特許第6029095号(P6029095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人物質・材料研究機構の特許一覧

特許6029095UV光励起黄色発光材料、その製造方法及び発光装置
<>
  • 特許6029095-UV光励起黄色発光材料、その製造方法及び発光装置 図000002
  • 特許6029095-UV光励起黄色発光材料、その製造方法及び発光装置 図000003
  • 特許6029095-UV光励起黄色発光材料、その製造方法及び発光装置 図000004
  • 特許6029095-UV光励起黄色発光材料、その製造方法及び発光装置 図000005
  • 特許6029095-UV光励起黄色発光材料、その製造方法及び発光装置 図000006
  • 特許6029095-UV光励起黄色発光材料、その製造方法及び発光装置 図000007
  • 特許6029095-UV光励起黄色発光材料、その製造方法及び発光装置 図000008
  • 特許6029095-UV光励起黄色発光材料、その製造方法及び発光装置 図000009
  • 特許6029095-UV光励起黄色発光材料、その製造方法及び発光装置 図000010
  • 特許6029095-UV光励起黄色発光材料、その製造方法及び発光装置 図000011
  • 特許6029095-UV光励起黄色発光材料、その製造方法及び発光装置 図000012
  • 特許6029095-UV光励起黄色発光材料、その製造方法及び発光装置 図000013
  • 特許6029095-UV光励起黄色発光材料、その製造方法及び発光装置 図000014
  • 特許6029095-UV光励起黄色発光材料、その製造方法及び発光装置 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029095
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】UV光励起黄色発光材料、その製造方法及び発光装置
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/80 20060101AFI20161114BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20161114BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20161114BHJP
【FI】
   C09K11/80CQG
   C09K11/08 A
   C09K11/08 J
   H01L33/00 Z
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-104956(P2012-104956)
(22)【出願日】2012年5月1日
(65)【公開番号】特開2013-231151(P2013-231151A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2015年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】島村 清史
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ビジョラ エンカルナシオン アントニア
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2011/049102(JP,A1)
【文献】 特開2012−001381(JP,A)
【文献】 特開2002−293693(JP,A)
【文献】 特開2011−213552(JP,A)
【文献】 再公表特許第2012/014439(JP,A1)
【文献】 Optics and spectroscopy,2009, Vol.106, No.3,Page.365-374
【文献】 Journal of Solid State Chemistry,2007, Vol.180, No.4,Page.1165-1170
【文献】 Journal of the Electrochemical Society,2008, Vol.155, No.6,Page.B517-B520
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00− 11/89
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テルビウムの一部がセリウムで置換されており、かつ、アルミニウムの一部がスカンジウムで置換されている、セリウム添加テルビウム・スカンジウム・アルミニウム・ガーネット型単結晶であることを特徴とするUV光励起黄色発光材料。
【請求項2】
Tb元素とCe元素の総モル数に対して5mol%以下の組成比でCe元素が添加されていることを特徴とする請求項1に記載のUV光励起黄色発光材料。
【請求項3】
スカンジウムの一部がテルビウム、セリウム、イットリウム、ルテチウム、イッテルビウム、ツリウムのいずれか1種又は2種以上で置換されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のUV光励起黄色発光材料。
【請求項4】
前記スカンジウムの一部が+2価と+4価の元素の組み合わせで置換されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のUV光励起黄色発光材料。
【請求項5】
下記化学式(I)で表されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のUV光励起黄色発光材料。
<化1>
((Tb1−zCe1−y(M1−xAl12−w…(I)
上記式(I)中、LはSc、Y、Lu、Yb、Tm、Mg、Ca、Hf又はZrのいずれか1種又は2種以上を表し、MはScを表し、NはTb、Ce、Y、Lu、Yb、Tm、Mg、Ca、Hf又はZrのいずれか1種又は2種以上を表す。a、b、c、x、y、z及びwはそれぞれ、2.5≦a≦3.5、0<b≦2.5、2.5≦c≦5.5、0≦x<1、0≦y≦0.5、0.0001≦z≦0.05、0≦w≦0.5を満たす。
【請求項6】
酸化テルビウム、酸化スカンジウム、酸化アルミニウム、及び酸化セリウムを含む粉末原料を調整する工程と、
前記粉末原料を加熱溶解して得られた溶液から種結晶を引き上げて、融液成長法により、Tb元素とCe元素の総モル数に対するCe元素の組成比が5mol%以下となるようにセリウム添加テルビウム・スカンジウム・アルミニウム・ガーネット型単結晶を育成する工程と、
