(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高炉内で周方向に複数並設されるステーブに用いられ、炉内側へ拡径形成され上下方向に複数並設された周方向に延伸する本体側凸条部、及び上下2つの前記本体側凸条部間に形成される本体側凹条部が形成された炉内側面を有するステーブ本体とともに用いられる炉壁パネルであって、
前記本体側凹条部に遊嵌するパネル側凸条部が形成された炉体鉄皮側面を有し、
前記パネル側凸条部は、前記炉壁パネルのパネル本体との付け根と先端との間に、前記本体側凹条部に遊嵌した際に前記本体側凹条部の開口部の位置に対応して位置する前記付け根の上下方向の高さより大きな上下方向の高さを有する部位を備えて、前記炉内側へ拡径形成された上下2つの前記本体側凸条部間に形成される本体側凹条部に対応して炉体鉄皮側へ拡径形成され、周方向に移動自在に構成されたことを特徴とする炉壁パネル。
前記炉壁パネルには、前記パネル側凸条部が上下方向に複数並設されるとともに、前記炉壁パネルは上下2つの前記パネル側凸条部間に形成されたパネル側凹条部を更に有し、
当該パネル側凹条部に、前記ステーブ本体の前記本体側凸条部を遊嵌させてなることを特徴とする請求項3又は4に記載のステーブ。
前記本体側凸条部の先端と当該先端を遊嵌する前記パネル側凹条部との間、及び、前記パネル側凸条部の先端と当該先端を遊嵌する前記本体側凹条部との間のうち、少なくとも一方の間に、空隙が形成されてなることを特徴とする請求項5に記載のステーブ。
【背景技術】
【0002】
従来、高炉においては炉体鉄皮を冷却する方法としてステーブが用いられている。ステーブは、通常、上下方向が2〜3m程度、幅方向が1.5m〜2m程度の本体を有し、本体の中に炉体鉄皮を冷却する冷却水等を流通させる配管が配設されている。また本体の炉内側面には、凹凸部として複数の溝が設けられ、この溝に耐火物であるレンガ等が嵌め込まれ、ステーブ本体を炉内の熱や炉内原料の荷下がりの負荷から保護しているものが多い。
【0003】
このように、ステーブを保護する技術として、特許文献1〜3に示すように、各種の技術が開発されている。例えば、ステーブ本体の前面(炉内側面)に支持金物を取り付け、これによってステーブ本体にさらにレンガを積載させるとともに、その支持金物の先端をさらに耐熱性に優れるセラミックスで被覆して、ステーブの保護壁を構成する技術がある(特許文献1)。また銅製のステーブ本体にさらにセラミックスを分散配置して、ステーブを強化する技術もある(特許文献2)。また鉄とセラミックスを用いた傾斜機能材料を用いて耐火物を構成し、この耐火物をステーブの前面に取り付けて、ステーブの保護壁をより強化する技術もある(特許文献3)。こうしたステーブが、炉体鉄皮の内壁面において周方向及び上下方向に各々複数配設され、炉体鉄皮の冷却に用いられている。
【0004】
ここで、ステーブを高炉内に構築するとき、ステーブと炉体鉄皮との間及び隣接するステーブ間の目地には、通常、キャスタブル等の不定形耐火物が充填されている。ステーブ間の目地の幅は、一般に数十mm程度である。充填された不定形耐火物は、高炉の操業に伴い、ステーブとともに、炉内の熱や炉内原料の荷下がりによる負荷を被る。負荷により、ステーブ間の目地から不定形耐火物が損耗・脱落して消失すると、ステーブ自体がこの負荷に直接曝される量が増大することとなる。そのため、ステーブの抜熱量が増加するとともにステーブの寿命が短くなり、さらに炉内材料中の還元剤の比率も増加し、高炉の操業効率が悪化してしまう。
【0005】
この点、上記した特許文献1〜3の技術には、ステーブ本体の前面に保護壁が設けられるものもあるが、保護壁の主な目的はステーブ本体を保護することであり、保護壁による保護はステーブ間の目地には及ばない。そのため、隣接するステーブ間の目地に充填された不定形耐火物の損耗・脱落の抑制には有効に働かない。
そこで隣接するステーブ間の目地に充填された不定形耐火物の損耗・脱落を抑制する技術を見てみると、特許文献4に記載の技術がある。これは、隣接するステーブ間の目地の前面にシール材を圧入し、このシール材を炉内側から押さえて圧縮させる押さえ板12が、シール材とともにステーブ3´にボルト13によりボルト止めされるものである(
図86参照)。こうした押さえ板12を用いて、隣接するステーブ間の目地を遮蔽し、耐火物を炉内の熱や炉内原料の荷下がりによる負荷から保護する方法が考えられる。また、特許文献5においては、ステーブに設けられた溝状部にレンガを移動可能に配置する方法が開示されている。
【0006】
また他にも従来用いられている方法として、
図9に示すように、高炉内において、炉体鉄皮8の内面に不定形耐火物10を介して設けられたステーブ本体2´を有するステーブ3´の、嵌め込みレンガ9が取り付けられた炉内側の前面に対向して、耐火物であるレンガ11を積み上げて、ステーブ3´とは別に炉内の周方向にレンガ11による保護壁を構築し、ステーブ間の目地を、ステーブ3´と同時に保護するという方法もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献4の技術は、専ら建設中の高炉においてステーブを構築するとき、ステーブ間に不定型耐火物を圧入する場合に、不定形耐火物を押さえるために用いられる技術であり、ステーブの構築が終了した時点で、押さえ板はステーブから取り外されるものである。よって、この押さえ板は、ステーブの構築終了後の高炉操業中に継続使用されることを前提としていないので、炉内の熱や炉内原料の荷下がりによる負荷に耐えられるような構造が検討されていない。
