特許第6028984号(P6028984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6028984
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】橋脚の交換方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20161114BHJP
   E01D 19/02 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   E01D22/00 A
   E01D19/02
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-41531(P2015-41531)
(22)【出願日】2015年3月3日
(65)【公開番号】特開2016-160686(P2016-160686A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2016年4月22日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・施工日 平成26年10月30日 ・施工した場所 滋賀県大津市追分町地内
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592242822
【氏名又は名称】三井造船鉄構エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505398963
【氏名又は名称】西日本高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100152261
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 隆弘
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】曽我 明
(72)【発明者】
【氏名】志熊 隆
(72)【発明者】
【氏名】笠間 慈弘
(72)【発明者】
【氏名】高田 孝史朗
(72)【発明者】
【氏名】青山 智明
(72)【発明者】
【氏名】緒方 辰男
(72)【発明者】
【氏名】垣内 憲夫
(72)【発明者】
【氏名】西浦 孝輔
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−303698(JP,A)
【文献】 特開平08−296210(JP,A)
【文献】 特開2007−321476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00−24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造を支持する一対の単柱式橋脚の間に、張出し式橋脚の基礎と、前記基礎の上方に前記一対の単柱式橋脚の橋脚間よりも短い梁部を形成する工程と、
前記単柱式橋脚が挿通する貫通孔を備えた一対の延長梁を前記単柱式橋脚の長手方向に沿って吊上げて前記梁部の両端にそれぞれ接続する工程と、
前記基礎と前記梁部の間のスペースに張出し式橋脚の柱部を設置する工程と、
前記梁部及び前記延長梁の上面、かつ前記単柱式橋脚の既存支承の周囲にジャッキを配置して前記上部構造をジャッキ受けする工程と、
前記単柱式橋脚を切断し、前記単柱式橋脚の下部から取り除いて先端を前記貫通孔から引き抜いて撤去する工程と、
前記貫通孔を閉塞して前記延長梁の上面に前記張出し式橋脚の新規支承を形成する工程と、
を有することを特徴とする橋脚の交換方法。
【請求項2】
前記延長梁は、前記梁部の長手方向に沿って前記貫通孔の径方向に二分割された一対の半割構造体を組み合わせて形成することを特徴とする請求項1に記載の橋脚の交換方法。
【請求項3】
前記柱部は材質に鉄筋コンクリートを用い、前記梁部及び前記延長梁は材質に鋼鉄を用いたことを特徴とする請求項1又は2に記載の橋脚の交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路橋、鉄道橋などの橋梁の上部構造を支持する既存の橋脚を、新規のものに建て替える橋脚の交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路橋又は鉄道橋などの橋梁の中間部分を構成する橋脚がある。
既存の橋脚は、経年劣化による老朽化や、大型地震に対する耐震性能を強化するために補強や交換(建て替え)作業が必要となる。
