特許第6029213号(P6029213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6029213
(24)【登録日】2016年10月28日
(45)【発行日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/027 20120101AFI20161114BHJP
   F16H 63/34 20060101ALI20161114BHJP
   F16N 9/02 20060101ALI20161114BHJP
   F16N 7/26 20060101ALI20161114BHJP
   B60T 1/06 20060101ALN20161114BHJP
【FI】
   F16H57/027
   F16H63/34
   F16N9/02
   F16N7/26
   !B60T1/06 G
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-231457(P2013-231457)
(22)【出願日】2013年11月7日
(65)【公開番号】特開2014-199135(P2014-199135A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2015年11月27日
(31)【優先権主張番号】特願2013-51351(P2013-51351)
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】倉地 忍
(72)【発明者】
【氏名】宮田 和典
(72)【発明者】
【氏名】木村 光男
(72)【発明者】
【氏名】長濱 慎治
【審査官】 岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−220728(JP,A)
【文献】 実開昭55−170569(JP,U)
【文献】 特開2011−064302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/027
F16H 63/34
F16N 7/26
F16N 9/02
B60T 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部にオイルを貯留するミッションケース(11)と、
前記ミッションケース(11)の内外を連通させるブリーザパイプ(12)と、
前記ミッションケース(11)の内部に配置され、運転者が選択したシフトレンジに応じて回動軸(16)まわりに回動するディテントプレート(17)と、
前記ディテントプレート(17)に接続され、パーキングレンジにおいて変速機軸(25)を回転不能に拘束するパーキングロック機構(24)とを備える変速機であって、
前記ディテントプレート(17)は、パーキングレンジ以外のシフトレンジにおいて前記ブリーザパイプ(12)の入口開口(12a)の下方を覆う位置に回動し、パーキングレンジにおいて前記入口開口(12a)の下方から外れた位置に回動することを特徴とする変速機。
【請求項2】
前記ブリーザパイプ(12)の入口開口(12a)に対向可能な前記ディテントプレート(17)の上面は、前記回動軸(16)から径方向外側に向かって下向きに傾斜することを特徴とする、請求項1に記載の変速機。
【請求項3】
前記ブリーザパイプ(12)の入口開口(12a)に対向可能な前記ディテントプレート(17)の上面に前記回動軸(16)から放射状に延びる複数のオイル排出溝(17b)を形成し、前記複数のオイル排出溝(17b)は前記回動軸(16)から径方向外側に向かって下向きに傾斜することを特徴とする、請求項1に記載の変速機。
【請求項4】
前記ディテントプレート(17)の外周部にディテントローラ(21)が係合可能な複数の凹部(a〜f)を形成し、前記複数のオイル排出溝(17b)の少なくとも一つは前記凹部(a〜f)に接続することを特徴とする、請求項3に記載の変速機。
【請求項5】
前記ブリーザパイプ(12)を支持する前記ミッションケース(11)の上壁(11a)から前記ディテントプレート(17)の上面に向けてリブ(11d)を垂下し、前記上壁(11a)と、該上壁(11a)に連なる前記ミッションケース(11)の側壁(11c)と、前記リブ(11d)と、前記ディテントプレート(17)とによって前記ブリーザパイプ(12)の入口開口(12a)を囲んだことを特徴とする、請求項1に記載の変速機。
【請求項6】
