(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図10(A)には、かかるクランク式の無段変速機のワンウェイクラッチ周辺の従来構造が、比較例として模式的に示される。
【0005】
ワンウェイクラッチ21は、出力軸12をインナー部材とし、揺動リンク22をアウター部材とする複数のローラ25…を備えており、隣接するワンウェイクラッチ21間に配置されるアンギュラボールベアリング34は、出力軸12の外周に軸方向摺動自在かつ相対回転不能に支持された内輪36と、揺動リンク22と一体に形成された外輪35と、内輪36および外輪35間に挟まれた複数のボール37…とを備える。軸方向に並置された複数のワンウェイクラッチ21…のアンギュラボールベアリング34…のうち、軸方向両端部に位置する2個のアンギュラボールベアリング34,34の内輪36,36が、出力軸12を支持する一対のボールベアリング41,41のインナーレース41a,41aによって軸方向に固定される。
【0006】
隣接する一対のアンギュラボールベアリング34,34の内輪36,36間を接続するように複数のスプリング支持ロッド33…が配置されており、これらのスプリング支持ロッド33…に支持した複数のエンゲージスプリング24…によってローラ25…が周方向に付勢される。スプリング支持ロッド33…の両端部はアンギュラボールベアリング34…の内輪36…に形成した支持孔36c′…に摺動自在に嵌合しており、軸方向両端のアンギュラボールベアリング34,34を除く軸方向中間のアンギュラボールベアリング34…の内輪36の支持孔36c′…は、該内輪36を軸方向に貫通している。
【0007】
さて、ワンウェイクラッチ21が係合して駆動力を伝達するとき、揺動リンク22がローラ25…から受ける反力で拡径するため、拡径した揺動リンク22と一体に形成したアンギュラボールベアリング34の外輪35とボール37との間に隙間が発生し、アンギュラボールベアリング34のプリロードが消滅して内輪36が軸方向に移動してしまう可能性がある。このようにして、アンギュラボールベアリング34の内輪36も軸方向に移動すると、その内輪36によって軸方向の位置を規制されていたローラ25が軸方向に移動してしまい、ローラ25とエンゲージスプリング24との位置関係が変化がしてワンウェイクラッチ21の作動が不安定になる問題があった。
【0008】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、クランク式動力伝達ユニットのアンギュラベアリングの内輪の軸方向の移動を規制してワンウェイクラッチの安定した作動を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、駆動源に接続された入力軸の回転を変速して出力軸に伝達する複数の動力伝達ユニットを軸方向に並置し、前記動力伝達ユニットが、前記入力軸の軸線からの偏心量が可変であって該入力軸と共に回転する偏心部材と、前記出力軸の外周に枢支された揺動リンクと、前記偏心部材および前記揺動リンクを接続して往復運動するコネクティングロッドと、前記揺動リンクの内周面および前記出力軸の外周面間に複数のローラを配置したワンウェイクラッチと、前記ローラを前記内周面および前記外周面間に係合する方向に付勢するエンゲージスプリングと、前記ローラの軸方向両側で出力軸の外周に前記揺動リンクを同軸に支持する一対のアンギュラベアリングとを備え、前記アンギュラベアリングの外輪は前記揺動リンクと一体に形成され、前記アンギュラベアリングの内輪は前記出力軸に軸方向摺動自在かつ相対回転不能に支持された車両用動力伝達装置であって、前記エンゲージスプリングを支持するスプリング支持ロッドの軸方向両端部を、前記一対のアンギュラベアリングの内輪に固定したことを特徴とする車両用動力伝達装置が提案される。
【0010】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記複数の動力伝達ユニットは相互に異なる位相で駆動力を伝達することを特徴とする車両用動力伝達装置が提案される。
【0011】
