【文献】
IntelliCage,NewBehavior,2013年 1月31日,URL,http://www.newbehavior.com/products/ic
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ケージは複数の前記チャンバを取り付けることが可能であるとともに、複数の前記チャンバのそれぞれが、異なる前記課題を提示可能であることを特徴とする請求項1記載の動物実験装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来の動物実験装置により得られた被験動物の実験データは、試験者が自ら解析する必要があるため、解析に長時間を要し、また、実験データが膨大である場合には、解析自体が困難なものとなっていた。
【0008】
また、動物実験装置を用いた動物実験の進行に応じて、テスト部によるテストの最適化が行われる場合がある。すなわち、動物実験の進行に応じてより良いテストの方法が見出された場合には、この知見に応じてテストの最適化が行われることがある。
【0009】
しかし、上述した従来の動物実験装置では、テストの最適化を行うためには試験者が自ら膨大な実験データ等を検討する必要があり、多大な労力を要していた。そのため、テストの最適化を自動的に行うことのできる動物実験装置があれば望ましい。
【0010】
さらに、得られた実験データに基づき被験動物に関する新たな仮説を提案することと、この仮説の検証についても試験者が自ら行う必要があり、これらもまた多大な労力を要するものであった。そのため、新たな仮説の提案と検証も自動的に行うことのできる動物実験装置があれば更に望ましい。
【0011】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、動物実験に際して行われるテストの最適化を自動的に行うことのできる動物実験装置を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、テストの最適化に加え、新たな仮説の提案と検証についても自動的に行うことのできる動物実験装置を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、テストの最適化と新たな仮説の提案及び検証に加え、実験データの解析も自動的に行うことのできる動物実験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1発明に係る動物実験装置は、被験動物の行動実験を行う動物実験装置であって、被験動物の居住環境を構成するケージと、前記ケージに着脱可能に取り付けられる、被験動物が進入可能なチャンバと、前記チャンバ内に設けられ、前記チャンバ内に進入した被験動物に課題を提示するとともに、前記課題に対する被験動物の応答を検出し応答データを得るテスト部と、前記ケージ及び前記チャンバ内の被験動物の位置を測定し、被験動物の位置データを得る位置計測器と、前記応答データ及び前記位置データを実験データとして記憶するデータ記憶部と、前記実験データに基づき前記テスト部により提示される前記課題の改善を行う課題改善部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
第2発明に係る動物実験装置は、第1発明に係る動物実験装置において、前記ケージは複数の前記チャンバを取り付けることが可能であるとともに、複数の前記チャンバのそれぞれが、異なる前記課題を提示可能であることを特徴とする。
【0016】
第3発明に係る動物実験装置は、第1発明又は第2発明に係る動物実験装置において、前記動物実験装置は、前記解析結果に基づき被験動物の行動に関する仮説を提案する課題提案部を備えることを特徴とする。
【0017】
第4発明に係る動物実験装置は、第1発明乃至第3発明の何れか1つの発明に係る動物実験装置において、前記動物実験装置は、前記実験データを解析し前記行動実験の結果を得るデータ解析部を更に備えることを特徴とする。
【0018】
第5発明に係る動物実験装置は、第4発明に係る動物実験装置において、前記実験データを隠れマルコフモデルを用いて解析することを特徴とする。
【0019】
第6発明に係る動物実験装置は、第1発明乃至第5発明の何れか1つの発明に係る動物実験装置において、前記テスト部はタッチパネルであることを特徴とする。
【0020】
第7発明に係る動物実験装置は、第1発明乃至第6発明の何れか1つの発明に係る動物実験装置において、前記ケージは給餌、給水及び清掃機能を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
上述した構成からなる第1発明乃至第7発明によれば、動物実験に際して行われるテストの最適化を自動的に行うことが可能となる。
【0022】
