特許第6028770号(P6028770)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028770
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】温度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/18 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   G01K7/18 A
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-152724(P2014-152724)
(22)【出願日】2014年7月28日
(65)【公開番号】特開2016-31258(P2016-31258A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2015年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 元樹
(72)【発明者】
【氏名】堀 恒円
【審査官】 榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−189332(JP,A)
【文献】 特開平01−191026(JP,A)
【文献】 特開2011−232066(JP,A)
【文献】 特開2009−092487(JP,A)
【文献】 特開2011−222737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 7/18
G01K 7/22
H01C 7/02
H01C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度を検出するための感温素子(2)と、
該感温素子(2)と電気的に接続された一対の素子電極線(21)と、
上記感温素子(2)と上記一対の素子電極線(21)の一部とを覆うガラス封止体(3)と、
上記一対の素子電極線(21)をそれぞれ挿通する一対の挿通孔(41)を備えたタブレット(4)とを備えており、
上記ガラス封止体(3)は、上記感温素子(2)を覆う封止部(31)と、上記封止部(31)を形成する材料のヤング率よりも小さいヤング率を有する材料からなり上記タブレット(4)における上記ガラス封止体(3)と接合される接合面(42)と上記封止部(31)と間の少なくとも一部を繋ぐ低ヤング率層(32)とを有していることを特徴とする温度センサ(1)。
【請求項2】
上記低ヤング率層(32)は、上記タブレット(4)の上記接合面(42)の全面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の温度センサ(1)。
【請求項3】
上記低ヤング率層(32)を形成する材料のヤング率が50GPa以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の温度センサ(1)。
【請求項4】
上記低ヤング率層(32)は、鉛を含有する鉛ガラスによって形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の温度センサ(1)。
【請求項5】
上記ガラス封止体(3)は、ガラスに酸化ホウ素を添加したホウケイ酸ガラスによって形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の温度センサ(1)。
【請求項6】
上記ガラス封止体(3)は、鉛を含有しない無鉛ガラスによって形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の温度センサ(1)。
【請求項7】
上記一対の素子電極線(21)は、白金又はイリジウムを含有した白金合金によって形成されており、白金合金におけるイリジウムの含有量Aは、0wt%<A≦20wt%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の温度センサ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車をはじめ種々の装置には、特許文献1に示されたような温度センサが用いられている。特許文献1の温度センサは、温度を検出するサーミスタ素子と、セラミック材料からなるタブレットと、ガラス材料からなるガラス封止部とを有している。ガラス封止部は、サーミスタ素子の周囲を覆うと共に、タブレットの端面に接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−72769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の温度センサには以下の課題がある。
特許文献1の温度センサにおいては、セラミック材料からなるタブレットと、ガラス材料からなるガラス封止体という線膨張係数の異なる2つの部品を接合している。そのため、温度センサにおいて、温度変化が生じるとタブレットとガラス封止体との間に熱応力が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、熱応力の発生を抑制することができる温度センサを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、温度を検出するための感温素子と、
該感温素子と電気的に接続された一対の素子電極線と、
上記感温素子と上記一対の素子電極線の一部とを覆うガラス封止体と、
上記一対の素子電極線をそれぞれ挿通する一対の挿通孔を備えたタブレットとを備えており、
