(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明を適用した好適な実施形態の一例について説明する。本実施形態では、第1の動脈を中枢動脈とし、第2の動脈を末梢動脈として、中枢動脈の起始部血圧を推定する血圧推定処理に係るパラメーターを校正する実施形態について説明する。本実施形態では、血管径を血管断面指標値として説明するが、血管径の代わりに血管断面積を用いてもよい(その場合、以下の文章中の「血管径」を「血管断面積」に置き換えて読めばよい。)。本発明を適用可能な形態が以下説明する実施形態に限定されるわけでないことは勿論である。
【0022】
1.原理
本実施形態では、中心血圧を推定するための血圧推定処理に係るパラメーター(以下、「中心血圧推定パラメーター」と称す。)を校正する。中心血圧は、主に中枢動脈の一種である大動脈の起始部血圧のことを指す。頸動脈の血圧を中心血圧とみなす場合もある。
【0023】
中心血圧推定パラメーターには、拡張期血管径と拡張期中心血圧との関係に係る相関パラメーターと、中枢動脈の血管硬度を表す血管硬度パラメーターとが含まれる。本実施形態では、この2種類のパラメーターを校正する。
【0024】
さて、血圧推定処理では中枢動脈の血管径から中心血圧を推定するため、中枢動脈の血管径と中枢動脈の血圧との相関特性を定めることが必要となる。この相関特性は、例えば、中枢動脈の血管径と中枢動脈の血圧とを非線形な関係で結び付けた相関式で表すことができる。
【0025】
具体的には、中枢動脈の血管にかかる圧力と、各血圧時における血管径とを用いて、例えば次式(1)のような相関式で相関特性を表すことができる。
P=Pd・exp[β(D/Dd−1)]・・・(1)
但し、β=ln(Ps/Pd)/(Ds/Dd−1)
【0026】
ここで、「Ps」は収縮期血圧であり、「Pd」は拡張期血圧である。また、「Ds」は収縮期血圧のときの血管径である収縮期血管径であり、「Dd」は拡張期血圧のときの血管径である拡張期血管径である。また、「β」はスティフネスパラメーターと呼ばれる血管硬度を表す指標値である。
【0027】
血管硬度パラメーターは、式(1)のスティフネスパラメーター「β」に相当する。相関パラメーターは、式(1)の拡張期血圧「Pd」及び拡張期血管径「Dd」に相当する。
【0028】
本実施形態における大きな特徴の1つは、中心血圧推定パラメーターの校正を、血管硬度パラメーターの校正と相関パラメーターの校正との2つに分ける点にある。具体的には、
図1に示すように第1校正と第2校正との2種類の校正がある。
【0029】
第1校正では、中枢動脈の血管径の計測を、中枢動脈の血圧の計測(中心血圧計測)と組み合わせて行って(以下、この組み合わせを「中心血圧組合せ計測」と称する。)、血管硬度パラメーターを校正する。中心血圧組合せ計測は、同動脈血圧組合せ計測の一種である。
【0030】
第2校正では、中枢動脈の血管径の計測を、末梢動脈の血圧の計測(末梢血圧計測)と組み合わせて行って(以下、この組み合わせを「末梢血圧組合せ計測」と称する。)、相関パラメーターを校正する。末梢血圧組合せ計測は、他動脈血圧組合せ計測の一種である。
【0031】
以上の通り、本実施形態では、血管硬度パラメーターの校正は中心血圧組合せ計測を行う第1校正で行い、相関パラメーターの校正は末梢血圧組合せ計測を行う第2校正で行う。
【0032】
2種類の校正を利用する理由を、
図2を参照して説明する。
図2は、生体の中枢部から末梢部に至るまでの各計測部位で血圧を計測した生理学的な実験結果の一例を示す図である。
図2において、横軸は計測部位を示し、左にいくほど中枢部に近く、右にいくほど末梢部に近い計測部位であることを表している。また、縦軸は血圧である。5箇所の計測部位における血圧変化の一例を図示している。
【0033】
この図を見ると、収縮期血圧は中枢部から末梢部に近くなるにつれて徐々に上昇する傾向があることがわかる。これは、いわゆるピーキング現象によるものと考えられる。それに対し、拡張期血圧は、中枢部でも末梢部でもほとんど変化がなく、ほぼ一定の値を示している。
【0034】
この結果から、中枢動脈と末梢動脈とでは収縮期血圧が異なるため、末梢動脈の血圧を用いて血管硬度パラメーターを校正した場合、中枢動脈の血管硬度を適確に反映できない可能性が高い。そこで、血管硬度パラメーターの校正は、中枢動脈の血圧を用いた第1校正とする。なお、中枢動脈の血圧(中心血圧)の計測は、例えば、医療機関等で用いられる中心血圧計を利用することができる。
