(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物に用いられるコンクリート壁は、型枠となるパネル(型枠パネル)を互いに離間するように配置するとともに、その型枠パネルの間にできる空間に生コンクリートを打設し、生コンクリートの硬化後、型枠パネルを取り除くことにより形成される。
【0003】
また、近年では、既設のコンクリート構造物の耐震補強等を目的として、この既設のコンクリート構造物の前面に型枠パネルを設置し、既設のコンクリート構造物と型枠パネルの間に生コンクリートを打設してコンクリート構造物を補強することが行われている。
【0004】
このような型枠パネルは、所定の大きさの型枠パネルを上下左右に継ぎ重ねて使用されるものである。一方、生コンクリートの打設時に、互いに隣接する型枠パネルの接合部分に形成される目地部から、打設した生コンクリートの水分(ノロ)が漏れ出したり、打設された生コンクリートの型枠パネルに対する押圧により、型枠パネルが変形することが懸念される。
【0005】
以上のような課題に対して、特許文献1には、型枠パネル間からのノロ漏れを防止するとともに、型枠パネルの変形を未然に防止する構造が開示されている。
【0006】
具体的には、
図7に示すように、型枠パネル503の生コンクリートの打設面とは反対側の面に、型枠パネル503の水平方向に浅木部材520を、鉛直方向に支持支柱505をそれぞれ配置する。更に、打設した生コンクリートの押圧の影響を特に受ける箇所には、支持支柱505の所定の位置に補強部材521を配置することで、型枠パネル503間に形成される目地部からのノロ漏れ防止、及び型枠パネルの変形を未然に防止する構造が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、隣接する型枠パネル間に形成される目地部分に溝を切り、その溝に止水材を嵌め込むことで、目地部からのノロ漏れを防止する構造が開示されている。
【0008】
具体的には、
図8に示すように、型枠パネル603に溝を形成し、この溝に発泡スチロール製の止水材607を嵌め込み、隣接する型枠パネル603を接合するようにしている。これにより、隣接する型枠パネル603間に形成される目地部606に浸入したノロは、止水材607で堰き止められ、型枠パネル603の外部へのノロ漏れを防止することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述した従来技術について、特許文献1に開示された発明においては、補強部材の取付位置は型枠パネルの構成に応じて異なるものである。従って、例えば補強部材の取り付けに際しては、予め補強部材の取付位置が記載された設計手順書を作業者が建築現場で確認しながら取り付けることとなる。
【0011】
しかしながら、建築現場は天候にも左右され、作業スペースも限られていることから、設計手順書を確認しながらの作業は、例え熟練の作業者であっても困難を極めるため、作業者の把握違いに基づく補強部材の配置ミスにより、ノロ漏れや型枠パネルの変形が懸念される。
【0012】
一方、特許文献2に開示された発明においては、発泡スチロールと型枠パネルは、発泡スチロールの外周面が型枠パネルに形成された嵌合溝に当接しているだけであり、少なからずその当接面には隙間が生じ、この隙間からのノロ漏れが懸念される。また、発泡スチロールは剛性が弱いため、繰り返しの使用による変形や破断が懸念される。
【0013】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、コンクリート構造物を構築する際の型枠パネル構造体に関し、生コンクリートの打設後に型枠パネルの接合部分に形成される目地部から浸入したノロの外部への漏れを確実に防止することができる型枠パネル構造体に係るものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明の型枠パネル構造体は、互いに隣接して配置され、生コンクリートが打設される打設面、及び該打設面と反対側の面である背面を有する型枠パネルと、該型枠パネルの互いに接する位置に形成される目地部に跨設されるとともに前記背面に当接し、前記目地部に沿って互いに平行して延在する第1の凸条部が設けられた略方形体の止水材とを備える。