尚、実施の形態の偏心ディスク18は本発明の偏心部材に対応し、実施の形態のアンギュラボールベアリング34は本発明のアンギュラベアリングに対応し、実施の形態のエンジンEは本発明の駆動源に対応する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の構成によれば、車両用動力伝達装置は、駆動源に接続された入力軸の回転を変速して出力軸に伝達する複数の動力伝達ユニットを軸方向に並置して構成される。動力伝達ユニットは、入力軸の軸線からの偏心量が可変であって該入力軸と共に回転する偏心部材と、出力軸の外周に枢支された揺動リンクと、偏心部材および揺動リンクを接続して往復運動するコネクティングロッドと、揺動リンクの内周面および出力軸の外周面間に複数のローラを配置したワンウェイクラッチと、ローラを内周面および外周面間に係合する方向に付勢するエンゲージスプリングと、ローラの軸方向両側で出力軸の外周に揺動リンクを同軸に支持する一対のアンギュラベアリングとを備え、アンギュラベアリングの外輪は揺動リンクと一体に形成され、アンギュラベアリングの内輪は出力軸に軸方向摺動自在かつ相対回転不能に支持される。
【0013】
一つの動力伝達ユニットのワンウェイクラッチが係合して駆動力を伝達するとき、そのワンウェイクラッチのローラを支持する揺動リンクの内周面が拡径するため、揺動リンクと一体に形成されたアンギュラベアリングの外輪が拡径してプリロードが消滅し、アンギュラベアリングの内輪の軸方向位置が変動してローラの軸方向位置が不安定になり、ローラおよびエンゲージスプリングの位置がずれてワンウェイクラッチの作動が不安定になる可能性がある。
【0014】
しかしながら、エンゲージスプリングを支持するスプリング支持ロッドの軸方向両端部を、出力軸の外周に嵌合する一対のアンギュラベアリングの内輪に固定したので、内輪の軸方向位置をスプリング支持ロッドにより固定することでローラの軸方向位置を規制してエンゲージスプリングとの位置関係を一定に保持し、ワンウェイクラッチの作動を安定させることができる。
【0015】
また請求項2の構成によれば、複数の動力伝達ユニットは相互に異なる位相で駆動力を伝達するので、複数の揺動リンクが交互に拡径して隣接するアンギュラベアリングのプリロードが消滅するが、その影響を解消して全てのワンウェイクラッチの作動を安定させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1〜
図10に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1〜
図3に示すように、エンジンEの駆動力を左右の車軸10,10を介して駆動輪W,Wに伝達する車両用動力伝達装置は、クランク式の無段変速機TおよびディファレンシャルギヤDを備える。本実施の形態の無段変速機Tは同一構造を有する複数個(実施の形態では4個)の動力伝達ユニットU…を軸方向に重ね合わせたもので、それらの動力伝達ユニットU…は平行に配置された共通の入力軸11および共通の出力軸12を備えており、入力軸11の回転が減速または増速されて出力軸12に伝達される。
【0019】
次に、
図2〜
図6に基づいて無段変速機Tの構造を説明する。
【0020】
先ず、代表として一つの動力伝達ユニットUの構造を説明する。エンジンEに接続されて回転する入力軸11は、電動モータのような変速アクチュエータ14の中空の回転軸14aの内部を相対回転自在に貫通する。変速アクチュエータ14のロータ14bは回転軸14aに固定されており、ステータ14cはケーシングに固定される。変速アクチュエータ14の回転軸14aは、入力軸11と同速度で回転可能であり、かつ入力軸11に対して異なる速度で相対回転可能である。
【0021】
変速アクチュエータ14の回転軸14aを貫通した入力軸11には第1ピニオン15が固定されており、この第1ピニオン15を跨ぐように変速アクチュエータ14の回転軸14aにクランク状のキャリヤ16が接続される。第1ピニオン15と同径の2個の第2ピニオン17,17が、第1ピニオン15と協働して正三角形を構成する位置にそれぞれピニオンピン16a,16aを介して支持されており、これら第1ピニオン15および第2ピニオン17,17に、円板形の偏心ディスク18の内部に偏心して形成されたリングギヤ18aが噛合する。偏心ディスク18の外周面に、コネクティングロッド19のロッド部19aの一端に設けたリング部19bがボールベアリング20を介して相対回転自在に嵌合する。
