(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加算部は、第9抵抗に前記補正用電圧を印加することにより、前記第7抵抗から前記バッファの出力端に向けて流れる加算電流を生成する加算電流生成回路を含むことを特徴とする請求項5に記載のスイッチング電源装置。
前記コンデンサと前記第9抵抗は、前記スイッチ素子の駆動周波数を切り替えるための周波数切替信号に応じて、その容量値及び抵抗値が可変制御されることを特徴とする請求項7に記載のスイッチング電源装置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<スイッチング電源装置>
以下では、COT[constant on time]方式のスイッチング電源装置に本発明を適用した構成を例に挙げて、詳細な説明を行う。
【0025】
図1は、スイッチング電源装置の全体構成を示す回路ブロック図である。本構成例のスイッチング電源装置Aは、スイッチング電源IC100と、これに外付けされるディスクリート部品(インダクタL1、ダイオードD1、抵抗R1〜R3、及び、コンデンサC1〜C4)と、を有して成り、入力電圧Vinから所望の出力電圧Voutを生成する降圧型のスイッチング電源装置である。
【0026】
スイッチング電源IC100は、Nチャネル型MOS[metal oxide semiconductor]電界効果トランジスタ1a及び1bと、ドライバ2a及び2bと、レベルシフタ3と、駆動制御回路4と、メインコンパレータ5と、ソフトスタート制御回路6と、オン時間設定回路7と、タイマ8と、基準電圧生成回路11と、抵抗12a及び12bと、定電圧生成回路13と、ダイオード14と、低電圧ロックアウト回路15と、サーマルシャットダウン回路16と、入力バイアス電流生成回路17と、過電流保護回路18と、過電圧保護回路19と、リップル生成回路20と、を有する。
【0027】
また、スイッチング電源IC100は、外部との電気的な接続手段として、イネーブル端子ENと、帰還端子FBと、オン時間設定端子RTと、ソフトスタート端子SSと、ブートストラップ端子BSTと、入力端子VINと、スイッチ端子SWと、グランド端子GNDと、を有する。
【0028】
スイッチング電源IC100の外部において、入力端子VINは、入力電圧Vin(例えば12V)の印加端に接続される一方、コンデンサC1を介して接地端にも接続されている。スイッチ端子SWは、ダイオードD1のカソードとインダクタL1の第1端にそれぞれ接続されている。ダイオードD1のアノードは、接地端に接続されている。インダクタL1の第2端は、出力電圧Voutの印加端に接続される一方、コンデンサC3の第1端と抵抗R1の第1端にもそれぞれ接続されている。コンデンサC3の第2端は、接地端に接続されている。抵抗R1の第2端は、抵抗R2を介して接地端に接続されている。抵抗R1と抵抗R2との接続ノードは、帰還電圧Vfbの印加端として、帰還端子FBに接続されている。スイッチ端子SWとブートストラップ端子BSTとの間には、コンデンサC2が接続されている。イネーブル端子ENは、スイッチング電源IC100の駆動可否を制御するためのイネーブル信号が印加される端子である。オン時間設定端子RTは、抵抗R3を介して接地端に接続されている。ソフトスタート端子SSは、コンデンサC4を介して接地端に接続されている。
【0029】
なお、上記のインダクタL1、ダイオードD1、及び、コンデンサC3は、スイッチ端子SWから引き出されるスイッチ電圧Vswを整流・平滑して所望の出力電圧Voutを生成する整流・平滑回路として機能する。また、上記の抵抗R1及びR2は、出力電圧Voutに応じた帰還電圧Vfbを生成する帰還電圧生成回路(抵抗分圧回路)として機能する。また、上記のコンデンサC2は、スイッチング電源IC100に内蔵される後述のダイオード14とともに、ブートストラップ回路を形成する。
【0030】
次に、スイッチング電源IC100の内部構成について説明する。
【0031】
トランジスタ1a及び1bは、入力端子VIN(入力電圧Vinの印加端)と接地端との間に直列接続された一対のスイッチ素子であり、これらを相補的にスイッチング駆動することにより、入力電圧Vinからパルス状のスイッチ電圧Vswが生成される。両素子の接続関係についてより具体的に述べると、トランジスタ1aのドレインは、入力端子VINに接続されている。トランジスタ1aのソース及びバックゲートは、スイッチ端子SWに接続されている。トランジスタ1bのドレインは、スイッチ端子SWに接続されている。トランジスタ1bのソース及びバックゲートは、接地端に接続されている。
【0032】
なお、本明細書中で用いられている「相補的」という文言は、トランジスタ1a及び1bのオン/オフが完全に逆転している場合のほか、貫通電流防止の観点からトランジスタ1a及び1bのオン/オフ遷移タイミングに所定の遅延が与えられている場合も含む。
【0033】
ドライバ2aは、駆動制御回路4からレベルシフタ3を介して入力される第1開閉制御信号(レベルシフト済みの出力信号HG)に基づいて、トランジスタ1aのゲート電圧Gaを生成する。また、ドライバ2bは、駆動制御回路4から入力される第2開閉制御信号(出力信号LG)に基づいて、トランジスタ1bのゲート電圧Gbを生成する。なお、ドライバ2aの上側電源端は、ブートストラップ端子BST(駆動電圧Vbstの印加端)に接続されている。また、ドライバ2aの下側電源端は、スイッチ端子SW(スイッチ電圧Vswの印加端)に接続されている。従って、トランジスタ1aに与えられるゲート電圧Gaは、そのハイレベルが駆動電圧Vbstとなり、そのローレベルがスイッチ電圧Vswとなる。一方、ドライバ2bの上側電源端は、定電圧Vregの印加端に接続されている。また、ドライバ2bの下側電源端は、接地端に接続されている。従って、トランジスタ1bに与えられるゲート電圧Gbは、そのハイレベルが定電圧Vregとなり、そのローレベルが接地電圧となる。
【0034】
レベルシフタ3は、駆動制御回路4から入力される開閉制御信号(出力信号HG)の電圧レベルを引き上げてドライバ2aに供給する。なお、レベルシフタ3の上側電源端は、ブートストラップ端子BST(駆動電圧Vbstの印加端)に接続されている。また、レベルシフタ3の下側電源端は、スイッチ端子SW(スイッチ電圧Vswの印加端)に接続されている。
