(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
LEDやレーザー発光ダイオード,有機EL素子などの半導体発光素子は、半導体中の電荷キャリアである自由電子と正孔の再結合の際に生じる発光現象を利用することによって発熱を抑えた、発光電力効率の高い素子である。従来の発光素子を半導体発光素子に置き換えることにより、照明機器や電子ディスプレイ、電子サインなどの消費電力が低減できる。また、製造の際に地球の希少資源の消費を抑えると共に、環境汚染物質の排出も抑えられるため、地球環境に優しい素子として近年、世界中で爆発的に普及している。
【0003】
半導体発光素子は原理的に駆動電流に概ね比例した光量の光を発光する。しかし、実際には再結合の効率変化や温度依存性があるため、駆動電流値の変化に伴い発光光量に非線形性が現れたり、発光ピーク波長がシフトする。このため、半導体発光素子の制御には一定のピーク電流のパルス電流を流して、電流の流通時間幅を可変するPWM(パルス幅変調)が主に用いられている。
【0004】
図23は従来の半導体発光装置の構成を示すブロック図である。
図24は従来の半導体発光装置の動作を説明するための各部の波形図である。
図23において、直流電源Vddの両端には、抵抗RoとLEDD1とスイッチング素子Q1との直列回路が接続されている。パルス発生部10は、
図24に示す時刻t10において、パルス信号VINをスイッチング素子Q1のゲートに印加する。すると、Vdd→Ro→D1→Q1の経路で、LEDD1に電流ILEDが流れて、LEDD1の両端間には電圧VLEDが発生する。この電圧VLED及び電流ILEDは急激に増加した後、一定値になる。その後、LEDD1が発光して、光Lが出力される。
【0005】
このときのLEDの動作を
図25に示すLEDの等価回路を用いて説明する。LEDD1のアノードAとカソードKの間には、抵抗rと拡散容量Cdとの直列回路が接続されるとともに、拡散容量Cdには並列に電流源ILEDと抵抗Rdとが接続されて構成されている。この構成において、パルス発生部10からのパルス信号によりスイッチング素子Q1がオン/オフすると、LEDD1もオン/オフする。
図24の時刻t11においてLEDD1がオフした時には、拡散容量Cdの電荷(電圧VLED)が抵抗Rdを介して自己放電する。時刻t12においてLEDD1がオンした時には、電流源ILEDに電流が流れるととともに拡散容量Cdが充電される。その後、自由電子と正孔とのキャリアが再結合してLEDD1から光Lが出力される。
【0006】
なお、この種の従来の技術として、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1は、液晶表示器の表示部を照明する光源の輝度レベルを記憶する記憶手段と、記憶手段が記憶している輝度レベルに応じた幅のパルス信号を連続して発生するパルス発生手段と、発生した連続したパルス信号によりオン・オフを繰り返し光源(LED)に流れる電流を制御することで輝度調整を容易に行え、さらに高い発光効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例1に係る半導体発光装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る半導体発光装置の動作を説明するための各部の波形図である。
【
図3】半導体発光装置に設けられたLEDの立ち上がり立下り波形を示す図ある。
【
図4】従来の半導体発光装置により駆動されたLEDの立ち上がり波形を示す図である。
【
図5】従来の半導体発光装置により駆動されたLEDの立ち下がり波形を示す図である。
【
図6】本発明の実施例1に係る半導体発光装置により駆動されたLEDの立ち上がり波形を示す図である。
【
図7】本発明の実施例1に係る半導体発光装置により駆動されたLEDの立ち下がり波形を示す図である。
