では、自車両1よりも前方に広がる設定範囲、例えば40m等の範囲をいう。また、周辺対象物3とは、周辺領域2に移動又は定位することで自車両1の走行を妨げる可能性がある障害物、例えば自転車を含んだ他車両、人工構造物、人間、動物等をいう。
【0016】
図1に示すように運転支援表示装置10は、自車両1の外部において走行状態又は停止状態にある他車両4(
図2,3も参照)との間では、車車間通信を行う。具体的に他車両4は、例えば車車間通信可能な自動車等であり、情報取得部4a、周辺検知部4b、情報処理部4c及び送信部4dを備えている。情報取得部4aは、例えばGPSセンサ及び速度センサ等を組み合わせてなり、他車両4の走行情報として走行位置、走行方向及び走行速度を取得する。周辺検知部4bは、例えば超音波センサ、ミリ波レーダ、車載カメラ等からなり、他車両4の周辺領域(図示しない)を検知する。情報処理部4cは、例えばマイクロコンピュータ等からなり、情報取得部4aと周辺検知部4bとに接続されている。情報処理部4cは、自車両1にとっての周辺対象物3となり得る障害物を、周辺検知部4bによる検知結果に基づき特定する。さらに情報処理部4cは、特定した障害物を判別するための障害物情報Ivvを、情報取得部4aによる取得情報及び周辺検知部4bによる検知結果に基づき生成する。ここで障害物情報Ivvには、障害物に関する情報として、種別、存在位置、進行方向及び進行速度が含まれる。送信部4dは、例えば送信アンテナ等からなり、情報処理部4cと接続されている。送信部4dは、車車間通信の規格に従う周波数帯での無線通信により、障害物情報Ivvを他車両4の周辺領域へと送信する。
【0017】
運転支援表示装置10はまた、自車両1の外部において設置状態にある路側機5(
図2,3も参照)との間では、路車間通信を行う。具体的に路側機5は、例えば路車間通信可能なビーコン等の交通インフラ又はモバイル通信用等の基地局であり、受信部5a、周辺検知部5b、情報処理部5c及び送信部5dを備えている。受信部5aは、例えば受信アンテナ等からなり、他車両4又は携帯機器からの送信情報を受信する。周辺検知部5bは、例えば路側カメラ等からなり、路側機5の周辺領域(図示しない)を検知する。情報処理部5cは、例えばマイクロコンピュータ等からなり、受信部5aと周辺検知部5bとに接続されている。情報処理部5cは、自車両1にとっての周辺対象物3となり得る障害物を、受信部5aによる受信情報及び周辺検知部5bによる検知結果に基づき特定する。さらに情報処理部5cは、特定した障害物を判別するための障害物情報Irvを、受信部5aによる受信情報及び周辺検知部5bによる検知結果に基づき生成する。ここで障害物情報Irvには、障害物に関する情報として、種別、存在位置、進行方向及び進行速度が含まれる。送信部5dは、例えば送信アンテナ等からなり、情報処理部5cと接続されている。送信部5dは、路車間通信の規格に従う周波数帯での無線通信により、障害物情報Ivvを路側機5の周辺領域へと送信する。
【0018】
運転支援表示装置10は、こうした自車両1の外部要素4,5との間での通信により障害物情報Irv,Ivvを受信して周辺対象物3への注意喚起を行うために、情報取得部20、受信部30、周辺検知部40、情報処理部50及び表示部60を備えている。情報取得部20は、例えばGPSセンサ及び速度センサ等を組み合わせてなり、自車両1の走行状態に関する自車両情報Isとして、走行位置、走行方向及び走行速度を取得する。
【0019】
「受信手段」としての受信部30は、例えば受信アンテナ等からなり、自車両1の外部要素4,5からの障害物情報Irv,Ivvを所定のサンプリング周期で受信する。ここで受信部30は、自車両1よりも前方に位置する他車両4との距離が例えば40m等の設定距離以内に接近した場合に、周辺対象物3に関する対象物情報Itとして、障害物情報Irvを受信する。故にこの場合には、対象物情報Itにより特定される周辺対象物3は、障害物情報Irvにより特定される設定距離以内の障害物と一致する。また一方で受信部30は、自車両1よりも前方に位置する路側機5との距離が例えば40m等の設定距離以内に接近した場合に、周辺対象物3に関する対象物情報Itとして、障害物情報Ivvを受信する。故にこの場合には、対象物情報Itにより特定される周辺対象物3は、障害物情報Ivvにより特定される設定距離以内の障害物と一致する。