上記ガラス封止体は、上記感温素子を覆う封止部と、上記封止部を形成する材料のヤング率よりも小さいヤング率を有する材料からなり上記タブレットにおける上記ガラス封止体と接合される接合面と上記封止部との間の少なくとも一部を繋ぐ低ヤング率層とを有していることを特徴とする温度センサにある。
【発明の効果】
【0007】
上記温度センサにおいては、上記ガラス封止体が上記低ヤング率層を形成することにより、上記ガラス封止体と上記タブレットとの間における熱応力を抑制することができる。すなわち、上記低ヤング率層は、上記ガラス封止体に比べて、ヤング率の小さい材料、つまり弾性の大きい材料によって形成されている。したがって、上記ガラス封止体と上記タブレットとの間に線膨張差が生じても、上記低ヤング率層が変形することにより、両者の間に生じる熱応力を緩和することができる。
【0008】
以上のごとく、上記温度センサによれば、熱衝撃に対する強度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1における、温度センサを示す説明図。
図2図1における、II−II矢視断面図。
図3図1における、III−III矢視断面図。
図4】実施例2における、温度センサの一例を示す説明図(図1における、III−III矢視断面図相当)。
図5】実施例2における、温度センサの他の例を示す説明図(図1における、III−III矢視断面図相当)。
図6】実施例3における、温度センサを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記温度センサにおいて、上記低ヤング率層は、上記タブレットの上記接合面の全面に形成されていることが好ましい。この場合には、上記低ヤング率層の形成範囲を拡大することにより、上記温度センサに生じる熱応力をより低減することができる。
【0011】
また、上記低ヤング率層を形成する材料のヤング率は、50GPa以上であることが好ましい。この場合には、上記低ヤング率層における、熱応力低減効果と強度とを確保することができる。また、上記低ヤング率層を形成する材料のヤング率は、100GPa以下であることがより好ましい。この場合には、上記低ヤング率層における弾性の低下を抑制することができる。
【0012】
また、上記低ヤング率層は、鉛を含有する鉛ガラスによって形成されていることが好ましい。この場合には、上記ガラス封止体に上記低ヤング率層を容易に形成することができる。
【0013】
また、上記ガラス封止体は、ガラスに酸化ホウ素を添加したホウケイ酸ガラスによって形成されていることが好ましい。この場合には、上記ガラス封止体の耐熱衝撃性能を向上し、上記ガラス封止体の損傷を抑制することができる。
【0014】
また、上記ガラス封止体は、鉛を含有しない無鉛ガラスによって形成されていることが好ましい。この場合には、上記ガラス封止体の強度を容易に向上することができる。
【実施例】
【0015】
(実施例1)
上記温度センサにかかる実施例について、図1図3を参照して説明する。
図1図3に示すごとく、温度センサ1は、温度を検出するための感温素子2と、感温素子2と電気的に接続された一対の素子電極線21と、感温素子2と一対の素子電極線21の一部とを覆うガラス封止体3と、一対の素子電極線21をそれぞれ挿通する一対の挿通孔41を備えたタブレット4とを備えている。ガラス封止体3は、感温素子2を覆う封止部31と、封止部31を形成する材料のヤング率よりも小さいヤング率を有する材料からなりタブレット4におけるガラス封止体3と接合される接合面42の全面に接合される低ヤング率層32とを有している。
【0016】
以下、さらに詳細に説明する。
図1及び図2に示すごとく、本例において、一対の素子電極線21の軸方向Xにおける感温素子2が配置された側を先端側とし、感温素子2から一対の素子電極線21が延びる方向を基端側とする。
また、図1図3に示す温度センサ1において、低ヤング率層32及び一対の挿通孔41の形状は誇張して描いたものである(図4図6も同様である)。
【0017】
本例の温度センサ1は、燃料電池自動車の水素タンクに用いられるものである。水素タンクへ水素を充填する際に、タンク内の温度を検出することにより、水素の充填速度を制御し、充填時間の短縮を図っている。
【0018】
感温素子2は、測温抵抗体からなり、互いに平行に配設された一対の素子電極線21によって挟まれた状態で固定されている。
【0019】
一対の素子電極線21は、白金合金からなり、軸方向Xに延びる円柱状に形成されている。白金合金は、Pt(白金)を基材として、Ir(イリジウム)を含有しており、Irの含有量Aは、A=20wt%とした。したがって、Irの含有量Aは、0wt%<A≦20wt%の関係を満たしている。また、一対の素子電極線21における線膨張係数αrは、αr=8.4×10−6/℃であり、ヤング率E4は201GPaである。尚、本例においては、一対の素子電極線21を白金合金としたが、純白金によって形成してもよい。
【0020】
タブレット4は、フォルステライトを基材とするセラミックス材料を略円柱状に形成したものであり、軸方向Xにおいて貫通形成された一対の挿通孔41を備えている。一対の挿通孔41は、素子電極線21の直径よりも一回り大きく形成されており、各挿通孔41にそれぞれ素子電極線21を挿通可能に構成されている。タブレット4におけるヤング率E3は、150GPaである。尚、タブレットの材料としては、フォルステライトが最も好ましいが、アルミナ、ムライト、ジルコニア、イットリア、サーメット、サファイア、ステアタイト等のセラミック材料を用いてもよい。
【0021】
図1及び図2に示すごとく、ガラス封止体3は、感温素子2を覆う封止部31と、封止部31とタブレット4とを繋ぐ低ヤング率層32とを有している。
