(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0004】
上記特許文献1に記載の波動歯車装置によれば、外歯車の歯が内歯車に1枚置きに噛み合うので、外歯車及び内歯車の歯のうち同時に噛み合う歯の数が少ない。そのため、波動歯車装置の出力トルクが小さい。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、外歯車の耐久性を向上させ、かつ出力トルクを大きくした波動歯車装置を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、内歯車(13,25)と、内歯車の内側に配置され、環状に形成された外歯車(18,28)と、外歯車の内側に配置され、外歯車を撓ませて、内歯車と外歯車とを部分的に噛み合わせるとともに、回転駆動されることにより内歯車と外歯車とが噛み合う部分を内歯車及び外歯車の周方向に移動させる波動発生器(19)と、外歯車の回転に伴って回転するように外歯車に係合する出力軸(SO)と、を備えた波動歯車装置(10,20)であって、外歯車は、環状に形成されたリム(R1,R2)を有し、リムの外周に歯が一体的に形成され、
リムの内周面の部分であって、リムの外周に形成された歯の反対側に位置する部分に、リムの外周に形成された歯の歯幅方向に平行に延びる溝部(18a,28a)が形成されていることにある。
【0007】
一般に、波動歯車装置の外歯車は、内側に配置された波動発生器によって撓められる。この撓み量を大きくするため、外歯車のリムの径方向の肉厚は、その外周面に設けられる歯の歯丈と同等、又は歯丈よりも小さいことが好ましい。したがって、リムの外周面に歯が設けられている部分と歯が設けられていない部分とでは、周方向に垂直な断面の形状及び大きさが大きく異なる。一般に、断面の形状及び大きさが大きく変化する部分(境界)の付近には、応力が集中し易い。本発明によれば、リムの外周面のうち歯が形成された部分とは反対側の内周面の部分に歯幅方向に延びる溝部を設けたので、歯が設けられている部分の径方向の肉厚と、歯が設けられていない部分の径方向の肉厚の差を小さくすることができる。すなわち、外歯車の周方向に垂直な断面の形状及び大きさは、外歯車の周方向に沿って周期的に変化するが、その変化量が小さい。これにより、リムの内周面に溝部が設けられていない場合と比較すると、応力を分散させて、応力集中を緩和できる。したがって、外歯車の耐久性を向上させることができる。また、本発明によれば、従来技術のように歯を間引いていない。よって、高出力で且つ外歯車の耐久性が向上した波動歯車装置が提供される。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、外歯車が、歯幅方向における端部から歯幅方向に沿って突出するとともに、出力軸に係合する突出部(28b)を有することにある。この場合、出力軸は、軸部(SO)と、軸部に一体回転可能に形成され外周に歯が形成された出力歯車部(271)とを有し、突出部が出力歯車部の歯に係合しているとよい。さらに、出力歯車部が外歯車に隣接して同軸配置されており、突出部が出力歯車
部の軸方向から出力歯車
部の歯のうち隣接する歯と歯の間に侵入し、侵入した突出部が出力歯車
部の歯面に係合するように構成されているとよい。
【0009】
例えば、従来の一般的なフラット型の波動歯車装置によれば、出力軸と一体的に構成された内歯車又は出力軸に組み付けられた内歯車が外歯車に噛み合っている。すなわち、出力軸と一体的に構成された内歯車又は出力軸に組み付けられた内歯車が外歯車の外周を覆うように構成されている。これに対し、本発明によれば、外歯車の端面(歯幅方向における端面)から歯幅方向に突出した突出部が出力軸に係合する。したがって、出力軸(又は出力軸に連結された部分)が外歯車の外周を覆う必要が無いので、出力軸の外径を外歯車の外径とほぼ同等にすることができる。これにより、波動歯車装置を小型化できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る波動歯車装置10について説明する。波動歯車装置10は、