【0035】
その一方で、中枢動脈の血管径は一定ではなく、僅かに差があるため、中枢動脈の血管径を計測する際の計測状況(例えば計測装置の装着態様)等に応じて、相関特性を調整することが必要となる。中枢動脈の血圧を計測するのであれば、被検者に対して医療機関等に足を運ばせる手間があるが、末梢動脈の血圧を計測するのであれば、市販されている血圧計を用いて家庭での血圧計測も容易である。拡張期血圧は、中枢動脈でも末梢動脈でもそれほど値が変わらない性質があるため、相関パラメーターの校正は、末梢動脈の血圧計測を行うことで事足りる。そこで、相関パラメーターの校正は、末梢動脈の血圧を用いた第2校正とする。
【0036】
2.実施例
次に、被検者の橈骨静脈を末梢動脈とし、頸動脈を中枢動脈として、上記の原理に従って中心血圧推定パラメーターの校正を行って中心血圧を推定する中心血圧計測装置の実施例について説明する。中心血圧計測装置は、本発明における血圧計測装置の一種である。本実施例では、中心血圧計測装置を超音波血圧計1とする。
【0037】
2−1.機能構成
図3は、超音波血圧計1の機能構成の一例を示すブロック図である。超音波血圧計1は、超音波プローブ10と、本体装置20とを有し、中心血圧計2及び加圧血圧計3とケーブル接続して、これらの計測結果を入力可能に構成されている。
【0038】
超音波プローブ10は、血管径計測部120からの制御信号に従って、超音波の送信モードと受信モードとを時分割方式で切り替えて超音波を送受信する小型の接触子である。超音波プローブ10で受信された信号は、血管径計測部120に出力される。本実施例において、超音波プローブ10は被検者の頸部に装着され、中枢動脈である頸動脈の血管径を計測するために利用される。
【0039】
本体装置20は、第1入力部40と、第2入力部60と、処理部100と、操作部200と、表示部300と、音出力部400と、通信部500と、時計部600と、記憶部800とを有し、各機能部を実現する回路等を、携帯可能な小型筐体に収めて構成されている。本体装置20は一種のコンピューター制御装置とも言える。
【0040】
第1入力部40は、中心血圧計2と接続して血圧の計測値を入力する。
中心血圧計2は、例えば被検者の手首部で計測した橈骨動脈の脈波に基づいて中心血圧を推定する中心血圧計測装置である。
【0041】
第2入力部60は、加圧血圧計3と接続して血圧の計測値を入力する。
加圧血圧計3は、例えば被検者の上腕部や手首部にカフ帯を巻いて血圧を計測する加圧式の血圧計測装置である。
【0042】
処理部100は、超音波血圧計1の各部を統括的に制御する制御装置及び演算装置であり、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等のマイクロプロセッサーや、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を有して構成される。
【0043】
処理部100は、主要な機能部として、血管径計測部120と、中心血圧計測部130と、血管硬度パラメーター校正部140と、相関パラメーター校正部150とを有する。但し、これらの機能部は一実施例として記載したものに過ぎず、必ずしもこれら全ての機能部を必須構成要素としなければならないわけではない。また、これら以外の機能部を必須構成要素としてもよいことは勿論である。
【0044】
血管径計測部120は、超音波プローブ10の超音波の送受信を制御し、超音波プローブ10から出力された超音波の反射波の受信信号を利用して、対象血管の血管径を計測する。本実施形態では、頸動脈が対象血管となる。血管径計測部120は、中枢動脈の血管断面指標値を計測する血管断面指標値計測部の一種である。血管径計測部120は、血管径を連続的に計測可能に構成されている。血管径を連続的に計測する手法としては、例えば、位相差トラッキング法を適用することができる。
【0045】
中心血圧計測部130は、血管径計測部120により計測された血管径から中心血圧を推定する血圧推定処理を実行して中心血圧を計測する。
血管硬度パラメーター校正部140は、血管径計測部120により計測された血管径と第1入力部40により入力された血圧とを用いて、血管硬度パラメーターを校正する。
