(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保持部材は前記インナーコラムを内嵌した円環状をしており、前記保持部材の上部と前記インナーコラムの間には樹脂が介在していることを特徴とする請求項1に記載のステアリング装置。
前記樹脂は、その弾性を利用した固定部を有し、成形された後に該固定部によって前記保持部材に固定されたものであることを特徴とする請求項3に記載のステアリング装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
本願の第1実施形態に係るステアリング装置1を
図1ないし
図7を参照しつつ説明する。
図1は、本願の第1実施形態に係るステアリング装置1を示す斜視図である。
【0023】
ステアリング装置1は、車両後方側、即ち、
図1に向かって左手前側に取り付けられる不図示のステアリングホイールの回転を車両前方側、即ち、
図1に向かって右奥側へ伝達するステアリングシャフト2と、ステアリングシャフト2の車両後方側部分を回転可能に支持するインナーコラム3と、インナーコラム3の車両前方側部分を内嵌し、ステアリングシャフト2の車両前方側部分を回転可能に支持するアウターコラム5と、アウターコラム5の車両後方側部分の周囲に配置され、ステアリング装置1を車両に固定する車体側ブラケット6と、不図示のステアリングホイールのチルト方向及びテレスコピック方向の位置の固定とその解除を操作するための操作レバー7と、インナーコラムの固定を補強する補強ユニット8と、を有している。
【0024】
ステアリングシャフト2は、車両後方側に配置され、ステアリングホイールが取り付けられるアッパーシャフト2aと、車両前方側でアッパーシャフト2aとスプライン嵌合されたロアーシャフト2bとから構成されている。なお、本願においては、ステアリングシャフト2の延在方向を「軸方向」と呼ぶものとする。
【0025】
アウターコラム5の車両前方側の上部には、チルト回動の中心となるチルトピボット9が設けられている。運転者が操作レバー7で固定を解除する操作を行うと、ステアリング装置1は、チルトピボット9を中心として回動することが可能となる。
【0026】
車体側ブラケット6は、アウターコラム5の車両後方側の上方に配置され、車体に離脱不能に固定される上板部6aと、上板部6aからアウターコラム5の車幅方向の両側へそれぞれ延びる側板部6b、6cとから構成されている。側板部6b、6cには、チルトピボット9を中心とする円弧状の長孔14a、14bが形成されており、長孔14a、14bには締付ボルト10が通されている。なお、
図1において長孔14aは不図示である。
【0027】
図2は、本願の第1実施形態に係るステアリング装置1の側面図である。ステアリング装置1を車両後方側から見て左側の側面を示している。
【0028】
操作レバー7は、締付ボルト10に固定されており、操作レバー7を操作することで、締付ボルト10が側板部6b、6cを互いに近づけるように締付け、チルト方向の移動とテレスコピック方向の移動を制限する。
【0029】
図3は、本願の第1実施形態に係るステアリング装置1の下面図である。
【0030】
アウターコラム5の車両後方側の下部には、軸方向に伸び、車両前方側端部で周方向に広がったスリットを構成するスリット部5aが形成されている。スリット部5aにより、アウターコラム5の車両後方側部分は縮径するように弾性変形し、締付ボルト10の締付に応じてインナーコラム3を締付けることができる。
【0031】
図4は、本願の第1実施形態に係るステアリング装置1の中心軸線に沿って垂直な切断面を示す断面図である。車幅方向右側の部分を左側から見た図である。
【0032】
アッパーシャフト2aは円筒状に形成され、ロアーシャフト2bは円柱状に形成されており、アッパーシャフト2aの車両前方側部分にロアーシャフト2bの車両後方側部分が内嵌され、当該部分でスプライン結合されている。これにより、ステアリングシャフト2は、テレスコピック調整時、及び、2次衝突による衝撃緩和時に長さを変化させることができる。
【0033】
インナーコラム3の車両後方側端部近傍には、Cリングによって固定された後方側軸受11が内嵌している。アッパーシャフト2aは、後方側軸受11によって回転可能に支持されている。アッパーシャフト2aは、インナーコラム3に対して軸方向に相対移動できないように固定されており、インナーコラム3とともに軸方向に移動する。
【0034】
アウターコラム5の車両前方側端部近傍には、車両前方側から順にCリング、ワッシャー、及びOリングを配置することによりガタ詰めすると共に、スプライン結合の芯ズレを調芯する前方側軸受12が内嵌している。ロアーシャフト2bは、前方側軸受12によって回転可能に支持されている。
【0035】
アウターコラム5のスリット部5aの下部には、下方へ突出した突出部5b、5cが形成されている。締付ボルト10は、スリット部5aと突出部5b、5cとの境界部に車幅方向に貫通して形成された孔部に通されている。なお、
図4において突出部5bは不図示である。
【0036】
ロアーシャフト2bの軸方向の略中央には、樹脂製のストッパー13が外嵌している。ストッパー13は、テレスコピック調整時にアッパーシャフト2aがそれ以上車両前方側へ移動しないように制限するものである。ストッパー13は、2次衝突により一定以上の衝撃を受けると外れるように構成されている。なお、本発明においては、ストッパー13を設けない構成とすることもできる。
【0037】
