(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029130
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】排水トラップ
(51)【国際特許分類】
E03C 1/28 20060101AFI20161114BHJP
【FI】
E03C1/28 B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-145549(P2011-145549)
(22)【出願日】2011年6月30日
(65)【公開番号】特開2013-11130(P2013-11130A)
(43)【公開日】2013年1月17日
【審査請求日】2014年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】592139887
【氏名又は名称】株式会社テクノテック
(74)【代理人】
【識別番号】100145470
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100097021
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 紘一
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145470
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 健一
(72)【発明者】
【氏名】木本 一也
(72)【発明者】
【氏名】海老沢 豊
【審査官】
七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−097408(JP,A)
【文献】
特開2004−244981(JP,A)
【文献】
実開平06−053668(JP,U)
【文献】
特開2007−100447(JP,A)
【文献】
特開2002−088840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12−1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水ホースから流出する洗濯廃水等を排水する排水トラップにおいて、
床面開口部を覆う蓋体と、洗濯機排水ホースを接続するためのホースジョイントとがパッキンホルダーによって固定され、
前記蓋体は上面視リング形状の溝部が形成され、該溝部内周面に雌ねじ部を有し、
前記パッキンホルダーは、外方張出フランジ形状であって凸部外周面に雄ねじ部と該パッキンホルダー上面の1箇所に適正締め込み確認用のノブとを有しており、
前記ノブは、前記蓋体の雌ねじ部と前記パッキンホルダーの雄ねじ部とをパッキンを介して前記蓋体の上面と前記パッキンホルダーの上面とが面一となる位置まで該パッキンを押しつぶしてねじ込んだ際に、前記ノブの先端が前記蓋体の所定の位置まで回転していれば前記蓋体と前記パッキンホルダーとが適正に締め込まれていることを目視確認できるものであること、
を特徴とする排水トラップ。
【請求項2】
請求項1に記載の排水トラップにおいて、
前記蓋体の前記床面開口部にはめ込まれる外周面の形状が上面視長方形又は正方形となっていることを特徴とする排水トラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗い場、バスルームやマンションの台所、洗面所、ベランダあるいは各種キャビネット内などの床面の排水口に取り付けられる排水トラップ、特に洗濯機などの排水ホースを接続連結して用いられる排水トラップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の排水トラップは、ホースジョイントを備えて洗濯機の排水ホースと接続され、排水ホースから流れてくる廃水(汚水)を床下に配設した排水管に案内するために用いられている。排水はホースジョイントから排水トラップ内に流れ込み、排水管側へ送られる構造となっている。
【0003】
例えば、特許文献1の排水トラップは、トラップ機構を有する封水筒体が開放型で、排水管内に装備でき、かつ排水管内に装備しても排水流路を十分に確保できごみ類の詰り現象がなく、特に排水中の糸くずや髪毛などのごみ類の引掛かりがなく、排水トラップ機能をも十分に発揮できる。
また、洗濯機の排水ホースと接続して封水筒体が連結され、排水口の床面開口部を覆う蓋体に着脱自在に保持するので、配管接続作業や施行工事も簡便で、しかも床面に排水トラップの蓋体をネジ止めしてもこの床取付けネジ部はパッキンホルダーによって覆われてネジ部のゴミ溜まりがなく手入れが簡単で、緩み止めが確実で水漏れ現象もなく、洗濯機の排水の際に排水量が増加しても外部に溢れることなく水密状態を保って確実に排出できると共に、下流側からの臭気の逆流も確実に止めることができる排水トラップが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−244981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1の排水トラップは、排水口の床面開口部を覆う蓋体と、ホースジョイントがパッキンホルダーを介して接続される構造であり、蓋体とパッキンホルダーをねじ止めするためのねじ部は、床面から高く突出されて形成されている。
【0006】