を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のUV光励起黄色発光材料の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のUV光励起黄色発光材料からなる板材と、光出射面を有するUV発光素子と、を有し、前記板材の一面と前記光出射面が対向するように、前記UV発光素子に対して前記UV光励起黄色発光材料が配置されていることを特徴とする発光装置。
【請求項8】
前記UV発光素子の発光ピーク波長が250〜425nmの範囲にあることを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記UV発光素子の光出射面に接してUV光励起黄色発光材料が配置されていることを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項10】
前記UV発光素子の光出射面に離間してUV光励起黄色発光材料が配置されていることを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項11】
前記UV光励起黄色発光材料に接してUV光励起青色発光材料が配置されていることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項12】
前記UV光励起青色発光材料がCe:RSiO(RはLu、Y、Gdのいずれか1種又は2種以上)単結晶であることを特徴とする請求項11に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UV光励起黄色発光材料、その製造方法及び発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明応用の需要の増加とともに、LED(Light Emitting Diode)の高輝度化が進んでいる。
高輝度LEDでは、光強度の高い光を放出するとともに、大電流に伴う熱が多量に放出される。LEDの各構成部材は、長期間、強い光に曝され、高温下に配置されることとなるので、高い耐光性及び高い耐熱性を具備することが必要とされる。
【0003】
代表的な白色発光装置(以下、白色LEDともいう。)には、大別して、次の3つのタイプがある(非特許文献1参考)。
第1のタイプは、一つのパッケージの中に赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子を備えた白色LEDである。
このタイプは、一つのパッケージの中にエポキシ樹脂等の結合剤(バインダー)を必要とせず、発光素子のみで構成できるので、高い耐光性及び高い耐熱性を具備するようにできる。しかし、3色の発光素子の輝度・色調の調整が難しく、回路構成が複雑となり、製造コストが高くなるという問題がある。
【0004】
第2のタイプは、一つのパッケージの中に紫外(以下、UVともいう。)発光素子と、発光素子を覆うエポキシ樹脂等の結合剤(バインダー)中に紫外光励起赤色蛍光体、紫外光励起緑色蛍光体、紫外光励起青色蛍光体を分散させた白色LEDである。
また、第3のタイプは、一つのパッケージの中に青色発光素子と、発光素子を覆うエポキシ樹脂等の結合剤(バインダー)中に青色光励起赤色蛍光体、青色光励起緑色蛍光体を分散させた白色LEDである。
【0005】
これらのタイプは、一つのパッケージの中に1個の発光素子しか用いない構成なので、第1のタイプと比較して輝度・色調調整が容易であり、回路を単純化でき、製造コストを安くできるという利点がある。また、色温度の調整幅も広くできるという利点がある。
しかし、これらのタイプはいずれも、バインダーを備える構成であり、バインダーが、長期間、強い光に曝され、高温下に配置されることにより、劣化し、着色を生じ、光の透過率を低下させ、発光効率を低下させるという問題がある。
また、大電流を流し、高輝度で発光させた場合、バインダーの劣化だけでなく、蛍光体の特性低下の発生も生じる場合がある(非特許文献2)。
【0006】
白色LEDは、前記3色の発光色を用いる構成に限られるものではなく、白色のCIE色度座標(0.33、0.33)を通過する補色関係にある2色の発光色を用いて構成してもよく、例えば一つのパッケージの中に青色発光素子と、エポキシ樹脂等の結合剤(バインダー)中に分散させた粒状の青色光励起黄色蛍光体を組み合わせた白色LEDがあるが(特許文献1)、このような白色LEDでも、バインダーの劣化による発光効率の低下という問題がある。
【0007】
エポキシ樹脂の劣化に対して、代わりにシリコン系の樹脂を使う試みもなされているが、根本的な解決には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−155891号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「高輝度LED材料のはなし」日刊工業新聞社刊、p44(2005)
【非特許文献2】Materials Science and Engineering R,71(2010)1−34.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、大電流を流し、高輝度で発光させても、安定して高効率で黄色発光させることが可能なUV光励起黄色発光材料、その製造方法及び長期間、高効率で高輝度発光させることが可能な黄色発光又は白色発光可能な発光装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本研究者は、様々な実験を繰り返すことにより、セリウムを添加したテルビウム・スカンジウム・アルミニウム・ガーネット(以下、Ce:TSAGとも表記する)型単結晶を新規に開発した。この単結晶はUV光を励起光として高輝度で安定して黄色発光させることが可能であった。そして、この単結晶をUV発光素子に組み合わせることにより、エポキシ樹脂を用いることなく、高輝度・高効率、回路も単純で製造コストも安い黄色発光又は白色発光可能な発光装置を提供できることに想到して、本研究を完成した。
本発明は、以下の構成を有する。
【0012】
(1)セリウム添加テルビウム・スカンジウム・アルミニウム・ガーネット型単結晶であることを特徴とするUV光励起黄色発光材料。
【0013】
(2)Tb元素とCe元素の総モル数に対して5mol%以下の組成比でCe元素が添加されていることを特徴とする(1)に記載のUV光励起黄色発光材料。
(3)スカンジウムの一部がテルビウム、セリウム、イットリウム、ルテチウム、イッテルビウム、ツリウムのいずれか1種又は2種以上で置換されていることを特徴とする(1)又は(2)に記載のUV光励起黄色発光材料。
【0014】
(4)前記スカンジウムの一部が+2価と+4価の元素の組み合わせで置換されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のUV光励起黄色発光材料。
(5)下記化学式(I)で表されることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のUV光励起黄色発光材料。
