(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで,不特定多数のユーザーが想定される場合,宛先候補の回線番号をファクシミリに登録しておくことはメモリ資源の観点から非現実的である。また,不特定多数のユーザーに利用が許可された特定のファクシミリを同じユーザーが頻繁に利用する可能性が低いことから,不特定多数のユーザーの宛先候補の回線番号を特定のファクシミリに登録することには,無駄が多い。しかし,外出先でファクシミリを利用する必要が生じたとしても,宛先の回線番号がわからなければ原稿を送信することができないという問題がある。
【0005】
本発明は,このような問題を解決するために創作されたものであって,ユーザーが容易にデータを送信できるようにすることを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためのデータ送信装置は,宛先候補に関する情報をデータ転送サーバーから受信し,前記宛先候補を選択可能なように宛先選択画面を表示する宛先候補表示部と,前記宛先候補から選択された選択結果を前記データ転送サーバーに通知することによって,前記宛先を設定する宛先設定部と,前記通知の後に,送信対象データを取得するデータ取得部と,前記送信対象データを前記データ転送サーバーに送信することによって前記データ転送サーバーから前記送信対象データを前記選択された宛先に転送させる送信制御部と,を備える。前記宛先設定部は,ユーザーによる選択に応じて前記通知を行ってもよい。前記データ取得部は,前記通知の後に,信対象データを取得する処理を開始してもよい。前記データ取得部は,送信対象原稿からスキャンを行うことで前記送信対象データを作成してもよい。
【0007】
(1)具体的には例えば,データ送信装置は,ユーザー識別子の入力を受け付けるユーザー識別子取得部と,データ転送サーバーに前記ユーザー識別子を送信することによって宛先候補の通信識別子を前記データ転送サーバーから受信し,前記宛先候補を選択可能に表示する宛先候補表示部と,前記宛先候補から選択された宛先の前記通信識別子を前記データ転送サーバーに送信することによって,前記宛先に対応するジョブ識別子をデータ転送サーバーから受信する宛先設定部と,前記ジョブ識別子の受信に応じて送信対象データを取得するデータ取得部と,前記ジョブ識別子に対応付けて前記送信対象データを前記データ転送サーバーに送信することによって前記データ転送サーバーから前記送信対象データを前記宛先に転送させる送信制御部と,を備える。
【0008】
ここでユーザー識別子とは,データ送信装置に固定された識別子ではなく,データ送信装置のユーザーに固定された識別子である。また宛先とは,送信対象データを受信するデータ受信装置またはそのデータ受信装置が送信対象データを記憶する領域である。本発明によると,データ送信装置を利用する不特定多数のユーザーがユーザー識別子を入力することによって宛先候補の通信識別子をデータ送信装置に取得させるとともに,データ転送サーバーを経由して送信対象データが送信される宛先の通信識別子を設定することができる。すなわち,ユーザーが宛先の通信識別子を特定できない場合であってもユーザーが望む宛先にデータを送信できるようになる。そして,データ送信装置は宛先に対応付けられたジョブ識別子を取得してから送信対象データを取得するため,データ転送サーバーから転送されることのない送信対象データをデータ送信装置が取得する無駄が生じない。
【0009】
(2)上記目的を達成するためのデータ送信装置において,前記宛先候補表示部は,互いに異なる複数の通信プロトコルに適合する複数の通信識別子に対応する複数の宛先候補を選択可能に表示し,前記送信制御部は,前記選択された宛先の通信識別子が適合しているプロトコルを用いて前記データ転送サーバーから前記宛先に前記送信対象データを転送させてもよい。
この構成を採用すると,ファクシミリ,HTTP,SMTPなど,送信対象データを受信するための通信プロトコルが異なる任意の宛先に送信対象データを送信することができる。
【0010】
(3)上記目的を達成するためのデータ送信装置において,前記宛先候補表示部は,前記複数の宛先候補を一階層で一覧表示してもよい。