【0020】
以上より対象物情報Itには、車車間通信により少なくとも一台の他車両4から受信した障害物情報Irvと、路車間通信により少なくとも一つの路側機5から受信した障害物情報Ivvとが、含まれることになる。そこで本実施形態では、サンプリング周期毎に受信部30の受信した障害物情報Irv,Ivvが論理和処理されることで、対象物情報Itが取得されるようになっている。
【0021】
「検知手段」としての周辺検知部40は、例えば車載カメラ、超音波センサ、ミリ波レーダ等からなり、自車両1において周辺領域2を検知する。ここで、特に本実施形態の周辺検知部40は、自車両1よりも前方を撮影可能な車載カメラ41を少なくとも有してなり、周辺対象物3の含まれる周辺領域2を当該撮影により検知可能となっている。そこで本実施形態では、車載カメラ41により撮影可能な領域の全域を、周辺対象物3の検知対象とする周辺領域2の全域として定義している。尚、周辺検知部40については、本実施形態では運転支援表示装置10の構成要素として説明しているが、自車両1において運転支援表示装置10以外の構成要素であっても、勿論よい。
【0022】
情報処理部50は、例えばマイクロコンピュータ等からなり、情報取得部20と受信部30と周辺検知部40とに接続されている。情報処理部50は、処理プログラムの実行により機能的に構築される複数のブロック51,52,53,54を、有している。
【0023】
「選定手段」としての選定ブロック51は、対象物情報Itにより特定される少なくとも一つの周辺対象物3の中から、自車両1との衝突が予測される衝突対象物3aを、選定する。具体的に選定ブロック51は、まず、受信部30の受信した対象物情報Itにより、周辺対象物3を特定する。さらに選定ブロック51は、受信部30の受信した対象物情報Itと共に、情報取得部20の取得した自車両情報Isを利用することで、自車両1と周辺対象物3との衝突確率を算出する。その結果、算出した衝突確率が設定確率以上となった場合に選定ブロック51は、当該衝突確率以上の周辺対象物3を衝突対象物3aとして選定する。ここで衝突確率は、処理プログラム上にて実行されるシミュレータにより算出される。このとき、衝突対象物3aの存在位置及び自車両1の走行位置の対比から求められる離間距離と、衝突対象物3aの進行方向及び自車両1の走行方向と、衝突対象物3aの進行速度及び自車両1の走行速度とに基づくことで、衝突確率が算出される。また、衝突対象物3aの選定基準となる設定確率は、自車両1の安全を確保する観点において注意喚起が必要な衝突確率のうち例えば最も安全側の確率等に、適宜設定される。
【0024】
「限定手段」及び「設定手段」としての設定ブロック52は、周辺検知部40により周辺領域2の周辺対象物3として衝突対象物3aを検知するための検知範囲A及び検知パラメータPを、可変設定する。具体的に設定ブロック52は、車載カメラ41により実際に撮影される周辺領域2のうち検知範囲Aとして切り出すことで画像データ化する領域を、衝突対象物3aが存在すると推定される部分領域2a(
図2,3を参照)に、限定する。それと共に設定ブロック52は、検知範囲Aである部分領域2aの画像データから衝突対象物3aを認識するための検知感度を、検知パラメータPとして、当該感度の高くなる側へと変化させる。これら検知範囲A及び検知パラメータPの設定は、受信部30の受信した対象物情報Itと、情報取得部20の取得した自車両情報Isとに基づく。このとき、少なくとも衝突対象物3aの存在位置及び自車両1の走行位置が、検知範囲A及び検知パラメータPの設定に利用される。
【0025】
こうして設定ブロック52により設定された検知範囲Aは、周辺検知部40へと与えられることで、周辺領域2のうち部分領域2a分だけが画像データ化される。また、設定ブロック52により設定された検知パラメータPは、後に詳述する判定ブロック53へと与えられることで、部分領域2aの画像データに対する衝突対象物3aの検知感度が高められる。