【0035】
駆動制御回路4は、比較信号CMPとオン時間設定信号ONに基づいて、トランジスタ1a及び1bの開閉制御信号(出力信号HG及びLG)を生成するロジック回路である。例えば、駆動制御回路4は、セット端(S)に入力される比較信号CMPの立上りエッジで、出力端(Q)の出力信号HGをハイレベルにセットし、反転出力端(Qバー)の出力信号LGをローレベルにセットする。一方、駆動制御回路4は、リセット端(R)に入力されるオン時間設定信号ONの立上りエッジで出力信号HGをローレベルにリセットし、出力信号LGをハイレベルにリセットする(
図5の上から3段目〜5段目を参照)。
【0036】
メインコンパレータ5は、反転入力端(−)に入力される帰還電圧Vfb(出力電圧Voutの分圧電圧)と、リップル生成回路20から第1非反転入力端(+)に入力されるリップル注入後の基準電圧RefA(詳細は後述)及びソフトスタート制御回路6から第2非反転入力端(+)に入力されるソフトスタート電圧Vssのいずれか低い方とを比較して比較信号CMPを生成し、駆動制御回路4及びオン時間設定回路7へ出力する。
【0037】
すなわち、帰還電圧Vfbがリップル注入後の基準電圧RefAよりも高ければ、比較信号CMPはローレベルとなり、逆に、帰還電圧Vfbがリップル注入後の基準電圧RefAよりも低ければ、比較信号CMPはハイレベルとなる(
図5の上から2段目及び3段目を参照)。
【0038】
ソフトスタート制御回路6は、スイッチング電源装置の起動と共に、ソフトスタート端子SSに接続されるコンデンサC4の充電を開始し、その充電電圧をソフトスタート電圧Vssとしてメインコンパレータ5に出力する。このようなソフトスタート制御により、スイッチング電源装置の起動時には、緩やかに上昇するソフトスタート電圧Vssと帰還電圧Vfbとが一致するように出力帰還制御が行われるので、出力電圧Voutのオーバーシュートや負荷及びコンデンサC3への突入電流を未然に防止することが可能となる。
【0039】
オン時間設定回路7は、駆動制御回路4の出力信号HGがハイレベルに立ち上げられてから、所定のオン時間Tonが経過した後に、オン時間設定信号ONにハイレベルのトリガパルスを発生させる(
図5の上から4段目及び5段目を参照)。
【0040】
なお、上記したドライバ2a及び2b、レベルシフタ3、駆動制御回路4、並びに、オン時間設定部7は、メインコンパレータ5から出力される比較信号CMPに基づいてトランジスタ1a、1bのオン/オフ制御を行うスイッチング制御部として機能する。
【0041】
タイマ8は、ソフトスタート制御回路6の動作を制御するためのタイマ信号を生成し、これをソフトスタート制御回路6へ送出する。具体的に述べると、タイマ8は、過電流検出信号OCP及び過電圧検出信号OVPが所定時間に亘って異常時の論理レベルに維持されたときに、ソフトスタート制御回路6をリセットしてコンデンサC4を放電させる。
【0042】
基準電圧生成回路11は、入力電圧Vinから基準電圧Vref(例えば4.1V)を生成し、内部駆動電圧としてスイッチング電源IC100の各部に供給する。
【0043】
抵抗12a及び12bは、基準電圧Vrefを分圧することで、所望の基準電圧Refを生成し、これをリップル生成回路20(詳細は後述)に印加する。接続関係について具体的に述べると、抵抗12a及び12bは、基準電圧生成回路11の出力端(基準電圧Vrefの印加端)と接地端との間に直列接続されており、互いの接続ノードがリップル生成回路20に接続されている。
【0044】
定電圧生成回路13は、入力電圧Vinから所定の定電圧Vreg(例えば5V)を生成する。
【0045】
ダイオード14は、定電圧生成回路13の出力端(定電圧Vregの出力端)とブートストラップ端子BSTとの間に接続され、コンデンサC2とともにブートストラップ回路を構成する素子であり、そのカソードからは、ドライバ2a及びレベルシフタ3の駆動電圧Vbstが引き出される。
【0046】
低電圧ロックアウト回路15は、基準電圧Vrefの供給を受けて動作し、入力電圧Vinの異常な低下を検出したときに、スイッチング電源IC100をシャットダウンする異常保護手段である。
【0047】
サーマルシャットダウン回路16は、基準電圧Vrefの供給を受けて動作し、監視対象温度(スイッチング電源IC100のジャンクション温度)が所定の閾値(例えば、175℃)に達したときに、スイッチング電源IC100をシャットダウンする異常保護手段である。
【0048】
入力バイアス電流生成回路17は、基準電圧Vrefの供給を受けて動作し、スイッチング電源IC100各部、例えばリップル生成回路20の入力バイアス電流を生成する。
【0049】
過電流保護回路18は、入力電圧Vinの供給を受けて動作し、出力トランジスタ1aのオン時に流れるスイッチ電流Iswを監視して、過電流検出信号OCPを生成する。なお、過電流検出信号OCPは、駆動制御回路4及びソフトスタート制御回路6をリセットするために用いられる。
【0050】
過電圧保護回路19は、帰還端子FBに印加される帰還電圧Vfbを監視して、過電圧検出信号OVPを生成する。なお、過電圧検出信号OVPは、ソフトスタート制御回路6をリセットするために用いられる。
【0051】
リップル生成回路20は、駆動制御回路4の出力信号HGを利用してリップル成分を生成し、これを基準電圧Refに注入することにより、リップル注入後の基準電圧RefAを生成する(
図5の上から2段目を参照)。
【0052】
<リップル生成回路(第1構成例)>
次に、リップル生成回路20の詳細について説明する。
図2は、リップル生成回路20の第1構成例を示す回路図である。第1構成例のリップル生成回路20は、補正用電圧生成部210と、加算部220と、リップルインジェクション部230と、を有する。
【0053】
補正用電圧生成部210は、駆動制御回路4の出力信号HGを一段または複数段のCRフィルタで平滑化して補正用電圧Vdutyを生成し、これを加算部220へ出力する。
【0054】
加算部220は、リップル注入前の基準電圧Refを補正用電圧Vdutyに応じて引き上げることにより、補正後の基準電圧(Ref+Vduty)を生成し、これをリップルインジェクション部230へ出力する。
【0055】
リップルインジェクション部230は、出力信号HGを用いて補正後の基準電圧(Ref+Vduty)にリップル成分を注入する。
