【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、1次元あるいは2次元的に画素が配列された撮像素子を含む撮像部と、この撮像部に対してオフセットして配置された発光部と、を備え、この発光部が投射した光によって生じた反射光を前記撮像部が受光して検知対象を検知する人体検知センサであって、
前記発光部による発光及び前記撮像部による受光が行われる撮像動作を制御する撮像制御手段と、
前記撮像素子を構成する画素の受光量を読み出す読出手段と、
少なくともいずれかの画素の受光量を利用して検知対象の有無を判定する手段であって、判定精度が異なる第1及び第2の判定手段と、
これら第1及び第2の判定手段がいずれも検知対象が有ると判定したときに、検知と判断する検知判断手段と、を備え、
前記第1の判定手段よりも判定精度が高い前記第2の判定手段は、前記第1の判定手段
によって検知対象が有ると判定されたことを条件として検知対象の有無の判定を実行し
、
前記撮像制御手段による第1の撮像動作に応じて読み出された少なくともいずれかの画素の受光量を利用して前記第1の判定手段が検知対象が有ると判定したとき、前記撮像制御手段により第2の撮像動作が実行されると共に、この第2の撮像動作に応じて読み出された少なくともいずれかの画素の受光量を利用して前記第2の判定手段が検知対象の有無の判定を実行する場合が設けられ、
前記第1の撮像動作と前記第2の撮像動作とでは、前記発光部による発光時間及び/又は発光強度が相違しており、前記第1の撮像動作の方が発光量が小さい人体検知センサにある(請求項1)。
【0009】
本発明の第2の態様は、底部に排水口を設けた鉢に吐水する水栓と、
前記第1の態様をなす人体検知センサと、
この人体検知センサの検知信号に応じて、前記水栓の吐水・止水の切替、あるいは吐水量の調整を実行する給水制御手段と、を備えた自動水栓にある(請求項
5)。
【0010】
本発明に係る人体検知センサは、検知対象の有無を判定するための2種類の判定手段を備えている。この人体検知センサでは、前記第1の判定手段により検知対象が有ると判定されたとき前記第2の判定手段による判定が実行される。第1の判定手段と第2の判定手段とでは、検知対象の有無の判定精度が異なっており、第1の判定手段の方が判定精度が低く、第2の判定手段の方が判定精度が高くなっている。
【0011】
一般に、要求される判定精度が高ければ、判定処理の内容が緻密あるいは複雑となる。処理内容が緻密だったり複雑であれば、当然に処理中の計算負荷等が増えることになるので消費電力等が大きくなる。また、前記発光部による発光量を大きくすれば、検知対象からの反射光の強度が大きくなるので、前記撮像素子の熱雑音等の暗電流ノイズが低減されてS/N比が向上し、判定精度が向上する。一方、発光量を大きくすれば、当然ながら消費電力が大きくなる。
【0012】
本発明に係る人体検知センサでは、判定精度が高い方の前記第2の判定手段による判定の実行条件として、前記第1の判定手段により検知対象が有ると判定されたという条件が設定されている。この人体検知センサでは、検知を実行する都度、前記第2の判定手段による判定を実行する必要がないのでその実行回数を抑制でき、消費電力を抑制できる。特に、例えば、洗面台やキッチン等の自動水栓に前記人体検知センサが適用された場合には、1日のうちの大半を占める止水期間において前記第2の判定手段による判定の実行回数を少なくでき、消費電力を効果的に削減できる。
【0013】
以上のように、本発明の人体検知センサ、及びこの人体検知センサを備えた自動水栓は、検知性能を損なうことなく消費電力が抑制された省エネ効果の高い優れた製品である。
【0014】
本発明において、検知対象の有無の判定精度を左右する要因としては、検知対象に向けて前記発光部から投射する光量や、判定処理を実行する際に取り扱う画素の数や、判定処理において実行される処理の種類数や、判定処理の計算において取り扱うデータの有効桁数等がある。
例えば、前記撮像素子の全ての画素を取り扱うことなく取り扱う画素の数を端折れば、計算回数等を低減でき消費電力を少なくできる。一方、判定処理に利用される画素の数が少なくなれば、画像的な情報量が少なくなるので、検知対象の有無の判定精度が低くなる傾向にある。
例えば、反射光の受光量の閾値判断による判定に加えて、その検知対象までの距離を判断する処理を実行すれば、計算負荷が大きくなって消費電力が増えるものの判定精度を効果的に向上できる。例えば、洗面鉢用の自動水栓への適用では、距離を判断することで鉢面等の誤検知を低減でき、検知精度を向上できる。
【0015】
本発明に係る人体検知センサに適用する撮像素子としては、CCDやCMOSを利用した撮像素子を利用できる。
本発明の第2の態様をなす自動水栓における吐水量の調整としては、吐水開始や、吐水停止や、吐水量の増減等の調整がある。
【0016】
本発明
に係る人体検知センサにおける撮像制御手段による第1の撮像動作に応じて読み出された少なくともいずれかの画素の受光量を利用して前記第1の判定手段が検知対象が有ると判定したとき、前記撮像制御手段により第2の撮像動作が実行されると共に、この第2の撮像動作に応じて読み出された少なくともいずれかの画素の受光量を利用して前記第2の判定手段が検知対象の有無の判定を実行する場合が設けられ、
