特許第6028963号(P6028963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028963
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】高分子電解質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/02 20060101AFI20161114BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20161114BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20161114BHJP
   H01M 8/02 20160101ALN20161114BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20161114BHJP
【FI】
   C08G61/02
   H01B13/00 Z
   H01B1/06 A
   !H01M8/02 P
   !H01M8/10
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-128344(P2012-128344)
(22)【出願日】2012年6月5日
(65)【公開番号】特開2013-253142(P2013-253142A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年5月13日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構固体高分子形燃料電池実用化戦略的技術開発/劣化機構解析とナノテクノロジーを融合した高性能セルのための基礎的材料研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(73)【特許権者】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早野 哲二
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 政廣
(72)【発明者】
【氏名】宮武 健治
【審査官】 岸 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−190237(JP,A)
【文献】 特開2013−221086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/02
H01B 1/06
H01B 13/00
H01M 8/02
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子電解質溶液と第一の酸を混合して、高分子電解質を析出させる工程、および、
析出した高分子電解質を第一の酸とは異なる第二の酸で洗浄する工程
を含むことを特徴とする高分子電解質の製造方法であって、
高分子電解質がスルホン酸基を有する親水性セグメントとスルホン酸基を有さない疎水性セグメントからなる共重合体である高分子電解質の製造方法
【請求項2】
第一の酸及び第二の酸がそれぞれ第一の酸の溶液及び第二の酸の溶液であって、第一の酸の溶液および第二の酸の溶液の濃度がいずれも0.1〜20Nである請求項1に記載の高分子電解質の製造方法。
【請求項3】
第一の酸の溶液を、高分子電解質100重量部に対して10〜10000重量部使用する請求項2に記載の高分子電解質の製造方法。
【請求項4】
第二の酸の溶液を、高分子電解質100重量部に対して10〜10000重量部使用する請求項2に記載の高分子電解質の製造方法。
【請求項5】
第一の酸が硫酸であり、第二の酸が塩酸である請求項1〜4のいずれかに記載の高分子電解質の製造方法。
【請求項6】
前記高分子電解質が、少なくとも下記式(1)
【化1】
(式中、Arはベンゼン環、ナフタレン環、またはそれらの環を形成する炭素がヘテロ原子へと置換されたものを示し、Xは水素または陽イオンを示す。aおよびbは、それぞれ0〜4の整数である。また、a+bは1以上である。mは1以上の整数を示し、nは0以上の整数を示す。)
で示される構造を有する請求項1〜5のいずれかに記載の高分子電解質の製造方法。
【請求項7】
前記高分子電解質が、下記式(2)
【化2】
(式中、Arはベンゼン環、ナフタレン環、またはそれらの環を形成する炭素がヘテロ原子へと置換されたものを示す。mは1以上の整数を示し、nは0以上の整数を示す。YはSO、C(CH、またはC(CFであり、Zは直接結合、酸素、または硫黄を示す。)および/または下記式(3)
【化3】
(式中、Ar、m、nは前記式(2)と同様である。YはCO、SO、C(CH、またはC(CFであり、Yとは異なる。Zは直接結合、酸素、または硫黄を示す。)