【0056】
次に、各回路の構成要素及びその接続形態について説明する。
【0057】
補正用電圧生成部210は、抵抗211〜213と、コンデンサ214と、コンデンサ215と、を有する。
【0058】
抵抗211の第1端は、加算部220の第1入力端に接続されている。抵抗211の第2端は、抵抗212の第1端に接続されている。抵抗212の第2端は、出力信号HGの入力端に接続されている。抵抗213の第1端は、加算部220と抵抗211との接続ノードに接続されている。抵抗213の第2端は、接地端に接続されている。
【0059】
コンデンサ214の第1端は、加算部220と抵抗211との接続ノードに接続されている。コンデンサ214の第2端は、接地端に接続されている。コンデンサ215の第1端は、抵抗211と抵抗212との接続ノードに接続されている。コンデンサ215の第2端は、接地端に接続されている。
【0060】
次に、加算部220の構成要素及びその接続形態について、
図3を用いつつ説明する。
図3は、加算部220の一構成例を示す回路図である。
図3に示すように、本構成例の加算部220は、オペアンプ221と、抵抗222と、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタ223及び224と、オペアンプ225と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ226と、抵抗227と、を有する。
【0061】
オペアンプ221の非反転入力端(+)は基準電圧Refの印加端に接続されている。オペアンプ221の出力端は、抵抗222の第1端に接続されている。オペアンプ221の反転入力端(−)は、その出力端と抵抗222との接続ノードに接続されている。すなわち、オペアンプ221はバッファとして機能する。
【0062】
抵抗222の第2端は、加算部220の出力端に接続されている。トランジスタ223のドレインは、抵抗222の第2端と加算部220の出力端との接続ノードに接続されている。トランジスタ223のソースは、定電圧Vregの印加端及びトランジスタ224のソースに接続されている。トランジスタ223のゲートは、トランジスタ224のゲート及びドレインに接続されている。トランジスタ224のソースは、定電圧Vregの印加端に接続されている。トランジスタ224のドレインは、トランジスタ226のドレインに接続されている。
【0063】
オペアンプ225の非反転入力端(+)は、補正用電圧Vdutyの印加端に接続されている。オペアンプ225の出力端は、トランジスタ226のゲートに接続されている。オペアンプ225の反転入力端(−)は、トランジスタ226のソースと抵抗227の第1端との接続ノードに接続されている。抵抗227の第2端は接地端に接続されている。
【0064】
次に、リップルインジェクション部230の構成要素及びその接続形態について、
図2を用いつつ説明する。リップルインジェクション部230は、オペアンプ231(リップルアンプ)と、抵抗232と、抵抗233と、コンデンサ234と、を有する。
【0065】
オペアンプ231の非反転入力端(+)は、加算部220の出力端(補正後の基準電圧Ref+Vdutyの印加端に相当)に接続されている。オペアンプ231の反転入力端(−)は、抵抗232と抵抗233との接続ノードに接続されている。オペアンプ231の出力端は、メインコンパレータ5の非反転入力端(+)に接続されている。
【0066】
抵抗232の第1端は、オペアンプ231とメインコンパレータ5との接続ノードに接続されている。抵抗232の第2端は、抵抗233の第1端に接続されている。抵抗233の第2端は、出力信号HGの入力端に接続されている。コンデンサ234の第1端は、オペアンプ231とメインコンパレータ5との接続ノードに接続されている。コンデンサ234の第2端は、抵抗232と抵抗233との接続ノードに接続されている。
【0067】
次に、リップル生成回路20の動作について説明する。
【0068】
補正用電圧生成部210に含まれる抵抗211、抵抗212、コンデンサ214、及びコンデンサ215は、2段構成のCRフィルタであり、駆動制御回路4から出力される出力信号HGを平滑して所望の補正用電圧Vdutyを生成する平滑回路として機能する。なお、本構成例では、CRフィルタを2段構成としているが、この段数は設計要求に応じて適宜変更が可能である。
【0069】
抵抗213は、このCRフィルタに含まれる抵抗とともに分圧回路を形成する。なお、本構成例では、
図2に示すように、抵抗211の第1端に抵抗213を接続することにより分圧回路を形成しているが、これ以外の接続形態により分圧回路を形成する形態でもよい。例えば、出力信号HGの入力端と抵抗212との接続ノードに抵抗213の第1端を接続することにより、分圧回路を形成する形態でもよい。
【0070】
加算部220に含まれるオペアンプ225、トランジスタ226、及び抵抗227は、補正用電圧Vdutyの電圧/電流変換回路として機能する。これにより、補正用電圧Vdutyの大きさに応じた加算電流I22が生成される。また、トランジスタ223、及び、トランジスタ224は、加算電流I22を複製するためのカレントミラー回路として機能する。すなわち、上記の電圧/電流変換回路とカレントミラー回路を合わせて、加算電流生成回路が形成されている。これにより、トランジスタ223から抵抗222を介してオペアンプ221の出力端に向けた加算電流I22が流れるので、抵抗222の両端間には、加算電流I22の大きさに応じた電位差が生じる。この結果、補正用電圧Vdutyが反映された補正後の基準電圧(Ref+Vduty)が生成され、これがリップルインジェクション部230へ出力される。
【0071】
リップルインジェクション部230に含まれる抵抗232、抵抗233、及び、コンデンサ234は、出力信号HGに応じてオペアンプ231の負帰還ループをパルス駆動するパルス駆動部として機能する。このような構成とすることにより、オペアンプ231から出力されるリップル注入後の基準電圧RefAは、補正後の基準電圧(Ref+Vduty)を基準として電圧値が変動する波形、すなわち、補正後の基準電圧(Ref+Vduty)にリップル成分が注入された波形となる(
図5の上から2段目を参照)。
【0072】