この構成を採用すると,宛先の通信プロトコルを意識せずにデータ送信装置に宛先候補を表示させられるため,宛先の設定操作が容易になる。
【0011】
(4)上記目的を達成するためのデータ送信装置において,前記データ取得部は,送信対象原稿から前記送信対象データを読み取ってもよい。
この構成を採用すると,送信対象原稿の画像データを宛先に送信することができる。
【0012】
(5)上記目的を達成するためのデータ転送サーバーは,複数のユーザー識別子のいずれかに対応付けて複数の宛先候補の通信識別子を記憶する宛先候補記憶部と,データ送信装置から前記ユーザー識別子を受信し,受信した前記ユーザー識別子に対応する前記宛先候補の通信識別子を返信する宛先候補送信部と,前記複数のデータ送信装置から宛先の通信識別子を受信し,受信した前記宛先の通信識別子に対応するジョブ識別子を返信する転送設定部と,前記ジョブ識別子に対応付けて送信対象データを受信し,受信した前記送信対象データに対応する前記宛先に前記送信対象データを送信するデータ転送部と,を備える。
【0013】
本発明によると,データ送信装置を利用する不特定多数のユーザーがユーザー識別子を入力することによって宛先候補の通信識別子をデータ送信装置に取得させるとともに,データ転送サーバーを経由して送信対象データが送信される宛先の通信識別子を設定することができる。すなわち,ユーザーが宛先の通信識別子を特定できない場合であってもユーザーが望む宛先にデータを送信できるようになる。そして,データ転送サーバーは宛先に対応付けられたジョブ識別子をデータ送信装置に送信してから送信対象データをジョブ識別子に対応付けて受信するため,データ転送サーバーから転送されることのない送信対象データを受信する無駄が生じない。
【0014】
なお,請求項に記載された各部の機能は,構成自体で機能が特定されるハードウェア資源,プログラムにより機能が特定されるハードウェア資源,又はそれらの組み合わせにより実現される。また,これら各部の機能は,各々が物理的に互いに独立したハードウェア資源で実現されるものに限定されない。さらに,本発明はデータ送信方法,データ送信プログラム,データ転送プログラムまたはこれらの記録媒体としても成立する。むろん,そのコンピュータプログラムの記録媒体は,磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし,今後開発されるいかなる記録媒体であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下,本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら以下の順に説明する。尚,各図において対応する構成要素には同一の符号が付され,重複する説明は省略される。
【0017】
1.全体概要
図1は,データ送信装置としての複数の複合機1とデータ転送サーバー2とを含むデータ通信ネットワークの全体構成を示すブロック図である。各複合機1a,1b,1cと,データ転送サーバー2とはインターネット3を介して接続されている。各複合機1a,1b,1cからはデータ転送サーバー2と通信網を介して接続されている任意のファクシミリ4a,PC(Personal Computer)4c,データストレージサーバー4bなどのデータ受信装置を宛先として,原稿から読み取った送信対象データを送信することができる。
【0018】
2.データ転送サーバーの構成
データ転送サーバー2は図示しないプロセッサ,メインメモリ,ROM,通信インタフェース部,ハードディスク装置等を備える1台以上のコンピューターシステムによって構成される。データ転送サーバー2のハードウェアリソースは,プロセッサによって実行されるデータ転送プログラムによって,以下に述べる宛先候補記憶部21,宛先候補送信部22,転送設定部23,データ転送部24,クライアント登録部25等として機能する。
【0019】
宛先候補記憶部21は,ユーザー識別子のいずれかに対応付けて複数のデータ受信装置の通信識別子を記憶するデータベースである。すなわち,宛先候補記憶部21は,ファクシミリ4aの回線番号,PC4cの電子メールアドレス,データストレージサーバー4bのURLなど,複数の通信プロトコルの通信識別子をユーザー識別子に対応付けて転送先データベースに記憶する。
【0020】
