(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
シリコン基板の受光面には電極を形成せずに、基板の裏面のみに異なる導電型の電極を形成するいわゆる裏面接合型太陽電池が開発されている。裏面接合型太陽電池としては、太陽電池の受光面側に電極を形成せずに、基板の裏面にp型領域、n型領域を形成し、正負両キャリアの取り出しを櫛型に形成した取り出し電極から取り出すものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図9に従い従来の裏面接合型太陽電池について説明する。裏面接合型太陽電池100は、n型のシリコンからなる基板111の受光面側とは反対側の裏面に、n型電極116、p型電極117が形成される。n型電極116は、n型細線電極116fとn型バスバー電極116bとで構成され、p型電極117は、p型細線電極117fとp型バスバー電極117bとで構成される。
【0004】
太陽電池の出力を向上させる観点から、p型電極117とn型電極116とが基板111の略全体を覆うように形成されている。そして、基板111の裏面上における一方の端部に、n型細線電極116fと交差する方向に延在するn型バスバー電極116bが形成され、n型細線電極116fとn型バスバー電極116bでn型電極116が構成される。また、シリコン基板101の裏面上における他方の端部に、p型細線電極117fと交差する方向に延在するp型バスバー電極117bが形成され、p型細線電極117fとp型バスバー電極117bでp型電極117が構成される。
【0005】
そして、n型電極116、及びp型電極117と接する基板11には、それぞれの領域に対応するように形成されたn型領域、p型領域が設けられる。
【0006】
この裏面接合型太陽電池の受光面に太陽光が入射すると、基板111の受光面近傍で生じたキャリアが裏面に形成されたpn接合まで到達し、n型細線電極116fおよびp型細線電極117fに電流として収集される。収集された電流は、バスバー電極116b、117bを介して外部に出力される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、説明の重複を避けるためにその説明は繰返さない。
【0015】
尚、本願明細書において、「受光面」とは、太陽電池または太陽電池モジュールにおいて、光が主として入射する表面を意味し、「裏面」とは、受光面と反対側の表面を意味する。
【0016】
本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、基板11として、単結晶シリコンウェハーを用い、その基板11の上にアモルファスシリコン層を積層して形成した太陽電池10とした。より具体的には、太陽電池10は、基板11となるn型の単結晶シリコンウェハーの受光面上に、実質的に真性な非晶質半導体19、n型非晶質シリコン20、窒化シリコンなどの保護膜21が順次積層された構成を有する。また、基板11の裏面においては、n型電極16に対応するn領域12では、基板11上に、実質的に真性な非晶質半導体層12
1、n型非晶質半導体層12
2、窒化シリコン層12
3、n型電極16が順次積層され、窒化シリコン層12
3を貫通する穴を介して、n型非晶質半導体層12
2とn型電極16とが接続された構造を有する。また、p型電極17に対応するp領域13では、基板11上に、実質的に真性な非晶質半導体層13
1、p型非晶質半導体層13
2、p型電極17が順次積層された構造を有する。
【0017】
また、n領域12のn型電極16は、n型細線電極16fとn型バスバー電極16bとで構成され、p領域13のp型電極17は、p型細線電極17fとp型バスバー電極17bとで構成される。
【0018】
太陽電池の出力を向上させる観点から、n型電極16とp型電極17とが基板11の裏面全体を略覆うように、互いに所定の間隔を隔てて櫛型形状に形成される。これにより、多くの領域で光電変換により生じた電流を、n型電極16とp型電極17との間で略一定の電界を発生させることで効率良く収集することができる。
【0019】
n型バスバー電極16bは、シリコン基板11の裏面上における一方の端部に、n型細線電極16fと交差する方向に延在して形成され、n型細線電極16fと接続されている。p型バスバー電極17bは、シリコン基板11の裏面上における他方の端部にp型細線電極17fと交差する方向で延在して形成され、p型細線電極17fと接続されている。