相関パラメーター校正部150は、血管径計測部120により計測された血管径と第2入力部60により入力された血圧とを用いて、相関パラメーターを校正する。
【0046】
操作部200は、ボタンスイッチ等を有して構成される入力装置であり、押下されたボタンの信号を処理部100に出力する。この操作部200の操作により、中心血圧の計測開始指示等の各種指示入力がなされる。
【0047】
表示部300は、LCD(Liquid Crystal Display)等を有して構成され、処理部100から入力される表示信号に基づく各種表示を行う表示装置である。表示部300には、中心血圧計測部130による中心血圧の計測結果等が表示される。
【0048】
音出力部400は、処理部100から入力される音出力信号に基づく各種音出力を行う音出力装置である。
【0049】
通信部500は、処理部100の制御に従って、装置内部で利用される情報を外部の情報処理装置との間で送受するための通信装置である。通信部500の通信方式としては、所定の通信規格に準拠したケーブルを介して有線接続する形式や、クレイドルと呼ばれる充電器と兼用の中間装置を介して接続する形式、近距離無線通信を利用して無線接続する形式等、種々の方式を適用可能である。中心血圧計2や加圧血圧計3との接続が通信接続となる場合には、第1入力部40や第2入力部60が通信部500となる。
【0050】
時計部600は、水晶振動子及び発振回路でなる水晶発振器等を有して構成され、時刻を計時する計時装置である。時計部600の計時時刻は、処理部100に随時出力される。
【0051】
記憶部800は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュROM、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置を有して構成される。記憶部800は、超音波血圧計1のシステムプログラムや、血管径計測機能、中心血圧推定機能、校正機能といった各種機能を実現するための各種プログラム、データ等を記憶している。また、各種処理の処理中データ、処理結果などを一時的に記憶するワークエリアを有する。
【0052】
記憶部800には、プログラムとして、例えば、処理部100によって読み出され、メイン処理(
図4参照)として実行されるメインプログラム810が記憶されている。メインプログラム810は、血管硬度パラメーター校正処理(
図5参照)として実行される血管硬度パラメーター校正プログラム811と、相関パラメーター校正処理(
図6参照)として実行される相関パラメーター校正プログラム812とをサブルーチンとして含む。これらの処理については、フローチャートを用いて詳細に後述する。
【0053】
また、記憶部800には、データとして、校正用データ820と、血管硬度パラメーターデータ830と、相関パラメーターデータ840と、血管径計測データ850と、中心血圧計測データ860とが記憶される。
【0054】
校正用データ820は、中心血圧推定パラメーターの校正を行うために用いられるデータである。血管硬度パラメーターの校正に用いられる中心血圧組合せ計測の計測結果や、相関パラメーターの校正に用いられる末梢血圧組合せ計測の計測結果がこれに含まれる。
【0055】
血管硬度パラメーターデータ830は、血管硬度パラメーターの校正値が記憶されたデータであり、血管硬度パラメーター校正処理が行われる度に更新される。
相関パラメーターデータ840は、相関パラメーターの校正値が記憶されたデータであり、相関パラメーター校正処理が行われる度に更新される。
【0056】
血管径計測データ850は、血管径計測部120により計測された血管径が記憶されたデータである。
中心血圧計測データ860は、中心血圧計測部130により推定された中心血圧が記憶されたデータである。
【0057】
2−2.処理の流れ
図4は、処理部100が、記憶部800に記憶されているメインプログラム810に従って実行するメイン処理の流れを示すフローチャートである。
【0058】
最初に、処理部100は、血管硬度パラメーターの校正タイミングであるか否かを判定する(ステップA1)。血管硬度パラメーターの校正タイミングとしては、種々のタイミングを設定可能である。血管硬度パラメーターは、血管の器質的な変化が生じた場合に値が変化すると考えられるが、それにはある程度長期間(数か月〜年単位)を要する。そこで、血管硬度パラメーター校正処理を前回実行してから所定の期間(例えば3ヶ月)が経過したタイミングを校正タイミングとして定めておくなどすることができる。
