特許第6029132号(P6029132)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029132
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】野菜飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/02 20060101AFI20161114BHJP
   A23L 2/68 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   A23L2/02 F
   A23L2/02 E
   A23L2/00 D
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-191096(P2012-191096)
(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2014-45710(P2014-45710A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】316010388
【氏名又は名称】日本デルモンテ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤村 和樹
(72)【発明者】
【氏名】長井 淳夫
【審査官】 藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−103783(JP,A)
【文献】 特開2007−319139(JP,A)
【文献】 特開平10−014547(JP,A)
【文献】 特開2008−212070(JP,A)
【文献】 特開2009−178053(JP,A)
【文献】 特開2000−116362(JP,A)
【文献】 特開2008−253223(JP,A)
【文献】 特開2005−151856(JP,A)
【文献】 特開2008−035753(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/108347(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0065561(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0091719(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00
A23F 3/00− 5/00
C12G 1/00− 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱された玉葱及びトマトを含む野菜原料を含み、
前記野菜原料由来の酸度は、0.22質量%以下であり、
前記酸度が0.22質量%より高く0.34質量%以下となるように酸が添加されている
ことを特徴とする野菜飲料。
【請求項2】
請求項1に記載する野菜飲料において、
前記酸度が0.25質量%以上0.31質量%以下である
ことを特徴とする野菜飲料。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する野菜飲料において、
前記酸は、レモン果汁として添加されているクエン酸である
ことを特徴とする野菜飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、低温(コールド)でも加温(ホット)でも美味しく飲用することができる野菜飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、果実や野菜本来の味をそのまま活かした果汁飲料や野菜飲料が消費者の間で好まれている。通常、このような果汁飲料や野菜飲料は低温で飲用されるが、一方で、加温した状態でも飲用に適した果汁飲料も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
通常の果汁飲料を加温すると酸味と甘みのバランスがくずれ、酸味が際立って飲みにくくなる。これに対し、特許文献1に係る果汁飲料は、加糖して糖分を調整することにより、加温した状態であっても、酸味と甘みのバランスがよいものとなっている。
【0004】
しかしながら、上述したような果実本来の味を好むという消費者の嗜好からすれば、加糖した果汁飲料は、必ずしも消費者の嗜好に合うものではない。ましてや、加糖した野菜飲料においては、野菜本来の風味と顕著に異なってしまう。
【0005】
このように、野菜本来の甘みや酸味を活かし、かつ低温及び加温の何れにおいても美味しく飲用できる野菜飲料はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−35753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、低温及び加温の何れにおいても豊かな香味を有する野菜飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、加熱された玉葱及びトマトを含む野菜原料を含み、前記野菜原料由来の酸度は、0.22質量%以下であり、前記酸度が0.22質量%より高く0.34質量%以下となるように酸が添加されていることを特徴とする野菜飲料にある。
【0009】
かかる第1の態様では、野菜飲料を低温にした場合は、野菜本来の甘みや酸味が調和した飲料として美味しく飲用することができ、野菜飲料を加温した場合は、酸味が抑えられるとともに、野菜のコクや風味が増し、野菜スープのような飲料として飲用することができる。加熱した玉葱を含むことで、野菜飲料は、野菜本来のコクや甘みが引き出された香味豊かなものとなる。野菜飲料として適切な酸味を保持しつつ、酸を適宜添加するだけで、野菜飲料全体の酸度を上記範囲内に調整することができる。