また、上述した構成からなる第3発明乃至第7発明によれば、新たな仮説の提案と検証についても自動的に行うことが可能となる。
【0023】
また、上述した構成からなる第4発明乃至第7発明によれば、更に実験データの解析も自動的に行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る動物実験装置について詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る動物実験装置の全体像を示す斜視図である。動物実験装置1は、ケージ2と、ケージ2に取り付けられた8つのチャンバ3と、ケージ2内の被験動物Aに取り付けられた位置計測器4と、動物実験装置1全体の制御を行う制御装置5とを備えて構成されている。
【0027】
図2は、
図1の動物実験装置1のケージ2を示す斜視図である。ケージ2は、被験動物Aの居住空間となる篭状の構成であり、ケージ本体21の正面(
図2の+Y方向)には上下2段の開閉可能な扉22が設けられているとともに、左右(
図2の±X方向)側面にはそれぞれ4つ、合計8つの開口部23が設けられている。また、ケージ2の下部には±Y方向に出し入れ可能なトレイ24が設けられている。
【0028】
ケージ本体21は、前後左右の4つの側面と上面とがいずれも格子状となっていて、ケージ本体21内部への通気と、ケージ本体21内部にいる霊長類等の被験動物Aの外部からの視認が可能となっている。また、ケージ本体21が格子により構成されていることで、被験動物Aは、ケージ本体21内部を移動しやすくなっている。なお、ケージ本体21内部に収容される被験動物Aの数は実験の種類に応じて調整することができる。
【0029】
扉22は、ケージ本体21のZ方向の上段と下段にそれぞれ1対ずつ設けられていて、Z軸を中心として、いわゆる観音開き状に左右に開くようになっている。ケージ本体21への被験動物Aの出し入れや、ケージ本体21内部について行う各種操作は、主にこの扉22を開いて行われる。
【0030】
開口部23は、ケージ本体21の左右側面にそれぞれ4つずつ、合計8つ設けられていて、この開口部23に対して図示しない任意の固定手段を介してチャンバ3が取り付けられる。なお、本実施形態では開口部23は8つ設けられているが、本発明においてはこの数は任意であり、実験の種類や被験動物Aの数等に応じて増減させることができる。
【0031】
トレイ24は、ケージ本体21の下部に落下した被験動物Aの排泄物等の清掃機能を担う、図示しない清掃機構が設けられていて、ケージ本体21に対して±Y方向に出し入れ可能となっている。
【0032】
また、トレイ24には、被験動物Aに対する給餌機能を担う給餌機構や、給水機能を担う給水機構も設けられている。トレイ24がこれらの機構を有することで、ケージ本体21内部にいる被験動物Aの実験を、観察中に人の手による飼育作業を行うことなく長期間にわたって行うことが可能となるとともに、被験動物Aの実験中のストレスを低減し、人為的な影響の少ない実験データを得ることができる。なお、給餌機構や給水機構をトレイ24内ではなく、ケージ本体21の内側面等に設けてもよい。この場合、トレイ24は清掃機構のみを有するものとなる。
【0033】
トレイ24が+Y方向に引き出された状態では、トレイ24内部の各構成がケージ本体21外部に露出した状態となる。そのため、作業員がトレイ24内部に設けられた各構成に対する清掃等の維持管理作業を行うことができる。
【0034】
なお、トレイ24内に設けられている各構成は、制御装置5に接続されている。また、給餌機構や給水機構をトレイ24内に設けない場合でも、これらの機構は制御装置5に接続される。
【0035】
図3は、
図1の動物実験装置1のチャンバ3を示す斜視図である。チャンバ3は篭状の構成であり、ケージ本体21の開口部23に取付可能となっている。
【0036】
このチャンバ3は、チャンバ本体31と、チャンバ本体31の+X方向に位置する側面に設けられた出入口32と、チャンバ本体31の−X方向に位置する開放面に取り付けられたタッチパネル33と、チャンバ3の制御とデータ収集を行う制御器34とを備えて構成されている。
【0037】
チャンバ本体31は、
図3における−X方向に位置する側面が開放面となっているとともに、その他の側面はいずれも格子状であり、上面および下面が平板状となっている。また、チャンバ本体31内部には図示しない給餌機構及びエア噴射機構が設けられている。給餌機構及びエア噴射機構は、ともに制御器34に接続されている。
【0038】
出入口32は、チャンバ本体31の+X方向に設けられた筒状の構成であり、チャンバ本体31内部への被験動物Aの出入口となっている。この出入口32には、図示しないセンサおよび開閉機構が設けられている。センサ及び開閉機構は、後述する制御器34に接続されている。
【0039】
