(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施例1)
本発明の実施例を具体的に説明する前に、基礎となった知見を説明する。IEEE802.11等の規格に準拠した無線LAN(Local Area Network)では、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)と呼ばれるアクセス制御機能が使用されている。そのため、当該無線LANでは、複数の端末装置によって同一の無線チャネルが共有される。このようなCSMA/CAでは、キャリアセンスによって他のパケット信号が送信されていないことを確認した後に、パケット信号が送信される。ITSのような車車間通信に無線LANを適用する場合、不特定多数の車両のそれぞれに搭載された端末装置へ情報を送信する必要があるために、信号はブロードキャストにて送信されることが望ましい。その結果、端末装置は、ブロードキャストされた信号を受信することによって、他の車両の接近を検出し、それを運転者に通知することによって、車両間の衝突事故を防止するための注意を運転者に喚起させる。
【0011】
車両間の衝突事故を防止するとともに、歩行者等と車両との衝突事故を防止することも望まれる。これに対応するために、端末装置は、車載される他に歩行者にも携帯される。ここで、歩行者に携帯される端末装置は、バッテリで駆動するので、車載の端末装置と比較して処理量の低減が必要とされる。例えば、他の車両の接近は歩行者に対して通知されなかったり、自らの位置を測位するためのGPS(Global Positioning System)機能を備えなかったりする。車載の端末装置は、歩行者に携帯される端末装置からパケット信号を受信した場合、受信電力が大きければ、歩行者が近くを歩行していると判定する。
【0012】
このような状況下において、車両に乗車している運転者や同乗者のような人が、携帯電話端末のような携帯装置を携帯していることがある。携帯装置には、スマートフォンのような多機能な装置も含まれる。携帯装置には、端末装置よりも新しいアプリケーションプログラムをインストールしやすいので、新しいサービスに対応させやすい。ITSでのサービスを携帯装置に処理させるために、端末装置は、受信したパケット信号を携帯装置に転送する必要がある。端末装置がすべてのパケット信号を転送した場合、端末装置と携帯装置間のトラヒック量が大きくなりすぎるおそれがある。
【0013】
本発明の実施例1は、車両に搭載された端末装置(以下、「車載用端末装置」ともいう)間において車車間通信を実行するとともに、交差点等に設置された基地局装置から車載用端末装置へ路車間通信も実行するITSの通信システムに関する。車車間通信として、車載用端末装置は、車両の速度や位置等の情報(以下、これらを「データ」という)を格納したパケット信号をブロードキャスト送信する。また、他の車載用端末装置は、パケット信号を受信するとともに、データをもとに車両の接近等を認識する。車両の接近を運転者に通知することによって、運転者に注意を促す。車車間通信と路車間通信との干渉を低減するために、基地局装置は、複数のサブフレームが含まれたフレームを繰り返し規定する。基地局装置は、路車間通信のために、複数のサブフレームのいずれかを選択し、選択したサブフレームの先頭部分の期間において、制御情報等が格納されたパケット信号をブロードキャスト送信する。制御情報には、当該基地局装置がパケット信号をブローキャスト送信するための期間(以下、「路車送信期間」という)に関する情報が含まれている。
【0014】
車載用端末装置は、制御情報をもとに路車送信期間を特定し、路車送信期間以外の期間においてパケット信号を送信する。このように、路車間通信と車車間通信とが時間分割多重されるので、両者間のパケット信号の衝突確率が低減される。なお、車車間通信は、路車送信期間以外の車車間通信を実行するための期間(以下、「車車送信期間」という)においてCSMA方式にてなされる。このような端末装置は、歩行者にも携帯される(以下、歩行者に携帯される端末装置を「携帯用端末装置」という)。携帯用端末装置は、バッテリ駆動であり、低消費電力化を必要とされる。そのため、携帯用端末装置は、データを格納したパケット信号をブロードキャスト送信するだけであり、車両の接近を歩行者に通知しない。なお、以下では、携帯用端末装置であっても、車車間通信、路車間通信というものとする。また、車載用端末装置と携帯用端末装置とを区別せずに「端末装置」ということもあり、車載用端末装置と携帯用端末装置とを総称して「端末装置」ということもある。
【0015】
車載用端末装置は、前述のITSに対応した無線通信機能を有するとともに、近距離無線通信方式に対応した無線通信機能も有していおり、近距離無線通信方式によって携帯装置と通信する。車載用端末装置は、路車間通信や車車間通信において受信したパケット信号に含まれた情報を近距離無線通信方式にて携帯装置へ転送する。携帯装置は、車両に乗車している人に携帯されており、車載用端末装置からの情報を利用したアプリケーションプログラムを実行する。アプリケーションプログラムの一例は、右直衝突防止支援等である。近距離無線通信方式での伝送速度は、一般的に、ITSに対応した無線通信方式の伝送速度よりも低い。そのため、転送によるトラヒック量の増加には抑制されることが望まれる。これに対応するために、本実施例に係る通信システムは、次の処理を実行する。
【0016】
携帯装置は、実行しているアプリケーションプログラムに応じてフィルタリング条件を生成する。端末装置は、近距離無線通信方式を介してフィルタリング条件を車載用端末装置に送信する。車載用端末装置は、フィルタリング条件を設定する。車載用端末装置は、フィルタリング条件に応じて、受信したITSのパケット信号を選択し、選択したパケット信号に含まれた情報を転送する。ここで、端末装置において、アプリケーションプログラムとフィルタリング条件との対応は予め定められていればよい。
【0017】
図1は、本発明の実施例1に係る通信システム100の構成を示す。これは、ひとつの交差点を上方から見た場合に相当する。通信システム100は、基地局装置10、車両12と総称される第1車両12a、第2車両12b、第3車両12c、第4車両12d、第5車両12e、第6車両12f、第7車両12g、第8車両12h、歩行者16と総称される第1歩行者16a、第2歩行者16bを含む。なお、各車両12には、図示しない車載用端末装置が設置され、各歩行者16は、図示しない携帯用端末装置を携帯する。さらに、少なくともひとつの車両12に乗車した人は、図示しない携帯装置を所持する。ここで、人には、運転者や同乗者が含まれる。また、エリア212は、基地局装置10の周囲に形成され、エリア外214は、エリア212の外側に形成されている。
【0018】
図示のごとく、図面の水平方向、つまり左右の方向に向かう道路と、図面の垂直方向、つまり上下の方向に向かう道路とが中心部分で交差している。ここで、図面の上側が方角の「北」に相当し、左側が方角の「西」に相当し、下側が方角の「南」に相当し、右側が方角の「東」に相当する。また、ふたつの道路の交差部分が「交差点」である。第1車両12a、第2車両12bが、左から右へ向かって進んでおり、第3車両12c、第4車両12dが、右から左へ向かって進んでいる。また、第5車両12e、第6車両12fが、上から下へ向かって進んでおり、第7車両12g、第8車両12hが、下から上へ向かって進んでいる。