アウターコラム5の上側には、径方向に貫通し、軸方向に延びる長孔を構成する長孔部5dが形成されている。長孔部5dの内側には、インナーコラム3の車両前方側上部にボルト固定された樹脂製のスペーサー15が配置されている。スペーサー15は、長孔部5dの側面に係合してインナーコラム3の回転を抑制し、また、長孔部5dの車両後方側部分に係合してテレスコピック調整時の最大引き出し量を規定し、さらに、2次衝突時にインナーコラム3の移動方向を誘導するガイドの役割を果たす。ストッパー13とスペーサー15とを樹脂により形成することで、テレスコピック調整時のノイズを抑制することができる。
【0038】
図5は、本願の第1実施形態に係るステアリング装置1の
図2ないし
図4に示す5−5断面を示す断面図である。
【0039】
スリット部5a、突出部5bを含め、締付ボルト10近傍に配置されたアウターコラム5の部分は、締付ボルト10の締め付けにより弾性変形してインナーコラム3を締め付け、包持するクランプ部を構成している。
【0040】
アウターコラム5の車幅方向の両側側面は、チルト位置調整の際に、車体側ブラケット6の側板部6b、6cの互いに対向する面に摺接する。
【0041】
締付ボルト10の車両左側の軸部には、ナット16が螺合されている。ナット16からアウターコラム5の突出部5bまでの間には、ナット16側から順に、スラストベアリング17と、操作レバー7と、操作レバー7に相対回転不能に固定された可動カム18と、可動カム18に対応し、側板部6bの長孔14aに回転不能に嵌合された固定カム19と、挟持部となる側板部6bと、後述する補強ユニット8の一部と、が介在している。補強ユニット8は、インナーコラム3の固定を補強するものである。
【0042】
また、アウターコラム5の突出部5bから締付ボルト10の頭部までの間には、突出部5b側から順に、補強ユニット8の一部と、側板部6bとともに挟持部となる側板部6cと、が介在している。
【0043】
運転者が締付ボルト10を中心として操作レバー7を上下に操作すると、可動カム18と固定カム19とが反発し、又は、噛み合うことで、ナット16と締付ボルト10の頭部との間に介在した部材の締め付けと解除を行う。
【0044】
図6は、本願の第1実施形態に係るステアリング装置1の
図2ないし
図4に示す6−6断面を示す断面図である。
【0045】
インナーコラム3の軸方向の略中間部には、インナーコラム3を保持する保持部材として金属製の円環部材20が隙間嵌めにより外嵌している。円環部材20の車幅方向の左右両側には、径方向に貫通した一対の貫通孔20a、20bが形成されており、貫通孔20a、20bに対応するインナーコラム3の部分にも、径方向に貫通した一対の貫通孔3a、3bが設けられている。
【0046】
円環部材20とインナーコラム3に設けられた貫通孔20a、20b、3a、3bには、せん断ピン21a、21bが挿入されている。せん断ピン21a、21bは、円盤状の頭部と、頭部の中心から一方へ垂直に延びる円柱状の軸部とから構成されており、貫通孔20a、20b、3a、3bには軸部が挿入されている。
【0047】
円環部材20の下部は、側部、上部よりも肉厚に形成されており、補強ユニット8の他の部材が取り付けられるように構成されている。すなわち、当該肉厚の部分には、下方から上方に向かってネジ孔20c、20dが形成されており、ネジ22a、22bが螺合することで、後述する内側摩擦板23の取付部23aを円環部材20に取り付けられるように構成されている。
【0048】
また、円環部材20のうち肉厚の下部とそれよりも上の部分との境界部分には、車幅方向の両外側から内側に凹んだ凹部20e、20fが形成されている。凹部20e、20fには、後述する内側摩擦板23の立上部23b、23cの内側に折れ曲がった上端部が引っ掛けられる。
【0049】
さらに、円環部材20の下端の車幅方向両外側面には、車幅方向の左右両外側にそれぞれ突出し、軸方向に長い長円状をした凸部20g、20hが形成されている。凸部20g、20hには、内側摩擦板23の立上部23b、23cの車両後方側部分にそれぞれ形成された開放スロット23d、23eが外嵌し、さらに、その車幅方向外側から後述する外側摩擦板24a、24bに形成された長孔部25a、25bが外嵌する。
【0050】
図7は、本願の第1実施形態に係るステアリング装置1のテレスコピック方向の移動を制限する補強ユニット8を示す分解斜視図である。
図7においては、左手前側が車両後方側、右奥側が車両前方側となるように示されている。
【0051】
補強ユニット8は、円環部材20、内側摩擦板23、一対の外側摩擦板24a、24b、及び中間摩擦板30とから構成されている。
【0052】
内側摩擦板23は、金属の板材からなり、円環部材20の下部に取り付けられる取付部23aと、その車幅方向両側で軸方向に延びる立上部23b、23cと、立上部23b、23cに形成され、軸方向に長い長孔を構成する一対の長孔部23f、23gとを有している。立上部23b、23cは、車両後方側の上端部が他の部分よりも上方へ突出し、内側に折れ曲がっている。また、立ち上がり部23b、23c下部で内側に折れ曲がった部分と、取付部23aの車両前方側から下方へ折れ曲がり、さらに車両前方へ折れ曲がった部分とが一体に形成されており、
図3に示すように下面部23hを構成している。
【0053】
外側摩擦板24a、24bは、金属の板材からなり、略長方形状をしている。外側摩擦板24a、24bの車両後方側部分には、凸部20g、20hにそれぞれ対応する長孔部25a、25bが形成されており、長孔部25a、25bよりも車両前方側には、内側摩擦板23の長孔部23f、23gにそれぞれ対応して、軸方向に長い長孔部26a、26bを構成している。
【0054】
