(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ロッドの係合部は、前記キーシリンダがロック位置とアンロック位置との間の中立位置にあるとき、前記壁部の挿入孔に対し不整合となる位置にあることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドアロック装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0009】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車両用ドアロック装置を示す。このドアロック装置は、
図2に示すように、例えば、自動車などの車両のサイドドア1に取り付けられている。サイドドア1は、下部のドア本体3と上部の窓枠部5とを備えている。ドア本体3は、車外側に位置するアウタパネル7と、車内側に位置するインナパネル9とを備えている。インナパネル9の車内側の側面は、図示しないトリム部材で覆われている。
【0010】
図1に示すように、サイドドア1の内部における、インナパネル9のアウタパネル7に対向する内面9aには、ロック機構11が取り付けられている。ロック機構11は、ラッチ13を備えており、ラッチ13は、図示しない車体本体のドア開口部に設けられたストライカに係脱可能になっている。ロック機構11のロック動作が行われると、ラッチ13が上記ストライカに係合し、ドアロック装置がロック状態となる。ロック機構11のアンロック動作が行われると、ラッチ13がストライカから脱係合し、ドアロック装置がアンロック状態となる。以下、ロック動作およびアンロック動作を総称して、ロック、アンロック動作とよぶ。
【0011】
アウタパネル7には、ロック機構11のロック、アンロック動作を行うための操作機構となるキーシリンダ15が取り付けられている。キーシリンダ15は、アウタパネル7の外部に設けられたアウトサイドハンドル17に取り付けられる。アウトサイドハンドル17の外表面には、図示しないキーを挿入可能なキー挿入部19が露出している。
【0012】
キーシリンダ15は、円筒形状のキーハウジング21と、キーの回転操作によってキーハウジング21に対して回転する回転部23とを備えている。キーシリンダ15は、キーの回転操作によって回転部23を回転させることにより、少なくともロック位置またはアンロック位置に切り替わるように構成されている。また、キーシリンダ15は、少なくともロック位置にある状態でキー操作を開放するとばね力によって中立位置に戻るように構成されている。回転部23は、基端側(
図3(a)で右側)端部の一部がキーハウジング21内に回転可能に挿入された回転基部25と、回転基部25に連結部27を介して連結される回転ロッド29(ロッド)とを備えている。連結部27は、回転ロッド29の基端部に形成されている球状部分29aを回転基部25側の受け部25dに挿入した状態で、回転基部25を揺動支持ピン30により軸支している。揺動支持ピン30は、回転基部25及び球状部分25aを貫通している。これにより、回転ロッド29は、揺動支持ピン30を中心に回転基部25に対して揺動可能、かつ、回転ロッド29の軸周りに回転基部25と一体的に回転可能となっている。
【0013】
回転ロッド29は、先端側部材であるロッド先端部31と基端側部材であるロッド基端部33とを有している。ロッド先端部31とロッド基端部33とは、伸縮部35を介して互いに対し軸方向に相対移動可能に連結されている。ロッド基端部33は、連結部27と反対側の端部に、ロッド基端部33の軸部より大径で前方(
図3(a)で左側)に開放した筒部37を備えている。これに対し、ロッド先端部31は、その基端側に、筒部37の開放側(前方側)から挿入され、筒部37内において筒部37に対して軸方向に移動可能に支持される可動部39を備えている。なお、筒部37の形状は、特に限定されず、例えば、円筒や四角筒などの角筒であってもよい。また、可動部39の外形は、筒部37の内周面に摺接可能な形状であればよい。例えば、筒部37が円筒であれば、可動部39の外形は、例えば円柱状とすればよく、筒部37が四角筒などの角筒であれば、可動部39の外形は、例えば四角柱などの角柱状とすればよい。
【0014】
可動部39には、回転ロッド29の軸方向と直交する方向に延びるガイドピン41が挿入され固定されている。ガイドピン41は、可動部39を貫通して、可動部39の両側(
