(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029033
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】装置を備える分散型エネルギー形成施設およびアイランド電源網の識別方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20161114BHJP
G05F 1/67 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M7/48 R
G05F1/67
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-532341(P2014-532341)
(86)(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公表番号】特表2014-528235(P2014-528235A)
(43)【公表日】2014年10月23日
(86)【国際出願番号】EP2012068813
(87)【国際公開番号】WO2013045412
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2015年9月15日
(31)【優先権主張番号】102011054002.4
(32)【優先日】2011年9月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514076674
【氏名又は名称】エイイーアイ パワー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】AEI Power GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ハンチェル,ヨヘン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,フェリックス
【審査官】
柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−172971(JP,A)
【文献】
特開2007−215392(JP,A)
【文献】
特開2005−252172(JP,A)
【文献】
特開2010−028977(JP,A)
【文献】
米国特許第06107784(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00−11/00
G05F 1/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電源網(4)に給電するための分散型エネルギー形成施設(1)の監視方法であって、インバータ(7)を備えており、該インバータは入力側直流電圧(3)から互いに位相のずれた交流電流を形成し、該交流電流が前記電源網(4)に給電され、当該方法は、
a)電源網交流電圧の各相に対して電力目標値(PL1,PL2,PL3)を生成し、これにより、各形成された交流電流を、電源網交流電圧のそれぞれの相の振幅、周波数および位相に適合するステップと、
b)電源網交流電圧の所定の1つの相(i)に対する前記電力目標値(PL1,PL2,PL3)を、所定の第1の程度(X)だけ所定の時間内で変化するステップと、
c)電源網交流電圧の少なくとも1つの他の相(j≠i)に対する電力目標値を、所定の第2および/または第3の程度(Y2,Y3)だけ同じ時間内で逆相に変化し、前記第2(Y2)と第3の程度(Y3)の和を前記第1の程度(X)と同じにするステップと、
d)変化された電力目標値に基づいて、前記インバータ(7)により交流電流を形成するステップと、
e)電源網交流電圧の少なくとも1つの所定の相(i)の振幅を、所定の時間内で測定するステップと、
f)前記電源網交流電圧の少なくとも1つの所定の相(i)の測定された振幅が最大許容量(Z)を超えて変化する場合を確定するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記エネルギー形成施設(1)は、太陽光発電機(2)を有する太陽光発電施設であり、前記太陽光発電機は直流電圧入力電力を前記インバータ(7)に対して送出する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記太陽光発電機(2)は、その個別の最大電力点で稼働され、これにより目下の環境条件の下で最大直流電圧入力電力を前記インバータ(7)に対して提供する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
変化された電力目標値に基づき前記インバータ(7)によって交流電流を形成する前記ステップd)は、相の交流電流に対する目標値を、電力目標値に基づきそれぞれの相交流電圧の目下の実際値を考慮して決定し、当該交流電流を達成するために前記インバータを制御することを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
交流電流を形成する前記ステップd)は、相の交流電流に対する目標値を、相電圧の振幅が同じであるとの前提の下で決定し、当該交流電圧を達成するために前記インバータを制御することを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
電源網交流電圧の所定の相(i)に対する電力目標値を変化させる前記ステップb)は、当該電力目標値の低減を含み、電源網交流電圧の少なくとも1つの他の相(j)に対する電力目標値を逆相に変化させる前記ステップc)は、当該電力目標値の増大を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
電源網交流電圧の少なくとも1つの他の相(j)に対する電力目標値を、所定の第2および/または第3の程度だけ逆相に変化させる前記ステップc)は、他の2つの相のそれぞれに対する電力目標値を第2ないし第3の程度(Y2,Y3)だけ変化させることを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の程度と第3の程度(Y2,Y3)は等しく、前記第1の程度(X)の絶対値のそれぞれ半分に相当する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
