【実施例】
【0035】
(水滲出液の調製)
温度25℃、明期16時間、相対湿度60%のグロースチャンバー室内で養液栽培したGuIV2株の茎部を、株の根元より切除し、さらに、茎部からすべての葉を切除して2節を含む茎切片を調製した。そして、調製した茎切片を直ちに2Lの純水に浸け、25℃、65〜85分間、静置して、調製した茎切片から滲出した水滲出液を得た。
【0036】
図1は、純水とカンゾウ属植物株から滲出した水滲出液とを、水滲出液の調製から10日間室温で静置した後に比較した図である。
図1中において、GuIV2−1水は、純水の容量が2L、茎切片数が70、純水への浸漬時間が65分の場合における水滲出液であり、GuIV2−2水は、純水の容量が2L、茎切片数が47、純水への浸漬時間が85分の場合における水滲出液である。同図に示すように、調製から10日間室温で静置した後の水滲出液の色の濃さは、純水への浸漬時間より、茎切片数が影響することが明らかとなった。
【0037】
(サラダ水菜の栽培)
家庭用水耕栽培キット アクアプランターフロートミニ(アクアカルチャー社製)の養液槽を、純水、GuIV2−1水、GuIV2−2水でそれぞれ満たし、苗床スポンジ上にサラダ水菜種子各50粒を播種し、グロースチャンバー室内(温度20℃、明期14時間、相対湿度60%)で栽培した。
【0038】
図2(a)〜(c)は、純水、GuIV2−1水、GuIV2−2水を用いて栽培した播種14日後のサラダ水菜を示す図である。また、表1は、播種14日後のサラダ水菜の発芽数(子葉展開数)、発芽率(子葉展開率)を比較した表である。
図2、表1中において、純水は、純水を用いて栽培したサラダ水菜であり、GuIV2−1水は、
図1のGuIV2−1水を用いて栽培したサラダ水菜であり、GuIV2−2水は、
図1のGuIV2−2水を用いて栽培したサラダ水菜である。以下、図中、表中における純水は、純水を用いて栽培した植物を示し、Gu水(GuIV2−1水、GuIV2−2水など)は、カンゾウ属植物株から滲出した水滲出液(Gu水)を用いて栽培した植物を示す。
【表1】
【0039】
図2(a)〜(c)、表1に示すように、純水と比べてGuIV2−1水、GuIV2−2水を用いて栽培したサラダ水菜は、発芽数、発芽率が良好であった。また、調製時の茎切片数が多いGuIV2−1水は、GuIV2−2水と比べ、発芽数、発芽率が高かった。
【0040】
また、各試験区において生育の良い10個体を残して間引きし、間引き植物の草丈及び根長を測定した。
図3(a)、(b)は、播種14日後のサラダ水菜の草丈、根長を測定した結果を示す図である。同図に示すように、純水に比べ、GuIV2−1水、GuIV2−2水を用いて栽培したサラダ水菜は、生育が良好であった。
【0041】
さらに、播種24日後に各試験区の液を、養液肥料HYPONEX(登録商標)6.5-6-19(ハイポネックスジャパン社製)1 g/Lに交換して栽培を継続した。
図4は、養液肥料に交換27日後のサラダ水菜を示す図である。
図4中において、純水、GuIV2−1水、GuIV2−2水は、播種時に純水、GuIV2−1水、GuIV2−2水のそれぞれを用いて栽培したサラダ水菜を示している。
図4に示すように、栽培初期においてGuIV2−1水、GuIV2−2水を用いたサラダ水菜は、純水を用いて栽培したサラダ水菜より、生育が良好であった。
【0042】
以上の結果から、GuIV2株の植物体の茎部から滲出した水滲出液は、発芽促進効果、及び、初期生育促進効果が高いことが明らかとなった。
【0043】
(スイートバジルの栽培)
純水、
図1のGuIV2−1水、
図1のGuIV2−2水を用いてスイートバジルを栽培した。純水、GuIV2−1水、GuIV2−2水を調製後14日間静置した後、サラダ水菜の栽培と同様に、家庭用水耕栽培キット アクアプランターフロートミニ(アクアカルチャー社製)の養液槽を、純水、GuIV2−1水、GuIV2−2水でそれぞれ満たし、苗床スポンジ上にスイートバジル種子各50粒を播種し、同条件(グロースチャンバー室、温度20℃、明期14時間、相対湿度60%)で栽培した。