【0026】
「判定手段」としての判定ブロック53は、周辺対象物3が周辺領域2において検知されたか否かを、受信部30の受信した対象物情報Itと、情報取得部20の取得した自車両情報Isとに基づき判定する。具体的に判定ブロック53は、選定ブロック51により周辺対象物3の中から選定された衝突対象物3aにつき、当該選定に利用された対象物情報It及び自車両情報Isを、設定ブロック52により限定された部分領域2aの画像データに基づく検知情報と照合させる。このとき、少なくとも衝突対象物3aの存在位置及び自車両1の走行位置と、検知パラメータPとして設定ブロック52により高められた検知感度とが、照合に利用される。そして、こうした照合の結果、対象物情報Itと部分領域2aの検知情報とがマッチングした場合に判定ブロック53は、周辺対象物3としての衝突対象物3aが周辺領域2のうち部分領域2aにおいて検知されたとの肯定判定、即ち当該対象物3aが自車両1から可視状態にあるとの判定を下す。一方、対象物情報Itと部分領域2aの検知情報とがアンマッチングの場合に判定ブロック53は、周辺対象物3としての衝突対象物3aが周辺領域2のうち部分領域2aにおいて検知されなかったとの否定判定、即ち当該対象物3aが自車両1から不可視状態にあるとの判定を下す。
【0027】
指令ブロック54は、判定ブロック53による判定結果に応じた表示指令を、表示部60に与える。具体的に指令ブロック54は、判定ブロック53により肯定判定がなされた場合には、可視状態にある周辺対象物3としての衝突対象物3aが周辺領域2に存在していることを注意喚起するように、注意表示Da(
図2参照)を表示部60に指令する。このとき指令ブロック54は、可視状態の衝突対象物3aに関する対象物情報Itを、注意表示Daの指令及び同対象物3aの選定時における自車両情報Isと共に、表示部60へと与える。一方で指令ブロック54は、判定ブロック53により否定判定がなされた場合には、不可視状態にある周辺対象物3としての衝突対象物3aが周辺領域2に存在していることを注意喚起するように、注意表示Daよりも強調された強調表示De(
図3参照)を表示部60に指令する。このとき指令ブロック54は、不可視状態の衝突対象物3aに関する対象物情報Itを、強調表示Deの指令及び同対象物3aの選定時における自車両情報Isと共に、表示部60へと与える。
【0028】
「表示手段」としての表示部60は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)ユニット61及び画像制御ユニット62を、有している。HUDユニット61は、例えば表示器及び光学系等を組み合わせてなり、表示形成した画像7を自車両1のウインドシールド6(
図2,3参照)へと投影する。その結果、ウインドシールド6へ投影された画像7は、注意表示Da又は強調表示Deとなる虚像として、自車両1内の乗員により視認可能に表示される。ここで、「投影部材」としてのウインドシールド6は、自車両1において周辺領域2の実像8を透過するため、自車両1内の乗員には、注意表示又は強調表示された虚像が当該実像8と重畳されて視認されることとなる。また、本実施形態のウインドシールド6における画像7の投影領域6aは、
図2,3に破線で示すように、自車両1のうち同シールド6の下部範囲に限定されている。
【0029】
画像制御ユニット62は、HUDユニット61によりウインドシールド6へ投影する画像7のデータを、指令ブロック54からの指令に従って生成する。具体的に画像制御ユニット62は、指令ブロック54から注意表示Daの指令を受けた場合には、対象物情報It及び自車両情報Isを利用することで、