電源網交流電圧の少なくとも1つの他の相(j)に対する電力目標値を、所定の第2および/または第3の程度だけ逆相に変化する前記ステップc)は、前記他の2つの相(j)の1つに対する電力目標値だけを、前記第1の程度(X)に相当する第2の程度(Y2)だけ変化し、一方、前記他の2つの相の別の1つに対する電力目標値は変化せずにそのままにすることを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
電源網交流電圧の相の振幅を測定する前記ステップe)と、測定された振幅が最大許容量を超えて変化する場合を確定する前記ステップf)は、電力目標値が第2の程度(Y2)だけ変化する他の2つの相の1つに対しても同時に実行される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記所定の時間は、電源網交流電圧の1周期に相当し、前記所定の時間の開始は、電源網電圧の前記所定の相(i)のゼロ通過と同期している、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
電源網交流電圧の少なくとも1つの所定の相(i)の振幅の変化に対する前記最大許容量(Z)は、前記第1の程度(X)にほぼ相当する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップf)で、測定された振幅の少なくとも1つが最大許容量(Z)を超えて変化したことが確定される場合、前記エネルギー形成施設(1)が自動的に電源網から分離される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップf)で、測定された振幅の少なくとも1つが最大許容量(Z)を超えて変化したことが確定される場合、前記ステップa)からf)がさらなる時間の後、前記所定の第1の程度、前記所定の第2の程度および前記最大許容量に対して増大された設定値(X’,Y’2,Y’3,Z’)により繰り返される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
電源網電圧の1つの相の少なくとも1つの振幅が、前記増大された最大許容量(Z’)を超えて変化した場合、前記エネルギー形成施設(1)が自動的に電源網(4)から分離される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記増大された設定値は、前記ステップa)からf)の第1の実行経過の際の所定の値の少なくともほぼ2倍の大きさである、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
当該方法は周期的に、電源網交流電圧の3つの相のそれぞれを前記所定の相として交互に繰り返される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
三相電源網(4)に給電するための分散型エネルギー形成施設(1)、とりわけエネルギー供給網に給電するための太陽光発電施設であって、三相インバータ(7)を備え、該三相インバータはとりわけ太陽光発電機(2)の入力側直流電圧を、互いに位相のずれた三相交流電流に変換し、該三相交流電流が前記電源網(4)に給電され、前記エネルギー形成施設(1)はさらに、
前記インバータ(7)に給電される電力を目下の最大電力値に制御する制御装置(6)と、
前記エネルギー形成施設(1)の動作パラメータを検出するセンサ装置(8)と、
前記エネルギー形成施設(1)を前記電源網から分離し、および前記電源網に接続する分離装置(21)と、
前記制御装置(6)、前記センサ装置(8)および前記分離装置(21)と接続されており、前記インバータ(7)の動作を制御する調整制御装置(9)と、
を有し、
前記調整制御装置(9)は、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法を実施するためのロジック(19)を有し、必要に応じて前記分離装置(21)を作動し、前記エネルギー形成施設(1)を前記電源網(4)から分離させる、分散型エネルギー形成施設(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイランド電源網を識別するための分散型エネルギー形成施設の監視方法、並びにこの種の監視装置を備える分散型エネルギー形成施設に関する。
【背景技術】
【0002】
分散型エネルギー形成施設は、エネルギーを公衆または私的給電網に供給するため、または電気負荷に給電するためにますます使用されている。これに関しては太陽光発電施設、燃料電池施設等の種々の施設が公知であり、入力側で使用可能な直流電力を出力側の交流電力に変換するためにインバータが使用される。電源網結合の際にインバータは出力側で電源網に位相同期して動作し、これによりインバータは、電源網電圧の周波数と振幅に対応する交流電圧と、これに同期する交流電流を形成する。
【0003】
電源網欠落の際、例えば電源網障害または例えば電源網で作業するための意図的な電源網遮断の際に、インバータによるさらなる給電およびこれに結び付いた危険性を回避するために、規則どおりに電源網監視用の装置を設けなければならない。この装置は、動作パラメータの測定によって電源網欠落を識別し、これに基づいてエネルギー形成施設を電源網から自動的に分離する。測定パラメータとして従来は電源網電圧の電圧および周波数が頻繁に利用されている。
【0004】
三相電源網電圧監視と称される方法では、電源網欠落を識別するために、例えば三相電源網電圧の3つの外部導体の相電圧の振幅と電圧が監視される。電圧および/または周波数が電源網電圧のそれぞれの定格値から最大限界値だけ異なると、エネルギー形成施設が所定の時間内で電源網から分離される。
【0005】
この方法はかなり簡単に実現され基本的に適しているが、個別の事例では電源網欠落の識別の際に問題が生じることがある。例えばエネルギー形成施設により形成される電力と、局所的負荷により取り出される電力との間に平衡状態が形成されると、この平衡状態が電源網の欠落ないし遮断後に、監視されるパラメータとしての電圧および周波数の変化を引き起こさない。電力平衡状態により有用な遮断基準が存在せず、そのため施設が遮断されない。そのため電源網欠落後にも電圧がさらに電源網に印加される。このことはいわゆる望ましくないアイランド運転と称される。このアイランド運転は、例えば保守要員にとって危険である。なぜなら遮断された電源網区間では電圧の存在することが予期されていないからである。電力平衡状態の場合でも、電源網の遮断後にエネルギー形成施設が確実に電源網から分離されることを保証しなければならない。
【0006】