【0044】
図5(a)〜(c)は、純水、GuIV2−1水、GuIV2−2水を用いて栽培した播種14日後のスイートバジルを示す図である。また、表2は、播種14日後のスイートバジルの発芽数(子葉展開数)、発芽率(子葉展開率)を比較した表である。
【表2】
【0045】
図5(a)〜(c)、表2に示すように、純水と比べてGuIV2−1水、GuIV2−2水を用いて栽培したスイートバジルは、発芽数、発芽率が良好であった。
【0046】
また、各試験区において生育の良い10個体を残して間引きし、間引き植物の草丈及び根長を測定した。
図6(a)、(b)は、播種14日後のスイートバジルの草丈、根長を測定した結果を示す図である。同図に示すように、純水に比べ、GuIV2−1水、GuIV2−2水を用いて栽培したスイートバジルは、生育が良好であった。
【0047】
さらに、播種16日後に各試験区の液を、養液肥料HYPONEX(登録商標)6.5-6-19(ハイポネックスジャパン社製)1 g/Lに交換して栽培を継続した。
図7は、養液肥料に交換21日後のスイートバジルを示す図である。
図7中において、純水、GuIV2−1水、GuIV2−2水は、播種時に純水、GuIV2−1水、GuIV2−2水のそれぞれを用いて栽培したスイートバジルを示している。同図に示すように、栽培初期においてGuIV2−1水、GuIV2−2水を用いたスイートバジルは、純水を用いて栽培したスイートバジルより、生育が良好であった。
【0048】
以上の結果から、GuIV2株の植物体の茎部から滲出した水滲出液は、発芽促進効果、及び、初期生育促進効果が高いことが明らかとなった。
【0049】
(ミニトマトの栽培)
純水、Gu#11水を用いて、SOLANACEAEナス科トマト属のマメトマト(学名:Lycopersicon esculentum Mill. var. cerasiforme (Dunal) A.Gray、商品名:ミニトマト「シュガーランプ」サカタのタネ(登録商標))を栽培した。Gu#11水は、温度25℃、明期16時間、相対湿度60%のグロースチャンバー室内で養液栽培したGu#11株の植物体の茎部を、株の根元より切除し、さらに、茎部からすべての葉を切除して2節を含む茎切片60切片を調製し、調製した茎切片60切片を直ちに2Lの純水に浸け、25℃、60分間、静置して、調製した茎切片60切片から滲出した水滲出液である。
【0050】
アクアプランターのそれぞれのスポンジに、純水、Gu#11水を十分保持させたのち、それぞれのスポンジ上にミニトマト種子50粒を置床し、純水、Gu#11水で栽培を開始した。乾燥防止のため、播種から19日目までは、アクアプランターにポリエチレン製ラップをかけて、温度25℃、明期16時間、相対湿度60%の条件で栽培を行った。
【0051】
播種5日後にミニトマト種子の発根が認められ、8日目の発根数は水処理区(純水での栽培)では34株、Gu#11水処理区(Gu#11水での栽培)では32株となり、そのうち、発芽(出芽)個体は水処理区では1株、Gu#11水処理区では9株であり、Gu#11水処理区のミニトマトの方が、発芽が優勢であった。
図8(a)、(b)は、純水、Gu#11水を用いて栽培した播種15日後のミニトマトを示す図である。同図に示すように、播種15日後の子葉が完全に展開した株数は、水処理区のミニトマトでは6株、Gu#11水処理区のミニトマトでは9株であった。このため、Gu#11水を用いて栽培したミニトマトの方が、生育が良好であった。
【0052】
播種15日後に、純水、Gu#11水処理両区ともに、養液を養液肥料HYPONEX(登録商標)6.5-6-19(ハイポネックスジャパン社製)1 g/Lに交換して、以後、水位が低下したら同養液を補充し、水位を維持して栽培を継続した。
図9は、播種29日後のミニトマトを示す図である。