図2は,転送先データベースの一例を示す。ユーザー識別子は,本実施例のデータ通信システムを利用するユーザーに固定された識別子であって,ユーザー毎にユニークな文字列(例:ito1234)である。宛名は,データ受信装置を識別するためにユーザーが定める文字列(例:スズキ ゴロウ)で構成される。通信識別子は宛先となるデータ受信装置を特定し,データ転送サーバー2がデータ受信装置にデータを転送する際に用いる通信プロトコルに適合した文字列で構成される。例えば,宛先のデータ受信装置がファクシミリ4aであれば回線番号"012-234-5678"が,PC4cであれば電子メールアドレス"s-ito@sankou.co.jp"が,データストレージサーバー4bであればURL"www.nagoya.com/eigyo/"が,通信識別子として転送先データベースに登録される。
【0021】
宛先候補送信部22は,登録された複数の複合機1a,1b,1cからユーザー識別子を受信し,受信したユーザー識別子に対応する宛先候補の通信識別子を返信する。ユーザー識別子と通信識別子の送受信に用いられる通信プロトコルはHTTPである。
【0022】
転送設定部23は,登録された複数の複合機1a,1b,1cから転送先となるデータ受信装置の通信識別子を受信し,ジョブ識別子と受信した通信識別子とを対応付けて記憶するとともに,ジョブ識別子を対応する複合機1a,1b,1cに返信する。また転送設定部23は,受信した通信識別子を解析し,受信した通信識別子に適合する通信プロトコルを特定する。通信識別子とジョブ識別子の送受信に用いられる通信プロトコルはHTTPである。
【0023】
データ転送部24は,複数の複合機1からジョブ識別子とともに送信対象データを受信し,受信したジョブ識別子に対応する通信識別子を宛先として送信対象データを転送する。上部識別子と送信対象データの送受信に用いられる通信プロトコルはHTTPである。一方,データ転送部24は,転送先の通信識別子に適合する通信プロトコルを用いて送信対象データを転送する。例えば転送先がファクシミリ4aであればG3等のファクシミリ規格が用いられ,転送先がデータストレージサーバー4bであればHTTPが用いられる。
【0024】
クライアント登録部25は,それぞれの通信識別子をデータベースに登録することによって複数の複合機1をデータ通信システムのクライアントとして登録する。このような登録は,複合機1がセットアップされる際に複合機1からの要求に応じてなされる。
【0025】
3.複合機の構成
データ転送サーバー2のクライアントとして登録される複合機1a,1b,1cは,それぞれディスプレイ17と,操作キー18と,図示しないプロセッサ,メインメモリ,ROM,通信インターフェース部等で構成されるコンピューターシステムと,ラインイメージセンサ,キャリッジ,アクチュエーター等で構成される画像読み取り機構と,インク吐出ヘッド,キャリッジ,アクチュエーター等で構成される印刷機構とを備えている。複合機1a,1b,1cのハードウェアリソースは,プロセッサによってデータ送信プログラムが実行されることによって,以下に述べるユーザー識別子取得部11,宛先候補登録部12,宛先候補表示部13,宛先設定部14,読み取り制御部15,送信制御部16として機能する。
【0026】
ユーザー識別子取得部11は,操作キー18を用いたユーザー識別子の入力を受け付ける。
【0027】
宛先候補登録部12は,データ転送サーバー2にユーザー識別子に対応付けてデータ受信装置の通信識別子と宛名とを送信することによって宛先候補情報をデータ転送サーバー2に登録する。
【0028】
宛先候補表示部13は,データ転送サーバー2にユーザー識別子を送信することによって宛先候補の通信識別子と宛名をデータ転送サーバー2から受信し,宛先を操作キー18によって選択可能にディスプレイ17に表示する。
【0029】
宛先設定部14は,操作キー18によって宛先候補から選択された宛先に対応する通信識別子をデータ転送サーバー2に送信することによって,選択された宛先に対応するジョブ識別子をデータ転送サーバー2から受信する。
【0030】
データ取得部としての読み取り制御部15は,ジョブ識別子の受信に応じて読み取り機構を制御することによって送信対象原稿から送信対象データを読み取る。
【0031】
