(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記突状部が吸引圧作用時に前記カテーテル本体の周壁部分の対向内面に当接するようになっていると共に、該突状部と該周壁部分の対向内面との当接部分を周方向に外れた位置に前記連通孔が設けられている請求項1〜4の何れか1項に記載の弁付カテーテル。
前記カテーテル本体が少なくとも前記連通孔の形成領域において円形の外周面とされており、略一定の厚さ寸法で広がる薄肉部と前記突状部が形成された厚肉部とを有していると共に、該薄肉部に前記連通孔が形成されている請求項1〜5の何れか1項に記載の弁付カテーテル。
【背景技術】
【0002】
従来から、患者に薬液や輸液等を注入したり患者から血液等を吸引して採取するためにカテーテルが採用されている。
【0003】
ところで、患者の体内に挿し入れられるカテーテルの先端が常時開口していると、血液の流出や凝固の対策が必要となる等の問題がある。そこで、特公平4−77590号公報(特許文献1)には、先端を閉塞したカテーテルの周壁部分に、スリット状の連通孔を設けた弁付カテーテルが提案されている。かかる連通孔では、カテーテルの内腔を通じて正圧又は吸引圧(陰圧)が及ぼされた際に、内外の圧力差でスリット弁が開いて連通孔が開口することで弁機能が発揮されるようになっている。
【0004】
ところが、このような従来構造の弁付カテーテルの連通孔には、一般に円形断面とされた周壁部分に対して長さ方向にのびるスリット弁が形成されていることから、正圧が及ぼされた際に外方に開く作動は安定して生じるものの、吸引圧が及ぼされた際には連通孔の両端面が互いに押し合うようにして突っ張ってしまって内方に開き難いという問題があった。
【0005】
なお、かかる問題に対処するために、カテーテルの周壁部分を薄肉として、吸引圧作用時における連通孔の両側部分における突っ張りによる抵抗力を小さくすることも考えられる。しかし、カテーテルの周壁部分を薄肉にすると、薄肉により変形し易くなった周壁部分が吸引圧作用時に容易に潰れてしまって、カテーテル内が遮断されることにより、目的とする血液等の吸引処置が出来なくなってしまうおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の解決課題とするところは、吸引圧作用時におけるカテーテルの潰れを防止しつつ、吸引圧作用により連通孔が安定してスムーズに開くようにした、新規な構造の弁付カテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、先端が閉塞された可撓性のカテーテル本体の周壁部分に、スリット弁を備えた連通孔が形成されている弁付カテーテルであって、
前記カテーテル本体の周壁部分の厚さ寸法が先端部分と基端側部分とで異ならされており、該先端部分が該基端側部分よりも薄肉とされている一方、該カテーテル本体
における該先端部分の周壁部分の内周面上に突出形成されて吸引圧作用時に該
先端部分の潰れ変形を制限することにより該
先端部分内に連通領域を維持する突状部
と、該突状部による該カテーテル本体
における該先端部分の潰れ変形の制限状態下で該
先端部分内に維持される該連通領域の周壁部分に前記連通孔が形成されている弁付カテーテルを、特徴とする。
【0009】
本態様の弁付カテーテルでは、吸引圧作用によりカテーテルが変形した際にもカテーテルが完全に潰れてしまうことがなく、カテーテルの内腔に維持される連通領域を通じて連通孔からの吸引処置を行なうことが可能とされる。
【0010】
しかも、かかる連通領域の周壁部分に連通孔が形成されていることから、周壁部分を薄肉にする等してスリット弁が吸引圧作用で安定して開き易い構造を、併せて実現することができる。
さらに、本態様では、厚肉の周壁部分を備えた基端側部分で、手技による優れた操作性や吸引圧に対抗する形状安定性を確保しつつ、薄肉の周壁部分を備えた先端部分で、正圧や吸引圧の作用に伴うスリット弁の開作動の安定性を達成することができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る弁付カテーテルであって、前記カテーテル本体の材質を、ショアA硬さ70〜100としたものである。
【0012】
このようなショアA硬さを採用することで、カテーテルにおける手技の操作性を良好にすることが出来るのであり、そこにおいて、前述のとおりスリット弁を備えた連通孔とカテーテル内腔の連通領域を維持する突状部とを組み合わせて採用したことで、輸液等の注入や血液等の吸引も容易に且つ確実に行うことが出来るのである。
【0013】