【
図8】LEDの立ち上がり時の損失領域及び理想の光の領域と立下り時の利得領域とを示す図である。
【
図10】LEDの充放電損失の解析を示す図である。
【
図11】1パルスあたりの充放電電力と低減率を示す図である。
【
図12】本発明の実施例2に係る半導体発光装置の構成を示すブロック図である。
【
図13】本発明の実施例2に係る半導体発光装置の動作を説明するための各部の波形図である。
【
図14】本発明の実施例2に係る半導体発光装置の具体例の構成を示すブロック図である。
【
図15】本発明の実施例3に係る半導体発光装置の構成を示すブロック図である。
【
図16】本発明の実施例4に係る半導体発光装置の構成を示すブロック図である。
【
図17】本発明の実施例5に係る半導体発光装置の構成を示すブロック図である。
【
図18】本発明の実施例5に係る半導体発光装置の動作を説明するための各部の波形図である。
【
図19】本発明の実施例5に係る半導体発光装置の構造を示す図である。
【
図20】本発明の実施例6に係る半導体発光装置の構成を示すブロック図である。
【
図21】本発明の実施例7に係る半導体発光装置の構成を示すブロック図である。
【
図22】本発明の実施例8に係る半導体発光装置の構成を示すブロック図である。
【
図23】従来の半導体発光装置の構成を示すブロック図である。
【
図24】従来の半導体発光装置の動作を説明するための各部の波形図である。
【
図25】半導体発光装置に設けられたLEDの等価回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態の半導体発光装置を図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の実施例1に係る半導体発光装置の構成を示すブロック図である。
図1において、直流電源Vddの両端には、抵抗RoとLEDD1(半導体発光素子)とスイッチング素子Q1との直列回路が接続されている。
【0016】
パルスタイミング制御部1は、LEDD1に流れるパルス電流を遮断してLEDD1の発光量を制御し且つパルス電流の遮断に伴って発生するLEDD1の拡散容量Cdの放電が終了する前にLEDD1にパルス電流を流すように、LEDD1に印加すべきパルス信号のオン/オフのタイミングを制御する。パルスタイミング制御部1は、制御されたパルス信号VINをスイッチング素子Q1のゲートに印加する。
【0017】
パルスタイミング制御部1は、LEDD1の拡散容量をCd、拡散容量Cdに並列に接続された等価抵抗をRdとした場合に、パルス信号VINのオフ時間toffを、時間Tdis=2.2×Cd×Rdよりも小さく、LEDD1の残光時間Tzよりも大きく設定している。
【0018】
また、パルスタイミング制御部1は、パルス信号に対してパルス幅変調(PWM)を行い、PWM変調されたパルス信号をスイッチング素子Q1に印加することで、LEDD1をパルス制御している。
【0019】
なお、パルス信号に対してパルス幅変調を行う代わりに、パルス周波数変調(PFM)又はパルス振幅変調(PAM)を行い、変調されたパルス信号をスイッチング素子Q1に印加することで、LEDD1の発光を制御しても良い。
【0020】
図2は、本発明の実施例1に係る半導体発光装置の動作を説明するための各部の波形図である。
図2に示す各部の波形図を参照しながら半導体発光装置の動作を説明する。
【0021】
まず、パルスタイミング制御部1が、時刻t0において、
図2に示すパルス信号VINをスイッチング素子Q1のゲートに印加すると、スイッチング素子Q1がオンして、Vdd→Ro→D1→Q1の経路で、LEDD1に電流ILEDが流れて、LEDD1の両端間には電圧VLEDが発生する。この電圧VLED及び電流ILEDは急激に増加した後、一定値になる。その後、LEDD1が発光して、光Lが出力される。
【0022】