【0009】
また、仮に耐えられるように構成された場合であっても、通常、ステーブは炉内の周方向において40〜60枚配設されかつ炉内の上下方向に十数段に亘って配設されるため、ステーブの枚数は炉内全体で1000枚程度に及ぶこともある。よって、隣接する全てのステーブ間の目地一つ一つにおいて、押さえ板をボルト止めして遮蔽するとなると、全体の作業量が膨大となり、作業負担が非常に大きいという問題がある。
【0010】
また、
図9に示したようなステーブ本体の前面にレンガを積み上げて保護壁を構築する方法の場合、保護壁の構築にあたっては炉内で足場を組み、高所で作業を行う必要が生じる。そして、炉体鉄皮の周方向全体に亘ってレンガを積み上げることとなるので作業期間も長期化する。加えて、高所作業に伴う安全性を確保するための付加作業も増える。すなわち、特許文献4の場合と同様、作業負担が非常に大きいという問題がある。
【0011】
また特許文献5に記載の技術は、ステーブの炉内面に設置したレンガをステーブの溝状部に沿って移動可能にしている。しかし、レンガをステーブの炉内面側から挿入可能にしているために、レンガのステーブへの固定が必ずしも十分とは言えず、ステーブ間の目地に耐火物を圧入する場合にレンガが外れる可能性がある。
本発明は、上記した未解決の問題を解決するために案出されたものであって、隣接するステーブ間の目地を、作業負担少なく容易かつ確実に遮蔽することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る炉壁パネルのある態様は、高炉内で周方向に複数並設されるステーブに用いられ、炉内側へ拡径形成され上下方向に複数並設された周方向に延伸する本体側凸条部、及び上下2つの本体側凸条部間に形成される本体側凹条部が形成された炉内側面を有するステーブ本体とともに用いられる炉壁パネルであって、本体側凹条部に遊嵌するパネル側凸条部が形成された炉体鉄皮側面を有し、パネル側凸条部は、炉壁パネルのパネル本体との付け根と先端との間に、
本体側凹条部に遊嵌した際に本体側凹条部の開口
部の位置に対応
して位置する付け根の
上下方向の高さより大きな
上下方向の高さを有する部位を備えて、炉内側へ拡径形成された上下2つの本体側凸条部間に形成される本体側凹条部に対応して炉体鉄皮側へ拡径形成され、周方向に移動自在に構成した。
【0013】
よって、本発明に係る炉壁パネルを用いてステーブを構成すれば、ステーブ本体と一体化して用いられる炉壁パネルが、パネル側凸条部と本体側凹条部とを用いてステーブ本体に遊嵌され、炉壁パネルが、並設されたステーブ本体間を周方向に移動自在に構成される。
これにより、ステーブを炉体鉄皮に配設した後、ステーブ本体の炉内側に配置される1つの炉壁パネルが、同じ高さ位置の本体側凹条部を用いて、複数のステーブ本体間を周方向に移動できる。よって、炉壁パネルをスライドして移動させ、周方向で隣接する2つのステーブに同時に嵌合する位置に配置するだけで、それらステーブ間の目地が遮蔽される。そして目地の遮蔽と同時に、ステーブ本体の保護壁が構築される。
【0014】
また、前記パネル側凸条部は、前記炉体鉄皮側面の上下方向に複数並設されてもよい。
また本発明に係るステーブのある態様は、高炉内で周方向に複数並設されるステーブであって、炉内側へ拡径形成され上下方向に複数並設された周方向に延伸する本体側凸条部、及び上下2つの本体側凸条部間に形成される本体側凹条部が形成された炉内側面を有するステーブ本体と、本体側凹条部に遊嵌するパネル側凸条部が形成された炉体鉄皮側面を有し、パネル側凸条部は、炉壁パネルのパネル本体との付け根と先端との間に、
本体側凹条部に遊嵌した際に本体側凹条部の開口
部の位置に対応
して位置する付け根の
上下方向の高さより大きな
上下方向の高さを有する部位を備えて、炉内側へ拡径形成された上下2つの本体側凸条部間に形成される本体側凹条部に対応して炉体鉄皮側へ拡径形成され、周方向に移動自在に構成された炉壁パネルと、を有する。
【0015】
前記炉壁パネルは複数であり、当該複数の炉壁パネルが前記ステーブ本体の炉内側面に、千鳥状に配置されても
よい。
【0016】
また前記炉壁パネルには、パネル側凸条部が上下方向に複数並設されるとともに、炉壁パネルは上下2つのパネル側凸条部間に形成されたパネル側凹条部を更に有し、このパネル側凹条部に、ステーブ本体の本体側凸条部を遊嵌させてもよい。
また本体側凸条部の先端とこの先端を遊嵌するパネル側凹条部との間、及び、パネル側凸条部の先端とこの先端を遊嵌する本体側凹条部との間のうち、少なくとも一方の間に、空隙が形成されてもよい。
【0017】
