(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029103
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】人骨へのステム挿入時の骨折防止システム及びこれに使用するプログラム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/32 20060101AFI20161114BHJP
A61B 17/88 20060101ALI20161114BHJP
A61F 2/46 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
A61F2/32
A61B17/88
A61F2/46
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-34441(P2013-34441)
(22)【出願日】2013年2月25日
(65)【公開番号】特開2014-161481(P2014-161481A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年1月19日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 一般社団法人日本機械学会の第25回バイオエンジニアリング講演会講演論文集,第629〜630頁に掲載された。
(73)【特許権者】
【識別番号】598041566
【氏名又は名称】学校法人北里研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】酒井 利奈
(72)【発明者】
【氏名】高平 尚伸
(72)【発明者】
【氏名】山本 豪明
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 清資
(72)【発明者】
【氏名】内山 勝文
(72)【発明者】
【氏名】内田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】立木 隆広
【審査官】
松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】
島中皓仁、井上鮎子、内島大地、酒井利奈、山本豪明、高平尚伸、馬渕清資,術中骨折の予防に向けた客観的評価方法としてのハンパリング音周波数解析,日本機械学会 第24回バイオエンジニアリング講演会予稿集,日本,社団法人日本機械学会,2012年 1月 7日
【文献】
大山 純一、遠藤ミゲル雅崇、古市 格、村田 雅和,Sound wave analysis によるセメントレス大腿骨ステム挿入時のハンマリング音の解析,整形・災害外科,日本,金原出版株式会社,2010年 8月 1日,第53巻 第9号,p.1105-1109
【文献】
大山 純一、遠藤ミゲル雅崇、古市 格、村田 雅和,Sound wave analysis によるセメントレス大腿骨ステム挿入時のハンマリング音の解析 −第2報−,日本人工関節学会誌,日本,日本人工関節学会誌,2010年12月 1日,第40巻,p.58-59
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/28 − 2/46
A61B 17/56 − 17/92
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工股関節置換術中のステム打ち込み時の発生音を集音する指向性マイクと,
前記指向性マイクにより集音される発生音の周波数スペクトラムを求める手段と,
前記求められた周波数スペクトラムからフォルマント周波数を求める処理手段と,
前記求められたフォルマント周波数を上書き記憶する記憶手段と,
前記処理手段の制御信号に基づき警報を発するアラーム表示手段を備え,
前記処理手段は,求めたフォルマント周波数を前記記憶手段に記憶されたフォルマント周波数と比較し,フォルマント周波数が同じであれば,前記記憶手段に上書きするとともに,カウンタ値を歩進し,
前記カウンタ値が所定回数に達した時,前記アラーム表示手段に警告を表示させる,
ことを特徴とする人骨へのステム挿入時の骨折防止システム。
【請求項2】
請求項1において,
前記フォルマント周波数は,前記周波数スペクトラムをフーリエ変換して得られるパワースペクトラムの最大強度の周波数である,
ことを特徴とする人骨へのステム挿入時の骨折防止システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記カウンタ値の所定回数を3回とすること,
を特徴とする人骨へのステム挿入時の骨折防止システム。
【請求項4】
人工股関節置換術中のステム打ち込み時の発生音を集音する指向性マイクと,
前記指向性マイクにより集音される発生音の周波数スペクトラムを求める手段と,
前記求められた周波数スペクトラムからフォルマント周波数を求める処理手段を有する人骨へのステム挿入時の骨折防止システムにおいて実行されるプログラムであって,
指向性マイクに人工股関節置換術中のステム打ち込み時の発生音を集音させるステップと,
前記集音される発生音の周波数スペクトラムを求めるステップと,
処理手段に,前記求められた周波数スペクトラムからフォルマント周波数を求めさせるステップと,
記憶手段に,前記求められたフォルマント周波数を上書き記憶させるステップと,
