(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第二の多孔体の固相部に接する前記第一の多孔体の粒子径は、前記第二の多孔体の気相部に対向する前記第一の多孔体の粒子径より大きくしている請求項1に記載の膜電極接合体。
前記第二の多孔体が、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム及びアルミニウム合金、クロム及びクロム合金、ニッケル及びニッケル合金、マグネシウム及びマグネシウム合金からなる群のうち、いずれか1種類以上の金属である請求項1又は2に記載の膜電極接合体。
請求項1〜3のいずれか1項に記載の膜電極接合体の製造方法であって、前記第二の多孔体によって前記第一の多孔体の空孔を圧潰することにより、前記固相部に接する前記第一の多孔体の空隙率を小さく、前記気相部に対向する前記第一の多孔体の空隙率を相対的に大きくすることを特徴とする膜電極接合体の製造方法。
前記第二の多孔体が、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム及びアルミニウム合金、クロム及びクロム合金、ニッケル及びニッケル合金、並びにマグネシウム及びマグネシウム合金からなる群のうち、いずれか1種類以上の金属から成ることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の燃料電池。
前記第一の多孔体及び前記第二の多孔体の互いの食い込み高さが、前記第二の多孔体の空孔の深さ以下であることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の燃料電池。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係わる燃料電池スタック10の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す燃料電池スタック10を構成する主要な部材を分解した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すセルユニットA1を示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すI‐I線に沿った切断面におけるセルユニットA1を示す断面図である。
【
図5】
図5(A)は、
図4に示す空気極32の表面を拡大して示す平面図であり、
図5(B)は、
図4に示す電解質膜31、空気極32及び燃料極33を拡大して示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図4に示す空気極32の構造を模式的に示す説明図である。
【
図7】
図7は多孔体内空間(第二の多孔体)の屈曲度を説明するための図であって、
図7(A)は自由空間における最短輸送距離L1を示す模式図であり、
図7(B)は多孔体内空間(第二の多孔体)における最短輸送距離L2を示す模式図である。
【
図8】
図8は膜電極接合体30の製造方法の第1例を示し、
図8(A)は第二の多孔体32aによる圧縮前の第一の多孔体32bを示し、
図8(B)は第二の多孔体32aによる圧縮後の第一の多孔体32bを示す。
【
図9】
図9は膜電極接合体30の製造方法の第2例を示し、
図9(A)は第二の多孔体32aによる圧縮前の第一の多孔体32bを示し、
図9(B)は第二の多孔体32aによる圧縮後の第一の多孔体32bを示す。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係わる空気極32の構造を模式的に示す説明図である。
【
図12】
図12は、その他の実施形態に係わる空気極32の構造を模式的に示す説明図である。
【
図13】
図13は、その他の実施形態に係わる空気極32の構造を模式的に示す説明図であり、
図13(A)は第二の多孔体32aによる圧縮前の第一の多孔体32bを示し、
図13(B)は第二の多孔体32aによる圧縮後の第一の多孔体32bを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
[第1の実施形態]
図1及び
図2を参照して、第1実施形態に係る燃料電池スタック10の全体構成を説明する。燃料電池スタック10は、例えば車両に搭載される固体高分子電解質型の燃料電池スタックである。