前記ミッションケース(11)は前記リブ(11d)の下方にベアリング(32)を介して回転軸(33)を支持する軸支持部(11e)を備え、前記軸支持部(11e)の上面に前記ベアリング(32)にオイルを供給するオイル供給溝(11f)を形成したことを特徴とする、請求項5に記載の変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底部にオイルを貯留するミッションケースと、前記ミッションケースの内外を連通させるブリーザパイプと、前記ミッションケースの内部に配置され、運転者が選択したシフトレンジに応じて回動軸まわりに回動するディテントプレートと、前記ディテントプレートに接続され、パーキングレンジにおいて変速機軸を回転不能に拘束するパーキングロック機構とを備える変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
ミッションケースの内部に配置されたパーキングロック機構用のディテントプレートに複数の偏向面を形成し、運転者が選択したシフトレンジに応じて回動するディテントプレートの所定の偏向面にディファレンシャルギヤが掻き上げたオイルを衝突させ、オイルの向きを偏向してオイルキャッチタンクに供給することで、ミッションケースの底部に貯留されるオイルの油面の高さを調整するものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−139046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、変速機のミッションケースにはブリーザパイプが設けられており、ミッションケースの内部空間を大気に連通させて内圧の変動を補償するようになっている。ミッションケースの底部に貯留されたオイルが回転する変速ギヤにより掻き上げられると、そのオイルがブリーザパイプを介してミッションケースの外部に噴出する可能性があるため、従来はミッションケースにオイルの飛沫を遮るブリーザチャンバを形成し、そのブリーザチャンバの内部にブリーザパイプの入口開口を位置させていた。
【0005】
しかしながら、ミッションケースに専用のブリーザチャンバを形成すると、ミッションケースの構造が複雑になって加工コストが増加したり、ミッションケースが大型化したりする問題がある。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、ミッションケースにブリーザチャンバを形成することなくブリーザパイプの機能を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、底部にオイルを貯留するミッションケースと、前記ミッションケースの内外を連通させるブリーザパイプと、前記ミッションケースの内部に配置され、運転者が選択したシフトレンジに応じて回動軸まわりに回動するディテントプレートと、前記ディテントプレートに接続され、パーキングレンジにおいて変速機軸を回転不能に拘束するパーキングロック機構とを備える変速機であって、前記ディテントプレートは、パーキングレンジ以外のシフトレンジにおいて前記ブリーザパイプの入口開口の下方を覆う位置に回動し、パーキングレンジにおいて前記入口開口の下方から外れた位置に回動することを特徴とする変速機が提案される。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記ブリーザパイプの入口開口に対向可能な前記ディテントプレートの上面は、前記回動軸から径方向外側に向かって下向きに傾斜することを特徴とする変速機が提案される。
【0009】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記ブリーザパイプの入口開口に対向可能な前記ディテントプレートの上面に前記回動軸から放射状に延びる複数のオイル排出溝を形成し、前記複数のオイル排出溝は前記回動軸から径方向外側に向かって下向きに傾斜することを特徴とする変速機が提案される。
【0010】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項3の構成に加えて、前記ディテントプレートの外周部にディテントローラが係合可能な複数の凹部を形成し、前記複数のオイル排出溝の少なくとも一つは前記凹部に接続することを特徴とする変速機が提案される。
【0011】
また請求項5に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記ブリーザパイプを支持する前記ミッションケースの上壁から前記ディテントプレートの上面に向けてリブを垂下し、前記上壁と、該上壁に連なる前記ミッションケースの側壁と、前記リブと、前記ディテントプレートとによって前記ブリーザパイプの入口開口を囲んだことを特徴とする変速機が提案される。