タッチパネル33は、チャンバ本体31内部に進入した被験動物Aに対する実験を行うための課題を提供するとともに、この課題に対する被験動物の反応を検出し実験データを得るテスト部として機能する構成である。このタッチパネル33として、自機で各種の情報処理を行いうるタブレット型の情報処理端末を用いることが好ましい。タッチパネル33は、制御器34に接続されている。なお、このタッチパネル33にビデオカメラ等の撮像機構を内臓し、チャンバ3内にいる被験動物Aの画像を撮像するとともに、他のチャンバ3内に設けられたタッチパネル33にこの被験動物Aの画像を映す態様としてもよい。こうすることで、異なるチャンバ3内にいる被験動物A同士が相互の画像を見ることができるため、被験動物A間のコミュニケーションに関する実験を行うことができる。
【0040】
図4は、チャンバ3に設けられているタッチパネル33を示す平面図である。タッチパネル33の画面331には、各種画像が被験動物Aに対する課題として表示され、被験動物Aによる画像331の操作情報が実験データとして得られる。
【0041】
図4に示す例では、課題として画面331に大きな円332と小さな円333が表示されている。こうした課題を用いることで、被験動物Aの物体の大小判定能力と記憶力に関する実験を行うことができる。
【0042】
この実験では、被験動物Aはこの画面311に表示された大きな円332又は小さな円333を目視し円の大小を判断し、いずれかの円に触れる。
【0043】
この接触により被験動物Aは課題に応答したことになり、この応答結果は応答データとして制御装置5に送信され、各種解析に用いられるとともに、制御器34にも送信され、被験動物Aへの報酬や罰の付与に用いられる。
【0044】
なお、本実施形態においては被験動物Aに提示される課題として、大きな円332と小さな円333が画面331に表示されているが、本発明においてはこれに限らず、他の課題が表示されても良い。
【0045】
例えば、課題として画面311に円や四角形、星型等の複数の形状の画像を表示し、このときの被験動物Aの応答を検知しても良い。この課題を用いることで、被験動物Aの図形判別能力と記憶力に関する実験を行うことができる。
【0046】
また、課題として画面311に形状が同一であり色彩のみが異なる複数の画像を表示し、このときの被験動物Aの応答を検知しても良い。この課題を用いることで、被験動物Aの色彩判別能力と記憶力に関する実験を行うことができる。
【0047】
また、課題として画面311に動物や昆虫等の生物の画像や、果物や樹木等の植物の画像を表示し、このときの被験動物Aの応答を検知しても良い。この課題を用いることで、被験動物Aの対象分類能力や概念形成能力に関する実験を行うことができる。
【0048】
また、課題として他のチャンバ3に設けられたタッチパネル33により撮影された他の被験動物Aの画像や動画を表示し、このときの被験動物Aの応答を検知しても良い。この課題を用いることで、被験動物Aの社会的認識能力に関する実験を行うことができる。
【0049】
制御器34は、出入口32の開閉機構の制御と、チャンバ3内で行われる実験結果に応じた被験動物Aへの報酬や罰の付与を行う構成である。
【0050】
具体的には、出入口32に設けられたセンサが出入口32に進入しようとする被験動物Aを捉えると、センサから制御器34への出力が行われる。制御器34は、この出力に基づき出入口32の開閉機構の駆動制御を行う。この駆動制御は、例えばチャンバ本体31内に被験動物Aが1体のみ存在可能であるように行われる。こうしてチャンバ本体31に出入りする被験動物Aの出入タイミングや個体数等を調節することが可能となっている。
【0051】
また、制御器34は、被験動物Aがタッチパネル33に触れることによる応答結果に応じて、被験動物Aに対し、給餌機構を介して報酬としての餌を与えるか、又はエア噴射機構を介して罰としてのエア噴射を与える。例えば、
図4に示す画面311では、大きな円332に触れると報酬としての餌が与えられ、小さな円333に触れると罰としてエア噴射が与えられる。
【0052】
位置計測器4は、被験動物Aに取り付けられて被験動物Aの位置を測定するためのものであり、GPS(Global Positioning System)やUWB(Ultra Wide Band)無線通信等を利用し、被験動物Aの位置を測定する機器である。位置計測器4により計測された被験動物Aの位置情報は位置データとして位置計測器4から直接、または制御器34を経由して制御装置5に送信される。なお、位置計測器4としてケージ2内にビデオカメラ等の撮像機構を設け、この撮像機構により撮像された画像を解析することにより被験動物Aの位置情報を取得してもよい。
【0053】
制御装置5は、動物実験装置1に設けられた各構成の制御を行う。