図1に示すように、一般にフラット型と呼ばれるタイプであるが、本発明は、カップ型、シルクハット型と呼ばれるタイプの波動歯車装置にも適用可能である。波動歯車装置10は、波動歯車装置10の外郭を構成するハウジング11を有する。このハウジング11は、駆動源側に位置する駆動源側ハウジング12と負荷側に位置する負荷側ハウジング15を備えている。駆動源側ハウジング12からは駆動源に接続される入力軸SIが突出し、負荷側ハウジング15からは負荷に接続される出力軸SOが突出している。駆動源からの駆動力が入力軸SIから波動歯車装置10に入力され、波動歯車装置10で減速されるとともに出力軸SOから出力される。入力軸SIと出力軸SOは、同一直線上であってそれぞれ反対の方向に突出する。以下、入力軸SI及び出力軸SOの突出方向を軸線方向と呼び、入力軸SIが突出する側を駆動源側と呼び、出力軸SOが突出する側を負荷側と呼ぶ。
【0012】
図2及び
図3に示すように、駆動源側ハウジング12は、リング状に形成されている。駆動源側ハウジング12の内周面には、内歯車13が一体的に形成されている。内歯車13はその回転軸方向が軸線方向に一致するように配置される。また、駆動源側ハウジング12の駆動源側の端面には、入力軸SIを回転可能に支持する軸受部14が一体的に形成されており、負荷側の端面は開口している。
【0013】
次に、内歯車13の歯の歯形について説明する。
図4に示すように、内歯車13の歯の歯厚は、内歯車13の径方向(歯の歯丈方向)における外側(歯底側)から内側(歯先側)へ向かうに従って減少している。そして、その歯厚の減少率は、内歯車13の歯における径方向外側(歯底側)の端部寄りに位置する第1部分131においては一定であるが、第1部分131の径方向内側(歯先側)の端部に連続する第2部分132及び第2部分132の径方向内側(歯先側)の端部に連続する第3部分133においては径方向外側から内側へ向かうに従って増大している。すなわち、第1部分131の歯面は平面であり、第2部分132及び第3部分133の歯面は凸状の円弧面である。第2部分132の歯面の曲率半径は、第3部分133の歯面の曲率半径よりも大きい。例えば、第2部分132の歯面の曲率半径は、1.5mmであり、第3部分133の歯面の曲率半径は、0.3mmである。
【0014】
負荷側ハウジング15は、有底円筒状に形成されていて、底面を形成する円板部分の中央には、出力軸SOを回転可能に支持する円筒状の軸受部16が一体的に形成されている。
【0015】
上記構成の駆動源側ハウジング12の開口面と負荷側ハウジング15の開口面が対面するように両者が付き合わされ、その状態でボルト等の締結部材で両者が締結されることによりハウジング11が形成される。このようなハウジング11の内側に、カップリング歯車17、外歯車18及び波動発生器19が収納される。カップリング歯車17、外歯車18及び波動発生器19は回転する部材であり、それぞれの回転中心軸線が同一直線上に位置するように、ハウジング11内に収納される。
【0016】
カップリング歯車17は、円筒状の側周部17aと、側周部17aの一方の端面を塞ぐように設けられた円板部17bとを有し、側周部17aの内周面に歯が形成されている。すなわち、カップリング歯車17は内歯車であり、その径は内歯車13と同径である。カップリング歯車17の円板部17bの負荷側を向いた面の中心部分から出力軸SOが突出して形成されている。このようなカップリング歯車17は、その開口面を内歯車13に向かい合わせた状態で、且つその回転軸方向が軸線方向に一致するように、ハウジング11内に収められている。カップリング歯車17がハウジング11に収められた状態では、出力軸SOが軸受部16に回転可能に支持されるとともに負荷側ハウジング15から突出する。
