特許第6029189号(P6029189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029189
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】部品実装機用のリニアモータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/02 20060101AFI20161114BHJP
   H02K 41/03 20060101ALI20161114BHJP
   H02K 9/22 20060101ALI20161114BHJP
【FI】
   H02K41/02 Z
   H02K41/03 A
   H02K9/22 A
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-507056(P2014-507056)
(86)(22)【出願日】2012年3月26日
(86)【国際出願番号】JP2012057797
(87)【国際公開番号】WO2013145085
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2014年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】飼沼 諒
(72)【発明者】
【氏名】永田 良
(72)【発明者】
【氏名】藤田 政利
(72)【発明者】
【氏名】山田 修平
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−245474(JP,A)
【文献】 特開2007−236152(JP,A)
【文献】 特開2006−197773(JP,A)
【文献】 特開2011−166957(JP,A)
【文献】 特表2009−531002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/02
H02K 9/22
H02K 41/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動方向に沿い複数の磁石のN極およびS極が交互に列設された軌道部材と、コアおよびコイルをもつ電機子を有して前記軌道部材に移動可能に装架された移動体とを備え、前記コイルに電流を通電したときに前記コアに誘起される磁束と前記軌道部材の前記磁石との間に前記移動方向の推進力を発生する部品実装機用のリニアモータ装置であって、
前記移動体は、
面状に延在する基体、および前記基体の表面から垂直方向に立設された複数の放熱フィンからなり、前記電機子の上方に固定保持されるヒートシンク部と、
前記ヒートシンク部の前記基体の裏面に結合されて延在する放熱部、および前記コアに形成された冷却用通路に配設されて前記放熱部に連通する集熱部からなり、熱伝導特性の良好な熱伝導部材と、
前記軌道部材と直交する方向に移動して前記ヒートシンク部の上方を移動しない部品実装ヘッドと、
をさらに有する部品実装機用のリニアモータ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記軌道部材は、部品実装機の機台に備えられており、
前記ヒートシンク部によって暖められた空気を換気するファンを、前記機台の前記軌道部材の上方位置に有する部品実装機用のリニアモータ装置。
【請求項3】
請求項1または2において、共通な1つの前記軌道部材と、複数の前記移動体とで構成され、部品実装機の部品移載装置に適用される部品実装機用のリニアモータ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、前記冷却用通路は、前記コアの内部に穿設された穴、または、前記コアの外周に形成された溝である部品実装機用のリニアモータ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、
前記電機子のコアおよびコイルは三相で別体とされ、
各相のコアは、前記磁束が通る断面積を部分的に拡げるとともに隣り合う相の間では相互に突き当たって位置関係を規定する突き当て凸部を側面に有し、前記突き当て凸部に前記冷却用通路が形成されている部品実装機用のリニアモータ装置。
【請求項6】
請求項5において、前記各相のコアは、他相と向かい合いまたは外方に向かう両側面にそれぞれ、複数の前記突き当て凸部を有する部品実装機用のリニアモータ装置。
【請求項7】
請求項5または6において、前記コアの突き当て凸部に複数の前記冷却用通路が形成されている部品実装機用のリニアモータ装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項において、
隣り合う相の間で相互に突き当たって位置関係を規定する突き当て凸部の突き当て面に溝が形成され、
相互に突き当たる2つの突き当て凸部の前記溝にまたがって共通の熱伝導部材が配設されている部品実装機用のリニアモータ装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項において、
前記電機子のコアおよびコイルは三相で別体とされ、