前記処理手段に,前記求められたフォルマント周波数を前記記憶手段に記憶されたフォルマント周波数と比較し,フォルマント周波数が同じであれば,前記記憶手段に上書きするとともに,カウンタ値を歩進させるステップと,
さらに前記処理手段に,前記カウンタ値が所定回数に達した時,アラーム表示手段に警告を表示させるステップを実行させる,
ことを特徴とする人骨へのステム挿入時の骨折防止するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,人骨へのステム挿入時の骨折防止システム及びこれに使用するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年,人工股関節置換技術において,セメントを用いないで大腿骨にステムを挿入固定して行うセメントレス固定の施術例が増加している。この理由は,セメントが有機溶剤であり,かかるセメントの使用が手術時間の延長や心肺機能に合併症を有する高齢者の循環動態に悪影響を生じさせる可能性があり,これを避けるためである。
【0003】
人工股関節置換におけるセメントレス固定においては,ステムと大腿骨間の十分な固定性を得るために,強い力で十分にプレスフィットさせることが必要である。すなわち,セメントレス固定を行う場合は,ステムと大腿骨間の十分な固定性を得るため,施術者はハンマーを用いてステムを大腿骨に打ち込み挿入することを行っている。
【0004】
そして,かかる打ち込み挿入する際のハンマーの打ち込み力及び打ち込み回数は,施術者の経験及び感覚によるところが大である。したがって,施術者の経験あるいは,状態によりハンマーの打ち込み挿入する力及び回数により,術中に大腿骨骨折を招くおそれがある。セメントレス固定を行った患者において,合併症である術中における大腿骨骨折が4.1〜27.8%も発症していることも報告されている(非特許文献1)。また,人工骨頸置換術におけるステム挿入時のハンマリング音の解析が報告されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Schwartz JT, Mayer JG, et al.: Femoral fracture during non-cemented total hip arthroplasty. J Bone Joint Surg Am. 1989; 71: 1135-1142
【非特許文献2】Sound wave analysisによるセメントレス大腿骨ステム挿入時のハンマリング音の解析:大山純一,遠藤ミゲル雅祟,古市 格,村田雅和,整・災外1105-1109,2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に鑑みて,本発明の目的は,施術者の経験及び感覚によらずに,人骨へのステム挿入時の的確な骨折防止を可能とする骨折防止システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の目的に従う人骨へのステム挿入時の骨折防止システムは,第1の側面として,人工股関節置換術中のステム打ち込み時の発生音を集音する指向性マイクと,前記指向性マイクにより集音される発生音の周波数スペクトラムを求める手段と,前記求められた周波数スペクトラムからフォルマント周波数を求める処理手段と,前記求められたフォルマント周波数を上書き記憶する記憶手段と,前記処理手段の制御信号に基づき警報を発するアラーム表示手段を備え,前記処理手段は,求めたフォルマント周波数を前記記憶手段に記憶されたフォルマント周波数と比較し,フォルマント周波数が同じであれば,前記記憶手段に上書きするとともに,カウンタ値を歩進し,前記カウンタ値が所定回数に達した時,前記アラーム表示手段に警告を表示させることを特徴とする。
【0008】
上記本発明の目的に従う人骨へのステム挿入時の骨折防止システムは,前記第1の側面において,前記フォルマント周波数は,前記周波数スペクトラムをフーリエ変換して得られるパワースペクトラムの最大強度の周波数であることを特徴とする。
【0009】
また,上記本発明の目的に従う人骨へのステム挿入時の骨折防止システムは,前記第1の側面において,前記カウンタ値の所定回数を3回とすることを特徴とする。
【0010】
さらに,上記本発明の目的に従う人骨へのステム挿入時の骨折防止システムにおいて実行されるプログラムは,指向性マイクに人工股関節置換術中のステム打ち込み時の発生音を集音させるステップと,前記集音される発生音の周波数スペクトラムを求めるステップと,処理手段に,前記求められた周波数スペクトラムからフォルマント周波数を求めさせるステップと,記憶手段に,前記求められたフォルマント周波数を上書き記憶させるステップと,前記処理手段に,前記求めたフォルマント周波数を前記記憶手段に記憶されたフォルマント周波数と比較し,フォルマント周波数が同じであれば,前記記憶手段に上書きするとともに,カウンタ値を歩進させるステップと,さらに前記前記処理手段に,前記カウンタ値が所定回数に達した時,アラーム表示手段に警告を表示させるステップを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に従う骨折防止システムにより,骨折の副作用を回避して人工骨頸置換術を安全に施すことを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に従う骨折防止システムの一実施例概念図である。
【
図2】人工骨頸となるステムの形態例を示す図である。