【0059】
血管硬度パラメーターの校正タイミングであると判定したならば(ステップA1;Yes)、処理部100は、血管硬度パラメーターの校正が必要であることを被検者に報知する所定の報知制御を行う(ステップA3)。例えば、医療機関等に出向いて血管硬度パラメーターの校正に係る処置を受けるように促すメッセージを表示部300に表示させたり、音声ガイダンスを音出力部400から音出力させるなどの制御を行う。
【0060】
次いで、処理部100は、血管硬度パラメーターの校正を実行するか否かを判定する(ステップA5)。例えば、被検者によって校正の実行開始ボタンが押下されたか否かを判定する。そして、実行すると判定したならば(ステップA5;Yes)、記憶部800に記憶されている血管硬度パラメーター校正プログラム811に従って血管硬度パラメーター校正処理を行う(ステップA7)。
【0061】
図5は、血管硬度パラメーター校正処理の流れを示すフローチャートである。
先ず、血管径計測部120による頸動脈の血管径計測(収縮期血管径及び拡張期血管径の計測)を開始する(ステップB1)。そして、処理部100は、中心血圧計2から血圧の計測
値を入力するまで待機する(ステップB3)。血管径計測部120は、中心血圧計2による血圧計測が終了するまでの間、血管径を連続的に計測し、校正用データ820として記憶部800に記憶させる。
【0062】
第1入力部40を介して中心血圧計2から血圧の計測値を入力すると、血管径計測部120は、血管径の計測を終了する(ステップB5)。次いで、血管硬度パラメーター校正部140は、血管硬度パラメーターの値を校正する(ステップB7)。
【0063】
具体的には、中心血圧計2による血圧の計測が完了するまでの間に血管径計測部120により計測された血管径の代表値を決定する。代表値は平均値であってもよいし、中央値であってもよい。そして、血管径(収縮期血管径及び拡張期血管径)の代表値と、中心血圧計2による血圧(収縮期血圧及び拡張期血圧)の計測値とを用いて、血管硬度パラメーター(例えばスティフネスパラメーター「β」)を校正し、血管硬度パラメーターデータ830として記憶部800に記憶させる。これで、血管硬度パラメーター校正処理は終了となる。
【0064】
図4のメイン処理に戻り、血管硬度パラメーター校正処理を行った後、処理部100は、相関パラメーターの校正タイミングであるか否かを判定する(ステップA9)。相関パラメーターの校正タイミングは、血管硬度パラメーターの校正タイミングよりも短い時間間隔の経過タイミングとして定めておくことができる。
【0065】
超音波血圧計1によって血圧計測を常時行うことを考えた場合、被検者の頸部に装着する超音波プローブ10の装着位置は、被検者の身体動作によってずれることが想定される。頸動脈の血管径は均一ではなく、場所によって差があるため、頸動脈の血管径と血圧との相関特性は比較的短い周期で変化する可能性がある。そこで、毎日決められた時刻(例えば毎朝8時)に相関パラメーターの校正を実行することとし、この時刻に相当するタイミングを校正タイミングとして定めておくなどすればよい。
【0066】
相関パラメーターの校正タイミングであると判定したならば(ステップA9;Yes)、処理部100は、相関パラメーターの校正が必要であることを被検者に報知する所定の報知制御を行う(ステップA11)。例えば、被検者が所有している家庭用の血圧計を用いて相関パラメーターの校正の実行を促すように報知する所定の報知制御を行う。
【0067】
次いで、処理部100は、相関パラメーターの校正を実行するか否かを判定する(ステップA13)。例えば、被検者によって校正の実行開始ボタンが押下されたか否かを判定する。そして、実行すると判定したならば(ステップA13;Yes)、記憶部800に記憶されている相関パラメーター校正プログラム812に従って相関パラメーター校正処理を行う(ステップA15)。
【0068】
図6は、相関パラメーター校正処理の流れを示すフローチャートである。
先ず、血管径計測部120による頸動脈の血管径計測の計測を開始する(ステップC1)。ステップC1の血管径計測では、少なくとも頸動脈の拡張期血管径を計測すればよい。そして、処理部100は、加圧血圧計3から血圧の計測