送信制御部16は,ジョブ識別子に対応付けて送信対象データをデータ転送サーバー2に送信することによって,データ転送サーバー2からジョブ識別子に対応するデータ受信装置に送信対象データを転送させる。
【0032】
4.データ通信方法
図3は,上述した複合機1a,1b,1cとデータ転送サーバー2を用いたデータ通信の流れを示している。
図4は,複合機1のディスプレイ17の画面遷移態様の一例を示している。
【0033】
はじめに複合機1a,1b,1cをデータ通信サーバー2のクライアントとして登録するための機体登録処理を実施する(S100)。機体登録処理は,ユーザーによる機体登録操作によって起動する。機体登録処理において,複合機1a,1b,1cは予め複合機自体が記憶している識別用の情報である機体識別子等を送信することによってデータ転送サーバー2に自分自身をクライアントとして登録することを要求する。機体の登録要求を受信したデータ転送サーバー2は,受信した機体識別識別子をクライアントデータベースに登録し,複合機1が登録されたことを複合機1a,1b,1cに返信する(S200)。このような機体登録処理にともなう複合機1とデータ転送サーバー2との通信はHTTPを用いて行われる。
【0034】
データ転送サーバー2に登録された複合機1a,1b,1cにおいて宛先候補情報をデータ転送サーバー2から取得可能にするため,事前にデータ転送サーバー2に宛先候補情報を登録する処理が必要になる。ユーザーは,PC等を操作することによって宛先候補情報をデータ転送サーバー2に登録しても良いが,
図3では複合機1a,1b,1cを操作することによってデータ転送サーバー2に宛先候補情報を登録する例を示している。宛先候補情報は,先に説明した転送先データベースに記憶される宛名と通信識別子を含む。これらの宛先候補情報は,既に説明したとおり,いずれかのユーザー識別子と対応付けて転送先データベースに記憶される。
【0035】
具体的には,ユーザーは,操作キー18を用いて予めユーザーに通知されている識別用の情報であるユーザー識別子を複合機1に入力した後,宛名及びデータ受信装置の通信識別子を複合機1に入力する宛先登録操作を実行する。その結果,複合機1は,入力されたユーザー識別子と対応付けて宛名およびデータ受信装置の通信識別子をデータ転送サーバー2に送信する(S102)。
【0036】
複合機1からユーザー識別子,宛名および通信識別子を受信したデータ転送サーバー2は,ユーザー識別子に対応付けて宛名および通信識別子を転送先データベースに登録し,登録完了を複合機1に通知する(S202)。
【0037】
このようにして宛先候補登録処理が行われると,ユーザーは,クライアントとしてデータ転送サーバー2に登録された任意の複合機において,事前に登録したデータ受信装置の通信識別子を宛先として設定することがユーザー識別子の入力と宛名の選択だけで可能になる。このため,ユーザーは宛先の通信識別子を覚えていない状態であっても,以下に述べるように,任意の複合機において宛先に送信対象データを送信可能になる。なお,
図3では,宛先登録処理を実行した複合機において宛先候補情報を取得する例を示しているが,宛先登録処理を実行していない複合機においても,機体登録されている複合機であれば,ユーザー識別子を持つユーザーはステップS104以降の処理である宛先候補から宛先を選んで宛先の通信識別子を設定するということを実行することが可能である。
【0038】
具体的には,ユーザーが操作キー18を用いて,スキャン送信モードを選択する。これに応じて複合機1がディスプレイ17に表示した入力画面に対して,ユーザーがユーザー識別子を入力して宛先候補情報を要求すると,複合機1は入力されたユーザー識別子をデータ転送サーバー2に送信する(S104)。
図4Aは,複合機1a,1b,1cのディスプレイ17に表示されるユーザー識別子の入力画面の一例を示している。
図4Cは,複合機1a,1b,1cからユーザー識別子がデータ転送サーバー2に送信された後に表示される待機画面の一例を示している。
【0039】
データ転送サーバー2は,受信したユーザー識別子に対応付けて記憶されている宛名および通信識別子を転送先データベースから取得して複合機1に返信する(S204)。その結果,複合機1はユーザーが入力したユーザー識別子に対応する宛名および通信識別子を受信し,操作キー18によって宛名を選択可能にディスプレイ17に表示する。