【
図3】本発明の骨折防止システムに適用される処理装置の一構成例機能ブロック図である。
【
図4】
図3の構成を用いる,本発明に従う一実施例の処理フローである。
【
図5】フォルマント周波数とスペクトル強度の一例を示す図である。
【
図6】実験例1により求めたハンマリング回数とフォルマント周波数の関係を示すグラフである。
【
図7】実験例2により求めたハンマリング回数とフォルマント周波数の関係を示すグラフである。
【
図8】実験例3における実験結果のグラフであり,実線がフォルマント周波数の変化,破線が応力の変化のグラフである。
【
図9】実験例4における実験結果のグラフであり,実線がフォルマント周波数の変化,破線が応力の変化のグラフである。
【
図10】実験例5により求めたハンマリング回数とフォルマント周波数の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面に従い,本発明に従う人骨へのステム挿入時の骨折防止システムの実施例を説明する。なお,実施例説明は,本発明の理解のためのものであり,本発明の保護の範囲は,これら実施例に限定されるものではなく,特許請求の範囲に記載されたもの,及びこれに近似するものにも及ぶ。
【0014】
図1は,本発明に従う骨折防止システムの一実施例概念図である。
【0015】
図において,処理装置10に指向性マイクロフォンMIC(以下単にMICと表記する)で集音される音声信号がセンスアンプ(AMP)11を通して入力される。
【0016】
処理装置10には,デジタルストレージスコープ(DSS)12が接続されている。
【0017】
処理装置10は,図ではパーソナルコンピュータを例にして示しているが,本発明の骨折防止システムを実現するプログラムを実行する処理装置である。前記センスアンプ11及びデジタルストレージスコープ12の機能のいずれか又はそれらの機能を処理装置10に含めて構成しても良い。
【0018】
大腿骨頸部骨折症例に対して,セメントによりステムを固定する従来の人工骨頸置換術においては,有機溶剤であるセメントの人骨に対する副作用が懸念される。これに対して,本発明の関わるセメントレスで行う人工骨頸置換術は,セメントの人骨に対する副作用の懸念は生じないが,形態を
図2に示す一例としてチタン合金で生成されている人工骨頸となるステム22が,大腿骨23に確実に固定されていることが必要である。
【0019】
したがって,施術者20が,ハンマー21により人工骨頸となるステム22を大腿骨23に打ち込み,ステム22を大腿骨23に固定することが行われる。
【0020】
図3は,本発明の骨折防止システムに適用される処理装置10の一構成例機能ブロック図である。
図3に示す構成例では,センスアンプ11及びデジタルストレージスコープ12の機能部が,処理装置10内に備えられた構成である。
【0021】
バス(BUS)を通して,それぞれの機能ブロックが接続されている。
【0022】
CPU1は,処理手段であって,書込み,消去可能な記憶手段2に格納されるプログラムを実行して本発明に従う骨折防止システムを実現する。記憶手段2として,ハードディスクメモリ,あるいは書込み,消去可能なEEPROM等が使用される。
【0023】
RAM3は,CPU2による処理過程のデータを一時保持するメモリである。CPU1により演算処理されてディスプレイ5に表示する画像が描画されるビデオメモリ(VRAM)4を有し,VRAM4に描画された画像データは,所定周期で読み出されてディスプレイ5に表示される。
【0024】
アラーム表示部6を有し,後に説明するようにステム22の打ち込み時の発生音がMICで集音され,CPU1で処理された結果として,CPU1からの制御信号が出力される。この制御信号に基づきステム22の打ち込み過多により骨折事故を防ぐために,アラーム表示部6は,施術者に警告を示す警報信号を生成し表示する。
【0025】
また,モデム機能部7を有し,アラーム表示部6で生成された,施術者に警告を表示する信号を有線,又は無線により送信して,離隔場所の別個の表示装置に表示させるようにしてもよい。
【0026】
図4は,
図3の構成により実行される,本発明に従う一実施例の処理フローである。
【0027】
CPU1により記憶手段2に格納されるプログラムを読み取り実行し,処理がスタートすると,ハンマー21による打ち込み時の音が,MICにより集音される(ステップS1)。MICにより集音される音声信号は,センサアンプ11により増幅され,処理装置10に入力される(ステップS1)。
【0028】
処理装置10に入力された音声信号は,RAM3に一旦格納され,直流レベルノイズを削除してデジタルストレージスコープ12に送られる。デジタルストレージスコープ12は,RAM3に格納された音声信号の周波数スペクトラムの分布(パワースペクトラム)を求める(ステップS2)。
【0029】
CPU1は,デジタルストレージスコープ12により求められたパワースペクトラムをフーリエ変換し,包絡に沿った曲線のピークであるフォルマントを検出し(ステップS3),そのフォルマント周波数をRAM3に上書き記憶する(ステップS4)。
【0030】
図5は,かかるフォルマント周波数とスペクトル強度の一例を示す図である。スペクトル強度が最大となる周波数をフォルマント周波数として検出する。
【0031】
CPU1は,検出したフォルマント周波数をRAM3に上書き記憶する際に,既に記憶されているフォルマント周波数があれば,先に記憶されている周波数と同じか否かを判断する(ステップS5)。