なお、上述した補正用電圧生成部210に含まれる抵抗の抵抗値は、補正用電圧Vdutyによってキャンセルすべき帰還電圧Vfbの変動範囲に基づいて、設計要求に応じて定められる。例えば、次に説明する数式を用いた方法により、定められる。
【0073】
図2及び
図3に示す構成では、帰還電圧Vfbは以下の数式により表される。なお、以下では、抵抗232の抵抗値をR1、抵抗233の抵抗値をR2、抵抗211及び212の合成抵抗値をR3、抵抗213の抵抗値をR4、抵抗222の抵抗値をR7、抵抗227の抵抗値をR9として表すものとする。また、出力信号HGのオンデューティをDonとして表すものとする。
【0074】
まず、出力信号HGがオンである場合のRefA(以下、「RefAon」という)は次の式(1)で表される。
【0076】
また、出力信号HGがオフである場合のRefA(以下、「RefAoff」という)は次の式(2)で表される。
【0078】
帰還電圧Vfbは、RefAonにオンデューティDonを掛け合わせた項と、RefAoffにオフデューティDoff(=1−Don)を掛け合わせた項とを加算したものとなるため、次の式(3)で表される。
【0080】
上記の式(3)にRefAon、RefAoffを代入して整理すると、Vfbは次の式(4a)のように表される。また、帰還電圧Vfbと基準電圧Refとのずれ量Vfb_err(=Vfb−Ref)は、次の式(4b)のように表される。
【0082】
式(4b)で示した通り、帰還電圧Vfbと基準電圧Refとのずれ量Vfb_errは、右辺第2項に(Vreg×Don)を含んでおり、Donの影響を受けて変化する。
【0083】
そこで、本発明では、右辺第1項に含まれる基準電圧Refを、補正用電圧Vdutyが加算された補正後の基準電圧(Ref+Vduty)に置き換える。補正後の基準電圧(Ref+Vduty)は、次の式(5)のように表される。
【0085】
このように、補正後の基準電圧(Ref+Vduty)もDonの影響を受けて変動するため、式(4b)の右辺第2項の増減に応じて右辺第1項を増減させることができる。これによりオンデューティDonの影響をキャンセルすることができる。なお、キャンセルすべき電圧値は、右辺第2項に含まれるVregに応じて変化するため、補正用電圧生成部210の回路定数(例えば、抵抗213の抵抗値)をこのVregに応じて設定すればよい。これにより、RefAのピーク値を所望のターゲット値に設定することが可能となる。
【0086】
以上に説明した本発明の構成により得られる作用効果について一例を示して説明する。
【0087】
図6は、従来のスイッチング電源装置において、補正用電圧Vdutyが加算されていない基準電圧Refに対してリップル注入を行うことにより生成されたリップル注入後の基準電圧RefA’(特にそのデューティ依存性)を示す波形図である。本図に示したように、基準電圧RefA’のDC値は、スイッチ電圧Vswのデューティに応じて変動する。より具体的に述べると、デューティが大きいほど基準電圧RefA’のDC値は低下し、デューティが小さいほど基準電圧RefA’のDC値は上昇する。
【0088】
図9は、従来のスイッチング電源装置における、リップル注入後の基準電圧RefA’のDC値をスイッチ電圧Vswのデューティ毎に比較した模式図である。
図10は、従来のスイッチング電源装置における、入力電圧Vin、出力電圧Vout、及び、帰還電圧Vfbの関係を示した模式図である。なお、
図10では、縦軸が電圧、横軸が経過時間を示している。
【0089】
図9及び
図10に示すように、従来のスイッチング電源装置は、入力電圧Vinの変動に起因してデューティが変化すると、この影響により、リップル注入後の基準電圧RefA’のDC値が変動し、結果として帰還電圧Vfbが変動していた。このため、帰還電圧Vfbにズレが生じ、ラインレギュレーションが悪化するという問題があった。
【0090】
これに対して、本発明の構成によれば、デューティに応じた補正用電圧Vdutyを基準電圧Refに付加することにより、上記のズレを補正することができる。
図7は、本発明のスイッチング電源装置における、リップル注入後の基準電圧RefAのDC値をスイッチ電圧Vswのデューティ毎に比較した模式図である。また、
図8は、本発明のスイッチング電源装置における、入力電圧Vin、出力電圧Vout、及び、帰還電圧Vfbの関係を示した模式図である。
【0091】
図7に示すように、補正後の基準電圧(Ref+Vduty)により生成されたリップル注入後の基準電圧RefAのピーク値は、いずれのデューティであっても、ほぼ同じ値となる。このため、
図8に示すように、帰還電圧Vfbにズレが生じず、ほぼ一定に保つことができる。これにより、ラインレギュレーションを向上させることが可能である。
【0092】
<リップル生成回路(第2構成例)>
図4は、リップル生成回路20の第2構成例を示す回路ブロック図である。第2構成例は、先出の第1構成例と基本的には同一の構成から成るが、出力信号HGではなくスイッチ電圧Vswを用いて補正用電圧Vdutyを生成する点に特徴を有している。そこで、第1構成例と同様の構成要素については、
図2と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第2構成例の特徴部分について重点的な説明を行う。
【0093】
第2構成例のリップル生成回路20は、先に説明した補正用電圧生成部210、加算部220、及び、リップルインジェクション部230に加えて、バッファ240を有する。
【0094】
バッファ240の入力端は、スイッチ電圧Vswの印加端に接続されている。バッファ240の出力端は、抵抗212の第2端及び抵抗233の第2端に接続されている。
【0095】
バッファ240の上側電源端は、定電圧Vregの印加端に接続されている。バッファ240の下側電源端は、接地端に接続されている。これにより、バッファ240から出力されるパルス電圧Vsw’は、そのハイレベルが定電圧Vregとなり、そのローレベルが接地電圧となる。このように、バッファ240は、スイッチ電圧Vswの波高値を一定としたパルス電圧Vsw’を生成して後段に出力する。
【0096】