【0012】
燃料電池スタック10は、一対のエンドプレート11,12と、一対のエンドプレート11,12の間に配置された一対の集電板13,14と、一対の集電板13,14の間に配置された複数のセルユニット(燃料電池)A1を有する。セルユニットA1の積層方向(x方向)の一端側(
図1及び
図2中の右側)に、集電板14及びスペーサ19を介してエンドプレート12が設けてある。また、x方向の他端側(
図1及び
図2中の左側)にも、集電板13を介してエンドプレート11が設けてある。エンドプレート11,12は、一対の集電板13,14及び、積層された複数のセルユニットA1を挟圧する。燃料電池スタック10は、挟圧された集電板13,14及びセルユニットA1を締結するための締結板15,16及び補強板17,17を備える。セルユニットA1の長辺側の表裏面(
図1及び
図2中で上下面)に、締結板15,16が設けられ、セルユニットA1の短辺側の表裏面に、補強板17,17が設けてある。締結板15,16及び補強板17,17はボルト18により両エンドプレート11、12に連結されている。このようにして、セルユニットA1の積層体は、
図1に示すようなケース一体型構造となり、セルユニットA1の積層体はx方向に拘束・加圧され、個々のセルユニットA1に所定の接触面圧が加えられ、ガスシール性や導電性が良好に維持される。
【0013】
図2に示すように、セルユニットA1は、燃料電池用セルフレーム20と、燃料電池用セルフレーム20の表裏面に接する一対のセパレータ40,41とを有する。なお、実施形態においては、燃料電池用セルフレームを単に「セルフレーム」という。セルフレーム20は、セルユニットA1の積層方向(x方向)から見た正面視において横長方形にし、かつ、ほぼ一定の板厚にして形成された樹脂性のフレーム21と、フレーム21の中央部分に配設された膜電極接合体30とを有する。
【0014】
図3を参照して、セルユニットA1の平面構造を説明する。セルユニットA1の両側方には、冷却液水、水素含有ガス又は酸素含有ガスの供給及び排出を行うためのマニホールド部Hがそれぞれ形成されている。
【0015】
一側方のマニホールド部Hは、供給用マニホールド孔H1〜H3からなる。供給用マニホールド孔H1〜H3は、酸素含有ガス供給用マニホールド孔(H1)、冷却流体供給用マニホールド孔(H2)及び水素含有ガス供給用マニホールド孔(H3)からなり、
図1及び
図2に示すx方向に、酸素含有ガス、冷却流体及び水素含有ガスの流路をそれぞれ形成している。
【0016】
他側方のマニホールド部Hは、排出用マニホールド孔H4〜H6からなる。排出用マニホールド孔H4〜H6は、水素含有ガス排出用マニホールド孔(H4)、冷却流体排出用マニホールド孔(H5)及び酸素含有ガス排出用マニホールド孔(H6)からなり、x方向に冷却流体、水素含有ガス、及び酸素含有ガスの流路をそれぞれ形成している。なお、供給用マニホールド孔と排出用マニホールド孔は一部又は全部が逆の位置関係でもよい。
【0017】
図4を参照して、セルユニットA1の断面構造を説明する。一対のセパレータ40,41がセルフレーム20(31〜33、21)の両面に接することにより、発電用ガス(水素含有ガス及び酸素含有ガス)を流通させるためのガス流路Gを区画形成する。
【0018】
セルフレーム20(31〜33、21)は、MEA(Membrane Electrode Assembly)とも呼称されるものであり、膜電極接合体30(31〜33)と、平面矩形状を有するフレーム21とを備える。膜電極接合体30(31〜33)は、例えば固体高分子からなる電解質膜31と、電解質膜31の両面に接する空気極32及び燃料極33とを有する。
【0019】
図3に示したように、フレーム21は、一方の短辺側に、供給用マニホールド孔H1〜H3を有し、他方の短辺側に、排出用マニホールド孔H4〜H6を有している。空気極32及び燃料極33については、
図5を参照して後述する。
【0020】
セパレータ40,41は、例えばステンレス製であって、フレーム21及び電解質膜31に対応した平面矩形状を成すと共に、フレーム21と同様に供給用マニホールド孔H1〜H3及び排出用マニホールド孔H4〜H6を有している。セパレータ40、41は、セルフレーム20(31〜33、21)に重合した状態で先述のガス流路Gを形成する。このとき、セパレータ40,41及びフレーム21の供給用マニホールド孔H1〜H3及び排出用マニホールド孔H4〜H6が、互いにx方向に連通する。