【0012】
また請求項6に記載された発明によれば、請求項5の構成に加えて、前記ミッションケースは前記リブの下方にベアリングを介して回転軸を支持する軸支持部を備え、前記軸支持部の上面に前記ベアリングにオイルを供給するオイル供給溝を形成したことを特徴とする変速機が提案される。
【0013】
なお、実施の形態のボールベアリング32は本発明のベアリングに対応する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の構成によれば、変速機は、底部にオイルを貯留するミッションケースと、ミッションケースの内外を連通させるブリーザパイプと、ミッションケースの内部に配置され、運転者が選択したシフトレンジに応じて回動軸まわりに回動するディテントプレートと、ディテントプレートに接続され、パーキングレンジにおいて変速機軸を回転不能に拘束するパーキングロック機構とを備える。ディテントプレートは、パーキングレンジ以外のシフトレンジにおいてブリーザパイプの入口開口の下方を覆う位置に回動するので、変速機の変速ギヤ等が掻き上げたオイルをディテントプレートで遮ってブリーザパイプの入口開口に浸入するのを阻止し、ブリーザパイプからのオイルの噴出を防止することができる。またディテントプレートは、オイルの掻き上げが発生しないパーキングレンジにおいて入口開口の下方から外れた位置に回動するので、ブリーザパイプを介してミッションケースの内外を連通させてブリーザ機能を確実に発揮させることができる。
【0015】
また請求項2の構成によれば、ブリーザパイプの入口開口に対向可能なディテントプレートの上面は、回動軸から径方向外側に向かって下向きに傾斜するので、ディテントプレートの上面に付着したオイルを傾斜に沿って流下させてミッションケースの底部に戻すことで、そのオイルがディテントプレートの上面からブリーザパイプの入口開口に吸い込まれるのを防止することができる。
【0016】
また請求項3の構成によれば、ブリーザパイプの入口開口に対向可能なディテントプレートの上面に回動軸から放射状に延びる複数のオイル排出溝を形成し、複数のオイル排出溝は回動軸から径方向外側に向かって下向きに傾斜するので、ディテントプレートの上面に付着したオイルを複数のオイル排出溝に沿って流下させてミッションケースの底部に戻すことで、そのオイルがディテントプレートの上面からブリーザパイプの入口開口に吸い込まれるのを防止することができる。
【0017】
また請求項4の構成によれば、ディテントプレートの外周部にディテントローラが係合可能な複数の凹部を形成し、複数のオイル排出溝の少なくとも一つは凹部に接続するので、ディテントプレートの回動に伴ってディテントローラが凹部から離脱するときに、その凹部に接続するオイル排出溝に溜まったオイルをディテントローラで積極的に引きずって排出することができる。
【0018】
また請求項5の構成によれば、ブリーザパイプを支持するミッションケースの上壁からディテントプレートの上面に向けてリブを垂下し、上壁と、該上壁に連なるミッションケースの側壁と、リブと、ディテントプレートとによってブリーザパイプの入口開口を囲んだので、変速機の変速ギヤ等が掻き上げたオイルがディテントプレートの上面に沿ってブリーザパイプの入口開口に向かって流れたとき、そのオイルをリブで遮ってブリーザパイプの入口開口から浸入するのを阻止することで、ブリーザパイプからのオイルの噴出を一層確実に防止することができる。
【0019】
また請求項6構成によれば、ミッションケースはリブの下方にベアリングを介して回転軸を支持する軸支持部を備え、軸支持部の上面にベアリングにオイルを供給するオイル供給溝を形成したので、リブにより遮られて直接下方に落下するオイルや、リブにより遮られてディテントプレートの上面に落下した後に、ディテントプレートの外周から下方に落下するオイルを、軸支持部のオイル供給溝で受け止めてベアリングに供給することができる。これにより、ベアリングにオイルを供給する特別な潤滑手段が不要になって構造の簡素化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】自動車用変速機の部分断面図(図2の1−1線断面図)。[第1の実施の形態]
図2図1の2−2線断面図(Dレンジ)。[第1の実施の形態]
図3図1に対応する図(Pレンジ)。[第1の実施の形態]
図4】パーキングロック機構の説明図。[第1の実施の形態]
図5】ディテントプレートの形状を示す図。[第2の実施の形態]
図6】自動車用変速機の部分断面図(図7の6−6線断面図)。[第3の実施の形態]
図7図6の7−7線断面図(Dレンジ)。第3の実施の形態]