また本発明に係るステーブ構築方法のある態様は、前記した態様のステーブを用いて高炉内にステーブを構築する方法であって、前記ステーブを炉体鉄皮に沿って周方向に複数並設し、前記凹条部に遊嵌する炉壁パネルを周方向に移動させて、隣接する2つのステーブ本体に架設することとした。
【発明の効果】
【0018】
従って、本発明に係る炉壁パネルによれば、隣接するステーブ間の目地を、作業負担少なく容易かつ確実に遮蔽することができ、ステーブ間の目地における耐火物の損耗・脱落を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る炉壁パネルは、高炉内で周方向に複数並設されるステーブに用いられ、ステーブを炉内の熱や炉内原料の荷下がりの負荷から保護する保護壁を形成するものである。以下その構成の一例を、図面を参照して説明する。なお、図中に示された炉壁パネル、ステーブ、高炉等を構成する各部材や装置の形状、大きさ又は比率は適宜簡略化及び誇張して示されている。
【0021】
(構成)
本発明の実施形態に係る炉壁パネル1は、ステーブ本体とともに、本発明の実施の形態に係るステーブを構成するために用いられるものである。炉壁パネル1は、
図1(a)に示すように、略平板状のパネル本体1aと、パネル本体1aの炉体鉄皮側面1cから水平方向に突出形成された2段のパネル側凸条部4,4とを備える。パネル本体1aは、平坦な炉内側面1b、及び炉内側面1bの反対側の炉体鉄皮側面1cを有し、2段のパネル側凸条部4,4は炉体鉄皮側面1c上に形成され、上下方向に並設されている。
【0022】
炉壁パネル1は、上下方向の高さ及び周方向(水平方向)の幅がいずれも約30cmとされ、Al
2O
3含有率92質量%以上のアルミナ系、あるいは窒化珪素系、ジルコニア系のセラミックス製である。セラミックスは、気孔率が数%〜10%以下であり、曲げ強さは1200℃において200MPa以上と、レンガの約10倍以上であり、ビッカース硬さHvは700以上のものが選定されている。炉壁パネル1の最高使用温度は1000℃以上である。
【0023】
2段のパネル側凸条部4,4はいずれも、
図1(a)に示すように、パネル本体1aの付け根側の後端から炉体鉄皮側の先端へ拡径形成される。パネル側凸条部4の先端の高さh1は、パネル側凸条部4の後端の高さs1より大きく、パネル側凸条部4は炉体鉄皮側面1cから長さr1で突出する。またパネル側凸条部4は、
図1(b)に示すように、パネル本体1aの周方向の幅と略同じ幅で水平方向に延伸形成される。また
図1(a)に示すように、1段のパネル側凸条部4は、上下対称的に構成され、先端面と上面との間に形成される角度と、先端面と下面との間に形成される角度とは略等しい角度θ1である。そして同形状のパネル側凸条部4が上下方向に2段並設されている。これら2つのパネル側凸条部4,4は、炉体鉄皮側面1c上で上下に対称配置されている。
【0024】
また、2段のパネル側凸条部4,4の間に、パネル側凹条部6aが形成される。パネル側凹条部6aの底面は、炉壁パネル1の炉体鉄皮側面1cの一部によって構成され、パネル側凹条部6aの上側の側壁は、2段のパネル側凸条部4,4のうち上側に位置するパネル側凸条部4の下面によって構成される。またパネル側凹条部6aの下側の側壁は、2段のパネル側凸条部4,4のうち下側に位置するパネル側凸条部4の上面によって構成される。パネル側凹条部6aは上下対称的に構成され、パネル側凹条部6aの底面と上側の側壁とがなす角度と、パネル側凹条部6aの底面と下側の側壁とがなす角度とは、略等しい角度である。そして、パネル側凹条部6aの底面と一方の側壁とがなす角度の大きさは、パネル側凸条部4の先端面と炉体鉄皮側面1cとが略平行であるため、パネル側凸条部4の先端面と上面(又は下面)と同じ角度θ1となる。
【0025】
尚、炉壁パネル1は、パネル本体1aの上下方向の高さ及び周方向の幅が適宜変更されてよいとともに、パネル側凸条部4の段数も2段に限らず、1段、3段、4段等適宜設定されてよい。炉壁パネルが1段の場合のパネル側凹状部は、この炉壁パネルのパネル側凸条部と、この炉壁パネルの上下に隣接する炉壁パネルのパネル側凸条部との間に形成されることとなる。また複数段のパネル側凸条部のそれぞれの形状は、
図1に示したような同じ形状である必要はなく、
図6に示すような炉壁パネル1´のパネル側凸条部4a,4bのように、対応するステーブ本体の凹条部に遊嵌できる限り適宜変更されてよい。
【0026】
次にステーブ本体2を、
図2を用いて説明する。ステーブ本体2は、炉壁パネル1とともに、ステーブを構成するために用いられるものである。
ステーブ本体2は、
図2(a)に示すように、略平板状の本体部2aと、本体部2aの平坦な炉内側面2bから水平方向に突出形成された15段の本体側凸条部5,5,…とを備える。本体部2aは、炉内側面2b及び炉内側面2bの反対側の平坦な炉体鉄皮側面2cを有し、15段の本体側凸条部5,5,…は炉内側面2bに形成され、上下方向に並設されている。本体部2aには、炉体鉄皮を冷却する冷却水を流通させる配管(不図示)が配設されている。ステーブ本体2は、上下方向の高さが約2〜3m、水平方向(高炉の周方向)の幅が約1.5〜2mとされ、鉄鋼等の金属材料から構成される。