中間摩擦板30は、金属の板材からなり、上方へ延び、それぞれ、内側摩擦板23の立上部23bと23cと、外側摩擦板24a、24bとの間に介在する摩擦部30a、30bと、摩擦部30a、30bの下部を互いにつなぐ結合部30cとを有している。摩擦部30a、30bは、締付ボルト10を通す丸孔30d、30eがそれぞれ形成されている。
【0055】
以上の部品からなる補強ユニット8は、上述のように、円環部材20に内側摩擦板23と外側摩擦板24a、24bが組みつけられる。そして、円環部材20をインナーコラム3に外嵌させ、外側摩擦板24aの長孔部26aと、中間摩擦板30の摩擦部30aと、内側摩擦板23の長孔部23fとが、車体側ブラケット6の側板部6bとアウターコラム5の突出部5bとの間に介在し、また、内側摩擦板23の長孔部23gと、中間摩擦板30の摩擦部30bと、外側摩擦板24bの長孔部26bとが、車体側ブラケット6の側板部6cとアウターコラム5の突出部5cとの間に介在するように、組みつけられる。
【0056】
外側摩擦板24aの長孔部26a、中間摩擦板30の丸孔30d、30e、内側摩擦板23の長孔部23f、23g、外側摩擦板24bの長孔部26bには、締付ボルト10が通される。
【0057】
運転者が操作レバー7を操作して締付ボルト10の締付を解除すると、締付ボルト10が、車体側ブラケット6の側板部6b、6cに形成された長孔内を略上下方向に移動することができるようになり、チルト調整が可能となる。また、それと同時に、内側摩擦板23及び外側摩擦板24a、24bの固定と、アウターコラム5の上記クランプ部におけるインナーコラム3の締付も解除される。これにより運転者は、一度の操作レバー7の操作によってチルト調整とテレスコピック調整を行うことができるようになる。
【0058】
一方、運転者が操作レバー7を操作して締付ボルト10による締付を行う操作をすると、締付ボルト10は上下の移動が制限され、チルト調整ができなくなる。また、運転者が操作レバー7を操作して締付ボルト10による締付を行う操作をすると、インナーコラム3は、アウターコラム5の上記クランプ部における締付に加えて、内側摩擦板23及び外側摩擦板24a、24bによって保持された円環部材20による固定が行われるため、強固に固定される。
【0059】
車両の衝突などにより、運転者がステアリングホイールに衝突する2次衝突が生じた場合、インナーコラム3に軸方向で車両前方側へ向かう衝撃力が発生する。該衝撃力によって、せん断ピン21a、21bは、せん断し、円環部材20によるインナーコラム3の固定が解除される。これにより、インナーコラム3はアウターコラム5のクランプ部との摩擦のみで軸方向で車両前方側へ移動することができるようになる。また、本第1実施形態においては、円環部材20によるインナーコラム3の固定によって、インナーコラム3をアウターコラム5のクランプ部によって強固に締付ける必要を無くし、アウターコラム5の上記クランプ部による締付を軽いものとしている。これにより、インナーコラム3は、2次衝突時にインナーコラム3とアウターコラム5のクランプ部において生じる摩擦力を小さいものとし、離脱荷重を小さくしている。
【0060】
以上の構成からなる本第1実施形態に係るステアリング装置1によれば、体重の軽い搭乗者が2次衝突した場合であっても、安定した低い離脱荷重によって衝撃を吸収することができる。特に、せん断ピン21a、21bが、内側摩擦板23、外側摩擦板24a、24bと円環部材20との結合部の近傍に配置されていることで、2次衝突の衝撃によって円環部材20に強いモーメント荷重がかかるのを防ぎ、衝撃力が直接的にせん断ピン21a、21bまで伝わるため、安定して低い離脱荷重を得ることができる。
【0061】
本第1実施形態に係るステアリング装置1によれば、2次衝突の衝撃を吸収した後でも、コラムが脱落しないため、操舵が可能となる。
【0062】
また、本第1実施形態に係るステアリング装置1によれば、補強ユニット8がインナーコラム3を強固に固定することで、コラムの振動剛性を向上させ、操舵安定性を確保することができる。
【0063】
また、本第1実施形態に係るステアリング装置1によれば、内側摩擦板23と外側摩擦板24a、24bとを円環部材20によって一体に構成しているため、摩擦による固定力が車幅方向の左右において異なるのを防ぎ、2次衝突時にコラムがこじれて離脱荷重が高まるのを防ぐことができる。
【0064】
また、本第1実施形態に係るステアリング装置1によれば、2次衝突によってコラムを上方へ移動させる荷重がかかった場合であっても、離脱荷重がばらつくことなく、安定した離脱荷重を得ることができる。
【0065】
なお、本願発明の説明のため、具体的な実施形態を示して説明したが、本願発明は上記第1実施形態に限定されず、種々の変更、改良が可能である。
【0066】
例えば、上述のように、せん断ピン21a、21bは、内側摩擦板23、外側摩擦板24a、24bと円環部材20との結合部の近傍に設けるのが好ましいが、上記第1実施形態のように車幅方向の左右に限定されるものではなく、円環部材20の下部に設けても良いし、左右と下部の両方に設けても良い。また、せん断ピンの数も2つに限られず、1つ又は3つ以上とすることもできる。更に、せん断ピン21a、21bは、樹脂で成形する事で軽くし、組立てに支障のない程度の大きさにする事が可能となると共に、抜け止めの成形も行う事ができる。金属製のピンやアルミニウム製のピンを用いても良い。
【0067】
また、摩擦板の枚数も、中間摩擦板を挟んで片側2枚ずつ設けるものに限られず、中間摩擦板を設けず片側1枚、又は、中間摩擦板を2枚以上設け片側3枚以上とすることもできる。また、摩擦板の配置は、いずれか一方に設けることも可能であり、また、車体側ブラケット6の側板部6b、6cの外側に配置することもできる。
【0068】
(第2実施形態)