図2に示す如き指示画像7aをデータ生成する。このとき指示画像7aは、可視状態にある周辺対象物3としての衝突対象物3aを同画像7aの虚像表示状態にて指示するように、生成される。ここで、特に本実施形態の指示画像7aは、衝突対象物3aの存在位置及び自車両1の走行位置に基づき生成されることで、ウインドシールド6を通して視認される衝突対象物3aの存在方向を、三角形を呈した簡易図形の先端により指示可能となっている。また、本実施形態の指示画像7aは、衝突対象物3aの進行方向及び自車両1の走行方向と、衝突対象物3aの進行速度及び自車両1の走行速度とに基づき生成されることで、図形の向きを適宜変化させて、衝突対象物3aの存在方向を的確に指示可能となっている。このようにしてデータ生成される指示画像7aは、HUDユニット61により表示形成されてウインドシールド6へと投影されることで、衝突対象物3aを対象とした注意表示Daの虚像となる。
【0030】
一方、指令ブロック54から強調表示Deの指令を受けた場合に画像制御ユニット62は、対象物情報It及び自車両情報Isを利用することで、
図3に示す如き対象物画像7bをデータ生成する。このとき対象物画像7bは、不可視状態にある周辺対象物3としての衝突対象物3aを具体的に模した図形となるように、生成される。例えば
図3は、衝突対象物3aが自転車である場合の対象物画像7bの形状を示しているが、衝突対象物3aが自転車以外であっても、それに応じた形状の対象物画像7bが生成される。ここで、特に本実施形態の対象物画像7bは、衝突対象物3aの存在位置及び自車両1の走行位置に基づき生成されることで、不可視状態にある衝突対象物3aの存在位置に対して投影領域6a内での可及的に近接した箇所に、虚像表示されるようになっている。また、本実施形態の対象物画像7bは、衝突対象物3aの進行方向及び自車両1の走行方向と、衝突対象物3aの進行速度及び自車両1の走行速度とに基づき生成されることで、図形の向きを適宜変化させて、当該対象物3aの進行状況を的確に報知可能となっている。さらに本実施形態では、
図3に示す如く対象物画像7bの近傍に虚像表示されることで、不可視状態にある衝突対象物3aの存在方向を指示するように、指示画像7aも併せて生成される。このようにして指示画像7aと共にデータ生成される対象物画像7bは、HUDユニット61により表示形成されてウインドシールド6へと投影されることで、衝突対象物3aを対象として注意表示Daとは異なる態様にて強調された強調表示Deの虚像となる。
【0031】
さて、ここまで説明した運転支援表示装置10による支援表示フローを、
図4に基づき以下に説明する。本支援表示フローは、自車両1のエンジンスイッチがオンされるのに応じて開始され、同エンジンスイッチがオフされるのに応じて終了する。
【0032】
具体的に支援表示フローのS101では、自車両1の外部要素4,5からの障害物情報Irv,Ivvを対象物情報Itとして受信したか否かを、受信部30により判定する。その結果、否定判定がなされる間は、S101を繰り返す一方、肯定判定がなされると、S102へ移行する。
【0033】
S102では、S101において受信した対象物情報Itにより特定される周辺対象物3の衝突確率が設定確率以上であるか否かを、選定ブロック51により判定する。その結果、否定判定がなされる間は、S101へ戻る一方、肯定判定がなされると、S103へ移行する。
【0034】
S103では、衝突確率が設定確率以上の周辺対象物3を衝突対象物3aとして、選定ブロック51により選定する。また続くS104では、周辺対象物3として衝突対象物3aを検知するための検知範囲A及び検知パラメータPを、設定ブロック52により設定する。
【0035】
さらに続くS105では、S104において設定された検知範囲Aに従って、周辺領域2のうち部分領域2aを周辺検知部40により検知して画像データ化する。またさらに続くS106では、周辺対象物3としての衝突対象物3aが周辺領域2の部分領域2aにおいて検知されたか否かを、S104において設定された検知パラメータPに従って、判定ブロック53により判定する。
【0036】