このような構成とすることにより、先出の第1構成例と同様の作用・効果を奏することが可能となる。また、出力信号HGの波形が変化するタイミングとスイッチ電圧Vswの波形が変化するタイミングとでは、後者がより実際のスイッチングタイミングに近い。これは、MOS電界効果トランジスタのスイッチング動作に要する時間の影響で、出力信号HGの波形が変化するタイミングと実際のスイッチングタイミングとの間に、タイムラグが生じるためである。このため、第2構成例によれば、先の第1構成例と比較して、より精度の高いデューティ情報に基づいて、補正用電圧Vdutyを生成できるという作用・効果を奏することが可能となる。
【0097】
<リップル生成回路(第3構成例)>
ところで、上述した第1構成例(
図2)及び第2構成例(
図4)では、スイッチ電圧Vswのデューティに応じて、基準電圧Refに注入されるリップル電圧の振幅(以下では「リップル振幅」という)が変動する。より具体的には、デューティが50%の時にリップル振幅は最大となり、0%または100%に近づくにつれ、リップル振幅は減少していく。このため、リップル注入後の基準電圧RefAに応じて生成される出力電圧Voutも、スイッチ電圧Vswのデューティに応じて変動するという課題があった。
【0098】
上記の課題について、
図11〜
図14を用いつつ説明する。
図11は、リップルインジェクション部230のみを用いたリップル生成回路20の構成(従来構成に相当)を示す回路図である。
図12は、基準電圧Refとリップル注入後の基準電圧RefB’との関係を示した波形図である。
図13は、
図11のリップル生成回路20を有するスイッチング電源IC100の入力電圧Vin及び出力電圧Voutを示した模式図である。
図14は、スイッチ電圧Vswのデューティとリップル振幅との関係を示した模式図である。
【0099】
図11のリップル生成回路20は、第1構成例(
図2)で示した構成要素のうち、リップルインジェクション部230のみを有する構成である。なお、リップルインジェクション部230の詳細については、第1構成例と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0100】
上記の構成のリップル生成回路20によって生成されるリップル電圧の振幅は、次の式(6)により表される。なお、式(6)では、リップル振幅をVpp、抵抗233の抵抗値をR2、出力信号HGのハイレベル電圧をVreg、コンデンサ234の容量をC1、出力信号HGの駆動周波数をF、出力信号HGのオンデューティをDon、出力信号HGのオフデューティをDoffとして表すものとする。
【0102】
上記の式(6)のうち、Vreg/(R2×C1×F)の部分は定数となるため、これを定数αとして表すと、Vppは、次の式(7)により表される。
【0104】
このように、リップル振幅Vppは、オンデューティDonとオフデューティDoffとの積算値に応じて変動する。
図12は、
図11のリップル生成回路20により生成される、リップル注入後の基準電圧RefB’の電圧波形を異なるデューティで3パターン示した模式図である。なお、
図12では、実線がオンデューティ25%の場合の電圧波形、小破線がオンデューティ50%の場合の電圧波形、大破線がオンデューティ75%の場合の電圧波形を示している。
図12に示すように、基準電圧RefB’のピーク値は不均一になっている。この不均一が、出力電圧Voutに影響を与える。
【0105】
図13は、
図11のリップル生成回路20を有するスイッチング電源IC100の入力電圧Vinと出力電圧Voutとの関係を示した模式図である。なお、
図13の横軸は、経過時間tを示している。また、図中のDif1〜Dif5は、所定の電圧と、ほぼ定常状態にある出力電圧Voutとの差分を示している。
【0106】
図13で示すように、入力電圧Vinが時間経過と共に上昇して出力信号HGのデューティが変化すると、リップル注入後の基準電圧RefB’が変動するため、Dif1〜Dif5にばらつきが生じている。
【0107】
図14は、上記ばらつきの原因であるリップル振幅の変動を模式的に表した図である。
図14の縦軸はリップル振幅Vppを示しており、横軸は出力信号HGのデューティを示している。
【0108】
例えばデューティが50%である場合、オンデューティDonとオフデューティDoffとの積算値は0.5×0.5=0.25となる。また、例えばデューティが10%である場合、オンデューティDonとオフデューティDoffとの積算値は0.1×0.9=0.09となる。従って、式(7)を鑑みると、リップル振幅Vppは、デューティ50%の場合に最大となり、デューティ50%から遠ざかるにつれ減少していく。
【0109】
そこで、次に説明する第3構成例のリップル生成回路20は、上記の問題点に鑑み、デューティ変化に起因するリップル振幅Vppの変動をキャンセルすることにより、出力電圧Voutの変動を低減することを目的とする。
【0110】
上記の課題を解決するために、第3構成例のリップル生成回路20は、
図15〜
図17に示す構成をとるものとする。
【0111】
図15は、リップル生成回路20の第3構成例を示すブロック図である。第3構成例のリップル生成回路20は、
図11の構成に積算電圧生成部310と減算部320を追加した構成である。積算電圧生成部310は、出力信号HGのオンデューティDonと、出力信号HGのオフデューティDoffと、所定の定数α’とを積算することにより、積算電圧Vinsを生成して減算部320へ供給する。減算部320は、基準電圧Refを積算電圧Vinsに応じて引き下げる。
【0112】
積算電圧生成部310及び減算部320の詳細な構成について、
図16及び
図17を用いつつ説明する。
図16は、第1構成例(
図2)に積算電圧生成部310と減算部320を適用した場合の構成を示す回路図である。
図16に示すリップル生成回路20は、先出の第1構成例と基本的には同一の構成から成るが、出力信号HG及び補正用電圧Vdutyを用いて積算電圧Vinsを生成することに特徴を有している。そこで、第1構成例と同様の構成要素については、
図2と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第3構成例の特徴部分について重点的な説明を行う。
【0113】
図16に示すように、積算電圧生成部310は、オペアンプ311と、インバータ312と、抵抗313〜315と、コンデンサ316及び317と、を有する。
【0114】