橋脚の補強は、一般に柱部の外周に補強鋼板を巻き付けたり、モルタルを吹き付けたりするなどして容易かつ安価に強度を高めることができる。
【0003】
一方、橋脚の建て替えの場合には、既存の上部構造を支持しながら作業を進めなければならず、いかに安全性を確保し、施工コストを抑制するかが課題となっている。また、幹線道路の場合には、通行止めを極力少なくして短期間で施工することが求められている。
【0004】
従来の交換方法としてベント(仮受け台)を用いた工法がある。この工法は、まず既存の橋脚に近接した位置に仮設のベントを設置する。このベントにより上部構造を支持した状態を確保した後、既存の橋脚を解体、撤去する。そして既存の橋脚と同じ場所に新規橋脚を建設する。新規橋脚で上部構造を支持した後、ベントを解体、撤去している。
この他、橋脚が2つの単柱型橋脚で構成されている場合の橋脚の交換方法は次のような工程を採用していた。
【0005】
図4は従来の橋脚の交換方法の説明図である。なお各ステップの上図は単柱式橋脚の先端から下方の平面図を示し、下図は橋脚の正面図を示す。
上部構造220の横桁の下部に仮支点用横梁222を設置する(ステップ100)。既存支承110aが支える主桁と比べ強度の小さい横桁に対して、仮支点用横梁222などの補強材を形成して仮支点との接触箇所を補強する。
【0006】
一対の単柱式橋脚110の橋脚間に張出し式橋脚を設置可能な基礎120を施工する(ステップ101)。
ついで基礎120の上部に張出し式橋脚の柱部140を設置する(ステップ102)。
【0007】
柱部140の上部に梁部160を設置する(ステップ103)。梁部160は既存の単柱式橋脚110を撤去することなく形成できるように、長手方向が一対の単柱式橋脚110の橋脚間よりも短い長さに設定されている。
上部構造220の荷重を支持する仮支点400を梁部160の上面に設置する(ステップ104)。仮支点400は、既存支承110aを除去した際に、一対の既存支承110aの支承間よりも狭い箇所で、上部構造220をバランスよく支持できる箇所を選択する必要がある。
【0008】
単柱式橋脚を撤去する(ステップ105)。一対の仮支点400の支点間は一対の既存支承の支点間よりも短いため、既存の単柱式橋脚を撤去すると、上部構造220の両端部分が下方に低下してしまい上部構造220に僅かな歪みが生じて負荷がかかるおそれがある。
一対の延長梁200をチェーンブロックなどの吊上げ手段を用いて梁部160まで吊上げて、梁部160の両端に接続する(ステップ106)。
【0009】
延長梁200の上面で、既存支承が設置されていた箇所よりも外側にジャッキ300を設置して上部構造220をジャッキ受けする(ステップ107)。仮支点400のみで上部構造を支えていた際に生じた上部構造220の歪みが解消されるまで持ち上げる。
【0010】
延長梁200の上面で既存支承が設置されていた箇所と同じ箇所に張出し式橋脚の新規の支承240を設置する(ステップ108)。
仮支点400及びジャッキ300を撤去すると張出し式橋脚100の支承240で上部構造220を支えることができ、橋脚の交換作業が完了する(ステップ109)。
【0011】
また特許文献1に開示の橋脚の建て替え方法は、ラケット型の橋脚の建て替え方法であって、既存橋脚を挟むように新規橋脚を2つ建て、新規橋脚によって上部構造を支持してから既存橋脚を撤去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−303698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、ベントを用いた交換方法では、既設橋脚の前後にベントを設置・施工するためのスペースを確保する必要がある。架設現場によっては、スペースを確保できず桁下の道路内などに設置しなければならない場合があり、長時間の車線規制あるいは通行止めを行わなければならないことがある。またベントによる仮支持の間も交通道路として使用するため、ベントの基礎は既存橋脚と同程度の規模が必要となる。さらに、仮基礎設置時の施工性に配慮して、省スペース化のため直接基礎とする場合には、既設橋脚の基礎よりも規模の大きな基礎寸法が必要となる。
【0014】
また図4に示す交換方法では、既存支承よりも支点間の短い仮支点で仮支持している間に上部構造に歪み等が生じて負荷がかかるおそれがある。さらに、既存支承の換わりに上部構造の荷重を支える仮支点とジャッキの間が離れているため、上部構造に歪等の負荷がかかるおそれがある。このため、交換作業の安全性を十分に確保することができないおそれがあった。
