(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態>
〔物品管理システムXについての説明〕
次に、
図1〜
図11を参照して、本発明の実施の形態に係る物品管理システムXについて説明する。
本発明の実施の形態に係る物品管理システムXは、端末20と収納ケース1(
図15)とを用いて、物品管理の支援を行うシステムである。
物品管理システムXは、看護師、医師等、物品管理システムXの提供者等である管理者のユーザーに指定された条件に合わせて、取得されるべき物品の取り忘れ、取り過ぎ、及び取り間違えを警告するための物品管理を支援する。このため、物品管理システムXは、光学系が最適化された実施の形態に係る収納ケース1を用いる。この収納ケース1を端末20に取り付けることで、端末に内蔵されたセンサや表示部を用いて、安価な物品管理支援システムを構築することが可能となる。この収納ケース1は、物品の持ち出し忘れを予防する効果も期待できる。
以下では、端末20を持ち出して携帯するユーザーを「服薬者」として説明する。
また、以下の例では、物品管理システムXを、服薬の管理支援システムに用いた例を示すが、所定の場所で所定時間や条件で物品の出し入れを管理する他のシステムに適用可能である。
【0011】
{物品管理システムXの構成}
まず、
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る物品管理システムXのシステム構成について説明する。
本発明の実施の形態に係る物品管理システムXは、サーバ30と、物品管理処理を実行する端末20(物品管理装置)とが、ネットワーク25を介して接続される。
端末20は、携帯電話、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、タブレット端末、タブレット型やノート型のPC(Personal Computer)等を用いた、物品管理を行うための端末装置である。端末20は、携帯性に優れ、アプリケーション・ソフトウェア(プログラム)をインストール可能なスマートフォンを用いることが特に好ましい。
ネットワーク25は、無線電話網やインターネットやイントラネット等のネットワークである。ネットワーク25は、携帯電話網、WiMAX、PHS網、無線LAN、有線電話回線、LAN、電灯線LAN、cLink、専用の回線等を用いることができる。ネットワーク25のネットワークの形態としても、IPネットワークやその他のスター状やリング状のネットワーク等を用いることができる。
サーバ30は、いわゆる「クラウド」上のサーバ群等であり、端末20で取得した位置情報を受信し、地図情報や店舗情報等を送信する。また、電子メール(以下、「メール」という)の送受信、SMS(ショートメッセージサービス)、各種メッセンジャーやチャット、SNS(ソーシャルネットワークサービス)、ビデオ通話サーバ等の各種サービス(デーモン)機能も備えている。さらに、サーバ30は、服薬履歴データを記憶するデータベース等の記憶手段、服薬条件データ218(
図2)を設定する、CGIやASPサーバ等の服薬条件データ設定手段を備えていてもよい。
管理端末35は、PC、タブレット端末、スマートフォン等であり、主に管理者が用いて、端末20の物品の取得状況を確認するための端末装置である。管理端末35は携帯可能な端末であっても、拠点に据え置かれる据え置き型であってもよい。管理端末35が携帯可能な端末の場合、管理者は、いつでもどこでも服薬者の端末20やサーバ30等にアクセスし、服薬状態を確認できる。このため、管理端末35は、サーバ30と同様に、端末20にアクセスする服薬条件データ設定手段を備えていてもよい。また、管理端末35は、端末20との間でビデオ通話等を行うためのウェブカメラ等の撮像手段と、マイクやスピーカ等の音声入出力手段とを備えている。また、管理端末35は、ウェブブラウザ等を用いて、サーバ30にアクセスするように構成されていてもよい。
【0012】
{端末20の構成}
次に、
図2を参照して、端末20の詳細な構成について説明する。端末20は、制御部200(画像認識手段、生活状態推定手段、所在地情報取得手段、服薬条件算出手段、用量確認手段、画像特徴量データ作成手段、差分画像データ作成手段、領域認識手段)、記憶部210(記憶手段)、入力部230(入力手段)、表示部240(表示手段)、音声出力部250(音声出力手段、報知手段)、フィードバック部255(フィードバック手段、報知手段)、撮像部260(撮像手段)、光源部265(光源)、加速度センサ部270(加速度センサ手段、位置情報取得手段)、気圧センサ部275(気圧センサ手段、位置情報取得手段)、タイマ部276(時刻取得手段)、GPS受信部280(位置情報取得手段)、ネットワーク接続部290(ネットワーク送受信手段、位置取得手段、報知手段)を備えている。
また、端末20には、実施の形態に係る収納ケース1が取り付けられている。この収納ケース1は、保管スペース41〜43に、小型の物品を保管することが可能である。これらの物品は、曲面ミラー61〜63(第1反射ミラー)及び平面ミラー53(第2反射ミラー)を介して、撮像部260により撮像される。以下では、物品として内服薬や注射針等(以下「薬等」という。)を用いる例について説明する。保管スペース41〜43は、例えば、朝食用、昼食用、夕食用の薬等を保管するために使用できる。なお、収納ケース1の詳細な構成については後述する。
【0013】
制御部200は、CPU、MPU、DSP、GPU、専用プロセッサ等を備えており、各種プログラムを実行して端末20の各機能を実現する手段である。制御部200は、記憶部210のアプリ300(アプリケーション・ソフトウェア)を各部と共同して実行することで、画像認識手段、生活状態推定手段、所在地情報取得手段、服薬条件算出手段、用量確認手段、画像特徴量データ作成手段、差分画像データ作成手段、領域認識手段、及び用量検出手段として機能する。
記憶部210は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、HDD等の記憶手段である。記憶部210は、制御部100が実行するプログラムやデータを記憶している。具体的に、記憶部210には、端末20を物品管理システムXの物品管理装置として機能させるためのアプリ300が記憶されている。アプリ300は、外部の記録媒体やPC(図示せず)又はネットワーク接続部290を介してダウンロードされて記憶部210に記憶される。また、記憶部210には、OS、WWWブラウザ、電子メーラ、地図描画(マップ)ソフトウェア、3D描画プログラム等の各種プログラム、及びそれらのプログラムのデータが記憶されている。
音声入力部220は、コンデンサマイク等と他のIC等の音声入力手段である。音声入力部220のマイクから入力された音声信号は、電気信号に変換され、A/Dコンバータでデジタル信号に変換されて入力される。音声入力部220は、音声データの他にも、震動データについても取得可能である。
入力部230は、タッチパネル、タッチパッド、電磁デジタイザ、光学ポインティングデバイス、トラックボール、キーボード、テンキー、カーソルキー(十字キー)、選択ボタン、キャンセルボタン、その他の各種ボタン等を備えている入力手段である。入力部230は、これらの入力手段によりユーザーが入力した入力情報を取得する。なお、入力部230は、収納ケース1の保管スペース41〜43の開閉を検知するスイッチ等が取り付けられてもよい。また、入力部230は、表示部240と一体的に構成されてもよい。
表示部240は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイやプラズマディスプレイやLED、プロジェクタ等の表示手段である。表示部240は、制御部200のGPUで描画された動画像を含む二次元画像や三次元画像を表示する。
音声出力部250は、ダイナミックスピーカやピエゾ素子のスピーカ等の音声出力手段である。音声出力部250は、D/A変換された電気信号を音声信号として出力する。また、音声出力部250は、警報用のブザー等を備えていてもよい。
フィードバック部255は、振動モータ(バイブレータ)や電磁アクチュエータやピエゾ素子等である。すなわち、フィードバック部255は、画像と音声以外の情報にて、服薬者に警告等を行うための報知手段である。フィードバック部255は、目と耳の不自由な服薬者のために、例えば、わさび臭のような匂いで警告する報知手段を備えていてもよい。また、フィードバック部255は、振動だけではなく、ヒータやペルチェ素子等を用いた温感や冷感で報知する手段を備えていてもよい。
撮像部260は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子とレンズ等を備え、静止画や動画を撮像するカメラ等の撮像手段である。撮像部260は、望遠やマクロ撮像の機能がない、単焦点のカメラであってもよい。この場合でも、撮像部260は、光学系が最適化された収納ケース1の内部の保管スペース41〜43を撮像することが可能である。なお、撮像部260は複数備えられてもよく、この場合でも、いずれか1つの撮像部260、主に背後に備えられたカメラが、物品を管理する際には収納ケース1の内部を撮像する。
光源部265は、LEDライトやフラッシュライト等であり、撮像部260にて撮像する際の光源となる。なお、光源部265は、収納ケース1の蓋51(
図15)の開閉時等に内部から保管スペース41〜43を照らし、暗い場所で服薬者が物品を認識しやすくすることも可能である。さらに、光源部265の発光により服薬者に警告を報知することも可能である。
加速度センサ部270は、3次元のジャイロセンサや加速度センサ等であり、端末20の傾き、服薬者の移動による三次元空間上の加速度や移動距離等を検知する。さらに、加速度センサ部270は、歩数センサや服薬者の運動センサ等を備えていてもよい。また、加速度センサ部270は、端末20へ与えられた衝撃等の細かな震動データについても取得可能である。
気圧センサ部275は、数ヘクトパスカル程度の気圧の変化を検知可能な気圧センサである。気圧センサ部275により、地上からの高さを検知可能である。また、気圧センサ部275は、天候の変化を検知することも可能である。
タイマ部276は、水晶振動子によるリアルタイムクロック等の現在時刻の時刻情報を取得するための手段である。タイマ部276にて取得した時刻情報を用いることで、生活状態の推定精度を向上することができる。なお、タイマ部276は、GPS受信部280により時刻情報を取得し、又は時刻合わせを行ってもよい。さらに、タイマ部276は、ネットワーク接続部290を介して、サーバ30、携帯基地局(図示せず)、他のタイムサーバ(図示せず)と接続し、NTP等のプロトコルにより時刻情報を取得してもよい。サーバ30と時刻を合わせることで、服薬履歴データの検索性や正確性等を高めることが可能となる。