【0015】
ここで、止水材が、隣接する型枠パネルが接する目地部を被覆するように跨設されることにより、目地部から浸入したノロの外部への漏れを防止することができる。
【0016】
また、止水材に、第1の凸条部が設けられていることにより、型枠パネルに打設された生コンクリートの押圧力により、第1の凸条部が型枠パネルの背面に圧接、没入されるため、第1の凸条部と型枠パネルの隙間を解消し、目地部から浸入したノロの外部への漏れを防止することができる。
【0017】
また、止水材に設けられた第1の凸条部が、互いに平行して延在することにより、例えば、目地部を挟んで隣接する一方の型枠パネルと他方の型枠パネルのそれぞれに第1の凸条部を当接させることができるため、目地部から浸入したノロの外部への漏れを防止することができる。
【0018】
また、第1の凸条部が目地部に沿う方向に形成されていることにより、目地部から外部に漏れ出すノロを堰き止める位置に第1の凸条部が延在することになるため、目地部から浸入したノロの外部への漏れを防止することができる。
【0019】
上記の目的を達成するために、本発明の型枠パネル構造体は、互いに隣接して配置され、生コンクリートが打設される打設面、及び該打設面と反対側の面である背面を有する型枠パネルと、該型枠パネルの互いに接する位置に形成される目地部に跨設された略方形体の止水材と、前記止水材の対応する位置であって、前記型枠パネルの前記背面に、前記目地部に沿って互いに平行して延在する第2の凸条部とを備える。
【0020】
ここで、止水材が、隣接する型枠パネルが接する目地部を被覆するように跨設されることにより、目地部から浸入したノロが外部に漏れ出すことを防止することができる。
【0021】
また、型枠パネルの背面に、第2の凸条部が設けられていることにより、型枠パネルに打設された生コンクリートの押圧力により、第2の凸条部が止水材に没入または圧接するため、第2の凸条部と止水材の隙間を解消し、目地部から浸入したノロが外部に漏れ出すことを防止することができる。
【0022】
また、型枠パネルの背面に設けられた第2の凸条部が、目地部に沿って互いに平行して延在する場合には、例えば、目地部に跨設する止水材において、目地部を中心に一側と他側のそれぞれに第2の凸条部を当接させることができるため、目地部から浸入したノロの外部への漏れを防止することができる。
【0023】
また、第2の凸条部が目地部に沿う方向に設けられていることにより、目地部から外部に漏れ出すノロを堰き止める位置に第2の凸条部が延在することになるため、目地部から浸入したノロの外部への漏れを防止することができる。
【0024】
また、型枠パネルの背面に、第1の凸条部が嵌合可能な第1の凹条部が形成されている場合には、例えば、型枠パネルが金属製であり、第1の凸条部が型枠パネルの背面に没入させることができないような場合であっても、第1の凸条部と第1の凹条部の嵌合部分で目地部から浸入したノロの外部への漏れを防止することができる。
【0025】
また、止水材に、第2の凸条部が嵌合可能な第2の凹条部が形成されている場合には、例えば、止水材が金属製であり、第2の凸条部が止水材に没入させることができないような場合であっても、第2の凸条部と第2の凹条部の嵌合部分で目地部から浸入したノロの外部への漏れを防止することができる。
【0026】
また、止水材の、型枠パネルの背面に当接する面とは反対側の面に支持部材を有する場合には、支持部材にて型枠パネルの押圧力を受け止め、型枠パネルの変形を抑止することができる。
【0027】
また、型枠パネルの接合部分に形成される目地部に介装され、型枠パネル同士の離間距離が調整可能である調整パネルを有する場合には、隣接する型枠パネル間の水平方向の長さや鉛直方向の高さを調整することができるとともに、隣接する型枠パネル間の一次的な止水効果も得ることができる。
【0028】
また、止水材の、型枠パネルの背面に当接される面に、調整パネルが嵌合可能な嵌合凹条部が形成されている場合には、嵌合凹条部においても止水効果を奏することができるため、より確実に目地部から浸入したノロの外部への漏れ防止することができる。