で示される構造を有し、式(2)で示される構造成分Aモルに対し、式(3)で示される構造成分Bモルが、B/(A+B)が0〜0.95を満たす、請求項1〜6のいずれかに記載の高分子電解質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子電解質の製造方法、および該製造方法により得られる高分子電解質に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロトン伝導性置換基を含有する高分子電解質は、燃料電池、湿度センサー、ガスセンサー、エレクトロクロミック表示素子などの電気化学素子の原料として使用される。これらの中でも、燃料電池は、新エネルギー技術の柱の一つとして期待されている。プロトン伝導性置換基を有する高分子電解質を使用する固体高分子形燃料電池は、低温における作動、小型軽量化が可能などの特徴から、自動車などの移動体、家庭用コージェネレーションシステム、および民間用小型携帯機器などへの適用が検討されている。例えば、メタノールを直接燃料に使用する直接メタノール型燃料電池は、単純な構造、燃料供給やメンテナンスの容易さ、高エネルギー密度などの特徴を有し、リチウムイオン二次電池代替として、携帯電話やノート型パソコンなどの民間用小型携帯機器への応用が期待されている。また、固体高分子形燃料電池(PEFC)は電気自動車や家庭用電源として適している。
【0003】
これらPEFCや直接型燃料電池(DMFC)は通常80℃以下の温度で運転されるが、高性能化のために、触媒活性、触媒被毒、廃熱利用の点から120℃以上かつ低加湿条件下で運転することが求められている。そのため、PEFCやDMFCに用いられる電解質は、高温でも膜強度を維持するもの、および低加湿条件下でも高いプロトン伝導度を発現するものが求められている。しかしながら、現在主流であるフッ素系電解質膜(パーフルオロアルキルスルホン酸高分子であるナフィオン、アシプレックス、フレミオン等の膜)は、100℃以上で膜強度が低下するなど耐熱性に課題がある。
【0004】
このような問題を解決するため、芳香族化合物を用いた高分子電解質が数多く研究されており、例えば、スルホン酸エステルを有するモノマーと疎水部用オリゴマーを重合したポリアリーレン系の高分子電解質が知られている。しかし、これらの電解質は脱離基を有するモノマーあるいはオリゴマーと遷移金属を用いて調製されるため、重合後のポリマーに脱離基や金属由来の不純物が残存する恐れがあった。不純物を除去する方法として、特許文献1には、各金属不純物を100ppm以下に除去するために重合後のポリマー溶液を、スルホン酸基を有するポリアリーレンの貧溶媒中に投入し、スルホン酸基を有するポリアリーレンを析出させて回収することを特徴とする方法が記載されている。この方法では、一旦析出させたスルホン酸基を有するポリアリーレンを再度溶解、析出させる必要があるなど操作が煩雑である。
また、特許文献2には、ニッケル重合後のポリアリーレンを窒素のオキソ酸に接触させる製法が記載されている。しかし、この方法では金属不純物の除去が十分でない。
また、特許文献3には、金属不純物を含有する高分子電解質を、硫酸を含む溶媒に溶解させ、不純物含量が低下した電解質を取り出す精製方法が記載されている。しかし、スルホン化されやすい芳香環は硫酸と反応する可能性が高く、使用できる高分子電解質が限定される。
また、特許文献4には、スルホン酸基またはその前駆体を有するポリアリーレンにおいて、抽出操作によって金属不純物を除去する方法が記載されている。しかし、抽出操作を行なった後に、酸洗浄を行なっており、操作が煩雑である。
さらに、特許文献5では重合溶液を塩酸で繰り返し洗浄している。しかし、特許文献4においてこの方法では精製が不十分であると記載されている。
【0005】
特に、脱離基を有する芳香族モノマーあるいはオリゴマーと遷移金属を用いて調製した高分子電解質では、重合後のポリマーに脱離基や金属由来の不純物が残存する可能性が高く、精製が不十分な状態で燃料電池内部に使用した場合、触媒や高分子電解質膜の劣化を引き起こす原因になることが知られている。そのため、精製方法が種々検討されてきたが、いずれも費用、煩雑さおよび効率を考慮した場合、満足な方法は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−239833号公報
【特許文献2】特開2008−179661号公報
【特許文献3】特開2009−187933号公報
【特許文献4】特開2011−042745号公報
【特許文献5】特開2005−248143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記問題を鑑みてなされたものであり、高分子電解質溶液、とくに重合後に不純物を含む高分子電解質溶液から簡便な方法で不純物を除去する方法およびそれによって得られる高分子電解質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、高分子電解質調製後、重合溶液を第一の酸に注ぎ、高分子電解質を析出させ、濾過後、第一の酸とは異なる第二の酸で洗浄することにより、不純物を効率的に除去可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、高分子電解質溶液と第一の酸を混合して、高分子電解質を析出させる工程、および、析出した高分子電解質を第一の酸とは異なる第二の酸で洗浄する工程を含むことを特徴とする高分子電解質の製造方法に関する。
【0010】
第一の酸及び第二の酸がそれぞれ第一の酸の溶液及び第二の酸の溶液であって、第一の酸の溶液および第二の酸の溶液の濃度がいずれも0.1〜20Nであることが好ましい。
【0011】