ドイツ規格案VDE0126(非特許文献1)は、望ましくないアイランド運転の結果としての遮断を検査するために検査回路を予定している。この検査回路は、バランスのとれた給電状態および負荷状態、並びに遮断により電源網アイランドを形成し得る電源網領域の電圧および周波数安定化条件をシミュレートする。そのためにインバータの直流電圧側には制御可能なエネルギー源を介して給電され、一方、交流電圧側では出力側に並列に抵抗、チョークコイルおよびコンデンサが接続され、これらがRLC発振回路を形成し、形成された有効電力および無効電力に対して細かく段階的に適合することができる。RLC発振回路は、電力が電源網に出力されないようにインバータを負荷するよう調整される。三相構成体を検査するために検査回路は、順番にそれぞれ少なくとも1つの外部導体に接続され、一方、他の1つまたは2つの外部導体は電源網に直接接続される。遮断は、電源網分離後のそれぞれ所定の最大持続時間内に、すなわち約0.2秒以内に行われなければならない。インバータがこの種のバランスのとれたRLC発振回路により負荷される場合、適切な付加的措置無しでは、電圧および周波数監視だけでは電源網欠落が確実には識別されない。
【0007】
この種の措置として、電源網インピーダンス測定の方法が提案されている。ここでは電圧および/または電流のような電源網パラメータが、測定機器によってアクティブに、またはインバータ自体によって影響を受け、この影響から電源網インピーダンスが導出される。例えば電源網交流電圧のゼロ通過の領域では、測定機器によって一定の電流値をパルスとして電源網に印加することができる。この種のゼロ通過の間に一定の電流を引き起こすのに必要な電圧が、計算される電源網インピーダンスに対する尺度である。電源網交流電圧のゼロ通過でのパルスの代わりに、この電源網電圧に高調波発振を重畳変調することもできる。いずれにしろ電源網インピーダンスを決定し、許容限界値と比較することができる。規格案VDE0126は、電源網インピーダンス測定を、望まれないアイランド運転を阻止するための信頼できる方法として評価しており、電源網インピーダンスとインピーダンス跳躍に対する限界値を指示している。
【0008】
しかし電源網インピーダンス測定には欠点もある。例えば電流パルスないし電流信号を加えることにより、電源網電圧の高調波成分が増大する。このことは、エネルギー供給企業により無制限には許容されない。さらに面倒な同期化を行わない場合には、インピーダンス測定の原理で動作する複数のインバータが、1つの共通の給電領域において互いに影響し合うことがある。
【0009】
電源網欠落を識別するためのさらなる方法も提案されている。実際から公知の方法では、出力側交流電流の位相を交流電圧に対してずらして設定することにより、例えばインバータに容量性の特性が付与される。インバータの容量が、VDE0126による検査の際に、例えばバランスされた負荷、すなわち例えばバランスされたRLC発振回路の容量に直列に接続されるので、これによりLC並列発振回路の基本周波数が変化し、そのためこの発振回路は電源網欠落の際に電源網の周波数をもはや正確に維持することができなくなる。これにより個々の外部導体電圧の位相が変化し(すなわち、時計線図では外部導体電圧の針が別々に経過し)、このことを望ましくないアイランド運転として識別することができる。
【0010】
しかし電流と電圧との間に短時間の位相シフトを付加することにより、有効電力の無効電力に対する絶対値の関係を表す電力係数cosφが減少する。効率が低下し、無効電力の割合が上昇する。このことはエネルギー供給企業には望ましいことではない。できるだけ電力係数cosφが1に等しいように努めるべきである。
【0011】
別の公知の方法では、アイランド識別のためにインバータの出力電力が短時間変化される。電源網が接続されている場合、このことは電源網電圧の振幅も安定して保持する。しかし電源網欠落の場合には電源網振幅が変化し、このことはアイランド運転として識別することができる。
【0012】
ここでの欠点は、インバータの出力電力の変化の際に、その入力電力も変化することである。太陽光発電施設ではこれにより、例えば太陽光発電機の動作点が不利な影響を受ける。すなわち太陽光発電施設では、専用の制御装置が太陽光発電機の動作点を、稼働時に常に電力最適化して、発電機が目下の光線放射条件にしたがって可及的に最大の電力を常に出力するように調整する。(この目下の最大出力効率を備える動作点はMPP点(最大電力点)と称され、制御装置はMPPトラッカーと称される。)出力電力の短時間の変化によりインバータの入力電力が変化すると、MPP点が太陽光発電機の特性曲線を逸脱することになる。これにより効率が悪化する。さらに電源網におけるフリッカー成分が上昇する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】ドイツ規格案VDE0126
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ここから出発して本発明の課題は、前記の不備な点を除去し、分散型エネルギー形成施設のために、電源網欠落の確実な識別のための措置を提案することである。とりわけ本発明の課題は、電源網に給電する分散型エネルギー形成施設の監視方法、並びに所属の監視装置を備える分散型エネルギー形成施設を創成することであり、この監視装置は、施設により形成される電力と、局所的負荷より取り出される電力とが平衡状態である場合でも、例えば規格案VDE0126により提案されたバランスされたRLC発振回路による発振回路検査の場合のように、電源網欠落の確実な識別を可能にする。有利には電源網欠落の識別を、効率損失無しで可能にすべきである。さらに太陽光発電施設に使用する場合に、太陽光発電機の最適MPP動作点の逸脱を回避すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題は、本発明により請求項1の特徴を備える方法、および請求項16によるエネルギー形成施設によって解決される。
【0016】
本発明の方法は、入力側直流電圧から互いに位相がずれており電源網に給電される三相交流電流を形成するインバータを備えており、三相電源網に給電する分散型エネルギー形成施設を監視するために設けられる。この方法は以下のステップを有する。すなわち:a)電源網交流電圧の各相に対する電力目標値を生成し、これにより、形成された各交流電流を、電源網交流電圧のそれぞれの相の振幅、周波数および位相に適合させるステップと、b)電源網交流電圧の所定の相に対する前記電力目標値を、所定の第1の程度だけ所定の時間内で変化させるステップと、c)電源網交流電圧の少なくとも1つの他の相に対する前記電力目標値を、所定の第2および/または第3の程度だけ同じ時間内で逆相に変化させ、前記第2と第3の程度の和を前記第1の程度と同じにするステップと、d)変化した電力目標値に基づいて交流電流をインバータにより形成するステップと、e)前記電源網交流電圧の少なくとも1つの所定の相の振幅を、所定の時間内で測定するステップと、f)前記電源網交流電圧の少なくとも1つの所定の相の測定された振幅が最大許容量を超えて変化する場合を確定するステップと、を有する。