【0029】
上記の目的を達成するために、本発明の型枠パネル構造体は、互いに隣接して配置され、生コンクリートが打設される打設面、及び該打設面と反対側の面である背面を有する型枠パネルと、床面に当接する床設置面、該床設置面と反対側の面であって、下段面、側面、上段面から形成された段状の表面とを含み、前記下段面に前記型枠パネルが載置され、前記側面の長手方向に沿って、前記背面に当接する第3の凸条部が設けられた基礎部材とを備える。
【0030】
ここで、基礎部材の側面には、型枠パネルの背面に当接する第3の凸条部が側面に沿って設けられていることにより、型枠パネルに打設された生コンクリートの押圧力で第3の凸条部が型枠パネルの背面に圧接、没入するため、基礎部材と型枠パネルの隙間を解消し、基礎部材と型枠パネルによって形成される目地部から浸入したノロの外部への漏れを防止することができる。
【0031】
上記の目的を達成するために、本発明の型枠パネル構造体は、床面に当接する床設置面、該床設置面と反対側の面であって、下段面、側面、上段面から形成された段状の表面とを
有する基礎部材と、
前記下段面に載置されるとともに、互いに隣接して配置され、生コンクリートが打設される打設面、及び該打設面と反対側の面である背面を含み、前記側面の長手方向に沿って、前記側面に当接する第4の凸条部が前記背面に設けられた型枠パネルとを備える。
【0032】
ここで、型枠パネルの背面には、基礎部材の側面に当接する第4の凸条部が基礎部材の側面に沿って設けられていることにより、型枠パネルに打設された生コンクリートの押圧力で第4の凸条部が基礎部材に圧接、没入するため、基礎部材と型枠パネルの隙間を解消し、基礎部材と型枠パネルによって形成される目地部から浸入したノロの外部への漏れを防止することができる。
【0033】
また、型枠パネルの背面には、第3の凸条部が嵌合可能な第3の凹条部が形成されている場合には、例えば、型枠パネルが金属製であり、第3の凸条部が型枠パネルの背面に没入させることができないような場合であっても、第3の凸条部と第3の凹条部の嵌合部分で目地部から浸入したノロの外部への漏れを防止することができる。
【0034】
また、基礎部材の側面には、第4の凸条部が嵌合可能な第4の凹条部が形成されている場合には、例えば、基礎部材が金属製であり、第4の凸条部が基礎部材側面に没入させることができないような場合であっても、第4の凸条部と第4の凹条部の嵌合部分で目地部から浸入したノロの外部への漏れを防止することができる。
【0035】
また、床設置面側が開放され、基礎部材内に形成された凹室部と、この凹室部と連接される通水孔を有し、上段面の長手方向に沿って形成され、凹室部と連接される通水孔を有する溝部と、凹室部の所定の場所に収納された高吸水性樹脂とを有する場合には、溝部に水を貯留することができるとともに、溝部と高吸水性樹脂が収納された凹室部が通水孔を通じて連接されているため、溝部に貯留された水は通水孔を通じて凹室部に滴下することができる。
【0036】
そして、凹室部に収納された高吸水性樹脂は、滴下された水を吸収して膨張する。膨張した高吸水性樹脂はゲル状であるため、床面の起伏形状に沿うように床面に密着する。従って、基礎部材と床面の間に形成された隙間から浸入したノロは、この高吸水性樹脂により止水され、外部へのノロ漏れを防止することができる。
【0037】
また、所定の導通孔が形成され、凹室部を上段面側の第1の空間と床設置面側の第2の空間とに仕切る仕切り板を有し、この仕切り板に高吸水性樹脂が配置されている場合には、溝部と高吸水性樹脂が収納された第1の空間が連接されているため、より確実に溝部に貯留された水を高吸水性樹脂に滴下することができる。
【0038】