次に、本願の第2実施形態について説明する。本願の第2実施形態は、上記第1実施形態とは、円環部材20の上部に樹脂29を充填する点においてのみ異なり、他の構成は上記第1実施形態と同様であることから、当該樹脂29以外の構成については第1実施形態と同じ参照符号を用い、重複する説明を省略して、当該樹脂29について説明する。
【0069】
図8は本願の第2実施形態に係るステアリング装置1を車両後方側から軸線方向に見た側面図である。
【0070】
円環部材20の上部には、円環部材20の内周面において径方向外側に凹み、インナーコラム3との間に軸線方向に貫通した隙間を構成する一対のエアベント部20i、20jが、離隔して形成されている。
【0071】
図9A、
図9Bは本願の第2実施形態に係るステアリング装置1の円環部材20を示す側面図である。
図9Aは車両後方側から軸線方向に見た側面を示しており、
図9Bは車幅方向に見た側面を示している。また、
図10A、
図10Bは本願の第2実施形態に係るステアリング装置の樹脂溜り部を示す拡大断面図である。
図10Aは樹脂29を充填する前の状態を示し、
図10Bは樹脂29を充填した後の状態を示している。
【0072】
円環部材20は、上部中央に径方向に貫通する注入孔20kが形成されている。
【0073】
また、円環部材20は、エアベント部20iからエアベント部20jまでの間に軸線方向の中央において拡径し、円環部材20とインナーコラム3との間に円弧状の隙間を構成する樹脂溜り部20mを形成している。
【0074】
注入孔20kから射出圧を加えて樹脂29を注入し、樹脂溜り部20mとインナーコラム3との間に樹脂29を充填し、射出成形する。エアベント20i、20jから樹脂29が溢れ出るまで樹脂29を注入することで、樹脂溜り部20mとインナーコラム3の間の空隙内全体に確実に樹脂29を注入することができる。
【0075】
上述のように樹脂29を射出成形することで、樹脂29の圧力でインナーコラム3を円環部材20の下部内周面に押し付け、ガタ詰めをすることができる。これにより、インナーコラム3に貫通孔を追加することなく、ガタ詰めをすることができ、インナーコラム3の高い真円度を維持し、余分な摩擦荷重がかかるのを防ぐことができる。
【0076】
また、円環部材20とインナーコラム3との間に樹脂29が介在することで、2次衝突時にチルト方向上側へ向かう荷重がかかり、インナーコラム3が円環部材30の内周面上部に押し付けられる場合であっても、樹脂29がインナーコラム3と円環部材30とを滑りやすくし、離脱荷重が高くなるのを防ぐことができる。
【0077】
以上の構成からなる本第2実施形態に係るステアリング装置1によれば、体重の軽い搭乗者が2次衝突した場合であっても、安定した低い離脱荷重によって衝撃を吸収することができる。特に、せん断ピン21a、21bが、内側摩擦板23、外側摩擦板24a、24bと円環部材20との結合部の近傍に配置されていることで、2次衝突の衝撃によって円環部材20に強いモーメント荷重がかかるのを防ぎ、衝撃力が直接的にせん断ピン21a、21bまで伝わるため、安定して低い離脱荷重を得ることができる。
【0078】
本第2実施形態に係るステアリング装置1によれば、2次衝突の衝撃を吸収した後でも、コラムが脱落しないため、操舵が可能となる。
【0079】
また、本第2実施形態に係るステアリング装置1によれば、補強ユニット8がインナーコラム3を強固に固定することで、コラムの振動剛性を向上させ、操舵安定性を確保することができる。
【0080】
また、本第2実施形態に係るステアリング装置1によれば、内側摩擦板23と外側摩擦板24a、24bとを円環部材20によって一体に構成しているため、摩擦による固定力が車幅方向の左右において異なるのを防ぎ、2次衝突時にコラムがこじれて離脱荷重が高まるのを防ぐことができる。
【0081】
また、本第2実施形態に係るステアリング装置1によれば、2次衝突によってコラムを上方へ移動させる荷重がかかった場合であっても、離脱荷重がばらつくことなく、安定した離脱荷重を得ることができる。
【0082】
(第3実施形態)
次に、本願の第3実施形態について説明する。本願の第3実施形態は、上記第1実施形態とは、円環部材20とインナーコラム3の間に樹脂を介在させる構成のみが異なり、他の構成は上記第1実施形態と同様であることから、重複する説明を省略し、樹脂について説明する。
【0083】
本願の第3実施形態において、円環部材の注入孔及び樹脂溜り部の内部形状に合わせて予め成形された樹脂パッドを用いる。即ち、樹脂パッドは、樹脂溜り部内に収容される円弧部と、円弧部の上部中央から上方へ突出して注入孔内に収容される固定部とから構成されている。樹脂パッドの円弧部の上面には、径方向に突出した微小突起が複数設けられている。樹脂パッドは、円環部材の内径側から上側に向かって取り付けられる。これにより、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0084】
なお、本願発明の説明のため、具体的な実施形態を示して説明したが、本願発明は上記第2、第3実施形態に限定されず、種々の変更、改良が可能である。
【0085】
例えば、円環部材に樹脂を注入するのは上側からに限られず、車幅方向から注入するなど、径方向の他の方向から注入するようにしても良い。
【0086】
また、上述のように、せん断ピン21a、21bは、内側摩擦板23、外側摩擦板24a、24bと円環部材20との結合部の近傍に設けるのが好ましいが、上記実施形態のように車幅方向の左右に限定されるものではなく、円環部材20の下部に設けても良いし、左右と下部の両方に設けても良い。また、せん断ピンの数も2つに限られず、1つ又は3つ以上とすることもできる。更に、せん断ピン21a、21bは、樹脂で成形する事で軽くし、組立てに支障のない程度の大きさにする事が可能となると共に、抜け止めの成形も行う事ができる。金属製のピンやアルミニウム製のピンを用いても良い。