第一の酸の溶液を、高分子電解質100重量部に対して10〜10000重量部使用することが好ましい。
【0012】
第二の酸の溶液を、高分子電解質100重量部に対して10〜10000重量部使用することが好ましい。
【0013】
第一の酸が硫酸であり、第二の酸が塩酸であることが好ましい。
【0014】
上記高分子電解質が、少なくとも下記式(1)
【0015】
【化1】
【0016】
(式中、Arはベンゼン環、ナフタレン環、またはそれらの環を形成する炭素がヘテロ原子へと置換されたものを示し、Xは水素または陽イオンを示す。aおよびbは、それぞれ0〜4の整数である。また、a+bは1以上である。mは1以上の整数を示し、nは0以上の整数を示す。)
で示される構造を有することが好ましい。
【0017】
上記高分子電解質が、下記式(2)
【0018】
【化2】
【0019】
(式中、Arはベンゼン環、ナフタレン環、またはそれらの環を形成する炭素がヘテロ原子へと置換されたものを示す。mは1以上の整数を示し、nは0以上の整数を示す。YはSO、C(CH、またはC(CFであり、Zは直接結合、酸素、または硫黄を示す。)および/または下記式(3)
【0020】
【化3】
【0021】
(式中、Ar、m、nは上記式(2)と同様である。YはCO、SO、C(CH、またはC(CFであり、Yとは異なる。Zは直接結合、酸素、または硫黄を示す。)
で示される構造を有し、式(2)で示される構造成分Aモルに対し、式(3)で示される構造成分Bモルが、B/(A+B)が0〜0.95を満たすことが好ましい。
【0022】
また、本発明は、上のいずれかの製造方法により得られる高分子電解質に関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の高分子電解質の製造方法によれば、高分子電解質溶液と第一の酸を混合して、高分子電解質を析出させる工程、および、析出した高分子電解質を第一の酸とは異なる第二の酸で洗浄する工程を有するため、不純物が少ない高分子電解質を、工業的に有利かつ安価に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態について説明すれば以下の通りである。なお、本発明は以下の説明に限定されるものではないことを念のため付言しておく。
【0025】
(1.高分子電解質の製造方法)
本発明の製造方法は、高分子電解質溶液と第一の酸を混合して、高分子電解質を析出させる工程、および、析出した高分子電解質を第一の酸とは異なる第二の酸で洗浄する工程を含む。
【0026】
高分子電解質溶液としては、高分子電解質の重合溶液をそのまま使用することができる。高分子電解質溶液と第一の酸を混合するためには、重合溶液を第一の酸に注いでも、第一の酸に重合溶液を注いでも良い。
【0027】
酸としては、高分子電解質のポリマー末端をプロトン化できる酸であればよく、例えば無機酸としては硫酸、硝酸、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、リン酸、フルオロスルホン酸などが挙げられ、有機酸としては、酢酸、ギ酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などが挙げられる。中でも第一の酸と第二の酸が硫酸、硝酸、塩酸の中から選択されることが酸の強さから好ましい。
【0028】
酸は溶媒に溶解させて溶液として使用することが好ましい。酸の濃度は第一の酸、第二の酸のいずれも反応に応じて適宜設定すればよく、具体的には0.1〜20Nが好ましい。より好ましくは、0.5〜15Nであり、さらに好ましくは1〜12Nである。0.1Nより薄いと精製効果が不十分となり、20Nより濃いと後の洗浄における酸の除去が煩雑となる可能性がある。また、硫酸を使用する場合、20Nより濃いと高分子電解質の芳香環がスルホン化されるおそれがある。
【0029】
第一の酸の溶液の使用量は反応に応じて適宜設定すればよく、具体的には高分子電解質100重量部に対して、10〜10000重量部が好ましく、より好ましくは100〜5000重量部であり、さらに好ましくは200〜1000重量部である。10重量部よりも少ないと、析出した固体が十分酸と接触せずに精製が不十分となる可能性があり、10000重量部よりも多いと水洗工程での酸の除去が煩雑になる可能性がある。
【0030】
第二の酸の溶液の使用量は反応に応じて適宜設定すればよく、具体的には高分子電解質100重量部に対して、10〜10000重量部が好ましく、より好ましくは100〜5000重量部であり、さらに好ましくは200〜1000重量部である。10重量部よりも少ないと、析出した固体が十分酸と接触しない可能性があり、10000重量部よりも多いと水洗工程での酸の除去が煩雑になる可能性がある。
【0031】
第一の酸と第二の酸が異なることで精製効果を高めることができる。特に、第一の酸の溶液として硫酸、第二の酸の溶液として塩酸を使用することが、得られる高分子電解質の純度の観点から好ましい。
【0032】
酸の溶液に使用する溶媒は、高分子電解質溶液に添加することで高分子電解質を析出させることができるものであれば特に限定されず、酸を溶解させる溶媒で、酸と反応しない溶媒を選択すればよい。溶媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。中でも、酸の溶解度の観点から、水や、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系の溶媒が好ましく、洗浄効率の点から水が特に好ましい。