そして、滴下されて膨張した高吸水性樹脂は、その一部が導通孔を通じて第2の空間に浸入する。第2の空間に浸入した高吸水性樹脂は前述した通り、床面の起伏形状に沿うように床面に密着する。従って、基礎部材と床面の間に形成された隙間から浸入したノロは、この高吸水性樹脂により止水され、外部へのノロ漏れを防止することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る型枠パネル構造体は、型枠パネルの接合部分に形成される目地部から浸入したノロの外部への漏れを確実に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、型枠パネル構造体に関する本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。なお、各図においては、説明の便宜上、型枠パネル103を床面Fに設置した状態において、床面Fから天井面に向かう方向を鉛直上方向と定義し、その反対方向を鉛直下方向と定義し、鉛直方向と垂直な方向を水平方向と定義する。
【0042】
本発明を適用して組み立てた型枠パネル構造体101について
図1を用いて説明する。まず、
図1に示すように、床面Fには基礎部材104が設置され、この基礎部材104には実質的に矩形をなす平板状の木製の型枠パネル103が、鉛直上下方向、及び水平方向に継ぎ重ねて接合されている。
【0043】
ここで、必ずしも、型枠パネル103の材質は木製である必要はない。例えば、金属、合成樹脂等の公知の材料から適宜選択することができる。
【0044】
また、必ずしも、基礎部材104は設置されている必要はない。型枠パネル103が床面Fに直接設置されていてもよい。
【0045】
型枠パネル103には、打設された生コンクリートCの押圧力による型枠パネル103の変形を防止するために、金属製で中空を有する四角柱の支持支柱105が、基礎部材104から型枠パネル構造体101の全高位置まで鉛直上方向に延在している。また、型枠パネル103には、必要に応じて支持支柱105と交差するように水平方向に延在する図示しない桟木部材が設置される。
【0046】
ここで、必ずしも、支持支柱105は金属製である必要はない、例えば、木材、合成樹脂等の公知の材料から適宜変更することができる。但し、支持支柱が金属製である場合には、木製の支持支柱に比べて耐用年数が長く、型枠パネル構造体の組み付け後の剛性も一定以上に確保することができる。
【0047】
また、必ずしも、支持支柱105は、四角柱である必要はない。例えば、円柱、その他多角形からなる角柱であってもよい。但し、支持支柱105が四角柱である場合には、型枠パネル103への設置面積が大きくなり、型枠パネル103の支持剛性を高めることができる。
【0048】
同一平面上で隣接配置された型枠パネル103の水平方向、及び鉛直上下方向の接合部分には水平方向の目地部106a、鉛直上下方向の目地部106b、及び基礎部材104と型枠パネル103の接合部分には目地部106cが形成されている。この目地部106a、106bの所定の範囲には、目地部106a、106bを跨るように止水材107が型枠パネル103に跨設されている。
【0049】
止水材107は、
図2(a)の斜視図に示す通り、長尺の略方形体である基部108と、この基部108の片面側には、止水材107の短手方向の中心線L1を中心として線対称に、止水材107の一端から他端の長手方向に沿って凸条部109a(「特許請求の範囲に」おける第1の凸条部)が2ヶ所に一体的に形成されている。
【0050】
ここで、必ずしも、凸条部109aは止水材107の中心線L1を中心として線対称に配置されている必要はない。止水材107を型枠パネル103の目地部106a、106bに跨設した際に、隣接する一方の型枠パネル103と他方の型枠パネル103のそれぞれの背面110に凸条部109が当接できるように配置されていればよい。
【0051】
また、必ずしも、凸条部109aは基部108に一体的に形成されている必要はない。例えば、凸条部109aと基部108はそれぞれ別体に設けられていてもよい。
【0052】
また、必ずしも、凸条部109aは2ヶ所に形成されている必要はない。例えば、3ヶ所以上に形成されていてもよい。なお、水平方向の目地部106aから漏れ出すノロは、重力の影響により、鉛直下方向に漏れ出す量が相対的に多くなる。従って、3ヶ所以上に凸条部109aを有する止水材107を水平方向の目地部106aに跨設する場合には、鉛直上下方向に隣接する型枠パネル103のうち、下側に位置する型枠パネル103の背面110に当接する凸条部109aの数を多くすることで、ノロの外部への漏れをより確実に防止することができる。