【0027】
15段の本体側凸条部5,5,…は、上下方向に等間隔で並設される。最上段の本体側凸条部5と最下段の本体側凸条部5とを除いた中間の13段の本体側凸条部5,5,…は、いずれも同じ形状で構成される。
15段の本体側凸条部5,5,…はいずれも、
図2(a)に示すように、本体部2aの付け根側の後端から炉内側の先端へ拡径形成される。また中間の13段の本体側凸条部5,5,…においては、本体側凸条部5の先端の高さh2は、本体側凸条部5の後端の高さs2より大きく、本体側凸条部5は炉内側面2bから長さr2で突出する。
【0028】
また最上段の本体側凸条部5においては、上面が水平な平坦面とされ、後端の高さが中間の13段の本体側凸条部5,5,…の後端の高さs2より僅かに大きいものの、先端の高さh2は後端の高さより高い。また突出長さr2も他の本体側凸条部5と同じ長さである。同様に、最下段の本体側凸条部5においては、下面が水平な平坦面とされ、後端の高さが中間の13段の本体側凸条部5,5,…の後端の高さs2より僅かに大きいものの、先端の高さh2は後端の高さより高い。また突出長さr2も他の本体側凸条部5と同じ長さである。
【0029】
また15段の本体側凸条部5,5,…は、
図2(b)に示すように、ステーブ本体2の周方向の幅と略同じ幅で水平方向に延伸形成される。そして同形状の13段の本体側凸条部5,5,…を含んで本体側凸条部5が上下方向に15段等間隔で並設される。
また
図2(a)に示すように、1段の本体側凸条部5は、上下対称的に構成され、先端面と上面との間に形成される角度と、先端面と下面との間に形成される角度とは略等しい角度θ2である。また15段の本体側凸条部5,5,…のうち、上下に隣接して位置する2つ(2段)の本体側凸条部5,5の間に、本体側凹条部6bが形成される。本体側凹条部6bの底面は、ステーブ本体2の炉内側面2bの一部によって構成され、本体側凹条部6bの上側の側壁は、2段の本体側凸条部5,5のうちの上側に位置する本体側凸条部5の下面によって構成される。また本体側凹条部6bの下側の側壁は、2段の本体側凸条部5,5のうちの本体側凹条部6bの下側に位置する本体側凸条部5の上面によって構成される。本体側凹条部6bは上下対称的に構成され、本体側凹条部6bの底面と上側の側壁とがなす角度と、本体側凹条部6bの底面と下側の側壁とがなす角度とは、略等しい角度である。そして本体側凹条部6bの底面と一方の側壁とがなす角度の大きさは、本体側凸条部5の先端面と炉内側面2bとが略平行であるため、本体側凸条部5の先端面と上面(又は下面)と同じ角度θ2となる。
【0030】
ここで、本体側凸条部5の径方向の長さr2(
図2参照)は、炉壁パネル1のパネル側凸条部4の径方向の長さr1(
図1参照)と略同じ長さとされている(r1=r2)。また本体側凸条部5の先端の上下方向の高さh2(
図2参照)は、炉壁パネル1のパネル側凸条部4の先端の上下方向の高さh1(
図1参照)と略同じ高さとされている(h1=h2)。また本体側凸条部5の本体部2aの付け根側の後端の上下方向の高さs2(
図2参照)は、パネル側凸条部4のパネル本体1aの付け根側の後端の上下方向の高さs1(
図1参照)と略同じ高さとされている(s1=s2)。そして本体側凸条部5の先端面と上面との間の角度θ2は、パネル側凸条部4の先端面と上面との間の角度θ1と略等しい角度とされている(θ1=θ2)このように、ステーブ本体2の本体側凸条部5と、炉壁パネル1のパネル側凸条部4とは互いに対応した形状とされている。そして炉壁パネル1のパネル側凸条部4はステーブ本体2の本体側凹条部6bに対応した形状に構成されているとともに、ステーブ本体2の本体側凸条部5は炉壁パネル1のパネル側凹条部6aに対応した形状に構成されている。
【0031】
尚、ステーブ本体2は、本体部2aの上下方向の高さ及び周方向の幅が適宜変更されてよいとともに、本体側凸条部5の段数も15段に限らず適宜設定されてよい。また複数段の本体側凹条部6bのそれぞれの形状は、
図2に示したような同形状に限定されず、対応するパネル本体1aのパネル側凸条部4と遊嵌できれば、形状は適宜変更されてよい。
次にステーブ3を、
図3を用いて説明する。
【0032】
ステーブ3は、
図3(a)に示すように、ステーブ本体2の炉内側面2bと複数の炉壁パネル1,1,…の炉体鉄皮側面1cとを当接させて一体化したものである。このとき、炉壁パネル1のパネル側凸条部4とステーブ本体2の本体側凹条部6b、及び、ステーブ本体2の本体側凸条部5と炉壁パネル1のパネル側凹条部6aとは、上記のとおり互いに対応した形状とされるとともに、上下方向で交互に隣り合う本体側凹条部6bとパネル側凸条部4、及びパネル側凹条部6aと本体側凸条部5との間には僅かに隙間が形成され、互いに緩やかに嵌合している。尚、この隙間は、
図3中では説明のため図示を省略する。これにより、炉壁パネル1がステーブ本体2に対して摺動可能とされ、炉壁パネル1がステーブ本体2に遊嵌する。こうした構成により、炉壁パネル1は周方向に移動自在とされる。
【0033】