【0033】
(2.高分子電解質)
本発明で使用する高分子電解質としては、下記式(1):
【0034】
【化4】
【0035】
(式中、Arはベンゼン環、ナフタレン環、またはそれらの環を形成する炭素がヘテロ原子へと置換されたものを示し、Xは水素または陽イオンを示す。aおよびbは、それぞれ0〜4の整数である。また、a+bは1以上である。mは1以上の整数を示し、nは0以上の整数を示す。)
で示される構造を主鎖に有することが好ましい。ここで陽イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの第1族の金属イオンや、マグネシウム、カルシウムなどの第2族の金属イオン、アルミニウムなどの第13族金属イオン、第3〜第12族の遷移金属の金属イオンが挙げられる。また、n/(m+n)は、0〜0.95であることが好ましく、0.30〜0.90であることがより好ましい。
【0036】
本発明で使用する高分子電解質において、式(1)で示される構造の総含有量は、全体の20重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましい。上限については特に限定されない。20重量%未満では、十分なプロトン伝導性を有さなくなる可能性がある。ここで、高分子電解質の全体の重量とは、高分子電解質を酸で処理した後の、ポリマー中のスルホン酸基をSOHの状態にしたものの乾燥重量である。スルホン酸基を有する成分がいくつかある場合、H−NMRスペクトルなどの分析手法から成分比を求めることができる。
【0037】
上記式(1)で示される構造は、原料の入手の容易さの点で、Arがベンゼン環である、下記式(4):
【0038】
【化5】
【0039】
(式中、X、a、b、m、nは上記式(1)と同様である。)
で示される構造であることが好ましい。
【0040】
本発明で使用する高分子電解質としては、合成の容易さから、下記式(2)
【0041】
【化6】
【0042】
(式中、Arはベンゼン環、ナフタレン環、またはそれらの環を形成する炭素がヘテロ原子へと置換されたものを示し、m、nは上記式(1)と同様である。YはSO、C(CH、またはC(CFであり、Zは直接結合、酸素、または硫黄を示す。)および/または下記式(3)
【0043】
【化7】
【0044】
(式中、Ar、m、nは上記式(2)と同様である。YはCO、SO、C(CH、またはC(CFであり、Yとは異なる。Zは直接結合、酸素、または硫黄を示す。)
で示される構造を主鎖に有することも好ましい。また、式(2)で示される構造成分Aモルに対し、式(3)で示される構造成分Bモルが、B/(A+B)が0〜0.95を満たすことが好ましく、0〜0.60であることがより好ましい。また、n/(m+n)は、0〜0.95が好ましく、0.30〜0.90であることがより好ましい。
【0045】
式(2)および式(3)で示される構造の総含有量は、全体の20重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましい。また、95重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることがより好ましく、80重量%以下であることがさらに好ましく、70重量%以下であることが特に好ましい。20重量%未満であると、耐水性が低下する傾向があり、95重量%を超えると、伝導性能が低下する傾向がある。
【0046】
上記式(2)および(3)で示される構造は、原料の入手の容易さの点で、それぞれArがベンゼン環であって、mとnがともに1である、下記式(5)
【0047】
【化8】
【0048】
(式中、Y、Zは上記式(2)と同様である。)
および下記式(6)
【0049】
【化9】
【0050】
(式中、Y、Zは上記式(3)と同様である。)
で示される構造であることが好ましい。
【0051】
高分子電解質に含まれる重量比について、スルホン酸基を有する成分とスルホン酸基を有さない成分の重量比は高分子電解質のイオン交換容量から求めることができる。
【0052】
本発明で使用する高分子電解質としては、加工性の容易さの点で、さらに上記式(1)とは異なる構造の下記式(7)
【0053】
【化10】
【0054】
(式中、Ar、X、a、b、m、nは、上記式(1)と同様であり、Zは上記式(2)と同様である。Wは直接結合、CO、SO、C(CH、またはC(CFである。)
で示される構造を主鎖に含んでもよい。また、n/(m+n)は、0〜0.95が好ましい。
【0055】
上記式(7)で示される構造を含む場合は、式(1)で示される構造と式(7)で示される構造の総含有量は全体の5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましい。上限については特に限定されないが、80重量%以下であることが好ましく、70重量%以下であることがより好ましい。80重量%を超えると水への耐溶解性が低下し、5重量%未満では、加工性が低下する傾向がある。
【0056】