【0015】
<化1>
((Tb1−zCe1−y(M1−xAl12−w…(I)
【0016】
上記式(I)中、LはSc、Y、Lu、Yb、Tm、Mg、Ca、Hf又はZrのいずれか1種又は2種以上を表し、MはScを表し、NはTb、Ce、Y、Lu、Yb、Tm、Mg、Ca、Hf又はZrのいずれか1種又は2種以上を表す。a、b、c、x、y、z及びwはそれぞれ、2.5≦a≦3.5、0≦b≦2.5、2.5≦c≦5.5、0≦x≦1、0≦y≦0.5、0.0001≦z≦0.05、0≦w≦0.5を満たす。
【0017】
(6)酸化テルビウム、酸化スカンジウム、酸化アルミニウム、及び酸化セリウムを含む粉末原料を調整する工程と、前記粉末原料を加熱溶解して得られた溶液から種結晶を引き上げて、融液成長法により、Tb元素とCe元素の総モル数に対するCe元素の組成比が5mol%以下となるようにセリウム添加テルビウム・スカンジウム・アルミニウム・ガーネット型単結晶を育成する工程と、を有することを特徴とするUV光励起黄色発光材料の製造方法。
【0018】
(7)(1)〜(5)のいずれかに記載のUV光励起黄色発光材料からなる板材と、光出射面を有するUV発光素子と、を有し、前記板材の一面と前記光出射面が対向するように、前記UV発光素子に対して前記UV光励起黄色発光材料が配置されていることを特徴とする発光装置。
(8)前記UV発光素子の発光ピーク波長が250nm〜425nmの範囲にあることを特徴とする(7)に記載の発光装置。
(9)前記UV発光素子の光出射面に接してUV光励起黄色発光材料が配置されていることを特徴とする(7)に記載の発光装置。
【0019】
(10)前記UV発光素子の光出射面に離間してUV光励起黄色発光材料が配置されていることを特徴とする(7)に記載の発光装置。
(11)前記UV光励起黄色発光材料に接してUV光励起青色発光材料が配置されていることを特徴とする(7)〜(10)のいずれかに記載の発光装置。
(12)前記UV光励起青色発光材料がCe:RSiO(RはLu、Y、Gdのいずれか1種又は2種以上)単結晶であることを特徴とする(11)に記載の発光装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明のUV光励起黄色発光材料は、セリウム添加テルビウム・スカンジウム・アルミニウム・ガーネット型単結晶である構成なので、大電流を流し、UV光励起により、高輝度で発光させても、安定して高効率で黄色発光させることができる。
【0021】
本発明のUV光励起黄色発光材料の製造方法は、酸化テルビウム、酸化スカンジウム、酸化アルミニウム、及び酸化セリウムを含む粉末原料を調整する工程と、前記粉末原料を加熱溶解して得られた溶液から種結晶を引き上げて、融液成長法により、Tb元素とCe元素の総モル数に対するCe元素の組成比が5mol%以下となるようにセリウム添加テルビウム・スカンジウム・アルミニウム・ガーネット型単結晶を育成する工程と、を有する構成なので、長期間安定して、高輝度・高効率で黄色発光可能な発光材料を容易に製造することができる。
【0022】
本発明の発光装置は、先に記載のUV光励起黄色発光材料からなる板材と、光出射面を有するUV発光素子と、を有し、前記板材の一面と前記光出射面が対向するように、前記UV発光素子に対して前記UV光励起黄色発光材料が配置されている構成なので、前記UV発光素子からの発光が前記UV光励起黄色発光材料に入射され、前記UV発光素子からの発光が前記UV光励起黄色発光材料を励起して発光させ、バインダーを用いることなく、長期間、高効率・高輝度で黄色発光させることが可能な発光装置を提供することができる。また、回路を単純化でき、製造コストを安くできる。
【0023】
本発明の発光装置は、前記UV光励起黄色発光材料に接してUV光励起青色発光材料が配置されている構成なので、前記UV発光素子からの発光が前記UV光励起黄色発光材料に加えて、前記UV光励起青色発光材料を励起して発光させ、エポキシ樹脂を用いることなく、長期間、高効率・高輝度で白色発光させることが可能な発光装置を提供することができる。また、回路を単純化でき、製造コストが安くできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明のUV光励起黄色発光材料の製造方法の一例を示す工程図である。
図2】本発明の第1の実施形態である発光装置の模式図であり、発光装置の断面図(a)及び発光装置を構成する発光素子及びその周辺部の断面図(b)である。
図3】本発明の第2の実施形態に係る発光装置の模式図であり、発光装置の断面図(a)、発光装置を構成する発光素子及びその周辺部の断面図(b)及び発光装置を構成する発光素子の平面図(c)である。
図4】本発明の第3の実施形態である発光装置の断面図である。
図5】本発明の第4の実施形態である発光装置の断面図である。
図6】本発明の第5の実施形態である発光装置の模式図であり、発光装置の断面図(a)、発光装置を構成する発光素子の断面図(b)である。
図7】本発明の第6の実施形態である発光装置の断面図である。
図8】本発明の第7の実施形態である発光装置の断面図である。
図9】本発明の第8の実施形態である発光装置の断面図である。
図10】本発明の第9の実施形態である発光装置の断面図である。
図11】本発明の第10の実施形態である発光装置の断面図である。
図12】結晶A(実施例1サンプル)の写真である。
図13】結晶A(実施例1サンプル)の蛍光スペクトルである。
図14】結晶A(実施例1サンプル)の励起スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1の実施形態]
<UV光励起黄色発光材料>
まず、本発明の実施形態であるUV光励起黄色発光材料について説明する。
本発明の実施形態であるUV光励起黄色発光材料は、セリウム添加テルビウム・スカンジウム・アルミニウム・ガーネット型単結晶(以下、Ce:TSAG型単結晶とも称する。)である。
【0026】
本発明の実施形態であるUV光励起黄色発光材料は、Tb元素とCe元素の総モル数に対して5mol%以下の組成比でCe元素が添加されていることが好ましい。これにより、250〜425nmの範囲に励起ピーク波長を有し、500〜630nmの範囲に発光ピーク波長を有する黄色発光材料とすることができる。UV光励起黄色発光材料は、250〜425nmの範囲に発光ピーク波長を有するUV発光素子と組み合わせることにより、高輝度・高効率の黄色発光装置とすることができる。
【0027】
本発明の実施形態であるUV光励起黄色発光材料は、スカンジウムの一部がテルビウム、セリウム、イットリウム、ルテチウム、イッテルビウム、ツリウムのいずれか1種又は2種以上で置換されていてもよい。また、前記スカンジウムの一部が+2価と+4価の元素の組み合わせで置換されてもよい。このようにしても、250〜425nmの範囲に励起ピーク波長を有し、500〜630nmの範囲に発光ピーク波長を有する黄色発光材料とすることができる。