【0019】
基地局装置10は、端末装置間の通信を制御する。基地局装置10は、図示しないGPS衛星から受信した信号や、図示しない他の基地局装置10にて形成されたフレームをもとに、複数のサブフレームが含まれたフレームを繰り返し生成する。ここで、各サブフレームの先頭部分に路車送信期間が設定可能であるような規定がなされている。基地局装置10は、複数のサブフレームのうち、他の基地局装置10によって路車送信期間が設定されていないサブフレームを選択する。基地局装置10は、選択したサブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。基地局装置10は、設定した路車送信期間においてパケット信号を報知する。
【0020】
車両12は、エンジンにて駆動され、車載用端末装置を搭載する。車載用端末装置は、受信したパケット信号に含まれた制御情報をもとに、フレームを生成する。その結果、複数の車載用端末装置のそれぞれにおいて生成されるフレームは、基地局装置10において生成されるフレームに同期する。また、車載用端末装置は、車車送信期間において、CSMA/CAを実行することによって、パケット信号を報知する。車載用端末装置は、例えば、存在位置に関する情報をパケット信号に格納する。また、車載用端末装置は、制御情報もパケット信号に格納する。つまり、基地局装置10から送信された制御情報は、車載用端末装置によって転送される。
【0021】
一方、基地局装置10からのパケット信号を受信できない車載用端末装置、つまりエリア外214に存在する車載用端末装置は、フレームの構成に関係なく、CSMA/CAを実行することによって、パケット信号を報知する。さらに、車載用端末装置は、他の車載用端末装置からのパケット信号を受信することによって、他の車載用端末装置が搭載された車両の接近を運転者へ通知する。なお、車載用端末装置と携帯装置との間の近距離無線通信については後述する。
【0022】
歩行者16は、携帯用端末装置を携帯する。携帯用端末装置は、車載用端末装置と同様の処理を実行する。しかしながら、携帯用端末装置は、処理を簡易にするために、車両等の接近を歩行者16に通知しない。さらに、携帯用端末装置は、GPS等によって位置情報を取得するための機能を備えない。携帯用端末装置は、当該携帯用端末装置を識別するためのID(以下、「携帯用端末装置ID」という)が含まれたパケット信号を報知する。車載用端末装置は、携帯用端末装置から受信したパケット信号の受信強度を測定することによって、携帯用端末装置を携帯した歩行者16が車両12の近傍に存在しているかを推定する。
【0023】
図2は、基地局装置10の構成を示す。基地局装置10は、アンテナ20、RF部22、変復調部24、処理部26、ネットワーク通信部28、制御部30を含む。処理部26は、フレーム規定部32、選択部34、生成部36を含む。
【0024】
RF部22は、受信処理として、図示しない端末装置や他の基地局装置10からのパケット信号をアンテナ20にて受信する。RF部22は、受信した無線周波数のパケット信号に対して周波数変換を実行し、ベースバンドのパケット信号を生成する。さらに、RF部22は、ベースバンドのパケット信号を変復調部24に出力する。一般的に、ベースバンドのパケット信号は、同相成分と直交成分によって形成されるので、ふたつの信号線が示されるべきであるが、ここでは、図を明瞭にするためにひとつの信号線だけを示すものとする。RF部22には、LNA(Low Noise Amplifier)、ミキサ、AGC、A/D変換部も含まれる。
【0025】
RF部22は、送信処理として、変復調部24から入力したベースバンドのパケット信号に対して周波数変換を実行し、無線周波数のパケット信号を生成する。さらに、RF部22は、路車送信期間において、無線周波数のパケット信号をアンテナ20から送信する。また、RF部22には、PA(Power Amplifier)、ミキサ、D/A変換部も含まれる。
【0026】
変復調部24は、受信処理として、RF部22からのベースバンドのパケット信号に対して、復調を実行する。さらに、変復調部24は、復調した結果を処理部26に出力する。また、変復調部24は、送信処理として、処理部26からのデータに対して、変調を実行する。さらに、変復調部24は、変調した結果をベースバンドのパケット信号としてRF部22に出力する。ここで、通信システム100は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式に対応するので、変復調部24は、受信処理としてFFT(Fast Fourier Transform)も実行し、送信処理としてIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)も実行する。
【0027】
フレーム規定部32は、図示しないGPS衛星からの信号を受信し、受信した信号をもとに時刻の情報を取得する。なお、時刻の情報の取得には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。フレーム規定部32は、時刻の情報をもとに、複数のフレームを生成する。例えば、フレーム規定部32は、時刻の情報にて示されたタイミングを基準にして、「1sec」の期間を10分割することによって、「100msec」のフレームを10個生成する。このような処理を繰り返すことによって、フレームが繰り返されるように規定される。
【0028】
なお、フレーム規定部32は、復調結果から制御情報を検出し、検出した制御情報をもとにフレームを生成してもよい。このような処理は、他の基地局装置10によって形成されたフレームのタイミングに同期したフレームを生成することに相当する。
図3(a)−(d)は、通信システム100において規定されるフレームのフォーマットを示す。
図3(a)は、フレームの構成を示す。フレームは、第1サブフレームから第Nサブフレームと示されるN個のサブフレームによって形成されている。例えば、フレームの長さが100msecであり、Nが8である場合、12.5msecの長さのサブフレームが規定される。
図3(b)−(d)の説明は、後述し、
図2に戻る。
【0029】
選択部34は、フレームに含まれた複数のサブフレームのうち、路車送信期間を設定すべきサブフレームを選択する。具体的に説明すると、選択部34は、フレーム規定部32にて規定されたフレームを受けつける。選択部34は、RF部22、変復調部24を介して、図示しない他の基地局装置10あるいは端末装置からの復調結果を入力する。選択部34は、入力した復調結果のうち、他の基地局装置10からの復調結果を抽出する。選択部34は、復調結果を受けつけたサブフレームを特定することによって、復調結果を受けつけていないサブフレームを特定する。これは、他の基地局装置10によって路車送信期間が設定されていないサブフレーム、つまり未使用のサブフレームを特定することに相当する。未使用のサブフレームが複数存在する場合、選択部34は、ランダムにひとつのサブフレームを選択する。未使用のサブフレームが存在しない場合、つまり複数のサブフレームのそれぞれが使用されている場合に、選択部34は、復調結果に対応した受信電力を取得し、受信電力の小さいサブフレームを優先的に選択する。