図9中において、純水、Gu#11水は、播種時に純水、Gu#11水のそれぞれを用いて栽培したミニトマトを示している。同図に示すように、Gu#11水を用いて栽培したミニトマトの方が、生育が良好であった。
【0053】
播種29日後に、ミニトマトの支持体のスポンジを半分に分割し、生育株数のおよそ半数の株(水処理区:9株、Gu#11水処理区:18株)について生育調査を行った。
図10は、播種29日後のミニトマトの草丈の分布を示す図である。また、
図11は、播種29日後のミニトマトの草丈の平均値を示す図である。同図に示すように、ミニトマトの初期栽培期間にGu#11水を施用した試験区(n=18)では草丈の平均値が38.7 mm(標準誤差4.4 mm)であり、純水で初期栽培を行った試験区(n=9)では草丈の平均値が23.8 mm(標準誤差5.6 mm)であった。このため、Gu#11水を用いて栽培したミニトマトの方が、生育が良好であった。
【0054】
以上の結果から、Gu#11株の植物体の茎部から滲出した水滲出液を用いて栽培した植物は、子葉の展開率が高く、その後の植物の成長も良いため、この水滲出液は、発芽促進効果、及び、初期生育促進効果が高いことが明らかとなった。
【0055】
(トウモロコシの栽培)
純水、Gu#11水を用いて、POACEAEイネ科トウモロコシ属のトウモロコシ(学名:Zea mays L.、商品名:トウモロコシ「スイートコーン、ピーターコーン、ハニーバンタム」サカタのタネ(登録商標))を栽培した。Gu#11水は、上述したミニトマトを栽培した水滲出液と同一であり、Gu#11株の植物体から滲出した水滲出液を用いた。アクアプランターのそれぞれのスポンジに、純水、Gu#11水を十分保持させたのち、それぞれのスポンジ上にトウモロコシ種子12粒を置床し、純水、Gu#11水で栽培を開始した。乾燥防止のため、播種から10日目までは、アクアプランターにポリエチレン製ラップ(草丈が伸びたものについてはプラカップ)をかけて、温度25℃、明期16時間、相対湿度60%の条件のグロースチャンバーで栽培を行った。
【0056】
播種8日後の発芽(出芽)数を比較すると、水処理区(純水での栽培)では8株、そのうち4株の成長が良好で、Gu#11水処理区(Gu#11水での栽培)では6株、そのうち6株すべての成長が良好であった。播種10日後、水処理区では生育良好な株は3株となり、4株の先端が黒く変色しはじめた。また、Gu#11水処理区では、4株が生育良好で、2株の先端が黒変した。また、同日、乾燥防止のためのラップとプラスチックカップを外した。
【0057】
図12は、純水、Gu#11水を用いて栽培した播種15日後のトウモロコシを示す図である。同図に示すように、水処理区では、4株の成長が良好で、先端が枯れていたものが3株、成長不良のものが2株であり、Gu#11水処理区では、4株の成長が良好で、先端が枯れていたものが2株であった。
【0058】
播種15日後に、純水、Gu#11水処理両区ともに、養液を養液肥料HYPONEX(登録商標)6.5-6-19(ハイポネックスジャパン社製)1 g/Lに交換して、以後、水位が低下したら同養液を補充し、水位を維持して栽培を継続した。
図13(a)、(b)は、純水、Gu#11水を用いて栽培した播種17日後のトウモロコシの根を示す図である。同図に示すように、Gu#11水を用いて栽培したトウモロコシの根の方が、生育が良好であった。
【0059】
図14は、純水、Gu#11水を用いて栽培した播種26日後のトウモロコシを示す図である。同図に示すように、Gu#11水を用いて栽培したトウモロコシの方が、成長が良好な株数が多く、地上部も生育していた。
【0060】
また、播種15日後、26日後において、生育の良好な両区4株の地上部の草丈を測定した。