【0017】
したがって本発明は、望まれないアイランド運転を識別するための有効電力変更方法において、インバータの出力電力を短時間変化させる。さらに本発明は、電源網電圧の所定の相、例えばL1に対する電力目標値、すなわち給電すべき電力の目標値を、所定の第1の程度だけ所定の時間内で低減または増大する。しかし1つの相、例えばL1に対する出力側での交流電力の低減または増大は、他の少なくとも1つの相、例えばL2および/またはL3における出力電力の対応の増大ないし低減によって補償される。この目的のために、電源網交流電圧の第2の相、例えばL2および/または第3の相、例えばL3に対する電力目標値は、第2または第3の程度の和が絶対値的に第1の程度に相当するように逆相に変化される。例えば相L1に対する電力目標値が2%低減される場合、相L2および/またはL3に対する電力目標値は合わせて2%増大される。
【0018】
インバータの出力電力は、全ての相を合計すれば結果として同じに留まる。これによりインバータの入力電力も変化せず、したがって直流電圧源、例えば太陽光発電機から十分に一定の電力が取り出される。とりわけ例えば太陽光発電機の動作点は変化せず、その最適動作点(MPP点)を逸脱しない。有効電力変更の原理を基礎とすることによって、形成された電力と局所的負荷により取り出される電力とが平衡している場合でも、電源網欠落が本発明により常に確実に識別される。電源網欠落の場合だけ、少なくとも1つの所定の相の電源網交流電圧の振幅が、これが識別され、施設が遮断されることとなるように変化する。
【0019】
好ましい適用では、エネルギー形成施設が太陽光発電機を有する太陽光発電施設であり、太陽光発電機は直流電圧入力電力をインバータに対して送出する。ここで太陽光発電機は好ましくはその個別の最大電力点(MPP点)で稼働され、これにより目下の環境および動作パラメータにおいて最大直流電圧入力電力をインバータに対して送出し、目下の最大出力効率を可能にする。本発明による電源網欠落の識別では、インバータを相変わらずMPP動作点で制御することができる。
【0020】
例えば一実施形態ではMPPトラッカーが、それぞれのMPP動作点を表す電圧目標値を決定し、電圧制御器に引き渡すことができる。次にこの電圧制御器は、インバータの入力電圧を所要の値に制御し、入力電圧を電圧目標値に一定に保持するために後続のインバータ制御器に電力目標値を設定する。インバータ制御器は所定の電力目標値を得るために、交流電流を所要の値に制御する。調整制御装置が、電流制御器により設定された交流電流を達成するために、例えばインバータのスイッチング素子を適切に制御する。
【0021】
一般的に、使用可能な電力は、電源網電圧の全ての相に均等に分散される。すなわち1つの相の電力目標値は、電圧制御器により設定された全体電力目標値の実質的に三分の一である。そこからそれぞれの相電圧の目下の実際値を考慮して、それぞれの交流目標値が全ての相に対して正確に決定される。たとえ個々の相電圧の振幅が互いに僅かに異なっていても、発電機からの電力取り出しは十分に一定である。
【0022】
本発明の一変形実施形態では、相電圧の振幅が互いに同じであり、例えば定格値に相当するとの単純化した前提の下で、インバータ目標値が相ごとに決定される。つまり、相電圧の目下の実際値はここでは考慮されない。この場合、それぞれの相に対する電力目標値の代わりに、インバータ目標値を直接設定し、アイランド識別のための本発明の方法に対応して変化させることができる。これによりコストが低減される。このような場合、本発明の方法のステップa)からf)における概念「電力目標値」は「電流目標値」に対応することが理解される。
【0023】
好ましい一実施形態では、本発明の方法のステップb)において電源網交流電圧の1つの所定の相に対する電力目標値(ないし電流目標値)が低減され、一方、ステップc)では電源網交流電圧の他の相の少なくとも1つに対する電力目標値(ないし電流目標値)が高められる。しかし1つの所定の相に対する電力目標値を増大するという反対のやり方も可能である。
【0024】
好ましい一実施形態では、電力目標値(ないし電流目標値)が他の2つの相に対して同じ程度に変化する。すなわち第2と第3の程度は等しく、かつ第1の程度の絶対値のそれぞれ半分である。例えば第1の程度が2%であれば、第2と第3の程度はそれぞれ1%である。このことは、不平衡負荷が他の2つの相に均等に分散されるという利点を有する。第2と第3の相の出力電力は定格電力に近い。このことは、電源網の影響が小さく、例えばフリッカー形成が小さいという結果をもたらす。
【0025】
本発明の別の有利な一実施形態では、他の2つの相の1つに対する電力目標値(ないし電流目標値)だけが、第1の程度に等しい相応の程度だけ変化する。例えば第1の相に対する電力目標値が2%低減される場合、第2の相に対する電力目標値が2%増加する。第3の相に対する電力目標値は変化されないままである。電力目標値が変化された2つの相に対して測定を同時に実行することが可能である。すなわちこの場合、これら2つの相に対しては定格電力に対する偏差が大きくなる。しかし測定の頻度は低減され、したがって1つの相に対して不平衡負荷が発生する時間は稀になる。
【0026】
所定の時間は、好ましくは電源網交流電圧の一周期に対応することができる。このことは、とりわけ所定の時間の開始が電源網電圧の所定の相のゼロ通過と同期されている場合、電流跳躍が低減された場合における電流制御を簡単にする。電源網欠落として識別するためにそれぞれの相の電源網電圧の振幅が十分に変化するためには、電源網電圧の1周期で十分である。
【0027】
電源網電圧の少なくとも1つの所定の相の振幅の変化に対する最大許容量は、所定の時間内で電源網欠落の確実な識別が可能であるように適切に選択される。好ましくは最大許容量は、この所定の相に対する電力目標値の変化の第1の程度にほぼ相当する。好ましい一実施形態では、振幅の最大許容変化と第1の程度は両方とも約2%である。
【0028】
本発明の一実施形態では、1つの所定の相に対して測定される電源網交流電圧の振幅の変化が最大許容量を上回る場合、エネルギー形成施設が自動的に電源網から分離される。この方法は比較的迅速に実行することができ、電源網欠落を確実に識別するために、第1の程度に対する設定値と電源網電圧の変化の最大許容量とを、例えば約4%に高めることができる。
【0029】