【0017】
外歯車18は、環状に形成されたリムR1を備え、リムR1の外周面に歯が一体的に形成されている。この外歯車18は、その回転軸方向が軸線方向に一致し、且つ内歯車13の内周側及びカップリング歯車17の内周側に共に亘るように、これらの内部に収められている。したがって、外歯車18の歯の負荷側寄りの部分がカップリング歯車17の歯に噛み合い可能であり、駆動源側の部分が内歯車13の歯に噛み合い可能である。
【0018】
次に、外歯車18の歯の歯形について説明する。
図5に示すように、外歯車18の歯は、歯底面から外歯車18の径方向(歯の歯丈方向)における外側(歯先側)に向けて形成された第1部分181と、第1部分181の径方向外側(歯先側)の端部に連続する第2部分182とを有する。両部分の接続位置(境界位置)は、外歯車18の歯の径方向(歯の歯丈方向)における中央部Oよりも外側(歯先側)の位置である。したがって、第1部分181の歯丈方向長さは第2部分182の歯丈方向長さよりも長い。第1部分181の歯厚は、外歯車18の径方向内側(歯底側)から外側(歯先側)へ向かうに従って減少している。そして、その歯厚の減少率は、径方向内側(歯底側)から外側(歯先側)へ向かうに従って減少している。一方、第2部分182の歯厚は径方向内側から外側へ向かうに従って減少し、歯厚の減少率は径方向内側(歯底側)から外側(歯先側)へ向かうに従って増大している。第1部分181の歯面は、凹状の円弧面であり、その曲率半径は、歯丈に比べて十分に大きい。第1部分181の歯面の曲率半径は、歯丈の2倍以上であるとよい。本実施形態においては、外歯車18の歯の歯丈は3.4mmであり、第1部分181の曲率半径は6.8mmである。また、第2部分182の歯面は、凸状の円弧面である。第1部分181の曲率半径は、内歯車13の第2部分132の曲率半径よりも大きい。
【0019】
内歯車13の歯の第1部分131の径方向中間部(歯先寄りの部分)から第2部分132の径方向中間部(歯元寄りの部分)に亘る領域B(
図4参照)内の部分が、外歯車18の第1部分181の径方向外側の端部側の領域、すなわち第1部分181の歯先側の領域A内の部分に当接するように、外歯車18が内歯車13に対して設計されている。第1部分181が本発明の歯厚減少部に相当する。領域Aは、第1部分181のうち外歯車18の歯の径方向における中央部(歯丈の中央部)Oよりも径方向外側(歯先側)に位置している。内歯車13の歯の領域B内の部分が領域A内の部分に当接している状態を内歯車13の歯と外歯車18の歯が噛み合っている状態という。外歯車18の歯と内歯車13の歯とが噛み合った状態において、外歯車18の歯の歯底面と内歯車13の歯の歯先面との間には、比較的大きなクリアランス(例えば、1mm)が形成される。
【0020】
また、外歯車18のリムR1の内周面には、リムR1の外周面に形成された歯の歯幅方向に延びる溝18aが形成されている。この溝18aは、リムR1の外周面のうち歯が形成されている部分とは反対側の内周面の部分に形成されている。したがって、外歯車18の歯数と同数の溝18aが形成されている。このような外歯車18の内側に波動発生器19が嵌め込まれる。外歯車18は可撓性を有しており、次に説明するように、波動発生器19によって楕円状に撓められる。
【0021】
波動発生器19は、円板状に形成された回転板19aを有する。回転板19aはその回転軸方向が軸線方向に一致するように配置される。回転板19aの駆動源側を向いた面の中央部には、入力軸SIが形成されている。入力軸SIは軸受部14に回転可能に支持される。入力軸SIを回転させると回転板19aが回転する。また、回転板19aの負荷側を向いた面には、軸19b,19bが設けられている。軸19b,19bは、回転板19aの中心を挟むような位置に設けられていて、回転板19aから各軸19bまでの距離は等しい。したがって、回転板19aが回転したときに、これらの軸19b,19bは同一軌跡上を回転する。軸19b,19bには、ローラ19c,19cが組み付けられている。ローラ19c,19cは、軸19b,19b周りに回転可能である。ローラ19c,19cの一部が回転板19aの外周面よりも外側に少し突出している。