オペアンプ311の非反転入力端(+)は、補正用電圧生成部210の出力端(補正用電圧Vdutyの印加端)に接続されている。オペアンプ311の反転入力端(−)は、オペアンプ311の出力端に接続されている。オペアンプ311の出力端は、インバータ312の上側電源端に接続されている。インバータ312の下側電源端は、接地端に接続されている。インバータ312の入力端は、出力信号HGの印加端に接続されている。インバータ312の出力端は、抵抗313の第1端に接続されている。抵抗313の第2端は、抵抗314の第1端に接続されている。抵抗314の第2端は、減算部320に接続されている。
【0115】
抵抗315の第1端は、抵抗313と抵抗314との接続ノードに接続されている。抵抗315の第2端は、接地端に接続されている。コンデンサ316の第1端は、抵抗313と抵抗314との接続ノードに接続されている。コンデンサ316の第2端は、接地端に接続されている。コンデンサ317の第1端は、抵抗314と減算部320との接続ノードに接続されている。コンデンサ317の第2端は、接地端に接続されている。
【0116】
次に、減算部320の詳細な構成について、
図17を用いつつ説明する。
図17は、加算部220(
図3)の一部を共有する形で減算部320を構成した場合の回路図である。
図17に示すように、本構成例の減算部320は、オペアンプ321と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ322と、抵抗323とを有する。
【0117】
オペアンプ321の非反転入力端(+)は、積算電圧Vinsの印加端に接続されている。オペアンプ321の反転入力端(−)は、トランジスタ322と抵抗323との接続ノードに接続されている。オペアンプ321の出力端は、トランジスタ322のゲートに接続されている。トランジスタ322のドレインは、抵抗222の第2端と加算部220の出力端との接続ノードに接続されている。トランジスタ322のソースは、抵抗323の第1端に接続されている。抵抗323の第2端は、接地端に接続されている。
【0118】
次に、本構成例のリップル生成回路20の動作について説明する。
【0119】
積算電圧生成部310に含まれるオペアンプ311は、補正用電圧生成部210より供給される補正用電圧Vdutyを、インバータ312の電源電圧として出力する。補正用電圧Vdutyは出力信号HGのオンデューティDonに応じて変化するため、オペアンプ311の出力電圧は、β×Donと表すことができる。なお、定数βは補正用電圧生成部210に含まれる抵抗の抵抗値等により定まる定数である。
【0120】
インバータ312は、上記の出力電圧(β×Don)を電源電圧として、出力信号HGを反転させた反転信号を生成する。抵抗313、抵抗314、コンデンサ316、及び、コンデンサ317は、2段構成のCRフィルタであり、インバータ312から出力される反転信号を平滑して所望の積算電圧Vinsを生成する平滑回路として機能する。なお、
図16では2段構成としているが、この段数は設計要求に応じて適宜変更が可能である。
【0121】
インバータ312は、出力信号HGを論理反転して出力する。従って、仮にインバータ312の電源電圧が一定である場合、CRフィルタの出力はγ×Doffと表すことができる。なお、定数γはCRフィルタに含まれる抵抗の抵抗値等により定まる定数である。一方、本構成例では、インバータ312の電源電圧として補正用電圧Vduty(=β×Don)が入力されている。従って、積算電圧Vinsは、(β×γ)×Don×Doffとなる。
【0122】
このように、積算電圧生成部310では、出力信号HGのオンデューティDonと、出力信号HGのオフデューティDoffと、所定の定数α’(=β×γ)とを積算することにより、積算電圧Vinsが生成される。
【0123】
抵抗315は、このCRフィルタに含まれる抵抗313とともに分圧回路を形成する。なお、
図16では、抵抗313と抵抗314との接続ノードに抵抗315を接続することにより分圧回路を形成しているが、これ以外の接続形態により分圧回路を形成する形態でもよい。例えば、抵抗314の第2端に抵抗315の第1端を接続することにより、分圧回路を形成する形態でもよい。
【0124】
減算部320に含まれるオペアンプ321、トランジスタ322、及び抵抗323は、積算電圧Vinsに応じた減算電流I32を生成する減算電流生成回路(電圧/電流変換回路)として機能する。これにより、積算電圧Vinsの電圧値に応じた減算電流I32が生成される。この減算電流I32は、オペアンプ221の出力端から、抵抗222、トランジスタ322、及び、抵抗323を介して接地端に向けて流れる。従って、抵抗222の両端間には、減算電流I32の電流値に応じた電位差が生じる。
【0125】
また、抵抗222の両端間には、加算部220により生成される加算電流I22の電流値に応じた電位差も生じる。その結果、基準電圧Refが積算電圧Vinsに応じて引き下げられ、さらに補正用電圧Vdutyに応じて引き上げられた、補正後の基準電圧(Ref+Vduty−Vins)が生成される。なお、補正後の基準電圧(Ref+Vduty−Vins)は、リップルインジェクション部230へ出力される。
【0126】
リップルインジェクション部230に含まれるオペアンプ231の非反転入力端(+)には、補正後の基準電圧(Ref+Vduty−Vins)が印加される。従って、リップルインジェクション部230から出力されるリップル注入後の基準電圧RefBは、補正後の基準電圧(Ref+Vduty−Vins)を基準として電圧値が変動する波形、すなわち、補正後の基準電圧(Ref+Vduty−Vins)にリップル成分が注入された波形となる。
【0127】
なお、上述した積算電圧生成部310に含まれる抵抗の抵抗値は、積算電圧Vinsによってキャンセルすべきリップル振幅Vppの変動範囲に基づき、設計要求に応じて定められる。例えば、次に説明する数式を用いた方法により、定められる。
【0128】
図16及び
図17に示す積算電圧生成部310により生成される積算電圧Vinsは、式(8)により表される。なお、式(8)では、抵抗211及び212の合成抵抗値をR1、抵抗213の抵抗値をR2、抵抗313及び314の合成抵抗値をR5、抵抗315の抵抗値をR6、抵抗222の抵抗値をR7、抵抗323の抵抗値をR8、出力信号HGのハイレベル電圧をVreg、出力信号HGのオンデューティをDon、出力信号HGのオフデューティをDoffとして表すものとする。