時刻t1〜t2の時間toffにおいて、パルス信号VINがオフされると、LEDD1がオフし、拡散容量Cdの電荷(電圧VLED)が抵抗Rdを介して自己放電するが、LEDD1の電圧VLEDはわずかに減少する。この場合には、パルス信号のオフ時間toffは、時間Tdis=2.2×Cd×Rdよりも小さく設定されているので、時刻t2においても拡散容量Cdの電荷は完全放電しないため、VLEDは正電圧となる。
【0023】
そして、拡散容量Cdの電荷の放電が終了する前に、時刻t2において、パルス信号のオンによりLEDD1にパルス電流を流す。このため、拡散容量Cdから放出される電荷量が減少するので、残りの電荷量を用いることにより、パルス電流をLEDD1のキャリアの再結合に有効に活用して迅速に発光を再開することができる。
【0024】
従って、LEDD1の拡散容量の充放電電力を減らして、LED自体と駆動回路での消費電力を低減できると共に、発光量を増加することができるので、LEDD1の発光効率や半導体発光装置の電力効率を向上させることができる。
【0025】
図3〜
図6に受光器によりLEDを検出した結果を示す。
図3は、半導体発光装置に設けられたLEDD1の立ち上がり立下り波形を示す図ある。
図3において、VLEDはLEDD1の両端電圧、ILEDはLEDD1に流れる電流、LはLEDD1からの光を示す。
【0026】
図4は、従来の半導体発光装置により駆動されたLEDD1の立ち上がり波形を示す図である。
図5は、従来の半導体発光装置により駆動されたLEDの立ち下がり波形を示す図である。
図5において、光Lの波形のゼロ値に対して10%〜90%の時間Tzを残光時間とする。
【0027】
図6は、本発明の実施例1に係る半導体発光装置により駆動されたLEDの立ち上がり波形を示す図である。
図7は、本発明の実施例1に係る半導体発光装置により駆動されたLEDの立ち下がり波形を示す図である。実施例1の時間Toffは、残光時間Tzよりも大きく設定されている。
【0028】
図4と
図6とのLEDD1の立ち上がり波形を比較すると、
図6に示すVLEDのオフ期間の電圧は正電圧であり、しかも立ち上がり時間tssが
図4に示すそれよりも短い。即ち、拡散容量Cdから放出される電荷量が減少するので、パルス電流をLEDD1のキャリアの再結合に有効に活用することができる。また、
図6に示す光Lの立ち上がり時間tsdも
図4に示すそれよりも短いので、発光量を増加できる。
【0029】
なお、本出願人の発明者は、以下の考えに着目しこの考えに基づいてLEDの発光に関する実験を行ったので、これらについて以下に述べる。
【0030】
まず、LEDがLEDからの光強度とほとんど独立している拡散容量を充電するための電力を消費するという実験的な結果からそれが考えられる。このため、電力消費は、拡散容量を充電することなしに、LEDにパルス電流を流すことによって減少できることが考えられる。また、発光において、パルス電流が損失なしにキャリア再結合のために効率的に使用できることから発光量も増加する。
【0031】
発光効率の改善は、以上述べられたLEDドライブ方法を用いることにより期待される。実験の結果として、LEDの発光の損失は、以下のようにその拡散容量を充電することなしに、駆動されることで減少できる。
【0032】
図8(a)にLEDの立ち上がり時の損失領域及び理想の光の領域を示す。
図8(b)にLEDの立下り時の利得領域を示す。立ち上がり時の発光の損面積とは、電流が流れ始めた時間から発光がピークに達するまでの面積から、実際に発光している面積を引いたものである。損失比の計算方法を式(1)に示す。
【0033】
{(立ち上り時の損失)−(立ち下り時の損失)}×100/(理想の光)‥(1)
また、光源として、赤LED、緑LED、青LED、白LEDを用いたときの従来のLEDと本発明のLEDとの発光損失の改善結果を
図9に示す。
図9からもわかるように、減少される損失(
