【実施例】
【0034】
先ず、実施例の構成について説明する。
【0035】
図1は、実施例の太陽電池モジュールパネルの取付治具1を用いた太陽電池モジュールパネルの取付構造の概略構成を示している。
【0036】
この実施例の太陽電池モジュールパネルの取付構造では、建物Bの傾斜屋根Yの上に、取付治具1,・・・を介して、太陽電池モジュールパネル2,・・・が取り付けられている。
【0037】
なお、取付治具1,・・・の下側の端部には、化粧部材3が設けられ、意匠的美観を呈するようになっている。
【0038】
この実施例の太陽電池モジュールパネルの取付治具1については、
図2に、その概略構成を示した。
【0039】
この取付治具1は、レール部材11と固定部材12,・・・とから主に構成されている。
【0040】
レール部材11は、
図3に示したように、概形が直方体を呈しており、内部に中空部11aを有し、上面には、この中空部11aと連通する長手方向に延びるスリット部11bが形成されている。
【0041】
なお、中空部11aの下方の部分も軽量化などを図るために中空となっている。
【0042】
固定部材12は、
図4(a)及び
図4(b)に示したように、分割片12Aと分割片12Bとが、締結部材としてのボルト120、ナット121、スプリングワッシャー122及び平ワッシャー123により、分割可能に一体化されている。
【0043】
より詳細には、分割片12Aは、固定部材12の固定基部12aの一部を形成し、上面に太陽電池モジュールパネル2の端部の側面を受ける受部12bの一部である側面受部位126Aが立ち上がるように形成された分割固定基部124Aと、分割片12Bと一体化するためのボルト孔125aを有する固定板125とから主に構成されている。
【0044】
また、分割片12Bは、固定部材12の固定基部12aの一部を形成し、下面に分割片12Aと一体化するためのボルト孔124aを有し、上面に太陽電池モジュールパネル2の端部の側面を受ける受部12bの一部である側面受部位126Bが立ち上がるように形成されるとともに、ナット121を締め付けたり緩めたりするための作業用孔124bを有する分割固定基部124Bと、支持板127に支持される太陽電池モジュールパネル2の端部を上側から受けて固定部として働く受部12bの一部である上側受部位128とから主に構成されている。
【0045】
ここで、上側受部位128は支持板127の上端部から両側に突出し、断面略T字形状となっている。
【0046】
さらに、上側受部位128の外側端部には、下向きに突出する下向突出片128a,128aが設けられており、後述する太陽電池モジュールパネル2の端部に設けられた上向きに突出する上向突出片2aと係合可能とされている。
【0047】
また、太陽電池モジュールパネル2の下側の端部側の上向突出片2aとの係合を容易に行えるように、
図5に示したように、レール部材11の上側の端部側に配置された下向突出片128aの下端部の内側面128bは、上方に向かうにつれて支持板127との間が狭くなるテーパー形状とされている。
【0048】
さらに、太陽電池モジュールパネル2の上側の端部側の上向突出片2aとの係合を容易に行えるように、レール部材11の下側の端部側に配置された下向突出片128aの下端部の内側面128cは、上方に向かうにつれて支持板127との間が狭くなるアール形状に近い面取り形状とされている。
【0049】
なお、太陽電池モジュールパネル2,2間に挟まれる中間の固定部材12では、
図6に示したように、太陽電池モジュールパネル2の絶縁対策が万一損なわれた場合における漏電の被害を回避するために分割固定基部124Aの部分にアース金具4が設けられている。
【0050】
そして、
図7に示したように、ナット121を緩めた状態で、レール部材11の端部からその中空部11aに固定部材12のボルト120の頭部120aを挿入すると、
図2に示したような取付治具1が完成する。
【0051】
なお、レール部材11の中空部11aとボルト120の頭部120aとの間及びレール部材11のスリット部11bとボルト120の軸部120bとの間には遊びを有しており、これにより、ボルト120を緩めた状態においては、固定部材12は、レール部材11の長手方向に移動可能とされている。
【0052】
また、レール部材11の中空部11aの端部の下側面には、
図8に示したように、ビス5が螺合されており、このビス5の頭部5aは、ボルト120の頭部120aがそれ以上外側に移動しないように制止するストッパー部となっている。
【0053】
次に、実施例の太陽電池モジュールパネルの取付治具1を用いた太陽電池モジュールパネルの取付方法について説明する。
【0054】
まず、建物Bの傾斜屋根Yの上面に、取付治具1を、傾斜方向に向かって、図示省略の固定用金具で固定する。