図5は、動物実験装置1の制御装置5を示す構成ブロック図である。制御装置5は、制御部51、アンテナ52、表示部53、操作部54及びデータ記憶部55を備えて構成されている。
【0054】
制御部51は、制御部51全体を制御するCPU511と、CPU511上で動作する制御プログラム等を格納したROM512と、各種データを一時的に格納するためのRAM513と、を備えて構成されている。
【0055】
アンテナ52は、動物実験装置1の各構成、具体的にはタッチパネル33及び位置計測器4等との情報の送受信、すなわち、実験データである応答データと位置データの送受信等を行うためのアンテナである。また、被験動物Aに脳波測定器や心電図測定器等の生体反応測定機構を取り付けた場合には、アンテナ52は、これらの生体反応測定機構により得られたデータの送受信にも用いられる。
【0056】
ディスプレイ53は、制御装置5の設定状況や、制御装置5収集された実験データ、提案された仮説の内容等の表示を行うための構成である。
【0057】
操作部54は、操作者が制御装置5に対する設定やその変更等の各種操作を行うための構成であり、キーボード等が該当する。
【0058】
データ記憶部55は、位置計測器4により測定された被験動物Aの位置データと、タッチパネル33により得られた応答データを実験データとして記憶する。また、データ記憶部55は、タッチパネル33において用いられる課題データを記憶する。
【0059】
図6は、制御装置5の制御部51の機能ブロック図である。制御部51は、CPU511がROM512に格納されている制御プログラムをRAM513に展開して実行することにより、通信部511a、課題取得部511b、表示部511c、データ解析部511d、課題改善部511e、環境維持部511f及び仮説提案部511gとして機能する。
【0060】
通信部511aは、アンテナ52を介してタッチパネル33及び位置計測器4等との情報の送受信を行う。タッチパネル33から受信した応答データ及び位置計測器4から受信した位置データは、データ記憶部55に記憶される。
【0061】
課題取得部511bは、データ記憶部55に記憶されている課題データの読み出しを行う。課題取得部511bにより読み出された課題データは、通信部511aによりアンテナ52を介してタッチパネル33へと送信される。
【0062】
表示部511cは、タッチパネル33に対して課題の提示を行わせる。
【0063】
データ解析部511dは、実験データの解析を行い、被験動物Aについて認知機能等の検証を行う。データ解析部511dによる実験データの解析は、隠れマルコフモデルを用いて行われる。
【0064】
隠れマルコフモデルは、確率モデルの一種であり、システムがパラメータ未知のマルコフ過程(未来の挙動が現在の値だけで決定され、過去の挙動と無関係であるという性質を持つ確率過程)であると仮定し、観測可能な情報からその未知のパラメータを推定する手法である。
【0065】
課題改善部511eは、データ解析部511dによる解析結果に応じて、チャンバ3において被験動物Aに提示される課題の改善を行う。課題の改善内容としては、各チャンバ3において被験動物Aに提供されるそれぞれの課題の交換や、課題の修正、報酬と罰のタイミングや量の変更等が挙げられる。
【0066】
環境維持部511fは、トレイ24の内部に設けられている清掃機構、給餌機構、給水機構等を制御し、ケージ2内部の環境を、被験動物Aが長期間健康な状態で生存できるように維持する。
【0067】
仮説提案部511gは、データ解析部511dによる解析結果に基づき、被験動物Aの認知や行動等についての仮説を提案する。提案された仮説は、課題改善部511eに提供され、必要に応じて課題の改善が行われる。
【0068】
次に、上述した構成を備える動物実験装置1により行われる動物実験について説明する。
図7は、本発明の実施形態に係る動物実験装置により行われる動物実験方法を示すフローチャートである。
【0069】
まず、被験動物Aに取り付けられた位置計測器4により、被験動物Aの位置の検出が行われる(ステップS1)。このとき検出される被験動物Aの位置データは、位置計測器4から制御装置5へと送信され、データ記憶部55に記憶される。
【0070】
被験動物Aの位置情報が、8つあるチャンバ3のうち何れか1つの中を示す場合(ステップS2:Yes)、制御装置5の表示部511cは、そのチャンバ3に設けられたタッチパネル33に対して所定の課題を提示させることで、被験動物Aに対する課題の提供が行われる(ステップS3)。
【0071】
なお、被験動物Aの位置情報がチャンバ3内ではない場合(ステップS2:No)、ステップS1に戻り、被験動物Aの位置検出が継続される。
【0072】
次に、提供された課題に対する被験動物の反応が検出された場合、すなわち、被験動物Aによるタッチパネル33に表示された課題への接触が検出された場合(ステップS4:Yes)、その反応の情報が応答データとして制御装置に送信され、データ記憶部55に記憶される(ステップS5)。