本方法の好ましい択一的な一実施形態では、ステップa)からf)を、第1の程度と最大許容量に対して例えば2%だけ低減された設定値でまず最初に実行する。電源網電圧の変化が許容最大量を上回ることが確定されると、このことは電源網欠落に対する所与の確率(以下「疑い」)と解釈され、ステップa)からf)が、さらなる時間後に所定の第1の程度と最大許容量に対して例えば4%の増大された値により繰り返される。所定の相に対する電源網電圧の変化がこの増大された最大許容量を上回る場合、これは最終的に電源網欠落として確定され、施設は自動的に電源網から分離される。有利には電流は、本方法の第1の実行経過の間、僅かだけ低減される。このことは、個々の相において定格電力に対する小さな偏差と僅かなフリッカー現象を引き起こす。「疑い」だけの場合、電流変化が強められて実行経過が繰り返される。不平衡負荷と電源網への対応する作用が、これにより小さく維持される。
【0030】
前記さらなる時間は、前記所定の時間と同じように電源網交流電圧の1周期に相当することができる。さらに第1の程度と電源網電圧の許容最大量に対して増加された値は、第1の実行経過中の値の少なくともほぼ2倍に相当することができる。
【0031】
本発明の方法は好ましくは周期的に、電源網電圧の3つの相のそれぞれを所定の相として交互に繰り返される。例えば方法ステップを、電源網電圧の1つの周期の間(例えば50Hz電源網周波数の場合は約40ms)第1の相に対して実行し、必要に応じて評価時間と待機時間の後、例えば電源網電圧のさらなる周期の後、増大した設定値により検証することができる。例えば10周期の時間(50Hz電源網周波数の場合は200ms)の後、本方法が第2の相L2に対して実行される。さらなる例えば20周期(400ms)の後、本方法は第3の相L3に対して実行される。
【0032】
各相を個別に検査することにより、バランスされた単相の負荷の場合でも、すなわち例えば規格案VDE0126の検査提案による単相発振回路負荷の場合でも、電源網欠落を確実に識別することができる。
【0033】
本発明のさらなる側面によれば、三相電源網に給電するためのエネルギー形成施設、とりわけ公衆または私的エネルギー供給網に給電するための太陽光発電施設が創成される。このエネルギー形成施設は三相インバータを有し、この三相インバータは、とりわけ太陽光発電機の入力側直流電圧を互いに位相のずれた三相交流に変換し、この三相交流が電源網に給電される。
【0034】
本発明のエネルギー形成施設は、インバータに供給される電力を目下の最大電力値に制御するための制御装置と、施設の動作パラメータを検出するためのセンサ装置と、必要に応じて施設を電源網から分離し、これに接続するための分離装置と、インバータの動作を制御するための調整制御装置とを有する。この調整制御装置は、前記制御装置、前記センサ装置および前記分離装置に通信接続ないし作用接続しており、電源網欠落を識別するために施設を監視する前記方法を実行するための制御ロジックを有する。調整制御装置が電源欠落ないし望まれないアイランド運転を識別すると直ちに、この調整制御装置は分離装置を作動し、エネルギー形成施設を電源網から導電的に確実に分離させる。本発明の監視方法の利点は、エネルギー形成施設に対して同じように有益である。繰り返しを避けるため、可能な実施形態およびそれらの利点に関しては前記記載を参照されたい。
【0035】
本発明の有利な実施形態のさらなる詳細は、図面、明細書および特許請求の範囲の対象である。
【0036】
図面には本発明の実施形態が図示されている。しかし図面は本発明の原理を説明するためにだけ用いるものであり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】アイランド識別用の監視装置を備える本発明のエネルギー形成施設を簡素化して示すブロック回路図である。
【
図2】アイランド識別用の監視装置の機能を検査するための検査回路のブロック回路図である。
【
図3】電源網遮断に関してエネルギー形成施設を監視する本発明の方法の一実施形態の簡素化したフローチャートである。
【
図4】電源網遮断に関してエネルギー形成施設を監視する本発明の方法の変形実施形態の簡素化したフローチャートである。
【
図5】
図3と4による方法の機能を説明するための、形成された交流電流を簡素化して示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1には、本発明のエネルギー形成施設1が簡素化して示されており、このエネルギー形成施設は、再生エネルギー源から電源網に供給される交流電流を形成するために用いられる。本例および好ましい適用によれば、本発明のエネルギー形成施設1は分散型太陽光発電施設であり、これは太陽光発電機2により捕捉され、電気直流エネルギーに変換された太陽エネルギーを、インバータ装置3によって電源網4に給電するのに適した交流エネルギーに変換する。太陽光発電機2はここでは象徴的にだけ図示されており、個々の太陽電池モジュールの構成体を有することができる。電源網4は、エネルギー供給企業の公衆電源網、または例えば複数の負荷が接続された私的電源網とすることができる。
【0039】
インバータ構成体3は基本的に、太陽光発電機2により入力側で提供された直流電圧および直流電流を、接続された電源網4の交流電圧に振幅、周波数および位相に関して適合された交流電圧および交流電流に変換することを可能にするコンポーネントないし構成群および機能を備える通常の構造を有する。本発明に関連してインバータ構成体3の構造の説明は、インバータ構成体3が、太陽光発電機2から取り出される電力を制御する制御装置6と、インバータ7と、エネルギー形成施設1の環境および動作パラメータを検出するセンサ装置8と、前記センサ装置8により検出されたパラメータ値を受信し、これに基づいてコンポーネント、とりわけインバータ7の動作を監視および制御する調整制御装置9とを有する点に限定することができる。
【0040】
制御装置6は太陽光発電機2に後置接続されており、直流電圧変換器等を有し、この直流電圧変換器はMPPトラッキングを行う。MPP(最大電力点)トラッキングとは、個々の太陽電池モジュールの最適の電力形成を達成するために、太陽電池モジュールをその個別の最大電力点で稼働することであると理解される。最大電力点(MPP点)は、照射強度、温度および太陽電池の形式に依存する。太陽光発電機が常にMPP点で動作するように、MPPトラッカーは電圧を所要の値に制御し、通常はDC電圧を小さな絶対値だけ変化させ、電流と電圧の積をそれぞれ決定し、動作電圧を電力の比較的高い方向に調整する。これにより照射条件が変化しても、MPP点における太陽光発電機2の動作が常に保証される。太陽光発電機2から取り出される電力はインバータ7の入力端11に提供される。