本発明の実施形態に係るステーブ3の炉内側には、
図3(b)に示すように、複数の炉壁パネル1,1,…により、これらの複数の炉内側面1b,1b,…が一体化して形成された保護壁3aが構成される。保護壁3aはステーブ本体2の炉内側面2b側の目地溝3bを除いた略すべての前面(炉内側の面)を覆い隠し、ステーブ本体2を炉内の熱や炉内原料の荷下がりの負荷から保護している。
【0034】
図3(b)の場合、炉壁パネルは上下に7段配設され、最上段と最下段にはいずれも、高さ約35cm、幅約50cmの矩形の炉壁パネル1が3枚、周方向に並設されている。また上から2段目、4段目及び6段目の各段にはいずれも、高さ約30cm、幅約30cmの正方形の炉壁パネル1が5枚、周方向に並設されている。また上から3段目及び5段目の各段にはいずれも、高さ約30cm、幅約50cmの矩形の炉壁パネル1が3枚、周方向に並設されている。また各炉壁パネル1の上下間及び左右間には目地溝3bが形成されている。
これにより、ステーブ3には計27枚の炉壁パネル1が、
図3(b)に示すように、ステーブ本体2の炉内側面2b上に千鳥状に配設されている。また目地溝3bは、最上段から最下段の間で上下方向に表われる線が一直線状とならず、途中で周方向に90度屈曲する部位を必ず有するように構成されている。
【0035】
(ステーブの構築方法)
次に、本発明の実施形態に係るステーブの構築方法を、
図4、
図5を用いて説明する。本発明の実施形態に係るステーブの構築方法は、高炉改修時に新規に炉体を製作するときや、高炉操業中に長時間休風して、既存のステーブを張り替えるときに行われ、隣接するステーブ間の目地を遮蔽する上で好適に用いられるものである。尚、図中のステーブ3や炉壁パネル1の寸法、枚数等は、説明のために設定されたものであり、実際とは異なって示されている。また炉体鉄皮8とステーブ本体2間の不定形耐火物の図示は省略されている。また炉壁パネル1の周方向の幅は、目地の幅よりも十分長い幅とされ、炉壁パネル1が目地を形成する隣接するステーブ3、3´間に同時に嵌合し、架設されるように、すなわち架け渡されるように構成されている。
【0036】
まず、高炉7の上方の炉体デッキ(不図示)に設置されたウインチ(不図示)を用いて、予め炉壁パネル1を備えたステーブ3を高炉7の上部の開口部(不図示)から吊り下げ、炉内に挿入し、所定の貼り付け位置まで移動させる。その後、ステーブ3を炉体鉄皮8側に引き寄せ、ボルト止め装置等不図示の手段を用いて、炉体鉄皮8の内壁に固着する。
こうした作業を繰り返し、ステーブ3を所定の枚数、
図4に示すように、高炉7の炉体鉄皮8の内壁面で炉体鉄皮8の周方向及び上下方向に、高炉7と同心状に配設する。これに伴い、周方向に並設された隣接するステーブ3、3´間に目地3cが形成される。また一方のステーブ3における、目地3cと反対側にも目地3eが形成されるとともに、他方のステーブ3´における、目地3cと反対側にも目地3dが形成される。
【0037】
ここで、他方のステーブ3´における、目地3cと反対側に形成された目地3dの幅を「第一の幅W
1」とする(
図4参照)。また目地3c幅を「第二の幅W
2」とするとともに、一方のステーブ3における、目地3cと反対側に形成された目地3eの幅を「第三の幅W
3」とする(
図4参照)。尚、これらの目地3c、3d、3eの幅は、具体的には、隣接するステーブ本体2,2´の炉内側面2b間の幅、すなわち隣接するステーブ本体2,2´の周方向で対向する各側面の間の最小幅を用いている。
【0038】
次に、隣接するステーブ間の目地を遮蔽する遮蔽工程を説明する。尚、説明の便宜のため、
図4、
図5中の炉壁パネル1にa1〜a7の番号を付す。
まず、隣接するステーブ3、3´のある段(図中の最上段)において、他方のステーブ3´の、一方のステーブ3と反対の端部(図中の目地3d側)に遊嵌する一枚の炉壁パネル1(a1)を、
図4中の矢印で示すように、一方のステーブ3と反対側(
図4中の右側)へスライドして移動させる。このとき、移動させる炉壁パネル1(a1)は、他方のステーブ3´の一方のステーブ3と反対側に隣接するステーブ(図中右奥側、不図示)の他方のステーブ3´側の端部の炉壁パネルに当接するので、実質的に略第一の幅W
1分スライドすることとなる。この移動方向を以下「パネルスライド方向」として用いる。
【0039】
次に、他方のステーブ3´において、移動させた炉壁パネル1(a1)と同じ段の他の炉壁パネル1(a2及びa3)を、各々パネルスライド方向へ、第一の幅W
1分スライドして移動させる。スライド後、これらの炉壁パネル1(a1〜a3)を連設する、すなわち連ねて並べると、他方のステーブ本体2´の一方のステーブ3側の端部には、第一の幅W
1を有する空隙が形成される。
【0040】
次に、一方のステーブ3において、これらの炉壁パネル1(a1〜a3)と同じ段における、他方のステーブ3´側の端部の炉壁パネル1(a4)を、パネルスライド方向へスライドする。このとき、この炉壁パネル1(a4)は、そのパネル側凸条部4の遊嵌位置を一方のステーブ本体2の本体側凹条部6bから、他方のステーブ本体2´の本体側凹条部6bに変更して、目地3cの前面をスライドし、続けて上記空隙をスライドする。すなわち、この炉壁パネル1(a4)は、第一の幅W