このため、排水トラップの取り外しは簡便となるが、ねじ部及びそれを覆うパッキンホルダーの占有容積が非常に大きくなってしまい、洗濯機あるいは防水パンを排水口へ寄せようとしてもパッキンホルダーにぶつかってしまい移動することができなかったり、排水トラップを跨ぐための専用台を用意しなければならないこともあり、場合によっては洗濯機あるいは防水パンのサイズが制限されてしまうという欠点があった。
【0007】
また、特許文献1のパッキンホルダーのような略円筒形状の場合、蓋体の係合部とパッキンホルダーをねじ止めする際に、どの程度締め込めば確実に水漏れ現象もなくねじ止めされるか分からないので、必要以上にねじ込んでしまい、パッキンの劣化を早めてしまったり、場合によってはパッキンやねじ部を傷めてしまう可能性もあった。
【0008】
また、蓋体の外周形状は円筒形状であるものが殆どであり、それに対応して床面の開口部の形状も円形となっている。このため、設置工事では、蓋体と床を係止するためのねじ穴の位置あわせが面倒である。またさらに、メンテナンス等で排水トラップを蓋体ごと取り外す必要がある場合、再度取り付ける際に、例えば開口部の上部空間が防水パン等で塞がれていると、手探りでねじ穴の位置あわせを行わなければならないという欠点もあった。
【0009】
本発明は、これら従来の不便さを排除しようとするもので、蓋体と、ホースジョイントの接続部を省スペース化することにより、洗濯機あるいは防水パンの設置の自由度を高め、また、前記接続部の締め込みが確実で一目瞭然となることによってメンテナンス等が簡便になり、また、設置工事等での床との係合が簡便で迅速に行うことができる排水トラップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、請求項1に記載の排水トラップは、排水ホースから流出する洗濯廃水等を排水する排水トラップにおいて、床面開口部を覆う蓋体と、洗濯機排水ホースを接続するためのホースジョイントとがパッキンホルダーによって固定され、前記蓋体は上面視リング形状の溝部が形成され、該溝部内周面に雌ねじ部を有し、前記パッキンホルダーは、外方張出フランジ形状であって凸部外周面に雄ねじ部と該パッキンホルダー上面の1箇所に
適正締め込み確認用のノブとを有しており、
前記ノブは、前記蓋体の雌ねじ部と前記パッキンホルダーの雄ねじ部
とをパッキンを介して前記蓋体の上面と前記パッキンホルダーの上面とが面一となる位置まで該パッキンを押しつぶしてねじ込んだ際に、前記ノブの先端が前記蓋体の所定の位置まで回転していれば前記蓋体と前記パッキンホルダーとが適正に締め込まれていることを目視確認できるものであること、を特徴としている。
【0012】
また、請求項
2に記載の排水トラップは、請求項
1に記載の排水トラップにおいて、前記蓋体の前記床面開口部にはめ込まれる外周面の形状が上面視長方形又は正方形となっていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の排水トラップは、蓋体及びパッキンホルダーの床面から上面までの高さが非常に低いので、洗濯機や防水パンの設置や移動の邪魔にならず、スペースを有効活用することができるという非常に優れた利点がある。
【0014】
また
、排水トラップのパッキンホルダーにはノブが設けられて、開閉動作の補助ができるとともに、所定の位置までねじ込むことにより締め込み確認ができるので、ねじ込みすぎによるパッキンの劣化や、パッキンやねじ部の破損を予防することができる。
【0015】
また、請求項
2に記載の排水トラップの蓋体の床面開口部にはめ込まれる外周面の形状が、床面に敷かれるタイル等のうち排水管付近の1枚もしくは複数枚敷かずにおいてできた長方形又は正方形の床面開口部の形状に合わせた上面視長方形又は正方形になっていて、排水トラップをぴったりとはめ込むことができる。また、床面に設けられた排水トラップ取り付け用のねじ穴と排水トラップのねじ穴は、床面開口部に排水トラップをはめ込むだけで位置決めされるので、従来の円形状の蓋体で問題となっていた、位置あわせの煩わしさから解放されるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る排水トラップの一実施形態を示す。(a)は上面図、(b)は縦断面図、(c)は右側面図を示す。
【
図2】本発明に係る排水トラップの蓋体を示す。(a)は上面図、(b)は縦断面図、(c)は底面図を示す。
【
図3】本発明に係る排水トラップのパッキンホルダーを示す。(a)は上面図、(b)は縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る排水トラップの実施形態について図面を参照しながら説明する。先ず、本発明の排水トラップは、洗い場或いはバスルームやマンションの台所、洗面所、ベランダ或いは各種キャビネット内などに設置されるものであり、防水パンに本発明の排水トラップを一体に組み込んで使用することも可能であるが、防水パンを使用することなく、床面に排水トラップを設置することが可能な排水トラップに関するものであり、以下、後者の使用例の排水トラップについて図面を参照し説明する。
【0018】
図1は一実施形態を示す排水トラップ10の上面図及び縦断面図である。
床面Aの所定の位置に排水管Cが設けられ、その排水管Cを中心として略正方形の溝状の床面開口部Bが設けられている。