【0022】
外歯車18に波動発生器19が嵌め込まれていない状態では、外歯車18は円環状である。外歯車18に波動発生器19が嵌め込まれると、ローラ19c,19cにおける回転板19aの外周面よりも外側に突出した部分が外歯車18の内周面に当接し、外歯車18は楕円状に撓められる。楕円状に撓められた外歯車18の長軸上に位置する歯及びその周辺に位置するいくつかの歯が、内歯車13及びカップリング歯車17の歯に噛み合う。
【0023】
外歯車18の歯数とカップリング歯車17の歯数は同一である。これに対して、内歯車13の歯数は外歯車18の歯数よりも2×n枚(nは正の整数)多い。
【0024】
上記構成の波動歯車装置10において、駆動源からの回転駆動力により入力軸SIが回転すると、回転板19aも回転する。回転板19aの回転によって、回転板19aに軸19b,19bを介して取り付けられているローラ19c,19cが、回転板19aの中心回りを回転する。ローラ19c,19cがこのように回転することによって、楕円状に撓められている外歯車18の長軸部分が移動(回転)する。これにより、外歯車18と内歯車13との噛み合い部、及び、外歯車18とカップリング歯車17との噛み合い部が周方向に移動する。このとき内歯車13の歯は、外歯車18の歯の第1部分181のうち径方向外側(歯先側)に位置する領域Aに噛み合う。そして、外歯車18と内歯車13の歯数差に基づいて外歯車18が内歯車13に対して回転する。一方、外歯車18の歯数はカップリング歯車17の歯数と同一であるので、カップリング歯車17は外歯車18に対して回転しない。つまり、内歯車13に対して外歯車18及びカップリング歯車17が相対回転する。このため、入力軸SIの回転が減速されるとともにその回転がカップリング歯車17に接続された出力軸SOに伝達される。本実施形態においては、外歯車18及びカップリング歯車17の歯数は70枚であり、内歯車13の歯数は72枚である。したがって、波動歯車装置10の減速比は、1:35である。
【0025】
内歯車13と外歯車18とが噛み合っているときには、
図6に示すように、内歯車13及び外歯車18の接点Pにて外歯車18の歯の径方向軸Cと平行な方向に押し付け力Fが作用する。押し付け力Fは、接点Pにおける外歯車18の接線Lに垂直な方向に作用する力Fhと、径方向軸Cに垂直な方向に作用する力Frとの合力とみなすことができる。出力軸SOから取り出される波動歯車装置10の出力トルクは、外歯車18の歯のうち内歯車13に噛み合っている各歯に作用している力Frと出力軸SOから接点Pまでの距離との積の総和に比例する。力Frは、押し付け力Fを、接点Pにおける接線Lと外歯車18の歯の歯丈方向に沿った径方向軸Cとのなす角αの正接で除すことにより求められる(Fr=F/tanα)。したがって、前記各歯における角度αが小さいほど、波動歯車装置10の出力トルクが大きい。
【0026】
図7に示す従来の外歯車のように、内歯車の歯に当接する部分の歯面が凸面状に形成されている場合には、内歯車の歯と外歯車の歯との接点Pが外歯車の歯底面に近いほど、径方向軸Cに対する歯面の傾斜角度が小さくなるため角度αは小さくなる。つまり、上記従来の波動歯車装置によれば、外歯車の歯の歯底面に近い部分に内歯車の歯を当接させなければ大きなトルクを得ることができない。これに対し、本実施形態の波動歯車装置10によれば、外歯車18の歯のうち第1部分181の歯厚は、外歯車18の径方向内側(歯底側)から外側(歯先側)へ向かうに従って減少し、その減少率は、径方向内側から外側へ向かうに従って減少している。すなわち、第1部分181の歯面は凹面状に形成されている。そのため、内歯車13の歯と外歯車18の歯との接点Pが外歯車18の歯先側に近いほど、径方向軸Cに対する歯面の傾斜角度が小さくなるため角度αは小さくなる。つまり、内歯車13の歯と外歯車18の歯との接点Pが第1部分181のうち歯先寄りの部分である領域Aに位置していれば、角度αは十分に小さい。したがって、本実施形態のように、領域Aにて内歯車13の歯を当接させることにより大きな出力トルクを得ることができる。