【0022】
出力軸12の外周に設けられたワンウェイクラッチ21は、コネクティングロッド19のロッド部19aにピン19cを介して枢支された揺動リンク22の内周部をアウター部材とし、出力軸12の外周部をインナー部材とするもので、アウター部材およびインナー部材間に形成された楔状の空間に、エンゲージスプリング24…で付勢された複数のローラ25…を備える。尚、ワンウェイクラッチ21の具体的な構造は後から詳述する。
【0023】
図2から明らかなように、4個の動力伝達ユニットU…はクランク状のキャリヤ16を共有しているが、キャリヤ16に第2ピニオン17,17を介して支持される偏心ディスク18の位相は各々の動力伝達ユニットUで90°ずつ異なっている。例えば、
図2において、左端の動力伝達ユニットUの偏心ディスク18は入力軸11に対して図中上方に変位し、左から3番目の動力伝達ユニットUの偏心ディスク18は入力軸11に対して図中下方に変位し、左から2番目および4番目の動力伝達ユニットU,Uの偏心ディスク18,18は上下方向中間に位置している。
【0024】
次に、
図7〜
図9に基づいて、ワンウェイクラッチ21の構造を説明する。尚、
図3〜
図6においてワンウェイクラッチ21は模式的に図示されており、その実際の構造は
図7〜
図9に示されている。
【0025】
本実施の形態のワンウェイクラッチ21は、基本的に環状の揺動リンク22の円形の内周面22aと、筒状の出力軸12の波状に屈曲する外周面12aとの間に12個のローラ25…を配置したものであり、揺動リンク22の外周に設けた突出部22b,22bにピン19cおよびクリップ40,40を介してコネクティングロッド19が接続される。
【0026】
ワンウェイクラッチ21は、ローラ25…を周方向に付勢するエンゲージスプリング24…を支持するためのケージ31を備える。ケージ31は後述するアンギュラボールベアリング34,34の一対の内輪36,36と、周方向に等間隔で配置されて一対の内輪36,36を相互に接続する12本のスプリング支持ロッド33…とで構成され、一対の内輪36,36が12個のローラ25…の軸方向両側に配置され、12本のスプリング支持ロッド33…が12個のローラ25…間に配置される。内輪36,36の内周部を出力軸12の外周面12aに軸方向摺動自在かつ相対回転不能に圧入することで、ケージ31は出力軸12に支持される。
【0027】
スプリング支持ロッド33…の軸方向両端部は内輪36の側面に形成した行き止まりの圧入孔36c…に圧入されており(
図9参照)、これにより隣接する内輪36,36の相対位置が一定になるように規制される。軸方向両端に位置する2個の内輪36,36を、出力軸12の両端部を支持する一対のボールベアリング41,41のインナーレース41a,41a間に挟むことで(
図8参照)、合計7個の内輪36…の軸方向位置がスプリング支持ロッド33…を介して固定される。
【0028】
エンゲージスプリング24は1枚の弾性板材を断面S字状に屈曲させたもので、その一端側がケージ31のスプリング支持ロッド33に溶接等で固定され、他端側にはローラ25に当接して弾性変形可能な付勢部24aが形成される。
【0029】
隣接する二つのワンウェイクラッチ21,21間には一つのアンギュラボールベアリング34が配置されており、このアンギュラボールベアリング34によって揺動リンク22,22および出力軸12が同芯状態を維持しながら相対回転可能に接続される。アンギュラボールベアリング34は二つの外輪35,35および一つの内輪36間に複数のボール37…を配置したものであり、二つの外輪35,35は軸方向に隣接する二つの揺動リンク22,22の相互に対向する軸方向端部に一体に形成され、一つの内輪36は別部材で構成されて出力軸12の外周面12aに軸方向摺動自在かつ相対回転不能に支持される。つまり、一つのアンギュラボールベアリング34が共通のボール37…で二つの外輪35,35を支持することで、隣接する二つのワンウェイクラッチ21,21の二つの揺動リンク22,22は相対回転可能に支持される。