【0021】
セパレータ40,41とフレーム21の縁部同士の間、及び供給用マニホールド孔H1〜H3及び排出用マニホールド孔H4〜H6の周囲には、ガスシール36が設けてある。ガスシール36は、積層された複数のセルユニットA1同士の間、すなわち隣接するセパレータ40,41同士の間にも設けられている。これにより、隣接するセパレータ4間に冷却液を流通させることができる。ガスシール6は、個々の層間に、カソードガス、アノードガス及び冷却流体のガス流路を気密的に形成する。ガスシール6は、個々の層間に流体が流れるように、供給孔H1〜H3及び排出孔H4〜H6の周縁部に開口を設ける。
【0022】
図5(A)及び
図5(B)を参照して、
図4に示す空気極32及び燃料極33の構成を説明する。
図5(A)は、
図4に示す空気極32の表面を拡大して示した平面図であり、
図5(B)は、
図4に示す膜電極接合体(31〜33)を拡大して示す断面図である。
【0023】
空気極32は、電解質膜31の一方の面に接する触媒層32Aと、触媒層32Aのセパレータ40側表面に積層されたガス拡散層32Bとを有する。ガス拡散層32Bは、触媒層32Aに接する第一の多孔体32bと、セパレータ40側に積層された第二の多孔体32aとを有する。
【0024】
第二の多孔体32aは、例えば、金属線材(φ50um)を交互に織り込んでなる金網であって、金属線材が存在する固相部32a´と、金属線材が存在しない気相部32a″を有する。第二の多孔体32aの固相部32a´に接する第一の多孔体32bの空隙率は小さく、第二の多孔体32aの気相部32a″に接する第一の多孔体32bの空隙率は相対的に大きい。具体的には、固相部32a´に接する第一の多孔体32bの空隙率は、気相部32a″に接する第一の多孔体32bの空隙率よりも小さい。
【0025】
また、第二の多孔体32aの固相部32a´に接する第一の多孔体32bの粒子径は大きく、第二の多孔体32aの気相部32a″に対向する第一の多孔体32bの粒子径は相対的に小さい。
【0026】
燃料極33は、上記した空気極32と同じ構造を有する。すなわち、電解質膜31の他方の面に接する触媒層33Aと、触媒層33Aのセパレータ41側表面に積層されたガス拡散層33Bとを有する。ガス拡散層33Bは、触媒層33Aに接する第一の多孔体33bと、セパレータ41側に積層された第二の多孔体33aとを有する。第二の多孔体33aは、例えば、金属線材(φ50um)を交互に織り込んでなる金網であって、金属線材が存在する固相部33a´と、金属線材が存在しない気相部33a″を有する。第二の多孔体33aの固相部33a´に接する第一の多孔体33bの空隙率は小さく、第二の多孔体33aの気相部33a″に接する第一の多孔体33bの空隙率は相対的に大きい。
【0027】
また、第二の多孔体33aの固相部33a´に接する第一の多孔体33bの粒子径は大きく、第二の多孔体33aの気相部33a″に対向する第一の多孔体33bの粒子径は相対的に小さい。
【0028】
図6を参照して、
図4に示した空気極32の構造を説明する。ここでは、空気極32を例にとり説明するが、燃料極33も同様な構造を有する。なお、
図6において、「EL」は電子の流れを示し、「H
2O」は発電に伴って生成された液水の流れを示し、「Ox」は酸素含有ガスの流れを示す。
【0029】
膜電極接合体30は、一方のガス流通路を流通する水素含有ガスが燃料極33に流接し、かつ、他方のガス流通路を流通する酸素含有ガスが空気極32に流接することにより発電を行なうものである。第二の多孔体32a(33a)の固相部32a´(33a´)に接する第一の多孔体32b(33b)の空隙率は小さく、第二の多孔体32a(33a)の気相部32a″(33a″)に接する第一の多孔体32b(33b)の空隙率は相対的に大きい。このため、第二の多孔体32a(33a)の固相部32a´(33a´)では、
図6の矢印ELで示す如く第一の多孔体32b(33b)との間における電子の輸送経路が確保されて、電子の輸送性が良好になる。
【0030】
第二の多孔体32a(33a)の気相部32a″(33a″)では、
図6の矢印Oxで示す如く、ガス流路Gと第一の多孔体32b(33b)との間における酸素含有ガスの輸送経路が確保されて、酸素含有ガスの輸送性が良好になる。さらに、第二の多孔体32a(33a)の気相部32a″(33a″)では、