本発明の第3の態様は、前記第1又は第2の態様に係る弁付カテーテルであって、前記連通孔が前記カテーテル本体の長さ方向に延びて形成されていると共に、
前記突状部が該カテーテル本体の
前記基端側部分を除く前記先端部分だけに設けられているものである。
【0014】
本態様の弁付カテーテルにおいては、連通孔と突状部とが、カテーテルの長さ方向で少なくとも一部において同じ長さ領域に形成されていることから、突状部により連通孔の形成領域における吸引圧作用時の潰れが一層効果的に防止されることとなる。
【0015】
本発明の第4の態様は、前記第1〜3の何れかの態様に係る弁付カテーテルであって、前記突状部が、山形の中実構造とされているものである。
【0016】
本態様の弁付カテーテルにおいては、山形の中実構造とされた突状部を採用することにより、突状部によるカテーテル周壁部分の変形剛性の向上と、それに伴う吸引圧作用時におけるカテーテル内腔の潰れ変形の制限が一層効果的に達成されることとなる。なお、突状部の山形表面は、滑らかな湾曲形状とすることが望ましく、それによって、吸引圧作用時のカテーテル周壁部分の変形により突状部がカテーテル内腔の対向周壁部に対して干渉した場合にも、引っ掛かりや磨耗などの不具合が効果的に回避される。
【0017】
本発明の第5の態様は、前記第1〜4の何れかの態様に係る弁付カテーテルであって、前記突状部が吸引圧作用時に前記カテーテル本体の周壁部分の対向内面に当接するようになっていると共に、該突状部と該周壁部分の対向内面との当接部分を周方向に外れた位置に前記連通孔が設けられているものである。
【0018】
本態様の弁付カテーテルにおいては、吸引圧作用時に突状部がカテーテル内腔の対向周壁部に当接することによって、カテーテルの完全潰れによる内腔の遮断が一層確実に防止されることとなる。
【0019】
本発明の第6の態様は、前記第1〜5の何れかの態様に係る弁付カテーテルであって、前記カテーテル本体が少なくとも前記連通孔の形成領域において円形の外周面とされており、略一定の厚さ寸法で広がる薄肉部と前記突状部が形成された厚肉部とを有していると共に、該薄肉部に前記連通孔が形成されているものである。
【0020】
本態様の弁付カテーテルにおいては、血管や胸腔等の体内へ挿し入れて操作する際に体組織へ接触する外周面が円形とされていることにより、体組織への悪影響が軽減されると共に、カテーテル操作性も良好となる。また、突状部を構成する厚肉部を外れた薄肉部に対して連通孔が形成されていることから、正圧や吸引圧の作用に伴うスリット弁の開作動も一層容易に且つ安定して発生する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に従う構造とされた弁付カテーテルでは、吸引圧作用時にスリット弁が安定して開くようにスリット弁の形成部分を薄肉等としても、吸引圧による周壁部分の変形が突状部で制限されてカテーテル内腔に連通領域が維持される。それ故、正圧作用時だけでなく吸引圧作用時にも安定して開くスリット弁を、吸引圧作用時のカテーテル周壁の潰れ変形による内腔の遮断を防止してカテーテル内腔の連通状態を維持しつつ、実現することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1〜3には、本発明の第1の実施形態としての弁付カテーテル10が示されている。なお、見易さのため、
図2は縮尺を拡大して示す。また、以下の説明において、先端側とは
図1中の上方向を、基端側とは
図1中の下方向を示す。この弁付カテーテル10は、例えば患者の血管に対して先端側から挿し入れられて、薬液や栄養液等を血管内に注入したり、血管から血液を吸引して採取したりするのに用いられる。
【0026】
より具体的には、弁付カテーテル10は、単一の内腔12を有する管形状のカテーテル本体14から構成されている。
図1〜3には、弁付カテーテル10の要部である先端側だけが示されているが、患者の血管内で目的とする位置まで先端部分を挿し入れることができる長さのカテーテル本体14が用いられている。なお、カテーテル本体14の材質は特に限定されるものでないが、軟質のポリウレタンやシリコーン等の弾性材料で形成されており、血管等に挿し入れることができるように適度な可撓性を有している。
【0027】
なお、カテーテル本体14の基端側の端部では、内腔12が開口されており、そこに薬液注入ポートや血液吸引ポート等の適当なポートが接続されるようになっている。一方、カテーテル本体14の先端側の端部は、閉塞部16によって密閉状態とされており、内腔12の先端開口が閉塞されている。なお、この閉塞部16は、カテーテル本体14の周壁部分と一体成形されていても良いし、例えば内腔12が開口されたカテーテル本体14の先端に対して別体の蓋部材を固着して閉塞することによって構成されていても良い。