図3(a)で上下両側)から外側に突出している。筒部37には、回転ロッド29の軸方向と直交する方向において互いに対向する位置に、軸方向に長い長穴であるガイド溝37aが形成されている。各ガイド溝37aには、ガイドピン41の両端部がそれぞれ回転ロッド29の軸方向に移動可能に挿入されている。ガイドピン41は、ガイド溝37aに案内されてガイド溝37aの長手方向(
図3(a)で左右方向)に移動可能であり、これにより、ロッド先端部31が、ロッド基端部33に対して軸方向に移動可能になっている。
【0015】
筒部37の内部には、弾性部材としての圧縮コイルスプリング43が収容されている。圧縮コイルスプリング43は、筒部37の底面(基端側端壁の内側面)と可動部39の後端面(基端側端面)との間、すなわち、筒部37内のロッド先端部31とロッド基端部33との間に配置されている。筒部37の底面及び可動部39の後端面には、それぞれ凹部37b及び凹部39aが形成されており、この各凹部37b及び凹部39aに圧縮コイルスプリング43の両端部がそれぞれはめ込まれて、圧縮コイルスプリング43が位置決めされている。圧縮コイルスプリング43は、筒部37の底面及び可動部39の後端面を介し、ロッド先端部31とロッド基端部33とに対してこれらを互いに離間する方向に弾性力を付与している。
【0016】
ロッド先端部31の先端には、係合部31aが形成されている。係合部31aは、
図1に示すロック機構11のキーロータ45に係合可能である。そして、キーロータ45に係合部31aを係合させた状態で、キーの回転操作によってキーシリンダ15の回転部23を回転させることで、回転部23に連結された回転ロッド29を介してキーロータ45が駆動され、ロック機構11のロック、アンロック動作がなされる。
【0017】
係合部31aには、
図3(a)に示すように、ロッド先端部31の軸部31bの外周から軸方向に対して交差する方向に突出する突出部31a1が、周方向に等間隔に4つ設けられている。これら4つの突出部31a1により、係合部31aは、
図3(b)に示すように、回転ロッド29の先端側からみてプラス(+)形状となっている。
【0018】
係合部31aのプラス(+)形状に対応して、キーロータ45にも、
図4(b)に示すように、プラス(+)形状の被係合部である凹部45aが形成されている。プラス(+)形状の凸部である係合部31aを、プラス(+)形状の凹部45aに係合させた状態で、キーシリンダ15(回転ロッド29)を回転させることで、キーロータ45を回転させることができる。
【0019】
キーロータ45は、
図4(a)に示すように、ロック機構11のハウジング47に形成されたキーロータ収容凹部47aに回転可能に収容されている。ハウジング47のキーシリンダ15側(
図4で右側)の端部には、キーロータ収容凹部47aの開口47eが設けられている。このキーロータ収容凹部47aの開口47eを介して、回転ロッド29の先端の係合部31aが、キーロータ収容凹部47aに収容されたキーロータ45の凹部45aに挿入される。開口47eが設けられたハウジング47の端部周縁には、環状の鍔部47bが設けられている。この環状の鍔部47bは、開口47eが設けられたハウジング47の端部周縁からキーシリンダ15側に向かって拡径しつつ延びる先広がり形状に形成されている。
【0020】
また、ハウジング47のキーシリンダ15側の端部には、キーロータ収容凹部47aの開口47eを覆う壁部47cが形成されている。壁部47cには、
図5(a)に示すように、係合部31aのプラス(+)形状に整合するプラス(+)形状の挿入孔47dが設けられている。挿入孔47dは、中心部から放射状に延びる4つの長孔部47d1を備えており、各長孔部47d1は、係合部31aの4つの突出部31a1にそれぞれ対応する位置に設けられている。挿入孔47dは、係合部31aの軸方向投影と略同じ形状を有しているが、全体的に係合部31aの軸方向投影の輪郭よりも僅かに大きく形成されており、挿入孔47dに係合部31aを挿入することが可能になっている。なお、キーシリンダ15は、中立位置にあるときに、ロッド先端部31における係合部31aの少なくとも一部が軸方向投影において壁部47cと重なるように構成されている。
【0021】
壁部47cのうち、周方向に隣接する2つの長孔部47d1の間の領域(4箇所)は、開口47eの径方向内側に突出した突出片47fとなる。この4つの突出片47fの先端部は、
図6(a)に示すように、回転ロッド29の係合部31aをキーロータ45の凹部45aに係合させた状態において、係合部31aと伸縮部35との間における回転ロッド29の外周面に近接する。このとき、各突出片47fの径方向内側端部は、係合部31aの突出部31a1の径方向外側端部よりも径方向において内側に位置している。