S106により肯定判定がなされた場合には、S107へ移行する。S107では、S106により肯定判定がなされた周辺対象物3としての衝突対象物3aの存在を、指令ブロック54から表示部60への指令に従った注意表示Daにより、注意喚起する。一方、S106により否定判定がなされた場合には、S108へ移行する。S108では、S106により否定判定がなされた周辺対象物3としての衝突対象物3aの存在を、指令ブロック54から表示部60への指令に従った強調表示Deにより、注意喚起する。そして、これらS107,S108のいずれの実行終了後にも、S101へと戻ることになる。
【0037】
(作用効果)
以上説明した第一実施形態の作用効果を、以下に説明する。
【0038】
第一実施形態によると、自車両1の外部から受信した対象物情報Itにより特定される周辺対象物3が周辺領域2において検知されなかった場合には、周辺対象物3が不可視状態にあるとして、その存在が強調表示され得る。これによれば、周辺対象物3を不可視状態にする死角形成物9(
図3参照)については、存在の認識も種別の認識も不要にしながら、当該不可視状態にある周辺対象物3については、外部からの対象物情報Itに基づき特定して強調表示Deによる注意喚起を実現できる。したがって、高いロバスト性を達成することが可能となる。
【0039】
また、第一実施形態によると、受信した対象物情報Itにより特定される周辺対象物3の中から、強調表示Deの対象として選定される周辺対象物3は、自車両1との衝突が予測される衝突対象物3aに絞られる。これによれば、ロバスト性が高くなった分、不可視状態であっても衝突の可能性は低い周辺対象物3までもが強調表示されることで、自車両1内の乗員が煩わしさを感じるようなことにつき、抑制が可能となる。
【0040】
さらに、第一実施形態によると、周辺領域2のうち周辺対象物3の検知有無が判定される領域は、対象物情報Itに基づくことで、周辺対象物3の存在が推定される部分領域2aに限定されるので、周辺対象物3の検知から判定までに要する時間を短縮できる。これによれば、不可視状態の周辺対象物3を早期に特定して、リアルタイムな強調表示Deにより注意喚起することが可能となる。
【0041】
またさらに、第一実施形態によると、周辺対象物3を検知するために設定される検知パラメータPは、受信した対象物情報Itに基づき検知感度の高くなる側へと変化するので、不可視状態の周辺対象物3が確実に検知され得る。これによれば、不可視状態の周辺対象物3を検知できないことによるロバスト性の低下につき、抑制することが可能となる。
【0042】
加えて、第一実施形態によると、車車間通信及び路車間通信のそれぞれにより自車両1の外部要素4,5から受信した障害物情報Ivv,Irvを含む対象物情報Itに基づき、周辺対象物3の検知有無が判定される。これによれば、周辺対象物3を不可視状態にする死角の形成物は認識できなくても、当該不可視状態の周辺対象物3については、自車両1の外部要素4,5との通信を利用して正確に特定できる。故に、高いロバスト性も相俟って、不可視状態の周辺対象物3に対する強調表示Deの精度を、向上させることが可能となる。
【0043】
また加えて、第一実施形態によると、受信した対象物情報Itにより特定される周辺対象物3につき、検知された場合には可視状態としての存在が注意表示され得る一方、検知されなかった場合には不可視状態としての存在が強調表示され得る。これによれば、注意喚起の重要度が増す不可視状態の周辺対象物3に対しては、可視状態の周辺対象物3に対する注意表示Daとは異なる態様にて強調表示が行われることで、当該強調表示Deの認識性を高めることが可能となる。しかも、可視状態の周辺対象物3に対する注意表示Daが不可視状態の周辺対象物3に対して誤って行われることを、高いロバスト性により抑制することも可能となる。
【0044】
さらに加えて、第一実施形態によると、自車両1において周辺領域2の実像8を透過するウインドシールド6へ画像7が投影されることで、注意表示Da又は強調表示Deとしての虚像表示が行われる。ここで注意表示Daは、周辺対象物3を指示する指示画像7aの虚像表示により、実現される。故に、周辺対象物3の指示に特化した比較的簡素な指示画像7aが虚像表示されることによれば、可視状態の周辺対象物3に対する注意表示Daに起因して自車両1内の乗員が煩わしさを感じることにつき、抑制が可能となる。また、一方で強調表示Deは、少なくとも周辺対象物3を模した対象物画像7bの虚像表示により、実現される。故に、不可視状態の周辺対象物3を模すことで具体的なイメージを与え得る対象物画像7bが虚像表示されることによれば、強調表示Deの認識性を高めることが可能となる。