図6の矢印H
2Oで示す如く、発電に伴って生成された液水が毛細管現象によりガス流路G側に排出され易くなり、生成水が第一の多孔体32b(33b)に広がるような事態を抑制することができる。
【0031】
上述した電子及び酸素含有ガスの輸送性の向上には「屈曲度」が関係する。
【0032】
図7(A)及び
図7(B)を参照して、第二の多孔体32a内における屈曲度について説明する。
図7(A)に示す自由空間において、位置FA(平面FA)から、位置FB(平面FB)まで最短の輸送経路L1は直線となる。一方、7図(B)に示す第二の多孔体32a内においては、第二の多孔体32a内に存在する固相部32a´の影響により、最短の輸送経路L2は直線とならず、歪むことになる。よって、最短の輸送経路L2は曲線となり、自由空間の場合に比べてその距離は長くなる。
【0033】
このとき、第二の多孔体32a内の屈曲度は、L2/L1で表現される。すなわち、第二の多孔体32aにおいて、屈曲度の最小値は「1」となる。第二の多孔体33aについても同様である。
【0034】
次に、第1実施形態に係わる膜電極接合体30の製造方法について説明する。
図8を参照して膜電極接合体30の製造方法の第1例を説明し、
図9を参照して膜電極接合体30の製造方法の第2例を説明する。
【0035】
第1実施形態に係わる膜電極接合体30の製造方法では、第二の多孔体32a(33a)の気相部(空孔)32a″(33a″)及び固相部32a´(33a´)の配置に応じて、第一の多孔体32b(33b)の構造を変化させる。具体的には、膜電極接合体30の製造方法は、
第二の多孔体
32a(33a)の一部によって
第一の多孔体
32b(33b)の
空孔を圧潰する。これにより、第二の多孔体32a(33a)の固相部32a´(33a´)に接する第一の多孔体32b(33b)の空隙率を小さく、第二の多孔体32a(33a)の気相部32a″(33a″)に対向する第一の多孔体32b(33b)の空隙率を相対的に大きくする。
【0036】
図8(A)及び
図8(B)に示すように、第二の多孔体32a(33a)がMPL(第一の多孔体)32b(33b)に押し圧を加えることにより、固相部32a´(33a´)に接する第一の多孔体32b(33b)内の空孔が潰される。なぜなら、第一の多孔体32b(33b)を構成するカーボン粒子は潰れないからである。これにより、相対的に第一の多孔体32b(33b)の空隙率が減少し、第一の多孔体32b(33b)における固体(カーボン粒子)の占有率が増加する。この結果、電子の輸送経路Pasが短くなり、電子の輸送抵抗が低減される。すなわち、元々接触していなかったカーボン粒子間が完全に接触してしまえば、圧縮破壊されない限り、それ以上は潰れないため、押し圧の制御も容易となる。また、第二の多孔体32a(33a)としては、金網に限らず金属多孔体を用いることで容易に製造可能な手法である。
【0037】
気相部(空孔)32a″(33a″)に接する第一の多孔体32b(33b)に押し圧は加わらない。よって、気相部(空孔)32a″(33a″)に接する第一の多孔体32b(33b)内の空孔は潰されないため、構造変化はほとんど発生しない。ただし、カーボン粒子はポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)等のバインダで接着されている場合が多く、
図8(B)の包囲線IIで示すように、圧縮されるカーボン粒子に追従する。結果として、固相部32a´(33a´)下方のカーボン粒子の密度が増加し、気相部32a″(33a″)下方の空隙率が拡大する傾向となる。
【0038】
図8(A)及び
図8(B)に示す第1例では、第二の多孔体32a(33a)としての金網の断面形状が方形状である場合を示した。これに対して、
図9(A)及び
図9(B)に示す第2例では、第二の多孔体32a(33a)としての金網の断面形状が円形(真円及び楕円を含む)である場合を示す。この場合も、第二の多孔体32a(33a)の気相部(空孔)32a″(33a″)及び固相部32a´(33a´)の配置に応じて、第一の多孔体32b(33b)の構造が変化する。また、金網の断面形状が円形であるため、固相部32a´(33a´)下方と気相部32a″(33a″)下方との領域の切り分けがなだらかになる。ただし、固相部32a´(33a´)に合わせて第一の多孔体32b(33b)の空隙率が変化するので、同じ効果を発揮できる。