本発明で使用する高分子電解質としては、上記構造を主鎖に有していればランダム共重合体であってもよいし、グラフト共重合体やブロック共重合体でもよい。低加湿条件では高分子電解質膜内部の水が少なくなるが、プロトン伝導を高めるためにはプロトン伝導の媒体となる水を有効に利用する必要があり、そのためにはミクロ相分離構造を形成し、水の多い相を作り出すことのできるブロック共重合体であることがさらに好ましい。
【0057】
さらに、ミクロ相分離構造を形成するブロック共重合体において、親水性の相と疎水性の相を相分離させることで親水性の相により多くの水を集めることが可能であることから、スルホン酸基を有する親水性セグメントとスルホン酸基を有さない疎水性セグメントからなるブロック共重合体であることが好ましい。
【0058】
スルホン酸を有する親水性セグメントは、上記式(1)で示される構造を有することが好ましく、式(1)においてa、bおよびnが1である、下記式(8)
【0059】
【化11】
【0060】
(式中、Ar、X、mは上記式(1)と同様である。)
で示される構造を有することが好ましい。
【0061】
また、高分子電解質全体の重量の20重量%以上が上記式(1)で示される構造であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましい。上限については特に限定されない。20重量%未満では、水への耐溶解性が低下する傾向がある。
【0062】
スルホン酸基を有さない疎水性セグメントとしては、高分子量ポリマーが得やすい構造であることが好ましく、下記式(2)
【0063】
【化12】
【0064】
(式中、Ar、m、nは上記式(2)と同様である。YはSO、C(CH、またはC(CFであり、Zは直接結合、酸素、または硫黄を示す。)および/または下記式(3)
【0065】
【化13】
【0066】
(式中、Ar、m、nは上記式(2)と同様である。YはCO、SO、C(CH、またはC(CFであり、Yとは異なる。Zは直接結合、酸素、または硫黄を示す。)
で示される構造を含むものが、有機溶媒への溶解性が良好で高分子量ポリマーを得やすいため好ましい。
【0067】
式(2)および式(3)で示される構造の総含有量は、全体の20重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましい。また、95重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることがより好ましく、80重量%以下であることがさらに好ましく、70重量%以下であることが特に好ましい。20重量%未満であると、耐水性が低下する傾向があり、95重量%を超えると、伝導性能が低下する傾向がある。
【0068】
本発明で使用する高分子電解質としては、イオン交換容量が1.0〜4.0ミリ当量/gであるものが好ましく、1.2〜3.8ミリ当量/gがより好ましく、1.4〜3.6ミリ当量/gがさらに好ましい。
【0069】
また、本発明で使用する高分子電解質がグラフト共重合体やブロック共重合体である場合、親水性セグメントのイオン交換容量はプロトン伝導性の面から、1.0〜6.5ミリ当量/gが好ましく、5.3〜6.0ミリ当量/gがより好ましく、5.8〜6.0ミリ当量/gがさらに好ましい。
【0070】
また、本発明で使用する高分子電解質としては、一部または全てのスルホン酸基は電子求引性基を有する芳香環上に存在することが好ましい。より好ましくは、下記式
【0071】
【化14】
【0072】
(式中、Xは水素か陽イオンである。Yは2価の電子求引性基を示し、例えばCO、SO、あるいはC(CFなどである。)
で示される構造であり、さらに好ましくは下記式
【0073】
【化15】
【0074】
(式中、Xは水素か陽イオンである。Yは2価の電子求引性基を示し、例えばCO、SO、あるいはC(CFなどである。)
で示される構造であり、もっとも好ましくは下記式
【化16】
【0075】
(式中、Xは水素か陽イオンである。Yは2価の電子求引性基を示し、例えばCO、SO、あるいはC(CFなどである。)
で示される構造である。
【0076】
本発明の高分子電解質は、前述したとおり、高分子電解質溶液と第一の酸を混合して、高分子電解質を析出させる工程、および、析出した高分子電解質を第一の酸とは異なる第二の酸で洗浄する工程により得られるものである。該方法によって、非常に不純物量が少ない高分子電解質を得ることができる。金属不純物の含有量は、好ましくは50ppm以下、より好ましくは35ppm以下であり、塩素や臭素などのアニオン不純物の含有量は、好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下である。
【0077】
(3.高分子電解質の調製)
本発明で使用する高分子電解質の調製は、一般的な重合反応(「実験化学講座第4版 有機合成VII 有機金属試薬による合成」P353−366(1991)丸善株式会社)などを適用することができる。
【0078】
重合に用いる材料には脱離基を2箇所以上に有する化合物を用いることができ、ハロゲン基やスルホン酸エステル基などの脱離基を有する化合物を用いることができる。材料入手の点と反応性の点から、脱離基として塩素や臭素やヨウ素といったハロゲン基を2箇所に有する化合物であることが好ましい。
【0079】