【0020】
これら電極16f、16b、17f、17bは、太陽電池に発生する電流を外部に十分に取り出すことができるように、メッキにより銅などの金属を下地電極上に成長させ、低抵抗の電極が形成される。
【0021】
本実施形態では、スパッタなどにより形成した下地電極16a、17a上にメッキにより銅層(メッキ層)16m、17mを成長させたものを用いる。下地電極16a、17aは、銅により構成される。
【0022】
そして、下地電極16a上にメッキにより銅層16mが設けられ、n型細線電極16fが形成される。p型領域13上に下地電極17aが形成され、その下地電極17a上にメッキにより銅層17mが設けられ、p型細線電極17fが形成される。
【0023】
以下に、
図3を用いて本実施形態の特徴部分である電極16、17の形状、特に細線電極16fの端部について説明を行う。
【0024】
細線電極16fが有する端部の角においては、メッキ時に電流が集中し、他のメッキを処理する領域に比べてメッキされ易くなることがあった。これにより、メッキ膜厚が大きくなる他、処理領域以外の領域までメッキされてしまい、電極間のショート等の問題が生じていた。
【0025】
そこで、細線電極16fの端部を半円状に形成し、電流集中を抑制することを検討していた。しかし、細線電極16fの端部を半円状に形成した場合、この細線電極16fの端部に対向するp型電極17の面積が大きくなり、無効部分が多くなる新たな問題が生じていた。
【0026】
具体的には、細線電極16fの端部を丸くした場合、細線電極16fとこの細線電極16fに隣接するp型電極17までの距離が広くなり、生じる電界が弱くなり効率良く発生した電流を取り出せない問題点が生じる。そこで、p型電極17の形状を、細線電極16f付近に形成されるp型電極17までの距離を略一定となるように円弧状部17bc’を形成し、略一定の電界が生じるようにすることが検討された。しかし、この場合では、p型電極17の面積が大きくなり、発電に寄与しない無効部分(
図3のa部部分)が大きくなってしまう問題があった。
【0027】
他方では、細線電極16fの端部を矩形形状とし、p型電極17の形状を、この細線電極16f付近に形成されるp型電極17までの距離を略一定となるように形成し、略一定の電界が生じるように形成することを検討していた。これにより、細線電極16fに隣接するp型電極17は、低抵抗で且つ形成される面積が小さい細線電極17fと、低抵抗で且つ形成される面積が小さいバスバー電極17bとで構成することできる。この結果、発電に寄与しない無効部分を狭くした構成とすることができる。しかしながら、矩形形状にすると、二辺が直交する角部にメッキ時の電流が集中し、電極の膜厚にばらつきが発生する問題があった。
【0028】
そこで、本発明は、
図3に示すように、細線電極16fの端部を、二辺が交差する角部を円弧状部16rとし、細線電極16fの先端部は、円弧状部16r、16rの間に直線状の端辺16cを有する輪郭とする。
【0029】
また、p型電極17においては、この円弧状部16rに対応して、バスバー電極17bと細線電極17fが接続され、それぞれの辺が交差する部分は、円弧状部17bcが形成される。
【0030】
本実施形態によれば、
図3のaで示す無効領域を減らして、キャリアの収集効率を向上させる。そして、二辺が交差する部分を円弧状部16rとし、メッキ時の電流集中を抑制し、細線電極16fの膜厚のばらつきを小さくするとともに、処理領域以外がメッキされることを減らすことができる。
【0031】
なお、上記の実施形態では、n型電極16の細線電極16fの端部及びp型電極17の形状について説明を行ったが、n型電極16の細線電極16fの端部をp型電極17の細線電極17fの端部に、またp型電極17をn型電極16に置き換え、同様な構成としても同様の作用効果を得ることができる。このため、細線電極16fの端部と同様に細線電極17fの端部を、またp型電極17と同様にn型電極16に形成を行った。加えて、n型バスバー電極16bとp型バスバー電極17bにおいても、細線電極16f同様、メッキ時に角部へ電流が集中し、他の処理領域に比べてメッキされ易くなるため、二辺が交差する角部を円弧状部とした。
【0032】
次に、円弧状部16rの半径の大きさとメッキ厚の関係につき、
図4及び
図5を参照して説明する。
【0033】
円弧状部16rの半径の大きさとメッキ厚の関係を調べるために、