【0030】
図3(b)は、第1基地局装置10aによって生成されるフレームの構成を示す。第1基地局装置10aは、第1サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第1基地局装置10aは、第1サブフレームにおいて路車送信期間につづいて車車送信期間を設定する。車車送信期間とは、車載用端末装置がパケット信号を報知可能な期間である。つまり、第1サブフレームの先頭期間である路車送信期間において第1基地局装置10aはパケット信号を報知可能であり、かつフレームのうち、路車送信期間以外の車車送信期間において車載用端末装置がパケット信号を報知可能であるような規定がなされる。さらに、第1基地局装置10aは、第2サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間のみを設定する。
【0031】
図3(c)は、第2基地局装置10bによって生成されるフレームの構成を示す。第2基地局装置10bは、第2サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第2基地局装置10bは、第2サブフレームにおける路車送信期間の後段、第1サブフレーム、第3サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。
図3(d)は、第3基地局装置10cによって生成されるフレームの構成を示す。第3基地局装置10cは、第3サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第3基地局装置10cは、第3サブフレームにおける路車送信期間の後段、第1サブフレーム、第2サブフレーム、第4サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。このように、複数の基地局装置10は、互いに異なったサブフレームを選択し、選択したサブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。
図2に戻る。選択部34は、選択したサブフレームの番号を生成部36へ出力する。
【0032】
生成部36は、選択部34から受けつけたサブフレーム番号のサブフレームに路車送信期間を設定し、路車送信期間において報知すべきRSUパケット信号を生成する。なお、以下の説明において、RSUパケット信号とパケット信号とは区別せずに使用される。
図4(a)−(b)は、サブフレームの構成を示す。
図4(a)は、路車送信期間が設定されたサブフレームを示す。図示のごとく、ひとつのサブフレームは、路車送信期間、車車送信期間の順に構成される。
図4(b)は、路車送信期間におけるパケット信号の配置を示す。図示のごとく、路車送信期間において、複数のRSUパケット信号が並べられている。ここで、前後のパケット信号は、SIFS(Short Interframe Space)だけ離れている。
【0033】
ここでは、RSUパケット信号の構成を説明する。
図5(a)−(b)は、通信システム100において規定されるパケット信号に格納されるMACフレームのフォーマットを示す。
図5(a)は、MACフレームのフォーマットを示す。MACフレームは、先頭から順に、「MACヘッダ」、「LLCヘッダ」、「メッセージヘッダ」、「データペイロード」、「FCS」を配置する。データペイロードに含まれる情報については、後述する。
図5(b)は、生成部36によって生成されるメッセージヘッダの構成を示す図である。メッセージヘッダには、基本部分が含まれている。
【0034】
基本部分は、「プロトコルバージョン」、「送信ノード種別」、「再利用回数」、「TSFタイマ」、「RSU送信期間長」を含む。プロトコルバージョンは、対応しているプロトコルのバージョンを示す。送信ノード種別は、MACフレームが含まれたパケット信号の送信元を示す。例えば、「0」は端末装置を示し、「1」は基地局装置10を示す。なお、車載用端末装置と携帯用端末装置とを区別する場合、送信ノード種別が2ビットで示される。選択部34が、入力した復調結果のうち、他の基地局装置10からの復調結果を抽出する場合に、選択部34は、送信ノード種別の値を利用する。再利用回数は、メッセージヘッダが端末装置によって転送される場合の有効性の指標を示し、TSFタイマは、送信時刻を示す。RSU送信期間長は、路車送信期間の長さを示しており、路車送信期間に関する情報といえる。
図2に戻る。
【0035】
生成部36は、端末装置から受信したパケット信号に含まれた位置情報をもとに、基地局装置10が設置された交差点の周辺に存在する車両12の情報(以下、「障害物検知情報」という)を生成する。障害物検知情報を生成するために、交差点を囲むようなエリアが予め規定される。このエリアがエリア212であってもよい。生成部36は、一定期間内に受信したパケット信号のうち、位置情報がエリア内である車両12の情報をもとに障害物検知情報を生成する。また、生成部36は、端末装置から受信したパケット信号に含まれた位置情報をもとに、基地局装置10が設置された交差点の周辺に存在する歩行者16の情報(以下、「歩行者検知情報」という)を生成する。
【0036】
なお、歩行者検知情報は、障害者検知情報と区別されずに、障害者検知情報とされてもよい。生成部36は、障害物検知情報をデータペイロードに格納する。ネットワーク通信部28は、図示しないネットワーク202に接続される。ネットワーク通信部28は、ネットワーク202から、渋滞情報や灯色情報を受けつける。灯色情報とは、交差点に設置された信号機の灯色が変化する予定を示した情報である。生成部36は、ネットワーク通信部28から、渋滞情報や灯色情報を取得し、データペイロードに格納することによって、前述のRSUパケット信号を生成する。制御部30は、基地局装置10全体の処理を制御する。
【0037】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、またはハードウエアとソフトウエアの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0038】
図6は、車両12に搭載された車載用端末装置14の構成を示す。車載用端末装置14は、第1通信部110、第2通信部112、制御部48を含む。第1通信部110は、第1アンテナ40、RF部42、変復調部44、処理部46を含み、処理部46は、タイミング特定部50、転送決定部56、取得部58、通知部60、生成部62を含む。タイミング特定部50は、抽出部52、キャリアセンス部54を含む。第2通信部112は、第2アンテナ114を含む。制御部48は、受付部116、記憶部118、フィルタリング部120、転送部122を含む。取得部58は、GPSモジュール160、センサ162の少なくとも一つを含み、通知部60は、モニタ164、スピーカ166、LED168の少なくとも一つを含む。
図6では、取得部58、通知部60のそれぞれに含まれうる構成要素を示しているが、必ずしもすべての構成要素が含まれなくてもよい。第1アンテナ40、RF部42、変復調部44は、
図2のアンテナ20、RF部22、変復調部24と同様の処理を実行する。そのため、ここでは、差異を中心に説明する。
【0039】
第1通信部110の変復調部44、処理部46は、