図4Cは,複合機1a,1b,1cのディスプレイ17に表示される宛先候補情報の表示画面の一例を示している。ディスプレイ17には,複数の宛先候補が一階層で一覧表示され,カーソルが位置している宛先候補が強調表示される。このように,宛先候補の通信識別子がファクシミリの回線番号であっても,電子メールアドレスであっても,URLであっても,通信プロトコルの種別にかかわらず,宛先候補は同列に一覧表示されることが好ましい。
【0040】
ユーザー識別子を入力したユーザーは,次に,上下キーを操作することでカーソルを上下に移動させ,決定キーを操作することでカーソルが位置する宛先を選択する。宛先が選択されると,複合機1は,選択された宛先に対応する通信識別子や何番目の宛先か等のデータ転送サーバー2が選択された宛先を認識できる情報を選択結果としてデータ転送サーバー2に送信する。さらにユーザーは,したり,送信対象原稿をプラテンガラスにセットしたり,画質を設定するなど,送信条件の設定を操作キー18を用いて行う(S106)。
図4Cに示す画面が表示されている状態においては,ユーザーは操作キー18によって宛先候補のいずれかを選択し,選択を確定させる。すると
図4Dに示す画質選択画面に遷移する。
図4Dに示す画面が表示されている状態において,ユーザーは操作キー18によって原稿をモノクロで読み取るかカラーで読み取るかを選択し,送信条件を確定させる。送信条件が確定すると,複合機1a,1b,1cは,選択された宛先に対応する通信識別子と読み取り条件とをデータ転送サーバー2に送信する。
【0041】
通信識別子を受信したデータ転送サーバー2は,受信した通信識別子に対応するデータ受信装置に送信対象データを送信するためのジョブを生成し,生成したジョブの識別子(ジョブ識別子)を複合機1に返信する(S206)。
【0042】
このとき,データ転送サーバー2は,受信した通信識別子を解析し,通信識別子に対応する通信プロトコルを特定し,ジョブに設定する。具体的には例えば,数字のみまたは数字とハイフンのみで所定文字数の通信識別子が構成されている場合には,通信識別子がファクシミリの回線番号であるものとして,送信対象データの転送にファクシミリ規格を用いるジョブを生成する。また,"@"を含む英数字のみで通信識別子が構成されている場合には,通信識別子が電子メールアドレスであるものとして,送信対象データの転送にSMTPを用いるジョブを生成する。また,"http://"を含む英数字のみで通信識別子が構成されている場合には,通信識別子がURLであるものとして,送信対象データの転送にHTTPを用いるジョブを生成する。またデータ転送サーバー2は,送信対象データをデータ転送サーバー2が受信するためのアドレス(受信アドレス)をジョブ識別子とともに複合機1に送信する。したがって,ジョブは,転送先の通信識別子,通信プロトコル,送信対象データの受信アドレスを特定し,ジョブ識別子によって識別される情報である。
【0043】
ジョブ識別子を受信した複合機1は,原稿から送信対象データを読み取り,読み取った送信対象データをジョブ識別子とともにデータ転送サーバー2から受信した受信アドレスに送信する(S108)。すなわち,複合機1は,ジョブ識別子を受信してはじめて送信対象データの読み取りを開始可能な状態となる。
図4Eは,通信識別子をデータ転送サーバー2に送信してからジョブ識別子を受信するまでの期間に複合機1a,1b,1cのディスプレイ17に表示される待機画面の一例である。複合機1a,1b,1cがジョブ識別子を受信すると,原稿の読み取りが開始され,原稿の読み取り中に
図4Fに示すステータス画面がディスプレイ17に表示される。
【0044】