前記電機子は、隣り合う相のコアの間に配設されて前記コア相互の位置関係を規定するとともに、熱伝導率の高い材料で形成されて内部に熱伝導特性の良好な熱伝導部材が配設された伝熱ブロックをさらに有する部品実装機用のリニアモータ装置。
【請求項10】
請求項9において、前記電機子は、隣り合う相のコアの間に複数の伝熱ブロックを有し、または/かつ前記伝熱ブロックに複数の熱伝導部材が配設されている部品実装機用のリニアモータ装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項において、
前記熱伝導部材はヒートパイプであり、前記放熱部は、前記ヒートシンク部の前記基体の裏面に結合されて延在するヒートパイプ放熱部であり、前記集熱部は、前記冷却用通路に配設されて前記ヒートパイプ放熱部に連通するヒートパイプ集熱部である部品実装機用のリニアモータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は部品実装機用のリニアモータ装置に関し、より詳細には、移動体側のコイルの冷却性能を向上したリニアモータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の部品が実装された基板を生産する基板用作業機器として、はんだ印刷機、部品実装機、はんだリフロー機、基板検査機などがあり、これらを基板搬送装置で連結して基板生産ラインを構築する場合が多い。これらの基板用作業機器の多くは、基板上を移動して所定の作業を行う移動体を備えており、移動体を駆動する一手段としてリニアモータ装置を用いることができる。この種のリニアモータ装置は、一般的に、移動方向に沿い複数の磁石のN極およびS極が交互に列設された軌道部材と、コアおよびコイルを有する電機子を含んで構成された移動体とを備える。
【0003】
ここで、リニアモータ装置で大きな推進力を得るために、大きく分けて、(A)コイルに流す電流を大きくする、(B)磁石の磁力を強くする、(C)コアの透磁率を大きくする、の3手段が考えられる。このうち(B)および(C)の手段については、現時点の技術で物性上の限界に近づいており今後の飛躍的な向上は望めない。したがって、(A)の手段が有効であるものの、大電流が流れるとコイルの銅損による発熱量が増加して構成部材の熱変形や熱劣化などが発生するという問題点がある。そのため、特許文献1〜3に例示されるように、リニアモータ装置の各種冷却構造が提案されている。
【0004】
本願出願人が特許文献1で出願したリニアモータは、複数のコアの隣接するもの同士に関してコイルが千鳥状にかつ隙間を隔てて配設され、コイル間の隙間にヒートパイプの一端部が挿入される一方、ヒートパイプの他端部が隙間の外部に突出されて複数のフィンが設けられている。このようなヒートパイプを用いた冷却構造を採用することで、電機子を構成するコイルの温度上昇を良好に抑制できる。
【0005】
また、特許文献2に開示されるリニアモータ用電機子は、複数の極歯間にスロットが形成されたコアと、スロット内に一部が配置されて極歯を励磁する複数の励磁巻線(コイル)とを有し、励磁巻線のスロット内に位置する部分を両側から挟み込むようにして冷却用配管が敷設されている。これにより、極歯および励磁巻線の冷却を効率よく行うことができる、とされている。
【0006】
さらに、特許文献3に開示されるリニアモータは、複数の永久磁石を並べた固定子と、コアに電機子コイルを巻装してなる可動子とを備え、電機子の上部に配設された電機子取付板と、さらに上方に断熱板を介して配設されたテーブルとの間に冷却ユニットが設けられ、冷却ユニットの内部にヒートパイプおよびヒートシンクが設けられている。これにより、テーブルへの伝熱による熱変形を無くしつつ、電機子の熱を効率的に除去できる、とされている。
【0007】
さらに、特許文献4のリニア圧縮機はリニアモータを内蔵しており、コイルが巻回されたボビンに接するように形成された放熱流路と、放熱流路に冷却流体を供給する冷却流体供給手段とを含んで構成されたことを特徴としている。従属する下位請求項では、放熱流路として放熱パイプ、冷却流体としてオイル、冷却流体供給手段としてオイルポンプがそれぞれ開示されている。これにより、コイルの過熱によるリニア圧縮機の効率低下および寿命短縮が抑止される、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−172070号公報
【特許文献2】特許4617338号公報
【特許文献3】特許4636354号公報
【特許文献4】特開2006−144697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1ではコイル間の隙間にヒートパイプが配置され、特許文献2では極歯と励磁巻線との間に冷却用配管が配置されている。このため、ヒートパイプまたは冷却用配管の分だけコイルを巻回するスペースが減少してしまい、巻回数を多くできなくなっている。また、ヒートパイプや冷却用配管の配置スペースを確保しつつコイルの巻回数を多くすると、電機子が大きくなり、さらには移動体の大形化にも波及してしまう。
【0010】
また、特許文献3では、電機子の上方に冷却ユニットが設けられるが、リニアモータで一般的な縦長のコイルの上側の短辺に接することになる。したがって、コイルから冷却ユニットへと熱が十分に伝わらず、コイル全体を効率的に冷却できない。さらに、コイル内で温度差が大きくなり、高温部分によって通電できる電流が制限されるため、推進力が低下してしまう。また、特許文献4に例示されるオイルポンプなどの冷却流体供給手段を備えて強制冷却する構造は、オイルポンプでの電力消費やメンテナンスなど別の問題が生じ、必ずしも得策にならない。