1と第二の幅W
2の和の長さ分スライドすることとなる。そして、この移動させた炉壁パネル1(a4)は、他方のステーブ3´における一方のステーブ3側に最も近接する炉壁パネル(a3)に当接する。これにより、炉壁パネル1が、隣接する2つのステーブ3、3´に架設され、ステーブ3、3´間の目地3cの前面が、
図5に示すように、炉壁パネル1(a4)によって遮蔽される。
【0041】
次に、一方のステーブ3において、他方のステーブ3´へ移動させた炉壁パネル1(a4)と同じ段の他の2枚の炉壁パネル1(a5及びa6)を、各々パネルスライド方向へ、スライドする。これにより、2枚の炉壁パネル1(a5及びa6)のうち先行する炉壁パネル1(a5)を、他方のステーブ3´へ移動させた炉壁パネル1(a4)に当接させる。そして、2枚の炉壁パネル1(a5及びa6)のうち後続の炉壁パネル1(a6)を、先行する炉壁パネル1(a5)に当接させる。そして、これら3枚の炉壁パネル1(a4〜a6)を連設すると、一方のステーブ3の、他方のステーブ3´と反対側の目地3e側の端部には、第一の幅W
1と第二の幅W
2の和の長さの幅を有する空隙が形成される。
【0042】
次に、
図5に示すように、一方のステーブ3の他方のステーブ3´と反対側のステーブ(図中左手前側、不図示)から、別の炉壁パネル1(a7)を、パネルスライド方向へスライドする。このとき、この別の炉壁パネル1(a7)は、上記他方のステーブ3´へ移動させた炉壁パネル1(a4)と同様に、そのパネル側凸条部4の遊嵌位置を変更して、目地3eの前面をスライドし、続けて、上記第一の幅W
1と第二の幅W
2の和の長さの幅を有する空隙をスライドする。すなわち、この炉壁パネル1(a7)は、第一の幅W
1と第二の幅W
2と第三の幅W
3の和の長さ分スライドすることとなる。そして、この移動させた炉壁パネル1(a7)は、上記他方のステーブ3´へ移動させた炉壁パネル1(a4)と同様に、一方のステーブ3と、この一方のステーブ3の他方のステーブ3´と反対側のステーブとの間に架設される。そして、これらのステーブ間の目地3eの前面が、
図5に示すように、炉壁パネル1(a7)によって遮蔽される。
【0043】
このように、周方向に並設するステーブ3毎に、炉壁パネル1をパネルスライド方向に逐次的にスライドさせることにより、炉壁パネル1がステーブ上をスライドする幅は、後続のステーブでスライドする炉壁パネル1の移動距離が逐次的に積み重ねられ、後続する炉壁パネル1になる程、長くなる。
上記した工程を、炉体鉄皮8の周方向に沿って施し、最初にパネルスライド方向へスライドさせた炉壁パネル1(a1)の位置まで戻る。最初にスライドさせた炉壁パネル1(a1)も、さらにパネルスライド方向にスライドさせ、隣接する2つのステーブ間に架設する。その後、スライドを行ったこの段における各々の炉壁パネル1の位置を微修正する。以上により、周方向に並設された複数のステーブ3のひとつの段における全ての目地が、炉壁パネル1を用いて遮蔽される遮蔽工程が構成される。
【0044】
次に、この遮蔽工程を、例えば
図4中の上から2段目、更に続けて3段目、…と、行う段を順次ずらし、最終的に同じステーブ3の他の全ての段において行うことにより、当該ステーブ3が配設された高さにおける隣接するステーブ間の目地を全て遮蔽する。さらに続けて、他の高さ位置に配設されたステーブにおいても同様に目地を遮蔽し、炉体鉄皮8に配設された全ての隣接するステーブ間の目地を遮蔽する。なお、炉壁パネル1のスライドによって炉壁パネル間に隙間ができる場合は、適宜炉壁パネルを追加したり、隙間を耐火物等で塞ぐ措置を行えばよい。また、炉壁パネルの形状を調整することにより垂直方向に配置された2つのステーブ3,3間の水平方向に延在する目地に炉壁パネルを架設して目地を遮蔽するようにすることもできる。
【0045】
その後、各ステーブ3の炉壁パネル1間に不定形耐火物の吹込み等を行い、炉壁パネル1をステーブ本体2及び炉体鉄皮8に固着して、その位置を固定する。上記のようにして、本発明の実施形態に係るステーブの構築方法が構成される。
本発明の実施形態に係るステーブの構築方法においては、ステーブ本体2に遊嵌され移動自在に構成された複数の炉壁パネル1を、ステーブ本体2上で周方向にスライドして移動させる。これにより、炉体鉄皮8にステーブ3を配設した後であっても、隣接するステーブ3、3´間の目地3cを遮蔽する。そして目地3cの遮蔽と同時にステーブ本体2の保護壁3aを構築するものである。
上記したステーブの構築方法を用いて高炉内に保護壁3aを形成した場合、工期は8日で済んだ。一方、従来の保護壁構築方法(
図9参照)を用いた場合の工期は12日であった。よって、工期を3分の2に短縮することができた。
【0046】
(効果)
本発明の実施形態に係る炉壁パネル1を用いてステーブ3を構成すれば、ステーブ本体2と一体化して用いられる炉壁パネル1が、パネル側凸条部4と本体側凹条部6bと、本体側凸条部5とパネル側凹条部6aとを用いてステーブ本体2に遊嵌され、炉壁パネル1が、並設されたステーブ本体2間を周方向に移動自在に構成される。