【0087】
また、摩擦板の枚数も、中間摩擦板を挟んで片側2枚ずつ設けるものに限られず、中間摩擦板を設けず片側1枚、又は、中間摩擦板を2枚以上設け片側3枚以上とすることもできる。また、摩擦板の配置は、いずれか一方に設けることも可能であり、また、車体側ブラケット6の側板部6b、6cの外側に配置することもできる。
【0088】
(第4実施形態)
次に、本願の第4実施形態について説明する。本願の第4実施形態は、上記第1実施形態とは、円環部材20とインナーコラム3との間に樹脂パッド227を配置する点のみが異なり、他の構成は上記第1実施形態と同様であることから、樹脂パッド227以外の構成については第1実施形態と同じ参照符号を用い、重複する説明を省略して、樹脂パッド227について説明する。
【0089】
図11は、本願の第4実施形態に係るステアリング装置200を示す側面図である。ステアリング装置200の左側側面を示している。
図11は、参照符号を通常読む方向から見たときに、図面に向かって左側が車両前方側、図面に向かって右側が車両後方側となっている。
【0090】
本願の第4実施形態においては、円環部材20の上部孔20k及び樹脂溜り部20mの内部形状に合わせて予め成形された樹脂パッド227を用いる。樹脂パッド227は、
図11に示すように一部が円環部材20の上部から上方へ突出し、他の部分は、円環部材20とインナーコラム3との間に収容される。
【0091】
図12は、本願の第4実施形態に係るステアリング装置200の
図11に示す12−12断面を示す断面図である。
【0092】
樹脂227は、円環部材20の上部から上方へ突出した部分を除いて、円環部材20の上部孔20k内および樹脂溜り部20m内に収容されている。
【0093】
図13は、本願の第4実施形態に係るステアリング装置200の樹脂パッド227を取り付けた円環部材20を示す斜視図である。
【0094】
樹脂パッド227は、円環部材20の内径側から円環部材20の上部に取り付け、その後、円環部材20をインナーコラム3に外嵌させることで容易に組み付けられる。
【0096】
樹脂パッド227は、樹脂から形成され、樹脂溜り部内に収容される円弧部227aと、円弧部227aの上部中央から上方へ突出して上部孔内に収容される一対の固定部227b、227cとから構成されている。
【0097】
一対の固定部227b、227cは、それぞれ、円弧部227aの上部中央から上方へ突出して略半円柱状をした半円柱部227d、227eと、半円柱部227d、227eの上部に連続して一体に形成され、半円柱部227d、227eの円柱面側から円柱面に対して垂直な方向に拡径し上方へ向かうにつれて縮径した円錐面を形成した返し部227f、227gとから構成されている。返し部227f、227gのうち円錐面と反対側の面は、半円柱部227d、227eの平面と同一平面上の平面を形成している。一対の固定部227b、227cは、互いに平面側で対向するように隙間を空けて配置されている。
【0098】
一対の固定部227b、227cは、樹脂パッド227を円環部材20に取り付ける際に弾性変形して互いに接近し、返し部227f、227gが上部孔20k内を通り抜けた後に復元することで、樹脂パッド227を円環部材20に固定する。
【0099】
樹脂パッド227の円弧部227aの下面には、径方向に突出した微小突起227hが複数設けられている。微小突起227hは、軸方向に長い半円柱状をしており、曲面側がインナーコラム3側を向いて配置されている。微小突起227hは、円弧部227aの上面に設けられても良い。微小突起227hを設けることで、インナーコラム3の寸法のバラツキを吸収することができる。また、微小突起227hは、インナーコラム3と円環部材20の間に介在することで、2次衝突時にインナーコラム3と円環部材20のスムーズな相対移動を可能とする。
【0100】
本第4実施形態によれば、上記第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0101】
なお、本願発明の説明のため、具体的な実施形態を示して説明したが、本願発明は上記第4実施形態に限定されず、種々の変更、改良が可能である。
【0102】
例えば、上述のように、せん断ピン21a、21bは、内側摩擦板23、外側摩擦板24a、24bと円環部材20との結合部の近傍に設けるのが好ましいが、上記実施形態のように車幅方向の左右に限定されるものではなく、円環部材20の下部に設けても良いし、左右と下部の両方に設けても良い。また、せん断ピンの数も2つに限られず、1つ又は3つ以上とすることもできる。更に、せん断ピン21a、21bは、樹脂で成形する事で軽くし、組立てに支障のない程度の大きさにする事が可能となると共に、抜け止めの成形も行う事ができる。せん断ピン21a、21bとして金属製のピンやアルミニウム製のピンを用いても良い。
【0103】
また、摩擦板の枚数も、中間摩擦板を挟んで片側2枚ずつ設けるものに限られず、中間摩擦板を設けず片側1枚、又は、中間摩擦板を2枚以上設け、片側3枚以上とすることもできる。また、摩擦板の配置は、いずれか一方に設けることも可能であり、また、車体側ブラケット6の側板部6b、6cの外側に配置することもできる。
【0104】
(第5実施形態)
次に、本願の第5実施形態について説明する。本願の第5実施形態は、上記第1実施形態とは、円環部材20とインナーコラム3との間に樹脂パッド33を配置している点とピン21を円環部材20の下部に配置している点のみが異なり、他の構成は上記第1実施形態と同様であることから、樹脂パッド33とピン21以外の構成については第1実施形態と同じ参照符号を用い、重複する説明を省略して、樹脂パッド33とピン21の配置について説明する。