【0011】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたもので、移動体側のコイルを効率よく冷却して大きな電流を流すとともにコイルの巻回スペースを大きく確保して巻回数を増やすことで大きな推進力が得られる冷却構造を有した部品実装機用のリニアモータ装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する請求項1に係る部品実装機用のリニアモータ装置の発明は、移動方向に沿い複数の磁石のN極およびS極が交互に列設された軌道部材と、コアおよびコイルをもつ電機子を有して前記軌道部材に移動可能に装架された移動体とを備え、前記コイルに電流を通電したときに前記コアに誘起される磁束と前記軌道部材の前記磁石との間に前記移動方向の推進力を発生する部品実装機用のリニアモータ装置であって、前記移動体は、面状に延在する基体、および前記基体の表面から垂直方向に立設された複数の放熱フィンからなり、前記電機子の上方に固定保持されるヒートシンク部と、前記ヒートシンク部の前記基体の裏面に結合されて延在する放熱部、および前記コアに形成された冷却用通路に配設されて前記放熱部に連通する集熱部からなり、熱伝導特性の良好な熱伝導部材と、前記軌道部材と直交する方向に移動して前記ヒートシンク部の上方を移動しない部品実装ヘッドと、をさらに有する。
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記軌道部材は、部品実装機の機台に備えられており、前記ヒートシンク部によって暖められた空気を換気するファンを、前記機台の前記軌道部材の上方位置に有する。
請求項3に係る発明は、請求項1または2において、共通な1つの前記軌道部材と、複数の前記移動体とで構成され、部品実装機の部品移載装置に適用される。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記冷却用通路は、前記コアの内部に穿設された穴、または、前記コアの外周に形成された溝である。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記電機子のコアおよびコイルは三相で別体とされ、各相のコアは、前記磁束が通る断面積を部分的に拡げるとともに隣り合う相の間では相互に突き当たって位置関係を規定する突き当て凸部を側面に有し、前記突き当て凸部に前記冷却用通路が形成されている。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項5において、前記各相のコアは、他相と向かい合いまたは外方に向かう両側面にそれぞれ、複数の前記突き当て凸部を有する。
【0016】
請求項7に係る発明は、請求項5または6において、前記コアの突き当て凸部に複数の前記冷却用通路が形成されている。
【0017】
請求項8に係る発明は、請求項5〜7のいずれか一項において、隣り合う相の間で相互に突き当たって位置関係を規定する突き当て凸部の突き当て面に溝が形成され、相互に突き当たる2つの突き当て凸部の前記溝にまたがって共通の熱伝導部材が配設されている。
【0018】
請求項9に係る発明は、請求項1〜8のいずれか一項において、前記電機子のコアおよびコイルは三相で別体とされ、前記電機子は、隣り合う相のコアの間に配設されて前記コア相互の位置関係を規定するとともに、熱伝導率の高い材料で形成されて内部に熱伝導特性の良好な熱伝導部材が配設された伝熱ブロックをさらに有する。
【0019】
請求項10に係る発明は、請求項9において、前記電機子は、隣り合う相のコアの間に複数の伝熱ブロックを有し、または/かつ前記伝熱ブロックに複数の熱伝導部材が配設されている。
【0021】
請求項11に係る発明は、請求項1〜10のいずれか一項において、前記熱伝導部材はヒートパイプであり、前記放熱部は、前記ヒートシンク部の前記基体の裏面に結合されて延在するヒートパイプ放熱部であり、前記集熱部は、前記冷却用通路に配設されて前記ヒートパイプ放熱部に連通するヒートパイプ集熱部である。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る部品実装機用のリニアモータ装置の発明では、移動体のコアに冷却用通路を形成し、冷却用通路の内部に熱伝導特性の良好な熱伝導部材を配設する。コアは、一般的に鉄製、または鉄を主成分とする合金製の鋼板が積層されて形成され熱伝導が良好であるので、コイルで発生した熱はコアを経由して熱伝導部材に伝わり、コイルを効率良く冷却でき、コイルに大きな電流を流せる。また、コアに加工を施して冷却用通路を形成するので、従来技術のように冷却用通路でコアの周囲空間を占有してコイルの巻回スペースを削減することが無くなり、従来よりも巻回数を増やせる。これらの総合的な効果により、従来よりも大きな推進力を得ることができる。別の見方をすれば、一定の推進力を得る電機子を従来よりも小形化できる。