【0010】
また、糖等を添加せずに酸度が調整されているため、野菜本来の甘みを活かした野菜飲料を提供することができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載する野菜飲料において、前記酸度が0.25質量%以上0.31質量%以下であることを特徴とする野菜飲料にある。
【0012】
かかる第2の態様では、より一層、甘みや酸味が調和し、特に、加温時の風味が増した野菜飲料を提供することができる。
【0017】
本発明の第の態様は、第1又は第2の態様に記載する野菜飲料において、前記酸は、レモン果汁として添加されているクエン酸であることを特徴とする野菜飲料にある。
【0018】
かかる第の態様では、レモン果汁を用いて酸度を上記範囲内に調整することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、低温及び加温の何れにおいても豊かな香味を有する野菜飲料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る野菜飲料は、玉葱及びトマトを含む野菜原料を含み、酸度が0.22質量%以上0.34質量%以下、好ましくは、酸度が0.25質量%以上0.31質量%以下であるものである。本発明に係る野菜飲料は、低温(約5〜15度)にしても、加温(約40〜60度)しても野菜本来の甘みや旨味を活かした豊かな香味を有する。また、本発明に係る野菜飲料は、基本的には無加糖であり、嗜好性を与えるなど本来の目的での果汁も無添加である。
【0021】
本発明に係る野菜原料とは、野菜飲料の原料として使用可能な野菜をいい、少なくとも玉葱及びトマトを含む。野菜原料の形態としては、飲用可能であれば特に限定されないが、次のようなものが挙げられる。すなわち、野菜を圧搾するなどして得られた搾汁や、これを濃縮した濃縮搾汁、該濃縮搾汁を還元した還元搾汁、野菜を細かく破砕又はすり潰すなどして得られたペーストやピューレ、飲食可能な程度に細かく切り刻んだ野菜片などである。野菜原料は、このような1種又は2種以上の形態で野菜飲料に含まれる。
【0022】
玉葱は、特に限定されないが、黄タマネギや赤タマネギ、具体的には例えば、クエルリッチ、スーパー北もみじ、北もみじ、ターザン、ターボ、オホーツクなどの品種が使用できる。
【0023】
ここで、加熱した玉葱を用いることが好ましい。加熱した玉葱を含むことで、野菜飲料は、野菜本来のコクや甘みが引き出された香味豊かなものとなる。特に加温した野菜飲料は、野菜の甘みがさらに際立ったものとなる。
【0024】
トマトは、特に限定されないが、生食用トマトや加工用トマトの何れも使用することができる。生食用トマトは、主に桃色系品種のトマトであり、例えば、桃太郎、りんか409、麗容、ぜいたくトマトなどを用いることができる。加工用トマトは、主に赤色系品種のトマトであり、NDM736、カゴメ77などを用いることができる。
【0025】
玉葱及びトマト以外の野菜原料としては、人参、セロリ、カボチャ、キャベツ、ピーマン、ブロッコリー、レタス、カブ、白菜、大根、ほうれん草、カリフラワー、アスパラガスなどを用いることができる。
【0026】
本発明に係る野菜飲料は、上述した野菜原料の他に、塩などの調味料(糖分を除く)や胡椒などの香辛料を添加してもよい。また、水が添加されてもよい。
【0027】
本発明に係る野菜飲料の酸度は、0.22質量%以上0.34質量%以下である。好ましくは、酸度が0.25質量%以上0.31質量%以下である。
【0028】
本発明に係る野菜飲料の酸度とは、野菜飲料中に含まれる総酸量の質量パーセント濃度[w/w%]をいう。総酸量は、アルカリ規定液による滴定により、pH指示薬による終点判別を行い、酸換算当量(eq)として得られる。例えば、野菜飲料10gを希釈して一定容として、供試液とする。供試液の一定量について、フェノールフタレインをpH指示薬とし、N/10水酸化ナトリウム標準液で滴定し、該標準液の量から100g中の総酸量を得ることができる。
【0029】
野菜飲料に含まれる酸は、野菜原料由来の酸のみならず、別途に添加した酸を含んでいてもよい。添加する酸としては、飲用可能であれば特に限定はなく、クエン酸や酢酸、乳酸、リンゴ酸などを用いることができる。また、酸の代わりにクエン酸やリンゴ酸を含有する果汁を添加してもよい。例えば、レモン果汁を野菜飲料に添加することで、レモン果汁に含まれるクエン酸により酸度を調整することができる。
【0030】
酸度が上記範囲となるようにするには、野菜原料に含まれる酸が少ないものを極力多く配合する。酸が少ない野菜原料としては、上述した野菜原料のうちトマト以外が該当する。
【0031】
特に、野菜原料の酸度を0.22質量%以下となるようにすることが好ましい。野菜原料の酸度とは、野菜原料に含まれる酸の野菜飲料に対する濃度である。このような酸度とすることで、野菜飲料として適切な酸味を保持しつつ、適宜クエン酸などを添加するだけで、野菜飲料全体の酸度を0.22質量%以上0.34質量%以下に調整することができる。
【0032】
ここで、酸味については、同じ酸度であっても高温になるほど酸味が際立つという特質がある。また、酸度が高くなれば、高温での酸味はより一層際立つ。
【0033】
一般的な野菜飲料(トマトミックスジュース)では、酸度は0.35質量%以上0.40質量%以下である。一方、本発明に係る野菜飲料は、それよりも低い0.22質量%以上0.34質量%以下である。
【0034】
したがって、本発明に係る野菜飲料は、酸度が従来の野菜飲料の酸度よりも低いので、高温でも酸味が強くなることを抑えることができる。
【0035】
なお、野菜飲料の酸度が0.22質量%未満であると、低温時の風味に締まりがないものとなってしまう。また、野菜飲料の酸度が0.34質量%を超えると、高温時に酸味が強くなりすぎてしまう。