【0055】
そして、その取付治具1に平行して略等間隔に複数の取付治具1,・・・を同じ要領で固定する。
【0056】
続いて、2つのレール部材11,11単位で、傾斜方向の1列の太陽電池モジュールパネル2,・・・を複数の固定部材12,・・・で固定する。
【0057】
具体的には、レール部材11の下側の端部において、
図8に示した状態で、固定部材12を、ナット121をレンチなどの工具で締め付けることにより固定する。
【0058】
そして、レール部材11,・・・の下側の端部の固定部材12の外側に化粧部材3を取り付ける。
【0059】
続いて、
図9に示したように、この下側の端部の固定部材12の分割固定基部124Bの上面に太陽電池モジュールパネル2の一方の端部の下側角部を載せ、持ち上げている他方の端部を下ろすと、矢印の方向に回転しながら、この太陽電池モジュールパネル2の上向突出片2aと固定部材12の上側受部位128の下向突出片128aとが係合するとともに、太陽電池モジュールパネル2の端部の側面は、側面受部位126Bで受けられる。
【0060】
そして、
図10に示したように、この作業をレール部材11の上側の端部に向かって同じ要領で行っていくと、
図1に示したようなこの実施例の太陽電池モジュールパネルの取付構造が完成する。
【0061】
なお、太陽電池モジュールパネル2,・・・の取外作業は、逆の要領で行えばよい。
【0062】
次に、実施例の作用効果について説明する。
【0063】
このような実施例の太陽電池モジュールパネルの取付治具1は、傾斜屋根Yに太陽電池モジュールパネル2,・・・を取り付けるための太陽電池モジュールパネルの取付治具である。
【0064】
そして、内部に中空部11aを有し、上面に中空部11aと連通する長手方向に延びるスリット部11bが形成され、傾斜屋根Yに固定されるレール部材11と、レール部材11の中空部11aに頭部120aが収納されスリット部11bに軸部120bが挿通されたボルト120とナット121とによりレール部材11に固定される固定基部12aと太陽電池モジュールパネル2の端部を受ける受部12bとを有する固定部材12とを備えた構成とされている。
【0065】
こうした構成なので、太陽電池モジュールパネル2,・・・を傾斜屋根Yに取り付けるには、取付治具1,・・・を傾斜屋根Y上に固定する作業と、固定部材12のボルト120とナット121を螺合して締結する作業と、太陽電池モジュールパネル2,・・・のレール部材上への載置作業とを行えば済むため、大変容易である。
【0066】
そのうえ、太陽電池モジュールパネル2,2間の固定部材12もボルト120とナット121によりレール部材11に固定されるので、レール部材11の下側の端部の固定部材12のみに過大な荷重がかかってしまうことはなく、長期間の供用に耐え得る。
【0067】
ここで、レール部材11の中空部11aとボルト120の頭部120aとの間及びレール部材11のスリット部11bとボルト120の軸部120bとの間には、遊びを有しており、ナット121を緩めた状態では、固定部材12がレール部材11の長手方向に移動可能とされている。
【0068】
このため、レール部材11上の固定部材12を所望の位置となるように容易に位置調整できる。
【0069】
そのうえ、ボルト120の軸部120bに上部からナット121を螺合すると、初めはボルト120の頭部120aが中空部11aの下側面に接するので、この下側面から受ける摩擦力によってナット121を螺合することができ、途中からはボルト120の頭部120aが中空部11aの上側面に接するので、この上側面から受ける摩擦力によってナット121を螺合することができ、これにより、固定部材12をレール部材11にしっかりと固定することができる。
【0070】
また、固定部材12は、受部12bとして、太陽電池モジュールパネル2の端部の側面を受ける側面受部位126A,126Bと、太陽電池モジュールパネル2の端部を上側から受ける上側受部位128とを有する。
【0071】
このため、固定部材12は太陽電池モジュールパネル2の端部を側面側からだけでなく上側からも拘束するので、太陽電池モジュールパネル2をより安定的な固定状態とすることができる。
【0072】
さらに、上側受部位128は、レール部材11の長手方向の両側に向くように断面略T字形状に形成されている。
【0073】
このため、太陽電池モジュールパネル2,2間の固定部材12をそれぞれ1つずつとして実施することができる。
【0074】
また、上側受部位128には、下向きに突出する下向突出片128a,128aが設けられており、太陽電池モジュールパネル2の端部に設けられた上向きに突出する上向突出片2aと係合可能とされている。
【0075】
このため、下向突出片128aと上向突出片2aとの係合により、太陽電池モジュールパネル2をさらにより安定的な固定状態とすることができる。