【0053】
また、必ずしも、凸条部109aは止水材107に設けられている必要はない。例えば、型枠パネル103の背面110に、図示しない凸条部109bが設けられていてもよい(「特許請求の範囲」における第2の凸条部)。この場合、凸条部109bは止水材107に圧接、没入されることになる。
【0054】
また、必ずしも、止水材107は長方形の方形体である必要はない。例えば、正方形の方形体であってもよい。なお、本発明における方形体とは、厚さの比較的薄い板状体をも含む概念である。
【0055】
凸条部109aは、
図2(b)、又は
図2(c)に示す通り、底部111から頭部112にかけて徐々に幅狭となる断面略三角形状、又は断面略台形状であり、この頭部112が型枠パネル103の背面110に当接する。
【0056】
ここで、必ずしも、凸条部109aは断面略三角形状、又は断面略台形状である必要はない。例えば、断面略四角形状、断面半円形状であってもよい。但し、底部111から頭部112にかけて幅狭となる断面略三角形状、又は断面略台形状である場合には、止水材107を型枠パネル103の背面110に当接した際に、凸条部109aがより深く没入し易くなるため、止水材107による止水効果が高まる。
【0057】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る型枠パネル構造体101において、
図3(a)は2枚の型枠パネル103を鉛直上下方向に接合した状態の側面断面図であり、
図3(b)は2枚の型枠パネル103を水平方向に接合した状態の平面断面図であり、
図3(c)は型枠パネル103と基礎部材104を鉛直上下方向に接合した状態の側面断面図である。
【0058】
図3(a)に示すように、止水材107は、鉛直上下方向に接合される型枠パネル103の接合部分に形成される目地部106aを被覆するように、型枠パネル構造体101の水平方向に沿って型枠パネル103の背面110に取り付けられている。このとき、止水材107の設置長さは、型枠パネル103の水平方向の長さと略同じに設定されている。
【0059】
ここで、必ずしも、止水材107の設置長さは、型枠パネル103の水平方向の長さと略同じに設定されている必要はない。例えば、型枠パネル103の水平方向の長さの一部に相当する範囲に設定されていてもよい。また、型枠パネル構造体101の水平方向の全長に相当する範囲に設定されていてもよい。
【0060】
また、
図3(b)に示すように、止水材107は、水平方向に接合される型枠パネル103の接合部分に形成される目地部106bを被覆するように、型枠パネル構造体101の鉛直上下方向に沿って、支持支柱105が設けられた状態で型枠パネル103の背面110に取り付けられている。このとき、止水材107の設置高さは、型枠パネル構造体101の全高と略同じに設定されている。
【0061】
ここで、必ずしも、止水材107の設置高さは、型枠パネル構造体101の鉛直上下方向の高さと略同じに設定されている必要はない。例えば、型枠パネル構造体101の鉛直方向の高さの一部の範囲に設定されていてもよい。
【0062】
止水材107の所定の位置には、貫通孔113が形成されている。また、型枠パネル103の背面110の所定の位置には、この貫通孔113に対応する位置であって、貫通孔113に重合する凹孔部114が形成されている。そして、止水材107を型枠パネル103に跨設するに際しては、止水材107の貫通孔113を、型枠パネル103に形成された凹孔部114に重合させた状態で、釘ネジ115を貫通孔113、及び凹孔部114に螺着して固定することができる。
【0063】
ここで、必ずしも、止水材107の型枠パネル103への取り付けに際しては、釘ネジ115を螺着して取り付ける必要はない。例えば、止水材107の外側面から型枠パネル103の背面に貫通するように釘を打ち込んで取り付けてもよい。更に、止水材107の型枠パネル103の背面110に接着剤を塗布して取り付けてもよい。
【0064】