【0105】
図15は本願の第5実施形態に係るステアリング装置1を示す斜視図である。樹脂パッド33は、
図15に示すように配置されている。
【0106】
図16は本願の第5実施形態に係るステアリング装置を円環部材20の位置で軸線方向に対して垂直に切断した切断面を示す断面図である。
【0107】
円環部材20の上部には、インナーコラム3から離隔して軸方向に貫通した空間を形成する逃げ部20nが形成されている。該逃げ部20nとインナーコラム3との間には、弾性部材として、樹脂製の樹脂パッド33が配置されている。樹脂パッド33により、円環部材30とインナーコラム3の間のガタ詰めをすることができる。
【0108】
円環部材20の下部は、円環部材20の左右の側部よりも径方向に肉厚に形成されており、中央に上下に貫通した孔20aが形成されている。孔20aの上端に対向するインナーコラム3の部分には、孔20aと連続して円環部材20の下端からインナーコラム3の内部まで貫通した貫通孔を構成する孔3aが形成されている。孔20aは、略円柱状の内部空間を形成しており、下端部に他の部分よりも内径寸法が大きいザグリ部を有している。
【0109】
円環部材20の孔20aとインナーコラム3の孔3aとによって形成された貫通孔には、円環部材20とインナーコラム3とを結合する結合部材として、円柱状の軸部と、該軸部よりも径の大きい円盤状の頭部とを有する樹脂製のピン21が通されている。孔20aのザグリ部にはピン21の頭部が収容される。
【0110】
円環部材20の孔20aの左右両側には、それぞれ下方から上方に向かってネジ孔20c、20dが形成されており、後述する内側摩擦板23の取付け部23aに形成された孔23j、23kを通してネジ22a、22bを螺合することで、後述する内側摩擦板23の取付け部23aが円環部材20に取り付けられている。
【0111】
内側摩擦板23の取付け部23aが円環部材20に取り付けられることで、円環部材20が内側摩擦板23に一体に固定されると共に、ピン21の脱落を防ぐこともできる。取付け部23aのピン21に対向する内側摩擦板23の部分には孔23iが形成されている。孔23iにより、組立工程などにおいてピン21が取り付けられていることを目視によって確認することができる。
【0112】
図17A、17Bは、本願の第5実施形態に係るステアリング装置1の樹脂パッド33を示す拡大図である。
図17Aはステアリング装置1を車両に搭載したときに樹脂パッド33を運転者側から見た状態を示す正面図、
図17Bは
図17Aに示す17B−17B断面図である。
【0113】
樹脂パッド33は、円環部材20とインナーコラム3との間に配置されるベース33aと、ベース33aの車両前方側部分及び車両後方側部分から上方へ延びる固定部33b、33cと、ベース33aの下面に複数形成された突起33dとを有している。
【0114】
ベース33aは、上面が平面状に、下面がインナーコラム3の外周面に沿う曲面状に形成されている。
【0115】
固定部33b、33cは、ベース33aの車幅方向の全長にわたって形成されており、固定部33b、33cの互いに対向する部分には、基部よりも内側へ突出した段部を形成し、該段部から上方へ向かうにつれて車両前後方向の幅を漸次小さくした爪33e、33fがそれぞれ形成されている。固定部33b、33cは、向きを合わせて円環部材20の内径側から上方へ向かって力を加えると、爪33e、33fの傾斜面によって固定部33b、33cが弾性変形して互いに離隔し、
図16に示すように、爪33e、33fが円環部材の凹部20pを越えると、弾性変形状態から固定部33b、33cが復元して爪33e、33fが凹部20pに係合し、円環部20に固定される。
【0116】
ベース33aの下部に形成された突起33dは、インナーコラム3側へ突出して軸方向に延びている。突起33dを設けることにより、インナーコラム3の外径公差と円環部材20の内径公差によって生じるインナーコラム3と円環部材20の隙間のばらつきに関わらず、樹脂パッド33がインナーコラム3と円環部材20の両方に接することができるようになる。また、これにより、組立作業を簡素化することができる。また、突起を軸方向に長く設けることで、二次衝突の衝撃吸収時にインナーコラム3がスムーズに車両前方側へ移動できるようになる。
【0117】
車両の衝突などによって運転者がステアリングホイールに衝突する二次衝突が生じた場合、インナーコラム3に軸方向で車両前方側へ向かう衝撃力が発生する。該衝撃力によって、ピン21にせん断などの破壊又は変形が生じることで、円環部材20によるインナーコラム3の固定が解除される。これにより、インナーコラム3はアウターコラム5のクランプ部との摩擦のみで軸方向で車両前方側へ移動、即ち、ストロークすることができるようになる。
【0118】
本第5実施形態においては、円環部材20によるインナーコラム3の固定によって、インナーコラム3をアウターコラム5のクランプ部によって強固に締付ける必要を無くし、アウターコラム5の上記クランプ部による締付を軽いものとしている。これにより、インナーコラム3は、二次衝突時にインナーコラム3とアウターコラム5のクランプ部において生じる摩擦力を小さいものとし、衝撃吸収機能が作動する荷重を小さくしている。また、補強ユニット8を一体に構成することで、ステアリング装置1の左右で離脱荷重が異なることによって生じるステアリングコラムのこじりを防ぎ、安定して低い離脱荷重を実現している。
【0119】