値を入力するまで待機する(ステップC3)。血管径計測部120は、加圧血圧計3による血圧計測が終了するまでの間、血管径を連続的に計測し、校正用データ820として記憶部800に記憶させる。
【0069】
第2入力部60を介して加圧血圧計3から血圧の計測値を入力すると、血管径計測部120は、血管径の計測を終了する(ステップC5)。次いで、相関パラメーター校正部150は、相関パラメーターを校正する(ステップC7)。
【0070】
具体的には、加圧血圧計3による血圧の計測が完了するまでの間に血管径計測部120により計測された拡張期血管径の代表値を決定する。代表値は平均値であってもよいし、中央値であってもよい。そして、拡張期血管径の代表値と、加圧血圧計3によって計測された拡張期血圧とを相関パラメーターとし、相関パラメーターデータ840として記憶部800に記憶させる。これで、相関パラメーター校正処理は終了となる。
【0071】
図4のメイン処理に戻り、相関パラメーター校正処理を行った後、処理部100は、血圧の計測タイミングであるか否かを判定する(ステップA17)。血圧の計測タイミングは、例えば、所定時間間隔毎(例えば1時間毎)のタイミングとしてもよいし、被検者によって血圧計測の実行指示がなされたタイミングとしてもよい。
【0072】
血圧の計測タイミングであると判定した場合は(ステップA17;Yes)、血管径計測部120は頸動脈の血管径を計測して、記憶部800の血管径計測データ850に記憶させる(ステップA19)。
【0073】
次いで、中心血圧計測部130は、血管硬度パラメーターデータ830に記憶されている血管硬度パラメーターの校正値と、相関パラメーターデータ840に記憶されている相関パラメーターの校正値とにより定まる相関式から、ステップA19で計測された血管径を用いて中心血圧を推定する血圧推定処理を行い、推定した中心血圧を記憶部800の中心血圧計測データ860に記憶させる(ステップA21)。そして、処理部100は、推定した中心血圧を表示部300に表示させる(ステップA23)。
【0074】
その後、処理部100は、処理を終了するか否かを判定し(ステップA25)、処理を継続すると判定したならば(ステップA25;No)、ステップA1に戻る。また、処理を終了すると判定したならば(ステップA25;Yes)、メイン処理を終了する。
【0075】
3.作用効果
拡張期血圧は、中枢動脈でも末梢動脈でも値がほとんど変わらない性質がある。また、非侵襲で中枢動脈の血圧を計測することは困難であるが、非侵襲で末梢動脈の血圧を計測することは容易である。そこで、他動脈血圧組合せ計測として、中枢動脈の血管径計測を、末梢動脈の血圧の計測と組み合わせた末梢血圧組合せ計測を行う。そして、この末梢血圧組合せ計測の計測結果を用いて、中枢動脈の血管径から中心血圧を推定する血圧推定処理に係るパラメーターを校正する。これにより、血圧推定処理に係るパラメーターの校正を適切に行い、ひいては中心血圧を正しく推定することが可能となる。
【0076】
本実施形態では、第1校正において、同動脈血圧組合せ計測として、中枢動脈の血管径計測を、中枢動脈の血圧の計測と組み合わせた中心血圧組合せ計測を行う。そして、この中心血圧組合せ計測の計測結果を用いて、中枢動脈の血管硬度を表す血管硬度パラメーター(例えばスティフネスパラメーター「β」)を校正する。これにより、中心血圧を推定するための血圧推定処理に係るパラメーターを適正化することができる。
【0077】
また、本実施形態では、第2校正において、末梢血圧組合せ計測の計測結果を用いて、拡張期血管径と拡張期中心血圧との関係に係る相関パラメーター(例えば拡張期血圧「Pd」及び拡張期血管径「Dd」)を校正する。これにより、中心血圧を推定するための血圧推定処理に係るパラメーターを適正化することができる。
【0078】
4.変形例
本発明を適用可能な実施例は、上記の実施例に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは勿論である。以下、変形例について説明する。
【0079】
4−1.動脈
上記の実施形態では、第1の動脈を中枢動脈とし、第2の動脈を末梢動脈として、中枢動脈の起始部血圧を推定する血圧推定処理に係るパラメーターを校正する実施形態について説明した。しかし、第1の動脈及び第2の動脈として選択可能な動脈の組合せはこれに限られるわけではない。収縮期血圧が異なる値を示す動脈の組合せであれば、本発明を適用する意義がある。