【0028】
本発明の実施形態であるUV光励起黄色発光材料は、先に記載の化学式(I)で表されることが好ましい。
式(I)中、LはSc、Y、Lu、Yb、Tm、Mg、Ca、Hf又はZrのいずれか1種又は2種以上を表し、MはScを表し、NはTb、Ce、Y、Lu、Yb、Tm、Mg、Ca、Hf又はZrのいずれか1種又は2種以上を表す。a、b、c、x、y、z及びwはそれぞれ、2.5≦a≦3.5、0≦b≦2.5、2.5≦c≦5.5、0≦x≦1、0≦y≦0.5、0.0001≦z≦0.05、0≦w≦0.5を満たす。
【0029】
上記範囲とすることにより、単結晶作製時のクラックなどの欠陥を抑制できる。また、250〜425nmの範囲に励起ピーク波長を有し、500〜630nmの範囲に発光ピーク波長を有する黄色発光材料とすることができ、UV光励起により、高輝度・高効率で黄色発光させることができる。
【0030】
Tb元素とCe元素の総モル数に対するCe元素の組成比量が5mol%以下となる組成範囲では、Tb元素に対してCe元素を添加することにより、黄色発光を得て、蛍光強度を飛躍的に向上させることができる。一方、Ce元素の組成比を5mol%超とした場合には、濃度消光により、蛍光強度が低下する。
【0031】
<UV光励起黄色発光材料の作製方法>
次に、本発明の実施形態であるUV光励起黄色発光材料の製造方法について説明する。
図1は、本発明の実施形態であるUV光励起黄色発光材料の製造方法の一例を示す工程図である。図1には、UV光励起黄色発光材料(単結晶)育成の為に用いられる結晶引上げ炉20が示されている。結晶引上げ炉20は、イリジウム製ルツポ21と、ルツボ21を収容するセラミック製の筒状容器22と、筒状容器22の周囲に巻回される高周波コイル23とを主として備えている。高周波コイル23は、ルツボ21に誘導電流を生じさせ、ルツボ21を加熱する。
【0032】
結晶引上げ炉20を用いて、融液成長法により、ガーネット型単結晶のUV光励起黄色発光材料2を育成する。
まず、育成すべき単結晶組成に基づく配合率で、Tb粉末、Sc粉末、Al粉末、CeO粉末を湿式混合してから、乾燥して、粉末原料を調整する。この粉末原料には、必要に応じ、他の粉末原料を少なくとも1種以上さらに混合してもよい。なお、湿式混合の代わりに、乾式混合させてもよい。
【0033】
次に、上記粉末原料をルツボ21に詰める。
次に、高周波コイル23に高周波電流を印加して、ルツボ21を加熱し、ルツボ21内の粉末原料を室温から、粉末原料を溶解可能な温度まで加熱する。これにより、粉末原料が溶解され、溶液24が得られる。
【0034】
次に、棒状の結晶引き上げ軸として用いる種結晶25を用意する。種結晶25としては、例えば、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)などのガーネット型単結晶を用いることができる。
【0035】
次に、種結晶25の先端を溶液24に接触させた後、種結晶25を所定の回転数で回転させながら、所定の引上げ速度で引き上げる。
種結晶25の回転数は、好ましくは3〜50rpmとし、より好ましくは3〜10rpmとする。種結晶25の引き上げ速度は、好ましくは0.1〜10mm/hとし、より好ましくは0.5〜3mm/hとする。種結晶25の引上げは、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、不活性ガスとしては、Ar、窒素などを用いることができる。酸素をわずかに混合してもよい。種結晶25を不活性ガス雰囲気下にするためには、密閉ハウジング中に不活性ガスを所定の流量で導入しながら排出すればよい。
【0036】
上記条件で、種結晶25を引き上げることにより、種結晶25の先端にバルク状の育成結晶26を得ることができる。
育成結晶26は、Tbの一部がCeで置換されているセリウム添加テルビウム・スカンジウム・アルミニウム・ガーネット型単結晶であり、上記化学式(I)で表される単結晶であり、本発明の実施形態であるUV光励起黄色発光材料2である。
以上の工程により、本発明の実施形態であるUV光励起黄色発光材料2である育成結晶26を容易に作製することができるとともに、本融液成長法では、育成結晶26の大型化も容易に実現できる。
【0037】
<発光装置>
次に、本発明の第1の実施形態である発光装置について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態である発光装置1の模式図であり、発光装置1の断面図(a)及び発光装置1を構成する発光素子10及びその周辺部の断面図(b)である。
【0038】
図2(a)に示すように、発光装置1は、セラミック基板3と、セラミック基板3上に配置されたUV発光素子(UV−LED)10と、セラミック基板上で、UV発光素子10の周囲に壁状に設けられた本体4とを備えて概略構成されている。
セラミック基板3は、Al等のセラミックからなる板状部材である。表面に、タングステン等の金属からなる配線部31、32がパターン形成されている。
本体4は、セラミック基板3上に形成された白色の樹脂からなる部材であり、その中央部に開口部4Aが形成されている。開口部4Aは、セラミック基板3側から外部に向かって徐々に開口幅が大きくなるテーパ状に形成されている。開口部4Aの内面は、UV発光素子10からの光を外部に向かって反射する反射面40とされている。
【0039】
図2(b)に示すように、UV発光素子10は、そのn側電極15A及びp側電極15Bがセラミック基板3の配線部31、32にバンプ16,16によってセラミック基板3に実装され、電気的に接続されている。
【0040】
<UV発光素子>
UV発光素子10は、250〜425nmの範囲に発光ピーク波長を有する紫外(UV)光を発光させることが可能なフリップチップ型素子が用いられている。材料としては、AlGaN系半導体化合物を用いることができる。
【0041】
図2(b)に示すように、UV発光素子10は、サファイア等からなる素子基板11の第1の主面11aに、バッファ層及びn−GaN:Si層を介したn型AlGaN:Si層12、多重量子井戸構造を備えるAlGaN発光層13、及びp−GaN:Mg層をp型電極側に介したp型AlGaN:Mg層14がこの順に形成されている。n型AlGaN:Si層12の露出部分にはn側電極15Aが、p型AlGaN:Mg層14の表面にはp側電極15Bが、それぞれ形成されている。
【0042】
発光層13は、n型AlGaN:Si層12及びp型AlGaN:Mg層14からキャリアが注入されることにより、UV光を発する。このUV光は、n型AlGaN:Si層12及び素子基板11を透過して、素子基板11の第2の主面11bから出射される。すなわち、素子基板11の第2の主面11bは発光素子10の光出射面である。