材料の分子量は50〜1000000であることが好ましく、とくにスルホン酸基を有する親水性セグメントを形成する材料の分子量は100〜50000が好ましく、またスルホン酸基を有さない疎水性セグメントを形成する材料の分子量は1000〜100000が好ましい。これらの材料によって合成される高分子電解質の分子量は10000〜5000000が好ましく、より好ましくは20000〜1000000であることが高分子電解質膜を製造するための加工性と高分子電解質膜の強度が共に優れるため好ましい。
【0080】
重合反応は不活性ガス雰囲気下であれば、窒素ガス雰囲気下でもアルゴンガス雰囲気下でも行なうことができる。
【0081】
重合反応における溶媒としては、重合を禁止するものでなければ特に制限は無く、カーボネート化合物(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、複素環化合物(3−メチル−2−オキサゾリジノン、1−メチル−2−ピロリドン(以下NMP)、N,N−ジメチルイミダゾリジノン(以下DMI)等)、環状エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、鎖状エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル等)、ニトリル化合物(アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル等)、非プロトン極性物質(N,N−ジメチルアセトアミド(以下DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(以下DMF)、ジメチルスルホキシド(以下DMSO)、スルホラン等)、非極性溶媒(トルエン、キシレン等)などが列挙でき、中でも溶解度からDMAcやDMF、NMP、DMI、DMSO等が、ポリマーの溶解性が高いため好ましい。なかでもDMAcとDMSOが溶解性の高さから好ましく、これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、溶媒中に微量存在する水を取り除くため、ベンゼンやトルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの共沸溶媒を添加して水を共沸により除くことが有効である。
【0082】
重合工程の反応温度は適宜設定すればよい。具体的には0〜200℃が好ましく、より好ましくは20〜170℃であり、さらに好ましくは40〜140℃である。0℃よりも低温であれば反応速度が遅く、200℃よりも高温であれば微量不純物などの影響を大きく受け、高分子の着色や副反応が起きる場合がある。
【0083】
高分子電解質をブロック共重合体として合成する場合、スルホン酸基を有する親水性セグメントを形成する材料として、脱離基を2箇所以上に有する化合物を用いることができる。脱離基としてはハロゲン基やスルホン酸エステル基などが挙げられる。好ましくは芳香環上に脱離基を有する化合物が好ましく、材料の入手の容易さからジクロロベンゼン誘導体、ジクロロベンゾフェノン誘導体、ジクロロフェニルスルホン誘導体がより好ましい。
【0084】
スルホン酸基を有さない疎水性セグメントを形成する材料として、脱離基を2箇所以上に有する化合物を用いることができる。脱離基としてはハロゲン基やスルホン酸エステル基などが挙げられる。好ましくは芳香環上に脱離基を有する化合物が好ましく、材料の入手の容易さからジクロロベンゼン誘導体、ジクロロベンゾフェノン誘導体、ジクロロフェニルスルホン誘導体、或いは少なくともこれらを原料として合成され、脱離基を2箇所以上に有するポリマーがより好ましい。疎水性セグメントを形成する材料がポリマーである場合、分子量は1000〜100000であることが好ましい。
【0085】
本発明におけるような高分子電解質を合成する場合、親水性セグメントおよび疎水性セグメント材料に含まれるカルボニル基の一部、または全てを保護することで剛直性を低下させ、より高分子量のポリマーを得ることができる。
【0086】
カルボニル基の保護とは、有機合成で一般的に行なわれる方法であり、合成の過程においてカルボニル基が不利に働く場合に一時的に性質の異なる官能基へと変換することである。通常、カルボニル基を保護したものは脱保護によりカルボニル基へ変換することが可能である。
【0087】
カルボニル基の保護には、例えば一般的な方法として(Theodora W. Greene著の「Protective Groups in Organic Synthesis Third Edition」p.293−368(1999)John Wiley & Sons,Inc.)を適用することができる。保護はモノマーの段階、オリゴマーの段階、ポリマーの段階のいずれで行なうこともできる。
【0088】
カルボニル基の保護は、具体的な例としてはカルボニル基をアルコールと反応させることでアセタールまたはケタールへと変換する方法がある。例えば、特開2007−59374号公報の方法などが挙げられる。他の例としてはカルボニル基をアミンと反応させてイミンまたはケチミンへと変換する方法がある。例えば、Macromolecules 1994,27,2354−2356に記載の方法などが挙げられる。いずれも脱保護の方法としては例示した文献記載の方法などを用いることができる。ここで挙げたアセタールやケタール、イミン、ケチミンは加水分解性があり、水を含む溶媒中で脱保護をすることができる。一般的には脱保護を加速するために酸性条件下で行なう。