止水材107は、型枠パネル103に取り付けられることで、止水材107に設けられた凸条部109aは、型枠パネル103に徐々に圧接されて没入し、止水材107の型枠パネル103への取り付けが完了した時点で、凸条部109aが完全に背面110に没入することになる。
【0065】
更に、この状態で生コンクリートCを型枠パネル構造体101に打設することにより、生コンクリートCによる型枠パネル103を押し付ける押圧力と、止水材107の型枠パネル側への押圧力により、凸条部109aの先端部分を起点として一線集中(一点集中)的に背面110に圧接されることで、凸条部109aが背面110に没入する。そして、目地部106から浸入したノロは、背面110に没入した凸条部109aによりせき止められ、外部へ漏れ出すことを完全に防止することができる。
【0066】
また、
図3(b)に示すように、止水材107の背面に型枠パネル構造体101の鉛直上下方向に延在する支持支柱105が設けられている場合には、支持支柱105にて型枠パネル103の押圧力を受け止め、型枠パネル103の変形を抑止することができる。
【0067】
なお、図示しないが、型枠パネル構造体101の水平方向に設けられた浅木部材を止水材107の背面に設けることもできる。この場合においても、浅木部材にて型枠パネル103の押圧力を受け止め、型枠パネル103の変形を抑止することができる。
【0068】
また、
図3(c)に示すように、床面Fに設置された基礎部材104は、床面Fに設置される床設置面127と、床面Fの反対側の面である表面128を有している。表面128は、下段面129、側面130、及び上段面131からなる段状を形成し、下段面129には型枠パネル103が載置されている。
【0069】
更に、側面130には、型枠パネル103の背面110に当接する凸条部109c(「特許請求の範囲」における第3の凸条部)が側面130の水平方向に沿って形成されている。この凸条部109cにより、型枠パネル103と基礎部材104の接合部分に形成される水平方向の目地部106cから浸入するノロが外部に漏れ出すことを防止することができる。
【0070】
ここで、必ずしも、凸条部109cは基礎部材104に設けられている必要はない。例えば、型枠パネル103の背面110に、図示しない凸条部109dが設けられていてもよい(「特許請求の範囲」における第4の凸条部)。この場合、凸条部109dは基礎部材104の側面130に圧接、没入されることになる。
【0071】
基礎部材104内には、導通孔126が形成された仕切り板124により仕切られた第1の空間122と、第2の空間123を有する凹室部121が形成されており、第1の空間122には、大量の水を吸水してゲル化する高吸水性樹脂125が配置されている。
【0072】
ここで、必ずしも、凹室部121は仕切り板124により、第1の空間122と第2の空間123に仕切られている必要はない。例えば、仕切り板124を設けずに、高吸水性樹脂125を凹室部121の所定の場所(例えば、凹室部121内であって、床面F上)に配置されていてもよい。
【0073】
また、基礎部材104の上段面131には、水平方向に沿って断面略V字形状の溝部120が形成されており、この溝部120の底には図示しない導水孔が形成されている。そしてこの導水孔と第1の空間122と連通されるようになっている。従って、例えば、溝部120に水を貯留しておくと、貯留した水が導水孔を通じて第1の空間122に設置された高吸水性樹脂125に滴下される。
【0074】
ここで、必ずしも、溝部120の断面は略V字形状に形成されている必要はない。溝部120は一定量の水を貯留するとともに、高吸水性樹脂125に水を滴下できればよいため、例えば、断面凹形状、断面半円形状に形成されていてもよい。
【0075】
また、溝部120に形成された導水孔は、所定の範囲に形成された長孔であってもよく、複数の小孔が穿設されていてもよい。
【0076】
溝部120から滴下された水分を大量に吸水した高吸水性樹脂125は、
図3(c)で示す実線の状態から、二点鎖線で示す状態のように膨張する。即ち、第1の空間122に配置された高吸水性樹脂125は、導通孔126から第2の空間123に浸入する。このとき、高吸水性樹脂125はゲル状であるため、床面Fの起伏に沿うように床面Fに密着する。