図9の改善効果)は、赤LEDでは10.2%、緑LEDでは6.2%、青LEDでは5.3%、白LEDでは、7.9%改善される。
【0034】
また、出願人は、LEDの拡散容量の充放電電力の影響を調べるために回路素子測定器による測定を各色行った。測定は、LEDの両端にインピーダンスアナライザを接続して行なった。
図10にLEDの充放電損失の解析を示す。
図10において、横軸はLED電圧VLED、縦軸は電荷Q(pC)である。LEDの拡散容量は電圧依存性があるため、
図10に示すように、LED電圧VLEDの測定値から電荷Q(pC)を求めることにより、LEDの容量がわかる。容量測定時の印加電圧範囲を調整して充電電荷の電圧依存性を測定することにより、電圧依存性のある拡散容量の充電電荷量と充電エネルギーを正確に求めることができる。
【0035】
図11に、1パルスあたりの充放電電力と低減率を示す。拡散容量の充電時に駆動回路の電源から供給される〔電源電圧〕×〔充電電荷〕のエネルギーがパルス電流の流れる度に消費される。この全消費エネルギーは、拡散容量の充電時に駆動回路で消費されるエネルギーと、充電時に拡散容量に充電され放電時に駆動回路で消費されるエネルギーとの合計になる。
図11の低減率からもわかるように、拡散容量の充放電の度に消費される駆動電力は、赤LEDでは26.5%に、緑LEDでは40.9%に、青LEDでは25.0%に、白LEDでは、30.0%にそれぞれ低減した。
【実施例2】
【0036】
図12は、本発明の実施例2に係る半導体発光装置の構成を示すブロック図である。
図12に示す実施例2の半導体発光装置は、LEDD1の両端に接続された電流源Io(t)を設けたことを特徴とする。
【0037】
電流源Io(t)は、LEDD1にパルス電流を供給するもので、
図1に示すパルスタイミング制御部1と同一機能を有する。即ち、電流源Io(t)は、LEDD1に流れるパルス電流を遮断してLEDD1の発光量を制御し且つパルス電流の遮断に伴って発生するLEDD1の拡散容量Cdの放電が終了する前にLEDD1にパルス電流を流すように、LEDD1に流すべきパルス電流のオン/オフのタイミングを制御する。
【0038】
また、電流源Io(t)は、LEDD1の拡散容量をCd、拡散容量Cdに並列に接続された等価抵抗をRdとした場合に、パルス電流のオフ時間toffを、時間Tdis=2.2×Cd×Rdよりも小さく、LEDD1の残光時間Tzよりも大きく設定している。
【0039】
図13は、本発明の実施例2に係る半導体発光装置の動作を説明するための各部の波形図である。このような実施例2の半導体発光装置によれば、電流源Io(t)を用いても実施例1の半導体発光装置と同様に動作し、同様な効果が得られる。
【0040】
図14は、本発明の実施例2に係る半導体発光装置の具体例の構成を示すブロック図である。
図14において、直流電源Vddの両端には、LEDD1とスイッチング素子Q1と電流検出抵抗Rsとの直列回路が接続されている。パルスタイミング制御部1の出力VINのタイミングは、
図1に示すパルスタイミング制御部1と同様であるが、パルス振幅を発光量に応じて増減する。
【0041】
図14に示す半導体発光装置によれば、パルスタイミング制御部1がパルス信号VINをスイッチング素子Q1のゲートに印加することで、スイッチング素子Q1がオンオフして、電流制限抵抗Rsに振幅が制御された定電流が流れるので、スイッチング素子Q1が定電流回路、即ち、電流源Io(t)を構成することができる。従って、実施例1の半導体発光装置と同様に動作し、同様な効果が得られる。
【実施例3】
【0042】
図15(a)は、本発明の実施例3に係る半導体発光装置の構成を示すブロック図、
図15(b)は、実施例3の半導体発光装置のPWM/PAM制御部2のパルス信号の波形図である。
【0043】