【0047】
これにより、ステーブ本体2の炉内側に配置される1つの炉壁パネル1が、同じ高さ位置の凹条部を用いて、複数のステーブ本体間を周方向に移動できる。よって、炉壁パネル1をスライドして移動させ、周方向で隣接する2つのステーブ本体2,2´に同時に嵌合する位置に配置するだけで、それらステーブ本体2,2´間の目地3cが遮蔽される。
従って、本発明に係る炉壁パネル1によれば、隣接するステーブ3、3´間の目地3cを、作業負担少なく容易かつ確実に遮蔽することができ、ステーブ3間の目地3cにおける耐火物の損耗・脱落を抑制することができる。
【0048】
また、本発明の実施形態に係る炉壁パネル1には、レンガ等に比べ、気孔率、曲げ強さに優れるセラミックスが用いられるので、炉内の熱や炉内原料の荷下がりの負荷による損耗・脱落を従来よりも抑制できる。また高炉を長寿命化することができる。
また、本発明の実施形態に係る炉壁パネル1は、パネル側凸条部4が炉体鉄皮側面1cの上下方向に複数並設されるため、炉壁パネル1とステーブ本体2との遊嵌位置が複数となり、炉壁パネル1とステーブ本体2との一体性が高まる。これにより、炉壁パネル1の移動時の安定性が向上するとともに、ステーブ3の構造上の強度が向上する。
【0049】
また、本発明の実施形態に係るステーブ3は、隣接するステーブ3、3´間の目地3cを、容易かつ確実に遮蔽できることに加えて、複数の炉壁パネル1,1,…の炉内側面1bを一体化させて、ステーブ本体2の前面を保護する保護壁3aを形成するので、レンガ等による耐火物をステーブ3の前面に積み上げる必要がない。よって、高炉7内のステーブ3の構築作業に係る負担を低減できる。
【0050】
また、本発明の実施形態に係るステーブ3は、複数の炉壁パネル1がステーブ本体2の炉内側面2a側に千鳥状に配置されるので、目地溝3bは、最上段から最下段の間で上下方向に表われる線が一直線状とならず、途中で必ず周方向に90度屈曲する部位を有するように構成されている。よって、炉壁パネル1間の目地溝3bにおけるステーブ3の冷却効率を高めることができる。
また、本発明の実施形態に係るステーブ3は、一枚のステーブ3内において上下に並設される炉壁パネル1各々の位置をずらせることとされているため、ずらせた分、隣接するステーブ3、3´間に一枚の炉壁パネル1を配設することと、各々のステーブ3、3´内の炉壁パネル1を千鳥状に配設することとを、同時に行うことができる。
【0051】
また、本発明の実施形態に係るステーブ3は、本体側凸条部5が炉内側へ拡径形成されるとともに、パネル側凸条部4は、炉内側へ拡径形成された上下2つの本体側凸条部5間に形成される凹条部6に対応して、炉体鉄皮8側へ拡径形成される。これにより、炉壁パネル1のステーブ本体2からの脱落が抑制されるので、炉壁パネル1とステーブ本体2との一体性が高まる。これにより、炉壁パネル1の周方向移動時の安定性が向上するとともに、ステーブ3の構造上の強度が向上する。
また、本発明の実施形態に係るステーブの構築方法によれば、隣接するステーブ3間の目地3cを容易に遮蔽できるだけでなく、目地3cの遮蔽と同時にステーブ本体2の保護壁3aを構築するので、高炉7内にステーブ3及び防護壁を効率的に構築できる。
【0052】
(第1変形例)
また本発明の他の実施形態において、ステーブの凹条部に遊嵌する炉壁パネルの凸条部は、2つ(2段)の炉壁パネルの凸条部が、ひとつのステーブ凹条部に遊嵌する構成とすることもできる。そのような実施形態の例を
図6に示す。
図6には、炉体鉄皮8の内面に不定形耐火物10を介して設けられたステーブ本体2におけるひとつの本体側凹条部に、2つ(2段)のパネル側凸条部が遊嵌するステーブが例示されている。尚、
図1〜5に示したステーブと共通する構成については詳細な説明を省略するとともに、相違する点について以下説明する。
【0053】
第1変形例に係る複数段の炉壁パネル1´,1´,…は、
図6に示すように、
図1に示したパネル本体1aと同様に構成された略平板状のパネル本体1a´と、パネル本体1a´の平坦な炉体鉄皮側面1c´から水平方向に突出形成された複数段のパネル側凸条部と、を備える。パネル側凸条部の段数は、2段、3段等、適宜設定されてよい。パネル本体1a´の炉体鉄皮側面1c´の反対側の面は、平坦な炉内側面1b´とされている。
【0054】
第1変形例に係るパネル側凸条部は、上下の炉壁パネル1´,1´間で、互いに隣接するパネル側凸条部の相手方に対向する面が平坦に形成されている。例えば、
図6中に計8段遊嵌する炉壁パネル1´,1´,…のうち、最上段の炉壁パネル1´には、上下2段のパネル側凸条部が設けられ、そのうちの下側のパネル側凸条部4aの下面は平坦に形成されている。またステーブの上から2段目の炉壁パネル1´には上下3段のパネル側凸条部が設けられ、そのうちの上側のパネル側凸条部4bの上面は平坦に形成されている。そしてパネル側凸条部4aとパネル側凸条部4bとが、ステーブ本体2の上下方向に複数形成された本体側凹条部のうちの上から2段目の本体側凹条部に、一体的に遊嵌している。