【0022】
次に、ロック機構11及びキーシリンダ15を備えるドアロック装置を、サイドドア1に取り付ける際の取り付け作業について説明する。ここで、ロック機構11は、
図1に示すように、インナパネル9の内面9aにボルト・ナットなどの締結具を用いて締結固定されているとする。また、キーシリンダ15は、アウタパネル7に取り付ける前の状態であり、キーハウジング21が取付具49(
図1参照)を介してアウトサイドハンドル17(
図1参照)に固定されているとする。この取り付け前の状態のキーシリンダ15では、
図3(a)に示すように、回転ロッド29のロッド先端部31とロッド基端部33とが圧縮コイルスプリング43によって互いに最も離間した位置で保持されている。このとき、伸縮部35は軸方向に最も伸長した状態であり、回転ロッド29も最も長い状態となっている。
【0023】
この状態で、まず、キーシリンダ15を、取付具49とともにアウタパネル7に設けられた挿入孔7bに挿入し、アウトサイドハンドル17をアウタパネル7の外表面に当接させる。そして、アウトサイドハンドル17をボルト・ナットなどの締結具を用いてアウタパネル7に締結固定する。
【0024】
キーシリンダ15をアウタパネル7の挿入孔7bに挿入すると、
図4(a)及び(b)に示すように、ロッド先端部31における係合部31aの突出部31a1が、ロック機構11のハウジング47における壁部47cに当接する。このとき、係合部31aの4つの突出部31a1は、
図4(b)に示すように、壁部47cの長孔部47d1に対して、回転ロッド29の軸周りに45度ずれた位置に位置する。すなわち各突出部31a1は、周方向に隣接する長孔部47d1相互間のほぼ中間位置に位置している。
【0025】
さらにキーシリンダ15を挿入孔7bに押し込むと、係合部31aが壁部47c(突出片47f)に押され、
図4(a)に示すように、圧縮コイルスプリング43が圧縮されて、ロッド先端部31がロッド基端部33に近接する方向に移動する。これにより、回転ロッド29の全長は、
図3(a)の状態における回転ロッド29の長さよりも短くなる。なお、このときにおいてもキーシリンダ15は、ロック位置とアンロック位置との間の中立位置(ロック位置ともアンロック位置とも異なる位置)にある。
【0026】
この状態で、キー操作を行い、キーシリンダ15(回転部23)を例えばロック位置まで45度回転させる。すると、係合部31aが挿入孔47dに整合し(係合部31aの4つの突出部31a1の位置が挿入孔47dの4つの長孔部47d1の位置に揃い)、その結果、ロッド先端部31は、圧縮コイルスプリング43に押されてロッド基端部33から離間する方向に移動する。これにより、回転ロッド29は伸長し、その全長は、例えば、
図3(a)の状態における回転ロッド29の長さと略同じ長さにまで戻る。
【0027】
このとき、壁部47cのプラス(+)形状の挿入孔47d(
図5(a)参照)と、キーロータ45のプラス(+)形状の凹部45a(
図5(b)参照)とは、
図5(c)のように互いに整合した位置にある。したがって、回転ロッド29が伸長すると、ロッド先端部31の係合部31aは、壁部47cの挿入孔47dを通過し、
図6に示すように、キーロータ45内に挿入された状態となる。これにより、プラス(+)形状の係合部31aが、キーロータ45のプラス(+)形状の凹部45aに係合した状態となる。
【0028】
図6のキーシリンダ15は、中立位置に対して45度回転した例えばロック位置にあるため、キー操作を開放するとばね力によって中立位置に戻る。これにより、
図5(d)及び
図7(a)(b)に示すように、ロッド先端部31の4つの突出部31a1の位置は、
図4(b)に示した状態と同様、壁部47cの挿入孔47dの4つの長孔部47d1に対して周方向にずれた位置となる。すなわち、各突出部31a1の周方向位置は、壁部47cの各突出片47fと重なる位置となる。
【0029】
図1は、このようにして車両用ドアロック装置をサイドドア1に取り付けた状態を示している。本実施形態では、キーシリンダ15の回転ロッド29がその軸方向に伸縮可能な伸縮部35を備えており、回転ロッド29の軸方向の長さAが可変になっている。このため、ロック機構11のインナパネル9に対する取り付け面となる内面9aと、キーシリンダ15のアウタパネル7への取り付け面となる内面7aとの間隔、換言すれば、サイドドア1の厚さ、が車種により異なっているとしても、伸縮部35の伸縮(圧縮コイルスプリング43の伸縮)によって対応できる(サイドドア1の厚さの差を吸収できる)。