【0089】
具体的には上記式(1)のカルボニル基を保護して、CR、またはC=NRへと変換する方法がある。R及びRはアルコキシ基あるいはアリーロキシ基を示し、CRは環状構造を成していてもよい。またRはアルキル基あるいはアリール基を示す。
【0090】
脱保護する場合は、水または酸性水溶液に接触させると容易に脱保護することができる。さらに脱保護は加工の容易さの点から、フィルム形状で行なうことが好ましい。カルボニル基の保護は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれの段階で行なってもよいが、脱保護はポリマーの段階で行なうことが好ましい。
【0091】
本発明の製造方法により得られる高分子電解質は、様々な産業上の利用が考えられ、その利用(用途)については特に制限されるものではないが、高分子電解質膜、膜/電極接合体、燃料電池に好適である。
【0092】
(4.燃料電池用高分子電解質膜)
本発明の製造方法により得られる高分子電解質を用いて燃料電池用高分子電解質膜を調製することができる。高分子電解質膜は、上述の高分子電解質を膜形状(フィルム形状)に加工したものである。このような製膜方法としては、公知の方法が適宜適用される。上記公知の方法としては、例えば、ホットプレス法、インフレーション法、Tダイ法などの溶融押出成形、キャスト法、エマルション法などの溶液からの製膜方法が例示されうる。例えば溶液からの製膜方法としては、キャスト法が例示される。これは粘度を調整した高分子電解質の溶液を、ガラス板などの平板上に、バーコーター、ブレードコーターなどを用いて塗布し、溶媒を気化させて膜を得る方法である。工業的には溶液を連続的にコートダイからベルト上に塗布し、溶媒を気化させて長尺物を得る方法も一般的である。
【0093】
さらに高分子電解質の分子配向などを制御するために、得られた高分子電解質膜に対して二軸延伸などの処理を施したり、結晶化度を制御するための熱処理を施したりしてもよい。また、高分子電解質膜の機械強度を向上させるために各種フィラーを添加したり、ガラス布織布などの補強剤と高分子電解質とをプレスにより複合化させたりしてもよい。
【0094】
高分子電解質膜の厚さは、用途に応じて任意の厚さを選択することができる。例えば、得られる高分子電解質膜の内部抵抗を低減することを考慮した場合、高分子電解質膜の厚みは薄いほどよい。一方、得られた高分子電解質膜のガス遮断性やハンドリング性を考慮すると、高分子電解質膜の厚みは薄すぎると好ましくない場合がある。これらを考慮すると、高分子電解質膜の厚みは1.2μm以上350μm以下であることが好ましい。この範囲内であれば、取り扱いが容易であり、破損が生じ難いなどハンドリング性が向上する。また、得られた高分子電解質膜のプロトン伝導性も所望の範囲で発現させることができる。
【0095】
なお、高分子電解質膜の特性をさらに向上させるために、電子線、γ線、イオンビーム等の放射線を照射させることも可能である。これらにより、高分子電解質中に架橋構造などが導入でき、さらに性能が向上する場合がある。また、プラズマ処理やコロナ処理などの各種表面処理により、高分子電解質膜表面の触媒層との接着性を上げるなどの特性向上を図ることもできる。
【実施例】
【0096】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。調製した高分子電解質の分子量、金属残存量、イオン残存量の測定方法を以下に示す。
【0097】
<分子量の測定>
調製したオリゴマーや高分子電解質の分子量はGPC法により測定し、標準ポリスチレン試料を用いた換算値から算出した。
GPC測定装置 東ソー社製HLC−8220
カラム 昭和電工社製 SuperAW4000、SuperAW2500の2本を直列に接続
カラム温度 40℃
移動相 NMP(LiBr 10mmol/dm
流量 0.3mL/min
検出器 RI検出器
【0098】
<ICP−MS法による金属含有量の測定>
前処理として、試料を秤量後、硫酸及び硝酸を加えてマイクロウェーブ分解装置にて加圧酸分解した。分解液25mLを定容し、ICP−MS法により分析した。
装置 アジレント・テクノロジー社製 Agilent 7500CX
【0099】
<イオンクロマト法によるイオン濃度分析>
前処理法 燃焼管燃焼法
前処理装置 三菱化学アナリテック社製AQF−2100H
IC測定装置 日本ダイオネクス社製ICS−2000
カラム IonPac AG18、AS18
溶離液 KOHグラジエント
流量 1.0mL/min
検出器 電気伝導度検出器
【0100】
(合成例1)
4,4’−ジクロロベンゾフェノン50.2gと30%発煙硫酸270gを混合し、130℃にて6時間反応させた。反応終了後、室温に戻し、NaCl水(500ml)に注いだ。析出した固体を濾取し、水(500ml)中に加えNaOHにて中和した。系中の固体を濾取した後、減圧乾燥することで目的物を81.1g(収率89%)にて白色固体として得た。
【0101】
(合成例2)