【0045】
(第二実施形態)
図5に示すように本発明の第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。第二実施形態による情報処理部2050は、設定ブロック52に代わる機能ブロックとして、限定ブロック2052を有している。
【0046】
「限定手段」及び「判定手段」としての限定ブロック2052は、検知パラメータPについては第一実施形態と同様に可変設定する一方、画像データ化する検知範囲Aについては周辺領域2の全域に固定設定する。それと共に限定ブロック2052は、画像データ化された周辺領域2全域のうち、周辺対象物3である衝突対象物3aの検知有無が判定ブロック2053により判定される領域を、限定する。具体的に限定ブロック2052は、周辺領域2のうち衝突対象物3aが存在すると推定される部分領域2aを、判定ブロック2053による判定対象領域Jとして限定する。こうした判定対象領域Jとしての部分領域2aの限定は、受信部30の受信した対象物情報Itと、情報取得部20の取得した自車両情報Isとに基づく。このとき、少なくとも衝突対象物3a及び自車両1の走行位置の存在位置が、部分領域2aの限定に利用される。
【0047】
こうして限定ブロック2052により設定された検知範囲Aは、周辺検知部40へと与えられることで、周辺領域2全域が画像データ化される。また、限定ブロック2052により設定された検知パラメータP及び判定対象領域Jは、後に詳述する判定ブロック2053へと与えられることで、当該領域Jとなる部分領域2aの画像データに対する衝突対象物3aの検知感度が高められる。
【0048】
このような限定ブロック2052を有する情報処理部2050において、「判定手段」としての判定ブロック2053は、第一実施形態に準じて対象物情報It及び自車両情報Isと照合させる情報を、周辺領域2全域の画像データのうち、限定ブロック2052により限定された部分領域2aの画像データに基づく検知情報とする。それ以外の点について判定ブロック2053は、第一実施形態の判定ブロック53と同様に機能する。
【0049】
さて、ここまで説明の如き情報処理部2050を備えた運転支援表示装置2010は、
図6に示すように、S104,S105がそれぞれS2104,S2105に変更された支援表示フローを、実行する。具体的にS2104では、限定ブロック2052により、検知範囲A及び検知パラメータPを設定すると共に、判定ブロック2053での判定対象領域Jを周辺領域2の部分領域2aに限定する。さらにS2105では、S2104において設定された検知範囲Aに従って、周辺領域2の全域を周辺検知部40により検知して画像データ化する。これらの以外の点についは、第一実施形態と同様に支援表示フローが実行される。
【0050】
以上説明した第二実施形態によると、第一実施形態と同様の作用効果を発揮することが可能となる。
【0051】
(第三実施形態)
図7に示すように本発明の第三実施形態は、第一実施形態の変形例である。第三実施形態では、一台の他車両4からの障害物情報Ivvのみが対象物情報Itとして受信部30により受信されている状況につき、想定される。かかる想定状況下では、他車両4が自車両1の周辺領域2から離れたことで、当該周辺領域2には周辺対象物3が存在しているにも拘らず、対象物情報Itとなる障害物情報Ivvが他車両4から途絶えてしまう懸念がある。
【0052】
そこで、第三実施形態による情報処理部3050では、追加の機能ブロックとして、保持ブロック3055を有している。保持ブロック3055は、対象物情報Itとして唯一受信していた障害物情報Ivvが他車両4から途絶えた場合に、当該途絶直前のサンプリング周期に対象物情報Itとして受信していた障害物情報Ivvを、今度は保持情報Ithとして保持する。ここで保持情報Ithの保持機能は、衝突対象物3aが選定される間に限って、継続される。そして、こうした保持情報Ithの保持状態下、選定ブロック51による衝突対象物3aの選定、設定ブロック52による検知範囲A及び検知パラメータPの設定、並びに判定ブロック53による周辺対象物3の検知有無の判定は、当該保持情報Ithに基づくこととなる。