【0030】
また、本実施形態では、伸縮部35が伸縮することによって、回転ロッド29の軸方向の長さAがサイドドア1の厚さに対応して変化する。このため、サイドドア1の厚さが車種ごとに異なっていても、一つのドアロック装置を各車種に共通で使用することができる。また、サイドドア1の厚さが異なる車種ごとに長さの異なる回転ロッド29を用意する必要がなく、部品種類数を削減してコスト低下を図ることができる。
【0031】
また、本実施形態では、回転ロッド29の係合部31aは、軸方向と交差する方向に突出した突出部31a1を少なくとも一つ備え、ロック機構11は、被係合部となる凹部45aを回転可能に収容するハウジング47を備えている。そして、ハウジング47は、回転ロッド29が挿入される側(キーシリンダ15側の開口47eが設けられた部分)に壁部47cを備えており、壁部47cは、突出部31a1を含む回転ロッド29の係合部31aの形状に整合する挿入孔47dを備えている。
【0032】
このため、例えば、
図1、
図7の状態にある本ドアロック装置を不正に解錠するべく、ドア外部から伸縮部35におけるロッド先端部31とロッド基端部33との連結を外し、回転ロッド29の係合部31aをキーロータ45の凹部45aから引き離そうとしても、手前に(凹部45aの外側に)存在する壁部47cが邪魔になる。これにより、キーロータ45の不正な回転操作を抑制することができる。
【0033】
さらに、本実施形態では、キーシリンダ15がロック位置とアンロック位置との間の中立位置にあるときに、キーシリンダ15に連結された回転ロッド29の係合部31aが、壁部47cの挿入孔47dに対して整合しないような位置(不整合となる位置)に位置する。このため、
図6に示すように回転ロッド29の係合部31aが挿入孔47dに挿入されたあとに、ばね力の作用によりキーシリンダ15が
図7に示すような中立位置に戻ることで、係合部31aの突出部31a1が壁部47cに対向する状態となり、壁部47cが回転ロッド29の抜け止めとなる。これにより、車外からの不正な解錠操作による回転ロッド29の引き抜きを防止して、キーロータ45の不正な回転操作を抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態では、回転ロッド29は、互いに軸方向に相対移動可能に連結されたロッド先端部31とロッド基端部33とを有している。そして、ロッド先端部31とロッド基端部33との間には、これらを互いに離間させる方向に力を付与する圧縮コイルスプリング43が配置され、伸縮部35を構成している。この場合、回転ロッド29の長さが、圧縮コイルスプリング43の伸縮により容易に変化するので、厚さの異なるサイドドア1に対しても1種類の回転ロッド29を共通で使用することができる。
【0035】
さらに、本実施形態では、ロッド基端部33は、ロッド先端部31が軸方向に移動可能に挿入される筒部37を備え、この筒部37内にてロッド先端部31とロッド基端部33との間に圧縮コイルスプリング43が配置されている。このように、圧縮コイルスプリング43が筒部37の内部に収容されていることで、ドア外部から伸縮部35の圧縮コイルスプリング43への不正なアクセスを抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態では、ロッド先端部31は、軸方向と直交する方向に延びるガイドピン41を備え、このガイドピン41が、ロッド基端部33に設けられたガイド溝37aに挿入されてガイド溝37a内を移動可能である。このため、ロッド先端部31とロッド基端部33とがガイドピン41によってより確実にかつ強固に連結され、外部からの不正なアクセスによる連結部分の解除を有効に防ぐことができる。
【0037】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。ただし、第1の実施形態と同一構造には、同一符号を付けて説明を省略する。
図8は、第2の実施形態を示す、
図3(a)に対応する側面図である。なお、
図8に示された回転ロッド29は、
図3(a)の回転ロッド29をその軸周りに90度回転したものに対応している。
【0038】