図2で説明したITSの通信方式にしたがって、図示しない他の端末装置や基地局装置10からのパケット信号を受信する。なお、前述のごとく、変復調部44、処理部46は、路車送信期間において、基地局装置10からのパケット信号を受信する。前述のごとく、変復調部44、処理部46は、車車送信期間において、他の車載用端末装置14や図示しない携帯用端末装置からのパケット信号を受信する。
【0040】
抽出部52は、変復調部44からの復調結果が、図示しない基地局装置10からのパケット信号である場合に、路車送信期間が配置されたサブフレームのタイミングを特定する。その際、抽出部52は、
図1のエリア212内に存在すると推定する。抽出部52は、サブフレームのタイミングと、パケット信号のメッセージヘッダの内容、具体的には、RSU送信期間長の内容をもとに、フレームを生成する。なお、フレームの生成は、前述のフレーム規定部32と同様になされればよいので、ここでは説明を省略する。その結果、抽出部52は、基地局装置10において形成されたフレームに同期したフレームを生成する。
【0041】
一方、抽出部52は、RSUパケット信号を受信していない場合、
図1のエリア外214に存在すると推定する。抽出部52は、エリア212に存在していることを推定した場合、車車送信期間を選択する。抽出部52は、エリア外214に存在していることを推定すると、フレームの構成と無関係のタイミングを選択する。抽出部52は、車車送信期間を選択した場合、フレームおよびサブフレームのタイミング、車車送信期間に関する情報をキャリアセンス部54へ出力する。抽出部52は、フレームの構成と無関係のタイミングを選択すると、キャリアセンスの実行をキャリアセンス部54に指示する。
【0042】
キャリアセンス部54は、抽出部52から、フレームおよびサブフレームのタイミング、車車送信期間に関する情報を受けつける。キャリアセンス部54は、車車送信期間において、キャリアセンスを実行することによって、干渉電力を測定する。また、キャリアセンス部54は、干渉電力をもとに、車車送信期間における送信タイミングを決定する。具体的に説明すると、キャリアセンス部54は、所定のしきい値を予め記憶しており、干渉電力としきい値とを比較する。干渉電力がしきい値よりも小さければ、キャリアセンス部54は、送信タイミングを決定する。キャリアセンス部54は、抽出部52から、キャリアセンスの実行を指示された場合、フレームの構成を考慮せずに、CSMAを実行することによって、送信タイミングを決定する。キャリアセンス部54は、決定した送信タイミングを生成部62へ通知する。
【0043】
取得部58は、ここでは、GPSモジュール160、センサ162を含んでいるとし、それらから供給されるデータによって、車載用端末装置14の存在位置、進行方向、移動速度等(以下、「位置情報」と総称する)を取得する。なお、存在位置は、緯度・経度によって示される。これらの取得には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。また、センサ162としては、ジャイロセンサ、車速センサ等が相当する。なお、GPSモジュール160とセンサ162とのうちのいずれかが取得部58に含まれてもよい。取得部58は、位置情報を生成部62へ出力する。
【0044】
転送決定部56は、メッセージヘッダの転送を制御する。転送決定部56は、パケット信号からメッセージヘッダを抽出する。パケット信号が基地局装置10から直接送信されている場合には、再利用回数が「0」に設定されているが、パケット信号が他の車載用端末装置14から送信されている場合には、再利用回数が「1以上」の値に設定されている。転送決定部56は、抽出したメッセージヘッダから、転送すべきメッセージヘッダを選択する。ここでは、例えば、再利用回数が最も小さいメッセージヘッダが選択される。また、転送決定部56は、複数のメッセージヘッダに含まれた内容を合成することによって新たなメッセージヘッダを生成してもよい。転送決定部56は、選択対象のメッセージヘッダを生成部62へ出力する。その際、転送決定部56は、再利用回数を「1」増加させる。
【0045】
生成部62は、取得部58から位置情報を受けつけ、転送決定部56からメッセージヘッダを受けつける。生成部62は、
図5(a)−(b)に示されたMACフレームを使用し、位置情報をデータペイロードに格納する。生成部62は、MACフレームが含まれたパケット信号を生成するとともに、キャリアセンス部54において決定した送信タイミングにて、変復調部44、RF部42、第1アンテナ40を介して、生成したパケット信号をブロードキャスト送信する。これは、車車間通信に相当する。なお、送信タイミングは、車車送信期間に含まれている。
【0046】
通知部60は、抽出部52を介して、図示しない基地局装置10からのパケット信号を取得するとともに、図示しない他の車載用端末装置14からのパケット信号を取得する。通知部60は、ここでは、モニタ164、スピーカ166、LED168を含んでいるとし、取得したパケット信号に対する処理として、パケット信号に格納されたデータの内容に応じて、図示しない他の車両12や歩行者16の接近等を運転者へ、モニタ164、スピーカ166、LED168のうちの少なくともひとつを介して通知する。具体的に説明すると、モニタ164は接近を通知するための画像あるいはメッセージを表示し、スピーカ166は警告音を出力し、LED168は点灯あるいは点滅する。さらに、通知部60は、障害物検知情報、渋滞情報、灯色情報等も運転者へ、モニタ164、スピーカ166、LED168のうちの少なくともひとつを介して通知する。なお、処理部46は、第1通信部110において受信したパケット信号の受信強度を測定する。受信強度の測定には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。
【0047】
第2通信部112は、第2アンテナ114を介して、図示しない携帯装置との通信を実行する。携帯装置との通信には、第1通信部110で使用されるITSの通信方式とは異なった近距離無線通信方式が使用される。近距離無線通信方式の一例は、IEEE802.15.1規格に準拠した方式であり、数mから数十m程度の距離の通信を対象にする。なお、IEEE802.15.1規格に準拠した方式に限定されず、別の方式が使用されてもよい。近距離無線通信方式には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。
【0048】
制御部48は、第2通信部112での通信処理を制御する。受付部116は、第2通信部112を介して携帯装置から、フィルタリング条件を受信する。具体的に説明すると、第2通信部112は、携帯装置から送信されたパケット信号であって、かつフィルタリング条件が格納されたパケット信号を受信する。第2通信部112は、受信したパケット信号からフィルタリング条件を抽出し、抽出したフィルタリング条件を受付部116に出力する。フィルタリング条件の詳細は後述するが、フィルタリング条件とは、第1通信部110において受信したパケット信号のうち、第2通信部112から携帯装置へ転送すべきパケット信号の選択基準といえる。
【0049】