なお、光出射面は、UV発光素子の面であって、素子の内部から外部に光出射される面である。特に、出射される光の量が多い面である。
【0043】
本発明の実施形態であるUV光励起黄色発光材料2は、UV発光素子10の光出射面である素子基板11の第2の主面11bに接して、第2の主面11bの全体を覆うように、配置されている。
本発明の実施形態であるUV光励起黄色発光材料2は、単一の単結晶からなる平板状なので、素子基板11に対向する第1の面2aを、素子基板11の第2の主面11bとの間にエポキシ樹脂を介在させることなく、素子基板11に直接接触させて固定することができる。なお、UV光励起黄色発光材料2の固定方法としては、金属片を用いて固定する方法等がある。
ここで、単一の単結晶とは、第2の主面11bと同等もしくはそれ以上の大きさを有し、実質的に全体が一つの単結晶とみなせるものをいう。
第1の面2aを、素子基板11の第2の主面11bとの間にエポキシ樹脂を介在させることなく、素子基板11に直接接触させて固定することにより、UV発光素子10からの光の損失を少なくしてUV光励起黄色発光材料2に入射させることができ、UV光励起黄色発光材料2の発光効率を向上させることができる。
【0044】
<発光装置の発光機構>
図1に示す本発明の第1の実施形態である発光装置で、UV発光素子10に通電すると、配線部31、n側電極15A、及びn型AlGaN:Si層12を介して電子が発光層13に注入され、また配線部32、p側電極15B、及びp型AlGaN:Mg層14を介して正孔が発光層13に注入されて、発光層13がUV発光する。発光層13のUV光は、n型AlGaN:Si層12及び素子基板11を透過して素子基板11の第2の主面11bから出射され、UV光励起黄色発光材料2の第1の面2aに入射する。
【0045】
第1の面2aから入射したUV光は、励起光としてUV光励起黄色発光材料2を励起する。UV光励起黄色発光材料2は、UV発光素子10からのUV光を吸収し、吸収したUV光を例えば500〜630nmの範囲に発光ピーク波長を有する黄色系の光に波長変換する。これにより、発光装置1は黄色光を放射する。
【0046】
本発明の第1の実施形態である発光装置1は、単一の単結晶からなる平板状のUV光励起黄色発光材料2を用い、粒状の蛍光体を保持するエポキシ樹脂等の結合剤(バインダー)を用いない構成なので、結合剤の劣化、特に、高出力の励起光の照射による劣化を抑制でき、発光効率の低下を抑制することができる。
また、粒状の多数の蛍光体を結合した場合に比較して、単一の単結晶からなる平板状のUV光励起黄色発光材料2は表面積を小さくでき、外部環境の影響による特性劣化を抑制できる。
また、単一の単結晶からなる平板状のUV光励起黄色発光材料2を用いる構成なので、UV光励起黄色発光材料2の量子効率を高めて、発光装置の発光効率を高めることができる。
また、本発明の第1の実施形態である発光装置1は、本発明の実施形態であるUV光励起黄色発光材料2であるCe:TSAG型単結晶を用いる構成なので、UV発光素子からのUV光をUV光励起黄色発光材料2に効率よく吸収させて、高量子効率で、黄色系の光を高輝度で発光させることができる。
【0047】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図3は、本発明の第2の実施形態である発光装置の模式図であり、発光装置の断面図(a)、発光装置を構成する発光素子及びその周辺部の断面図(b)及び発光装置を構成する発光素子の平面図(c)である。(a)は、本実施形態に係る発光装置1Aの断面図、(b)は、発光装置1Aを構成するUV発光素子10A及びその周辺部の断面図、(c)は、UV発光素子10Aの平面図である。
【0048】
本発明の第2の実施形態である発光装置1Aは、UV発光素子の発光光を単一の単結晶からなるUV光励起黄色発光材料に入射して波長変換する構成は本発明の第1の実施形態である発光装置1と共通するが、UV発光素子の構成及びUV発光素子に対するUV光励起黄色発光材料の配置位置が第1の実施形態とは異なっている。以下、第1の実施形態について説明したものと同一の機能及び構成を有する発光装置1Aの構成要素については共通する符号を付して説明を省略する。
【0049】
図3(a)及び(b)に示すように、発光装置1Aは、UV発光素子10Aの素子基板11がセラミック基板3側を向くように配置されている。また、UV発光素子10Aの開口部4A側に、Ce:TSAG系の単一の単結晶からなるUV光励起黄色発光材料121が接合されている。また、UV光励起黄色発光材料121としては、本発明の実施形態において記載した組成と同一のものを用いることができる。
【0050】
図3(b)及び(c)に示すように、UV発光素子10Aは、素子基板11、n型AlGaN:Si層12、発光層13、p型AlGaN:Mg層14を有し、さらにp型AlGaN:Mg層14の上にITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)からなる透明電極140を有している。透明電極140の上にはp側電極15Bが形成されている。透明電極140は、p側電極15Bから注入されたキャリアを拡散してp型AlGaN:Mg層14に注入する。
【0051】
UV光励起黄色発光材料121は、図3(c)に示すように、p側電極15B、及びn型AlGaN:Si層12上に形成されたn側電極15Aに対応する部分に切り欠きを有する略四角形状に形成されている。UV光励起黄色発光材料121の組成は、本発明の実施形態におけるUV光励起黄色発光材料の組成と同様である。
【0052】
図3(a)に示すように、UV発光素子10Aのn側電極15Aは、ボンディングワイヤ311によってセラミック基板3の配線部31に接続されている。また、UV発光素子10Aのp側電極15Bは、ボンディングワイヤ321によってセラミック基板3の配線部32に接続されている。
【0053】
以上のように構成されたUV発光素子10Aに通電すると、配線部31、n側電極15A、及びn型AlGaN:Si層12を介して電子が発光層13に注入され、また配線部32、p側電極15B、透明電極140、及びp型AlGaN:Mg層14を介して正孔が発光層13に注入されて、発光層13がUV発光する。
【0054】
発光層13のUV光は、p型AlGaN:Mg層14及び透明電極140を透過して透明電極140の表面140bから出射される。すなわち、透明電極140の表面140bはUV発光素子10Aの光出射面である。透明電極140の表面140bから出射された光は、UV光励起黄色発光材料121の第1の面121aに入射する。
【0055】
第1の面121aからUV光励起黄色発光材料121に入射したUV光は、励起光としてUV光励起黄色発光材料121を励起する。UV光励起黄色発光材料121は、UV発光素子10AからのUV光を吸収し、吸収した光を主として黄色光に波長変換する。より詳細には、UV光励起黄色発光材料121は、発光素子10Aからの250〜425nmの範囲に発光ピーク波長を有するUV光で励起されて500〜630nmの範囲に発光ピーク波長を有する黄色系の光を発する。このように、発光装置1Aは、黄色光を放射する。