GPS受信部280は、GPS(Global Positioning System)、準天頂衛星システム等の衛星測位システムの衛星からの電波を受信するGPS信号受信モジュールである。GPS受信部280は、DSPやRFモジュレータやアンテナ等を備えている。GPS受信部280により取得したGPS信号と、加速度センサ部270及び気圧センサ部275の信号により、端末20の地図上の位置を特定することが可能となる。なお、GPS受信部280は、GPSリピータ等からの信号も受信するため、屋内でも端末20の位置を特定することが可能である。
ネットワーク接続部290は、ネットワーク25に接続するために、デジタル無線通信を行うネットワーク接続手段である。ネットワーク接続部290は、アンテナ、RF(無線通信)手段、デジタル変調手段、A/D変換手段、D/A変換手段、パケット符号化手段、暗号化手段等を含んでいる。ネットワーク接続部290は、有線でのネットワーク接続手段を備えていてもおよい。また、ネットワーク接続部290は、Bluetooth(登録商標)等の無線等で外部に接続する手段を備えており、バイブレータ等の外部機器と接続可能に構成されていてもよい。これにより、視覚障害者や聴覚障害者向けに、外部機器や外部ブザー等で誤服薬の報知をすることが可能となる。なお、ネットワーク接続部290は、アナログ無線通信を行うように構成されていてもよい。
なお、この他にも、端末20は、光センサ、赤外線センサ、超音波センサ、生体認証センサ、磁気センサ、臭いセンサ、湿度センサ、発汗センサ、尿センサ、赤外線センサ、脈拍や血糖値を測定する生体センサ等も備えていてもよい。また、服薬者の体温や部屋の温度を計測するための温度センサ、ぜんそく等の呼吸器系の疾患をもつ服薬者に対応する呼気センサ、薬等と相性が悪いアルコールを検出するアルコールセンサ等も備えていてもよい。これらの他のセンサの信号も、生活状態の推定や誤服薬の判断に用いることが可能である。
さらに、端末20は、外部記録媒体を接続するためのカードリーダ、USB等により外部機器に接続する手段等を備えていてもよい。
【0014】
ここで、記憶部210のアプリ300は、用量確認プログラム211、撮像データ212、画像特徴量データ213、領域データ214、差分画像データ215、白黒画像データ216、用法確認プログラム217、服薬条件データ218を備えている。
用量確認プログラム211は、画像処理により薬等の有無を認識するプログラム等である。用量確認プログラム211は、撮像部260により収納ケース1内部を撮像し、保管スペース41〜43に保管された錠剤や注射針等の物品を検知するように動作させる。用量確認プログラム211の物品の検知には、背景差分法を基本とした検知アルゴリズムを用いる。
撮像データ212は、撮像部260により撮像された、収納ケース1内部の画像データである。
画像特徴量データ213は、撮像データ212の背景画像データ又は確認用画像データから歪み除去、色空間変換、ホワイトバランス補正等により、画像の特徴量として抽出されたデータである。画像特徴量データ213は、画像初期設定処理で取得された収納ケース1の保管スペース41〜43内に何も物品が入っていない状態の背景画像データと、用量確認処理時に撮像された確認用画像データとを含む。なお、保管スペース41〜43のいずれかに複数の薬等が保管されており、時間を空けて少しずつ摂取するような構成の場合には、それぞれの摂取後の画像特徴量データ213が、残り有り状態の背景画像データとして含まれていてもよい。また、画像特徴量データ213は、物品の使用完了を認識するため、使用済みの物品を、再度保管スペース41〜43にそれぞれ保管した状態を記憶しておいてもよい。これにより、薬等の場合は、包装紙を保管スペース41〜43内に戻すことで、服薬完了を認識することが可能になる。
領域データ214は、画像特徴量データ213から検出されたミラー61〜63の領域を示すデータである。
差分画像データ215は、画像特徴量データ213の確認用画像データと背景画像データとの差分画像のデータである。
白黒画像データ216は、差分画像データ215が所定の閾値にて変換された白黒(二値)画像のデータである。
用法確認プログラム217は、GUI(Graphical User Interface)と、常時実行されるサービス(デーモン)とを用いて、物品の取得の監視を行うためのプログラム等である。用法確認プログラム217は、GPS受信部280等の信号から端末20の位置情報を算出し、インターネット上に存在する施設所在地と比較することで施設(建物)への入退出から生活状態を推定し、この生活状態から物品の有無を検知するか判断し、誤取得を検知するよう動作させる。用法確認プログラム217は、この誤取得として、例えば摂取忘れや摂取重ね等の誤服薬が検知された場合は、服薬者に対しては、表示部240等を介して報知して注意し、管理者及び/又は服薬者に対してメール等を送信して、誤服薬の発生を報知する。また、用法確認プログラム217は、危険が高い場合には、ビデオ通話等を用いて報知することも可能である。また、用法確認プログラム217は、タイマ部276の日時や曜日の時刻情報から、服薬者の生活のパターンを推定することも可能である。これらのパターンを認識することで、生活状態の推定の精度が向上する。加えて、用法確認プログラム217は、加速度センサ部270や他のセンサの情報も用いることで生活状態の推定の精度をさらに向上させることができる。
服薬条件データ218は、物品の取得の条件と誤取得の判断条件等が設定されたデータである。服薬条件データ218は、物品の取得の条件としては、例えば、薬等の用法と用量のデータを含んでいる。また、服薬条件データ218は、薬等の用法と用量のデータにおいて、飲み忘れや飲み重ね等の誤服薬の条件毎に、危険性が高いか低いかについての危険性情報を含んでいる。これにより、誤服薬発生時に危険性が大きいか低いかで処理を変更可能となる。また、服薬条件データ218は、誤取得の判断条件としては、誤服薬の発生検知条件のデータを含んでいる。この服薬条件データ218は、ユーザーにより設定、又はサーバ30からダウンロードして取得される。また、服薬条件データ218は、ユーザーの自宅の座標や、自宅にいる場合の食事や就寝の時間等の情報も含んでいる。
施設検索設定データ219は、位置情報と、サーバ30から取得された施設の所在地情報とを用いて施設の出入りを検索するための閾値等のデータ等である。
【0015】
{物品管理システムXによる物品管理処理}
次に、
図3〜
図11を参照して、物品管理システムXによる物品管理処理について説明する。
本実施形態では、物品管理システムXを携帯可能な服薬管理支援システムとして用いる際の物品管理処理の例について説明する。すなわち、本実施形態では、収納ケース1は、曲面ミラー61〜63付きの薬ケースとして用い、管理される物品は薬等を用いる。
物品管理システムXは、本実施形態の物品管理処理において、初期設定により収納ケース1内を撮像し、物品が収納されたことを確認後、端末20により取得された位置情報に基づいた服薬者の生活状態の推定を行う。この上で、物品管理システムXは、収納ケース1内に保管された物品の有無を画像認識により判断し、物品の取り出し条件に合っているか否かを判定し、必要な場合、警告を行う。
以下で、
図3のフローチャートを参照して、本発明の実施の形態に係る物品管理処理についてステップ毎に詳しく説明する。以下の処理は、制御部200が、各部と協同し、ハードウェア資源を用いて実行する。
【0016】
(ステップS201)
まず、制御部200は、用量確認プログラム211を用いて、画像初期設定処理を行う。
この処理では、端末20の撮像部260は、背景差分法に基づく物品の検出を行うために、先に、物品が保管スペース41〜43の内部に入っていない状態で、レンズの歪み除去を行って、輝度とホワイトバランスとを補正した画像特徴量データ213の背景画像データを取得する。
この際、端末20の撮像部260に接写モードがない場合、収納ケース1内を撮像した撮像データ212は、ぼやけることとなる。このため、制御部200は、画像処理を行った上で、背景画像データを取得して記憶する。
この処理は、アプリ300のインストール又は収納ケース1の取り付け時に行っても、管理者や服薬者の指示により行ってもよい。
画像初期設定処理の詳細については後述する。
【0017】
(ステップS202)
次に、制御部200は、用法確認プログラム217を用いて、服薬条件設定処理を行う。
ここでは、制御部200は、管理者や服薬者の入力部230の入力に従い、服薬条件データ218を設定する。
なお、制御部200は、サーバ30からネットワーク25を介して処方された薬等の物品に対応した服薬条件データ218をダウンロードしてもよい。この際に、制御部200は、撮像部260で、物品自体を撮像し、文字やバーコード等を画像認識して、適切な服薬条件データ218を取得してもよい。また、サーバ30や管理端末35の服薬条件設定手段から端末20にアクセスし、服薬条件データ218を直接設定してもよい。
【0018】
図4を参照して服薬条件データ218の設定について、詳細に説明する。
図4(a)は、服薬条件データ218の用法と用量についての設定例を示す。本実施形態の物品管理システムXは、服薬管理支援システムとして用いられる際には、服薬者が用法・用量を正しく守って薬を服用し、誤服薬を防ぎ、服薬状況を良好に保つことを支援する。このため、服薬条件データ218は、保管スペース41〜43(
図2)内に保管された、それぞれの薬等についての、用法と用量の設定を含んでいる。
制御部200は、服薬条件データ218の用法として、主に、薬等が食前、食後、食事中、食後2〜3時間等の食間、起床後、就寝前等、食事や睡眠等に対応する生活状態を推定し、服薬時期の設定を行う。これは、薬等の摂取は、生活状態と強く関係しているためである。つまり、インスリンのような血糖値を調節する薬等は、食前に服用しないと全く効果がなく、逆に、頭痛薬等の胃に負担のかかる薬等は、食後に服用するのが望ましいためである。なお、用法として、薬等の服用する時間を直接指定することも可能である。これにより、制御部200は、服用の時間が指定されている薬等を管理可能である。また、症状が見られるときだけに服用する薬である頓服薬は、1度服用した後、所定時間は服用しない方がよいため、制御部200は、そのような用法を設定することも可能である。さらに、運動前に服用するべき薬が、又は運動前に服用するべきでない薬等の用法も指定可能である。
また、制御部200は、服薬条件データ218の用量として、当該保管スペース41〜43に保管された薬等の種類と分量とについて設定する。これに加え、制御部200は、服薬条件データ218に、誤服薬の際に、薬等の主作用を弱めたり、副作用を引き起こしたりする危険性の高い服薬時期、薬の種類、薬の分量等についても設定する。
なお、制御部200は、用法と用量とについて、複数の薬が同一の保管スペース41〜43に保管されている場合は、それぞれ設定することが可能であり、優先する用法と用量とを設定することもできる。
【0019】