また、電機子の上方のヒートシンク部は、基体および複数の放熱フィンからなり、熱伝導部材は、基体の裏面に連結されて延在する放熱部、および冷却用通路に配設されて放熱部に連通する集熱部からなる。したがって、冷却用通路から放熱フィンへの熱移送の効率が極めて高くなる。加えて、移動部材は、ヒートシンク部の上方を移動しないので、放熱フィンは効率的に冷却される。
さらに、請求項2に係る発明では、ヒートシンク部によって暖められた空気を換気するファンを有するので、放熱フィンは効率的に冷却される。
請求項3に係る発明は、共通な1つの軌道部材と、複数の移動体とで構成されるので、複数の部品移載装置を備える部品実装機において実施することができる。
【0023】
請求項4に係る発明では、冷却用通路は、コアの内部に穿設された穴、または、コアの外周に形成された溝とされている。したがって、コアに簡単な加工を施して冷却用通路を形成でき、コストの上昇を抑えられる。
【0024】
請求項5に係る発明では、電機子のコアおよびコイルは三相で別体とされ、各相のコアは磁束が通る断面積を部分的に拡げた突き当て凸部を側面に有し、突き当て凸部に冷却用通路が形成されている。このため、冷却用通路の形成によってコアの磁束誘起特性が低下せず、コイルの電流や巻回数の増加に応じた大きな推進力を得ることができる。
【0025】
請求項6に係る発明では、各相のコアが複数の突き当て凸部を有し、それぞれの突き当て凸部に冷却用通路が形成されるので、冷却用通路の数が増加して一層効率良くコイルを冷却でき、一層大きな推進力を得ることができる。
【0026】
請求項7に係る発明では、コアの突き当て凸部に複数の冷却用通路が形成されているので、冷却用通路の数が増加して一層効率良くコイルを冷却でき、一層大きな推進力を得ることができる。
【0027】
請求項8に係る発明では、隣り合う相の間で相互に突き当たる2つの突き当て凸部の溝にまたがって共通の熱伝導部材が配設されており、相間の2箇所に熱伝導部材を配設できる。したがって、突き当て凸部が狭隘な構造の場合であっても熱伝導部材を設けて効率良くコイルを冷却でき、コイルに従来よりも大きな電流を流して、大きな推進力を得ることができる。
【0028】
請求項9に係る発明では、電機子のコアおよびコイルは三相で別体とされ、電機子は、隣り合う相のコア相互の位置関係を規定するとともに熱伝導部材が配設された伝熱ブロックをさらに有する。伝熱ブロックは、コアを構成する主材料の鉄よりも熱伝導率の高い材質で形成することができる。コイルで発生した熱は、熱伝導率の高い伝熱ブロックを経由して熱伝導部材に伝わるので、コイルを効率良く冷却できる。したがって、コイルに従来よりも大きな電流を流して、大きな推進力を得ることができる。
【0029】
請求項10に係る発明では、電機子は、隣り合う相のコアの間に複数の伝熱ブロックを有し、または/かつ伝熱ブロックに複数の熱伝導部材が配設されている。したがって、熱伝導部材の数が増加して一層効率良くコイルを冷却でき、一層大きな推進力を得ることができる。
【0031】
請求項11に係る発明では、ヒートパイプは、ヒートシンク部の基体の裏面に結合されて延在するヒートパイプ放熱部と、冷却用通路に配設されてヒートパイプ放熱部に連通するヒートパイプ集熱部とからなる。このため、冷却用通路から放熱フィンへの熱移送の効率が極めて高くなる。したがって冷媒の相変化および対流を利用してコイルを格段に効率良く冷却でき、格段に大きな推進力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の部品実装機用のリニアモータ装置を適用できる部品実装機の全体構成を示した斜視図である。
図2】(1)は第1実施形態の部品実装機用のリニアモータ装置の平面断面図であり、(2)は移動体の側面図である。
図3】移動体を前側から見た正面図である。
図4】コアの平面形状を示す平面図である。
図5】(1)はヒートシンク部を説明するための移動体の平面図であり、(2)はヒートシンク部および上部取付板を取り外した状態の移動体の平面図である。
図6】第2実施形態のリニアモータ装置の電機子の平面断面図である。
図7】第3実施形態のリニアモータ装置の電機子の平面断面図である。
図8】第4実施形態のリニアモータ装置の電機子の平面断面図である。
図9】第5実施形態のリニアモータ装置の電機子の平面断面図である。
図10】第6実施形態のリニアモータ装置の電機子の平面断面図である。
図11】第7実施形態のリニアモータ装置の電機子の平面断面図である。
図12】従来構成のリニアモータ装置の平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
まず、本発明の部品実装機用のリニアモータ装置を適用できる部品実装機10について、図1を参考にして説明する。図1は、本発明の部品実装機用のリニアモータ装置1を適用できる部品実装機10の全体構成を示した斜視図である。部品実装機10は、基板に多数の部品を実装する装置であり、2セットの同一構造の部品実装ユニットが概ね左右対称に配置されて構成されている。ここでは、図1の右手前側の部品実装ユニットを例にして説明する。なお、図中の左奥側から右手前側に向かう部品実装機10の幅方向をX軸方向とし、部品実装機10の長手方向をY軸方向とする。
【0034】