第2の実施形態は、キーシリンダ15が、キーの回転操作によってキーハウジング21に対して回転する回転部23を備えている点、この回転部23が、回転基部25と、該回転基部25に連結部27を介して連結される回転ロッド29とを備えている点、回転ロッド29が、先端側部材であるロッド先端部31と基端側部材であるロッド基端部33とこれらを互いに軸方向に相対移動可能に連結する伸縮部35とを有している点において、第1の実施形態と同様である。
【0039】
本実施形態では、ロッド基端部33が、連結部27を介して回転基部25に連結される筒部33aと、該筒部33aの回転基部25と反対側(先端側、
図8で左側)に位置する端板部33bとを備えている。端板部33bの中心には、端板部33bを軸方向に貫通する貫通孔33cが設けられている。筒部33aの端板部33bと反対側(基端側、
図8で右側)の端部は、回転基部25側に向けて開放されている。貫通孔33cには、ロッド先端部31の軸部31bが挿入されている。挿入された軸部31bの回転基部25側の端部には、可動部39が形成されている。可動部39は、軸部31bよりも軸方向と直交する方向の外側に膨出した(軸方向と直交する方向の寸法が拡大した)部分を有している。可動部39は、筒部33aの内部を軸方向に移動可能であり、したがってロッド先端部31は、ロッド基端部33に対して軸方向に移動可能となっている。
【0040】
また、本実施形態では、回転基部25の先端に、連結部27を構成する球状部分25aが設けられている。球状部分25aの先端面には、凹部25bが形成されており、この凹部25bと可動部39の基端側端部に形成された凹部39aとの間に、弾性部材としての圧縮コイルスプリング43が介装されている。このようにして、圧縮コイルスプリング43は、筒部33a内のロッド先端部31とロッド基端部33との間に配置されている。また、球状部分25aには、軸方向と直交する方向に貫通するピン挿入孔25cが形成されている。筒部33aには、筒部33aの軸方向と直交する方向において互いに対向する位置に、ピン挿入孔25cに対応するピン挿入孔33d,33eが形成されている。
【0041】
ピン挿入孔25c,33d,33eには、揺動支持ピン30が挿入されており、この揺動支持ピン30によって、ロッド基端部33と回転基部25とが互いに連結されている。すなわち、筒部33aが、揺動支持ピン30を介して回転基部25の球状部分25aに連結されている。これにより、ロッド基端部33は、回転基部25に対して、揺動支持ピン30周りに(
図8の紙面と直交する方向に)揺動可能となっている。
【0042】
ロッド基端部33の筒部33aは、四角筒、六角筒などの多角形の角筒とするとよい。また、筒部33aを円筒とした場合は、筒部33aの内周面と可動部39の外周面とに、互いの相対回転を規制する、例えばスプラインのような凹凸形状を設けてもよい。このようにすることで、キーの回転操作によって回転基部25からロッド基端部33に入力される回転駆動力を、確実にロッド先端部31に伝達することが可能になる。このため、回転基部25及びロッド基端部33と一緒に、ロッド先端部31を回転させることができる。
【0043】
また、本実施形態のロッド先端部31の係合部31aも、第1の実施形態と同様、軸部31bの外周から軸方向と交差する方向に突出した突出部31a1を有している。従って、本実施形態に係るドアロック装置をサイドドア1に取り付ける際の取り付け作業の内容も、第1の実施形態のそれと同様である。
【0044】
すなわち、
図4(a)のように、ロッド先端部31の係合部31aを壁部47cに当接させて押し付けることで、圧縮コイルスプリング43を圧縮させつつ、ロッド先端部31をロッド基端部33に近接する方向に移動させる。そして、この状態でキーを回転操作し、回転部23を45度回転させる。これにより、壁部47cに設けられた挿入孔47dにロッド先端部31の係合部31aが整合して、係合部31aが圧縮コイルスプリング43の力を受けて前進し、
図6(a)のようにキーロータ45内に挿入された状態となる。その後、キー操作を開放すると、キーシリンダ15は中立位置に戻る。中立位置では、
図5(d)及び
図7(a)(b)に示すように、ロッド先端部31の4つの突出部31a1の位置は、
図4(b)に示した状態と同様、壁部47cの挿入孔47dの4つの長孔部47d1に対して周方向にずれた位置となる。
【0045】
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、キーシリンダ15の回転ロッド29がその軸方向に伸縮可能な伸縮部35を備えており、回転ロッド29の軸方向の長さAが可変になっているため、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0046】