図4(b)は、誤服薬の発生検知条件(プロダクションルール)についての設定例を示す。たとえば、制御部200は、「食前」に服用するべき薬の場合、食事前の生活状態のときに薬等が取得されれば、「正常」と判断するように、服薬条件データ218を設定する。しかしながら、制御部200は、例えば、「その他」の生活状態で薬が取得されたならば「異常(摂取重ね)」と判断するように、服薬条件データ218を設定する。ここでは「その他」の生活状態は、食事とも睡眠とも関係のない生活状態を示す。また、制御部200は、例えば、食事中の状態になっても薬が取得されていなければ「異常(摂取忘れ)」と判断するように、服薬条件データ218を設定する。
これらに加えて、制御部200は、昼食分の薬を朝食時に取得するなどの取り間違いも異常として検知するように、服薬条件データ218を設定する。この際に、制御部200は、「食後」、「食事中」、「食間」、「起床後」、「就寝前」等についても、誤服薬の発生検知条件を、同様に、服薬条件データ218に設定可能である。
端末20の制御部200は、推定された生活状態により、服薬条件データ218の誤服薬の発生検知条件の設定を参照することで、誤服薬を検知することが可能となる。
なお、制御部200は、服薬条件データ218の誤服薬の発生検知条件についても、保管スペース41〜43毎に、別々に設定することも可能である。
また、服薬条件データ218の用法と用量についての設定、誤服薬の発生検知条件についての設定は、服薬時や警告の報知時等の際に、服薬者が表示部240で確認することも可能である。
また、服薬条件データ218に、服薬者が外出するか自宅にいるか等の予定、自宅にいる場合には食事や就寝の時間等についても、設定可能である。
【0020】
(ステップS203)
次に、制御部200は、用法確認プログラム217を用いて、所在地情報取得処理を行う。
図5を参照して、この所在地情報取得処理について説明する。
まず、制御部200は、端末20の現在地の位置情報を算出する。制御部200は、この位置情報の算出の際、加速度センサ部270、気圧センサ部275の信号、ネットワーク接続部290から取得したルータの情報等を用いて、正確な位置情報を算出する。このため、例えば、アプリ300をiPhone(登録商標)等のiOSデバイス向けのネイティブアプリケーションとして作製した場合、Apple社によって提供されているCoreLocationフレームワーク等を用いることができる。
また、制御部200は、例えば、現在地の位置情報を数十秒〜数分程度毎に算出することで、バッテリーの電力消費を抑えることが可能である。この際、制御部200は、端末20がスリープ等の省電力状態になっている際にも、位置情報を継続的に算出することが好適である。
図5(a)の画面例700で示すように、制御部200は、数値データを取得するだけではなく、地図上で現在地810を確認できるように構成することが好適である。
また、画面例700には、所在地情報から施設を検索するための距離の閾値を調節するスライドバー820、830が表示されている。スライドバー820は、レストランを検索する現在地からの距離の閾値を設定する。また、スライドバー830は、ホテル検索する現在地からの距離の閾値を設定する。制御部200は、これらの設定を、施設検索設定データ219として保存する。後述するように、制御部200は、このスライドバー820、830で設定された距離の閾値により、施設への進入、滞在、退出を判断し、生活状態を算出し、この生活状態から服薬条件になったか否かを判断する。
【0021】
次に、制御部200は、算出した現在地の位置情報を用いて、施設検索設定データ219に設定された所定距離内にある飲食施設や宿泊施設の所在地情報を取得する。このために、制御部200は、算出した位置情報をネットワーク接続部290にてサーバ30に送信して、サーバ30から、飲食施設や宿泊施設の位置の情報等である所在地情報を取得する。アプリ300を上述のようなネイティブアプリケーションとして開発した場合、Google Places API等を用いて位置情報を取得することができる。このAPIは、現在地の他に、所在地情報を取得する半径や施設の種類を指定することができる。このため、アプリ300では、取得する半径を、例えば1000mとし、取得する施設の種類を飲食施設の場合は『cafe(カフェ)』や『restaurant(レストラン)』、宿泊施設の場合は『lodging(宿泊施設)』や『campground(キャンプ場)』等と指定する。制御部200は、取得した情報をJSON形式等で受け取って、SBJsonフレームワークを利用して、所在地及び施設名の情報を収集し、所在地情報として用いる。
この際、制御部200は、各飲食施設や宿泊施設の所在地情報から、現在地との距離を算出する。制御部200は、現在地と各施設との距離を、二地点の緯度・経度からその距離を計算するヒュベニ(Hubeny)の公式に基づき算出してもよい。ヒュベニの公式は、地球の丸みを考慮した計算方法であり、2つの固定パラメーターを持つ。この例においては、アプリ300では、固定パラメーターのそれぞれの値を、Google Mapsで使用されている測地系WGS84に基づき、長半径aを6378137m、離心率eの二乗を0.00669437999019758とすることが好適である。
なお、記憶部210に、地図データや施設の所在地情報を記憶しておくような構成も可能である。この場合、サーバ30から所在地情報を取得する必要がないため、ネットワーク25に非接続でも所在地情報を取得可能となる。また、ネットワーク帯域を有効に利用でき、バッテリーの電力消費を抑えられる。
図5(b)は、制御部200が、取得した所在地情報を表示部240に表示した際の画面例710を示す。制御部200は、飲食施設の一覧が表示し、最上部には、最も近い施設名を表示する。
【0022】
なお、制御部200は、端末20の位置情報の算出については、ネットワーク接続部290で取得した基地局の所在地及び電波の到達距離の情報等を利用し精度を高めることが可能である。
また、制御部200は、所在地情報の取得には、他のグルメサイトや宿泊予約サイト、例えば「食べログAPI」等を用いて取得することも可能である。
さらに、制御部200は、端末20の服薬者の行動の履歴等に基づいて生活行動を推定することも可能である。この際に、制御部200は、施設内でも、加速度センサ部270から取得した加速度や居場所等の情報により、服薬者の現在の生活行動を推定することが可能である。また、制御部200は、施設、自宅、家族宅、友人宅等の所在地情報を登録しておき、この所在地情報で生活行動を推定することも可能である。この際、制御部200は、端末20の記憶部210に記憶された電話帳や、サーバ30のSNSの住所等の情報を用いて、所在地情報等を自動的に登録することもできる。
【0023】
(ステップS204)
次に、制御部200は、用法確認プログラム217を用い、生活状態服薬条件算出処理を行う。この処理において、まず、制御部200は、服薬者の施設への入退出を判断する。この上で、制御部200は、入退出の判断により、生活状態を推定する。そして、制御部200は、推定された生活状態により、服薬時期となっているか否かについての服薬条件を算出する。
【0024】
図6を参照して、服薬条件算出処理の詳細を説明する。
まず、制御部200は、GPS受信部280等で取得した信号から算出した現在地の位置情報と、サーバ30から取得したレストランやホテルの所在地情報とを用いて、施設への入退出を判断する。
具体的には、制御部200は、服薬者の現在地情報、飲食施設又は宿泊施設の所在地情報を用いることで、食事や睡眠の開始又は終了を認識する。この際、制御部200は、服薬者が所在地情報で取得した施設から指定された閾値内の距離で所定時間以上滞在したならば、服薬者がその施設に進入したと判断する。逆に、制御部200は、進入後、閾値内の距離に所定時間以上検索されなくなった場合、つまり所定距離以上離れたとき、退出したと判断する。
【0025】
図6(a)は、施設検索設定データ219で、レストランを検索する閾値が20mと指定されている場合の例を示す。
たとえば、指定範囲内の施設として所在地情報で検索された「施設A」がレストランであった場合には、制御部200は、3回(3分)検索されたら「進入」と判断し、その後は「滞在」と判断する。
また、制御部200は、施設Aが検索されなくなって3回(3分)経過したら「退出」と判断する。
【0026】
次に、制御部200は、これらの所在地情報からの施設への進入、滞在、退出の判断に従って、服薬者の食事や睡眠の開始又は終了を認識し、食事や睡眠等に対応する生活状態を推定する。
図6(b)によると、制御部200は、飲食施設への進入から30分間を「食事前」の生活状態と判断し、その後「食事中」の生活状態と推定する。この上で制御部200は、退出の判断後に「食事後」の生活状態と推定する。この
図6(b)の例において、制御部200は、飲食施設の場合、「食事後」となった後、30分後に、「その他」の生活状態に遷移させる。制御部200は、例えば、ホテル等の宿泊施設の場合は、進入後60分間を「睡眠前」、60分後からは「睡眠中」、退出後60分間を「睡眠後」の生活状態と推定する。
なお、制御部200は、施設内で各種センサの信号値等の所定条件が変化した際には、生活状態を変化させてもよい。たとえば、宿泊施設に進入後、光センサにより周囲が暗くなったことを検知した場合は、睡眠後の生活状態と推定してもよい。飲食施設に進入後に光センサにより周囲が暗くなったことを検知した場合には、居酒屋等で食事や飲酒をしているといった生活状態と推定してもよい。
また、判断の所定時間は、ユーザーによる設定、ユーザーが徒歩か移動手段に乗っているかといった違いや、加速度センサ部270の情報等により、適宜変更可能である。
さらに、制御部200は、服薬者が通常食事や睡眠をとる時間帯を服薬条件データ218に設定しておいて、タイマ部276を参照して、この設定から数十分〜数時間程度の所定時間が経過した場合には、施設への出入りにかかわらず、生活状態を変化させるように構成してもよい。つまり、制御部200は、服用者の生活パターンにより生活状態を推定することも可能である。制御部200は、服薬者の現在地の位置情報により、自宅にいることが明らかな場合も、同様に所定時間が経過した場合には、生活状態を変化させるように構成してもよい。この際、所定の配膳サービスの担当者や介護者等が到着したことをネットワーク送受信部290等にて検出して、生活状態を変化させてもよい。さらに、制御部200は、図示しないカレンダーのソフトウェア等から、服薬者の予定を取得して、配膳サービスの担当者や介護者等が自宅に来るか来ないか等を検出して、生活状態を変化させてもよい。
また、制御部200は、服薬者の食事、睡眠以外の生活状態についても推定する。たとえば、制御部200は、タイマ部276から時刻情報を取得し、頓服薬に対して、既に薬等が服薬されている場合、服薬可能になるまでの時間が経過したか否かといった情報も、生活状態に含めて推定する。また、制御部200は、加速度センサ部270の加速や、スポーツジム等の施設に出入りしたか否かといった情報から、服薬者が運動前であるか、運動中であるかといった生活状態を推定することも可能である。
また、制御部200は、他のセンサから、血糖値や尿糖値が高い、温度や湿度から熱中症の可能性がある、過度に緊張している、服薬者の体温が高く風邪をひいている、呼気から喘息の兆候がある、服薬者がアルコールを摂取しているといった生活状態を推定することも可能である。