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0056】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図4は、本発明の第3の実施形態である発光装置の断面図である。
本発明の第3の実施形態である発光装置1Bは、発光素子の発光光を単一の単結晶からなるUV光励起黄色発光材料に入射して波長変換する構成は第1の実施形態に係る発光装置1と共通するが、UV光励起黄色発光材料の配置位置が第1の実施形態とは異なっている。以下、第1又は第2の実施形態について説明したものと同一の機能及び構成を有する発光装置1Bの構成要素については共通する符号を付して説明を省略する。
【0057】
図4に示すように、発光装置1Bは、セラミック基板3上に、第1の実施形態と同様の構成を有するUV発光素子10を備えている。UV発光素子10は、本体4の開口部4A側に位置する素子基板11(図2(b)参照)の第2の主面11bから本体4の開口部4A側に向かってUV光を出射する。
【0058】
本体4には、その開口部4Aを覆うように、UV光励起黄色発光材料122が接合されている。UV光励起黄色発光材料122は平板状に形成され、本体4の上面4bに結合されている。UV光励起黄色発光材料122としては、本発明の実施形態において記載した各組成のものを用いることができる。また、UV光励起黄色発光材料122は、UV発光素子10よりも大きく、全体が実質的に一つの単結晶である。
【0059】
以上のように構成された発光装置1Bに通電すると、UV発光素子10が発光し、第2の主面11bからUV光励起黄色発光材料122に向かってUV光を出射する。UV光励起黄色発光材料122は、UV発光素子10の出射面に面した第1の面122aから発光素子10のUV光を入射し、このUV光によって励起された黄色光を第2の面122bから外部に放射する。このように、発光装置1Bは、黄色光を放射する。
【0060】
本実施形態によっても、第1の実施形態について説明したのと同様の作用及び効果が得られる。また、UV発光素子10とUV光励起黄色発光材料122とが離間しているので、UV発光素子10の出射面にUV光励起黄色発光材料を接合する場合に比較して大型のUV光励起黄色発光材料122を用いることができ、発光装置1Bの組み付けの容易性が高まる。
【0061】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
図5は、本発明の第4の実施形態である発光装置の断面図である。
図5に示すように、本発明の第4の実施形態である発光装置1Cは、UV発光素子と、UV発光素子が実装される基板及びUV光励起黄色発光材料との位置関係が第3の実施形態とは異なっている。以下、第1、第2又は第3の実施形態について説明したものと同一の機能及び構成を有する発光装置1Cの構成要素については共通する符号を付して説明を省略する。
【0062】
本発明の第4の実施形態である発光装置1Cは、白色の樹脂からなる本体5と、本体5に形成されたスリット状の保持部51に保持された透明基板6と、本体5の開口部5Aを覆うように配置されたCe:TSAG系の単一の単結晶からなるUV光励起黄色発光材料122と、透明基板6のUV光励起黄色発光材料122側の面とは反対側の面に実装されたUV発光素子10Aと、UV発光素子10Aに通電するための配線部61,62とを備えて構成されている。UV光励起黄色発光材料122の組成は、本発明の実施形態に係るUV光励起黄色発光材料と同様である。
【0063】
本体5は、その中心部に曲面上の凹部が形成され、この凹部の表面がUV発光素子10Aの発光光をUV光励起黄色発光材料122側に反射する反射面50とされている。
透明基板6は、例えばシリコーン樹脂やアクリル樹脂、PET等透光性をもつ樹脂、又はガラス状物質、サファイア、セラミックス、石英、AlN等単結晶若しくは多結晶からなる透光性をもつ部材からなり、UV発光素子10AのUV光を透過させる透光性及び絶縁性を有している。また、透明基板6には、配線部61,62の一部が接合されている。UV発光素子10Aのn側電極及びp側電極と配線部61,62の一端部との間は、ボンディングワイヤ611,621により電気的に接続されている。
【0064】
以上のように構成された発光装置1Cに通電すると、UV発光素子10Aが発光し、UV光の一部は透明基板6を透過してUV光励起黄色発光材料122の第1の面122aに入射する。また、UV光の他の一部は本体5の反射面50で反射して透明基板6を透過し、UV光励起黄色発光材料122の第1の面122aに入射する。
UV光励起黄色発光材料122に入射したUV光はUV光励起黄色発光材料122に吸収されて波長変換される。このように、発光装置1Cは、UV光励起黄色発光材料122で波長変換された黄色光を放射する。
【0065】
本実施形態によっても、第3の実施形態の効果と同様の効果がある。また、UV発光素子10AからUV光励起黄色発光材料122側とは反対側に出射した光が反射面50で反射して透明基板6を透過し、UV光励起黄色発光材料122に入射するので、発光装置1Cの光取り出し効率が高くなる。
【0066】
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
図6は、本発明の第5の実施形態である発光装置の模式図であり、発光装置の断面図(a)、発光装置を構成する発光素子の断面図(b)である。
図6(a)に示すように、本発明の第5の実施形態である発光装置1Dでは、UV発光素子の構成及びその配置が第3の実施形態とは異なっている。以下、第1、第2又は第3の実施形態について説明したものと同一の機能及び構成を有する発光装置1Dの構成要素については共通する符号を付して説明を省略する。
【0067】
発光装置1Dには、セラミック基板3に設けられた配線部32上に、UV発光素子7が配置されている。
UV発光素子7は、図6(b)に示すように、β‐Ga基板70、バッファ層71、Siドープのn−GaN層72、Siドープのn−AlGaN層73、MQW(Multiple−Quantum Well)層74、Mgドープのp−AlGaN層75、Mgドープのp−GaN層76、p電極77をこの順に積層して形成されている。また、β‐Ga基板70のバッファ層71と反対側の面には、n電極78が設けられている。
【0068】
β‐Ga基板70は、n型の導電性を示すβ−Gaからなる。MQW層74は、AlGa1−aN/AlGa1−bN(a,bは異なる0以上の数)の多重量子井戸構造を有する発光層である。p電極77は、ITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極であり、配線部32と電気的に接続されている。n電極78は、ボンディングワイヤ321によってセラミック基板3の配線部31に接続されている。なお、素子基板としては、β−Gaに替えて、SiCを用いてもよい。