前記第1の撮像動作と
前記第2の撮像動作と
では、前記発光部による発光時間及び/又は発光強度が相違しており、前記第1の撮像動作の方が発光量が小さくなっている
。
【0017】
前記第2の判定手段による判定では、前記発光部の発光量が大きい前記第2の撮像動作が実行される場合がある。この第2の判定手段による判定の実行回数を減らせば、前記発光部による消費電力の大きい前記第2の撮像動作の実行回数を低減でき、消費電力を確実性高く低減できる。
【0018】
本発明の好適な一態様の人体検知センサにおける撮像制御手段は、前記第1の撮像動作に応じて読み出された画素の受光量がいずれも所定の閾値未満のとき、前記第1の撮像動作よりも前記発光部による発光量が大きい前記第2の撮像動作を実行する一方、いずれかの画素の受光量が所定の閾値以上であるときには、前記第2の撮像動作を実行しないように構成され、
前記第2の判定手段は、前記第2の撮像動作が実行された場合には、この第2の撮像動作に応じて読み出された少なくともいずれかの画素の受光量を利用して検知対象の有無を判定し、前記第1の撮像動作に応じて読み出されたいずれかの画素の受光量が所定の閾値以上であったために前記第2の撮像動作が実行されなかった場合には、前記第1の撮像動作に応じて読み出された少なくともいずれかの画素の受光量を利用して検知対象の有無を判定する(請求項
2)。
【0019】
前記第1の判定手段による判定の際に実行される前記第1の撮像動作では、前記発光部の発光量が小さくなっている。このような第1の撮像動作であっても、検知対象が近接していたり、反射面の反射率が高いような場合であれば、前記第2の判定手段にとっても十分な受光量が得られる場合がある。このような場合、前記第2の撮像動作を実行せず、前記第1の撮像動作による受光量を利用すれば、消費電力が大きい前記第2の撮像動作の実行回数を一層低減でき、消費電力をさらに低減できる。
【0020】
本発明の好適な一態様の人体検知センサは、前記撮像部と前記発光部とのオフセット方向に、前記撮像素子を構成する画素が配列された領域である受光エリア内の前記反射光の入射位置を特定することにより、三角測量の原理に基づいて検知対象までの距離あるいは距離の度合いを表す計測距離を求める測距手段を備え、
前記第1の判定手段は、画素の受光量に関する閾値判断によって検知対象の有無を判定し、
前記第2の判定手段は、前記計測距離に関する閾値判断を含む判定処理を実行して検知対象の有無を判定し、これにより、判定精度が前記第1の判定手段よりも高くなっている(請求項
3)。
【0021】
距離的な判断を行えば検知対象の有無の判定精度を確実性高く向上できる一方、計算処理が複雑となって消費電力が増える傾向にある。上記のように構成すれば、前記第1の判定手段により肯定的な判定がなされたときのみ、測距のための計算処理を実行すれば良くなる。前記計測距離に関する閾値判断により高い判定精度を実現しつつ、測距の実行回数を抑制することで、平均的な計算負荷を低減して消費電力を抑制できる。
なお、前記計測距離としては、検知対象までの距離の絶対値であっても良いが、この距離に比例する指標であっても良い。この指標としては、例えば、前記受光エリア内の反射光の入射位置等を利用可能である。さらに、この入射位置としては、反射光の受光波形のピーク(最大受光量)の位置や、受光波形の重心位置等を利用できる。
【0022】
本発明の好適な一態様の人体検知センサは、前記撮像部と前記発光部とのオフセット方向に、前記撮像素子を構成する画素が配列された領域である受光エリア内の前記反射光の入射位置を特定することにより、三角測量の原理に基づいて検知対象までの距離あるいは距離の度合いを表す計測距離を求める測距手段を備え、
前記第1及び第2の判定手段は、いずれも、前記計測距離に関する閾値判断を含む判定処理を実行して検知対象の有無を判定する一方、
前記第2の判定手段に適用される前記計測距離の精度は、前記第1の判定手段に適用される前記計測距離の精度よりも高くなっており、これにより前記第2の判定手段の方が前記第1の判定手段よりも判定精度が高くなっている(請求項
4)。
【0023】
前記計測距離の精度は、前記反射光の入射位置を特定する精度や、各画素の受光量のS/N比等に依存している。例えば、光量が最大となる画素の位置を前記入射位置として特定する簡易的な方法では、入射位置の特定精度を十分に確保できないので、前記計測距離の精度は低くなる傾向にある。一方、受光量の分布波形である受光波形の重心位置等を算出し、その重心位置を前記入射位置として特定すれば、入射位置の特定精度を確保でき前記計測距離の精度が向上する。また、熱雑音等、ある程度の暗電流ノイズが不可避である撮像素子では、適度に大きい受光量が得られるように前記発光部による発光量を大きくすればS/N比を向上できる。前記撮像素子についてS/N比が向上すれば、入射位置の特定精度が高くなり前記計測距離の精度が向上する。