さらに、本第5実施形態においては、樹脂パッド33が円環部材20とインナーコラム3との間で広い範囲にわたって介在することで、二次衝突時にインナーコラム3にチルト方向で上方へ向かう荷重が掛かった場合でも、円環部材20とインナーコラム3との間に大きな摩擦力が生じるのをより確実に防ぎ、衝撃吸収機能が作動する荷重を安定して低いものとすることができる。
【0120】
加えて、本第5実施形態によれば、二次衝突の衝撃吸収後であってもステアリングコラムが脱落しないため、操舵することができる。
【0121】
以上、本願発明の説明のため、具体的な実施形態を示して説明したが、本願発明は上記第5実施形態に限定されず、種々の変更、改良が可能である。
【0122】
例えば、円環部材20をインナーコラム3に固定するピン21は、左右両側に配置しても良いし、左右と下部の両方に設けても良い。また、ピンの数も1つ又は2つに限られず、3つ以上とすることもできる。更に、ピン21は、樹脂で成形する事で軽くし、組立てに支障のない程度の大きさにする事が可能となると共に、抜け止めの成形も行う事ができる。ピン21として金属製のピンやアルミニウム製のピンを用いても良い。
【0123】
また、摩擦板の枚数も、中間摩擦板を挟んで片側2枚ずつ設けるものに限られず、中間摩擦板を設けず片側1枚、又は、中間摩擦板を2枚以上設け片側3枚以上とすることもできる。また、摩擦板は、左右いずれか一方に設けることも可能であり、また、車体側ブラケット6の側板部6b、6cの外側に配置することもできる。
【0124】
(第6実施形態)
次に、本願の第6実施形態について説明する。本願の第6実施形態は、上記第1実施形態とは、サポート部材27を配置し、インナーコラム3にピンを差し込む孔を形成していない点のみが異なり、他の構成は上記第1実施形態と同様であることから、サポート部材27とその周辺の構成以外については第1実施形態と同じ参照符号を用い、重複する説明を省略して、サポート部材27とその周辺の構成について説明する。
【0125】
図18は本願の第6実施形態に係るステアリング装置を示す斜視図である。サポート部材27は
図18に示すように配置されている。
【0126】
図19は本願の第6実施形態に係るステアリング装置の中心軸線に沿って垂直な切断面を示す断面図である。サポート部材27は、軸方向に長い板状をしてインナーコラム3の上側に配置されており、車両前方側部分がストッパー32とともにインナーコラム3に固定され、車両後方側部分が円環部材20とインナーコラム3の間に配置されている。
【0127】
図20は、本願の第6実施形態に係るステアリング装置1のサポート部材27を示す斜視図である。図面に向かって左上が車両後方側、図面に向かって右下が車両前方側である。
【0128】
サポート部材27は、軸方向に長い略長方形をした板状の部材であり、下面27aは、インナーコラム3の外周面に密着するように曲率を合わせて湾曲した曲面状に形成されている。また、サポート部材27の車両前方側端部近傍には、板厚方向に貫通した第1孔部27bが形成され、下面27aの車両後方側端部近傍には、車幅方向に延びる溝部27cが形成されている。
【0130】
サポート部材27の上面27dは、平面状に形成されている。
【0131】
溝部27cの内側中央には、板厚方向に貫通した第2孔部27eが形成されている。
【0132】
図22A、
図22Bは、本願の第6実施形態に係るステアリング装置1のサポート部材27周辺を示す拡大断面図である。
図22Aは樹脂31を射出成形する前の状態を示し、
図22Bは樹脂31を射出成形した後の状態を示している。
【0133】
サポート部材27の車両後方側端部は、
図22Aに示すとおり、円環部材20に形成されたサポート部材収容部28とインナーコラム3との間に収容されており、第2孔部27eが円環部材20に形成された注入孔20kと連続してインナーコラム3まで貫通した貫通孔部を形成している。また、サポート部材27の左右両側には、インナーコラム3から離隔して隙間を構成する樹脂溜り部20mが形成され、樹脂溜り部20mの車幅方向の外側には、それぞれエアベント部20i、20jが形成されている。エアベント部20i、20jは、円環部材20を軸方向に貫通しており、樹脂31を射出成形する際に、注入孔20k、第2孔部27e、溝部27c、及び樹脂溜り部20mの内部の空気を外へ逃がす。
【0134】
注入孔20kに樹脂31を射出すると、第2孔部27eから溝部27cとインナーコラム3との間を流れ、
図22Bに示すとおり、樹脂31が注入孔20k、第2孔部27e、溝部27c、樹脂溜り部20m、及びエアベント部20i、20jの内部に充填される。円環部材20とインナコラム3とは、注入口20kと第2孔部27eの内部に充填された樹脂によって構成されるせん断ピンを介して固定される。エアベント部20i、20jから樹脂31が溢れ出るまで樹脂31を注入することで、樹脂31を確実に充填することができる。樹脂31を充填することで円環部材20とサポート部材27とを結合すると同時に、円環部材20とインナーコラム3との間のガタを詰めることができる。
【0135】
図23は、本願の第6実施形態に係るステアリング装置1の
図19に示す断面のうちストッパー32周辺の拡大断面図である。
【0136】
ストッパー32は、インナーコラム3に径方向に貫通して形成された孔とサポート部材27の第1孔部27b内を通されたボルト35と、インナーコラム3の内部に配置され、ボルト35が螺合される雌ネジが形成された当て板34と、ボルト35の頭部に外嵌し、ボルト35の頭部の上部に形成された拡径部とサポート部材27との間に位置する円環状の樹脂スペーサー15と、からなる。樹脂スペーサー15を樹脂により形成することで、テレスコピック調整時のノイズを抑制することができる。
【0137】