【0053】
また、保持情報Ithの保持状態下、保持ブロック3055から表示部3060には、指令ブロック54を通じて当該保持情報Ithが与えられる。そこで、第三実施形態による「表示手段」としての表示部3060では、かかる保持情報Ithと共に強調表示Deの指令を受けた場合の画像制御ユニット3062により、強調表示Deとなる対象物画像7b及び指示画像7aの虚像表示が変化させられる。このときには例えば、対象物画像7b及び指示画像7aの虚像表示を、第一実施形態と同様な実線表示(
図3参照)から、
図8に示す如き破線表示に変化させてもよい。あるいは図示はしないが、対象物画像7b及び指示画像7aの虚像表示を、点滅表示させてもよい。
【0054】
さて、ここまで説明の如き情報処理部3050及び表示部3060を備えた運転支援表示装置3010では、支援表示フローと並列して、
図9に示す如きロスト表示フローが実行される。本ロスト表示フローも、自車両1のエンジンスイッチがオンされるのに応じて開始され、同エンジンスイッチがオフされるのに応じて終了する。
【0055】
具体的にロスト表示フローのS3100では、直前のサンプリング周期に唯一受信していた対象物情報Itとしての障害物情報Ivvが途絶えたか否かを、受信部30により判定する。その結果、否定判定がなされる間は、S3100を繰り返す一方、肯定判定がなされると、S3101へ移行する。
【0056】
S3101では、途絶前に受信していた障害物情報Ivvを保持情報Ithとして、保持ブロック3055により保持する。また続くS3102では、S3101において保持した保持情報Ithにより特定される周辺対象物3の衝突確率が設定確率以上であるか否かを、選定ブロック51により判定する。その結果、否定判定がなされると、S3100へ戻る一方、肯定判定がなされると、S103へ移行する。ここで、S3100へと戻るときは、受信部30でのサンプリング周期が切り替わっていることで、当該S3100の実行直前には、障害物情報Ivvが非受信状態となっている。そのため、S3101には移行することなく、保持情報Ithの保持状態が終了することになる。また一方で、S103及びそれに後続するS104〜S107については、支援表示フローの場合に準じたものとなるので、説明を省略する。但し、S106により否定判定がなされた場合には、S3108へと移行する。
【0057】
S3108では、S106により否定判定がなされた周辺対象物3としての衝突対象物3aの存在を、指令ブロック54から表示部60への指令に従って支援表示フローの場合とは変化させた強調表示Deにより、注意喚起する。尚、S3108の実行終了後並びに説明省略のS107の実行終了後には、S3100へと戻ることになる。
【0058】
以上説明した第三実施形態によると、他車両4からの対象物情報Itが途絶えた場合には、当該途絶前に受信していた対象物情報Itとしての保持情報Ithに基づき、周辺対象物3の検知有無が判定される。これによれば、車車間通信相手の他車両4が周辺領域2から離れることに起因してロバスト性が低下することにつき、抑制が可能となる。尚、このような第三実施形態に準じて第二実施形態を変形させることも、勿論可能である。
【0059】
(他の実施形態)
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0060】
具体的に、第一及び第二実施形態に関する変形例1では、選定ブロック51による衝突対象物3aの選定機能を、実現しなくてもよい。ここで、かかる変形例1の場合に他ブロック52,53,54,2052,2053及び画像制御ユニット62による各機能は、衝突対象物3aを周辺対象物3の全てと読み替えることで、実現可能となる。
【0061】