【0027】
次に、制御部200は、生活状態の推定により、服薬条件を算出する。
制御部200は、推定された生活状態から、服薬条件データ218を検索する。ここでは、制御部200は、保管スペース41〜43のいずれかの薬等が、用法の服薬時期と対応しているか否かについて、「服薬条件」として算出する。この際、制御部200は、例えば、服薬者がレストランに滞在している場合、食事する可能性が高いと判断し、食事に関する服薬条件のみに絞ることができる。
【0028】
なお、制御部200は、現在時刻と現在地の情報のみを用い、機械学習により生活状態を直接推定することも可能である。
また、制御部200は、端末20がスマートフォンである場合、GPS受信部280以外の各種センサを用いて、進入や退出の判断及び生活状態の推定を行うことができる。また、制御部200は、進入や退出を認識した後に、その他のセンサのデータを収集し、機械学習により正確に食事、睡眠の開始終了をより正確に推定することも可能である。たとえば、制御部200は、宿泊施設滞在時に、加速度センサにより検出された加速度が所定値以下になった場合、端末20が置かれて、服薬者が就寝したと判断できる。
また、制御部200は、他のセンサの情報から、体温が高かったり、喘息の発作の兆候があったり、アルコールを摂取していたりした場合に、例えば服薬条件をキャンセルするよう、服薬条件を変化させることも可能である。
【0029】
(ステップS205)
次に、制御部200は、用法確認プログラム217を用い、服薬条件の薬等があるか否かを判定する。制御部200は、服薬条件、つまり、服薬の確認が必要な薬等が、保管スペース41〜43にあった場合には、Yesと判定する。制御部200は、それ以外の場合には、Noと判定する。
Yesの場合、制御部200は、処理をステップS206に進める。
Noの場合、制御部200は、処理をステップS203に戻して、所在地情報の取得を続ける。
【0030】
(ステップS206)
推定された生活状態が服薬条件となる薬等がある場合、制御部200は、用量確認プログラム211を用いて、用量確認処理を行う。
制御部200は、端末20の撮像部260で収納ケース1を撮像して、保管スペース41〜43内にある薬等の物品の有無を認識する。
このように、撮像部260で撮像して薬等の有無を認識するための豊富な情報を一瞬で収集することができる。また、収納ケース1からの薬の取得を認識することで、薬の血中有効成分を計測する又は薬が胃に到達したことを計測する必要がなく、コストを削減可能となる。
用量確認処理の詳細についても後述する。
なお、制御部200は、薬等の有無だけでなく、薬等の分量や薬の種類を含む物品の種別や量等を認識するように構成することも可能である。また、制御部200は、一包化薬の場合、包装された薬等とその包装のみとを、区別してもよい。
【0031】
(ステップS207)
次に、制御部200は、用法確認プログラム217を用いて、服薬確認処理を行う。
制御部200は、上述の用量確認処理により認識された保管スペース41〜43内の薬等の有無により、保管されたすべての薬等が適切な時期に取得されたか否かを確認する。つまり、制御部200は、服薬条件データ218を参照して、推定された生活状態に対応する保管スペース41〜43薬等の有無により、服薬状態を判断する。なお、薬等の有無だけでなく、分量により服薬状態を判断してもよい。
制御部200は、適切な服薬時期になったときに薬の有無を確認することで、正常と異常(摂取忘れ、取り忘れ)とを判断することができる。また、制御部200は、服薬時期になる前に薬がなくなっている場合は、異常(摂取重ね、取り過ぎ)と判断することができる。制御部200は、正常の場合は正常服薬と判断し、摂取忘れ又は摂取重ねの異常の場合は、誤服薬と判断する。ここで、服薬者が本来摂取すべき保管スペース41〜43とは異なる保管スペース41〜43から薬等を摂取した場合は、取り間違えであり、制御部200は、摂取忘れと摂取重ねの両方の異常も誤服薬と判断可能である。
これにより、下記で説明するように、制御部200は、例えば、食前に服用すべき薬があった場合は進入時に、食後に服用すべき薬があった場合は退出時に、適切なタイミングで摂取忘れ及び摂取重ねを注意することが可能となる。
制御部200は、これらの正常服薬又は誤服薬の判断を服薬履歴データとして記憶部210に記憶し、又はサーバ30へ送信することが可能である。サーバ30は、この服薬履歴データをデータベース等の記憶手段に記憶することが可能である。
なお、蓋51(
図15)の開閉状況を認識し、ユーザーに報知することも可能である。つまり、蓋51の開閉を検知して、用量確認処理を行って誤服薬を判断して、直後に注意してもよい。この際に、加速度センサ部270で蓋51の開閉の際のショックを検知することで、蓋51のいずれかが開閉されたことを検知することが可能である。また、蓋51の開閉の際に、磁石52(
図15)のカチっとした音を音声入力部220で入力し、所定の周波数パターンから認識することも可能である。このように、加速度センサ部270や音声入力部220で蓋51の開閉を検知することで、バッテリーの消費を抑えられる。また、端末20にフリップカバー等向けの磁気センサ等を備えている場合には、これを利用することも可能である。また、撮像部260で撮像された動画像から蓋51の開閉を検知することも可能である。この場合、撮像部260で常に撮像すると電力消費が大きくなるため、撮像の間隔を長くし、解像度等を低くして撮像することが好適である。
なお、蓋51に開閉センサを別途備えるような構成も可能である。
【0032】
(ステップS208)
次に、制御部200は、用法確認プログラム217を用い、服薬通知すべきか否かを判定する。制御部200は、判断した服薬状態が異常、つまり摂取忘れや摂取重ねがあり誤服薬の状態であった場合は、Yesと判定する。制御部200は、それ以外、つまり正常の場合は、Noと判定する。
Yesの場合、制御部200は、処理をステップS209に進める。
Noの場合、制御部200は、処理をステップS203に戻して、所在地情報の取得を続ける。
【0033】
(ステップS209)
服薬通知すべきであった場合、制御部200は、用法確認プログラム217を用い、危険性が高い誤服薬であったか否かを判定する。
制御部200は、服薬条件データ218を参照し、服薬時期、薬の種類、薬の分量等において、誤服薬の状態では服用者の生命や健康上の危険性が高い場合には、Yesと判定する。制御部200は、それ以外、つまり生命や健康上の危険性が低い場合は、Noと判定する。たとえば、
図4(a)の例では、食後に保管スペース41の風邪薬Aが摂取忘れであっても、服薬者の生命上の危険は少ないため、「No」と判定する。一方、制御部200は、保管スペース42のインスリンについては、摂取重ねるとなると、服薬者が低血糖に陥り生命上の危険もあるため、「Yes」と判定する。
Yesの場合、制御部200は、処理をステップS211に進める。
Noの場合、制御部200は、処理をステップS210に進める。
【0034】
(ステップS210)
誤服薬であっても生命や健康上の危険性が低い場合、制御部200は、用法確認プログラム217を用いて、危険性低誤服薬報知処理を行う。
図7(a)を参照すると、制御部200は、表示部240に、画面例720のバナー840のように「飲み忘れていませんか?」等のバナーメッセージを表示して、誤服薬を報知する。これに加え、制御部200は、音声出力部250から同様のメッセージを音声やブザーを鳴らして報知することが可能である。また、制御部200は、フィードバック部255を震動等させて報知することも可能である。また、これらの報知は、端末20がスリープ等の省電力状態であっても行うことが好適である。
さらに、制御部200は、ネットワーク接続部290から、外部機器を制御する信号を送信して、外部機器により誤服薬の検知を報知してもよい。制御部200は、外部機器がバイブレータやブザーの場合、震動やブザーを発生させるよう指示する。
制御部200は、その後、処理を終了する。
【0035】
(ステップS211)
誤服薬で生命や健康上の危険性が高い場合、制御部200は、用法確認プログラム217を用い、危険性高誤服薬報知処理を行う。
図7(b)を参照すると、まず、制御部200は、表示部240に、画面例730のダイアログ850のように「飲み忘れていませんか?」等のダイアログ表示を行う。
ここで、制御部200は「アプリ起動」等のボタンが押下された場合、GUIを呼び出し、誤服薬状態の薬等について実際の用法や用量を確認させることも可能である。また、制御部200は、音声出力部250やフィードバック部255により報知を行うことも可能である。
また、制御部200は、誤服薬を検知した旨のメールを、ネットワーク接続部290から、ネットワーク25を介して、管理者の管理端末35に送信する。
また、制御部200は、服薬者本人に対してもメールを送信して、危険を報知することが可能である。服薬者本人は、通常、端末20でメールの受信をチェックし使い慣れているため、メールでも警告することで、誤服薬の報知が確実となり、服薬者の使い勝手を向上させることが可能となる。
また、制御部200は、サーバ30の各種メッセンジャーやチャット等のサーバにアクセスして、管理端末35に誤服薬の検知を報知してもよい。
この処理も、上述の危険性低誤服薬通知処理と同様に、端末20がスリープ等の省電力状態であっても行うことが好適である。また、制御部200は、外部機器により誤服薬の検知を報知してもよい。制御部200は、この際に、危険性低誤服薬通知処理より大きな震動やブザー音を発生させるよう指示することが可能である。
【0036】
(ステップS212)
次に、制御部200は、用法確認プログラム217を用い、ビデオ通話処理を行う。
制御部200は、管理者の管理端末35との間で、ネットワーク25を介して、サーバ30又は他の端末20との間で、撮像部260の前面カメラのような他のカメラを用いてビデオ通話を行い、服薬の指導を行う。また、撮像部260で収納ケース1の状態を撮像して、もう一度保管スペース41〜43の状態をチェックし、適切な指導を行うことができる。さらに、管理者は、服薬者の状態によっては救急隊を手配したり、適切な治療法を指示できる。この際、端末20のGPS受信部280等の信号から算出した現在地の位置情報により、服薬者の居場所が分かるため、救急隊を迷わずに急行させることができる。また、制御部200は、サーバ30を介して、各種メッセンジャーやチャット等を用いて端末20の服薬者へ、リアルタイムに指示することも可能である。
これにより、服薬者が、誤服薬によって生命や健康上の危険状態に陥るのを回避することが可能となる。
以上により、本発明の実施の形態に係る物品管理処理を終了する。
【0037】
{画像初期設定処理の詳細}
次に、
図8〜
図9を参照して、画像初期設定処理の詳細について説明する。
以下では、
図8のフローチャートを参照して、本発明の画像初期設定処理についてステップ毎に詳しく説明する。
【0038】
(ステップS301)