【0015】
さらに、仮支点及び仮支点用横梁を用いることにより作業コストがかかり、交換作業にかかる日数が長期化してしまう問題があった。
【0016】
特許文献1に示す建て替え方法では、2つの新規橋脚を形成しているためコスト高となり、かつ設置スペースも確保しなければならない。
【0017】
また、既存支承と異なる箇所に新規支承を形成する場合には、主桁に別途補強部を設ける必要があり、かつ、支承の数が既設より増えることでイニシャルコストの他、将来的な維持管理コストも高くなる。
【0018】
上記従来技術の問題点を解決するため、本発明は、交換作業の安全性を高めることができる橋脚の交換方法を提供することを目的としている。また本発明は、施工コストを抑えることができる橋脚の交換方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するための第1の手段として、上部構造を支持する一対の単柱式橋脚の間に、張出し式橋脚の基礎と、前記基礎の上方に前記一対の単柱式橋脚の橋脚間よりも短い梁部を形成する工程と、前記単柱式橋脚が挿通する貫通孔を備えた一対の延長梁を前記単柱式橋脚の長手方向に沿って吊上げて前記梁部の両端にそれぞれ接続する工程と、前記基礎と前記梁部の間のスペースに張出し式橋脚の柱部を設置する工程と、前記梁部及び前記延長梁の上面、かつ前記単柱式橋脚の既存支承の周囲にジャッキを配置して前記上部構造をジャッキ受けする工程と、前記単柱式橋脚を切断し、前記単柱式橋脚の下部から取り除いて先端を前記貫通孔から引き抜いて撤去する工程と、前記貫通孔を閉塞して前記延長梁の上面に前記張出し式橋脚の新規支承を形成する工程と、を有することを特徴とする橋脚の交換方法を提供することにある。
【0020】
上記課題を解決するための第2の手段として、前記延長梁は、前記梁部の長手方向に沿って前記貫通孔の径方向に二分割された一対の半割構造体を組み合わせて形成することを特徴とする橋脚の交換方法を提供することにある。
【0021】
上記課題を解決するための第3の手段として、前記第1又は第2の手段において、前記柱部は材質に鉄筋コンクリートを用い、前記梁部及び前記延長梁は材質に鋼鉄を用いたことを特徴とする橋脚の交換方法を提供することにある。
【発明の効果】
【0022】
上記のような本発明によれば、従来工法のようなベントを用いて仮支持する必要がなく、桁下の道路などの交通規制を最小限に抑えることができ、かつ施工コストの低減化を図ることができる。
【0023】
また新規橋脚を設置した後に、既存橋脚を撤去しているため、取り替え時の仮支持期間を大幅に短縮でき、かつ交通供用下での施工の安全性を向上させることができる。
【0024】
さらに、既存橋脚を下方から切断・撤去する、いわゆるだるま落としの方式で撤去することにより、高所作業を低減して安全性を向上させることができ、かつ施工スペースを最小限に抑えることができる。
【0025】
また、一対の既存支承の支点間よりも幅の狭い支点間で構造上支持しなければならない一対の仮支点による仮受期間がなく、上部構造に歪み等の負荷がかかるおそれがない。また、橋脚の延長梁を形成する工程まで既存橋脚で上部構造の荷重を支えながら交換作業を行うことができるので、上部構造に負荷をかけることなく作業の安全性を確保できる。
【0026】
また、従来のような仮支点、横桁の補強材および仮設材を省略することにより施工コストを抑えることができ、かつ既存橋脚から新規橋脚へ速やかに移行でき橋脚の交換作業にかかる日数を短期化することができる。
【0027】
上記のような本発明によれば、既存の単柱式橋脚を撤去することなく延長梁を形成することができる。また、既存の単柱式橋脚を利用して安全かつ容易に延長梁を梁部まで吊上げて、接続させることができる。
【0028】
上記のような本発明によれば、柱部に鉄筋コンクリートを用いているため、圧縮力に強く、強度を高めることができ、かつ安価であるため施工費を抑えることができる。また、梁部及び延長梁に鋼鉄を用いているため、形状加工の自由度が高く施工性が良く、交換作業にかかる日数を短期化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の橋脚の交換方法の説明図である。
図2】本実施形態の張出し式橋脚の説明図である。
図3】本実施形態の延長梁の説明図である。