【0130】
上記の式(8)において、(R7/R8)×{R6/(R5+R6)}×{R4/(R3+R4)}×Vregの部分は定数となるため、これを定数α’として表すと、積算電圧Vinsは、次の式(9)により表される。
【0132】
このように、積算電圧Vinsは、出力信号HGのオンデューティDonとオフデューティDoffとの積算値に応じて変動する。
【0133】
リップル振幅Vppは、先出の式(6)及び式(7)により表される。積算電圧Vinsによって補正すべき電圧は、リップル振幅Vppの1/2であるため、定数α’が定数αの1/2となるように各抵抗値を設定すればよい。すなわち、次の式(10)が満たされるように各抵抗値を設定すればよい。なお、式(10)では、左辺が定数αの1/2を示しており、右辺が定数α’を示している。
【0135】
以上に説明した本発明の構成により得られる作用効果について一例を示して説明する。
【0136】
図18は、第3構成例のリップル生成回路20により生成される、リップル注入後の基準電圧RefBの電圧波形を異なるデューティで3パターン示した模式図である。なお、
図18では、実線がオンデューティ25%の場合の電圧波形、小破線がオンデューティ50%の場合の電圧波形、大破線がオンデューティ75%の場合の電圧波形を示している。
図19は、第3構成例のリップル生成回路20を有するスイッチング電源IC100の入力電圧Vin及び出力電圧Voutを示した模式図である。
【0137】
図18に示すように、補正後の基準電圧(Ref+Vduty−Vins)により生成されたリップル注入後の基準電圧RefBのピーク値は、リップル振幅Vppの影響がキャンセルされているため、ほぼ均一となる。このため、
図19に示すように、入力電圧Vinが時間経過と共に増加して出力信号HGのデューティが変化したとしても、リップル注入後の基準電圧RefBが変動しない。このため、Dif1〜Dif5にばらつきが生じていない。
【0138】
以上に説明した第3構成例によれば、第1構成例の補正用電圧Vdutyに加え、さらに積算電圧Vinsも用いて基準電圧Refの補正を行っているため、第1構成例と比較してより高い精度で補正を行い、ラインレギュレーションをより向上できるという作用・効果を奏することが可能となる。
【0139】
<リップル生成回路(第4構成例)>
なお、上述した第3構成例は、第1構成例(
図2)に積算電圧生成部310及び減算部320を適応した構成例として説明したが、
図20に示すように、
図2の構成に加えて、出力信号HGの印加端と抵抗233及び補正用電圧生成部210との間にバッファ240を設け、このバッファ240の電源電圧としてデューティ変化をキャンセルするための補正後の電源電圧REG’を適応し、バッファ240より補正後の出力信号HG’を出力することにより、上記と同様の作用、効果を得ることが可能である。
【0140】
先述した式(6)に示すように、リップル振幅Vppは、DonとDoffの積算値に応じて変動する。また、式(6)に示すように、Don及びDoffの積算値には電源電圧Vreg(=出力信号HGのハイレベル電圧)が積算される。そこでVregがDon及びDoffの積算値の変化を打ち消すように変化すれば、リップル振幅を一定とすることができる。
【0141】
上記の考察に鑑み、第4構成例のリップル生成回路20は、
図20に示す構成をとるものとする。積算電圧生成部310及び補正用電圧生成部330は、出力信号HGのオンデューティDonと、出力信号HGのオフデューティDoffと、所定の定数α’とを積算することにより、積算電圧Vinsを生成して減算部320へ供給する。
【0142】
減算部320は、電源電圧Vregを積算電圧Vinsだけ引き下げる。これにより、Don及びDoffの積算値の変化を打ち消すために必要な、補正後の電源電圧REG’を生成し、バッファ240の上側電源端に印加する。なお、積算電圧生成部310及び減算部320の詳細な構成については、第3構成例と同じであるため、ここでは説明を省略する。また、補正用電圧生成部330の詳細な構成については、補正用電圧生成部210と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0143】
上記の構成により生成される補正後の電源電圧REG’の一例を、
図21を用いて説明する。
図21の縦軸は、Don及びDoffの積算値と、補正後の電源電圧REG’を各々示している。
図21Bの横軸は、出力信号HGのデューティ(Don)を示している。
【0144】
図21に示すように、Don及びDoffの積算値は、デューティが50%の時に最大となり、0%または100%に近づくにつれ減少していく。一方、補正後の電源電圧REG’は、デューティが50%の時に最小となり、0%または100%に近づくにつれ増加していく。このため、積算電圧生成部310の定数α’を、キャンセルすべきデューティ変化に応じて設定することにより、REG’×Don×Doffを、デューティ変化に依存しない一定の値とすることができる。
【0145】
このように、第4構成例では、式(6)に示すVreg×Don×Doffの部分を、上述したREG’×Don×Doffに変更することにより、非線形方式の応答性を一定に保つことができるとともに、ノイズの影響も一定に保つことができる。
【0146】
<回路遅延に伴う出力ドロップ対策>
第3構成例(ないしは第4構成例)のリップル生成回路20は、基準電圧RefBの最高値(三角波のトップ位置)が持つ2つの変動要因、すなわち、(1)リップル平均値の変動成分(式(4b)の右辺第2項参照)と、(2)リップル振幅Vppの変動成分(式(10)の左辺参照))をいずれもキャンセルして、基準電圧RefBの最高値が所望の電圧値となるように、基準電圧Refに補正を掛ける構成とされている。
【0147】
しかしながら、スイッチング電源装置Aの駆動周波数F(=1/T)を高めていくと、基準電圧RefBと帰還電圧Vfbが交差してから基準電圧RefBが折り返すまでの回路遅延時間Td(主として、メインコンパレータ5、オペアンプ231、及び、ドライバ2a及び2bの各回路遅延時間の合計))が相対的に大きくなる。そのため、