まず、制御部200は、領域抽出処理を行う。
制御部200は、表示部240へ「保管スペース内を空にして、蓋を閉じて下さい」等の表示を行い、確認後に撮像部260で収納ケース1の内部を撮像する。この際、制御部200は、光源部265にて、収納ケース1を照らす。
制御部200は、撮像した画像の中から、曲面ミラー61〜63(
図2)を含む所定範囲の領域を切りだし、記憶部210に撮像データ212として記憶する。
この撮像データ212は、色の表現方法がRGB(Red、Greeen、Blue)色空間で表される。
【0039】
(ステップS302)
次に、制御部200は、歪み除去処理を行う。
制御部200は、直線が画像上でも直線として認識できるよう、撮像データ212からレンズの歪曲収差を除去する。制御部200は、この歪曲収差の除去は、例えば、撮像データ212の壁面等の曲面を検出し、レンズのモデルにより変形することで行う。
【0040】
(ステップS303)
次に、制御部200は、色空間変換処理を行う。
ここで、収納ケース1は、基本的に外光が入り込まないようになっているものの、強い直射日光等の外光が内部に入り込むことも考えられる。
制御部200は、こういった外光の影響を軽減するため、撮像データ212の色の表現方法を、RGB色空間から、HLS色空間へ変換する。HLS色空間は、色相(Hue、H)、彩度(Saturation、S)、輝度(Lightness、L)で表される色空間である。
【0041】
(ステップS304)
次に、制御部200は、特徴量抽出/記録処理を行う。
制御部200は、ホワイトバランスを補正するため、HLS色空間に変換された撮像データ212から、輝度Lの情報を取り除き、色相Hと彩度Sの情報のみを有する画像を作成し、記憶部210に画像特徴量データ213の背景画像データとして記憶する。
つまり、画像特徴量データ213の背景画像データの各ピクセルは、色相Hと彩度Sの情報を有している。
【0042】
(ステップS305)
次に、制御部200は、直線検出処理を行う。
図9を参照して説明すると、制御部200は、画像特徴量データ213上において曲面ミラー61〜63の端を表す直線群900を検出する。
図9(a)によると、制御部200は、縦方向又は横方向で画像特徴量データ213から、例えば、微分処理等によりエッジを検出して、ハフ変換(Hough変換)等のアルゴリズムを用いて、エッジが直線上に並んでいる箇所を曲面ミラー61〜63の端を表す直線群900として検出する。この際、制御部200は、直線群900として、直線を多めに検出し、その後、細線化処理を行って代表的な直線のみを残すことで、誤認識を減少させられる。
【0043】
(ステップS306)
次に、制御部200は、領域認識記録処理を行う。
図9(b)を参照すると、制御部200は、画像特徴量データ213上において曲面ミラー61〜63を表す領域を直線群900に基づいて認識し、これらの領域を、記憶部210に領域データ214として記憶する。これにより、制御部200は、画像特徴量データ213から、曲面ミラー61〜63に対応する領域を、それぞれ認識可能となる。
なお、保管スペース41〜43のそれぞれの壁は、白等の均一な色に構成することで上述の直線検出と領域認識が容易になり、後述の用量確認処理時の画像認識においても好適である。これに加えて、保管スペース41〜43のそれぞれの壁を所定の色やパターン等で構成することで、曲面ミラー61〜63に対応する領域の認識がさらに容易となる。また、領域認識時に、保管スペース41〜43内を、特定の色やパターンの物品で埋めることで、領域認識を容易とすることも可能である。
以上により、本発明の実施の形態に係る画像初期設定処理を終了する。
【0044】
{用量確認処理の詳細}
次に、
図10〜
図11を参照して、用量確認処理の詳細について説明する。
以下では、
図10のフローチャートを参照して、本発明の用量確認処理についてステップ毎に詳しく説明する。
【0045】
(ステップS401〜S404)
まず、制御部200は、用量確認時に、撮像部260にて、撮像データ212を取得する。
制御部200は、ステップS401がステップS301(
図8)の領域抽出処理と、ステップS402がステップS302の歪み除去処理と、ステップS403がステップS303の色空間変換処理と、ステップS404がステップS304の特徴量抽出処理と、それぞれ同様の処理を行う。
この上で、制御部200は、特徴量抽出処理により作成された色相Hと彩度Sの情報のみを有する画像を、記憶部210に画像特徴量データ213の確認用画像データとして記憶する。
【0046】
(ステップS405)
次に、制御部200は、背景差分算出処理を行う。
図11を参照して説明すると、制御部200は、背景画像との違いを計算するため、画像特徴量データ213の背景画像データと確認用画像データとについて、色相Hの差分値を算出する。また、制御部200は、画像特徴量データ213の背景画像データと確認用画像データとについて、彩度Sの差分値も算出する。さらに、制御部200は、色相Hの差分値と彩度Sの差分値とに、例えば所定の重み付けを行って、これらの差分値に基づくグレースケール画像を作成し、記憶部210に差分画像データ215として記憶する。
図11(a)に、この差分画像データ215の例を示す。
なお、制御部200は、保管スペース41〜43内の薬等を少しずつ摂取する場合、残り有り状態の背景画像データと確認用画像データとについての差分値を算出することも可能である。この際、制御部200は、摂取後の確認用画像データを、画像特徴量データ213の残り有り状態の背景画像データとして、記憶部210に記憶してもよい。
加えて、制御部200は、差分画像データ215の特徴量を算出してもよい。制御部200は、例えば、差分画像データ215内の重心の個数や位置、直線や円の数、差分画像データ215の色相ヒストグラムの変化等を、この特徴量として算出可能である。
【0047】
(ステップS406)
次に、制御部200は、平滑化処理を行う。
制御部200は、得られた差分画像データ215の横方向の差分を強調するため、エッジを保存しながら、縦方向に平滑化する。つまり、縦方向の差分より、横方向の差分をとり易くすることで、横方向を解像度よく検出することが可能になる。
【0048】
(ステップS407)
次に、制御部200は、白黒画像作成処理を行う。
図11を更に参照して説明すると、制御部200は、保管スペース41〜43内の薬等の有無を判断するため、平滑化された差分画像データ215を所定の閾値に基づいて白黒化(二値化)して、白黒画像データ216を作成し、記憶部210に記憶する。
図11(b)に、この白黒画像データ216の例を示す。
【0049】
(ステップS408)
次に、制御部200は、マスキング処理を行う。
制御部200は、白黒画像データ216から、領域データ214の曲面ミラー61〜63に対応した領域毎に、白画素、つまり差異があった画素の数の合計を算出する。
【0050】
(ステップS409)
次に、制御部200は、曲面ミラー61〜63それぞれに対応した各領域の白画素の数が、それぞれ閾値以上であるか否かを判定し、物品の有無を判別する。つまり、制御部200は、薬保管スペース41〜43それぞれの物品の有無を、これらの閾値は、例えば、画素の面積の所定%以上といった値を用いる。これらの閾値としては、上述の白黒画像データ216のノイズによる白画素の数の値を基に算出することが可能である。
制御部200は、各領域の白画素の数が閾値以上の場合、対応する保管スペース41〜43内に物品が存在する、つまりYesと判定する。制御部200は、閾値未満の場合、対応する保管スペース41〜43内に物品が存在しない、つまりNoと判定する。なお、制御部200は、差分画像データ215の特徴量から物品の存在を判定してもよい。
Yesの場合、制御部200は、処理をステップS410に進める。
Noの場合、制御部200は、処理をステップS411に進める。
【0051】
(ステップS410)
閾値以上の場合、制御部200は、薬あり判断処理を行う。
制御部200は、対応する薬保管スペース41〜43について、物品が「有」と判断して、記憶部210に記憶する。
【0052】
(ステップS411)
閾値未満の場合、制御部200は、薬なし判断処理を行う。
制御部200は、対応する薬保管スペース41〜43について、物品が「無」と判断して、記憶部210に記憶する。
以上により、本発明の実施の形態に係る用量確認処理を終了する。
【0053】
以上のように構成することで、以下のような効果を得ることができる。
従来技術1は、薬入りのケースの開閉状況を認識して遠隔地へ通知することや、予め設定された服薬の時刻になったときに、自動的に注意することができるだけだった。これと同様に、従来から、高齢者に持たせる携帯用薬箱に、時刻ベースで摂取忘れ、飲み重ねを注意するタイマと、開閉センサを備える携帯用薬ケースも存在した(例えば、MedSignals社製、MedSignals)。これらの専用端末やケースは、コストが掛かり、必ずしも服薬者の生活状態に従った誤服薬の報知ができないという問題があった。
本発明の実施の形態に係る物品管理システムXは、使用者の位置情報、飲食施設や宿泊施設の位置情報、携帯端末の使用状況に基づいて、食事や睡眠の開始終了等に関する生活行動を推定し、この生活行動に基づいて服薬条件を判断してから、収納ケース1内の薬等の有無を認識して、誤服薬を報知する。つまり、適切な服薬時期になったときに薬の有無を確認することで、異常(摂取忘れ)を判断することができる。また、服薬時期になる前に薬がなくなっていれば異常(飲み過ぎ)と判断することができる。これにより、適切に服薬時期に合わせた報知が可能となる。このため、誤服薬の報知の精度が高まり、外出時でも服薬者が手軽に利用することができ、ユーザビリティーが高まる。このため、薬の持ち出し忘れを防止する効果も期待できる。
また、物品管理システムXは、現在地を正確に計測して、施設検索設定データ219により、服薬者が施設に進入、退出したことを認識できる。これにより、服薬者が自分自身で服薬管理できるようになり、自立した生活を送ることができる。また、服薬者の家族も遠隔地から安心して見守ることができる。
さらに、少数の管理者で大勢の服薬者を見守ることができるようになり、医療費の削減が期待できる。また、服薬履歴は、医師による的確な診断、指導にも利用できる。
また、服薬履歴を取得することで、新薬開発のための治験向けの証拠としても有効に利用することが可能となる。
【0054】
また、従来技術1のような服薬管理システムでは、薬ケースの蓋の開閉があった場合に薬が取得されたと判断していた。しかしながら、薬ケース内の薬の有無を認識しないと、薬が取得されたかどうかを確実に認識することができなかった。
これに対して、本実施形態の物品管理システムXは、端末20に内蔵された撮像部260を含む各種センサを用いて、薬の有無を認識する。つまり、収納ケース1の開閉状況だけでなく、物品の取得状況も認識することができる。これにより、薬の有無を認識するための豊富な情報を必要なときにすぐ取得することができる。また、撮像された画像は、ヒトによって理解しやすいため、遠隔見守りに利用することができる。