図4】従来の橋脚の交換方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の橋脚の交換方法の実施形態について、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。ここで、本発明の橋脚の交換方法は、上部構造を幅方向に支持する一対の単柱式橋脚(円筒橋脚ともいう。)から張出し式橋脚(T型橋脚ともいう)に交換する方法を適用対象としている。一対の単柱式橋脚は所定間隔を開けて施工されており、この橋脚間には新たな張出し式橋脚を施工可能なスペースがあるものとする。
【0031】
[張出し式橋脚10]
図2は本実施形態の張出し式橋脚の説明図である。同図の(1)は支承から下方に向けた橋脚の平面図であり、(2)は橋脚の正面図である。図示のように、本実施形態の張出し式橋脚10は、基礎12の上部に設置された柱部14と、柱部14の先端に接続する梁部16と、梁部16の両端に接続し単柱式橋脚(不図示)が挿通可能な貫通孔18を備えた延長梁20と、延長梁20の上面で上部構造22と接触する支承24を主な基本構成としている。
【0032】
基礎12は、橋脚の下部で荷重を支えて、この荷重を地盤へ伝える最下部の構造物である。柱部14は、基礎12の上部に設置されて上部構造22の荷重を支える構造物である。
前述の基礎12及び柱部14は、材質に鉄筋コンクリートを用いている。材質に鉄筋コンクリートを用いることにより、圧縮力に強く強度を高めることができ、かつ安価であるため施工費を抑えることができる。
【0033】
梁部16は、柱部14の上部に設置されて上部構造22の荷重を上部構造22の幅方向に亘って支える構造物である。本実施形態の梁部16は、材質に鋼鉄を用いている。材質に鋼鉄を用いると、形状加工の自由度が高く施工性が良く、鉄筋コンクリートと比べて交換作業にかかる日数を短期化することができる。
本実施形態の梁部16は、既存の一対の単柱式橋脚(不図示)の橋脚間よりも短い長さに設定している。このような梁部16の構成により、既存の一対の単柱式橋脚を撤去することなく、橋梁間の基礎12上に形成することができる。
本実施形態の延長梁20は、梁部16の両端から梁部16の長手方向に沿って延出し、梁部16と同様に上部構造22の荷重を上部構造22の幅方向に亘って支持する構造物である。延長梁20は、梁部16と同様に材質に鋼鉄を用いている。これにより、形状加工の自由度が高く、施工性を良くすることができる。
【0034】
図3は本実施形態の延長梁の説明図である。同図の(1)は平面図であり、(2)は単柱式橋脚の正面側から見た図である。延長梁20は、梁部16に接続した際に平面視で、単柱式橋脚11と重なる箇所に貫通孔18を設けている。この貫通孔18は、単柱式橋脚11が挿通可能なように、単柱式橋脚11の直径よりも大きい直径となるように設定している。なお、貫通孔18は、梁部16に接続して取付位置に設置した後、図2に示す閉塞部材19を用いて容易に塞ぐことができる。閉塞部材19は、延長梁20と同様に鋼鉄を用いることができる。また、閉塞部材19は、例えば、貫通孔18の直径よりも大きい直径の平板状の蓋と、貫通孔18に嵌合する筒体を組み合わせて形成することができる。また、延長梁20は、梁部16の長手方向に沿って貫通孔18の径方向に二分割された一対の半割構造体となる第1構造体20a及び第2構造体20bを組み合わせて形成することができる。このような構成の延長梁20は、単柱式橋脚11の下部で第1構造体20a及び第2構造体20bを組み合わせて形成した後、チェーンブロックなどの吊上げ手段を用いて梁部16まで、単柱式橋脚11の長手方向に沿って、単柱式橋脚11をガイドとして、安全かつ容易に吊上げることができる。
【0035】
新規支承となる支承24は、延長梁20の貫通孔18を閉塞した上面に設置して、温度変化の影響による上部構造22の伸縮を吸収し、上部構造22を支えて上部構造22の荷重を橋脚に伝達する構造物である。
このような本実施形態の張出し式橋脚10は、形状に自由度の高い鋼鉄を梁部16及び延長梁20に用い、安価で圧縮力に強いRC(鉄筋コンクリート)部材を柱部14及び基礎12に用い、鋼鉄とRC部材を組み合わせた複合橋脚となる。
【0036】
[橋脚の交換方法]
図1は本発明の橋脚の交換方法の説明図である。
一対の単柱式橋脚11の橋脚間に本実施形態の張出し式橋脚を設置可能な基礎12を施工する(ステップ10)。
【0037】