また、本実施形態では、第1の実施形態と同様、回転ロッド29の係合部31aは、突出部31a1を備え、ロック機構11のハウジング47は、壁部47cを備えている。そして、壁部47cには、係合部31aの形状に整合する挿入孔47dが設けられている。従って、上記第1の実施形態と同様に、外部からのキーロータ45の不正な回転操作を抑制することができる。
【0047】
さらに、本実施形態では、第1の実施形態で使用していたガイドピン41を廃止することができる。このため、第1の実施形態に比較して、部品点数を削減して構造を簡略化でき、組み付け工数も削減できて、コスト低下を図ることができる。
【0048】
また、本実施形態では、ロッド基端部33の筒部33aは、軸方向と直交する方向に延びる揺動支持ピン30を介して揺動可能に揺動支持部となる回転基部25連結され、回転基部25とロッド先端部31との間に圧縮コイルスプリング43が配置されている。このため、回転基部25が圧縮コイルスプリング43により押されることで、揺動支持ピン30周りのガタを抑えることができ、キーシリンダ15としての操作性及び信頼性を高めることができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は本発明の理解を容易にするために記載された単なる例示に過ぎず、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲は、上記実施形態で開示した具体的な技術事項に限らず、そこから容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含むものである。
【0050】
例えば、上記した各実施形態では、
図5(e)に示したように、回転ロッド29の係合部31aの形状をプラス(+)形状として説明した。すなわち、回転ロッド29の係合部31aに、軸部31bの外周から軸方向と交差する方向に突出した突出部31a1を軸部31bの周方向に沿って4つ設けていた。しかし、突出部31a1の個数は、1〜3個でもよく、5個以上であってもよい。例えば、
図9(e)のように、突出部31a1の個数を2個とし、正面視の形状をマイナス(−)形状としてもよく、また、
図10(e)のように、突出部31a1の個数を3個とし、正面視の形状をアルファベットのY形状としてもよい。マイナス(−)形状とした場合には、
図9(a)に示す挿入孔47d、及び
図9(b)に示すキーロータ45の凹部45aの形状もマイナス(−)形状(中立位置における係合部31aのマイナス(−)形状(
図9(e)参照)を回転ロッド29の軸周りに90度回転させたものに相当)とする。Y形状とした場合には、
図10(a)に示す挿入孔47d、及び
図10(b)に示すキーロータ45の凹部45aの形状もY形状(中立位置における係合部31aのY形状(
図10(e)参照)を回転ロッド29の軸周りに60度回転させたものに相当)とする。
【0051】
なお、
図9の(a)〜(e)は、
図5の(a)〜(e)にそれぞれ対応し、
図10の(a)〜(e)も、
図5(a)〜(e)にそれぞれ対応している。キーシリンダ15をサイドドア1へ取り付ける際に回転ロッド29を回転させる角度は、係合部31aの形状をマイナス(−)形状とした場合には90度、Y形状とした場合には30度に設定することができる。
【0052】
また、上記の実施形態では、弾性部材として圧縮コイルスプリング43を用いたが、弾性部材はこれに限らない。弾性部材は、ロッド先端部31とロッド基端部33とに介在して、これらに対して回転ロッド29が伸長する方向に弾性力を付与するものであればよく、例えば、板バネ、ゴムなどであってもよい。回転ロッド29が伸長するに従って、全長が減少するように設置された引張りコイルスプリングとしてもよい。
【0053】
上記第2の実施形態では、ロッド基端部33の筒部33aと連結される連結部27として、回転基部25の先端に球状部分25aを設けていたが、回転基部25の先端の形状は、これに限らない。当該形状は、回転基部25に対する、ロッド基端部33の揺動支持ピン30周りの揺動を許容する形状であればよく、例えば、揺動支持ピン30と同軸の円柱状としてもよい。この場合、筒部33aは、四角筒などにすればよい。
【0054】
本出願は、2013年6月4日に出願された日本国特許願第2013−117487号に基づく優先権を主張しており、これらの出願の全内容が参照により本明細書に組み込まれる。