【0077】
以上の構成により、例えば、型枠パネル103の目地部106a、106b、106cからノロが浸入したとしても、凸条部109a、109cが型枠パネル103の背面110に没入されているため、凸条部109a、109cで浸入したノロの外部への漏れを防止することができる。また、床面Fに起伏が形成され、床面Fと基礎部材104の床設置面127との間に隙間が生じても、高吸水性樹脂125により、床設置面127と床面Fとの隙間を埋めることができるため、基礎部材104と床面Fの隙間から浸入したノロの外部への漏れを防止することができる。
【0078】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る型枠パネル構造体201において、2枚の型枠パネル103を鉛直上下方向に接合した状態の側面断面図であり、第1の実施形態と同一、又は相当する部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0079】
図4に示した実施形態においては、型枠パネル103の接合部分には、型枠パネル103と同じ材質(本実施形態においては木材)であって、型枠パネル103の高さ方向の調整が可能な調整パネル116が介装されている。この調整パネル116は、不要となった端材などが用いられ、例えば、型枠パネル103を継ぎ重ねて型枠パネル構造体201を構成しても、なおも長さや高さに数mmまたは数cm単位の隙間が発生する場合に、この隙間を埋めることを目的とするものである。
【0080】
ここで、必ずしも、調整パネル116の材質は木材である必要はない。例えば、金属、又は合成樹脂等の公知の材料から適宜選択することができる。
【0081】
また、必ずしも、調整パネル116は型枠パネル構造体201の水平方向に形成される目地部106aに介装されている必要はない。例えば、目地部106bに介装されていてもよい。この場合、調整パネル116は隣接する型枠パネル103の水平方向の調整が可能となる。
【0082】
この第2の実施形態においては、調整パネル116が目地部106aに介装されていることにより、型枠パネル103と調整パネル116間に目地部106d、106eが形成される。このように、目地部を2ヶ所に分散させることで、一次的な止水効果を高めることができる。即ち、目地部を2ヶ所に分散させることで、目地部106dと目地部106eに浸入するノロのそれぞれの流出圧力を分散、低減させることができる。そして、ノロの流出圧力が分散、低減されることで、ノロに含まれる微小な砂粒が目地部に詰まり易くなるため、さらに流出圧力を低減させることができる。
【0083】
なお、止水材107は、第1の実施形態と同じく、凸条部109aが型枠パネル103の背面110に没入した状態で型枠パネル103に跨設されている。従って、第2の実施形態においては、上記した一次的な止水効果に加え、凸条部109aにより二次的な止水効果を奏することができるため、より確実にノロの外部への漏れを防止することができる。
【0084】
図5は、本発明の第3の実施形態に係る型枠パネル構造体301において、2枚の型枠パネル103を鉛直上下方向に接合した状態の側面断面図であり、第1の実施形態と同一、又は相当する部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0085】
図5に示した実施形態においては、第2の実施形態と同様に、型枠パネル103の接合部分には、型枠パネル103と同じ材質(本実施形態においては木材)であって、型枠パネル103の高さ方向の調整が可能な調整パネル116が介装されている。但し、本実施形態における調整パネル116は、型枠パネル103の背面110からその一部が突出する構造となっている。
【0086】
また、止水材107の、型枠パネル103への当接面には、型枠パネル103の背面110から突出した調整パネル116の一部が嵌合可能な嵌合凹条部117が形成されている。そして、調整パネル116と止水材107は嵌合状態において強固に固定されるとともに、この嵌合凹条部117により止水効果も奏することができる。