基礎12の周囲で梁部16を仮組みする。仮組みした梁部16を下部架台32により所定高さまでジャッキアップする(ステップ11)。ついで、単柱式橋脚11の周囲で延長梁20を仮組みする。延長梁20を構成する第1構造体20a及び第2構造体20bは、梁部16の長手方向に沿って貫通孔18の径方向に二分割された一対の半割構造体である。この第1構造体20a及び第2構造体20bの半割状の貫通孔18同士を、間に単柱式橋脚11の下部を挟んで、単柱式橋脚11の径方向から軸心に向けて組み合わせる。貫通孔18に単柱式橋脚11が挿通した状態で、第1構造体20a及び第2構造体20bを互いに接続させる。そして梁部16の上面に設置した上部架台34からチェーンブロックなどの吊上げ手段を用いて、延長梁20を単柱式橋脚11の長手(軸)方向に沿って吊上げる。延長梁20を所定高さの梁部16まで吊上げた後、一対の延長梁20を梁部16の両端に接続させる。接続後は上部架台34を撤去する。
【0038】
下部架台32を用いて梁部16及び延長梁20をジャッキアップして取付位置に設置する(ステップ12)。梁部16及び延長梁20は、材質に鋼鉄を用いており、鉄筋コンクリートと比べて軽量かつ形状加工の自由度が高く施工性が良いため、一対の単柱式橋脚11の橋脚間のスペースであっても、単柱式橋脚11を撤去することなく、チェーンブロック等の吊上げ手段を用いて容易に設置することができる。
【0039】
ついで基礎12と梁部16の間のスペースに張出し式橋脚の柱部14を設置する(ステップ13)。本実施形態の基礎12及び柱部14は、材質に鉄筋コンクリートを用いているため、圧縮力が強く、強度を高めて耐震性能を向上させている。
【0040】
下部架台32を撤去する。梁部16及び延長梁20の上面、かつ単柱式橋脚11の既存支承11aの周囲にジャッキ30を配置して上部構造22をジャッキ受けする(ステップ14)。これまでの工程は、すべて既存の単柱式橋脚11の既存支承11aを介して上部構造22の荷重を支持しているため、従来の仮支点を用いる作業と比べて、交換作業の安全性を高めることができる。
単柱式橋脚11の下部を切断し、単柱式橋脚11の下部から取り除いて、単柱式橋脚11の先端にある既存支承11aを貫通孔18から引き抜いて撤去する(ステップ15)。上部構造22の荷重はジャッキ30で支えているため既存の単柱式橋脚11には一切荷重が作用していない。また、既存支承11aの周囲に配置したジャッキ30で荷重を受けているため、従来の仮支点を用いる作業と比べて、上部構造22に歪等の負荷が掛からない。よって、貫通孔18から容易に既存の単柱式橋脚11を引抜いて撤去することができる。
【0041】
閉塞部材19を用いて貫通孔18を閉塞する(ステップ16)。延長梁20は材質に鋼鉄を用いているため、鋼鉄の閉塞部材19で容易に閉塞することができる。
延長梁20の上面に張出し式橋脚の新規の支承24を設置する(ステップ17)。新規の支承24の中心を、閉塞した貫通孔18の中心に位置合わせすることにより、既存支承11aと同じ箇所に、容易に取り付けることができる。
最後にジャッキを撤去すると張出し式橋脚10の支承24で上部構造22を支えることができ、橋脚の交換作業が完了する(ステップ18)。
【0042】
このような本発明の橋脚の交換方法によれば、従来のような一対の既存支承の支点間よりも幅の狭い支点間で構造上支持しなければならない一対の仮支点による仮受期間がなく、上部構造に歪み等の負荷が掛かるおそれがない。また、張出し式橋脚の延長梁を形成する工程まで既存橋脚で上部構造の荷重を支えながら交換作業を行うことができるので、上部構造に負荷をかけることなく作業の安全性を確保できる。
【0043】
また、従来のような仮支点、横桁の補強材および仮設材を省略することにより施工コストを抑えることができ、かつ既存橋脚から新規橋脚へ速やかに移行でき橋脚の交換作業にかかる日数を短期化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の橋脚の交換方法は、一対の単柱式橋脚の間に形成する張出し式橋脚の構成を採用するあらゆる道路橋又は鉄道橋の橋梁を構成する橋脚に適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
10………張出し式橋脚、11………単柱式橋脚、11a………既存支承、12………基礎、14………柱部、16………梁部、18………貫通孔、19………閉塞部材、20………延長梁、20a………第1構造体、20b………第2構造体、22………上部構造、24………支承、30………ジャッキ、32………下部架台、34………上部架台、100………張出し式橋脚、110………単柱式橋脚、110a………既存支承、120………基礎、140………柱部、160………梁部、200………延長梁、220………上部構造、222………仮支点用横梁、240………支承、300………ジャッキ、400………仮支点。
図1
図2
図3
図4