図4に示す電極パターンを用意した。電極パターンは、幅(W)を1000μmとした。電極パターンは、下地電極として膜厚0.2μmの銅(Cu)をスパッタリングで形成し、フォトリソグラフィで所定の形状に形成した。その後、含りん銅(硫酸銅浴)をメッキ液として用い、0.01A/cm
2の電流の条件で、下地電極16a上に銅をメッキで形成した。
【0034】
端部の円弧状部16rの半径Rの大きさを2μmから100μmに変化させて、それぞれのメッキ膜厚の関係を測定した。測定は、先端から3Wの距離の中央部の測定位置(Tmid)と円弧状部16rの外周の最大膜厚箇所(Tr)を測定し、両者の比(Tr/Tmid)を用いて評価した。
【0037】
表1、
図5に示すように、円弧状部16rの半径Rが大きくなるにつれ、その比が1に近づき、中央部と円弧状部16rとの膜厚のばらつきが小さくなる。そして、その比が20%以下となるばらつきの大きさは、円弧状部16rの半径Rの値が20μm程度であった。局所的なストレスは、膜厚の変動幅が、概ね20%程度の範囲内であれば、電極の剥離等が発生しにくいことが、実際の装置でテストした結果、確認できている。したがって、電極の膜厚のばらつきの観点から、円弧状部16rの半径Rの値が20μm以上とすることが好ましい。また、円弧状部16rの半径Rを大きくすればするほど、ばらつきは少なくなるが、大きくするだけ、無効領域が増える。このことから、円弧状部16rの半径Rは20μm以上100μm以下とすることがより好ましい。
【0038】
これらのことを考慮すると、細線電極16fの幅(W)に対して円弧状部16rの半径Rは、2%以上10%以下とすることが好ましい。
【0039】
次に、上記の太陽電池10を製造する方法について、説明する。
【0040】
単結晶シリコンからなる基板11は、単結晶シリコンのインゴッドをスライスして得られる。基板11の導電型はn型でもp型でもよいが、この実施形態では、n型単結晶シリコンからなる基板を用いた。また、基板11の大きさや厚みについても適宜変更が可能である。この実施形態では、厚さ200μm、大きさ100mm角の基板を用いた。
【0041】
基板11の受光面上に、実質的に真性な非晶質半導体19、n型非晶質シリコン20、窒化シリコンなどの保護膜21を順次、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置を用いて積層する。また、基板11の裏面においては、n型電極16に対応するn領域12では、実質的に真性な非晶質半導体層12
1、n型非晶質半導体層12
2、窒化シリコン層12
3を順次、CVD装置を用いて積層した後、弗硝酸及び弗酸を用いて、窒化シリコン層12
3を貫通し、n型非晶質半導体層12
2が露出するようにエッチングを行う。また、p型電極17に対応するp領域13では、基板11上に、実質的に真性な非晶質半導体層13
1、p型非晶質半導体層13
2を順次CVD装置を用いて積層する。
【0042】
続いて、基板11の裏面側のn型領域12、p型領域13に、n型細線電極16f用並びにn型バスバー電極16b用の下地電極16a、p型細線電極17f用並びにバスバー電極17b用の下地電極17aを形成した。この実施形態では、下地用電極16a、17aは、銅をスパッタ法によりメタルマスクを用いて形成した。下地用電極16a、17aは、各々厚み0.1μm〜4μm、幅0.2mmに形成した。この時、メタルマスクを用いることにより、細線電極16f(17f)の端部の半径(R)が20μm以上の円弧状部16r(17r)の間に直線状の端部16c(17c)を有する輪郭を有して形成することができる。そして、バスバー電極17b(16b)と細線電極17f(16f)の接続部もこの円弧状部16r(17r)に対応した円弧状部17bc(16bc)が形成された電極16(17)に対応した形状の下地電極16a、17aを形成することができる。
【0043】
その後、下地電極16a、17aに対して、個別に給電しながら電界メッキを行い、メッキ層16m、17mを形成して、電極16、17を完成させ、本実施形態の太陽電池10が得られる。メッキは、アノードを含りん銅、カソードを下地電極16a又は17aとし、メッキ厚10μm〜30μm、この実施形態では、10μmとした。メッキ条件は、メッキ電流は0.01A/cm
2、メッキ液は硫酸銅、電極間距離は5cm、温度は40℃とした。
【0044】