フィルタリング部120は、受付部116から、受付部116において受信したフィルタリング条件を受けつけると、フィルタリング条件を記憶部118に記憶させる。フィルタリング部120は、記憶部118に記憶したフィルタリング条件にしたがって、第1通信部110において受信したパケット信号に対してフィルタリングを実行する。つまり、フィルタリング部120は、第1通信部110において受信したパケット信号から、フィルタリング条件に合致したパケット信号を選択する。フィルタリング部120は、選択したパケット信号を転送部122に出力する。
【0050】
転送部122は、フィルタリング部120から、フィルタリング部120において選択したパケット信号を受けつける。転送部122は、受けつけたパケット信号に含まれた情報を抽出する。転送部122は、抽出した情報が格納されたパケット信号を生成し、生成したパケット信号を第2通信部112から携帯装置へ転送させる。なお、受付部116が複数種類のフィルタリング条件を受けつけた場合、記憶部118は、複数種類のフィルタリング条件を記憶し、フィルタリング部120は、複数種類のフィルタリング条件のそれぞれに応じたフィルタリングを並列に実行する。
【0051】
図7は、歩行者16に携帯された携帯用端末装置18の構成を示す。携帯用端末装置18は、アンテナ70、RF部72、変復調部74、処理部76、制御部78を含む。また、処理部76は、生成部82、タイミング特定部84を含み、タイミング特定部84は、抽出部86、キャリアセンス部90を含む。
【0052】
変復調部74、処理部76は、
図6の変復調部44、処理部46と同様に、図示しない他の端末装置や基地局装置10からのパケット信号を受信する。特に、変復調部74、処理部76は、路車送信期間において基地局装置10からのパケット信号であって、かつフレーム構成に関する情報が含まれたパケット信号を受信する。また、変復調部74、処理部76は、車車送信期間において車載用端末装置14からのパケット信号であって、かつ当該車載用端末装置14の位置情報に関する情報が格納されたパケット信号を受信する。
【0053】
抽出部86は、抽出部52と同様に、変復調部74からの復調結果が、図示しない基地局装置10からのパケット信号である場合に、路車送信期間が配置されたサブフレームのタイミングを特定する。キャリアセンス部90は、キャリアセンス部54と同様に、キャリアセンスを実行する。変復調部74、RF部72は、キャリアセンス部90におけるキャリアセンスの結果をもとに、パケット信号を報知する。ここで、生成部82において生成されたパケット信号には、位置情報が含まれておらず、携帯用端末装置IDが含まれている。
【0054】
図8は、車両12に乗車した人が携帯する携帯装置130の構成を示す。携帯装置130は、第1アンテナ132、第2アンテナ134、第3アンテナ136、セルラ通信部138、GPS処理部140、近距離通信部142、条件設定部144、アプリケーションプログラム処理部146、通知部148、操作部150を含む。通知部148は、モニタ190、スピーカ192、LED194の少なくとも一つを含む。
図8では、通知部148は、いずれの構成要素も含む構成を示す。モニタ190、スピーカ192、LED194は、
図6のモニタ164、スピーカ166、LED168と同様に構成されるので、ここでは説明を省略する。
【0055】
セルラ通信部138は、第1アンテナ132を介して、図示しないセルラ用の基地局装置との間でセルラ用の通信を実行する。セルラ用の通信として、3GPP(Third Generation Partnership Project)や3GPP2に準拠した通信方式が使用されればよい。また、他の通信方式が使用されてもよく、公知の技術が使用されてもよい。セルラ用の通信によって音声通信がなされてもよいが、ここでは説明を省略する。
【0056】
GPS処理部140は、第2アンテナ134を介して、図示しないGPS衛星からの信号を受信する。GPS処理部140は、取得部58と同様の処理を実行することによって、携帯装置130の位置情報を取得する。近距離通信部142は、第3アンテナ136を介して、図示しない車載用端末装置14と通信する。通信には、近距離無線通信方式が使用される。そのため、近距離通信部142は、第2通信部112と同様の処理を実行する。その結果、近距離通信部142は、車載用端末装置14から、路車間通信のパケット信号に含まれた情報や車車間通信のパケット信号に含まれた情報を取得する。
【0057】
アプリケーションプログラム処理部146は、第2通信部112からの情報を受けつけるとともに、GPS処理部140からの位置情報を受けつける。アプリケーションプログラム処理部146は、これらの情報をもとにアプリケーションプログラムを実行する。アプリケーションプログラムとして任意のものが使用されればよいが、説明を明瞭にするために、ここでは、車両12の運転に関連したアプリケーションプログラムが使用されるとする。なお、アプリケーションプログラムのインストールやバージョンアップは、セルラ通信部138を介してなされるものとする。
【0058】
ここでは、一例として、10種類のアプリケーションプログラムを説明する。アプリケーションプログラムはこれらに限定されるものではないし、これらのうちの少なくともふたつが組み合わされてもよい。
(1)右直衝突防止支援
これは、自らの車両12が交差点で右折する際に、障害物検知情報をもとに、他の車両12との衝突の危険性を判定して警告するアプリケーションプログラムである。このアプリケーションプログラムでは、障害物検知情報に含まれた他の車両12の情報、例えば、位置を取得するとともに、GPS処理部140から現在の位置情報を取得し、これを比較する。右折の方向に他の車両12が存在していれば、アプリケーションプログラム処理部146は、通知部148から危険性を通知する。通知部148は、モニタやスピーカによって構成される。
【0059】
(2)右左折歩行者衝突防止支援
これは、自らの車両12が交差点で右左折する際に、歩行者検知情報をもとに、車両12との衝突の危険性を判定して警告するアプリケーションプログラムである。このアプリケーションプログラムでは、歩行者検知情報に含まれた歩行者16の情報、例えば、位置を取得するとともに、GPS処理部140から現在の位置情報を取得し、これを比較する。左折や右折の方向に歩行者16が存在していれば、アプリケーションプログラム処理部146は、通知部148から危険性を通知する。
【0060】
(3)発進遅れ防止支援
これは、交差点で停止している場合、発進可能な信号灯色に変化する前に、発進準備を運転者に通知するアプリケーションプログラムである。このアプリケーションプログラムでは、GPS処理部140から取得した現在の位置情報と、アプリケーションプログラム処理部146に記憶された地図データをもとに、交差点で停止していることが判定される。灯色情報では、例えば、何秒後に点灯色が変わるかが示されている。アプリケーションプログラムは、灯色情報をもとに、赤信号が青信号に変わるまでの期間を取得する。アプリケーションプログラム処理部146は、取得した期間をもとに、青信号に変わる数秒前に通知部148から発進準備を通知する。青信号に変わってしばらくしても発進しなければ、運転者に警告してもよい。
【0061】
(4)アイドリングストップ支援