【0076】
さらに、上側受部位128は、固定基部12aから立ち上がる支持板127で支持されており、レール部材11の上側の端部側に配置された下向突出片128aの下端部の内側面128bは、上方に向かうにつれて支持板127との間が狭くなるテーパー形状とされている。
【0077】
このため、太陽電池モジュールパネル2を取付治具1に固定するに際し、太陽電池モジュールパネル2の上向突出片2aの上端部がこの下向突出片128aのテーパー形状の内側面128bにガイドされるので、下向突出片128aと上向突出片2aとの係合を容易に行うことができる。
【0078】
また、レール部材11の下側の端部側に配置された下向突出片128aの下端部の内側面128cは、上方に向かうにつれて支持板127との間が狭くなるアール形状に近い面取り形状とされている。
【0079】
このため、太陽電池モジュールパネル2を取付治具1に固定するに際し、太陽電池モジュールパネル2の上向突出片2aの上端部がこの下向突出片128aの面取り形状の内側面128cにガイドされるので、下向突出片128aと上向突出片2aとの係合を容易に行うことができる。
【0080】
さらに、固定部材12の固定基部12aは、ナット121の取り外しによりレール部材11の下側の端部側の分割片12Aと上側の端部側の分割片12Bとに分割可能とされており、上側の端部側の分割片12Bに上側受部位128が設けられている。
【0081】
このため、ナット121を取り外せば、上側受部位128が設けられている上側の端部側の分割片12Bを取り外せるので、太陽電池モジュールパネル2の上側の端部が拘束されていない状態となり、この太陽電池モジュールパネル2を容易に取り外すことができ、太陽電池モジュールパネル2の取外作業を容易に行える。
【0082】
また、レール部材11の中空部11aの下側の端部には、ボルト120の頭部120aの中空部11a内での移動を制止するストッパー部となるビス5の頭部5aが設けられている。
【0083】
このため、レール部材11の下側の端部の固定部材12のボルト120とナット121とが万一緩んだとしても頭部120aがストッパー部となるビス5の頭部5aで制止されるので、より安全性を高めることができる。
【0084】
このような実施例の太陽電池モジュールパネルの取付構造は、上記した実施例の太陽電池モジュールパネルの取付治具1,・・・を用いて太陽電池モジュールパネル2,・・・が傾斜屋根Yに取り付けられた構成とされている。
【0085】
こうした構成なので、上記した実施例の太陽電池モジュールパネルの取付治具1の作用効果を享受した太陽電池モジュールパネルの取付構造とすることができる。
【0086】
このような実施例の太陽電池モジュールパネルの取付方法は、上記した実施例の太陽電池モジュールパネルの取付治具1,・・・を傾斜屋根Yの上面に固定し、取付治具1,1の固定部材12の固定基部12aの分割片12Bの上面に斜めに傾斜させた状態で持ち上げた太陽電池モジュールパネル2の一方の端部の下側角部を載せ、持ち上げていた他方の端部を下ろすことにより、太陽電池モジュールパネル2の一方の端部が回転して固定部材12の受部12bに嵌り込み、これを繰り返して太陽電池モジュールパネル2,・・・が取付治具1,・・・を介して傾斜屋根Yに取り付けられる構成とされている。
【0087】
こうした構成なので、太陽電池モジュールパネル2,・・・を簡易な取付作業で傾斜屋根Yに取り付けることができる。
【0088】
以上、図面を参照して、本発明を実施するための形態を実施例に基づいて詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0089】
例えば、上記した実施例では、取付治具1を傾斜屋根Yの上面に傾斜方向に向かって固定して実施したが、これに限定されず、取付治具1を傾斜屋根Yの上面に傾斜方向と直交する方向に向かって固定して実施してもよい。
【0090】
また、上記した実施例では、取付治具1を傾斜屋根Yに適用して実施したが、これに限定されず、平屋根などに適用して実施してもよい。
【0091】
また、上記した実施例では、2つのレール部材11,11単位で、傾斜方向の1列の太陽電池モジュールパネル2,・・・を複数の固定部材12,・・・で固定するようにして実施したが、これに限定されず、例えば、3つのレール部材11,11,11単位で、傾斜方向の1列の太陽電池モジュールパネル2,・・・を複数の固定部材12,・・・で固定するようにして実施してもよい。
【0092】
さらに、上記した実施例では、締結部材としてボルト120、ナット121、スプリングワッシャー122及び平ワッシャー123を用いて実施したが、これに限定されず、例えば、リベットなどを用いて実施してもよい。