【0030】
尚、並置された4個のワンウェイクラッチ21…の軸方向両端に位置する2個のアンギュラボールベアリング34,34(
図8参照)のボール37…には、一つの内輪36および一つの外輪35だけが当接する。
【0031】
従って、各ワンウェイクラッチ21の軸方向両側には一対のアンギュラボールベアリング34,34が配置され、一方のアンギュラボールベアリング34の内輪36に形成された第1側面36aと、他方のアンギュラボールベアリング34の内輪36に形成された第2側面36bとが相互に対向する(
図9参照)。ローラ25の軸方向両端には平坦な第1端面25aおよび第2端面25bが形成されており、内輪36の第1側面36aおよびローラ25の第1端面25a間に環状の板ばねよりなるアキシャルスプリング38が配置される。アキシャルスプリング38の内周から突出する12個の押圧部38a…が、12個のローラ25…の第1端面25a…に弾発的に当接することで、12個のローラ25…の第2端面25bが他方の内輪36の第2側面36bに押し付けられ、これによりローラ25…の姿勢の安定化が図られる。
【0032】
また揺動リンク22の内周面22aに形成した環状溝22cに環状のリングスプリング39が配置されており、このリングスプリング39はローラ25…の周面に当接して出力軸12の外周面12aに向けて付勢する。
【0033】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0034】
先ず、無段変速機Tの一つの動力伝達ユニットUの作用を説明する。変速アクチュエータ14の回転軸14aを入力軸11に対して相対回転させると、入力軸11の軸線L1まわりにキャリヤ16が回転する。このとき、キャリヤ16の中心O、つまり第1ピニオン15および2個の第2ピニオン17,17が成す正三角形の中心は入力軸11の軸線L1まわりに回転する。
【0035】
図3および
図5は、キャリヤ16の中心Oが第1ピニオン15(つまり入力軸11)に対して出力軸12と反対側にある状態を示しており、このとき入力軸11に対する偏心ディスク18の偏心量が最大になって無段変速機Tの変速比は最小のOD(オーバードライブ)状態になる。
図4および
図6は、キャリヤ16の中心Oが第1ピニオン15(つまり入力軸11)に対して出力軸12と同じ側にある状態を示しており、このとき入力軸11に対する偏心ディスク18の偏心量がゼロになって無段変速機Tの変速比は無限大のGN(ギヤドニュートラル)状態になる。
【0036】
図5に示すOD状態で、エンジンEで入力軸11を回転させるとともに、入力軸11と同速度で変速アクチュエータ14の回転軸14aを回転させると、入力軸11、回転軸14a、キャリヤ16、第1ピニオン15、2個の第2ピニオン17,17および偏心ディスク18が一体になった状態で、入力軸11を中心に反時計方向(矢印A参照)に偏心回転する。
図5(A)から
図5(B)を経て
図5(C)の状態へと回転する間に、偏心ディスク18の外周にリング部19bをボールベアリング20を介して相対回転自在に支持されたコネクティングロッド19は、そのロッド部19aの先端にピン19cで枢支された揺動リンク22を反時計方向(矢印B参照)に回転させる。
図5(A)および
図5(C)は、揺動リンク22の前記矢印B方向の回転の両端を示している。
【0037】
このようにして揺動リンク22が矢印B方向に回転すると、ワンウェイクラッチ21の揺動リンク22および出力軸12間の楔状の空間にローラ25…が噛み込み、揺動リンク22の回転が出力軸12を介して出力軸12に伝達されるため、出力軸12は反時計方向(矢印C参照)に回転する。
【0038】
入力軸11および第1ピニオン15が更に回転すると、第1ピニオン15および第2ピニオン17,17にリングギヤ18aを噛合させた偏心ディスク18が反時計方向(矢印A参照)に偏心回転する。
図5(C)から
図5(D)を経て
図5(A)の状態へと回転する間に、偏心ディスク18の外周にリング部19bをボールベアリング20を介して相対回転自在に支持されたコネクティングロッド19は、そのロッド部19aの先端にピン19cで枢支された揺動リンク22を時計方向(矢印B′参照)に回転させる。