【0028】
また、本実施形態のカテーテル本体14は、その略全長に亘って略一定の外径寸法を有する円形外周面を有している。そして、カテーテル本体14の内部には、中心軸上を延びるように円形断面の内腔12が形成されている。これにより、内腔12の周壁は円筒形状とされているが、
図3に示されているように、その厚さ寸法が、カテーテル本体14の先端部分18において基端側部分と異ならされており、具体的には、基端側部分よりも薄肉とされている。なお、このような周壁部分の肉厚が基端側と先端側で異なるカテーテル本体14は、例えばカテーテル本体14を構成する樹脂チューブの一部を熱加工により拡径して薄肉の先端部分を形成することも可能であるが、別体形成された薄肉の先端部分を、厚肉の基端側部分の先端側に溶着や接着等で固着して一体化しても良い。
【0029】
すなわち、カテーテル本体14の周壁部分は、その基端から先端部分18に至る殆どの軸方向長さ部分において略一定の厚さ寸法で広がる厚肉の円筒形状とされている一方、先端部分18だけが略一定の厚さ寸法で広がる薄肉の円筒形状とされている。そして、この薄肉とされた先端部分18の周壁部分において、薬液や血液等が流出入される連通孔20が形成されている。
【0030】
かかる連通孔20は、カテーテル本体14の周壁部分に対して、管軸方向(カテーテル本体14の長さ方向)に延びる直線状スリットにより形成されており、外力が及ぼされていない状態では閉塞状態に保持されている。そして、連通孔20を構成するスリットと、その両側に位置する周壁部分とにより、弾性変形に基づいて連通孔20を開閉するスリット弁22が構成されている。
【0031】
すなわち、このスリット弁22では、カテーテル本体14の内腔12に正圧が及ぼされた際、スリットを挟んだ両側の周壁部分が外方に弾性変形するようになっている。そして、スリットの両側が外方に開くように相互に離隔することで、連通孔20が連通状態で現れるようになっている。一方、カテーテル本体14の内腔12に吸引圧が及ぼされた際には、スリットを挟んだ両側の周壁部分が内方に弾性変形して、スリットの両側が内方に開くように相互に離隔することで、連通孔20が連通状態で現れるようになっている。なお、カテーテル本体14への正圧や吸引圧の作用が解除されて、内腔12と外部との圧力差がなくなると、スリット弁22を構成するスリットの両側の周壁部分が弾性により元形状に復元して相互に密着し、連通孔20が遮断状態とされる。
【0032】
また、カテーテル本体14の先端部分18の周壁部分には、連通孔20を周方向に外れた位置において内周面上に突出する突状部24が形成されている。この突状部24は、
図2に示された横断面において、滑らかに先細となる山形状を有しており、
図3に示されているように、カテーテル本体14の軸方向に略一定横断面形状で延びている。なお、突状部24の大きさや形状は特に限定されるものでないが、周壁部分を過度に変形し難くしないように、また、内腔12の流通断面積を過度に小さくしないように、周方向で半周以下の大きさとされることが望ましく、突出高さも内腔12の内径の2/3以下に設定することが望ましい。
【0033】
特に本実施形態では、周壁部分が薄肉とされたカテーテル本体14の先端部分18において、その全長に僅かに至らない長さで連通孔20が形成されていると共に、突状部24が全長に亘って形成されている。これにより、カテーテル本体14の長さ方向において、連通孔20の形成領域と略同じ領域に亘って延びる長さで、突状部24が長手突形状をもって形成されている。また、本実施形態の突状部24は、カテーテル本体14の周壁部分と一体形成されて、中実構造とされている。
【0034】
更にまた、先端部分18は、突状部24により周上で部分的に厚肉とされた周壁部分(厚肉部)を有している。そして、この突状部24を周方向で外れた位置に形成された連通孔20は、突状部24で厚肉とされていない薄肉の周壁部分(薄肉部)に位置して形成されている。特に本実施形態では、
図2に示されているように、連通孔20と突状部24とが、周上で略90度離れた位置に形成されている。
【0035】
従って、このような構造とされた弁付カテーテル10を用いて、例えば患者の静脈に薬液を供給する際には、先ず患者の切開部位を通じて先端側から静脈に挿し入れ、弁付カテーテル10の先端部分18を薬液供給部位に位置させる。なお、弁付カテーテル10の静脈への挿入は、静脈内にイントロデューサを挿し入れて行っても良い。
【0036】