【0073】
なお、被験動物Aがチャンバ3内にいるものの、反応が検出されない場合(ステップSS4:No)、ステップS3に戻り、反応が検出されるまで課題の提供が継続される。
【0074】
次に、データ解析部511dによるデータ解析が可能となる程度の実験データ、すなわち、応答データと位置データとがデータ記憶部55に記憶された場合(ステップS6:Yes)、データ解析部511dによる実験データの解析が行われる(ステップS7)。なお、データ記憶部に記憶されている実験データの量が、データ解析部511dによるデータ解析を行いうる量ではない場合(ステップS6:No)、ステップS1に戻り、実験データの収集が継続される。
【0075】
次に、データ解析部511dによる実験データの解析結果がディスプレイ54に表示されるとともに(ステップS8)、課題改善部511eは、この実験データの解析結果に基づいて、課題の改善が可能であるか否かを判断する(ステップS9)。
【0076】
課題の改善が可能である場合(ステップS9:Yes)、課題改善部511eは課題の改善を行う(ステップS10)。
【0077】
次に、仮説提案部511gは、データ解析部511dによる実験データの解析結果に基づき、被験動物Aに関する新たな仮説の提案を試みる(ステップS11)。
【0078】
新たな仮説の提案が可能である場合(ステップS11:Yes)、仮説提案部511gは新たな仮説を提案し(ステップS12)、課題改善部511eはこの新たな仮説に基づいて課題の改善を行う。
【0079】
そして、被験動物Aに関する所望の実験が全て終了した場合(ステップS13:Yes)、動物実験装置1による被験動物Aを用いた実験は終了する。一方、所望の実験が終了していない場合には(ステップS13:No)、ステップS1に戻り、一連の実験が繰り返される。
【0080】
また、ステップS9において課題の改善が不能である場合(ステップS9:No)及びステップS11において新たな仮説の提案が不能である場合(ステップS11:No)も、ステップS13へと移行する。
【0081】
上述した実施形態に係る動物実験装置1によると、被験動物Aの実験データの解析とテストの最適化を自動的にリアルタイムで行うことができるとともに、新たな仮説の提案と検証も同様に自動的にリアルタイムで行うことができる。
【0082】
なお、上述した実施形態に係る動物実験装置1では、仮説提案部511gによる新たな仮説の提案が行われていたが、本発明においてはこの仮説提案部511gを省略し、自動的な仮説の提案を行わない態様とすることも可能である。この場合でも、被験動物Aの実験データの解析やテストの最適化を自動的に行うことができる。
【0083】
また、上述した実施形態に係る動物実験装置1では、データ解析部511dによるデータの解析が行われていたが、本発明においてはこのデータ解析部511dを省略し、自動的なデータの解析を行わない態様とすることも可能である。この場合でも、被験動物Aに関する新たな仮説の提案とテストの最適化を自動的に行うことができる。
【0084】
また、上述した実施形態に係る動物実験装置1では、チャンバ3内に設けられたテスト部としてタッチパネル33が用いられていたが、本発明においてはこれに限らず、機械的な操作を要するレバーやボタン等の操作機構を設け、被験動物Aによるレバー押しやボタン押しに対する報酬や罰を変化させることを課題としても良い。この課題を用いることで、被験動物Aのフィードバックへの感受性に関する実験を行うことができる。
【0085】
また、テスト部として画像を撮影するカメラや動画を撮影するビデオカメラを設けるとともに、柵で仕切りを設け、この柵を挟んで被験動物Aの手の届かない位置に餌を置くとともに、長短2つの棒であって、長い棒を用いれば餌を手繰り寄せることができ、短い棒ではそれができないという課題を被験動物Aに与えても良い。この課題を用いることで、被験動物Aの物体の長短認識能力と道具使用能力に関する実験を行うことができる。
【0086】
また、上述した実施形態に係る動物実験装置1における各構成間のデータの送受信は、有線又は無線の何れの形式により行われても良い。
【0087】
また、上述した実施形態に係る動物実験装置1では、実験データとして被験動物Aの応答データ及び位置データが収集されるが、本発明においてはこれに限らず、更にマイク等の周音手段を用いて被験動物Aの鳴き声等の音声データが収集され、同様にデータ記憶部55に記憶されるとともに、データ解析部511dにより解析される態様としても良い。
【0088】
また、上述した実施形態に係る動物実験装置1では、実験データの解析に隠れマルコフモデルが用いられていたが、本発明においてはこれに限らず、他の解析方法が用いられても良い。