【0027】
また、領域Aの歯面の曲率半径は、外歯車18の歯の歯丈よりも十分に大きい。そのため、領域Aにおける接点Pの位置が多少変化しても、角度αの変化量が小さい。したがって、領域Aにおける径方向内側端部に内歯車13の歯が当接したときであっても、領域Aにおける径方向外側端部に内歯車13の歯が当接したときとほぼ同等の大きさの力Frを外歯車18の歯に作用させることができる。
【0028】
また、領域Aが、外歯車18の歯の径方向中央部(歯丈の中央部)Оよりも外周側(歯先側)に形成されているので、外歯車18の撓み量が小さくても、外歯車18の歯が内歯車13の歯を跨ぐ際に両者が干渉することを防止できる。したがって、本実施形態によれば、高出力で、且つ外歯車18の耐久性を向上させた波動歯車装置10を提供することができる。
【0029】
また、上記のように、波動歯車装置10においては角度αが小さいので、仮令内歯車13及び外歯車18の製造精度が低く、角度αの大きさが設計値とは多少異なっても、力Fr(=F/tanα)の大きさに与える影響が少ない。したがって、角度αが大きい場合に比べて、出力トルクにバラつきが生じ難い。そのため、内歯車13及び外歯車18が比較的軟質の材料(樹脂、硬質ゴムなど)で構成されていて、それらの製造精度を高く保つことが困難であっても、出力トルクのバラつきを抑制できる。
【0030】
また、内歯車13の歯の第2部分132及び第3部分133、並びに外歯車18の歯の第1部分181の歯面は円弧面である。このように、内歯車13及び外歯車18の歯の歯面の形状は比較的単純であるので、内歯車13及び外歯車18を簡単に製造できる。
【0031】
また、外歯車18は、環状に形成されたリムR1を有し、このリムR1の外周に歯が一体的に形成され、リムR1の外周面のうち歯が形成されている部分と反対側の内周面の部分に、歯の歯幅方向に平行に延びる溝部18aが形成されている。本実施形態において溝18aの断面は半円形であり、最も深い部位が、外歯車の中心から歯先の中心を結ぶ線上に位置するように、溝18aが形成されている。すなわち、リムR1の外周に形成された歯の中心と、リムR1の内周に形成された溝部18aの中心が、外歯車18の径方向に沿うように、歯と溝部18aとの位置関係が定められている。
【0032】
一般に、断面形状及び大きさが大きく変化する部分(境界)の付近には、応力が集中し易い。本実施形態においては上記のような溝部18aを外歯車18に形成したので、外歯車18の周方向に沿った肉厚(径方向における長さ)の変化量が少なくなる。すなわち、外歯車18の周方向に垂直な断面の形状及び大きさが、外歯車18の周方向に沿って緩やかに変化している。したがって、外歯車18が波動発生器19により撓められた際に、応力が分散されて、応力集中が緩和される。それゆえ、外歯車18の耐久性が向上する。また、本実施形態の外歯車18は従来技術のように歯を間引いていない。よって、本実施形態によって、高出力で且つ外歯車の耐久性が向上した波動歯車装置が提供される。
【0033】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る波動歯車装置20について説明する。波動歯車装置20も、第1実施形態の波動歯車装置10と同様に、一般にフラット型と呼ばれるタイプである。