図15に示す実施例3に係る半導体発光装置は、PWM/PAM制御部2を用いたことを特徴とする。PWM/PAM制御部2は、スイッチング素子Q1のゲートに印加すべきパルス信号のデューティサイクルD=TON/(TON+TOFF)を制御(PWM)するとともに、パルスのピーク電流値ILED(PEAK)を制御(PAM)する。なお、PWM/PAM制御部2としては、PWM制御のみ又はPAM制御のみにしても良い。
【0044】
即ち、発光量L∝D・ILED(PEAK)であるので、PWM/PAM制御部2は、例えば、
図15(b)に示すようにILEDを可変制御したパルス信号によって発光量Lを任意に変化させることができる。
【0045】
但し、LEDD1の拡散容量Cdの放電時間はピーク電流値ILED(PEAK)の増減に伴って変化する可能性があるので、ピーク電流値ILED(PEAK)の可変範囲に応じて、パルス信号のオフ時間TOFFは、放電時間よりも短くなるように設定又は制御する必要がある。
【実施例4】
【0046】
実施例3以外のもう一つの制御方法としては、LEDD1の拡散容量Cdが放電して、LED電圧が低下し過ぎないように、パルス電流が遮断されるオフ時間TOFFの短さを維持したままで、パルス電流が導通するオン時間TONの長さを可変して、パルスの繰り返し周波数f(Hz)=(1/(TON+TOFF))を制御する方法がある。
【0047】
図16に示す本発明の実施例4に係る半導体発光装置は、パルスの繰り返し周波数f(Hz)=(1/(TON+TOFF))を制御するものである。
図16(a)は、本発明の実施例4に係る半導体発光装置の構成を示すブロック図、
図16(b)は、実施例4の半導体発光装置のPWM/PAM制御部3のパルス信号の波形図である。
【0048】
図16に示すPFM/PAM制御部3は、スイッチング素子Q1のゲートに印加すべきパルス信号のパルスの繰り返し周波数fを制御(PFM)するとともに、パルスのピーク電流値ILED(PEAK)を制御(PAM)する。なお、PFM/PAM制御部3としては、PFM制御のみ又はPAM制御としても良い。
【0049】
即ち、発光量L∝D・ILED(PEAK)={1−(f×TOFF)}・ILED(PEAK
)であるので、PFM/PAM制御部3は、例えば、
図16(b)に示すようにオフ時間TOFFを一定にしたままでオン時間TONを制御して、パルスの繰り返し周波数fを変えることによって発光量を変化させることができる。
【0050】
なお、本発明におけるLED駆動回路には、簡単な例として図示した抵抗とスイッチ素子から成る回路構成に限らず、一般的なコイルやコンデンサとスイッチ素子から成る低電力駆動回路が含まれることは言うまでもない。
【実施例5】
【0051】
図17は、本発明の実施例5に係る半導体発光装置の構成を示すブロック図である。
図17において、直流電源Vdd1の両端には、LED1(第1の半導体発光素子)と抵抗Rd1とスイッチング素子Q1との直列回路が接続されている。直流電源Vdd2の両端には、LED2(第2の半導体発光素子)と抵抗Rd2とスイッチング素子Q2との直列回路が接続されている。
【0052】
LED1とLED2とは、対向して配置され、相互に一方のLEDで発光した光を他方のLEDに照射するようになっている。
【0053】
パルスタイミング制御部1aは、LED1及びLED2の一方のLEDにパルス電流を流して発光させ、この光を他方のLEDに照射することにより、誘起されたキャリアを用いて他方のLEDが発光する前に他方のLEDに含まれる拡散容量を充電した後、他方のLEDにパルス電流を流すように、LED1及びLED2に印加すべきパルス信号のオン/オフのタイミングを制御する。パルスタイミング制御部1aは、制御されたパルス信号Vin1をスイッチング素子Q1のゲートに印加し、パルス信号Vin2をスイッチング素子Q2のゲートに印加する。
【0054】
図18は、本発明の実施例5に係る半導体発光装置の動作を説明するための各部の波形図である。
図18に示す各部の波形図を参照しながら半導体発光装置の動作を説明する。
【0055】