部品実装機10は、基板搬送装置110、部品供給装置120、2つの部品移載装置130、140などが基台190に組み付けられて構成されている。基板搬送装置110は、部品実装機10の長手方向の中央付近をX軸方向に横断するように配設されている。基板搬送装置110は、図略の搬送コンベアを有しており、基板をX軸方向に搬送する。また、基板搬送装置110は、図略のクランプ装置を有しており、基板を所定の実装作業位置に固定および保持する。部品供給装置120は、部品実装機10の長手方向の前部(図1の左前側)に設けられている。部品供給装置120は、複数のカセット式フィーダ121を有し、各フィーダ121にセットされたキャリアテープから2つの部品移載装置130、140に連続的に部品を供給するようになっている。
【0035】
2つの部品移載装置130、140は、X軸方向およびY軸方向に移動可能ないわゆるXYロボットタイプの装置である。2つの部品移載装置130、140は、部品実装機10の長手方向の前側および後側に、相互に対向するように配設されている。各部品移載装置130、140をY軸方向に移動させるために、第1実施形態の部品実装機用のリニアモータ装置1が適用されている。また、各部品移載装置130、140をX軸方向に移動させるためにボールねじ送り機構が適用されており、各部品移載装置130、140は、X軸方向に延在するX軸レール150およびX軸レール150に沿って移動する部品実装ヘッド160を備えている。X軸レール150は、その一端151が補助レール170に移動可能に装架され、その他端152がリニアモータ装置1の移動体3に結合されて、Y軸方向に移動するようになっている。部品実装ヘッド160の下端には図略の吸着ノズルが設けられており、吸着ノズルは負圧を利用して部品供給装置120から部品を吸着採取し、実装作業位置の基板へ実装する。
【0036】
部品実装機10は、他に、オペレータと情報を交換するための表示設定装置180や、基板や部品を撮像する図略のカメラなどを備えている。
【0037】
リニアモータ装置1は、2つの部品移載装置130、140に共通な軌道部材2と、2つの部品移載装置130、140ごとの移動体3で構成されている。軌道部材2は、移動体3を挟んで両側に平行配置され、移動方向となるY軸方向に延在している。軌道部材2の向かい合う内側側面には、Y軸方向に沿って複数の磁石21が列設されている。移動体3は、軌道部材2に移動可能に装架されている。
【0038】
次に、第1実施形態の部品実装機用のリニアモータ装置1について詳述する。図2の(1)は第1実施形態の部品実装機用のリニアモータ装置1の平面断面図であり、(2)は移動体3の側面図である。図2の左右方向が移動体3の移動方向であり、便宜的に移動体3の左側を前側とする。また、図3は、移動体3を前側から見た正面図である。
【0039】
軌道部材2は、図2の(1)に示されるように、移動体3を挟む左右両側(図では上下の両側)に、移動方向(図では左右方向)に延在するように配置されている。軌道部材2の向かい合う内側側面には、移動方向に沿い複数の磁石21のN極およびS極が交互に列設されている。移動体3を挟んで向かい合う磁石21は、互いに異なる極性とされている。
【0040】
移動体3は、三相がそれぞれ別体とされる電機子31を含んで構成されている。電機子31は相ごとのコア4U、4V、4Wおよびコイル5U、5V、5Wを有している。三相のコア4U、4V、4Wおよびコイル5U、5V、5Wは、下部取付板35上の移動方向に並べられ、上部取付板36により押さえつけられて組み付けられている。下部取付板35および上部取付板36は、概ね同じ大きさの矩形で上部取付板36のほうが薄くなっている。下部取付板35および上部取付板36は、アルミニウム製などの堅固な板材で形成され、図略の固定用座や固定用穴などが適宜設けられている。移動体3は、下部取付板35と上部取付板36との間に、三相の電機子31を少なくとも1組備え、複数組の電機子31を移動方向に並べて備えてもよい。
【0041】
コア4U、4V、4Wは、プレス機により打ち抜き加工された電磁鋼板が多数枚積層されて形成されている。図4は、コア4U、4V、4Wの平面形状を示す平面図であり、この平面図は電磁鋼板の形状にも一致している。図示されるように、コア4U、4V、4Wの平面形状は概ね十文字形であり、移動方向に直角な幅方向(図4では上下方向)にヨーク部41が延在して磁束Hを通すようになっている。ヨーク部41の両端にはそれぞれ、鉤の手状に拡げられた磁極形成部42が形成されている。コイル5U、5V、5Wに電流が通電されると、磁極形成部42の一方にN極、他方にS極が誘起され、軌道部材2の磁石21との間に推進力が発生する。
【0042】
ヨーク部41の移動方向前後の側面中央からそれぞれ、突き当て凸部43が前方および後方に突設されている。突き当て凸部43は、磁束Hが通る断面積を部分的に拡げている。隣り合う前側のコア4Uと中央のコア4Vとの間、ならびに中央のコア4Vと後側のコア4Wとの間で、突き当て凸部43は先端の突き当て面44で相互に突き当たって位置関係を規定する。また、前側のコア4Uの前側ならびに後側のコア4Wの後側で、突き当て凸部43の突き当て面44は外方を向いている。
【0043】