リービッヒ冷却管とDean−Stark管、メカニカルスターラーを備え、窒素パージしている三口フラスコに、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(31.6g)と4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(21.42g)、炭酸カリウム(20.78g)、DMAc(200ml)およびトルエン(50ml)を加えた。この溶液を140℃のオイルバス加熱条件下にて3時間攪拌した後、170℃に昇温し、さらに24時間攪拌した後、室温まで冷却した。反応液をメタノール中に滴下し、生じた白色沈殿を濾取した。水中に固体を入れ、水相を中和した後、60℃にて1時間攪拌した。濾過後、再度60℃の水で洗浄し、さらにメタノール60℃で洗浄した。濾取した固体を70℃にて真空乾燥することで目的物のオリゴマーを白色固体として得た。
【0102】
(合成例3)
リービッヒ冷却管とDean−Stark管、メカニカルスターラーを備え、窒素パージしている三口フラスコに、合成例1で得たスルホン化モノマー12gと合成例2で得たオリゴマー8gと2,2’−ビピリジン11.56gとDMSO240mlとトルエン60mlを加えた。これを170℃のオイルバス加熱条件下にて還流させて系中の水分を除去後、トルエンも除き80℃まで冷却した。ここに、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル20gを加えた後、80℃にて3時間反応させて重合溶液を得た。
【0103】
(実施例1)
合成例3の反応終了後、重合溶液を6Nの硫酸600mlに注ぎ固体を析出させた。室温下にて1時間攪拌した後、固体を濾過した後、直ちに2Nの塩酸500ml中で、再度室温下30分攪拌した。固体を濾取した後、水洗し、105℃にて減圧乾燥することで目的の高分子電解質を15g得た。この高分子電解質の分子量はMn=113,000、Mw/Mn=2.17であった。
得られた高分子電解質0.7gをDMSO20mlに溶解した後、溶液をガラス基板上に流延塗布し、80℃にて15時間減圧乾燥した後、さらに100℃にて18時間減圧乾燥した。これを室温下6Nの塩酸で2時間の洗浄を3回繰り返した後、1時間の水洗を2回繰り返した後、60℃の乾燥機で乾燥することで高分子電解質膜を得た。
【0104】
(比較例1)
合成例3の反応終了後、重合溶液を6Nの硫酸600mlに注ぎ固体を析出させた。室温下にて1時間攪拌した後、固体を濾過し水洗、105℃にて減圧乾燥することで目的の高分子電解質を得た。この高分子電解質の分子量はMn=149,000、Mw/Mn=1.82であった。
得られた高分子電解質を実施例1と同様に高分子電解質膜とし、各種評価を実施した。
【0105】
(比較例2)
合成例3の反応終了後、重合溶液を2Nの硝酸600mlに注ぎ固体を析出させた。室温下にて1時間攪拌した後、固体を濾過し水洗、メタノール洗浄した後、室温下にて減圧乾燥することにより目的の高分子電解質を得た。この高分子電解質の分子量はMn=115,000、Mw/Mn=2.14であった。
得られた高分子電解質を実施例1と同様に高分子電解質膜とし、各種評価を実施した。
【0106】
(比較例3)
合成例3の反応終了後、重合溶液を濃塩酸600mlに注ぎ固体を析出させた。室温下にて1時間攪拌した後、固体を濾過し水洗、105℃にて減圧乾燥することで目的の高分子電解質を得た。この高分子電解質の分子量はMn=120,000、Mw/Mn=1.94であった。
得られた高分子電解質を実施例1と同様に高分子電解質膜とし、各種評価を実施した。
【0107】
(比較例4)
合成例3の反応終了後、重合溶液を6N塩酸(2L)に注ぎ固体を析出させた。室温下にて30分攪拌した後、固体を濾過し、再度6N塩酸(2L)中にて室温下1時間攪拌した。固体を濾過、水洗後、105℃にて減圧乾燥することで目的の高分子電解質を得た。この高分子電解質の分子量はMn=63,000、Mw/Mn=2.73であった。
得られた高分子電解質を実施例1と同様に高分子電解質膜とし、各種評価を実施した。
【0108】
(比較例5)
合成例3の反応終了後、重合溶液をDMSO80mlで希釈し、1N塩酸(1L)に注ぎ固体を析出させた。この固体を濾取した後、80℃にて減圧乾燥し、乾燥後の固体を粉砕後、6N塩酸(1L)に加え室温下にて6時間攪拌した。固体を濾過、水洗後、80℃にて減圧乾燥することで目的の高分子電解質を得た。この高分子電解質の分子量はMn=90,500、Mw/Mn=2.05であった。
得られた高分子電解質を実施例1と同様に高分子電解質膜とし、各種評価を実施した。
【0109】
(比較例6)
比較例2で得られた高分子電解質膜を再度DMSOに溶解し、実施例1と同様の条件で製膜した後、6Nの硫酸にて2時間の洗浄を2回繰り返した後、1時間の水洗を2回繰り返した後、60℃の乾燥機で乾燥することで高分子電解質膜を得た。
【0110】
(比較例7)
比較例4で得られた高分子電解質膜を80℃の熱水中にて2時間の洗浄を3回繰り返した後、60℃の乾燥機で乾燥することで高分子電解質膜を得た。
【0111】
各高分子電解質膜の評価結果を表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
実施例1と各比較例の高分子電解質膜中に残存する不純物量を定量した結果、実施例1に示す製造方法の精製効率が高いことが示された。