サポート部材27は、上述のようにボルト35によってインナーコラム3に固定されている。
【0138】
車両の衝突などによって運転者がステアリングホイールに衝突する2次衝突がステアリング装置1に生じた場合、インナーコラム3に軸方向で車両前方側へ向かう衝撃力が発生する。該衝撃力は、インナーコラム3に固定されているサポート部材27にも及ぶ。サポート部材27が一定以上の衝撃力を受けると、円環部材20に形成された注入口20kとサポート部材27に形成された第2孔部27eとの内側に充填されせん断ピンを構成した樹脂31がせん断する。これにより、サポート部材27が円環部材20から離脱して、インナーコラム3はアウターコラム5のクランプ部との摩擦力にのみ抗して軸方向で車両前方側へ移動、即ち、ストロークできるようになる。また、本第7実施形態においては、補強ユニット8によりインナーコラム3を固定することによって、インナーコラム3をアウターコラム5のクランプ部によって強固に締付ける必要を無くし、アウターコラム5の上記クランプ部による締付を軽いものとしている。これにより、インナーコラム3は、2次衝突時にインナーコラム3とアウターコラム5のクランプ部において生じる摩擦力を小さいものとし、離脱荷重を小さくしている。
【0139】
以上の構成からなる本第6実施形態に係るステアリング装置1によれば、体重の軽い搭乗者が2次衝突した場合であっても、安定した低い離脱荷重によって衝撃を吸収することができる。
【0140】
また、本第6実施形態に係るステアリング装置1によれば、2次衝突の衝撃を吸収した後でも、コラムが脱落しないため操舵が可能となる。
【0141】
また、本第6実施形態に係るステアリング装置1によれば、インナーコラム3と円環部20の結合において、インナーコラム3に孔を加工する必要がないため、インナーコラム3の変形を防止し、真円度を維持することで離脱時のストロークをスムーズにすることができる。
【0142】
また、本第6実施形態に係るステアリング装置1によれば、補強ユニット8がインナーコラム3を強固に固定することで、コラムの振動剛性を向上させ、操舵安定性を確保することができる。
【0143】
また、本第6実施形態に係るステアリング装置1によれば、内側摩擦板23と外側摩擦板24a、24bとを円環部材20によって一体に構成しているため、摩擦による固定力が左右において異なるのを防ぎ、2次衝突時にコラムがこじれて離脱荷重が高まるのを防ぐことができる。
【0144】
また、本第6実施形態に係るステアリング装置1によれば、2次衝突によってコラムを上方へ移動させる荷重がかかった場合であっても、円環部材20とインナーコラム3との間に樹脂31が介在しているため、離脱荷重が高まるのを防ぐことができ、離脱荷重がばらつくことなく安定した離脱荷重を得ることができる。
【0145】
図24は、本願の第6実施形態の変形例に係るステアリング装置のサポート部材127周辺を示す拡大断面図である。本変形例は、上記第6実施形態に係るステアリング装置1とはサポート部材の形状のみが異なるため、本変形例に係るサポート部材127の形状について説明し、ステアリング装置のその他の部分については、上記第6実施形態と同じ参照符号を用いて、説明を省略する。
【0146】
本変形例に係るサポート部材127は、上記サポート部材27と概略同様の構成をしているが、サポート部材127の下面において第2孔部127eから左右両側に延在する樹脂溜り部127fを有している点において、上記サポート部材27と異なっている。
【0147】
本変形例に係るサポート部材127は、第2孔部127eから左右両側に延在する樹脂溜り部127fが形成され、その左右両側に樹脂溜り部127fとインナーコラム3との間に形成された内部空間をインナーコラム3に沿って左右両側へ連続させる溝部127cが形成されている。
【0148】
溝部127cの外側には、円環部材20に形成された樹脂溜り部20mが配置され、その更に外側にはエアベント20i、20jが形成されている。
【0149】
本変形例においても、上記第6実施形態と同様に、注入孔20k、第2孔部127e、樹脂溜り部127f、溝部127c、樹脂溜り部20m、及びエアベント20i、20jの内部に樹脂を射出成形する。
【0150】
本変形例によれば、上記第6実施形態に係るステアリング装置1と同様の効果の他、サポート部材127に形成された樹脂溜り部127fに充填された樹脂により、サポート部材127とインナーコラム3との間で生じる摩擦を低減させ、二次衝突時により安定した低い離脱荷重を実現することができる。
【0151】
以上、本願発明の説明のため、具体的な実施形態を示して説明したが、本願発明は上記第6実施形態に限定されず、種々の変更、改良が可能である。
【0152】
例えば、サポート部材27は、必ずしもストッパー32に共締めされる必要はなく、インナーコラム3に固定されていれば良い。また、円環部材20とサポート部材27は車両前方側に設けることもできる。
【0153】
また、円環部材20とサポート部材27とを射出成形された樹脂によって固定する代わりに、一定のせん断力によってせん断する部材を用いることができる。例えば、樹脂から予め成形したせん断ピンを注入孔20kと第2孔部27eに挿入しても良い。
【0154】
また、摩擦板の枚数も、中間摩擦板を挟んで片側2枚ずつ設けるものに限られず、中間摩擦板を設けず片側1枚、又は、中間摩擦板を2枚以上設け片側3枚以上とすることもできる。また、摩擦板の配置は、いずれか一方に設けることも可能であり、また、車体側ブラケット6の側板部6b、6cの外側に配置することもできる。
【0155】
以上のように、本発明によれば、より安定して低い離脱荷重を得ることができるステアリング装置を提供することができる。