【実施例】
【0015】
(実施例1)
上記温度センサにかかる実施例について、
図1〜
図3を参照して説明する。
図1〜
図3に示すごとく、温度センサ1は、温度を検出するための感温素子2と、感温素子2と電気的に接続された一対の素子電極線21と、感温素子2と一対の素子電極線21の一部とを覆うガラス封止体3と、一対の素子電極線21をそれぞれ挿通する一対の挿通孔41を備えたタブレット4とを備えている。ガラス封止体3は、感温素子2を覆う封止部31と、封止部31を形成する材料のヤング率よりも小さいヤング率を有する材料からなりタブレット4におけるガラス封止体3と接合される接合面42の全面に接合される低ヤング率層32とを有している。
【0016】
以下、さらに詳細に説明する。
図1及び
図2に示すごとく、本例において、一対の素子電極線21の軸方向Xにおける感温素子2が配置された側を先端側とし、感温素子2から一対の素子電極線21が延びる方向を基端側とする。
また、
図1〜
図3に示す温度センサ1において、低ヤング率層32及び一対の挿通孔41の形状は誇張して描いたものである(
図4〜
図6も同様である)。
【0017】
本例の温度センサ1は、燃料電池自動車の水素タンクに用いられるものである。水素タンクへ水素を充填する際に、タンク内の温度を検出することにより、水素の充填速度を制御し、充填時間の短縮を図っている。
【0018】
感温素子2は、測温抵抗体からなり、互いに平行に配設された一対の素子電極線21によって挟まれた状態で固定されている。
【0019】
一対の素子電極線21は、白金合金からなり、軸方向Xに延びる円柱状に形成されている。白金合金は、Pt(白金)を基材として、Ir(イリジウム)を含有しており、Irの含有量Aは、A=20wt%とした。したがって、Irの含有量Aは、0wt%<A≦20wt%の関係を満たしている。また、一対の素子電極線21における線膨張係数αrは、αr=8.4×10
−6/℃であり、ヤング率E4は201GPaである。尚、本例においては、一対の素子電極線21を白金合金としたが、純白金によって形成してもよい。
【0020】
タブレット4は、フォルステライトを基材とするセラミックス材料を略円柱状に形成したものであり、軸方向Xにおいて貫通形成された一対の挿通孔41を備えている。一対の挿通孔41は、素子電極線21の直径よりも一回り大きく形成されており、各挿通孔41にそれぞれ素子電極線21を挿通可能に構成されている。タブレット4におけるヤング率E3は、150GPaである。尚、タブレットの材料としては、フォルステライトが最も好ましいが、アルミナ、ムライト、ジルコニア、イットリア、サーメット、サファイア、ステアタイト等のセラミック材料を用いてもよい。
【0021】
図1及び
図2に示すごとく、ガラス封止体3は、感温素子2を覆う封止部31と、封止部31とタブレット4とを繋ぐ低ヤング率層32とを有している。
封止部31は、鉛を含有せず、かつ酸化ホウ素を添加した無鉛ホウケイ酸ガラスによって形成されている。また、封止部31における線膨張係数αgは、αg=8.5×10
−6/℃であり、ヤング率E1は、81GPaに設定してある。封止部31は、感温素子2と、一対の素子電極線21の先端側とを覆うように形成されている。尚、封止部31の外周表面311と感温素子2との間の封止部厚さtは、0.4mm≦t≦3mmの関係を満たしている。
【0022】
低ヤング率層32は、鉛を含有する鉛ガラスからなり、タブレット4におけるガラス封止体3との接合面42の全面に略円板状に形成されている。軸方向における低ヤング率層32の厚さは、0.2mmとなるように形成してある。本例においては、一対の挿通孔41の内周縁411から一対の素子電極線21の外周までの範囲においても低ヤング率層32が形成されている。また、低ヤング率層32のヤング率E2は、52GPaに設定してある。したがって、封止部31のヤング率E1と低ヤング率層32のヤング率E2とは、E1>E2の関係を有している。
【0023】
次に、本例の作用効果について説明する。