これは、交差点で停止している場合、発進可能な信号灯色に変化するまでの期間が長ければ、アイドリングストップを運転者に促すアプリケーションプログラムである。このアプリケーションプログラムでも、GPS処理部140から取得した現在の位置情報と、アプリケーションプログラム処理部146に記憶された地図データをもとに、交差点で停止していることが判定される。アプリケーションプログラムは、灯色情報をもとに、赤信号が青信号に変わるまでの期間を取得する。アプリケーションプログラム処理部146は、取得した期間が所定の期間よりも長ければ、通知部148からアイドリングストップの実行を通知する。
【0062】
(5)グリーンウェーブ走行支援
現在走行している交差点と、次に走行予定の交差点までの距離をもとに、次に走行予定の交差点を青信号で通過できる車速を通知するアプリケーションプログラムである。アプリケーションプログラム処理部146は、ナビゲーションシステムのような経路案内を実行する。このアプリケーションプログラムは、経路に沿って設置された信号機の灯色情報を取得し、複数の交差点を青信号で通過可能な走行速度を計算する。計算には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。アプリケーションプログラム処理部146は、通知部148から走行速度を通知する。
【0063】
(6)衝突(追突)防止支援
車両12の位置、高度情報、車速、進行方向をもとに他の車両12との衝突の危険性を予測するアプリケーションプログラムである。このアプリケーションプログラムでは、GPS処理部140から現在の位置情報を取得する。また、アプリケーションプログラムは、位置情報の変化をもとに、これからの進路を推定するとともに、他の車両12に搭載された車載用端末装置14からの位置情報も取得する。進路の方向に予め定めたサイズのエリアを規定し、当該エリア内に他の車両12が存在する場合、アプリケーションプログラム処理部146は、通知部148から危険性を通知する。
【0064】
(7)CLP渋滞予測
道路を識別するための情報(以下、「道路ID」という)に対する車速、進行方向をもとに、目的とする方向の渋滞を予測するアプリケーションプログラムである。このアプリケーションプログラムは、衝突(追突)防止支援と同様の処理を実行するが、現在の位置情報とエリアとの距離が、衝突(追突)防止支援の場合よりも長くなる。つまり、CLP渋滞予測では、衝突(追突)防止支援よりも、将来的に通過するエリアを考慮する。
【0065】
(8)コミュニケーション
近傍の車両12や、特定の車両属性の車両12に対して、メッセージを通知するアプリケーションプログラムである。メッセージとは、例えば、車両12の列への割り込み要求である。このアプリケーションプログラムは、衝突(追突)防止支援と同様の処理を実行したり、特定のIDが付与された車載用端末装置14からの情報を取得したりする。アプリケーションプログラム処理部146は、情報を取得できた場合、メッセージの通知対象となる車両12が近傍に存在することを通知部148から通知する。
【0066】
(9)発進時事故防止支援
車両12を発進させる際に、歩行者16が近傍に存在することを通知するアプリケーションプログラムである。このアプリケーションプログラムは、GPS処理部140から取得した現在の位置情報をもとに、車両12が停止していることを判定する。さらに、アプリケーションプログラムは、車載用端末装置14における携帯用端末装置18からのパケット信号の受信強度がしきい値よりも大きい場合に、車両12の近傍に歩行者16が存在していると推定する。アプリケーションプログラム処理部146は、歩行者16が存在している場合に、通知部148から危険性を通知する。
【0067】
(10)ペアリング歩行者表示
車載用端末装置14に対して携帯用端末装置18を予めペアリングしておき、当該携帯用端末装置18を携帯した歩行者16が車両12から近くにいるか否かを判定するアプリケーションプログラムである。このアプリケーションプログラムは、ペアリングした携帯用端末装置18からのパケット信号を車載用端末装置14が受信した場合、車載用端末装置14から受信強度を取得する。また、アプリケーションプログラムは、受信強度をもとに、ペアリングした携帯用端末装置18を携帯した歩行者16が存在する位置を推定する。アプリケーションプログラム処理部146は、通知部148から位置を通知する。
【0068】
以上のように、アプリケーションプログラムに応じて、車載用端末装置14から転送されるべき情報が異なる。条件設定部144は、起動されているアプリケーションプログラムに応じたフィルタリング条件を設定し、フィルタリング条件が格納されたパケット信号を生成する。さらに、条件設定部144は、パケット信号を近距離通信部142に送信させる。条件設定部144は、各アプリケーションプログラムに対するフィルタリング条件を予め記憶する。アプリケーションプログラム処理部146において起動されたアプリケーションプログラムに応じて、条件設定部144は、フィルタリング条件を選択する。なお、複数のアプリケーションプログラムが起動されている場合、条件設定部144は、複数のフィルタリング条件を選択する。
【0069】
図9は、条件設定部144におけるテーブルのデータ構造を示す。図示のごとく、アプリケーションプログラム名欄220、起動タイミング欄222、フィルタリング条件欄224、パケット信号報知元欄226が含まれる。アプリケーションプログラム名欄220には、前述の10種類のアプリケーションプログラムが示されている。起動タイミング欄222には、各アプリケーションプログラムが起動されるタイミングが示されている。右直衝突防止支援は、アプリケーションプログラム処理部146に記憶された地図データに示された交差点から一定の距離まで、GPS処理部140が取得した位置情報が接近した場合に加えて、近距離通信部142を介して、方向指示器が右折を示している旨の情報が含まれたパケット信号を取得したときに起動される。これを実現するために、車両12の方向指示器は、車載用端末装置14に接続され、方向指示器から出力された方向の情報が、方向指示器から車載用端末装置14へ転送される。
【0070】
右左折歩行者衝突防止支援は、右直衝突防止支援が起動するタイミングに加えて、近距離通信部142を介して、方向指示器が右折を示している旨の情報が含まれたパケット信号を取得したときにも起動される。発進遅れ防止支援、アイドリングストップは、アプリケーションプログラム処理部146に記憶された地図データに示された交差点から一定の距離まで、GPS処理部140が取得した位置情報が接近した場合に加えて、GPS処理部140から取得した位置情報が停止を示しているときに起動される。他のアプリケーションプログラムは、操作部150を介した入力を受けつけた場合に起動される。
【0071】
フィルタリング条件欄224は、フィルタリング条件を示し、パケット信号報知元欄226は、転送対象になる元のパケット信号の報知元を示す。例えば、右直衝突防止支援からアイドリングストップ支援では、基地局装置10から報知された路車間通信のパケット信号が転送対象にされる。また、基地局装置IDは、車両12が接近している基地局装置10の識別番号を示す。グリーンウエーブ走行支援では、フィルタリング条件として、基地局装置IDを指定しないが、転送間隔が広くなるように指定する。これは、路車間通信のパケット信号を間引いて転送することに相当する。
【0072】