【0041】
インバータ7は三相インバータであり、その入力端または電源網への中間回路11における直流電圧中間回路電力の正弦波変換の機能を引き受ける。インバータ7は、従来技術で一般的に公知である任意の構成を有することができる。好ましくはインバータ7は、高周波クロッキング可能なスイッチング素子、例えばIGBTスイッチ等を有する。これらのスイッチング素子は、所定のパターンで、好ましくはパルス幅変調で制御され、これによりインバータ3の出力端12に120゜だけ互いに位相のずれた交流電流が形成される。この交流電流は、電源網4の電源網電圧の個々の相L1,L2およびL3と同期している。インバータ7のここでは4極の出力端12は、3つの出力端子(L1,L2,L3)13,14,16と、1つの中立出力端子(N)17とを有する。3つの出力端子は、インバータ7の出力側交流電圧ないし電源網電圧の個々の相を導通する。中立出力端子は、電源網側での接地により規定のゼロ電位に置くことができる。
【0042】
センサ装置8は、電流および電圧センサのようなセンサ手段を有し、センサ手段はエネルギー形成施設1、とりわけインバータ構成体3の種々の箇所において信号を検出することができる。インバータの入力電圧、それぞれの出力端子13,14および16を介して給電される相電流I
L1、I
L2、I
L3、および電源網電圧U
L1、U
L2、U
L3の相の振幅を検出することができ、さらに目下の環境条件、例えば照射強度や太陽光発電機の温度に該当するパラメータも検出することができる(ここには図示しない)。センサ装置8は調整制御装置9と通信的に接続されており、検出された測定値をこれに送出する。
【0043】
調整制御装置9は、とりわけインバータ7の動作を、センサ装置8から送出された信号に依存して制御する。このために調整制御装置9は、受信された信号を所定の論理規則に従って処理し、例えばインバータ7のスイッチング素子を制御するための出力信号並びに制御装置6に対する制御信号を出力する。正確に言えば調整制御装置は、検出されたパラメータの関数として電力目標値を電源網交流電圧の各相に対して形成し、これにより所望の出力側の交流電流を獲得する。電力目標値は例えばパルス幅変調段で対応の制御パターンに変換することができ、この制御パターンによってインバータのスイッチング素子がクロッキングされ、これによりフィルタリングの後に所望の交流電流がインバータ出力端12で得られる。基本的にインバータ構成体3は、従来のように電源網結合モードで動作する。
【0044】
施設1の稼働中に供給電源網4の可用性を監視するために、本発明のインバータ構成体3は組み込まれた監視装置19を有する。電源網監視装置19は、それ自体自立的な構成ユニットとしてインバータ7およびその所属の調整制御装置9には依存せず実現することができ、ハードウエアおよび/またはソフトウエアで構成することができる。ここに図示された本発明の好ましい実施形態では、監視装置19は、好ましくは調整制御装置9の一部として、好ましくはファームウエアロジックとしてインバータ7の制御ソフトウエアに含まれている。監視装置は、目下の動作状態を、センサ装置8から送出された測定信号に基づいて監視し、これにより電源網欠落、例えば電源網遮断または障害を識別する。
【0045】
電源網欠落が識別されると直ちに、インバータ構成体3は自動的に電源網4から分離し、電源網4へのさらなる給電を回避する。このために監視装置19と接続した分離装置21が設けられている。分離装置21は、ここに図示した好ましい実施形態ではインバータ7の出力線路13,14,16のそれぞれ1つに組み込まれた3つのスイッチ22,23,24と、中立線路18に配置された分離スイッチ26とを有する。監視装置19が、電源網欠落ないし望まれないアイランド運転を表す条件を確定すると直ちに、監視装置はスイッチ22,23,24および26を作動し、施設1と電源網との間の導電分離を達成する。
【0046】
図2には、検査回路が簡単に図示されている。この検査回路は、規格案VDE0126にしたがって使用することができ、これにより意図しないアイランド運転の結果として遮断するインバータ構成体を検査する。検査回路は、平衡並列給電状態ないし負荷状態をシミュレートすることができる。
【0047】
図2では、インバータ7と電源網監視装置19と分離装置21とを備える本発明のインバータ構成体3が検査回路に組み込まれて図示されている。インバータ7の直流電圧側には、制御可能なエネルギー源27を介して給電される。インバータ7の交流電圧側では、出力端12に並列に抵抗R28、チョークコイルL29およびコンデンサC31が接続されており、これらはRLC発振回路32を形成する。
図2には図示されていないが、各相L1,L2およびL3に対して対応のRLC発振回路32を設けることができ、このRLC発振回路は一方では中立出力端子17に接続され、他方ではスイッチ33を介してそれぞれのインバータ出力端子13,14ないし16に接続することができる。さらにスイッチ34,36がインバータ7とRLC発振回路32の間、ないしRLC発振回路32と電源網4または適切な電源網シミュレータとの間に接続されている。
【0048】
RLC発振回路は、形成される全ての有効電力と無効電力を受け入れ、電力が電源網4に出力されないように、エネルギー源と電源網上で調節されている。抵抗R28は、インバータ7から出力される有効電力全体を消費するように整合されており、一方、LC並列発振回路の基本周波数は電源網周波数と十分に一致している。
【0049】
検査の際には全てのスイッチ32,34および36が先ず閉鎖され、インバータ構成体3は通常のように電源網4または電源網シミュレータで動作する。電源網欠落をシミュレートするためにスイッチ36が開放される場合、ここでは場合により電圧および周波数監視だけで電源網欠落を識別するのはそれほど容易に可能でない。LC発振回路29,31は電源網周波数で発振を続け、電源網が遮断されてもこれを維持する。抵抗Rは、形成された全有効電力を消費する。しかしいわゆるバランスされた負荷でのこの条件の下でも、電源網欠落を確実かつ迅速に、どのような場合でも5秒以下で識別しなければならない。
【0050】
本発明の電源網監視装置19は、特別の監視ロジックによりこれを成就する。この監視ロジックについて、以下
図3を参照して説明する。
【0051】