上記のように、円弧状部16r(17r)と直線状の端辺16c(17c)を有する細線電極16f(17f)により、無効領域を減らして、キャリアの収集効率を向上させる。そして、二辺が交差する部分を円弧状部16r(17r)とし、メッキ時の電流集中を抑制し、膜厚のばらつきを小さくすることができるとともに、処理領域以外がメッキされることを減らすことができる。
【0045】
なお、本発明の実施形態にかかる太陽電池を複数個用い、太陽電池モジュールを形成することができる。以下に、本発明の実施形態にかかる太陽電池を用いた太陽電池モジュールについて
図6及び
図7を参照して説明する。
図6は、本発明の実施形態にかかる太陽電池と配線タブとの接続を示す模式的平面図、
図7は、本発明の実施形態にかかる太陽電池を用いた太陽電池モジュールを示す概略断面図である。
【0046】
太陽電池モジュール60は、複数の太陽電池10を配線タブ50と渡り配線(図示しない)により形成した太陽電池ユニット60aを、ガラス等の表面保護部材41と樹脂等の裏面保護部材42の間に、EVA(Ethylene-Vinyl Acetate)等の透光性を有する封止材43を介して積層された構造を有する。
【0047】
次に、太陽電池モジュール60の形成方法について説明を行う。まず、初めに複数の太陽電池10を、一方の太陽電池10のp側電極17のバスバー電極17bと、他方の太陽電池10のn側電極16のバスバー電極16bと、が隣接するように配置する。そして、一方の太陽電池10のバスバー電極17bと、他方の太陽電池10のバスバー電極16bと、を配線タブ50を用いて電気的に接続し、ストリング60bを形成する。更に、ストリング60bとした太陽電池10は、ストリング間を接続する渡り配線(図示しない)を接続し、太陽電池ユニット60aを形成する。
【0048】
最後に、
図7に示すように、太陽電池モジュール60は、受光面側からガラス等の表面保護部材41、EVA等の透光性を有する封止材43、太陽電池ユニット60a、封止材43、裏面保護部材42をこの順序で積層し、ラミネートすることにより完成する。
【0049】
本実施形態にかかる太陽電池モジュール60は、発電した電力を効率よく収集することができる太陽電池10を用いることにより、発電効率を高くすることができる。
【0050】
なお、上記の実施形態にかかる太陽電池は、基板11に非晶質シリコン膜などを積層して形成した太陽電池を用いたが、これに限られず、ドーパントを拡散して形成した太陽電池としてもよい。さらには、上記の実施形態にかかる太陽電池は、裏面接合型の太陽電池を用いたが、これに限られず、受光面と裏面の両方に電極を形成した太陽電池としてもよく、メッキにより電極を形成するものであれば同様に適用できる。したがって、
図8に示すように、一導電型の半導体基板11の表面側に他導電型の不純物領域13を設け、基板11の裏面側に、基板11と一導電型の電極16と、スルーホール31を介して接続された他導電型の電極17を形成する場合にあっても同様に用いることができる。なお、この場合にあっては、電極17と基板11の間には、絶縁膜18が形成され、一導電型の電極16と他導電型の電極17とが接触しないように配置される。
【0051】
また、上記の実施形態においては、電極は、電解メッキを用いて形成しているが、無電解メッキで形成してもよい。なお、電極として無電解メッキで銅を析出させるためには、銅よりイオン化傾向の大きい錫やニッケルなどの金属で下地電極を形成すればよい。また、無電解メッキ液としては、例えば硫酸第二銅、エチレンジアミン四酢酸、ホルムアルデヒド、及び水酸化アルカリの少なくとも一つを主成分としているものを用いることができる。
【0052】
上記の実施形態は、スパッタ法により下地電極として銅などの蒸着金属膜からなる層を形成したが、これに限らず、例えば、導電性樹脂であるAgペーストをスクリーン印刷により形成し、加熱して、Agペーストを硬化させ、下地電極として用いることもできる。
【0053】
また、n領域12のn型非晶質半導体層12
2、またはp領域13のp型非晶質半導体層13
2、と下地電極との間には、ITO(酸化インジウム錫)、SnO
2(酸化錫)、ZnO(酸化亜鉛)等からなる透明電極を形成してもよい。
【0054】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記の実施形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。