まず、パルスタイミング制御部1aが、時刻t12において、パルス信号Vin2をスイッチング素子Q2のゲートに印加すると、スイッチング素子Q2がオンして、Vdd2→LED2→Q2の経路で、LED2に電流ILED2が流れて、LED2が発光し始めて、時刻t13において、光L2が最大強度になって出力される。
【0056】
LED2で発光した光L2は、LED1を照射するので、LED1は光L2を受光する。この光L2によりLED1の電圧VLED1が上昇する。即ち、LED2からの光L2によりLED1にキャリアが誘起され、誘起されたキャリアによりLED1の拡散容量が充電される。
【0057】
パルスタイミング制御部1aが、時刻t14において、パルス信号Vin1をスイッチング素子Q1のゲートに印加すると、スイッチング素子Q1がオンして、Vdd1→LED1→Q1の経路で、LED1に電流ILED1が流れて、LED1が発光遅延なく急峻に発光して、光L1が出力される。時刻t15でパルス信号Vin1をオフさせると光L1は残光を伴って徐々に消灯する。
【0058】
次に、パルスタイミング制御部1aが、時刻t16において、パルス信号Vin1をスイッチング素子Q1のゲートに印加すると、スイッチング素子Q1がオンして、Vdd1→LED1→Q1の経路で、LED1に電流ILED1が流れて、LED1が発光し始めて、時刻t17において、光L1が最大強度になって出力される。
【0059】
LED1で発光した光L1は、LED2を照射するので、LED2は光L1を受光する。この光L1によりLED2の電圧VLED2が上昇する。即ち、LED1からの光L1によりLED2にキャリアが誘起され、誘起されたキャリアによりLED2の拡散容量が充電される。
【0060】
パルスタイミング制御部1aが、時刻t18において、パルス信号Vin2をスイッチング素子Q2のゲートに印加すると、スイッチング素子Q2がオンして、Vdd2→LED2→Q2の経路で、LED2に電流ILED2が流れて、LED2が発光遅延なく急峻に発光して、光L2が出力される。
【0061】
このような駆動制御を繰り返し行う。即ち、LED1とLED2との間で、光照射を交互に行ない、相互に拡散容量を充電してから、LEDを発光させる。特に、
図18に示した時刻t18を早めて時刻t15と同タイミングにすると共に、再び時刻14を時刻t19と同タイミングにした繰返し駆動波形を用いることによって、両LEDの発光遅延と消費電力を最小限に抑えることができる。
【0062】
このように実施例5に係る半導体発光装置によれば、パルスタイミング制御部1aが、LED1及びLED2の一方のLEDにパルス電流を流して発光させ、この光を他方のLEDに照射することにより、誘起されたキャリアを用いて他方のLEDが発光する前に他方のLEDに含まれる拡散容量を充電した後、他方のLEDにパルス電流を流すように、LED1及びLED2に印加すべきパルス信号のオン/オフのタイミングを制御するので、パルス電流をLED1,LED2のキャリアの再結合にのみに活用できる。
【0063】
従って、LED1,LED2で消費される電力を低減したり、発光量を増加することができる。これにより、LED1,LED2の発光効率や半導体発光装置の電力効率をさらに向上させることができる。
【0064】
また、LED1,LED2に光を照射することで任意のタイミングで拡散容量を充電することができるので、発光前の拡散容量の充電のためLED1,LED2に駆動電流(パルス電流)を流す必要がなくなり、任意の波形の駆動電流によって高効率に半導体発光素子を駆動することができる。
【0065】
なお、各LEDの各波長に対する発電特性について、発光波長の長い赤LEDから緑LEDにおいては、実験の結果、照射した光の波長が長いほど高い発電特性を示す傾向がある。化合物半導体の組成が大きく異なり発光波長の最も短い青LEDにおいては、実験の結果、照射した光の波長が短いほど高い発電特性を示す傾向がある。
【0066】