図3は、三相電源網、例えばエネルギー供給企業の公衆給電網4に、インバータ7により給電する分散型エネルギー形成施設、とりわけ本発明による太陽光発電施設1を監視する本発明の方法37を説明する。この方法により、電源網欠落または電源網遮断が識別され、望ましくないアイランド運転が回避される。この方法37は、エネルギー形成施設1の通常運転に平行して周期的に、全ての相i=1,2,3に対して交互に実行される。ここで周期は、どのような場合でも規則どおりの時間内での、例えば5秒以内での電源網欠落識別が保証されるように選択されている。この方法は、ステップ38でスタートする。ステップ38では、電源網交流電圧の各相に対して電力目標値P
L1,P
L2,P
L3が生成され、これによりそれぞれの電源網交流電圧の振幅、周波数および位相に適合した交流電流が形成される(ステップ38)。
【0052】
ステップ38は、交流電圧網4に給電すべきインバータ7の出力側の全交流電力の目標値を決定することができる。この決定は、目下の環境および動作条件の下で取り出し可能な最大発電機電力に基づいて行われる。そして、全電力の求められた目標値を交流電圧の相の数、ここではとりわけ3により割り算する。そして形成された交流電力は全ての相に均等に分散される。
【0053】
ステップ39では、電源網交流電圧の所定の相iに対する電力目標値が所定の第1の程度Xだけ所定の時間内で変化される。例として、例えば電源網交流電圧の相i=1に対する電力目標値P
L1が第1の程度X=0.05(5%)だけ95%に低減されると仮定する。前記所定の時間は、好ましくは電源網交流電圧の1周期に相当し、その開始はそれぞれの相、ここでは電源網交流電圧の相1のゼロ通過と同期している。
【0054】
ステップ40では、電源網交流電圧の他の2つの相j≠iの少なくとも1つに対する電力目標値が、所定の第2および/または第3の程度Y
2ないしY
3だけ、同じ時間内で逆相に変化される。ここで第2と第3の程度の和Y
2+Y
3は絶対値的に第1の程度Xに等しい。前記の例を基準にすれば、他の2つの相j=2,3に対する電力目標値P
L2,P
L3が、例えばY
2=Y
3=−X/2だけ同じ程度に変化される。すなわちここでは2.5%高められる。これにより出力電力の低下および相1に対するインバータ7の入力電力の低下も、相2と3に対する電力の増加によって補償される。
【0055】
ステップ41では、交流電流がインバータ出力端子13,14ないし16に、変化された電力目標値P
L1,P
L2,P
L3に基づいて形成される。
【0056】
さらに交流電流は、好ましくは目下の振幅値と相電圧U
L1,U
L2,U
L3を考慮して形成される。例えば一実施形態で、電流制御器が、それぞれの相に対する所望の交流電流目標値を、それぞれ(変化された)電力目標値と目下の相電圧実際値とに応じて設定すれば、制御装置が、各相に対して所定の交流電流目標値を得るために、例えばここに詳細に図示しないインバータブリッジ回路の例えばスイッチング素子を適切に制御する。
【0058】
ステップ42では、電源網電圧が全ての相に対して、しかし少なくとも該当する相iに対する電源網電圧U
Liの振幅が所定の時間の間、測定される。
【0059】
ステップ43では、電源網交流電圧U
Liの少なくとも1つの所定の相iの測定された振幅が、最大許容量Zを超えて目標値U
Li,sollに対して変化したか否かが確定される。最大許容量Zは第1の程度Xとほぼ同じに選択することができる。これに関して上記の例では、例えば電源網電圧U
Liが約5%低下したか否かが検査される。
【0060】
上記のように変化した場合(ステップ43でのイエス)、引き続きステップ44で、電源網欠落および望まれないアイランド運転が存在するか否かが識別される。次にインバータ7が分離装置21の回路により、調整制御装置9によって電源網4から確実に導電分離される。
【0061】
電源網交流電圧U
Liの振幅が最大許容量Zを超えて変化しない場合(ステップ43でのノー)、望ましくないアイランド運転が存在していないことが識別され、したがって通常の運転を継続することができる。この場合、本方法は所定時間後に、他の2つの相jの1つに対して、例えば相2に対して繰り返される。この時間は、全ての相を適時に検査することができ、各相においてアイランド運転を適時に識別できるように適切に選択される。例えばこの時間は約10周期、すなわち電源周波数が50Hzの場合、200msとすることができる。
【0062】
さらなる時間の後、例えば電源網電圧のさらなる10周期の後、本方法37は第3の相L3に対してステップ38〜43で実行される。したがってブロック45に示されるように、ステップ38〜43は周期的に、全ての相i=1,2,3に対して交互に、電源網欠落が確定されない限り実行される。
【0063】
本発明の監視方法は、多数の利点を有する。電源網欠落が常に確実に識別される。電源網4が存在している限り、そして電源網がインバータ7と比較して小さなインピーダンスによりインバータに対して電源網電圧を強制する限り、全ての相に対する電源網電圧の振幅は近似的に変化しないままである。しかし電源網欠落の場合には、所定の相に対する電力目標値を変更することにより、この相における電源網電圧の振幅が変化する。このことは調整制御装置9により、センサ装置8の測定値に基づいて確実に識別される。電力目標値が減少すると、例えばこの相に対する電源網電圧の振幅がこれにほぼ比例して低下する。これにより確実な遮断基準が得られる。
【0064】
バランスされた負荷の場合でも、すなわち形成された電力と消費される電力とが平衡状態にある場合でも、電源網欠落は問題なく識別される。
図2によるシミュレーションの場合、例えば電力目標値が低減されても抵抗R28を介する電圧は、電源網4が結合されている限り、同じに留まる。スイッチ24の遮断による電源網遮断の場合、抵抗R28を介する電圧は、正弦波電力目標値の低減に対応して低下する。この場合も、電源網欠落ないし電源網遮断が常に確実に識別される。
【0065】
有利には各相を個別に検査することにより、電源網欠落が電力平衡状態の場合でも、ただ1つの相だけで、または複数の相で常に識別される。
【0066】
他の2つの相jに対する電力目標値を適切に増大/減少することにより、この相iに対する出力電圧が低下/増大し、これによりインバータ7の入力電力の対応する低下が補償される。したがって太陽光発電機2から、全ての相に亘って合計した和では、アイランド識別のための措置がない場合と同じ電力が取り出される。インバータ7の直流電圧入力電力が同じに留まることにより、太陽光発電機2をさらにその最大電力点で稼働することができ、したがって電力損失を受け入れる必要はない。さらにインバータは、他の従来の方法とは異なり効率損失も被らない。
【0067】
本発明の枠内で多数の変形が可能である。例えば第1の程度Xに対する値、第2および第3の程度Y
2,Y