各コア4U、4V、4Wの中心には、上下方向に貫通する締結孔45が穿設されている。図2の(2)に示されるように、締結孔45には締結ロッド451が挿通され、締結ロッド451の上下端は上部取付板36および下部取付板35で締結されている。また、コア4U、4V、4Wの各突き当て凸部43の概ね中央に、上下方向に延在する冷却用穴46が穿設されている。さらに、突き当て凸部43の突き当て面44に、断面半円状で上下方向に延在する冷却用溝47が形成されている。冷却用穴46および冷却用溝47は、本発明の冷却用通路に相当する。締結孔45、冷却用穴46および冷却用溝47は、プレス機の打ち抜き型を従来から変更することで、工程数を増やすことなく形成できる。
【0044】
前側のコア4Uの前側の突き当て凸部43の冷却用穴46、ならびに後側のコア4Wの後側の突き当て凸部43の冷却用穴46には、本発明の熱伝導部材に相当するヒートパイプ61、62のヒートパイプ集熱部611、621が配設されている。さらに、前側のコア4Uの後側の突き当て凸部43と中央のコア4Vの前側の突き当て凸部43との間には、2つの冷却用溝47にまたがって断面円形で上下方向に延在する空間が形成される。この空間に、ヒートパイプ63のヒートパイプ集熱部631が配設されている。同様に、中央のコア4Vの後側の突き当て凸部43と後側のコア4Wの前側の突き当て凸部43との間にも、2つの冷却用溝47にまたがって断面円形で上下方向に延在する空間が形成される。この空間にも、ヒートパイプ64のヒートパイプ集熱部641が配設されている。
【0045】
一方、コイル5U、5V、5Wは、コア4U、4V、4Wの突き当て凸部43により分離されたヨーク部41の左右に分かれて巻回形成されており、左右で巻回数は等しくなっている。三相のコイル5U、5V、5Wは、Y結線またはΔ結線に接続されており、移動体3上に搭載された図略の電源部から電流の大きさおよび流れる方向が調整されて通電されるようになっている。
【0046】
コイル5U、5V、5Wを冷却するための部位として、移動体3に4本のヒートパイプ61〜64およびヒートシンク部7が設けられている。図5の(1)はヒートシンク部7を説明するための移動体3の平面図であり、(2)はヒートシンク部7および上部取付板36を取り外した状態の移動体3の平面図である。
【0047】
図3および図5の(1)に示されるように、ヒートシンク部7は、移動体の3の上部取付板36から間隔をあけて上方に固定保持されている。ヒートシンク部7は、下部取付板35および上部取付板36と同程度の大きさの矩形の薄板で形成された基体71、および基体71の上面から垂直方向に立設された複数の薄板状の放熱フィン72からなる。図示される例では、12枚の放熱フィン72が移動方向に平行に立設されている。これによれば、移動体3が移動するのに伴い、放熱フィン72は、その間を空気が通り抜けて、効率的に冷却されるようになっている。温められた空気は、機台190の軌道部材2の上方位置に設けられた6個のファン191(図1に示す)によって換気される。ヒートシンク部7は、熱伝導率が高く熱放散の良好な金属製とするのが好ましく、かつ移動体3の重量増加を抑えるために軽量であることが好ましい。ヒートシンク部7は、例えばアルミニウムを用いた鋳造によって製造することができる。
【0048】
一方、各ヒートパイプ61〜64はそれぞれ、ヒートパイプ集熱部611、621、631、641およびヒートパイプ放熱部612、622、632、642からなる。各ヒートパイプ集熱部611、621、631、641は、前述したように、コア4U、4V、4Wの冷却用穴46および冷却用溝47に配設されている。図3に例示されるように、各ヒートパイプ集熱部611、621、631、641はコア4U、4V、4Wの上方に立ち上がった後、上部取付板36に形成された貫通穴を通り抜け、ヒートパイプ放熱部612、622、632、642に連通している。
【0049】
ヒートパイプ放熱部612、622、632、642は、ヒートシンク部7の基体71の裏面に結合されて水平方向に延在している。図5の(2)に示されるように、前側のコア4Uの前側の冷却用穴46から立ち上がってきたヒートパイプ61では、ヒートパイプ放熱部612は斜め後方に向かって延在し、その先端は移動体3の移動方向の中間付近まで達している。また、後側のコア4Wの後側の冷却用穴46から立ち上がってきたヒートパイプ62では、ヒートパイプ放熱部622は斜め前方に向かって延在し、その先端は移動体3移動方向の中間付近まで達している。
【0050】
さらに、コア4U、4V、4Wの相間の冷却用溝47から立ち上がってきた2本のヒートパイプ63、64では、ヒートパイプ放熱部632、642は左右方向に延在し、その先端は移動体の側面付近にまで達している。4つのヒートパイプ61、62、63、64の各ヒートパイプ集熱部611、621、631、641の配設箇所、ならびに各ヒートパイプ放熱部612、622、632、642の長さおよび延在方向は、3相のコイル5U、5V、5Wを同程度に冷却できるように設計検討されて決められている。
【0051】
ヒートパイプ61〜64の内部に封入する冷媒としては、例えば水を用いることができ、これに限定されず他の冷媒を用いても良い。また、本第1実施形態において、熱伝導部材は必ずしも冷媒の相変化を伴うヒートパイプ61〜64である必要は無く、例えば冷却管路にクーリングオイルを封入して循環対流させる冷却管であってもよい。
【0052】