また、物品管理システムXは、時刻、場所だけでなく、生活行動を推定して撮像部260により撮像や報知をするため、バッテリーを長持ちさせ、スマートフォン等を用いても実用的な物品管理を行うことができる。このため、コストを削減できる。さらに、スマートフォンのセンサやディスプレイを利用することで、物品管理のシステムコストを軽減可能となる。また、スマートフォンの通信機能を利用することで、別途、通信回線に加入する必要がなくなり、月々の通信費を軽減することが可能となる。
また、本実施形態の物品管理システムXは、薬ケース内の薬の有無を直接、認識するため、収納ケース1の蓋の開閉状況を認識する必要はなくなる。このため、収納ケース1にセンサ等を備えなくてもよく、コストを削減できる。
また、本実施形態の物品管理システムXは、収納ケース1からケーブル類を端末20へ接続することなく使用できる。このため、服薬者や管理者のユーザーに要求される操作を減らすことができ、ヒューマンエラーが発生する危険性を減らすことができる。
【0055】
なお、本実施形態の物品管理システムXは、収納ケース1を取り外されていたり、後述するようにフラップ部5(
図16)がスライドされ日常生活内で背面カメラを使用する状態になっていた場合には、服薬指示時にエラーを報知することが可能である。
また、服薬時期の確認方法について、例えば、施設の所在地情報を収集するためにGoogle Places API等を用いた場合には、正確な所在地が登録されていない可能性が存在する。このため、端末20に定期的に利用する施設を登録できるようにしたり、他のAPIを併用したりしてもよい。また、ショッピングモール等の大型施設の場合は、同施設内に多数の店舗が存在するため、何階にいるのか、どの店舗の前にいるのか等を、気圧センサ部275とネットワーク接続部290の無線強度等から算出することが可能である。
また、本実施形態の物品管理システムXは、端末20の制御部200により画像認識を行って保管スペース41〜43内の物品の有無を確認するように記載した。しかしながら端末20から撮像データ212をサーバ30へ送信し、サーバ30の画像処理手段により上述のような画像認識を行うような構成であってもよい。この際、画像特徴量データ213の背景画像データと確認用画像データ、領域データ214、差分画像データ215、白黒画像データ216についても、サーバ30の記憶手段に記憶しておいてもよい。このように構成することで、端末20の制御部200の負荷を軽減でき、バッテリーの消費を抑えることができる。なお、このような構成であっても、サーバ30と端末20との通信時間を含めて遅延が少なく、リアルタイム(実時間)で処理を行うことが好適である。
また、本実施形態の物品管理システムXは、端末20に光源部265を有しない構成の場合、外光の背景差分により物品の有無を判断することも可能である。また、物品の形状を直接認識して、物品の有無を認識することもできる。
また、端末20同士は、サーバ30を介さないで直接、通信することも可能である。これにより、町中でアドホックの「すれ違い」通信を行い、物品を交換した際に記憶する等のコミュニケーション支援も可能である。
また、本実施形態の物品管理システムXにより管理される物品は、薬等に限られず、芳香剤、服飾用品、釣り具、小型部品等、所定の条件で使用され物品の有無を管理されるものが使用可能である。
【0056】
〔収納ケース1の設計についての説明〕
{収納ケース設計装置10の構成}
次に、
図12〜14を参照して、本発明の実施の形態に係る収納ケース設計装置10(収納ケース設計装置、収納ケース製造装置、ミラー位置形状設定装置)の構成について説明する。
収納ケース設計装置10は、光学シミュレーションを行って、例えば、本発明の実施の形態に係る収納ケース1(
図14)の保管スペースの個数や位置を算出し、曲面ミラー61〜63(第1反射ミラー)の位置や形状を算出し、収納ケース1の各部の設計図等を出力し、3Dプリンタ等を制御する。
収納ケース設計装置10は、一般的なPC/AT互換機等のPCやFC(Factory Computer)等の制御演算機能を備えたコンピュータ(サーバ)に、ソフトウェア(プログラム)をインストールして用いることが可能である。
なお、
図12〜
図14にて、
図1〜11と同じ符号は同様の構成であることを示す。
【0057】
図12を参照すると、収納ケース設計装置10は、制御部100(制御手段、第1反射ミラー位置形状算出手段)、記憶部110(記憶手段)、入力部130(入力手段)、表示部140(表示手段)、及びI/O部150(収納ケース製造装置接続手段)を含んで構成される。
【0058】
制御部100は、CPU(セントラル・プロセッシング・ユニット、中央処理装置)、MPU(マイクロ・プロセッシング・ユニット)、DSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)、GPU(グラフィック・プロセッシング・ユニット)、専用プロセッサ等を備えており、各種プログラムを実行して収納ケース設計装置10の各機能を制御する手段である。制御部100は、記憶部110に記憶された曲面ミラー位置形状算出プログラム111を実行し、第1反射ミラー位置形状算出手段として機能する。
記憶部110は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、HDD等の憶手段である。記憶部110は、制御部100が実行するプログラムやデータを記憶している。
入力部130は、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、タッチパネル、デジタイザ、タッチパッド等の入力手段である。入力部130により、収納ケース設計装置10の設計者であるユーザーの指示を取得し、設計する曲面ミラーのモデルデータ112の初期設定を行うことが可能となる。
表示部140は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイやプラズマディスプレイやプロジェクタ等を備える表示手段である。表示部140は、制御部100のGPUで描画された3次元画像と、動画像を含む二次元画像とを表示することができる。
I/O部150は、光造型機等の3DプリンタやNC工作機械等の収納ケース製造装置への制御信号を送受信するI/Oを備える入出力手段である。また、I/O部150は、通常の2Dプリンタに接続して位置形状データ113が描画された印刷データを出力したり、外部ネットワークへ出力したりすることもできる。
【0059】
(記憶部110の構成)
記憶部110は、曲面ミラー位置形状算出プログラム111、モデルデータ112、位置形状データ113を含んでいる。
曲面ミラー位置形状算出プログラム111は、光学シミュレーションにより保管スペース41〜43(
図2)の内部を、端末20の撮像部260で撮像するための曲面ミラー61〜63の配置位置と形状とを算出するプログラム等である。曲面ミラー位置形状算出プログラム111は、MathWorks社製のMATLAB(登録商標)等を用いて作成することが可能である。
モデルデータ112は、薬ケースの三次元モデルデータである。この三次元モデルは、端末の機種等に対応して、Dassault Systemes SolidWorks社製のSolidWorks(登録商標)等のソフトウェアを用いて作成することができる。これに加えて、モデルデータ112は、算出された保管スペース41〜43、曲面ミラー61〜63を配置可能な位置の範囲等の座標データも含んでいる。
位置形状データ113は、モデルデータ112から作成された設計図データ等を含むデータである。位置形状データ113は、3DプリンタやCAD用に、三角形の面法線ベクトルと3つの頂点を含む三次元モデルのデータ等を含んでいてもよい。この三次元モデルのデータとしては、3D Systems社のSLA CAD用のSTLデータ等を用いることが可能である。
なお、本発明の実施の形態に係る曲面ミラー位置形状算出プログラム111、モデルデータ112、位置形状データ113は、外部ネットワークを介してダウンロード又はアップロードされ、又はフラッシュメモリや光学媒体等の記録媒体(図示せず)を用いて記憶部110にインストールされ又は出力されて記憶されてもよい。
また、記憶部110は、OS、上述のSolidWorks(登録商標)のような3Dモデリングソフトウェア、CADソフトウェア、出力装置の制御用ソフトウェア、デバイスドライバ等のプログラムを記憶させてもよい。これらのプログラムは、制御部100により実行可能である。
【0060】
{収納ケース設計装置10による収納ケース設計処理}
次に、
図13〜
図14を参照して、収納ケース設計装置10による収納ケース設計処理について説明する
本発明の実施の形態に係る収納ケース設計処理は、端末20の撮像部260が保管スペース41〜43内をくまなく撮像できるよう、曲面ミラー61〜63の位置と、適切な曲面形状とを光学系シミュレーションによって算出し、設定する。このような配置の収納ケース1を用いることにより、薬等の管理する物品が保管スペース41〜43内に存在するか否かを画像処理で容易に判定可能となる。
以下で、
図13のフローチャートを参照して、本発明の実施の形態に係る収納ケース設計処理についてステップ毎に詳しく説明する。この処理は、収納ケース設計装置10の制御部100が、曲面ミラー位置形状算出プログラム111を実行し、各部と協同しつつ、ハードウェア資源を用いて実行する。
なお、以下では、実施の形態に係る収納ケース1(
図2)のように3個の保管スペース41〜43に対応する3個の曲面ミラー61〜63の位置と形状を算出する例について説明する。しかしながら、これに限られず、一個〜複数個の曲面ミラーの位置と形状を算出可能である。つまり、2個以下又は4個以上の保管スペースを備えるモデルデータ112を用いることも可能である。
【0061】
(ステップS1000)
まず、制御部100は、保管スペース算出処理を行う。
図14を参照して、保管スペース算出処理を具体的に説明する。
図14(a)は、モデルデータ112の保管スペース41〜43及び曲面ミラー61〜63が配置される収納ケース1のベース部4の正面図を示している。
図14(a)では、横軸をX軸、縦軸をY軸、撮像部260の位置を座標(0,0)として示す。
まず、制御部100は、保管スペースの個数について、記憶部110に記憶された管理する物品の大きさの設定、物品の取得の条件等により最適な値を算出する。たとえば、管理する物品が薬等である場合、制御部100は、朝、昼、晩に、錠剤やカプセル剤や注射針等を合計で6剤程度使用する際に、3個の保管スペース41〜43を用いるよう算出する。この際、制御部100は、モデルデータ112のX軸、Y軸の最大値等も参照してもよい。
また、保管スペースの個数は、入力部130からのユーザーの指示を取得して、直接設定することも可能である。
【0062】