3に対する値、電源網交流電圧の最大許容振幅変化に対する大きさZは任意に適切に設定することができる。場合によりこれらは、それぞれの施設1に対して現場で経験的に、一方では電源網の障害が最小であるが、しかし電源網欠落が常に確実に識別されるように求められるべきである。
【0068】
さらに前に説明した本発明の監視方法37に対する特別の例では、他の2つの相jが両方とも同じ程度Y
2=Y
3=−X/2だけ変化することが前提とされている。その代わりに、相jの1つだけが第1の程度Xと同じ程度Y
jだけ、しかしこれに対して逆相に変化することもできよう。例えば相1に対する電力目標値が5%低減され、例えば相2に対する電力目標値が同時に5%増加される場合、相3に対する電力目標値は不変に留まる。相2に対する電源網電圧の振幅を付加的に測定し、最大許容変化量Zと比較することにより、2つの相、ここでは相1と2に対して電源網欠落を同時に識別することができる。さらなる時間の後、方法37は繰り返される。すなわち、相1,2に対する電力目標値、次に相2,3に対する電力目標値、そして引き続き相1,3に対する電力目標値がペアで変更される。個々の相だけが監視される上記の措置に対して、方法37は半分の頻度で実行され、したがって相は比較的稀にしか不平衡負荷を受けない。
【0069】
本発明の方法の前記実施例では、電力目標値が交流電圧の全ての相に対して決定され、アイランド運転識別のために適切に変更される。そして、それぞれの相に対する交流電流の対応の目標値は、相電圧の目下の実際値に基づいて決定される。これにより発電機からの一定の電力取り出しが保証される。本発明の簡素化した実施形態では、相電圧の振幅が互いに同じであることを前提にすることができる。この場合、電力を表す目標値として、相に対して交流目標値を直接設定し、アイランド運転識別のために適切に変更することもできる。このことは、本発明の方法の実現および実施の際のコストを低減する。
【0070】
さらに他の同等の基準を電源網欠落のために使用することができる。例えば誘発される電源網電圧変化を、給電される交流電流および出力側の交流電圧に基づいて直接比較する代わりに、それぞれの相における電源網インピーダンスを決定し、電源網インピーダンスまたはその時間的変化を許容最大値に関して検査することができる。
【0071】
さらに施設1を、電源網欠落が識別される場合に電源網4から導電的に分離することができるが、完全に遮断するのではなく、他の負荷に給電するため、またはエネルギー蓄積器に充電するために切り替えることもできる。
【0072】
本発明の方法37の有利な改善形態が
図4に示されている。ここで方法37は、
図3に関連して説明したように、先ずステップ38〜43により実行される。これはとりわけ、程度X,Y
2およびY
3、並びに最大許容量Zに対して低減された設定値により実行される。 例えば相iに対する電力ないし電流目標値は98%に低減され、これにより第1の程度Xは0.02になる。同じ時間内で相2および3に対する電力ないし電流目標値はそれぞれ101%に高められ、したがってY
2=Y
3=−X/2=−0.01である。あるいは電力ないし電流目標値を相2または3の1つに対してだけ、同じ程度Xだけ高めることもできる。
【0073】
低減の間、相1(および場合により相2または3)に対して電源網電圧の振幅が測定される。ここで約2%の変化が測定されると、例えば2周期後(または50Hz電網周波数の場合は40ms後)に相1に対する電力目標値ないし電流目標値がより強く変化される。すなわち例えばさらに低減される。
図4にはこれが、ステップ43の検査での正の結果に続くブロック47に示されており、程度X,Y
jおよびZが増大される。ここでは、
X’=a×X;Y’
j=a×Y
j;Z’=b×Z ただしa,b>1
が当てはまる。
【0074】
続いてブロック48により、方法37のステップ38〜42が増大された値X’,Y’
jにより繰り返される。例えば相1の電力目標値ないし電流目標値は95%に低減され(X’=0.05)、一方、相2と3に対する電力目標値ないし電流目標値はそれぞれ102.5%に増大される。(Y’
2=Y’
3=−X/2=−0.025)
【0075】
低減の間、相1に対する測定電圧の振幅が測定され、これが最大許容量Z’を上回っていないか否かが検査される(ステップ39)。約5%(Z’=0.05)の電源電圧の変化が測定される場合、電源網欠落が存在していることが確定され、その結果、続いてステップ50でインバータ7が電源網4から分離される。
【0076】
ブロック45または49の1つでの検査が負の結果の場合、すなわち電源網電圧の十分に大きな変化が測定されない場合、方法37は先ずステップ38〜43により実行され、場合により他の相2と3に対してステップ47〜49により実行される。
【0077】
図5は、
図4の電源網欠落を基準にした、分散型エネルギー形成施設の本発明による監視方法の時間経過を簡素化した形で示す時間線図である。個々の相i=1,2および3に対する交流電流の正弦波電流目標値が図示されている。分かりやすくするために、個々の相に対する電流目標値の変化は、それぞれの目標値よりも誇張して図示されている。
【0078】
図4と5による本発明の方法の実施形態の、
図3の実施形態に対する利点は、とりわけ、第1の実行経過では電流変化が比較的小さく生じ、これにより電源網4の影響が小さくなり、電源網におけるフリッカー発生も小さくなることである。第1の実行経過で、電源網欠落が高い確率で存在することが確定される場合だけ基準が厳しくされる。すなわち程度X,Y
j,Zが増大され、電源網欠落を高い識別確度で検証する。これは例外事例であるので、定格電力に対する給電電力の偏差、すなわち不平衡負荷およびフリッカーを最小に低減することができる。
【0079】
三相電源網に給電する分散型エネルギー形成施設を、望まれないアイランド運転を阻止するために監視するための装置および方法が開示された。このエネルギー形成施設1はインバータ7を有し、インバータは、とりわけ太陽光発電機の入力側直流電圧から、互いに位相のずれた三相交流を形成し、この三相交流が電源網4に給電される。この監視方法は、電源網交流電圧の所定の相に対する電力目標値を所定の時間の間、所定の第1の程度Xだけ変化させ、例えば減少させ、一方、他の2つの相に対する電力目標値を、所定の第2および/または第3の程度Y
2,Y
3だけ逆相に変化させ、例えば増大させることに基づく。ここで第2と第3の程度Y
2,Y
3の和は第1の程度に等しい。電源網交流電圧の振幅が、所定の1つの相の定格値に対して所定の閾値よりも大きく変化することが識別されると、望まれないアイランド運転が確定され、施設1は電源網4から分離される。この監視は、十分に電力損失および効率損失無しに、低減された不平衡負荷の下で実行することができる。