図22で示すように、帰還電圧Vfbが基準電圧RefBの最高値よりも遅延降下電圧Verrだけ低くなってしまい、延いては、出力電圧Voutが所望値からずれてしまう。
【0148】
なお、メインコンパレータ5などを高速化すれば上記の問題は解消されるが、そのためには、回路の消費電流を増大する必要がある。すなわち、スイッチング電源装置Aの高周波化と低消費電力化は、トレードオフの関係にあった。
【0149】
ここで、回路遅延時間Tdと遅延降下電圧Verrとの間には、次の式(11)が成立する。
【0151】
また、リップル振幅Vppは、先出の式(6)によって表される。従って、式(11)に式(6)を代入して整理すると、遅延降下電圧Verrは、次の(12)式で算出することができる。
【0153】
このように、遅延降下電圧Verrは、リップル平均値(基準電圧RefBのDC値)と同じく、オンデューティDonに応じて変動することが分かる。
【0154】
従って、次の(13)式を満たすように、リップル生成回路20の回路定数(特に、抵抗値R1〜R4、抵抗値R7、抵抗値R9、及び、容量値C1)を選べば、オンデューティDonに応じたリップル平均値の変動成分だけでなく、回路遅延による出力電圧Voutの変動成分(遅延降下電圧Verr)をキャンセルすることができる。従って、入出力条件に依ることなく、スイッチング電源装置Aの高周波化と低消費電力化を両立することが可能となる。
【0156】
<リップル生成回路(第5構成例)>
図23は、リップル生成回路20の第5構成例を示すブロック図である。第5構成例のリップル生成回路20は、先出の第3構成例(
図16及び
図17)とほぼ同様の構成であり、周波数切替信号FCTRLを用いた駆動周波数Fの切替制御に対応した点に特徴を有している。そこで、第3構成例と同様の構成要素については、
図16及び
図17と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第5構成例の特徴部分について重点的な説明を行う。
【0157】
周波数切替信号FCTRLは、オン時間設定部7(
図1を参照)に入力される制御信号であり、出力信号HGのオン時間Tonを切り替えて駆動周波数Fを変化させるために用いられる。また、駆動周波数Fを切り替えるときには、先出の(10)式を満足するために、リップルインジェクション部230に含まれるコンデンサ234の容量値C1も周波数切替信号FCTRLに応じて可変制御する必要がある。例えば、駆動周波数Fを2倍に切り替える場合には、コンデンサ234の容量値C1が1/2に切り替えられる。
【0158】
このように、容量値C1が切り替えられると、今度は先出の(13)式を満足するために、抵抗値R1〜R4、抵抗値R7、及び、抵抗値R9のうち、少なくとも一つを調整する必要が生じる。ただし、抵抗値R1〜R4、ないし、抵抗値R7を調整すると、先出の(10)式の関係が再び崩れてしまい、さらに別の回路定数を調整する必要が生じてしまう。一方、抵抗値R9を容量値C1と同様の挙動で可変制御すれば、他の回路定数の調整を要することなく、先出の(10)式と(13)式をいずれも満足することができる。
【0159】
そこで、第5構成例のリップル生成回路20において、コンデンサ234と抵抗227は、周波数切替信号FCTRLに応じて、その容量値C1と抵抗値R9が可変制御される構成とされている。例えば、容量値C1が1/2に切り替えられたときには、抵抗値R9も1/2に切り替えられる。このような構成とすることにより、回路定数の調整を最小限に抑えつつ、駆動周波数Fの切替制御に対応することが可能となる。
【0160】
図24及び
図25は、それぞれ、駆動周波数Fの切替時に、帰還電圧Vfb(延いては出力電圧Vout)のDCずれが発生する様子と、そのDCずれが抑制される様子を示すタイミングチャートである。
【0161】
仮に、回路遅延による出力電圧Voutの変動成分(遅延降下電圧Verr)を考慮せずにリップル生成回路20の回路定数を設定すると、駆動周波数Fが高いほど遅延降下電圧Verrは大きくなるので、駆動周波数Fの切替前後で帰還電圧VfbのDCずれが生じる(
図24を参照)。
【0162】
一方、回路遅延による出力電圧Voutの変動成分を鑑み、先出の(13)式を満足するようにリップル生成回路20の回路定数を設定すると、駆動周波数Fに応じて基準電圧RefBが上下にシフトされるので、帰還電圧VfbのDCずれやこれに伴うオーバー/アンダーシュートを抑制することが可能となる(
図25を参照)。
【0163】
<テレビへの適用>
図26はスイッチング電源装置を搭載したテレビの一構成例を示すブロック図である。また、
図27A〜
図27Cは、それぞれ、スイッチング電源装置を搭載したテレビの正面図、側面図、及び、背面図である。本構成例のテレビXは、チューナ部X1と、デコーダ部X2と、表示部X3と、スピーカ部X4と、操作部X5と、インタフェイス部X6と、制御部X7と、電源部X8と、を有する。
【0164】
チューナ部X1は、テレビXに外部接続されるアンテナX0で受信された受信信号から所望チャネルの放送信号を選局する。
【0165】
デコーダ部X2は、チューナX1で選局された放送信号から映像信号と音声信号を生成する。また、デコーダ部X2は、インタフェイス部X6からの外部入力信号に基づいて、映像信号と音声信号を生成する機能も備えている。
【0166】
表示部X3は、デコーダ部X2で生成された映像信号を映像として出力する。
【0167】
スピーカ部X4は、デコーダ部で生成された音声信号を音声として出力する。
【0168】
操作部X5は、ユーザ操作を受け付けるヒューマンインタフェイスの一つである。操作部X5としては、ボタン、スイッチ、リモートコントローラなどを用いることができる。
【0169】
インタフェイス部X6は、外部デバイス(光ディスクプレーヤやハードディスクドライブなど)から外部入力信号を受け付けるフロントエンドである。
【0170】
制御部X7は、上記各部X1〜X6の動作を統括的に制御する。制御部X7としては、CPU(central processing unit)などを用いることができる。
【0171】
電源部X8は、上記各部X1〜X7に電力供給を行う。電源部X8としては、先述のスイッチング電源装置Aを好適に用いることができる。
【0172】
<その他の変形例>
また、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。