【0039】
上記の構成からなる膜電極接合体30、及びこの製造方法によれば、次の効果を得ることができる。粗領域に液水が凝縮することを防いで、ガス拡散性の低下を防止できる。固相部32a´(33a´)下方においては、カーボン粒子同士の接触が増加することにより電子の輸送経路が増加する。一方、気相部32a″(33a″)下方では粒子同士の接触が相対的に少なくなり、酸素の輸送経路を確保できる。また、固相部32a´(33a´)から気相部32a″(33a″)にキャピラリプレッシャによる液水の排水が助長される。これにより、電子の輸送性とともに酸素の輸送性の向上を図ることができ、これにより発電性能を向上させることができる。
【0040】
[第2の実施形態]
第2実施形態では、第一の多孔体32b(33b)の一部が第二の多孔体32a(33a)の気相部(空孔)32a″(33a″)に入り込むように両多孔体32a、32b(33a、33b)が互いに食い込んでいるセルプレート(燃料電池)A1、及び複数のセルプレートA1を積層した燃料電池スタック10について説明する。
【0041】
第2実施形態に係わる燃料電池スタック10の全体構成(
図1及び
図2)、セルプレートA1の構成(
図3及び
図4)、及び膜電極接合体30の構成(
図5)は、第1実施形態と同じであり図示及び説明を省略する。
【0042】
図10を参照して、空気極32の構造を説明する。ここでは、空気極32を例にとり説明するが、燃料極33も同様な構造を有する。空気極32は、第一の多孔体32bと、第二の多孔体32aとを有する。第一の多孔体32bの一部は、第二の多孔体32aの気相部(空孔)32a″に入り込むように第一の多孔体32b及び第二の多孔体32aは互いに食い込んでいる。
【0043】
このとき、第一の多孔体32bと第二の多孔体32aとの食い込み高さHは、第二の多孔体32aの気相部32a″の深さD以下となっている(H≦D)。
【0044】
第一の多孔体32bは、いわゆる多孔質体であって、例えばカーボン材料で形成してある。第一の多孔体32bは、具体的には、フィバー繊維のランダムな積層体をバインダで固め、PTFE等の撥水処理を施したもの、或いは、カーボンブラック等の凝集体をPTFE等のバインダで焼結したものである。
【0045】
他方、第二の多孔体32aは、第一の多孔体32bとは区別される金属多孔体である。第二の多孔体32aには、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム及びアルミニウム合金、クロム及びクロム合金、ニッケル及びニッケル合金、並びにマグネシウム及びマグネシウム合金からなる群のうち、いずれか1種類以上の金属を用いることができる。金属多孔体の具体的な形態として、金網、パンチングメタル、エッチングメタル、及びエキスパンドメタル等があり、この実施形態では
図5(A)或いは
図11に示す如く金網である。
【0046】
第2実施形態に係わる複数のセルプレート(燃料電池)A1が積層されて燃料電池スタック10が構成される。空気極32及び燃料極33に水素含有ガス又は酸素含有ガスを供給することで、セルプレート(燃料電池)A1は電気化学反応により電気エネルギを発生する。この際、第一の多孔体32b(33b)の一部が第二の多孔体32a(33a)の気相部(空孔)32a″(33a″)に入り込んでいるため、第二の多孔体32a(33a)の固相部32a´(33a´)下方では、
図11中の矢印ELで示す如く第一の多孔体32b(33b)との間における電子の輸送経路が確保されて、電子の輸送性が良好になる。
【0047】
また、第二の多孔体32a(33a)の気相部(空孔)32a″(33a″)の下方では、
図11の矢印Oxで示すように、ガス流路Gと第一の多孔体32b(33b)との間における酸素の輸送経路が確保されて、酸素の輸送性が良好になる。さらに、気相部(空孔)32a″(33a″)の下方では、
図11の矢印H
2Oで示すように、発電に伴って生成された液水が毛細管現象によりガス流路G側に排出され易くなり、生成水が第一の多孔体32b(33b)に広がるような事態を抑制することができる。
【0048】
このように、第2実施形態に係わるセルプレート(燃料電池)A1及び燃料電池スタック10によれば、空気極32及び燃料極33からの液水の排出が容易になり、これと同時に酸素の輸送性(ガス拡散性)が高められ、発電性能の向上を実現することができる。