【発明を実施するための形態】
【第1の実施の形態】
【0021】
以下、図1図4に基づいて本発明の第1の実施の形態を説明する。
【0022】
図1および図2に示すように、自動車用変速機のミッションケース11の上壁11aに、クランク状に屈曲したブリーザパイプ12が設けられる。ミッションケース11の上壁11aを上から下に貫通するブリーザパイプ12の下端には、ミッションケース11の内部空間13に連通する入口開口12aが形成される。またブリーザパイプ12の上端には、ミッションケース11の外部空間14に連通する出口開口12bが形成され、出口開口12bの上部は異物の侵入を阻止するためのキャップ15で覆われる。
【0023】
ミッションケース11の上壁11aに形成されたボス部11bに上下方向に配置された回動軸16が回動自在に支持されており、ミッションケース11の内部空間13に延びる回動軸16の下端にディテントプレート17が固定される。ディテントプレート17の外周部には、回動軸16の軸線Lを中心とする円弧上に配列された6個の凹部a〜fが波形に形成される。またディテントプレート17の中央部には、その上面から下面に貫通する貫通孔17aが形成される。
【0024】
ディテントプレート17は板状の部材であるが、その厚さは回動軸16に接する部分で最も厚く、そこから外周部に向かって次第に薄くなっており、その厚さの差だけディテントプレート17の上面が回動軸16から遠ざかるに従って下向きに傾斜している。
【0025】
一方、ミッションケース11の側壁11cには、板ばね18の一端側が2本のボルト19,19で固定されており、板ばね18の他端に上下方向に配置したピン20を介して回転自在に支持したディテントローラ21が、前記6個の凹部a〜fの何れか一つに選択的に係合する。
【0026】
ミッションケース11の上壁11aから外部空間14に延びる回動軸16は、運転者により操作されるシフトレバー22にリンク等の連結手段23を介して連結されており、シフトレバー22がパーキングレンジ(Pレンジ)、リバースレンジ(Rレンジ)、ニュートラルレンジ(Nレンジ)、ドライブレンジ(Dレンジ)、1速−2速固定レンジ(L2レンジ)あるいは1速固定レンジ(L1レンジ)に操作されると、その動きが連結手段23を介してディテントプレート17に伝達され、ディテントプレート17が前記六つのシフトレンジに対応する位置に回転する。その際に、板ばね18で付勢されたディテントローラ21がディテントプレート17の6個の凹部a〜fの何れか一つに弾発的に係合することで、ディテントプレート17を六つのシフトレンジの何れかに対応する位置に安定的に停止させる。
【0027】
なお、ディテントプレート17の6個の凹部a〜fは、Pレンジ、Rレンジ、Nレンジ、Dレンジ、L2レンジおよびL1レンジにそれぞれ対応する。
【0028】
図4はパーキングロック機構24の構造を示すもので、変速機の所定の変速機軸25にパーキングギヤ26が固定されており、支軸27に枢支されたパーキングポール28の一端に設けた係止爪28aが、パーキングギヤ26の歯溝26a…から離脱する方向にスプリング29で付勢される。ディテントプレート17に一端を枢支されたパーキングロッド30の他端に設けたコーン状のカム31が、パーキングポール28の他端に設けたカムフォロア28bに当接する。パーキングポール28の係止爪28aがパーキングギヤ26の歯溝26aの一つに係合すると、変速機軸25の回転が拘束されてパーキングロックが作動する。
【0029】
次に、上記構成を備えた本発明の第1の実施の形態の作用を説明する。
【0030】
運転者がシフトチェンジすべくシフトレバー22を操作すると、その動きが連結手段23を介して伝達された回動軸16およびディテントプレート17が軸線Lまわりに一体に回動し、ディテントプレート17はディテントローラ21が6個の凹部a〜fの何れか一つに係合する位置で停止する。例えば、シフトレバー22がPレンジに操作されると、図3に示すように、ディテントプレート17は反時計方向に限界位置まで回動し、ディテントローラ21が凹部aに係合する位置に停止する。またシフトレバー22がDレンジに操作されると、図2に示すように、ディテントプレート17はPレンジの位置から時計方向に回動し、ディテントローラ21が凹部dに係合する位置に停止する。
【0031】
運転者がシフトレバー22をPレンジに操作すると、ディテントプレート17は図3に示す位置に回動し、ディテントプレート17に一端を枢支されたパーキングロッド30が図4において右側に移動する。その結果、パーキングロッド30の他端に設けたカム31がパーキングポール28のカムフォロア28bを押圧し、パーキングポール28がスプリング29を圧縮しながら支軸28まわりに時計方向に回動することで、パーキングポール28の係止爪28aがパーキングギヤ26の歯溝26a…の一つに係合し、変速機軸25が回転不能に拘束されてパーキングロックが作動する。