図5(C)および
図5(A)は、揺動リンク22の前記矢印B′方向の回転の両端を示している。
【0039】
このようにして揺動リンク22が矢印B′方向に回転すると、揺動リンク22と出力軸12との間の楔状の空間からローラ25…がエンゲージスプリング24…を圧縮しながら押し出されることで、揺動リンク22が出力軸12に対してスリップして出力軸12は回転しない。
【0040】
以上のように、揺動リンク22が往復回転したとき、揺動リンク22の回転方向が反時計方向(矢印B参照)のときだけ出力軸12が反時計方向(矢印C参照)に回転するため、出力軸12は間欠回転することになる。
【0041】
図6は、GN状態で無段変速機Tを運転するときの作用を示すものである。このとき、入力軸11の位置は偏心ディスク18の中心に一致しているので、入力軸11に対する偏心ディスク18の偏心量はゼロになる。この状態でエンジンEで入力軸11を回転させるとともに、入力軸11と同速度で変速アクチュエータ14の回転軸14aを回転させると、入力軸11、回転軸14a、キャリヤ16、第1ピニオン15、2個の第2ピニオン17,17および偏心ディスク18が一体になった状態で、入力軸11を中心に反時計方向(矢印A参照)に偏心回転する。しかしながら、偏心ディスク18の偏心量がゼロであるため、コネクティングロッド19の往復運動のストロークもゼロになり、出力軸12は回転しない。
【0042】
従って、変速アクチュエータ14を駆動してキャリヤ16の位置を
図3のOD状態と
図4のGN状態との間に設定すれば、無限大変速比および最小変速比間の任意の変速比での運転が可能になる。
【0043】
無段変速機Tは、並置された4個の動力伝達ユニットU…の偏心ディスク18…の位相が相互に90°ずつずれているため、4個の動力伝達ユニットU…が交互に駆動力を伝達することで、つまり4個のワンウェイクラッチ21…の何れかが必ず係合状態にあることで、出力軸12を連続回転させることができる。
【0044】
さて、
図10(B)に示すように、例えば左から2番目のワンウェイクラッチ21が係合して揺動リンク22が拡径し、揺動リンク22と一体のアンギュラボールベアリング34の左側の外輪35が拡径してボール37…との間に隙間が発生した場合、アンギュラボールベアリング34の内輪36は前記隙間分だけ図中右方向に移動しようとする。しかしながら、本実施の形態によれば、係合中のワンウェイクラッチ21のスプリング支持ロッド33…の軸方向両端が左右の内輪36,36の圧入孔36c,36cに圧入されて固定されているため、スプリング支持ロッド33…が突っ張ることで左側の外輪35が右側に移動することが規制される。同様にして、アンギュラボールベアリング34の右側の内輪36も、スプリング支持ロッド33…が突っ張ることで左側に移動することが規制される。
【0045】
以上のように、ワンウェイクラッチ21の揺動リンク22…が拡径しても、そのワンウェイクラッチ21の軸方向両側のアンギュラボールベアリング34,34の内輪36,36の軸方向位置が変化しないため、内輪36,36によって軸方向位置を規制されたローラ25…とエンゲージスプリング24…との位置関係を一定に保ってワンウェイクラッチ21の作動を安定させることができる。
【0046】
しかも複数のワンウェイクラッチ21…は相互に異なる位相で駆動力を伝達するので、複数の揺動リンク22…が交互に拡径して隣接するアンギュラベアリング34…のプリロードが消滅するが、その影響を解消して全てのワンウェイクラッチ21…の作動を安定させることができる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0048】
例えば、実施の形態では隣接する2個のアンギュラボールベアリング34,34が1列のボール37…を共有しているが、1個のアンギュラボールベアリング34,34が1列のボール37…を有していても良い。
【0049】
また本発明のアンギュラベアリングは実施の形態のアンギュラボールベアリング34に限定されず、アンギュラローラベアリングであっても良い。