【0032】
先に記憶されているフォルマント周波数と同じでなければ(ステップS5,NO),検出したフォルマント周波数をRAM3に上書き記憶してステップS1の処理に戻り,MIC11でハンマー21による打ち込み時の音を更に集音して,ステップS1−S5の処理を繰り返す。
【0033】
先に記憶されているフォルマント周波数と同じであれば(ステップS5,YES),フォルマント周波数をRAM3に上書き記憶し,CPU1に有するカウンタの値を+1する(ステップS6)。
【0034】
ついで,CPU1は,カウンタの値が所定回数であるか否かを判断する(ステップS7)。カウンタの値が所定回数より小さければ,ステップS1の処理に戻り,MIC11でハンマー21による打ち込み時の音を集音して,ステップS1−S7の処理を繰り返す。
【0035】
カウンタの値が所定回数(後に説明する実施例に基づき3回と設定)に達していれば(ステップS7,YES),臨界点(更にステム22の打ち込みを続けると大腿骨の骨折に繋がる)に達したと判断して,CPU1は,アラーム表示部6に制御信号を送り,施術者20に警告を表示させる(ステップS8)。この警告の表示は,警報音を発生するか,ランプにより警報を表示するか,あるいは,その両方により,アラーム表示部6は,施術者に警報を表示する。
【0036】
施術者20は,かかる警報の表示を受けると,ステム22の大腿骨23への打ち込みが十分で有り,ステム22と大腿骨23の結合が十分であると判断して,ステム22の打ち込みを停止する。これにより,施術者20は,感覚によらず,又施術経験の少ない施術者であっても,大腿骨23の骨折事故を防ぎ,適切なステム22の打ち込みを完了すること可能である。
【0037】
[実験例]
本発明者は,実験により,ステムの打ち込み回数と骨折の関係を求めた。
【0038】
実験例1:
セラミック製の模擬骨を用い,ステムを打ち込むハンマリング回数とフォルマント周波数の関係を求めた。
【0039】
図6は,かかる実験により求めたハンマリング回数とフォルマント周波数の関係を示すグラフである。グラフにおいて,領域Aで模擬骨の骨折が見られた。そして,骨折前の領域Bでは,それ以前の非収束のフォルマント周波数に対し,同じフォルマント周波数の繰り返す収束の状態(少なくとも3回の同じフォルマント周波数の繰り返し)が観察された。
【0040】
実験例2:
組織のある屍体骨を用い,ステムを打ち込むハンマリング回数とフォルマント周波数の関係を求めた。
【0041】
図7は,かかる実験により求めたハンマリング回数とフォルマント周波数の関係を示すグラフである。グラフにおいて,A時点で屍体骨の骨折が見られた。骨折の時点より前の領域Bでは,実験例1と同様に,フォルマント周波数が非収束の状態から,同じフォルマント周波数を繰り返す収束状態が観察された。
【0042】
実験例3:
組織のある屍体骨を用いて,ステムを打ち込むハンマリング回数と,フォルマント周波数及び骨に加わる応力の関係を求めた。
【0043】
図8は,実験例3における実験結果のグラフであり,実線がフォルマント周波数の変化,破線が応力の変化のグラフである。かかる実験結果から応力の増加の時点で,フォルマント周波数が小さくなり同じ周波数が繰り返される傾向にある事が確認された。
【0044】
実験例4:
実験例3と同様に,組織のある屍体骨を用いて,ステムを打ち込むハンマリング回数と,フォルマント周波数及び骨に加わる応力の関係を求めた。
【0045】
図9は,実験例4における実験結果のグラフであり,実線がフォルマント周波数の変化,破線が応力の変化のグラフである。かかる実験において,急激に応力が増加したA領域で骨折が確認された。そして,骨折を確認した時点より前に同じフォルマント周波数が繰り返される領域Bが生じていることが確認された。
【0046】
実験例5:
生体骨について,ステムを打ち込むハンマリング回数とフォルマント周波数の関係を求めた。
【0047】
図10は,かかる実験例5により求めたハンマリング回数とフォルマント周波数の関係を示すグラフである。この実験では,フォルマント周波数の非収束状態が続き,その後に同じフォルマント周波数が繰り返し収束安定する状態Bが観察された。
【0048】
観察例:
実際の人工股関節置換技術において,5症例を観察した。
【0049】
5症例は,いずれも骨折の副作用は生じなかった。そのうちの1例は,ステムを打ち込み終了前のフォルマント周波数は,非収束であった。他の4例は,ステムを打ち込み終了前の平均フォルマント周波数の収束状態が観察された。
【0050】
以上の実験例及び観察から本発明者は,非特許文献2に記載のようにステム打ち込み終了時にフォルマント周波数が一定となることを確認した。
【0051】
したがって,本発明者は,
図4のフロー図に従い本発明の実施例を説明したように,パワースペクトラムの最大となる周波数が連続することを確認して,施術者に警報を表示することにより骨折に至る状態を確実に回避出来るようにした。
【0052】
これにより,施術者の感覚によらずに,又経験によらずに,骨折の副作用を回避して人工骨頸置換術を施すことが出来る。
【符号の説明】
【0053】
1 CPU
2 記憶手段
3 RAM
4 ビデオRAM
5 ディスプレイ
6 アラーム表示部
7 モデム機能部
10 処理装置
11 センスアンプ
12 デジタルストレージスコープ
20 施術者
21 ハンマー
22 ステム
23 大腿骨
MIC 指向性マイクロフォン