次に、制御部100は、保管スペース41〜43のそれぞれの位置を算出する。この例では、制御部100は、保管スペース41〜43を、線A、すなわち撮像部260より右側(X軸の正方向)に存在するように算出する。しかしながら、撮像部260に近すぎると、曲面ミラー61〜63の光学精度が必要となり、コストが上昇するため、例えば、接写機能のない撮像部260を用いる場合、本実施形態では、5〜15mm程度の余裕を持たせることが好適である。
また、制御部100は、保管スペース41〜43のY軸方向については、撮像部260の撮像可能範囲501を基に設定された線Bの上側(Y軸の正方向)に配置する。これにより、撮像部260の撮像可能範囲501すべてを、曲面ミラー61〜63により保管スペース41〜43に向けることができる。このため、保管スペース41〜43のY軸の下端は、線Bから、本実施形態においては、2〜10mm程度の余裕を持たせることが好適である。
制御部100は、保管スペース41〜43の位置を算出した後、モデルデータ112に記憶する。
図14(a)の例では、制御部100は、例えば、iPhone(登録商標)4S用の収納ケース1の場合、保管スペース41〜43として、それぞれ、幅28×高さ27×深さ12mm程度の大きさを算出した。制御部100は、このように、錠剤やカプセル剤等に加えて、比較的大きなインスリンの注射針を保管可能な保管スペース41〜43の位置を算出可能である。
【0063】
(ステップS1001)
次に、制御部100は、曲面ミラー位置算出処理を行う。
制御部100は、曲面ミラー61〜63のベース部4内の位置(座標)を算出する。
図14(b)の平面図を参照して、曲面ミラー61〜63の構成を説明する。本実施形態の収納ケース設計処理においては、曲面ミラー61〜63は、設計、加工の容易なベジェ曲線(Bezier Curve)によってX−Y軸座標での曲面を表現する凸鏡面ミラーである。本実施形態においては、曲面ミラー61〜63として、ベジェ曲線の開始点601、制御点602、終了点603をそれぞれ有する形状が用いられる。この処理において、制御部100は、開始点601と終了点603とについて、モデルデータ112内の位置を決定する。ベジェ曲線は、曲面が必ず制御点内に収まるという特徴がある。このため、まず撮像可能角度を3等分して、位置を設定してから、形状を調整する。
【0064】
まず、制御部100は、保管スペース41〜43に対応して曲面ミラー61〜63を配置する範囲C1〜C3について算出し、モデルデータ112に記憶する。
制御部100は、ベース部4の内部、それぞれの保管スペース41〜43の下側(Y軸の負方向)の位置に範囲C1〜C3を設定する。つまり、例えば、範囲C2に、中央の保管スペース42の内部に光を反射する曲面ミラー62が配置されることで、他の曲面ミラーとの干渉を防ぐことができる。
制御部100は、範囲C1〜C3についても、モデルデータ112に記憶する。
【0065】
再び
図14(a)を参照すると、次に、制御部100は、撮像部260の画角である撮像可能範囲501が角度基準で3等分されるように、X軸において左側〜右側の順、Y軸において上側〜下側の順に、曲面ミラー61〜63の位置を算出する。制御部100は、ミラー61〜63の順で、曲面ミラーを構成するベジェ曲線の開始点601と終了点603を検索する。制御部100は、曲面ミラー61〜63それぞれについて、配置する範囲C1〜C3の左上から検索を始める。制御部100は、開始点601及び終了点603のX軸上の位置を左から右へ増やし、このX軸上の位置でY軸の値を上から下へ減らし、検索を続ける。この際、制御部100は、例えば、0.5mm程度のステップで位置を調整することで、加工精度においても十分な配置が可能となる。
また、制御部100は、曲面ミラー61〜63の大きさ、すなわち開始点601と終了点603の距離は、所定値の範囲で、撮像部260からの距離に応じて大きくするよう算出することが好適である。つまり、開始点601と終了点603の距離を長くするように算出する。
【0066】
(ステップS1002)
次に、制御部100は、撮像可能角度算出処理を行う。
ここでは、制御部100は、撮像可能範囲501内で、各曲面ミラー61〜63の撮像可能角度を算出する。
制御部100は、例えば、曲面ミラー61〜63の表面上で、撮像可能範囲501、開始点601、及び終了点603と、撮像部260との間を結んだ撮像可能平面500を算出して、これらの間の撮像可能角度を算出する。
【0067】
(ステップS1003)
次に、制御部100は、曲面ミラー61〜63の撮像可能角度が等分であるか否かを判定する。つまり、制御部100は、すなわち
図14(a)の撮像可能範囲501が、等分に曲面ミラー61〜63に割り振られているか否かを判定する。
制御部100は、曲面ミラー61〜63のそれぞれの撮像可能角度の差が所定の閾値以下の場合、Yesと判定する。また、制御部100は、それ以外の場合は、Noと判定する。
Yesの場合、制御部100は、処理をステップS1004に進める。
Noの場合、制御部100は、処理をステップS1001に戻す。これにより、制御部100は、曲面ミラー61〜63の位置の調整を続ける。
なお、制御部100は、範囲C1〜C3のすべての位置を検索して、撮像可能角度の差の最小値を算出してもよい。また、制御部100は、曲面ミラー61〜63の撮像可能角度の間隔や密度がもっとも均一な位置を検索してもよい。
【0068】
(ステップS1004)
次に、制御部100は、制御点調整処理を行う。
制御部100は、曲面ミラー61〜63の曲面ミラーの適切な曲面形状を算出する。
再び
図14(b)を参照すると、制御部100は、3個の曲面ミラーの適切な曲面形状を算出するため、ベジェ曲線の制御点602を、開始点601と終了点603の間、つまり範囲Dの中で決定する。このようにベジェ曲線を使うことにより、確実に最適な解を求められるため好適である。
ここでも、制御部100は、制御点602の位置を、例えば、0.5mm刻みで位置を調整することで、加工精度等も十分に対応可能となる。
なお、本実施形態では、曲面ミラー61〜63をベジェ曲線の形状の凸鏡面ミラーとして説明したが、これに限られず、球面ミラーや光束を拡散させる平面ミラーやプリズム等も同様に用いることが可能である。
また、曲面ミラー61〜63の前にレンズ等を挿入したり、撮像部260にマクロ撮影用のレンズ等を取り付けることも可能である。制御部100は、このような場合の光学シミュレーションも行うことができる。
【0069】
(ステップS1005)
次に、制御部100は、撮像可能領域算出処理を行う。
制御部100は、光源追跡法のような手法で、保管スペース41〜43内の撮像可能領域の算出を行う。
図14(a)を再び参照すると、制御部100は、撮像可能範囲501内で、所定角度毎に、保管スペース41〜43と、曲面ミラー61〜63と、平面ミラー53と、撮像部260とを結ぶ撮像可能平面500を、光源追跡法等により、それぞれ算出する。
具体的には、制御部100は、撮像部260から曲面ミラー61〜63のいずれかの表面の交差面を求め、この交差面の面法線と撮像部260との間の角度により反射角を求めて、この交差面から反射した平面と保管スペース41〜43との交差面を求め、これらの面の集合を撮像可能平面500として算出する。モデルデータ112において、この撮像可能平面500で示される領域が、撮像部260の撮像可能領域となる。
図14(a)は0.5度毎に、撮像可能平面500を算出した例を示している。撮像可能平面500が、3個の保管スペース41〜43内にほぼ均等に存在していれば、3個の保管スペース41〜43内を、撮像部260で隈無く撮像できるといえる。この際に、保管スペース41〜43内の80%以上程度の領域を撮像することが好適である。
【0070】
(ステップS1006)
次に、制御部100は、保管スペース41〜43の内部が全て撮像可能であるか否かを判定する。
ここでは、制御部100は、撮像部260が、保管スペース41〜43のそれぞれを隈まで撮像できるか否かを判定する。具体的には、制御部100は、撮像可能範囲501内の撮像可能平面500の曲面ミラー61〜63に当たる両端から反射された保管スペース41〜43との交差面が、保管スペース41〜43の
図14(a)のY軸の下端から所定範囲内であるか否かを判定する。つまり、曲面ミラー63の例では、撮像可能平面500のうち、平面E1、E2で示される面の保管スペース43との交差面のY軸の座標が、保管スペース43の下端から、例えば5%以内であることを判定する。
制御部100は、下端から所定範囲内である場合、Yesと判定する。制御部100はそれ以外の場合は、Noと判定する。
Yesの場合、制御部100は、処理をステップS1007に進める。
Noの場合、制御部100は、処理をステップS1004に戻す。これにより、各曲面ミラー61〜63の制御点602の調整を続ける。
【0071】
なお、制御部100は、曲面ミラー61〜63の位置及び形状を最適化できない場合には、曲面ミラー61〜63の最適な個数を別途算出してもよい。
すなわち、保管スペースのそれぞれの内部を、複数の曲面ミラーにより撮像するように構成してもよい。
また、制御部100は、曲面ミラー61〜63の形状を先に設定しておき、反射される撮影可能範囲に合わせて保管スペースの位置や大きさを算出することも可能である。この場合、保管スペースの形状も、台形等に変形させてもよい。
【0072】
{光学シミュレーションの結果}
ここで、
図14(c)を参照して、
図14(a)のモデルデータ112により、曲面ミラー61〜63の位置と形状を設定した例について説明する。
ここでは、iPhone(登録商標)4Sに対応するモデルデータ112を用いて、撮像部260のカメラで撮像可能な範囲の画角を水平39度として計算した。このとき算出されたベジェ曲線の開始点601、制御点602、終了点603のX軸、Y軸の座標を、
図14(c)に示す。また、
図14(a)は、この算出された開始点601、制御点602、終了点603での撮像可能平面500を示す。
結果として、撮像部260は、それぞれの保管スペース41〜43を隈無く撮像できることを確認できた。
【0073】
(ステップS1007)
次に、制御部100は、出力処理を行う。
制御部100は、算出された保管スペース41〜43と曲面ミラー61〜63の位置及び形状が適用されたモデルデータ112を用いて、位置形状データ113を作成する。
制御部100は、例えば、SolidWorksで作成した3次元モデルから、STLデータを作成する。
また、制御部100は、例えば、作成した位置形状データ113を、例えば、Stratasys 社製のuPrint Plus等の3Dプリンタや、NC工作機械等に出力して、実際に、収納ケース1や金型等を製造してもよい。
以上により、本発明の実施の形態に係る収納ケース設計処理を終了する。
【0074】
以上のように構成することで、以下のような効果を得ることができる。
本発明の実施の形態に係る収納ケース設計装置10は、複数個の保管スペース41〜43内に保管された物品を正確に検知するため、収納ケース1内部の光学系を最適化することが可能になる。