【0055】
図6中には、このように2段のパネル側凸条部がひとつの本体側凹条部に遊嵌する構成が、計7組例示されている。尚、最上段の炉壁パネル1´のパネル側凸条部4aの下面と、上から2段目の炉壁パネル1´のパネル側凸条部4bの上面との間には、僅かな隙間(クリアランス)が構成されている。この僅かな隙間が、
図3(b)中に示したような、炉壁パネル間の目地溝を形成する。
【0056】
(第2変形例)
また、
図7のように、ステーブ本体2の本体側凸条部5の先端と、この先端に遊嵌する炉壁パネル1側のパネル側凹条部の間に、空隙Aが形成されるように、ステーブを構成してもよい。また炉壁パネル1のパネル側凸条部4の先端と、この先端に遊嵌するステーブ本体2側の本体側凹条部の間に空隙Bが形成されるようにしてもよい。尚、第2変形例においても第1変形例と同様に、
図1〜5に示したステーブと共通する構成については詳細な説明を省略するとともに、相違する点について説明する。
【0057】
第2変形例に係るステーブでは、炉壁パネル1とステーブ本体2とが遊嵌しつつ、所定の間隔を設けて互いに離間配置されることにより、炉壁パネル1の炉体鉄皮側面1cと、ステーブ本体2の本体側凸条部5の先端面との間に、空隙Aが形成される。また炉壁パネル1とステーブ本体2とが遊嵌しつつ、所定の間隔を設けて互いに離間配置されることにより、ステーブ本体2の炉内側面2bと、炉壁パネル1のパネル側凸条部4の先端面との間に、空隙Bが形成される。
【0058】
一方の凸条部(パネル側凸条部4,本体側凸条部5)と凹条部(本体側凹条部,パネル側凹条部)との間に空隙を設ける構成とすることで、炉壁パネル1を周方向に移動させる際に、隣接するステーブ本体2の本体側凸条部5の突出高さ(径方向の長さ)が上下間で多少異なっていても、容易に炉壁パネル1を移動可能になる。また、凸条部と凹条部の間に空隙があることによって、炉壁パネルとステーブ本体間の伝熱が妨げられ、ステーブの保護に寄与するという効果も有する。尚、空隙Aと空隙Bとは、両方が形成されても、いずれか一方が形成されてもよいが、少なくとも一方が形成されることにより上記効果を奏する。
【0059】
凸条部と凹条部の間の空隙を確保するため、
図7に示すように、ステーブ本体2の本体側凸条部5の先端と、遊嵌する炉壁パネル1側の凹条部の間あるいは、ステーブ本体2側の凹条部と、遊嵌する炉壁パネル1のパネル側凸条部4の先端の間にスペーサー15を配置してもよい。スペーサー15を設けることにより、凸条部と凹条部の間の空隙を炉内で確実に形成することができる。
【0060】
空隙A又は空隙Bにおける凸条部と凹条部の間隔は、2mm〜10mm程度とすることが好ましい。この程度の間隙であれば、不定形耐火物を流し込む際に、不定形耐火物がステーブ本体2と炉壁パネル1間に流入しにくく、ステーブ本体2と炉壁パネル1間に、空隙A又は空隙Bをなす空気層が形成されて断熱強化に寄与する。間隔が2mm未満の場合、ステーブ本体2と炉壁パネル1間に、空気層を十分に確保できなくなる。また間隔が10mmより大きい場合、不定形耐火物がステーブ本体2と炉壁パネル1間に流入する量が増大し、空気層を十分に確保できなくなる。
【0061】
(その他)
尚、本発明に係る炉壁パネル1は、パネル側凸条部4及びパネル側凹条部6aの形状、寸法が適宜変更されてよい。また、炉体鉄皮側へ拡径形成される場合のパネル側凸条部4の断面形状は、本発明の実施形態に示したような台形に限らず、五角形、六角形等他の多角形でも、或いは円形、楕円形でもよい。パネル側凸条部4の付け根(後端)から先端との間で、付け根側の後端の高さs1より高い高さを有する部位が形成され、ステーブ本体の本体側凹条部との間で遊嵌するように構成されていればよい。
【0062】
また、本発明に係る炉壁パネル1の材料として、セラミックス以外にも、炉内の熱や炉内原料の荷下がりの負荷に対抗できる素材であれば、他の材料が用いられてもよい。またそれらを傾斜機能材料の形で、炉壁パネル1に適用してもよい。
また、本発明に係るステーブの構築方法では、本発明の実施形態に係るステーブの構築方法のように、予め炉壁パネル1を備えたステーブ3を、高炉7内に搬入する方法に限定するものではない。例えば、高炉7内に搬入するステーブは、炉壁パネル1を備えないステーブ本体2とし、このステーブ本体2を炉体鉄皮8に貼り付けた上で、各ステーブ本体2に炉壁パネル1を嵌着してステーブ3とした後に、上記した目地の遮蔽工程を施してもよい。
【0063】
本発明は上記のとおり開示した実施の形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになると考えられるべきである。例えば、本発明に係る炉壁パネル及びステーブ、更にこれらを用いて行うステーブの構築方法においては、上記のとおり説明したそれぞれの実施形態に係る炉壁パネルやステーブ本体の構成を、適宜組み合わせてもよい。以上のように、本発明は、本明細書及び図面に記載していない様々な実施の形態等を含むとともに、本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。