衝突(追突)防止支援、CLP渋滞予測では、フィルタリング条件としてエリア情報を設定し、他の車載用端末装置14から報知された車車間通信のパケット信号が転送対象にされる。エリア情報を設定する際、GPS処理部140から取得した位置情報が使用される。コミュニケーションでは、衝突(追突)防止支援、CLP渋滞予測でのフィルタリング条件に加えて、車載用端末装置14のIDがフィルタリング条件として設定されてもよい。なお、衝突(追突)防止支援、CLP渋滞予測、コミュニケーションのそれぞれで設定されるエリアの位置は異なってもよい。発進時事故防止支援では、受信強度に対するしきい値がフィルタリング条件として設定され、携帯用端末装置18から報知されたパケット信号が転送対象にされる。その結果、車載用端末装置14のフィルタリング部120は、しきい値よりも受信強度が大きいパケット信号を選択して転送する。ペアリング歩行者表示では、ペアリングした携帯用端末装置18のIDがフィルタリング条件に設定される。
【0073】
以上の構成による通信システム100の動作を説明する。
図10は、車載用端末装置14と携帯装置130による転送処理を示すシーケンス図である。携帯装置130のアプリケーションプログラム処理部146においてアプリケーションプログラムが起動される(S10)。条件設定部144は、フィルタリング条件を設定する(S12)。携帯装置130は、フィルタリング条件を車載用端末装置14に送信する(S14)。車載用端末装置14のフィルタリング部120は、フィルタリング条件にしたがってフィルタリングを実行する(S16)。転送部122は、フィルタリングによって選択されたパケット信号を携帯装置130に転送する(S18)。携帯装置130のアプリケーションプログラム処理部146は、転送されてきたパケット信号を処理する(S20)。
【0074】
本発明の実施例によれば、携帯装置から受信したフィルタリング条件をもとに転送すべきパケット信号を選択するので、携帯装置にとって必要な情報を転送できる。また、携帯装置から受信したフィルタリング条件をもとに転送すべきパケット信号を選択するので、転送のためのトラヒック量の増加を抑制できる。また、不要なパケット信号を転送しないので、携帯装置で処理すべきパケット信号の量を抑制できる。また、携帯装置で処理すべきパケット信号の量が抑制されるので、携帯装置の処理量を抑制できる。また、フィルタリング条件は、アプリケーションプログラムに応じて設定されるので、携帯装置で実行されているアプリケーションプログラムに適した情報を転送できる。また、フィルタリング条件として受信強度に対するしきい値を設定し、しきい値よりも受信強度の大きいパケット信号を選択するので、伝送距離の短いパケット信号を選択できる。また、伝送距離の短いパケット信号が選択されるので、パケット信号内に位置情報が含まれていなくても、位置を推定できる。
【0075】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2を説明する。実施例2は、車載用端末装置に関する。実施例1に係る車載用端末装置は、携帯装置に転送させるためのパケット信号をフィルタリングする。一方、実施例2に係る車載用端末装置は、通知部において受信処理すべきパケット信号の量を低減するために、受信したパケット信号をフィルタリングする。これは、車載用端末装置における受信処理の処理量を低減するためである。実施例2に係る通信システム100、基地局装置10、携帯用端末装置18は、
図1、
図2、
図7と同様のタイプである。
【0076】
図11は、車両12に搭載された車載用端末装置14の構成を示す。車載用端末装置14は、第1通信部110、制御部48を含む。第1通信部110は、第1アンテナ40、RF部42、変復調部44、処理部46を含み、処理部46は、タイミング特定部50、転送決定部56、取得部58、通知部60、生成部62を含む。タイミング特定部50は、抽出部52、キャリアセンス部54を含む。制御部48は、受付部116、記憶部118、フィルタリング部120を含む。取得部58は、GPSモジュール160、センサ162の少なくとも一つを含み、通知部60は、モニタ164、スピーカ166、LED168の少なくとも一つを含む。
図11では、取得部58、通知部60のそれぞれに含まれうる構成要素を示しているが、必ずしもすべての構成要素が含まれなくてもよい。
図6に含まれた構成要素と同一の符号によって示された構成要素は、
図6と同様の処理を実行する。ここでは、差異を中心に説明する。
【0077】
フィルタリング部120は、受信したパケット信号から、受付部116において受信したフィルタリング条件に合致したパケット信号を選択する。フィルタリング部120は、選択したパケット信号を通知部60に出力する。通知部60は、フィルタリング部120から受けつけたパケット信号に対して処理を実行する。
【0078】
本発明の実施例によれば、受信したパケット信号に対してフィルタリングを実行するので、車載用端末装置における受信処理の処理量を低減できる。
【0079】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3を説明する。実施例3も、車載用端末装置に関し、これまでと同様の処理を実行する。実施例3では、車載用端末装置に対する電力供給を説明する。実施例3に係る通信システム100、基地局装置10、携帯用端末装置18は、
図1、
図2、
図7と同様のタイプである。
【0080】
図12は、本発明の実施例3に係る車両12の構成を示す。車両12は、車載用端末装置14、車載バッテリ174を含む。車載用端末装置14の構成については後述する。車載バッテリ174は、車両12に搭載され、車載用端末装置14に電力を供給する。例えば、車載バッテリ174は、12Vの直流電力を供給する。車載バッテリ174には、公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。
【0081】
図13は、車載用端末装置14の構成を示す。車載用端末装置14は、動作部170、電源部172を含む。車載用端末装置14は、車載バッテリ174に接続される。動作部170は、第1通信部110、第2通信部112、制御部48を含むが、これらは
図6と同様である。なお、動作部170は、
図11と同様に第1通信部110、制御部48を含むように構成されてもよい。ここでは、
図13の構成にしたがって説明する。
【0082】
電源部172は、車両12に搭載された車載バッテリ174と接続されており、車載バッテリ174からの電力を入力する。前述のごとく、入力される電力は、12Vの直流電力である。電源部172は、動作部170が動作可能な電圧への変換を実行する。ここでは、入力された電圧と、動作部170が動作可能な電圧とは異なるものとする。電源部172は、変換した電力を動作部170へ供給する。なお、電源部172は、前述の動作を常時実行していてもよいし、車両12に搭載されたアクセサリをオンするタイミングで前述の動作を実行してもよい。また、動作部170の動作電圧が入力電圧と同じ場合は、電源部172は電圧の変換を行わなくてもよい。動作部170は、電源部172に供給された電力によって、これまでの実施例で説明した動作を実行する。
【0083】
図14は、車載用端末装置14の別の構成を示す。車載用端末装置14は、動作部170、電源部172を含む。動作部170は、