送信対象データを受信したデータ転送サーバー2は,送信対象データとともに受信したジョブ識別子に対応する通信識別子を持つデータ受信装置に,送信対象データを転送する(S208)。具体的にはデータ転送サーバー2は,ジョブ識別子を用いてジョブを取得し,ジョブに設定されている通信識別子と通信プロトコルを特定する。そして,データ転送サーバー2は,特定した通信プロトコルに応じて,必要であれば送信対象データの形式を変換する。その後,データ転送サーバー2は,ジョブに設定された通信識別子を宛先として,ジョブに設定された通信プロトコルを用いて,送信対象データを送信する。したがって例えば,宛先のデータ受信装置がファクシミリ4aであればファクシミリ規格を用いてファクシミリ画像に変換した送信対象データが転送され,宛先のデータ受信装置がPC4cであればSMTPを用いて送信対象データが転送され,宛先のデータ受信装置がデータストレージサーバー4bであればHTTPを用いて送信対象データが転送される。その後,転送の成否がデータ転送サーバー2のログに記憶するとともに,データ転送サーバー2から複合機1に通知され,複合機1のディスプレイ17に成否が表示され,処理が終了する。
【0045】
以上説明した実施例によると,複合機1a,1b,1cを利用する不特定多数のユーザーがユーザー識別子を入力することによって宛先候補の通信識別子をデータ送信装置に取得させるとともに,データ転送サーバーを経由して送信対象データが送信される宛先の通信識別子を設定することができる。そして,データ送信装置は宛先に対応付けられたジョブ識別子を取得してから送信対象データを取得するため,データ転送サーバーから転送されることのない送信対象データをデータ送信装置が取得する無駄が生じない。またファクシミリ,HTTP,SMTPなど,送信対象データを受信するための通信プロトコルが異なる任意のデータ受信装置に送信対象データを送信することができる。また,宛先の通信プロトコルを意識せずにデータ送信装置に宛先候補を表示させられるため,宛先の通信プロトコル毎にUIを分岐させて宛先候補を表示する場合に比べて,宛先の設定操作が容易になる。すなわち,上述した実施例によると,ユーザーは,あたかもユーザーが所有しているファクシミリにおいて登録電話帳を呼び出して宛先を設定して送信するように,任意のデータ送信装置から原稿の画像データをファクシミリ,PC,データストレージサーバー等に送信することができる。
【0046】
5.他の実施形態
以上,実施例に基づいて本発明の実施形態を説明したが,本発明の技術的範囲は上述した実施例に限定されるものではなく,以下の変形例を組み合わせるなど,本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば,データ送信装置として複合機を例示したが,データ通信機能を備えていれば,スキャナーでもよいし,デジタルカメラでも良いし,携帯型情報端末でも良い。また送信対象データとして原稿から読み取られる画像データを例示したが,送信対象データは,リムーバブルメモリやハードディスク装置から読み込んだ画像データでもテキストデータでもベクトルデータでも良い。
【0047】
また,転送先データベースには,通信プロトコルを識別する情報を記載しておくことで通信識別子を解析しなくてもよいようにしてもよい。また,データ受信装置にログインするためのログインIDやログインパスワードを記載しておくことで,データ受信にログインが必要なデータ受信装置に,データ転送サーバー2がログインしてからデータを送信するようにしてもよい。また,スキャン画質を記載しておき,これをスキャンに使用することで,ユーザーによる画質設定を省略してもよい。
【0048】
また,宛先候補の表示形態として,宛名と通信識別子が転送サーバー2から複合機1に通知されて表示される例を示したが,宛名だけが通知されて表示されたり,通信識別子だけが通知されて表示されたりしても良い。また通信識別子として,回線番号,電子メールアドレスおよびURLを例示したが,データ転送サーバーが送信対象データを送信するに当たって必要になる識別情報であれば,どのような識別子であっても良いし,パスワードを含むものであっても良い。また,1階層で表示しなくてもよく,例えば,ユーザーが通信識別子等の登録の段階で所属グループを指定しておくことにより,所属グループ毎に複数階層で表示してもよい。
【0049】
また,データ送信装置とデータ転送サーバー間の通信プロトコルとしてHTTPを例示したが,XMPP,SMTP,TelNetなど他のデータ通信プロトコルを用いても良い。
【0050】
また上述した操作と画面遷移の関係が単なる例示であることはいうまでもない。例えば画質の設定操作が宛先の選択操作の前に行われても良い。また,サーバーは1台のコンピューター装置から成ってもよいし,複数台のコンピューター装置から成ってもよい。