図8に示すように、波動歯車装置20は、その外郭を構成するハウジング21を有する。ハウジング21は、駆動源側に位置する駆動源側ハウジング22と負荷側に位置する負荷側ハウジング24を備えている。駆動源側ハウジング22からは駆動源に接続される入力軸SIが突出し、負荷側ハウジング24からは負荷に接続される出力軸SOが突出している。駆動源からの駆動力が入力軸SIから波動歯車装置20に入力され、波動歯車装置20で減速されるとともに出力軸SOから出力される。入力軸SIと出力軸SOは、同一直線上であってそれぞれ反対の方向に突出する。以下、入力軸SI及び出力軸SOの突出方向を軸線方向と呼び、入力軸SIが突出する側を駆動源側と呼び、出力軸SOが突出する側を負荷側と呼ぶ。
【0034】
図9及び
図10に示すように、駆動源側ハウジング22は、有底円筒状に形成されていて、底面を形成する円板部分の中央には、入力軸SIを回転可能に支持する軸受部23が一体的に形成されている。駆動源側ハウジング22の負荷側の端面には、径外方に広がるフランジ部が設けられている。
【0035】
負荷側ハウジング24は、リング状に形成されている。負荷側ハウジング24の内周面には、内歯車25が一体的に形成されている。内歯車25の歯の歯形は、第1実施形態で説明した内歯車13の歯の歯形と同様である。負荷側ハウジング24の負荷側の端面には、出力軸SOを回転可能に支持する軸受部26が一体的に形成されており、駆動源側の端面は開口している。
【0036】
上記構成の負荷側ハウジング24の開口面が駆動源側ハウジング22のフランジ部に対面するように両者が付き合わされ、その状態でボルト等の締結部材で両者が締結されることにより、ハウジング21が形成される。このようなハウジング21内には、出力歯車27、外歯車28及び波動発生器19が収納される。出力歯車27、外歯車28及び波動発生器19は回転する部材であり、それぞれの回転中心軸線が、同一直線上に位置するようにハウジング21内に収納される。以下、出力歯車27及び外歯車28の構成について説明する。波動発生器19の構成は、第1実施形態において説明した通りである。
【0037】
出力歯車27は、軸部としての出力軸SOと、出力歯車部としての歯車部271とを有する外歯車である。出力歯車27は、内歯車25の内側に配置されている。出力歯車27の歯車部271の負荷側を向いた面の中心部に出力軸SOが一体的に形成されている。
図12に示すように、歯車部271の歯底面は凹状の円弧面である。歯車部271の歯の歯面は、歯底面の両端から径方向外方に延び、径方向に平行に形成される。出力歯車27は、その回転軸方向が軸線方向に一致し、且つ、内歯車25に干渉しないように、ハウジング21に収められている。つまり、出力歯車27の歯車部271の歯先円径が、内歯車25の歯先円径よりも小さい。出力歯車27がハウジング21に収められた状態では、出力軸SOが軸受部26に回転可能に支持されるとともに、負荷側ハウジング24から突出する。
【0038】
外歯車28も、出力歯車27と共に内歯車25の内側に配置されている。具体的には、出力歯車27の歯車部271と外歯車28が隣接して同軸配置するように、内歯車25の内側に収められている。外歯車28は、環状に形成されたリムR2を備え、リムR2の外周面に歯が一体的に形成されている。この外歯車28は、その回転軸方向が軸線方向に一致するように内歯車25の内側に収められている。外歯車28の歯の歯形は、第1実施形態で説明した外歯車18の歯の歯形と同様である。また、外歯車28の内周面には、外歯車18の溝部18aと同様の溝部28aが設けられている。また、
図11及び
図12に示すように、外歯車28の歯の歯幅方向における一方の端面(外歯車28が波動歯車装置2に組み付けられている状態では負荷側の端面)には、負荷側に突出した突出部28bが形成されている。
【0039】
突出部28bは、外歯車28を部分的に外歯車28の回転軸方向(歯幅方向)に延ばしたように構成されている。突出部28bは、重複しないように選択された周方向に隣り合う2つの歯のそれぞれの歯厚方向中央部間の領域を負荷側に突出させたように構成されている。したがって、突出部28bの突出方向に垂直な断面形状は、