すなわち、収納ケース設計装置10は、収納ケース1の保管スペース41〜43の最適な個数と位置とを算出することができる。また、収納ケース設計装置10は、保管スペース41〜43内に保管された物品を撮像部260で撮像することで容易に検知できるよう曲面ミラー61〜63の位置と形状とを光学系シミュレーションにより算出できる。この際に、収納ケース設計装置10は、端末20(
図2)に内蔵された撮像部260の撮像可能範囲501から、複数個の保管スペース41〜43を隈無く撮像できるように、曲面ミラー61〜63の個数、位置、形状を算出することができる。
また、収納ケース設計装置10は、算出された保管スペース41〜43の個数、位置と曲面ミラー61〜63の個数、位置、形状とに基づいたモデルデータ112から、位置形状データ113を作成して、実際の収納ケース1の製造を行うことも可能となる。
ここで、収納ケース1を薬ケースとして用いた場合、持ち出し忘れを防止するために、サイズがズボンのポケット等に入るようにすることが望ましい。収納ケース設計装置10は、端末20の撮像部260が効率的に保管スペース41〜43の内部を撮像できるように、コンパクトな光学系を設計することができる。
【0075】
〔収納ケース1の具体的構成についての説明〕
次に、以下で
図15〜
図19を参照して、本発明の実施の形態に係る収納ケース1の具体的な構成について説明する。
図15,16に示す収納ケース1は、カメラ、GPSセンサー、ネットワ−ク送受信、ディスプレイ等の機能を内蔵したスマートフォン等である端末20(携帯端末)の背面に取り付けられる物品管理用のケースである。
図15(b)は端末20の背面の斜視図であり、背面をケース部2側に向けて収納ケース1に収納されている。端末20の背面には、カメラ等の撮像部260(撮像手段)と、撮像部260の光源になるフラッシュLED(Light Emitting Diode)等の光源部265(光源)とが備えられている。
なお、
図15〜
図19において、
図1〜
図14と同じ符号は、同様の構成であることを示す。
【0076】
収納ケース1は、例えば、白色のABS樹脂で形成されており、物品が保管されるケース部2と、端末に固定されるカバー部3とで構成されている。カバー部3とケース部2とは分離可能に構成されていても、一体に形成されていてもよい。ケース部2は、ベース部4とフラップ部5とで構成されている。ベース部4とフラップ部5とは、ツメのはめ込み等によって一端部が固定され、六角ナット等によって他端部が固定されている。なお、ベース部4とフラップ部5との固定は、全てツメによるものでも良いし、接着剤等による固定でもよい。
【0077】
図17は、
図15のケース部を示す図であり、(a)は底面図,(b)は側面図,(c)は平面図である。ベース部4は、
図17に示すように、3個の保管スペース41〜43を有している。保管スペース41〜43は、収納ケース1の内側に物品を保管するためのスペースであり、管理する物品が薬等である場合、錠剤,カプセル剤,口腔内崩壊錠等の薬や、インスリンペン型注入器の注射針等の物品が保管可能である。これらは、各保管スペース41〜43に、例えば、朝食用,昼食用,夕食用に分けて保管される。たとえば、端末20が、アップル社製のiPhone(登録商標)4Sの場合、3つに分割することで、錠剤を4錠程度保管できるようにする。なお、iPhone(登録商標)5の場合には、保管スペースを4個備えるような構成が可能である。
【0078】
本実施形態では、収納ケース1が3個の保管スペース41〜43を有している場合について説明するが、4個以上の保管スペースを有していてもよい。また、保管スペースの数は1個でも2個でもよい。
【0079】
フラップ部5には、
図15,16に示すように、各保管スペース41〜43を覆う蓋51が保管スペース41〜43毎に設けられている。蓋51は、磁性体を備え、収納ケース1の外面に突起部分が生じないようヒンジテープ等で固定されており、
図17に示すように、ケース部2に設けられた磁石52の磁力により軽く固定されて、持ち歩き中に不意に開くのが防止されている。なお、蓋51の固定は磁力によるものに限られず、ツメによる固定でも不意の開閉を防止できる。この場合、ボタンを押すことでツメが外れ、バネの力で開くような構成を採用することもできる。フラップ部5には、後述する撮像用孔44に対向する位置に平面ミラー53(第2反射ミラー)が取り付けられている。平面ミラー53は、後述する曲面ミラー部材6の曲面ミラー61〜63(第1反射ミラー)からの第2反射光を受け光源部265に反射するものである。平面ミラー53(第2反射ミラー)は、可動しやすいようにフラップ部5側に設置されている。
【0080】
ベース部4には、
図17に示すように、端末20の撮像部260及び光源部265を使用するための撮像用孔44が設けてある。撮像部260は、端末20の背面から端末20の外部を撮像するよう設置されている。光源部265は、カメラの光源として用いられるものであり、端末20の背面から端末20の外部に光を照射する。
【0081】
ベース部4には、撮像用孔44から保管スペース41〜43の配列方向に沿ってミラー設置スペース45が設けられている。ミラー設置スペース45は、撮像用孔44からケースの側壁に沿って延びている。保管スペース41〜43とミラー設置スペース45とは、透明壁46で隔てられている。透明壁46には、ミラー設置スペース45側から保管スペース41〜43内を撮像できるよう、透明のアクリル板等が使用されている。
【0082】
図18は、
図1の曲面ミラー部材を示す図であり、(a)は正面図,(b)は平面図,(c)は側面図である。ミラー設置スペース45には、
図18に示す曲面ミラー部材6が設置されている。曲面ミラー部材6は、
図19に示すように設置されて平面ミラー53と保管スペース41〜43との間で光を反射するための部材であり、平面ミラー53と保管スペース41〜43との間で光を反射するための曲面ミラー61〜63(第1反射ミラー)を各保管スペース41〜43毎に備えている。曲面ミラー61〜63は、蒸着や金属箔等にて構成された凸面鏡であり、撮像部260での撮像可能範囲が、3個の保管スペース41〜43に均一に割り振られるよう構成されている。
【0083】
上記実施形態では、撮像部260,光源部265が端末20の角部にある場合について説明したので、
図20(a)に模式的に示すように、ベース部4の角部に撮像用孔44が設けられている。しかしながら、撮像部260,光源部265が端末20の端部の中央部にある場合には、
図20(b)に模式的に示すように、ベース部4の端部の中央部に撮像用孔44を設ける構成とすることができる。この場合、
図20(a)の撮像用孔44に対応する位置に配置されるミラー53A(第2反射ミラー)を設け、曲面ミラー部材6の曲面ミラー61〜63(第1反射ミラー)での反射光をミラー53Aに反射するミラー64(第3反射ミラー)をベース部4の角部に配置することで、保管スペース41〜43内の物品からの第1反射光を第1反射ミラーで反射し、第1反射光は第3反射ミラーで受け、第3反射光を第2反射ミラーで受けて撮像部260に反射することができる。この結果、上記実施形態と同様に保管スペース41〜43内の撮像を行うことができる。但し、この場合には、撮像部260,光源部265で撮像した画像内に占める保管スペース41〜43の映る領域が狭くならないよう、上記2つのミラー53A,64のうちの何れか一方を平面に、他方を凹型にする構成を採用するのが望ましい。また、光源部265からの導光用の導光板又はプリズム、撮像用のプリズム等を備える構成も可能である。さらには、蓄光素材を利用して内部を照らすことも可能である。これにより、フラッシュ撮影時、ミラーや透明板による正反射の影響を軽減することができる。
【0084】
また、撮像部260、光源部265が端末20の中央部にある場合には、
図20(c)に模式的に示すように、ベース部4の中央部に撮像用孔44を設ける構成とすることができる。この場合、ミラー設置スペース45の両端にミラー65A,65B(第1反射ミラー)を配置して、保管スペース41,43内の物品からの反射光をミラー65A(第1反射ミラー)で反射し、保管スペース42,44内の物品からの反射光をミラー65B(第1反射ミラー)で反射し、ミラー65A,65B(第1反射ミラー)での反射光をミラー53B(第2反射ミラー)で受け撮像部260に反射する構成とすることができる。
なお、撮像用用穴44に対向する位置に配置されたミラー53BはVの字に中央で折れた平面に形成されており、ミラー設置スペース45の両端に例えば45°の角度で平面を向けている。ミラー設置スペース45の両端に配置されたミラー65A,65Bはベジェ曲線で形成される曲面で構成することができる。この構成によれば、上記実施形態と同様に、端末20の中央部にある撮像部260,光源部265でベース部4の四隅にある保管スペース40〜43の撮像を行うことが可能となる。
【0085】
なお、平面ミラー53は、完全に平面のミラーではなく曲面のミラーを用いて、例えば光を集光するように構成してもよい。また、曲面ミラー61〜63についても、球面ミラーを用いてもよい。
さらに、平面ミラー53及び曲面ミラー61〜63について、受光と反射を行うために同様の反射と導光を行うプリズム等の光学素子を用いることも可能である。また、光ファイバー等を、それぞれの保管スペース41〜43から撮像部260で撮像可能なように導入して、保管スペース41〜43内の物品の有無を、当該光ファイバーの端部の明るさの差等により、直接検出することも可能である。
加えて、端末20において、撮像部260と光源部265との位置が離れている場合、別途、ミラー、導光板、光ファイバー等により保管スペース41〜43内を照らす光学系を備えるように構成することも可能である。
また、フラップ部5又はフラップ部5の平面ミラー53(第2反射ミラー)の取付部分をスライドできるようにすることで、撮像部260の背面カメラを使用しやすくすることができる。これにより、背面カメラを日常生活内で使用する際に、収納ケース1をいちいち取り外す必要がなく、使いやすくなる。
【0086】
以上のように構成することで、以下のような効果を得ることができる。
収納ケース1は、平面ミラー53と曲面ミラー61〜63を用いることで端末20の撮像可能範囲を任意の方向へ曲げることができ、凸鏡面の曲面ミラー61〜63を用いることで撮像可能範囲を拡張することができる。また、収納ケース1は、数枚の曲面ミラー61〜63を用いる。これにより、加工を容易にでき、作製コスト、維持コスト等を削減できる。
また、収納ケース1は、端末20へ接続するための特別なセンサや端子等がいらないため、作製コスト等を削減できる。また、端末20側でセンサや端子に対応する必要がないため、端末20としてスマートフォン等が使用でき、専用の端末装置を用いる必要がないためコストを削減できる。
また、収納ケース1は、普及が進み、服薬者が既に持っている携帯電話等の端末20のオプション品として用いることが可能であり、撮像部260や制御部200(
図2)等を収納ケース1側に備える必要がなく、コストを削減できる。
【0087】
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実行することができることは言うまでもない。