【0069】
以上のように構成されたUV発光素子7に通電すると、n電極78、β‐Ga基板70、バッファ層71、n−GaN層72、及びn−AlGaN層73を介して電子がMQW層74に注入され、また、p電極77、p−GaN層76、p−AlGaN層75を介して正孔がMQW層74に注入されて、UV光を発する。このUV光は、β‐Ga基板70等を透過してUV発光素子7の光出射面7aから出射され、UV光励起黄色発光材料122の第1の面122aに入射する。UV光励起黄色発光材料122は、UV発光素子7の光出射面に面した第1の面122aからUV発光素子7のUV光を入射し、このUV光によって励起された黄色光を第2の面122bから外部に放射する。このように、発光装置1Dは、黄色光を放射する。
本実施形態によっても、第3の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0070】
[第6の実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。
図7は、本発明の第6の実施形態である発光装置の断面図である。
図7に示すように、本実施形態では、UV発光素子上のUV光励起黄色発光材料上にUV光励起青色発光材料が配置された他は第1の実施形態の構成と同様とされている。以下、前に説明したものと同一の機能及び構成を有する発光装置の構成要素については共通する符号を付して説明を省略する。
【0071】
発光装置1Eには、UV発光素子10上のUV光励起黄色発光材料2上にUV光励起青色発光材料95が配置されている。これにより、UV光励起黄色発光材料2は、UV発光素子10からのUV光の一部により黄色光を放射し、UV光励起青色発光材料95は、UV発光素子10からのUV光の残りにより青色光を放射する。青色と黄色は補色関係にあるので、発光装置1Eは、白色光を放射する。
【0072】
[第7の実施形態]
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。
図8は、本発明の第7の実施形態である発光装置の断面図である。
図8に示すように、本実施形態では、UV発光素子上のUV光励起黄色発光材料上にUV光励起青色発光材料が配置された他は第2の実施形態の構成と同様とされている。以下、前に説明したものと同一の機能及び構成を有する発光装置の構成要素については共通する符号を付して説明を省略する。
【0073】
発光装置1Fには、UV発光素子10A上のUV光励起黄色発光材料121上にUV光励起青色発光材料96が配置されている。これにより、UV光励起黄色発光材料121は、UV発光素子10AからのUV光の一部により黄色光を放射し、UV光励起青色発光材料96は、UV発光素子10AからのUV光の残りにより青色光を放射する。青色と黄色は補色関係にあるので、発光装置1Fは、白色光を放射する。
【0074】
[第8の実施形態]
次に、本発明の第8の実施形態について説明する。
図9は、本発明の第8の実施形態である発光装置の断面図である。
図9に示すように、本実施形態では、UV光励起黄色発光材料上にUV光励起青色発光材料が配置された他は第3の実施形態の構成と同様とされている。以下、前に説明したものと同一の機能及び構成を有する発光装置の構成要素については共通する符号を付して説明を省略する。
【0075】
発光装置1Gには、UV光励起黄色発光材料122上にUV光励起青色発光材料97が配置されている。これにより、UV光励起黄色発光材料122は、UV発光素子10からのUV光の一部により黄色光を放射し、UV光励起青色発光材料97は、UV発光素子10からのUV光の残りにより青色光を放射する。青色と黄色は補色関係にあるので、発光装置1Gは、白色光を放射する。
【0076】
[第9の実施形態]
次に、本発明の第9の実施形態について説明する。
図10は、本発明の第9の実施形態である発光装置の断面図である。
図10に示すように、本実施形態では、UV光励起黄色発光材料上にUV光励起青色発光材料が配置された他は第4の実施形態の構成と同様とされている。以下、前に説明したものと同一の機能及び構成を有する発光装置の構成要素については共通する符号を付して説明を省略する。
【0077】
発光装置1Hには、UV光励起黄色発光材料122上にUV光励起青色発光材料97が配置されている。これにより、UV光励起黄色発光材料122は、UV発光素子10AからのUV光の一部により黄色光を放射し、UV光励起青色発光材料97は、UV発光素子10AからのUV光の残りにより青色光を放射する。青色と黄色は補色関係にあるので、発光装置1Hは、白色光を放射する。
【0078】
[第10の実施形態]
次に、本発明の第10の実施形態について説明する。
図11は、本発明の第10の実施形態である発光装置の断面図である。
図11に示すように、本実施形態では、UV光励起黄色発光材料上にUV光励起青色発光材料が配置された他は第5の実施形態の構成と同様とされている。以下、前に説明したものと同一の機能及び構成を有する発光装置の構成要素については共通する符号を付して説明を省略する。
【0079】
発光装置1Jには、UV光励起黄色発光材料122上にUV光励起青色発光材料97が配置されている。これにより、UV光励起黄色発光材料122は、UV発光素子7からのUV光の一部により黄色光を放射し、UV光励起青色発光材料97は、UV発光素子7からのUV光の残りにより青色光を放射する。青色と黄色は補色関係にあるので、発光装置1Jは、白色光を放射する。
【0080】
本発明の第6〜第10の実施形態では、UV光励起青色発光材料はCe:RSiO(RはLu、Y、Gdのいずれか1種又は2種以上)単結晶であることが好ましい。高輝度発光するとともに、所定の大きさへの加工及びUV発光素子又は発光装置への取り付けが容易であるためである。
【0081】
なお、本発明の第6〜第10の実施形態では、UV光励起黄色発光材料の外部側、即ち、UV発光素子と反対側にUV光励起青色発光材料を取り付けたが、これに限定されるものではなく、UV光励起黄色発光材料の内部側、即ち、UV発光素子側にUV光励起青色発光材料を取り付けてもよい。
【0082】
本発明の第6〜第10の実施形態では、白色光のCIE色度座標は(0.33,0.33)の近傍となるように、UV光励起黄色発光材料2、121、122及びUV光励起青色発光材料95、96、97の板厚を調製することが好ましい。これにより、青みがかった白や黄色みがかった白を純白とするように色純度を向上させることができる。
【0083】