第一及び第三実施形態に関する変形例2では、設定ブロック52による検知範囲Aの設定として、周辺領域2に対して行われる部分領域2aの限定機能を、実現しなくてもよい。また、第二実施形態に関する変形例3では、限定ブロック2052による判定対象領域Jとしての部分領域2aの限定機能を、実現しなくてもよい。ここで、これら変形例2,3の場合に判定ブロック53,2053による判定機能は、部分領域2aを周辺領域2の全域と読み替えることで、実現可能となる。また、変形例2の場合には、周辺検知部40として車載カメラ41を有している必要性はなく、例えば超音波センサ又はミリ波レーダ等といった車載カメラ41以外の手段により周辺領域2を検知する周辺検知部40を、採用してもよい。
【0062】
第一〜第三実施形態に関する変形例4では、設定ブロック52又は限定ブロック2052により検知パラメータPを、検知感度とは異なる要因により可変設定してもよい。また、第一〜第三実施形態に関する変形例5では、設定ブロック52又は限定ブロック2052により検知パラメータPを、設定しない又は固定設定してもよい。
【0063】
第一〜第三実施形態に関する変形例6では、自車両情報Iss及び対象物情報Itに基づき予測される衝突までの時間等を考慮して、周辺領域2として扱う範囲を可変設定してもよい。ここで、かかる変形例6の場合には、対象物情報Itとしての障害物情報Irv,Ivvの受信可能距離についても、周辺領域2と同様に可変設定してもよい。
【0064】
第一〜第三実施形態に関する変形例7では、車車間通信による障害物情報Ivv及び路車間通信による障害物情報Irvのうち一方を、対象物情報Itとして受信しなくてもよい。また、第一〜第三実施形態に関する変形例8では、車車間通信による障害物情報Ivv及び路車間通信による障害物情報Irvの少なくとも一方に加えて又は代えて、対象物情報Itとなり得る障害物情報を、例えば衛星通信等により受信してもよい。
【0065】
第一〜第三実施形態に関する変形例9では、
図10,11に破線で示すように、ウインドシールド6における画像7の投影領域6aを、同シールド6の下部から上方に広がる範囲に拡大してもよい。ここで、かかる変形例9の場合に指示画像7aは、衝突対象物3aの存在位置及び自車両1の走行位置に基づき生成されることで、
図10に示すように、衝突対象物3aの存在位置を直接的に指示してもよい。また、変形例9の場合に対象物画像7bは、衝突対象物3aの存在位置及び自車両1の走行位置に基づき生成されることで、
図11に示すように、衝突対象物3aの存在位置にある死角形成物9に重畳させて虚像表示してもよい。
【0066】
尚、
図11に示す変形例9の強調表示Deでは、対象物画像7bのみが虚像表示されているが、第一〜第三実施形態に準じて対象物画像7bを指示画像7aと併せて表示してもよい。また、第一〜第三実施形態に関する変形例10の強調表示Deでは、変形例9に準じて対象物画像7bのみを虚像表示してもよい。
【0067】
第一〜第三実施形態に関する変形例11では、強調表示Deとは異なる態様の注意表示Daとして、強調表示Deよりも簡易的な表現により周辺対象物3(衝突対象物3a)の存在を乗員が直感的に認識可能であれば、三角形以外の図形により指示機能を果たす画像や、指示機能とは異なる機能を果たす画像等を採用してもよい。また、第一〜第三実施形態に関する変形例12では、判定ブロック53,2053により肯定判定がなされた場合に、指令ブロック54及び画像制御ユニット62,3062の協働による注意表示Daを、実現しなくてもよい。
【0068】
第一〜第三実施形態に関する変形例13では、情報処理部50,2050,3050の各ブロック51,52,53,54,2052,2053,3055の少なくとも一つを、処理プログラムの実行により機能的に構築する代わりに、電気回路により物理的に構築してもよい。また、第一〜第三実施形態に関する変形例14では、HUDユニット61により画像7を虚像表示する表示部60,3060以外にも、例えば液晶パネル等の表示パネルにより画像7を実像表示する表示部60,3060を、採用してもよい。