【0080】
例えば、中枢動脈の一種である大動脈から枝分かれしている鎖骨下動脈を第1の動脈とし、橈骨動脈等の末梢動脈を第2の動脈として、鎖骨下動脈の血管径から鎖骨下動脈の血圧を推定する血圧推定処理に係るパラメーターを校正することとしてもよい。この場合は、鎖骨下動脈の血管径を計測する血管径計測を、同じく鎖骨下動脈の血圧計測と組み合わせた同動脈血圧組合せ計測を行う。鎖骨下動脈の血管径計測は、例えば超音波を利用することで実現可能であり、鎖骨下動脈の血圧計測は、例えばカテーテルを利用することで実現可能である。そして、この同動脈血圧組合せ計測の計測結果を用いて、鎖骨下動脈の血管硬度を表す血管硬度パラメーター(例えばスティフネスパラメーター)を校正する。
【0081】
また、上記の鎖骨下動脈の血管径を計測する血管径計測を、末梢動脈の血圧計測と組み合わせた他動脈血圧組合せ計測を行う。末梢動脈の血圧計測は、例えば加圧血圧計を用いて上腕部や手首部で血圧計測を行うことで実現可能である。そして、この他動脈血圧組合せ計測の計測結果を用いて、鎖骨下動脈の拡張期血管径と鎖骨下動脈の拡張期血圧との関係に係る相関パラメーターを校正する。
【0082】
4−2.血管断面指標値
上記の実施形態では、血管径を血管断面指標値とする場合の実施形態について説明したが、血管断面積を血管断面指標値としてもよい。血管断面積と血圧との相関特性は、式(1)において血管径「D」を血管断面積「S」に置き換えることで同様に定義することができる。血管断面積は、例えば、Bモード画像からトレースして求めたり、カラードップラー法の血流表示から求めるなどすることができる。
【0083】
4−3.血管径の計測方法
上記の実施例では、血管径の計測方法を、超音波を利用した計測方法として説明したが、血管径の計測方法はこれに限られないことは勿論である。例えば、発光素子から所定波長の光を対象動脈に向けて照射した際の対象動脈からの反射光を受光し、信号処理することで、対象動脈の血管径を計測する手法を採用してもよい。
【0084】
4−4.中心血圧計測装置
上記の実施例では、自由行動下にある被検者が、個人で中心血圧を計測することを目的とした中心血圧計測装置の実施例を説明したが、本発明を適用可能な中心血圧計測装置はこれに限られない。例えば、医療用の中心血圧計測装置として、横たわった状態の被検者に対して技師が超音波プローブを用いて超音波診断を行う装置に適用することも可能である。
【0085】
4−5.外部の血圧計測装置
上記の実施例では、橈骨動脈の脈波から中心血圧を推定する中心血圧計を用いて中枢動脈の血圧(中心血圧)を計測する場合を例に挙げて説明したが、他の手法を利用して中心血圧を推定する装置としてもよい。また、中枢動脈の血圧計測を非侵襲的な手法を用いて行うのではなく、例えば頸部にカテーテルを挿入するといった侵襲式の手法を用いて行うこととしてもよい。
【0086】
また、上記の実施例では、カフ型の加圧血圧計を例に挙げて説明したが、末梢動脈の血圧を計測する血圧計測装置もこれに限られるわけではない。例えば、連続法の一種であるトノメトリー法や容積補償法を用いて血圧を計測する血圧計測装置としてもよいし、間欠法の一種である聴診法(コロトコフ法)を用いて血圧を計測する血圧計測装置としてもよい。
【0087】
4−6.相関特性
上記の実施形態では、血管径と血圧との相関特性を表す相関式として、式(1)で表される相関式を適用する場合を例に挙げて説明した。しかし、式(1)の相関式は一例として記載したものに過ぎず、これ以外の相関式を適用することとしてもよいのは勿論である。相関式の種類は線形/非線形を問わない。
【0088】
例えば、血管径と血圧とを線形の関係で近似した相関式として、次式(2)で表される相関式を適用することとしてもよい。
P=E×D+B・・・(2)
但し、E=(Ps−Pd)/(Ds−Dd)
B=Pd−E×Dd
【0089】
ここで、「Ps」は収縮期血圧であり、「Pd」は拡張期血圧である。また、「Ds」は収縮期血管径であり、「Dd」は拡張期血管径である。また、「E」は血管硬度を表す指標値であり、「B」は相関式の切片である。
【0090】
式(2)で表される相関式を適用する場合には、血管硬度を表す指標値「E」を血管硬度パラメーターとし、相関式の切片「B」を相関パラメーターとして、上記の実施形態と同様に中心血圧推定パラメーターの校正を行えばよい。