次に、上述のように構成された第1実施形態の部品実装機用のリニアモータ装置1におけるコイル5U、5V、5Wの冷却作用について説明する。移動体3を移動させるためにコイル5U、5V、5Wに通電すると銅損による熱が発生する。ここで、コア4U、4V、4Wの熱伝導が良好であるので、コイル5U、5V、5Wで発生した熱はコア4U、4V、4Wを経由してヒートパイプ集熱部611、621、631、641に伝わる。すると、ヒートパイプ集熱部611、621、631、641の内部で水が蒸発して水蒸気に相変化し、蒸発潜熱分の冷却作用が生じる。一方、水蒸気は、対流してヒートパイプ放熱部612、622、632、642に移動し、ヒートシンク部7で冷却されて液相の水に戻り、ヒートパイプ集熱部611、621、631、641に流下する。
【0053】
上述したヒートパイプ61、62、63、64による熱移送は、コア4U、4V、4Wで発生する鉄損の熱に対しても同様に作用する。加えて、コイル5U、5V、5Wおよびコア4U、4V、4Wの外面では自然冷却が行われる。これらの冷却作用が継続することで、コイル5U、5V、5Wおよびコア4U、4V、4Wの温度上昇が許容値以下に保たれる。
【0054】
第1実施形態の部品実装機用のリニアモータ装置1によれば、コイル5U、5V、5Wで発生した熱はコア4U、4V、4Wを経由してヒートパイプ61、62、63、64に伝わり、コイル5U、5V、5Wを効率良く冷却できる。また、図12に示される従来構成と比較して、コイル5U、5V、5Wの巻回数を増やせる。
【0055】
補足して詳述すると、図12は、従来構成のリニアモータ装置9の平面断面図であり、電機子93における冷却用通路の配置が第1実施形態とは異なっている。図示されるように、従来構成では冷却用通路96がコア94の突き当て凸部943とコイル95との間、およびコア94の磁極形成部942とコイル95との間、に配設されている。このため、冷却用通路96の分だけコイル95を巻回するスペースが減少してしまい、巻回数を多くできなくなっている。これに対して、第1実施形態では、コア4U、4V、4Wに加工を施して冷却用通路(冷却用穴46および冷却用溝47)を形成するので、コイル5U、5V、5Wの巻回スペースを削減せず、従来よりも巻回数を増やせる。
【0056】
さらにヒートシンク部7は基体71および複数の放熱フィン72からなり、ヒートパイプ61、62、63、64は、基体71の裏面に連結されて延在するヒートパイプ放熱部612、622、632、642と、コア4U、4V、4W内のヒートパイプ集熱部611、621、631、641とからなるので、熱移送の効率が極めて高くなる。加えて、コア4U、4V、4Wの突き当て凸部43に冷却用通路(冷却用穴46および冷却用溝47)を形成しているので磁束Hの誘起特性が低下せず、得られる推進力はコイル5U、5V、5Wの電流や巻回数に応じたものとなる。これらの総合的な効果で、コイル5U、5V、5Wに従来よりも大きな電流を流して、格段に大きな推進力を得ることができる。
【0057】
また、冷却用通路(冷却用穴46および冷却用溝47)は、電磁鋼板を加工するプレス機の打ち抜き型を変更することで容易に形成できるので、コストの上昇を抑えられる。
【0058】
次に、冷却用通路の形状を変更した応用形態について説明する。図6図7、および図8はそれぞれ、第2、第3、および第4実施形態のリニアモータ装置の電機子3A、3B、3Cの平面断面図である。図6に示される第2実施形態において、コア4U、4V、4Wの各突き当て凸部43Aに冷却用穴46は設けられておらず、突き当て面44に冷却用溝47が形成されている。そして、2箇所の相間で互いに突き当たる突き当て面44の2つの冷却用溝47にまたがって断面円形で上下方向に延在する空間が形成され、この2箇所にヒートパイプ62A、63Aが配設される。
【0059】
第2実施形態のリニアモータ装置は、例えば、コイル5U、5V、5Wの巻厚寸法Dが小さく、突き当て凸部43Aが狭隘で冷却用穴46を穿設することが困難な場合に効果的である。つまり、冷却用穴46は無理でも、2箇所の相間で2つの冷却用溝47にまたがって共通のヒートパイプ62A、63Aを配設できる。したがって、突き当て凸部43Aが狭隘な構造の場合であっても、効率良くコイル5U、5V、5Wを冷却でき、コイル5U、5V、5Wに従来よりも大きな電流を流して、大きな推進力を得ることができる。
【0060】
また、図7に示される第3実施形態において、コア4U、4V、4Wの各突き当て凸部43Bに冷却用穴46は設けられておらず、突き当て面44Bに冷却用溝47は設けられていない。代わりに、突き当て凸部43Bのコイル5U、5V、5Wに向かう側面の片側に、断面が矩形の冷却用溝47Bが形成されている。冷却用溝47Bは、各コア4U、4V、4Wの2つの突き当て凸部43Bで互い違いに配置され、3相で見ると6個の冷却用溝47Bが千鳥状に配置されている、この6個の冷却用溝47Bのそれぞれに、ヒートパイプ65が配設される。
【0061】
さらに、図8に示される第4実施形態において、コア4U、4V、4Wの各突き当て凸部43Cに冷却用穴46は設けられておらず、突き当て面44Cに冷却用溝47は設けられていない。代わりに、突き当て凸部43Cのコイル5U、5V、5Wに向かう側面の両方にそれぞれ、溝深さが浅い矩形の冷却用溝47Cが形成されている。冷却用溝47Cは3相で合計12個あり、それぞれにヒートパイプ66が配設される。
【0062】