【0032】
図3に示すPレンジの状態では、ディテントプレート17はブリーザパイプ12の入口開口12aの下方から退避した位置にあり、入口開口12aはディテントプレート17に覆われることなくミッションケース11の内部空間13に連通する。一方、図2に示すDレンジの状態では、ディテントプレート17はブリーザパイプ12の入口開口12aの下方に対向する位置にあり、入口開口12aは僅かな隙間を介してディテントプレート17の上面によって覆われる。Pレンジの状態を除くRレンジ、Nレンジ、Dレンジ、L2レンジおよびL1レンジの何れの状態でも、ディテントプレート17はブリーザパイプ12の入口開口12aの下方に対向することになる。
【0033】
Rレンジ、Nレンジ、Dレンジ、L2レンジおよびL1レンジでは、ミッションケース11の内部空間13で回転する変速ギヤ等がオイルを掻き上げるため、飛散したオイルがブリーザパイプ12の入口開口12aに浸入して外部空間14に吹き出す可能性があるが、本実施の形態によれば、ディテントプレート17の上面がブリーザパイプ12の入口開口12aを僅かな隙間を介して覆うため、飛散したオイルが入口開口12aに浸入することが防止され、ブリーザパイプ12からのオイルの吹き出しを確実に防止することができる。
【0034】
またPレンジでは、ディテントプレート17がブリーザパイプ12の入口開口12aの下方から退避するが(図3参照)、このとき変速機の変速ギヤ等は回転を停止していてオイルが飛散することはないため、ブリーザパイプ12からオイルが吹き出す虞はなく、むしろブリーザパイプ12の入口開口12aはディテントプレート17に全く遮られずにミッションケース11の内部空間13に連通するため、ブリーザパイプ12によるブリーザ効果を充分に発揮することができる。
【0035】
なお、ブリーザパイプ12の入口開口12aの下方に貫通孔17aが位置すると、貫通孔17aを下から上に通過したオイルの飛沫が入口開口12aに浸入する虞があるが、ディテントプレート17が何れに位置にある場合でも、貫通孔17aは入口開口12aの下方に位置することはない。
【0036】
ディテントプレート17の上面にオイルが付着すると、Dレンジ等でディテントプレート17の上面がブリーザパイプ12の入口開口12aの下方を僅かな隙間を介して覆ったとき、ディテントプレート17の上面に付着したオイルが入口開口12aに吸い込まれる虞がある。しかしながら、本実施の形態によれば、ディテントプレート17に貫通孔17aを形成したことで、その上面に付着したオイルを貫通孔17aを通してミッションケース11の底部に落下させることができる。しかも、貫通孔17aから落下しなかったオイルも、ディテントプレート17の傾斜した上面に沿って重力で径方向外側に流れ、あるいはディテントプレート17の回動に伴う遠心力で径方向外側に流れ、外周部からミッションケース11の底部に落下する。
【0037】
以上のように、本実施の形態によれば、ミッションケース11の内部空間13に特別のブリーザチャンバを形成することなく、既存のディテントプレート17を利用してブリーザパイプ12の出口開口12bから外部空間14へのオイルの噴出を防止することができるので、ミッションケース11の構造が複雑になって加工コストが増加したり、ミッションケース11が大型化したりするのを防止することができる。
【第2の実施の形態】
【0038】
次に、図5に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0039】
上述した第1の実施の形態では、ディテントプレート17の上面を傾斜させることで、そこに付着したオイルをミッションケース11の底部に落下させているが、第2の実施の形態では、ディテントプレート17を一定の厚さとし、その上面に回動軸16から放射状に延びる複数本のオイル排出溝17b…を形成したものである。オイル排出溝17b…は回動軸16から遠くなるにつれて深くなるように下向きに傾斜しており、かつオイル排出溝17b…の先端はディテントプレート17の凹部a〜fに達している。
【0040】
本実施の形態によれば、ディテントプレート17の上面に付着したオイルは、貫通孔17aを通してミッションケース11の底部に落下し、あるいは傾斜したオイル排出溝17b…を流れてミッションケース11の底部に落下するため、第1の実施の形態と同様の作用効果を達成することができる。
【0041】