封止部31は、鉛を含有せず、かつ酸化ホウ素を添加した無鉛ホウケイ酸ガラスによって形成されている。また、封止部31における線膨張係数αgは、αg=8.5×10−6/℃であり、ヤング率E1は、81GPaに設定してある。封止部31は、感温素子2と、一対の素子電極線21の先端側とを覆うように形成されている。尚、封止部31の外周表面311と感温素子2との間の封止部厚さtは、0.4mm≦t≦3mmの関係を満たしている。
【0022】
低ヤング率層32は、鉛を含有する鉛ガラスからなり、タブレット4におけるガラス封止体3との接合面42の全面に略円板状に形成されている。軸方向における低ヤング率層32の厚さは、0.2mmとなるように形成してある。本例においては、一対の挿通孔41の内周縁411から一対の素子電極線21の外周までの範囲においても低ヤング率層32が形成されている。また、低ヤング率層32のヤング率E2は、52GPaに設定してある。したがって、封止部31のヤング率E1と低ヤング率層32のヤング率E2とは、E1>E2の関係を有している。
【0023】
次に、本例の作用効果について説明する。
本例の温度センサ1においては、ガラス封止体3が低ヤング率層32を形成することにより、ガラス封止体3とタブレット4との間における熱応力を抑制することができる。すなわち、低ヤング率層32は、ガラス封止体3に比べて、ヤング率の小さい材料、つまり弾性の大きい材料によって形成されている。したがって、ガラス封止体3とタブレット4との間に線膨張差が生じても、低ヤング率層32が変形することにより、両者の間に生じる熱応力を緩和することができる。
【0024】
温度センサ1において、低ヤング率層32は、ガラス封止体3の封止部31とタブレット4の接合面42の全面に形成されている。そのため、低ヤング率層32において、封止部31とタブレット4との間に生じる線膨張差を効率良く緩和し、温度センサ1に生じる熱応力をより低減することができる。
【0025】
また、低ヤング率層32を形成する材料のヤング率は50GPa以上である。そのため、低ヤング率層32における、熱応力低減効果と強度とを確保することができる。
【0026】
また、低ヤング率層32は、鉛を含有する鉛ガラスによって形成されている。そのため、ガラス封止体3に低ヤング率層32を容易に形成することができる。
【0027】
また、ガラス封止体3は、ガラスに酸化ホウ素を添加したホウケイ酸ガラスによって形成されている。そのため、ガラス封止体3の耐熱衝撃性能を向上し、ガラス封止体3の損傷を抑制することができる。
【0028】
また、ガラス封止体3は、鉛を含有しない無鉛ガラスによって形成されている。そのため、ガラス封止体3の強度を容易に向上することができる。
【0029】
また、一対の素子電極線21は、イリジウムを含有した白金合金によって形成されており、イリジウムの含有量Aは、0wt%<A≦20wt%である。そのため、ガラス封止体3の線膨張係数と、一対の素子電極線21における線膨張係数とを近づけ、線膨張差によるガラス封止体3の損傷を抑制することができる。また、一対の素子電極線21の強度を容易に向上することができる。
【0030】
以上のごとく、本例の温度センサ1によれば、熱衝撃に対する強度を向上することができる。
【0031】
(実施例2)
本例は、図4及び図5に示すごとく、実施例1における温度センサの構造を一部変更したものである。
図4に示した温度センサ1においては、低ヤング率層32がタブレット4の外周縁421に沿うように円環状に形成されている。
また、図5に示した温度センサ1においては、低ヤング率層32がタブレット4の一対の挿通孔41の周囲から、一対の素子電極線21の周囲を覆うように形成されている。
その他の構成は実施例1と同様である。尚、本例又は本例に関する図面において用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。
【0032】
本例においては、ガラス封止体3とタブレット4との間において、特に熱応力が生じやすいタブレット4の外周縁421及び挿通孔41の内周縁411にそれぞれ低ヤング率層32を形成してある。これにより、低ヤング率層32の形成範囲を小さくしながら、熱応力を効果的に抑制することができる。尚、必要に応じて、図4及び図5に示すごとく、タブレット4の外周縁421及び挿通孔41の内周縁411にそれぞれ低ヤング率層32を形成してもよいし、これらを組み合わせてもよい。
また、本例においても実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0033】
(実施例3)
本例は、図6に示すごとく、実施例1における温度センサの構造を一部変更したものである。
本例の温度センサ1において、低ヤング率層32における軸方向の厚さは、約1mmとなるように形成されている。また、低ヤング率層32の内部には、複数の気泡321が形成されている。
その他の構成は実施例1と同様である。尚、本例又は本例に関する図面において用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。
【0034】
本例の温度センサ1においては、低ヤング率層32の内部に複数の気泡を形成することにより、低ヤング率層32におけるヤング率をより低下させることができる。これにより、低ヤング率層32によって、より効果的に熱応力を低減することができる。
また、本例においても実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 温度センサ
2 感温素子
21 素子電極線
3 ガラス封止体
31 封止部
32 低ヤング率層
4 タブレット
41 挿通孔
42 接合面
図1
図2
図3
図4
図5
図6