第3および第4実施形態のリニアモータ装置は、ヒートパイプ65、66の本数および配置が第1実施形態と異なるが、作用および効果は第1実施形態と同様である。
【0063】
次に、突き当て凸部43Dの数を複数とした第5実施形態について説明する。図9は、第5実施形態のリニアモータ装置の電機子3Dの平面断面図である。第5実施形態において、突き当て凸部43Dは、移動方向に直角な幅方向に2個ずつ設けられ、前側および後側を考慮すると合計4個ずつ各コア4U、4V、4Wに設けられている。コイル5U、5V、5Wは、幅方向に3分割されて巻回されている。そして、各突き当て凸部43Dに1個ずつ冷却用穴46Dが穿設され、それぞれにヒートパイプ67が配設される。また、締結穴45Dは各コア4U、4V、4Wに2個ずつ穿設されている。
【0064】
第5実施形態のリニアモータ装置によれば、幅方向に配置されるヒートパイプ67の数が増加して、一層効率良くコイル5U、5V、5Wを冷却でき、一層大きな推進力を得ることができる。
【0065】
次に、コア4U、4V、4Wに加工を施さず、伝熱ブロック81を有する第6実施形態について説明する。図10は、第6実施形態のリニアモータ装置の電機子3Eの平面断面図である。第6実施形態において、電機子3Eを構成するコア4U、4V、4Wに突き当て凸部43が設けられていない。代わりに、電機子3Eは、隣り合う相のコア4U、4V、4Wの間に配設されてコア相互の位置関係を規定する伝熱ブロック81を有している。つまり、図10で前側のコア4Uと中央のコア4Vとの間に第1の伝熱ブロック81が配設され、中央のコア4Vと後側のコア4Wとの間に第2の伝熱ブロック81が配設されている。伝熱ブロック81は移動方向に所定の長さを有し、隣り合う相のコア4U、4V、4Wのヨーク41部の間に挿入されて位置関係を規定する。
【0066】
また、伝熱ブロック81は、コア4U、4V、4Wを構成する主材料の鉄よりも熱伝導率の高い材質、例えば銅などで形成されており、内部に上下方向の冷却用穴82が穿設され、冷却用穴82にヒートパイプ68が配設される。伝熱ブロック81の移動方向に直角な方向の厚さは、分巻きされたコイル5U、5V、5Wの間隔に等しい。つまり、伝熱ブロック81は、両側面でそれぞれコイル5U、5V、5Wに接して、熱伝導が良好になっている。第6実施形態では、コイル5U、5V、5Wで発生した熱の多くは、伝熱ブロック81からヒートパイプ68に伝わる。
【0067】
第6実施形態を第1実施形態と比較すると、コア4U、4V、4Wの一部が伝熱ブロックに置き換えられ、コイル5U、5V、5Wからヒートパイプ68への熱伝導が向上している。したがって、冷却性能が向上した分だけコイル5U、5V、5Wに第1実施形態よりも大きな電流を流して、格段に大きな推進力を得ることができる。
【0068】
次に、伝熱ブロック85の数を複数とした第7実施形態について説明する。図11は、第7実施形態のリニアモータ装置の電機子3Fの平面断面図である。第7実施形態において、伝熱ブロック85は、移動方向に直角な幅方向に2個ずつ設けられ、2箇所の相間を考慮すると合計4個設けられる。コイル5U、5V、5Wは、左右方向に3分割されて巻回されている。そして、各伝熱ブロック85にそれぞれ冷却用穴86が穿設され、各冷却用穴86にヒートパイプ69が配設される。第7実施形態のリニアモータ装置によれば、伝熱ブロック85の数が増加して、第6実施形態よりも一層効率良くコイル5U、5V、5Wを冷却でき、大きな電流を流して一層大きな推進力を得ることができる。
【0069】
なお、各実施形態で、リニアモータ装置1は部品移載装置130、140をY軸方向に移動させるものとしたが、X軸方向の移動に適用することもできる。本発明は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、部品実装機10以外の基板用作業機器にも利用することができ、さらには、他種の産業用組立機械や産業用工作機械に利用することも可能である。
【符号の説明】
【0071】
1:リニアモータ装置
2:軌道部材
21:磁石底板 21i:内底面
22:側板 22i:内側面
3:移動体
31、3A、3B,3C、3D、3E、3F:電機子
35:下部取付板 36:上部取付板
4U、4V、4W:コア
41;ヨーク部 42:磁極形成部
43、43A、43B、43C:突き当て凸部
44、44B、44C:突き当て面
45:締結孔 451:締結ロッド
46、46D:冷却用穴(冷却用通路)
47、47B、47C:冷却用溝(冷却用通路)
5U、5V、5W:コイル
61〜64、62A、63A:ヒートパイプ
611、621、631、641:ヒートパイプ集熱部
612、622、632,642:ヒートパイプ放熱部
65〜69:ヒートパイプ
7:ヒートシンク部 71:基体 72:放熱フィン
81、85:伝熱ブロック 82、86:冷却用穴(冷却用通路)
9:従来構成のリニアモータ装置
94:コア 942:磁極形成部 943:突き当て凸部
95:コイル 96:冷却用通路
10:部品実装機
110:基板搬送装置 120:部品供給装置
130、140:部品移載装置 150:X軸レール
160:部品実装ヘッド 170:補助レール
180:表示設定装置 190:基台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12