しかも、ディテントプレート17の外周部に形成した複数の凹部a〜fにオイル排出溝17b…の先端が接続するので、ディテントプレート17の回動に伴ってディテントローラ21が凹部a〜fから離脱するときに、その凹部a〜fに接続するオイル排出溝17b…に溜まったオイルを粘性によってディテントローラ21側に引きずることで、オイルを積極的に排出することができる。
【第3の実施の形態】
【0042】
以下、図6および図7に基づいて本発明の第3の実施の形態を説明する。
【0043】
第3の実施の形態は、ブリーザパイプ12を支持するミッションケース11の上壁11aから垂下するリブ11dを備える。リブ11dの長手方向一端はミッションケース26の上壁11aに連なる側壁11cに接続し、長手方向他端側はブリーザパイプ12および回動軸16の間を横切るように延びており、リブ11dの下端はディテントプレート17の上面に僅かな隙間を介して対向する。
【0044】
無段変速機Tの所定の回転軸33の軸端が、ミッションケース11の側壁11cに突設した軸支持部11eにボールベアリング32を介して支持される。ボールベアリング32は回転軸33の外周に嵌合するインナーレ−ス32aと、軸支持部11eの内周に嵌合するアウターレース32bと、インナーレ−ス32aおよびアウターレース32b間に支持された複数のボール32c…とを備えるもので、軸支持部11eの上面に開口するオイル供給溝11fがボールベアリング32の一側面に連通する。軸支持部11eのオイル供給溝11fはミッションケース11のリブ11dの下方に位置している。
【0045】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0046】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態に比べて、ブリーザパイプ12からのオイルの噴出を一層確実に防止することができる。即ち、ブリーザパイプ12の入口開口12aは、ミッションケース11の上壁11aと、ミッションケース11の側壁11cと、上壁11aから垂下するリブ11dと、ディテントプレート17の上面とによって囲まれるので、変速機の変速ギヤ等が掻き上げたオイルがブリーザパイプ12の入口開口12aに達し難くなり、ブリーザパイプ12からのオイルの噴出が効果的実に防止される。
【0047】
特に、第1の実施の形態では、変速機の変速ギヤ等が掻き上げたオイルがディテントプレート17の上面に沿ってブリーザパイプ12の入口開口12aに向かって流れた場合、そのオイルを遮ることができなかったが、本実施の形態によれば、そのオイルを上壁11aから垂下するリブ11dで遮ることで、ブリーザパイプ12からのオイルの噴出を一層確実に防止することができる。
【0048】
しかも、ミッションケース11はリブ11dの下方にボールベアリング32を介して回転軸33を支持する軸支持部11eを備え、軸支持部11eの上面にボールベアリング32にオイルを供給するオイル供給溝11fを形成したので、リブ11dにより遮られて直接下方に落下するオイルや、リブ11dにより遮られてディテントプレート17の上面に落下した後に、ディテントプレート17の外周から下方に落下するオイルを、軸支持部11eのオイル供給溝11fで受け止めてボールベアリング32に供給することができる。これにより、ボールベアリング32にオイルを供給する特別な潤滑手段が不要になって構造の簡素化が可能となる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0050】
例えば、実施の形態のディテントプレート17は、シフトレバー22に機械的な連結手段23を介して接続されて回動するが、シフトレバー22の位置を電気信号に変換し、その電気信号で作動するアクチュエータで回動するものであっても良い。
【0051】
また本発明のベアリングは実施の形態のボールベアリング32に限定されず、ローラベアリングやニードルベアリング等の任意のベアリングであっても良い。
【0052】
また本発明の回転軸は変速機軸と同じ軸であっても良いし、変速機軸とは別の軸であっても良い。
【符号の説明】
【0053】
11 ミッションケース
11a 上壁
11c 側壁
11d リブ
11e 軸支持部
11f オイル供給溝
12 ブリーザパイプ
12a 入口開口
16 回動軸
17 ディテントプレート
17b オイル排出溝
21 ディテントローラ
24 パーキングロック機構
25 変速機軸
32 ボールベアリング(ベアリング)
33 回転軸
a〜f 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7