そして、先端側を患者の静脈に挿し入れた弁付カテーテル10の基端側ポートに注射器や薬液パック等を接続して、注射器による加圧や薬液パックに及ぼされる大気圧により、静脈内の圧力より大きい正圧の薬液を内腔12に導き入れる。これにより、弁付カテーテル10の先端部分18に形成されたスリット弁22が外方に開いて連通状態とされた連通孔20を通じて、薬液を内腔12から静脈内に流出させて供給することが出来る。
【0037】
この際、カテーテル本体14の周壁部分は、内腔12内の正圧により円筒形状に維持されて流体流路が安定して確保される。また、周壁部分が薄肉とされた先端部分18も、突状部24で強度が向上されることにより、弁付カテーテル10を患者の静脈に挿し入れる際の手技による操作も良好とされる。
【0038】
一方、弁付カテーテル10を患者の静脈に挿し入れた状態で、血液の採取や逆血確認を行うには、弁付カテーテル10の基端側ポートに注射器を接続してプランジャを引く等して内腔12に吸引圧を及ぼす。これにより、弁付カテーテル10の先端部分18に形成されたスリット弁22が内方に開いて連通状態とされた連通孔20を通じて血液を内腔12に流入させることが出来る。
【0039】
この際、スリット弁22が形成された先端部分18は、周壁部分が薄肉とされていることから、内腔12の吸引圧作用によりスリット弁22が安定して開作動することとなる。
【0040】
しかも、かかる先端部分18は、そこに形成された突状部24によって強度が向上されていることから、内腔12に及ぼされる吸引圧によって完全に潰れてしまうことが防止される。仮に、かかる吸引圧により、内腔12の対向内面が当接するまで変形した場合でも、
図4に示されているように、突状部24の突出先端部分が径方向の対向内面に当たることにより、周壁部分におけるそれ以上の潰れ変形が効果的に防止される。特に、本実施形態では、突状部24の突出先端部分と内腔12の周壁部分との当接部分を周方向に外れた位置に連通孔20が設けられていることから、連通孔20が突状部24により閉塞されることが回避される。
【0041】
そして、このように吸引圧による周壁部分の潰れ変形が制限されることにより、たとえ周壁部分における連通孔20の形成部位を薄肉にしても、突状部24により内腔12の連通領域25が安定して維持される。ここにおいて、内腔12におけるカテーテル本体14の先端部分18に対応する領域が連通領域25とされている。かかる連通領域25は、吸引圧下においても内腔12の基端側と連通される領域であり、即ち、吸引圧下においても連通領域25は先端部分18に形成された突状部24によって完全に閉塞されることが回避されて、連通状態として維持され得る。また、かかる連通領域25の周壁部分に連通孔20が形成されていることから、目的とする吸引圧作用による採血処置を容易に行なうことができるのである。
【0042】
また、周壁部分における連通孔20の形成部位を薄肉にしてスリット弁22を安定して開作動させることができることから、カテーテル本体14として、ショアA硬さ70〜100、好ましくは80〜90(日本工業規格(JIS)K6253に準拠)の材質を採用することが出来る。それによって、弁付カテーテル10における手技の操作性を一層向上させることが可能となる。要するに、硬度の高い材質を採用した場合でも、カテーテル本体14におけるスリット弁22における連通状態と遮断状態への切換作動が何れも安定して行われるのである。
【0043】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はかかる実施形態の具体的な記載によって限定されるものでない。例えば、カテーテル本体14に対してスリット弁22を備えた連通孔20や突状部24を複数設けることも可能である。複数の突状部24を設けた弁付カテーテルの具体例を、第2〜4の実施形態として、
図5〜7に示す。これら
図5〜7に示された何れの実施形態の弁付カテーテル26,28,30も、第1の実施形態の弁付カテーテル10と同様に、本発明の作用効果を発揮し得る。なお、第1の実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、図中にそれぞれ第1の実施形態と同じ符号を付することにより、詳細な説明を省略する。
【0044】
図5に示された第2の実施形態としての弁付カテーテル26では、2つの突状部24,24が、カテーテル本体14の先端部分18における周壁部分の内周面に突出形成されている。特に本実施形態では、二つの突状部24,24が、カテーテル本体14の中心軸を挟んで径方向に対向位置しており、かかる対向方向に直交する径方向線上に位置してスリット弁22が形成されている。
【0045】
また、