【0091】
なお、記憶部800には、必ずしも相関式のデータを記憶させる必要はなく、テーブル形式で血管断面指標値(血管径又は血管断面積)と血圧との相関特性を定めたデータ(ルックアップテーブル)を記憶させることとしてもよい。
【0092】
4−7.通信方式
上記の実施例では、超音波血圧計1と外部の血圧計測装置(中心血圧計2や加圧血圧計3)との接続を有線によって行ったが、超音波血圧計1と外部の血圧計測装置とにそれぞれ無線通信部を設けることとし、無線通信を利用して、外部の血圧計測装置から血圧の計測値を取得する構成としてもよい。
【0093】
4−8.校正タイミング
上記の実施例で説明した血管硬度パラメーターの校正タイミングや相関パラメーターの校正タイミングは一例であり、適宜設定変更可能である。例えば、急激な気温の変化により、被検者の対象動脈の性状が変化する場合がある。そこで、血圧計測時の気温を記憶することとし、前回計測時の気温と今回計測時の気温の差が所定の閾値を超えたタイミングを、血管硬度パラメーターの校正タイミングとするなどしてもよい。
【0094】
4−9.校正方法
(1)校正の手順
上記の実施形態では、第1校正として血管硬度パラメーターの校正を行い、第2校正として相関パラメーターの校正を行うものとして説明したが、これを次のようにしてもよい。
【0095】
第1校正において血管硬度パラメーターを校正するとともに、中枢動脈の拡張期血管径及び中枢動脈の拡張期血圧を用いて、相関パラメーターを初期設定する。そして、血管硬度パラメーターの校正値と相関パラメーターの初期設定値とを用いて、相関式を定める。
【0096】
第2校正では、中枢動脈の拡張期血管径の計測結果と、末梢動脈の拡張期血圧の計測結果とを用いて、相関パラメーターを校正する。そして、相関パラメーターの校正値でなる座標上の点を通るように、第1校正で定めた相関式をシフトさせることで、相関式を決定・校正する。
【0097】
(2)血管硬度パラメーターの設定
中心血圧組合せ計測を省略し、血管硬度パラメーターについては所与の値を設定することとしてもよい。具体的には、例えば、被検者の年齢や性別、身体データ等に基づいて、血管硬度パラメーターの平均的な値を予めデータベース化しておく。そして、被検者に上記のデータを入力させ、入力データに対応する血管硬度パラメーターの値をデータベースから読み出して設定することで、血管硬度パラメーターの校正を行うこととしてもよい。
【0098】
(3)血管硬度パラメーターの校正処理
血管硬度パラメーターの校正処理を、血管硬度パラメーターの校正を精細に行うための処理と、簡易的に行うための処理との2つに分けて、これらの処理を切り替えて血管硬度パラメーターの校正を行うようにしてもよい。
【0099】
図7は、この場合に超音波血圧計1の処理部100が、
図4のメイン処理に代えて実行する第2メイン処理の流れを示すフローチャートである。なお、メイン処理と同一のステップについては同一の符号を付して再度の説明を省略し、メイン処理とは異なる部分を中心に説明する。
【0100】
ステップA5において血管硬度パラメーターの校正を実行すると判定したならば(ステップA5;Yes)、処理部100は、実行する校正の種別を判定する(ステップD6)。校正の種別としては、中心血圧組合せ計測を行って血管硬度パラメーターを校正する「精細校正」と、中心血圧組合せ計測を行わずに血管硬度パラメーターを校正する「簡易校正」との2種類を定めておくことができる。
【0101】
被検者によって精細校正の実行が選択されたならば(ステップD6;精細校正)、処理部100は、
図5で説明した血管硬度パラメーター校正処理を実行する(ステップA7)。この校正処理では、中心血圧組合せ計測を行うことによって血管硬度パラメーターを校正するため、いわば精細な校正が実現可能であると言える。
【0102】
それに対し、被検者によって簡易校正の実行が選択されたならば(ステップD6;簡易校正)、処理部100は、血管硬度パラメーター簡易校正処理を行う(ステップD8)。この校正処理では、例えば「(2)血管硬度パラメーターの設定」で説明したように、予めデータベース化された血管硬度パラメーターの値を用いて血管硬度パラメーターを校正する。この校正では、中心血圧組合せ計測を行わずに所与の値を設定することによって血管硬度パラメーターを校正するため、いわば簡易的な校正が実現可能であると言える。