本例の温度センサ1においては、ガラス封止体3が低ヤング率層32を形成することにより、ガラス封止体3とタブレット4との間における熱応力を抑制することができる。すなわち、低ヤング率層32は、ガラス封止体3に比べて、ヤング率の小さい材料、つまり弾性の大きい材料によって形成されている。したがって、ガラス封止体3とタブレット4との間に線膨張差が生じても、低ヤング率層32が変形することにより、両者の間に生じる熱応力を緩和することができる。
【0024】
温度センサ1において、低ヤング率層32は、ガラス封止体3の封止部31とタブレット4の接合面42の全面に形成されている。そのため、低ヤング率層32において、封止部31とタブレット4との間に生じる線膨張差を効率良く緩和し、温度センサ1に生じる熱応力をより低減することができる。
【0025】
また、低ヤング率層32を形成する材料のヤング率は50GPa以上である。そのため、低ヤング率層32における、熱応力低減効果と強度とを確保することができる。
【0026】
また、低ヤング率層32は、鉛を含有する鉛ガラスによって形成されている。そのため、ガラス封止体3に低ヤング率層32を容易に形成することができる。
【0027】
また、ガラス封止体3は、ガラスに酸化ホウ素を添加したホウケイ酸ガラスによって形成されている。そのため、ガラス封止体3の耐熱衝撃性能を向上し、ガラス封止体3の損傷を抑制することができる。
【0028】
また、ガラス封止体3は、鉛を含有しない無鉛ガラスによって形成されている。そのため、ガラス封止体3の強度を容易に向上することができる。
【0029】
また、一対の素子電極線21は、イリジウムを含有した白金合金によって形成されており、イリジウムの含有量Aは、0wt%<A≦20wt%である。そのため、ガラス封止体3の線膨張係数と、一対の素子電極線21における線膨張係数とを近づけ、線膨張差によるガラス封止体3の損傷を抑制することができる。また、一対の素子電極線21の強度を容易に向上することができる。
【0030】
以上のごとく、本例の温度センサ1によれば、熱衝撃に対する強度を向上することができる。
【0031】
(実施例2)
本例は、
図4及び
図5に示すごとく、実施例1における温度センサの構造を一部変更したものである。
図4に示した温度センサ1においては、低ヤング率層32がタブレット4の外周縁421に沿うように円環状に形成されている。
また、
図5に示した温度センサ1においては、低ヤング率層32がタブレット4の一対の挿通孔41の周囲から、一対の素子電極線21の周囲を覆うように形成されている。
その他の構成は実施例1と同様である。尚、本例又は本例に関する図面において用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。
【0032】
本例においては、ガラス封止体3とタブレット4との間において、特に熱応力が生じやすいタブレット4の外周縁421及び挿通孔41の内周縁411にそれぞれ低ヤング率層32を形成してある。これにより、低ヤング率層32の形成範囲を小さくしながら、熱応力を効果的に抑制することができる。尚、必要に応じて、
図4及び
図5に示すごとく、タブレット4の外周縁421及び挿通孔41の内周縁411にそれぞれ低ヤング率層32を形成してもよいし、これらを組み合わせてもよい。
また、本例においても実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0033】
(実施例3)
本例は、
図6に示すごとく、実施例1における温度センサの構造を一部変更したものである。
本例の温度センサ1において、低ヤング率層32における軸方向の厚さは、約1mmとなるように形成されている。また、低ヤング率層32の内部には、複数の気泡321が形成されている。
その他の構成は実施例1と同様である。尚、本例又は本例に関する図面において用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。
【0034】
本例の温度センサ1においては、低ヤング率層32の内部に複数の気泡を形成することにより、低ヤング率層32におけるヤング率をより低下させることができる。これにより、低ヤング率層32によって、より効果的に熱応力を低減することができる。
また、本例においても実施例1と同様の作用効果を得ることができる。