【0049】
第二の多孔体32a(33a)が、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム及びアルミニウム合金、クロム及びクロム合金、ニッケル及びニッケル合金、並びにマグネシウム及びマグネシウム合金からなる群のうち、いずれか1種類以上の金属である。これにより、高い酸素輸送性を維持しつつ電子輸送性がより高められる。
【0050】
第一の多孔体32b(33b)と第二の多孔体32a(33a)との食い込み高さHは、第二の多孔体32a(33a)の気相部32a″(33a″)の深さD以下とした。これにより、第一の多孔体32b(33b)の一部が気相部32a″(33a″)からガス流路G側に突出することがない。これにより、導電性が良好である第二の多孔体32a(33a)とセパレータ40,41とが必ず接触することとなり、抵抗の少ない良好な導電経路を確保し得る。
【0051】
図12及び
図13を参照して、その他の実施形態を説明する。なお、先の実施形態と同一の構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
図12は、その他の実施形態に係わる空気極32の構造を模式的に示す説明図である。ここでは、空気極32を例にとり説明するが、燃料極33も同様な構造を有する。本実施形態では、第一の多孔体32b(33b)と第二の多孔体32a(33a)を互いに圧接させ、第一の多孔体32b(33b)の一部が第二の多孔体32a(33a)の気相部32a″(33a″)に入り込むように、第一の多孔体32b(33b)を積層方向(x方向)に塑性変形させている。これにより、第一の多孔体32b(33b)と第二の多孔体32a(33a)が互いに食い込んでいる。
【0053】
第二の多孔体32a(33a)の固相部32a´(33a´)下方では、第一の多孔体32b(33b)が圧縮されて第一の多孔体32b(33b)を形成するカーボン粒子同士の接触が増加する。よって、第一の多孔体32b(33b)との間における電子の輸送経路(
図12の矢印EL)がより多く確保されて、電子の輸送性がより良好になる。
【0054】
第二の多孔体32a(33a)の気相部32a″(33a″)では、ガス流路Gと第一の多孔体32b(33b)との間における酸素の輸送経路(
図12の矢印H
2O)が確保されて、酸素の輸送性が良好になる。さらに、気相部(空孔)32a″(33a″)の下方では、
図12の矢印H
2Oで示すように、発電に伴って生成された液水が毛細管現象によりガス流路G側に排出され易くなり、生成水が第一の多孔体32b(33b)に広がるような事態を抑制することができる。
【0055】
図13は、その他の実施形態に係わる空気極32の構造を模式的に示す説明図である。ここでは、空気極32を例にとり説明するが、燃料極33も同様な構造を有する。本実施形態では、第一の多孔体32b(33b)が、その層間に補強層32c(33c)を有している。補強層32c(33c)は、例えば、カーボン繊維などの補強繊維で形成される。第二の多孔体32a(33a)は、金属多孔体である金網であって、
図13に示すように円形の断面形状を有する。
【0056】
図12に示す実施形態と同様に、第一の多孔体32b(33b)と第二の多孔体32a(33a)とを圧接させて、第一の多孔体32b(33b)の一部が第二の多孔体32a(33a)の空孔に入り込むように、第一の多孔体32b(33b)を積層方向(x方向)に塑性変形させたものである。
【0057】
図13に示す実施形態では、第一の多孔体32b(33b)を塑性変形させる際に、補強層32c(33c)により第一の多孔体32b(33b)を破壊させることなく、第二の多孔体32a(33a)の空孔に第一の多孔体32b(33b)の一部を埋設することができる。
【0058】
以上、実施例に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、本発明の主旨の範囲において種々の変形が可能である。
【0059】
例えば、上述した実施形態においては、
第二の多孔体として金網を例として説明したが、それに限るものではなく、例えばパンチングメタル等を採用できることは勿論である。
【0060】
特願2012−087456号(出願日:2012年4月6日)、及び特願2012−085610号(出願日:2012年4月4日)の全内容は、ここに援用される。