【0087】
即ち、調整パネル116により目地部106aを目地部106d、106eの2ヶ所に分散させることで一次的な止水効果を奏する。次いで、嵌合凹条部117と凸条部109において二次的な止水効果を奏する。更に、図示しないが、調整パネル116を嵌合凹条部117に対して釘ネジ、または接着剤などの公知の接着手段で接合することにより、三次的な止水効果を得ることができる。
【0088】
図6は、本発明の第4の実施形態に係る型枠パネル構造体401において、2枚の型枠パネル103を鉛直上下方向に接合した状態の側面断面図であり、第1の実施形態と同一、又は相当する部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0089】
本実施形態においては、例えば
図6(a)に示すように、止水材107に形成された断面略三角形状の凸条部109aに嵌合可能な凹条部118a(「特許請求の範囲」における第1の凹条部)を予め型枠パネル103の背面110に形成しておく。そして、止水材107を型枠パネル103に取り付ける際には、これら凸条部109aと凹条部118aを嵌合させた状態で、釘ネジ115により締め付け固定する。
【0090】
ここで、必ずしも、凸条部109aは断面略三角形状である必要はない。例えば、断面略台形状、又は
図6(b)で示すように、断面半円形状であってもよい。
【0091】
本実施形態においては、止水材107、及び型枠パネル103が木製以外の素材からなる場合、例えば、金属、又は合成樹脂等のように、弾性変形ができない素材である場合において特に有効である。
【0092】
即ち、止水材107、及び型枠パネル103が金属、又は合成樹脂等である場合には、止水材107に形成された凸条部109aが型枠パネル103の背面110に押し付けても、木製とは異なり型枠パネル103が弾性変形することができない。従って、凸条部109aが型枠パネル103の背面110に没入することができず、止水材107と型枠パネル103には隙間が生じてしまう。
【0093】
そのため、本実施形態のように、予め止水材107の凸条部109aに対応する凹条部118aを型枠パネル103の背面110に形成しておくことで、目地部106から浸入したノロの止水効果を高めることができる。
【0094】
ここで、必ずしも、凹条部118aは型枠パネル103の背面110に形成されている必要はない。例えば、型枠パネル103の背面110に図示しない凸条部109bが設けられている場合には、それに対応して止水材107に、図示しない凹条部118b形成されていてもよい(「特許請求の範囲」における第2の凹条部)。
【0095】
また、図示しないが、基礎部材104の側面130に設けられた凸条部109cに嵌合する凹条部118c(「特許請求の範囲」における第3の凹条部)が型枠パネル103の背面110に形成されていてもよい。
【0096】
更に、図示しないが、型枠パネル103の背面110に凸条部109dが設けられている場合には、凸条部109dに嵌合可能な凹条部118d(「特許請求の範囲」における第4の凹条部)が基礎部材104の側面130に形成されていてもよい。
【0097】
なお、本実施形態においても、第2の実施形態、又は第3の実施形態で示した調整パネル116を隣接する型枠パネル103間に介装することも可能である。
【0098】
以上のように、本発明を適用した型枠パネル構造体は、生コンクリート打設後に型枠パネルの接合部分に形成される目地部から浸入したノロの外部への漏れを確実に防止することができる。
【解決手段】止水材107は、隣接配置された型枠パネル103間に形成された目地部106a、106bを被覆するように型枠パネル103に跨設されている。止水材107は片面に凸条部109aが目地部106a、106bに沿う方向に形成されている。凸条部109aはその頭部112が底部111よりも幅狭の断面略三角形状をしている。型枠パネル103の背面110に止水材107を固定すると、凸条部109aの頭部112が、背面110に没入し、止水材107が背面110に隙間なく密着するため、目地部106a、106bから浸入したノロが外部に漏れ出すことを防止できる。