【0036】
以上に説明したように、本発明の野菜飲料は、酸度を0.22質量%以上0.34質量%以下とすることで、特に、加温時の酸味を抑えられ、香味の調和が取れたものとなる。すなわち、低温の野菜飲料は、野菜本来の甘みや酸味が調和した飲料として美味しく飲用することができる。また、加温の野菜飲料は、酸味が抑えられるとともに、野菜のコクや風味が増し、野菜スープのような飲料として飲用することができる。
【0037】
特に、野菜飲料の酸度を0.25質量%以上0.31質量%以下とすることで、より一層、甘みや酸味が調和し、特に、加温時の風味が増した野菜飲料を得ることができる。
【0038】
また、酸度の調整に際しては、野菜原料自体の酸度を極力低く抑え、適宜クエン酸などを添加しているのみである。すなわち、塩などの調味料や香辛料、水を除けば、野菜のみからなり、いわゆる野菜100%飲料として、消費者の嗜好に適した野菜飲料を提供することができる。従来では、相対的に酸味が感知されにくくするために糖を添加していたが、本発明の野菜飲料は、このような糖の添加を行わない。このため、野菜本来の甘みを活かした野菜飲料を得ることができる。
【0039】
さらに、加熱した玉葱により、加温時の野菜のコクや風味がより一層増大した野菜飲料を得ることができる。
【0040】
上述した野菜飲料は、野菜を搾汁などの飲用可能な形態に加工して野菜原料とし、該野菜原料を混合し、塩、香辛料、酸、水などで調合することにより製造することができる。野菜原料や、塩、香辛料、酸、水などを添加する順序に、特に限定はない。また、それらを同時に混合してもよい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。
【0042】
[実施例1〜5及び比較例6〜7]
市販のトマトペースト、人参濃縮汁(50°Bx)、オニオンソテーペーストを野菜原料とした。これらの野菜原料を混合したのち、塩を添加し、クエン酸を添加し(実施例1を除く)、各野菜飲料が1000gとなるように水を調合して実施例1〜5、比較例6〜7に係る野菜飲料を製造した。各配合量は表1のとおりである。
【0043】
【表1】
【0044】
[試験例1]
実施例及び比較例に係る野菜飲料の酸度を測定した。測定方法は、野菜飲料10gを希釈して一定容として、供試液とした。供試液の一定量について、フェノールフタレインをpH指示薬とし、N/10水酸化ナトリウム標準液で滴定し、全ての酸をクエン酸と仮定して、該標準液の量から10g中の総酸量を得た。この総酸量の野菜飲料に対する濃度(酸度)を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
実施例1は、クエン酸が未添加であるので、野菜原料由来の酸のみを含むものである。すなわち、表1に示した配合の野菜原料由来の酸度は、0.22質量%であることが分かる。そして、実施例2〜6及び比較例6〜7は、実施例1をベースに、クエン酸の添加量に応じて酸度が増大していることが分かる。
【0047】
[試験例2]
実施例1〜5及び比較例6〜7を低温(15℃)に冷やした野菜飲料と、加温(50℃)した野菜飲料とについて、識別能力を有するパネラー4人による官能検査を実施した。この結果を表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
官能検査の結果によれば、実施例1〜5に係る野菜飲料は、低温及び加温のいずれであっても、全般的に香味良好であり、飲用に適するものであった。すなわち、表2及び表3から、酸度が0.22質量%以上0.34質量%以下であれば、低温でも加温でも美味しく飲用することができる野菜飲料が得られることが分かった。
【0050】
また、実施例2〜4に係る野菜飲料は、酸味が強い(実施例5)、締まりがない(実施例1)といったこともなかった。すなわち、低温及び加温の何れであっても酸味や甘みのバランスに優れたものであった。このように表2及び表3から、酸度が0.25質量%以上0.31質量%以下であれば、低温でも加温でも、より一層、美味しく飲用することができる野菜飲料が得られることが分かった。
【0051】
一方、比較例6〜7に係る野菜飲料は、加温時の酸味が強く、飲用に不適であった。すなわち、表2及び表3から、酸度が0.34質量%を超えると、飲用に不適な野菜飲料となることが分かった。
【0052】
[実施例8]
市販のトマトペースト、人参濃縮汁(50°Bx)、オニオンソテーペースト、セロリピューレ、かぼちゃペースト、野菜ミックス濃縮汁(キャベツ、ピーマン、ブロッコリー、カリフラワー、アスパラガスからなる濃縮汁)を野菜原料とした。
【0053】
これらの野菜原料を混合したのち、塩及び胡椒を添加し、レモン果汁としてクエン酸を添加し、野菜飲料が1000gとなるように水を調合して実施例8に係る野菜飲料を製造した。各配合量は表4のとおりである。
【0054】
【表4】
【0055】
[試験例3]
実施例8に係る野菜飲料の酸度を測定した。測定方法は、試験例1と同様である。酸度は、0.28質量%であった。すなわち、実施例8からは、レモン果汁としてクエン酸を添加した場合であっても、酸度を0.22質量%以上0.34質量%以下に調整できることが分かった。
【0056】
[試験例4]
実施例8を低温(15℃)に冷やした野菜飲料と、加温(50℃)した野菜飲料とについて、識別能力を有するパネラー4人による官能検査を実施した。結果は、実施例8に係る野菜飲料は、低温及び加温のいずれであっても、香味良好であり、飲用に適するものであった。すなわち、レモン果汁としてクエン酸を添加して酸度を調整した場合であっても、酸度が0.22質量%以上0.34質量%以下とすることができ、低温でも加温でも美味しく飲用することができる野菜飲料が得られることが分かった。