排水トラップ10は床面開口部Bを覆い床面A上に載置固定される。蓋体11は床面開口部Bにはめ込まれてねじ部11eにねじを差し込んで床面Aと載置固定され、蓋体11にはホースジョイント12と封水筒体14が納められて排水トラップ10を構成する。また、蓋体11とホースジョイント12とを回転可能に係止結合するための部材としてパッキンホルダー13が用いられる。なお、パッキンホルダー13によって蓋体11とホースジョイント12に係止結合される際には、その間にゴムパッキンなどのパッキン15を介して係止結合する。
【0019】
蓋体11とパッキンホルダー13の係合には、蓋体11の内部に形成されたリング状の溝形状のホース接続部11cに設けられた雌ねじ部11dと、パッキンホルダー13の凸部外周面に設けられた雄ねじ部13aが螺合されることによってホースジョイント12が固定される。
【0020】
蓋体11は
図2のように、外壁部11a、排水管接続部11b、ホース接続部11cから構成されている。外壁部11aは略正方形の溝状の床面開口部Bにはめ込まれるために上面視正方形となっている。また、所定の位置に床面との固定をするためのねじ穴11eが設けられている。
【0021】
蓋体11の外壁部11aは上面視略正方形で、床面に設けられた排水トラップ取り付け用のねじ穴と排水トラップ10のねじ穴が、床面開口部に排水トラップ10をはめ込むだけで位置決めされるので、従来の円形状の蓋体で問題となっていた、位置あわせの煩わしさから解放されるという利点がある。なお、ビス等でねじ止めされた後はビスキャップ等でねじ部11eを覆い保護すると外観上も良好で、ごみ等が堆積することもない。
【0022】
また、蓋体11の中心部には下向きに円筒形の排水管接続部11bが形成されている。排水管接続部11bの外径は排水管の内径に公差を持たせた径となっていて排水管内に挿入される構造となっている。
【0023】
また、蓋体11の上部中心部にはリング状の溝部を有したホース接続部11cが形成されており、その空間にホースジョイント12及びパッキンホルダー13が挿入固定される。内面には雌ねじ部11dが形成されていて、雌ねじ部11dは後述するパッキンホルダー13のフランジ部13aの外周部分に形成された雄ねじ部13bがねじ込まれる。
【0024】
蓋体が特許文献1のような従来の排水トラップの場合、ホース接続部は蓋体と床面をねじ止めする面よりも上方に突設されたフランジ形状となっているが、本発明のホース接続部11cの形状は、円形の溝状に形成されていて、蓋体と床面をねじ止めする面、つまり上面よりも下方内部に形成されているため、床面から蓋体上端部までの高さが非常に低くなっている。
【0025】
次に、パッキンホルダー13は
図3のように、外方張出フランジ形状であって、中心にはホースジョイント12を挿通するための孔が設けられており、凸部外周面に雄ねじ部13aを有した形状となっている。また、凸部内面は
図3(b)の断面図のようにテーパー部13bが形成されている。また、パッキンホルダー13の上面にはノブ13cが設けられている。
【0026】
パッキンホルダー13は、雄ねじ部13aと蓋体11の雌ねじ部11dとがねじ込まれて蓋体11に固定される。このパッキンホルダー13の役割はホースジョイント12を回転可能に蓋体11に固定するためのものである。ホースジョイント12は洗濯機ホースとの接続部であり、洗濯機や防水パンの設置位置によってその向きが決定される。そのため、ホースジョイント12は回転可能となっていて、向きが決定したのちはしっかりと固定されなければならない。
【0027】
そこで、パッキンホルダー13の凸部内面に形成されたテーパー部13bとホースジョイント12に設けられ対向するテーパー部分が圧接されながら、蓋体11にねじ込まれていく。パッキンホルダー13の底部と蓋体11との間にはリング状のパッキン15が備えられていて、確実に係止結合されると同時に水密性を保っている。
【0028】
また、パッキンホルダー13に設けられたノブ13cを把持してねじ込むことによって蓋体11へのねじ込み作業が簡便となる。
さらに、ノブ13cにはねじ込み量の目印の役割もある。ノブ13cを把持して複数周回転ねじ込まれたのち、パッキン15を押しつぶしながら回転するのでパッキンホルダー13を回転させるための力が徐々に大きくなっていき、最終的にはノブ13cの先端が蓋体11の所定の位置まで回転すると、ホースジョイント12が確実に固定されたことを確認することができる目印の役割も果たす。なお、本実施例では
図1のノブ13cの位置が固定確認の目安位置となるように構成されている。
これによって、固定力不足による水漏れや、逆に強く締め込みすぎによるパッキン15の早期劣化の防止、さらにはパッキン15やねじ部等の破損を予防することができる。
【0029】
パッキンホルダー13は蓋体にねじ込まれると、その上面は
図1のように蓋体の上面と面一となり、床面からの高さが非常に低くなる。このため、実質床面より突出している部分はホースジョイント12だけとなるので、洗濯機や防水パンの設置や移動の邪魔にならず、スペースを有効活用することができるという非常に優れた利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の活用例としては、洗い場或いはバスルームやマンションの台所、洗面所、ベランダ或いは各種キャビネット等の排水トラップとして利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
A 床面
B 床面開口部
C 排水管
10 排水トラップ
11 蓋体
11a 外壁部
11b 排水管接続部
11c ホース接続部
11d 雌ねじ部
11e ねじ穴
12 ホースジョイント
13 パッキンホルダー
13a 雄ねじ部
13b テーパー部
13c ノブ
14 封水筒体
15 パッキン