図15は、純水、Gu#11水を用いて栽培したトウモロコシの地上部の草丈の平均値を示す図である。同図に示すように、播種15日後では、Gu#11水を施用した試験区(n=4)では草丈の平均値が16.0 cm(標準誤差0.9 cm)、純水で初期栽培を行った試験区(n=4)では草丈の平均値が7.2 cm(標準誤差1.6 cm)であり、Gu#11水処理区のトウモロコシの方が有意に(p<0.01)草丈が高いことが明らかになった。また、播種26日後では、Gu#11水を施用した試験区(n=4)では草丈の平均値が49.5 cm(標準誤差3.2 cm)、純水で初期栽培を行った試験区(n=4)では草丈の平均値が39.0 cm(標準誤差5.9 cm)であり、Gu#11水処理区のトウモロコシの方が、草丈の平均値は高いことが明らかになった。
【0061】
以上の結果から、Gu#11株の植物体の茎部から滲出した水滲出液は、発芽後の初期成長を顕著に促進させる効果が高いことが明らかとなった。
【0062】
(オタネニンジンの栽培)
純水、Gu水を用いて、ARALIACEAEウコギ科トチバニンジン属のオタネニンジン(学名:Panax ginseng C.A.Mey.)を栽培した。Gu水は、温度25℃、明期16時間、相対湿度60%のグロースチャンバー室内で養液栽培したGuIV1株、GuIV2株、Gu#11株の植物体の茎部を、株の根元より切除し、さらに、茎部からすべての葉を切除して2節を含む茎切片約14g(約50〜70本)を調製し、調製した茎切片約14gを直ちに2Lの純水に浸け、25℃、60分間、静置して、調製した茎切片約14gから滲出した水滲出液である。
【0063】
ツリーポット(株式会社山利製作所製)にバーミキュライトを充填し、長野県産のオタネニンジン芽切り種子40粒を播種し、純水、Gu水をそれぞれ給水しながら栽培した。栽培は15℃の培養庫、4℃の保冷庫の2試験区にて行った。
【0064】
15℃の試験区(15℃での栽培)では、播種54日後より発芽(出芽)が認められ、播種160日後における発芽数は、水処理区(純水での栽培)で12株、Gu水処理区(Gu水での栽培)で19株であった。
図16は、15℃の試験区におけるオタネニンジンの発芽率を比較した結果を示す図である。また、
図17(a)、(b)は、15℃の試験区において純水、Gu水を用いて栽培した播種113日後のオタネニンジンを示す図である。また、
図18(a)、(b)は、15℃の試験区において純水、Gu水を用いて栽培した播種116日後のオタネニンジンを示す図である。同図に示すように、15℃での栽培において、Gu水は、オタネニンジンの発芽を促進する効果があった。
【0065】
また、15℃の試験区におけるオタネニンジン実生の葉数を、それぞれの処理区間で比較した。
図19は、播種160日後までにおける、葉数が2枚の実生の割合を、水処理区とGu水処理区で比較した結果を示す図である。同図に示すように、水処理区では、葉数が2枚の実生の割合が、播種した種子の2.5%(発芽種子の8.3%)であったのに対し、Gu水処理区では、葉数が2枚の実生の割合が、播種した種子の15%(発芽種子の31.6%)であり、Gu水が葉数を増加させる効果を有することが示された。また、オタネニンジンは通常1年間に1枚ずつ葉が増えていくが、Gu水を用いて栽培することにより発芽が促進され、薬用部位である根をより早く得られる可能性が示された。
【0066】
4℃の試験区(4℃での栽培)では、播種106日後より発芽が認められ、発芽数は、水処理区で3株、Gu水処理区で9株であった。また、播種117日後における発芽数は、水処理区では8株、Gu水処理区では14株であった。
図20は、4℃の試験区におけるオタネニンジンの発芽率を比較した結果を示す図である。また、
図21(a)、(b)は、4℃の試験区において純水、Gu水を用いて栽培した播種106日後のオタネニンジンを示す図である。同図に示すように、4℃での栽培において、Gu水は、オタネニンジンの発芽を促進する効果があった。
【0067】
以上の結果から、GuIV1株、GuIV2株、Gu#11株の植物体の茎部から滲出した水滲出液は、植物の発芽を促進する効果を有することが明らかとなった。また、15℃における栽培では、植物の葉数を増加させる効果を有することが明らかとなった。