図13と同様に構成される。電源部172は、車載バッテリ174ではなく、図示しない外部の電源に接続される。外部の電源の一例は、商用電源である。電源部172は、外部の電源から電力を入力し、これまでと同様の処理を実行する。
【0084】
図15は、車載用端末装置14のさらに別の構成を示す。車載用端末装置14は、動作部170、電源部172、内蔵バッテリ176を含む。動作部170は、
図13と同様に構成される。内蔵バッテリ176は、車載用端末装置14に格納されたバッテリである。内蔵バッテリ176の一例は、リチウムイオンバッテリである。電源部172は、内蔵バッテリ176からの電力を入力し、これまでと同様の処理を実行する。
【0085】
本発明の実施例によれば、車載バッテリからの電力を受けつけ、動作部が動作可能な電圧への変換を実行するので、車載バッテリからの電力によって動作部を動作させることができる。また、車載バッテリからの電力によって車載用端末装置が動作させるので、車載バッテリと車載用端末装置とが搭載された車両を実現できる。なお、外部の電源で車載用端末装置を動作させることができる。さらに、内蔵バッテリによっても車載用端末装置を動作させるので、車載用端末装置を車両から取り外すことができる。
【0086】
(実施例4)
次に、本発明の実施例4を説明する。実施例4も、車載用端末装置に関する。実施例4に係る車載用端末装置は、実施例3での構成に加えて、有線回線を介して携帯用端末装置に接続する。つまり、車載用端末装置は、携帯用端末装置との間の通信を無線でなく、有線でも実行する。実施例4に係る通信システム100、基地局装置10、携帯用端末装置18は、
図1、
図2、
図7と同様のタイプである。なお、携帯用端末装置18は、有線通信のインターフェイスを有する。
【0087】
図16は、本発明の実施例4に係る車載用端末装置14の構成を示す。車載用端末装置14は、動作部170、電源部172を含む。車載用端末装置14は、車載バッテリ174に接続されている。動作部170は、第1通信部110、第2通信部112、第3通信部178、制御部48を含む。第1通信部110、第2通信部112は、これまでと同様の動作を実行するので、ここでは説明を省略する。以下では、実施例3との差異を中心に説明する。
【0088】
第3通信部178は、ケーブルにて携帯用端末装置18に接続され、携帯用端末装置18との間で通信を実行する。通信方式は、例えば、USB(Universal Serial Bus)、LANであるが、ここでは前者であるとする。第3通信部178における通信の内容は、第2通信部112における通信の内容と同様である。つまり、第3通信部178と第2通信部112とは、排他的に使用される。制御部48は、第2通信部112と第3通信部178とのいずれかを使用する。例えば、制御部48は、第3通信部178にケーブルが接続されることによって、第3通信部178が通信処理を実行している場合、第2通信部112に通信処理を実行させない。これは、第2通信部112よりも第3通信部178が優先的に使用されることに相当する。なお、動作部170には、第2通信部112が含まれなくてもよい。
【0089】
本発明の実施例によれば、携帯用端末装置との間に有線通信も実行可能であるので、通信の種類を増加できる。また、携帯用端末装置との間に有線通信を実行するので、通信の品質を向上できる。無線通信よりも有線通信を優先的に実行するので、複数の通信手段を簡易に切り替えることができる。
【0090】
(実施例5)
次に、本発明の実施例5を説明する。実施例5も、車載用端末装置に関する。これまでは、携帯用端末装置においてアプリケーションプログラムが実行されている。実施例5に係る車載用端末装置は、アプリケーションプログラムを実行する。実施例5に係る通信システム100、基地局装置10、携帯用端末装置18は、
図1、
図2、
図7と同様のタイプである。
【0091】
図17は、本発明の実施例5に係る車載用端末装置14の構成を示す。車載用端末装置14は、動作部170、電源部172を含む。車載用端末装置14は、車載バッテリ174に接続されている。動作部170は、第1通信部110、第2通信部112、制御部48を含む。制御部48は、受付部116、記憶部118、フィルタリング部120、転送部122、アプリケーション実行部180を含む。第1通信部110、第2通信部112は、これまでと同様の動作を実行するので、ここでは説明を省略する。携帯用端末装置18は、
図8のアプリケーションプログラム処理部146と同様の処理を実行する。
【0092】
本発明の実施例によれば、携帯用端末装置において実行されるアプリケーションプログラムを車載用端末装置でも実行するので、携帯用端末装置がなくても同様のサービスを提供できる。
【0093】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0094】
本発明の実施例において、携帯装置130と車載用端末装置14とは同一の車両12に存在していながらも、車載用端末装置14は車両12に設置され、携帯装置130は車両12内の人に携帯されている。しかしながらこれに限らず例えば、車載用端末装置14が、携帯装置130を接続するためのクレードルを備えており、クレードルに携帯装置130を差し込むことによって、携帯装置130と車載用端末装置14とが物理的に接続されてもよい。その際、携帯装置130と車載用端末装置14との間の通信には、近距離無線通信方式が使用されてもよいし、有線通信方式が使用されてもよい。本変形例によれば、車両12において、携帯装置130と車載用端末装置14とを一体的に使用できる。
【0095】
実施例1から5の任意の組合わせも有効である。本変形例によれば、実施例1から5の任意の組合わせによる効果を得ることができる。
【0096】
本発明の一態様の概要は、次の通りである。本発明のある態様の端末装置は、動作部と、動作部に対して電力を供給する電源部とを備える。動作部は、第1の通信方式にしたがって、基地局装置から報知されたパケット信号を受信するとともに、他の端末装置から報知されたパケット信号を受信する第1通信部と、第1の通信方式とは異なった第2の通信方式にしたがって、携帯装置との通信を実行する第2通信部と、第2通信部を介して携帯装置から、フィルタリング条件を受信する受付部と、第1通信部において受信したパケット信号から、受付部において受信したフィルタリング条件に合致したパケット信号を選択するフィルタリング部と、フィルタリング部において選択したパケット信号に含まれた情報を第2通信部から携帯装置へ転送させる転送部と、を備える。
【0097】
この態様によると、携帯装置から受信したフィルタリング条件をもとに転送すべきパケット信号を選択するので、転送のためのトラヒック量の増加を抑制できる。
【0098】
電源部は、車両に搭載されたバッテリから電力を入力し、動作部が動作可能な電圧で動作部へ電力を供給してもよい。この場合、動作部に対して安定的に電力を供給することができ、端末装置としての動作を安定化することができる。
【0099】
第1通信部において受信したパケット信号の受信強度を測定する測定部をさらに備えてもよい。受付部において受信したフィルタリング条件は、受信強度に対するしきい値であり、フィルタリング部は、しきい値よりも受信強度が大きいパケット信号を選択してもよい。この場合、しきい値よりも受信強度の大きいパケット信号を選択するので、伝送距離の短いパケット信号を選択できる。