従って、LED1とLED2とのペアで、交互に光を照射させながら高効率で発光させるためには、同じ波長のLEDを用いるか、あるいは、発光波長の長い赤LEDから緑LEDにおいては、異なる波長のLEDと一緒に交互に発光させても効率を向上することができる。
【0067】
実施例として、2つ以上のn色のLEDを組み合わせると、2色ならば3種類の色、3色ならば7種類の色、4色ならば15種類の色というふうに、nC1+nC2+nC3+‥nC(n-1)+nCnの種類の発色が得られる。その内、LEDが単独で発光した場合を除けば、nC2+nC3+‥nC(n-1)+nCnの種類の発色においては発光効率が向上する。
【0068】
また、発光波長の最も短い青色LEDにおいても、黄色の蛍光体を併用すれば、長い発光波長も得られるので、異なる波長のLEDと一緒に交互に発光させても効率が向上する。
【0069】
図19は、本発明の実施例5に係る半導体発光装置の構造の例を示す図である。
図19(a)はLED1とLED2との構造を示す配置図、
図19(b)はLED1とLED2との回路図である。LED1とLED2とは、同一部材からなる例えば金属材料4上に、n型半導体層5aと活性層6aとp型半導体層7aとが積層されたものと、n型半導体層5bと活性層6bとp型半導体層7bとが積層されたものとが対向配置して構成されている。
【0070】
従って、LED1とLED2との間で、光照射を交互に行ない、相互に拡散容量を充電してから、LEDを発生させることができる。
【実施例6】
【0071】
図20は、本発明の実施例6に係る半導体発光装置の構成を示すブロック図である。
図20に示す実施例6の半導体発光装置は、LED1の両端に接続された電流源I1(t)と、LED2の両端に接続された電流源I2(t)とを設けたことを特徴とする。
【0072】
電流源I1(t)は、LED1にパルス電流を供給するもので、
図17に示すパルスタイミング制御部1aのパルス信号Vin1と同一機能を有する。電流源I2(t)は、LED2にパルス電流を供給するもので、
図17に示すパルスタイミング制御部1aのパルス信号Vin2と同一機能を有する。
【0073】
このような電流源I1(t)、電流源I2(t)を用いても、実施例5に係る半導体発光装置の効果と同様な効果が得られる。また、電流値を調整することにより、それぞれのLEDの発光量を正確に制御することができる。特に、異なる発光色や発光面積の異なるLEDを各LEDに最適な異なる電流によって制御する場合などには有効な駆動方法となる。
【実施例7】
【0074】
図21は、本発明の実施例7に係る半導体発光装置の構成を示すブロック図である。
図21に示す実施例7に係る半導体発光装置は、スイッチング素子Q1,Q2のゲートにパルス信号Vin1,Vin2を出力するPFM制御部8を設けたことを特徴とする。PFM制御部8は、パルス信号に対してパルス周波数変調を行い、変調されたパルス信号Vin1,Vin2をスイッチング素子Q1,Q2に印加することで、LED1,LED2の発光を制御することができる。
【実施例8】
【0075】
図22は、本発明の実施例8に係る半導体発光装置の構成を示すブロック図である。
図22に示す実施例8に係る半導体発光装置は、スイッチング素子Q1,Q2のゲートにパルス信号Vin1,Vin2を出力するPAM制御部9を設けたことを特徴とする。PAM制御部9は、パルス信号に対して振幅変調を行い、変調されたパルス信号Vin1,Vin2をスイッチング素子Q1,Q2に印加することで、LED1,LED2のそれぞれの発光量を制御することができる。
【0076】
なお、本発明は、上述した実施例1乃至8に係る半導体発光装置に限定されるものではない。例えば、
図17に示す実施例5に係る半導体発光装置のLED1,LED2のタイミング制御に、さらに、実施例1に係る半導体発光装置で用いた
図2に示すタイミング制御を加えても良い。これによれば、更に効果が大である。