本発明の第1〜第10の実施形態では、UV発光素子10、10A、7からの発光がUV光励起黄色発光材料2、121、122に入射されるように、前記UV発光素子に対して前記UV光励起黄色発光材料が配置されている構成なので、UV発光素子10、10A、7からの発光により、効率よく、UV光励起黄色発光材料2、121、122を励起させ、高輝度発光させることができる。
なお、発光装置の形状は上記形状に限定されるものではない。
また、一つの発光装置が複数のUV発光素子を有する構成としてもよい。
更にまた、更に色調の異なる赤色蛍光体、緑色蛍光体等の単結晶材料を組み合わせても良い。あるいは効率は多少劣ることになるが、各色、あるいは一部の色の蛍光体単結晶を粉砕することで得られる粉末状の蛍光体としてこれらをバインダーやガラスなどで封じ込める構成としてもよい。セラミックスの合成手法を用いて得られた蛍光体粉末よりも、単結晶を粉砕して得られる蛍光体粉末の方が発光効率、量子効率、温度特性、いずれにおいても優っているためである。これにより、少なくとも蛍光体の特性改善はなされ得る。
【0084】
本発明の実施形態であるUV光励起黄色発光材料、その製造方法及び発光装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0085】
(実施例1:Ce:TSAGサンプル)
<単結晶作製>
まず、純度99.99%の酸化テルビウム(Tb)原料粉末と、純度99.99%の酸化アルミニウム(Al)原料粉末と、純度99.99%の酸化スカンジウム(Sc)原料粉末と、純度99.99%の酸化セリウム(CeO)原料粉末とを準備した。
【0086】
次に、上記各原料粉末を乾式混合して混合粉末を得た。このとき、CeO原料粉末は、Tb元素とCe元素の合計モル数を基準(100モル%)としてCe元素が2モル%の割合で含まれる、つまりモル比でTb:CeO:Sc:Al=1.47:0.12:2:3となるようにした。
次に、上記混合粉末(粉末原料)をIrるつぼに充填した。るつぼの形状は円筒形であり、直径は約40mm、高さは約40mmであった。
【0087】
次に、粉末原料を室温から約1950℃まで加熱して溶解させて溶液を得た。
次に、この溶液に、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)からなる3mm×3mm×70mmの角棒状の種結晶の先端を接触させ、種結晶を10rpmの回転数で回転させながら、種結晶を1時間当たり1mmの速度で引き上げ、バルク状の単結晶を育成した。この結晶の育成はNガス雰囲気下で行い、Nガスの流量は1.0(l/min)とした。
こうして直径約1.4cm、長さ約4.5cmの透明な単結晶(結晶A:実施例1サンプル)を得た。
図12は、結晶A(実施例1サンプル)の写真である。黄色みがかった透明な単結晶であった。
【0088】
こうして得られた結晶AについてX線回折を行ったところ、ガーネット型単結晶が単相で得られていることが確認された。また、Tbの一部がCeで、Alの一部がScで置換されていることが確認された。
【0089】
さらに、上記結晶Aについて、ICP(誘導結合プラズマ)による化学分析を行い、単結晶の組成(Tb、Sc、Al及びCeの原子数比)を確認した。
この結果、式:Tb2.873Ce0.018Sc1.859Al3.25012で表される組成を有する単結晶が得られていることが確認された。
【0090】
<単結晶評価>
この単結晶(結晶A:実施例1サンプル)の蛍光スペクトルと励起スペクトルを測定した。
図13は、結晶A(実施例1サンプル)の蛍光スペクトルである。比較の為、Ce:YAGのスペクトルデータも合わせて示した。Ce:YAGと蛍光スペクトル形状は類似していた。550nm付近に発光ピーク波長を有する黄色の蛍光スペクトルが得られた。
【0091】
図14は、結晶A(実施例1サンプル)の励起スペクトルである。比較の為、Ce:YAGのスペクトルデータも合わせて示す。Ce:YAGと励起スペクトル形状は大きく異なっていた。360〜390nmの範囲に、Ce:YAGにはない励起ピーク波長が見られた。
【0092】
<黄色発光装置の作製・評価>
まず、AlGaN層を発光層とするUV発光素子を用意した。
次に、得られたCe:TSAG単結晶を軸方向に垂直な面でダイシングして平面視円形状のCe:TSAG単結晶板を作製してから、これをUV発光素子の素子基板の第2の主面の大きさに合わせ、更に切断した。
次に、切断したCe:TSAG単結晶板を、このUV発光素子の素子基板の第2の主面に接合した。
次に、UV発光素子の電極をバンプにより、セラミック基板に形成した配線部に接合した。
以上の工程により、図2に示した構成の実施例1の発光装置を作製した。
配線部から通電することにより、高輝度な黄色発光を得た。
【0093】
(実施例2)
<白色発光装置の作製・評価>
まず、AlGaN層を発光層とするUV発光素子を用意した。
次に、得られたCe:TSAG単結晶を軸方向に垂直な面でダイシングして平面視円形状のCe:TSAG単結晶板を作成してから、これをUV発光素子の素子基板の第2の主面の大きさに合わせ、更に切断した。
次に、切断したCe:TSAG単結晶板を、このUV発光素子の素子基板の第2の主面に接合した。
次に、青色蛍光体であるCe:LuSiO(LSO)単結晶板を用意し、これをUV発光素子の素子基板の第2の主面の大きさに合わせ、更に切断した。
次に、切断したLSO単結晶板を、このCe:TSAG単結晶板に接合した。
次に、UV発光素子の電極をバンプにより、セラミック基板に形成した配線部に接合した。
以上の工程により、図7に示した構成の実施例2の発光装置を作製した。
配線部から通電することにより、高輝度な白色発光を得た。
【符号の説明】
【0094】
1,1A,1B,1C,1D、1E、1F、1G、1H、1J…発光装置、2…UV光励起黄色発光材料、2a…第1の面、2b…第2の面(光出射面)、3…セラミック基板、4,5…本体、4A,5A…開口部、4b…上面、6…透明基板、7,10,10A…UV発光素子、11…素子基板、11a…第1の主面、11b…第2の主面(光出射面)、12…n型AlGaN:Si層、13…発光層、14…p型AlGaN:Mg層、15A…n側電極、15B…p側電極、16…バンプ、20…結晶引上げ炉、21…イリジウム製のルツボ、22…筒状容器、23…高周波コイル、24…溶液、25…種結晶、26…育成結晶、31,32…配線部、40,50…反射面、51…保持部、61,62…配線部、70…Ga基板、71…バッファ層、72…n−GaN層、73…n−AlGaN層、74…MQW層、75…p−AlGaN層、76…p−GaN層、77…p電極、78…n電極、95、96、97…UV光励起青色発光材料、121,122…UV光励起黄色発光材料、121a,122a…第1の面、121b,122b…第2の面、140…透明電極、140b…表面(光出射面)、311,321,611,612…ボンディングワイヤ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14