図12に示すように、略V字型を呈する。このような形状の突出部28bが、外歯車28の周方向に亘り間隔をおいて複数個設けられている。隣り合う突出部28bの間隔は、外歯車28の1歯分の長さに相当する。したがって、突出部28bの総数は、外歯車28の歯数の半分である。
【0040】
突出部28bは、出力歯車27の隣り合う歯と歯の間に、駆動源側から負荷側へ向かって侵入し、出力歯車27の歯面に係合する。これにより、外歯車28と出力歯車27が噛み合っており、外歯車28が出力軸SOに連結されている。また、外歯車28の内側には波動発生器19が嵌め込まれる。外歯車28は、可撓性を有しており、外歯車18と同様に、波動発生器19によって楕円状に撓められる。そして、楕円状に撓められた外歯車28の長軸上に位置する歯及びその周辺に位置するいくつかの歯が、内歯車25に噛み合う。
【0041】
出力歯車27の歯数は、外歯車28の歯数の半分である。内歯車25の歯数は外歯車28の歯数よりも2n枚(nは正の整数)多い。
【0042】
上記構成の波動歯車装置20において、駆動源からの回転駆動力により入力軸SIが回転すると、回転板19aも回転する。回転板19aの回転によって、回転板19aに軸19b,19bを介して取り付けられているローラ19c,19cが、回転板19aの中心回りを回転する。ローラ19c,19cがこのように回転することによって、楕円状に撓められている外歯車28の長軸部分が移動(回転)する。これにより、外歯車28と内歯車25との噛み合い部が周方向に移動する。このとき外歯車28と内歯車25の歯数差に基づいて、外歯車28が内歯車25に対して相対的に回転する。
【0043】
また、出力歯車27は、外歯車28の回転駆動力を受けて、外歯車28と同じ様に内歯車25に対して相対回転する。なお、波動歯車装置20の作動中に楕円状に撓められた外歯車28の長軸付近に位置する突出部28bは、出力歯車27の歯車部271の歯に対して歯先側に位置し、歯車部271の歯の歯面に対面していない。このため、この部分の突出部28bは歯車部271に噛み合っていない。しかしながら、それ以外の部位に位置する突出部28b(特に、楕円状に撓められた外歯車28の短軸付近に位置する突出部28b)は、出力歯車27の歯車部271の歯の歯面に対面している。したがって、大部分の突出部28bが出力歯車27の歯車部271の歯に噛み合う。この噛み合いにより出力歯車27が内歯車25に対して相対回転する。
【0044】
出力歯車27の相対回転により、入力軸SIの回転が減速されて出力軸SOに伝達される。本実施形態においては、出力歯車27の歯数は35枚であり、外歯車28の歯数は70枚である。また、内歯車25の歯数は72枚である。したがって、波動歯車装置20の減速比は、1:35である。
【0045】
上記のように構成した波動歯車装置20によっても、波動歯車装置10と同様の効果が得られる。特に、外歯車28のリムR2の内周面には、溝28aが形成されているので、外歯車28が波動発生器19により撓められた際に応力が分散され、応力集中が緩和される。このため外歯車28の耐久性が向上する。よって、高出力で且つ外歯車の耐久性が向上した波動歯車装置20が提供される。
【0046】
さらに、波動歯車装置20によれば、次のような効果も得られる。第1実施形態の波動歯車装置10のカップリング歯車17は外歯車18に噛み合う内歯車であるので、その外径は外歯車18の外径(長軸)よりも大きい。これに対し、波動歯車装置20の出力歯車27は外歯車である。また外歯車28は突出部28bを有し、突出部28bが出力歯車27の歯と歯の間に、駆動源側から負荷側に向かって侵入することにより、外歯車28と出力歯車27が噛み合っている。つまり、外歯車同士が突出部28bを介して係合(噛合)している。そのため、出力歯車27の外径を外歯車28の外径とほぼ同等にすることができる。したがって、これらの歯車を収容するハウジングの径、特に本実施形態では負荷側ハウジング24の外径を、上記第1実施形態で示した負荷側ハウジング15の外径よりも小さくすることができる。