図6に示された第3の実施形態としての弁付カテーテル28では、2つの突状部24,24が周方向に偏倚して設けられており、それら二つの突状部24,24の周方向間隔が周方向両側で異なっている。なお、スリット弁22の形成位置も、二つの突状部24,24の周方向間の中央位置よりも周方向一方の側に偏倚している。
【0046】
更にまた、
図7に示された第4の実施形態としての弁付カテーテル30では、3つの突状部24,24,24が周方向で互いに所定距離を隔てて形成されている。特に本実施形態では、3つの突状部24,24,24が、周方向で等間隔に設けられていると共に、2つの突状部24,24の周方向間の略中央に位置してスリット弁22が形成されている。
【0047】
これら第2〜4の実施形態に示されているように、複数の突状部を採用する場合には、吸引圧作用時に突状部が互いに当接することによってカテーテル本体14の周壁部分の潰れ変形が制限される。それ故、第1の実施形態のように1つの突状部を設ける場合に比して、吸引圧作用時にも連通領域25をより安定して確保し易くなり、スリット弁22を設ける位置の設計自由度も大きくなる。また、複数の突状部を採用する場合には、1つの突状部を採用する場合に比して、突状部の突出高さや大きさを小さくすることも可能になる。
【0048】
なお、上記第2〜4の実施形態では、複数の突状部が互いに同じ大きさと形状で設けられていたが、複数の突状部を採用する場合には、異なる大きさや形状の突状部を組み合わせても良い。スリット弁22を備えた連通孔20も、周方向で各隣り合う突状部間に設けることも可能である。
【0049】
さらに、突状部24は、スリット弁22の形成により吸引圧で潰れ変形し易くなった先端部分18の変形を制限し得る位置に設けられていれば良く、第1の実施形態のように連通孔20の全長に亘る軸方向領域に突状部24を形成する必要はない。例えば、
図8に示された第5の実施形態としての弁付カテーテル32のように、連通孔20の基端側部分だけに対応する位置に、突状部24を形成しても良い。即ち、スリット弁22の先端側部分は、閉塞部16によって大きな変形剛性が発揮されることから、スリット弁22の基端側の周壁部分だけを、突状部24で吸引圧作用時に変形制限することにより、周壁部分の完全な潰れ変形を防止することも可能である。なお、スリット弁22の形成位置よりも基端側に連続した連通領域25を確保し得る態様であれば、突状部24を、スリット弁22の形成位置から軸方向に外れた位置に形成することもできる。
【0050】
また、前記実施形態では、カテーテル本体14の周壁部分の肉厚が、先端部分18において薄肉とされていたが、カテーテル本体14の材質や要求される特性等を考慮して、例えば
図8に示されているように、カテーテル本体14の全長に亘って略一定の肉厚を設定しても良い。
【0051】
更にまた、突状部24は、中空構造とすることも可能であり、三角断面などの各種形状を採用することも可能である。また、前記実施形態では、突状部24は押出成形によりカテーテル本体14と一体に形成されていたが、突状部24をカテーテル本体14と別体形成してカテーテル本体14の周壁部分の内周面に固着した構造としても良い。
【0052】
また、突状部24は、内腔12内で対向位置する周壁内面や他の突状部24に対して、前記実施形態に記載のように所定距離を隔てて対向している他、吸引圧作用前に当初から対向方向で当接していても良い。
【0053】
さらに、カテーテル本体14の内部をそれぞれ管軸方向に延びる内腔を複数形成したダブルルーメン構造やマルチルーメン構造の弁付カテーテルに対しても、本発明を適用することが可能である。その場合には、全てのルーメンの周壁部分に連通孔20と突状部24を設ける必要もない。
【0054】
また、前述のように、カテーテル本体14の先端部分18はカテーテル本体14の基端側部分と別体で形成されて固着されていても良く、更に、先端部分18の突状部24も先端部分18と別体で形成されて固着されていても良い。この際、カテーテル本体14の基端側部分、先端部分18、突状部24のショアA硬度を別個に設定することも可能である。例えば、カテーテル本体14の基端側部分に比べて先端部分18の硬度を小さくすることにより、血管内壁等の損傷のおそれが低減され得る。さらに、先端部分18に比べて突状部24の硬度を大きくすることにより、硬度が小さくされた先端部分18の潰れが回避されて、連通領域25が安定して維持され得る。
【0055】
更にまた、前記実施形態では、カテーテル本体14は略全長に亘って円形外周面を有していたが、必ずしもその必要はない。さらに、必ずしもカテーテル本体14の略全長に亘って略一定の外径寸法とされる必要もなく、カテーテル本体14では部分的に縮径部や拡径部が設けられていても良い。